説明

モールドモータ

【課題】導通部材をモールドモータの外郭に配置しつつ、出力側ブラケットと反出力側ブラケットとを導通させる際に、導通部材が切れたり剥がれたりするのを防止し、かつ、導通部材を成形する材料の歩留りを向上すること。
【解決手段】出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52とを導通させる金属製の導通板60は、一端側に反出力側のベアリングハウス520の側面に外郭20から離れる方向に反った状態で当接するように形成された第1当接部61と、他端側に外郭20に圧入される出力側のブラケット51の内側に当接するように形成された第2当接部62と、第1当接部61と第2当接部62とを連結する導通帯63とからなり、導通板60と外郭20には、第1当接部61が反出力側のベアリングハウス520の側面に当接した状態を保持する保持手段が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーロータ型のモールドモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとを導通部材である導電性テープで導通させるようにしたモールドモータがある(例えば、特許文献1参照)。モールドモータに用いた導電性テープは、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとの間に位置し、モールド樹脂によりモールド成形された外郭の側面に貼り付けられている。出力側のブラケットと反出力側のブラケットには、ベアリングを収容するベアリングハウスがそれぞれ形成されている。
【0003】
このようなモールドモータでは、出力側のブラケットと反出力側のブラケットが導電性テープで導通されることにより、各々のベアリングハウスに収容されるベアリングの外輪の電位が同じとなる。このため、ベアリングに電流が流れることがなく、ベアリングの電食の発生を防ぐことが可能である。しかも、導電性テープは外郭の側面に貼り付けられることから、モールド樹脂の内部に導通部材を埋設する必要がないため、モールド成形時に高度な技術が不要である。しかしながら、導電性テープは、外郭の側面への貼り付けが容易な反面、モールドモータの搬送時や、空気調和機、脱臭装置などの電気機器へのモールドモータの搭載時に切れたり剥がれたりするおそれがある。また、導電性テープは、経年変化により剥がれるおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−20348号公報(4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、導通部材をモールドモータの外郭に配置しつつ、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとを導通させる際に、導通部材が切れたり剥がれたりするのを防止し、かつ、導通部材を成形する材料の歩留りを向上することができるモールドモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のモールドモータは、モールド樹脂によりモールド成形されて有底筒状の外郭が形成されたステータと、ステータの内径側に回転自在に配置されたロータと、ロータの出力回転軸の出力側と反出力側とを支持するベアリングと、ベアリングを収容するベアリングハウスが形成され外郭の出力側と反出力側の両方に配置された導電性のブラケットと、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとを導通させる金属製の導通板とを備える。導通板は、一端側に出力側または反出力側のベアリングハウスの側面に外郭から離れる方向に反った状態で当接するように形成された第1当接部と、他端側に外郭に圧入される出力側または反出力側のブラケットの内側に当接するように形成された第2当接部と、第1当接部と第2当接部とを連結する導通帯とからなる。導通板と外郭には、第1当接部が出力側または反出力側のベアリングハウスの側面に当接した状態を保持する保持手段が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のモールドモータによれば、出力側のブラケットと反出力側のブラケットとが導通板により導通され、ベアリングハウスに収容されたベアリングの外輪同士の電位が同電位になるため、ベアリングに電流が流れることがなく、ベアリングの電食の発生を防止することができる。導通板と外郭に形成された保持手段は、第1当接部が出力側または反出力側のベアリングハウスの側面に当接した状態を保持するため、導電性テープのように切れたり剥がれたりするのを防止することができる。そして、導通板は、導通帯からなる帯状に形成されているため、導通板を成形する材料の歩留りを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明によるモールドモータを示す説明図で、(a)は出力側から見た概略斜視図、(b)は反出力側から見た概略斜視図である。
【図2】本発明によるモールドモータを示す概略分解斜視図である。
【図3】本発明によるモールドモータの図1(a)に示すA−A概略断面図である。
【図4】第1当接部および保持手段の付近を示す拡大断面図である。
【図5】第1当接部の付近を示す説明図で、(a)は図4に対応する概略拡大平面図、(b)は(a)に示す第1当接部の変形例を示す概略拡大平面図である。
【図6】第1当接部および保持手段の付近を示す拡大断面図である。
【図7】第1当接部および保持手段の付近を示す説明図で、(a)は図6に対応する概略拡大平面図、(b)は(a)に示す第1当接部の変形例を示す概略拡大平面図である。
【図8】導通板および第2当接部の付近を示す説明図で、(a)は第2当接部を説明するための導通板を示す斜視図、(b)は(a)に示す第2当接部が溝部に収められた状態を示す拡大斜視図、(c)は(b)に示す溝部の付近の変形例を示す拡大斜視図である。
【図9】導通板および第2当接部の付近を示す説明図で、(a)は図8(a)に示す第2当接部の変形例を説明するための斜視図、(b)は(a)に示す第2当接部が溝部に収められた状態を示す拡大斜視図である。
【図10】第2当接部の切起部と外郭の溝部との関係を示す概略拡大断面図である。
【図11】導通板のプレス打ち抜き時の効果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1乃至図10は、本実施形態におけるモールドモータを説明する図である。図1乃至図3に示すように、このモールドモータ100は、ステータコア10と、外郭20と、ロータ30と、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42と、出力側のブラケット51および反出力側のブラケット52と、導通板60とを備えている。
【0010】
ステータコア10は、鋼板を積層して構成され、円環状のヨーク部と、ヨーク部から内径側に延びる複数のティース部11とを備えている。このステータコア10にプレモールドを施すことによってインシュレータ12を形成し、このインシュレータ12を介してティース部11に巻線13が巻回されている。この巻線13が巻回されたステータコア10を、内周面を除いてモールド樹脂でモールド成形して円筒状の外郭20を形成することでステータを構成している。なお、インシュレータ12は、ステータコア10にプレモールドを施さずに別に成形してステータコア10に取付けてもよい。外郭20の反出力側には、亜鉛メッキ鋼板からなる金属製のブラケット52が一体に埋設されている。この反出力側のブラケット52は、反出力側のベアリング42が収容されるベアリングハウス520が外郭20から露出した状態になっている。
【0011】
ロータ30は、出力回転軸31と複数の磁極をもつ永久磁石32とを備えている。永久磁石32の磁極は、等間隔で、かつ、隣接同士がN、S交互に逆磁極となるようにして出力回転軸31の周囲に配置され、出力回転軸31と一体化されている。永久磁石32は、樹脂材にフェライト磁性体を混入させて成形後、着磁することでフェライトボンド磁石として形成することができる。ロータ30は、ステータコア10の内周より内側に、所定の空隙(ギャップ)をもって対向して収められている。なお、永久磁石32はこれに限らず、フェライト磁石の代わりに希土類磁石を用い、ボンド磁石の代わりに焼結磁石を用いてもよい。
【0012】
出力回転軸31は、出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42に通されて回転可能に軸支されている。出力側のベアリング41および反出力側のベアリング42は、ボールベアリングが用いられ、転動体としてのボール400と内輪401と外輪402とを備えている。
【0013】
図1、図2および図3において、出力側のベアリング41は、亜鉛メッキ鋼板からなる金属製の出力側のブラケット51に形成された出力側のベアリングハウス510に収容されている。出力側のブラケット51は、外郭20の出力側の側面に嵌合している。
【0014】
図1において、反出力側のベアリングハウス520には、導通板60の一端側が当接され、他端側が出力側のブラケット51に当接されている。以下に導通板60について詳細に説明する。図1、図2および図3において、導通板60は、導電性、バネ性および剛性を有する帯状の金属板からなり、これらの性質を備えたステンレスからなる材料で形成されている。なお、導通板60は、導電性、バネ性および剛性の性質を備えていれば、鉄、鋼、真鍮、りん青銅などからなる材料で形成されていてもよい。導通板60は、一端側に形成された第1当接部61と、他端側に形成された第2当接部62と、第1当接部61と第2当接部62とを連結する導通帯63とを備えている。導通帯63は、途中で折り曲げられ、図3に示すように、全体として略L字型の形状を有している。具体的には、外郭20の反出力側の端面と外郭20の側面に沿うように折り曲げられている。外郭20の反出力側の端面と外郭20の側面には、導通板60が収容される溝部22が設けられている。
【0015】
図1および図3において、反出力側のベアリングハウス520は、例えば、プレス加工によって有底円筒状に形成されている。反出力側のベアリングハウス520の内側にはベアリング42が収容され、外側には導通板60の一端側に形成された第1当接部61が、外郭20から離れる方向に反った状態で当接されている。一方、導通板60の他端側に形成された第2当接部63は、外郭20の出力側の側面に出力側のブラケット51が圧入された状態で、出力側のブラケット51の内側に当接されている。
【0016】
図4および図5に、第1当接部61の付近を拡大して示している。図4および図5(a)において、導通板60は、第1当接部61が反出力側のベアリングハウス520の外側側面に当接され、導通帯63が溝部22に収容されている。導通板60は、溝部22に収容されるため、外郭20に対する周方向の位置決めを行うことができる。反出力側のベアリングハウス520の外周には、防振ゴム70が取付けられている。この防振ゴム70は、例えば、モールドモータ100を空気調和機に搭載したとき、モールドモータから空気調和機に伝達される振動を低減する。防振ゴム70には、第1当接部61に隣接する角部に面取り部71が形成されている。防振ゴム70に面取り部71を形成することで、ベアリングハウス520の外周に防振ゴム70を取付けたとき、第1当接部61が防振ゴム70に引っかかって捲れあがり、ベアリングハウス520の外側側面との接触不良を起こすのを防止できる。第1当接部61は、防振ゴム70により覆われるため、作業者の指などが第1当接部61に接触するのを防止できる。なお、防振ゴム70は、出力側のベアリングハウス510の外周にも取付けられている(図示を省略)。
【0017】
導通板60と外郭20には、第1当接部61が反出力側のベアリングハウス520の外側側面に当接した状態を保持する保持手段が形成されている。導通板60に設けられる第1保持部と外郭20に設けられる第2保持部とを互いに組み合せることで保持手段を構成している。導通板60には、第1保持部として、第1当接部61よりも外径側であって導通帯63に孔630が形成されている。また、外郭20の反出力側の端面に形成された溝部22には、第2保持部として、孔630が圧入される突起部220が形成されている。孔630が突起部220に圧入されることで、溝部22に導通帯63が収容された状態で、反出力側のベアリングハウス520の外側側面への第1当接部61の当接状態が保持されている。導通板60の厚さtの寸法は、例えば、0.4mm程度となっており、溝部22の深さdの寸法は、導通板60の厚さtの寸法よりも大きく、突起部220の高さの寸法と同等になっている。このため、導通板60は、外郭20の反出力側の端面や外郭60の側面から突出しないため、作業者の指などが溝部22に近づいても、導通板60に指が引っかからず、溝部22から導通板60が外れるのを防止できる。
【0018】
図5(a)において、第1当接部61の先端部610は、反出力側のベアリングハウス520の外側側面に沿った円弧状に形成されている。第1当接部61は、先端部610が円弧状に形成されているため、反出力側のベアリングハウス520の外側側面との当接面積が大きくなり、確実に当接することができる。なお、第1当接部61の先端部610の形状は円弧状に限らず、直線状に形成されていてもよい。
【0019】
図5(b)に、第1当接部61の変形例を示している。図5(a)では第1当接部61と導通帯63の幅はそれぞれ等しくなっているが、図5(b)において、第1当接部611の幅w1は、導通帯63の幅w2よりも狭くなっている。つまり、第1当接部611は導通帯63と比べて周方向に細くなっている。第1当接部611を周方向に細くすることにより、第1当接部611が変形しやすくなり、反出力側のベアリングハウス520の外側側面に第1当接部611を当接した状態で、孔630を突起部220に位置合わせしやすいため、より圧入しやすくすることができる。
【0020】
図6および図7に、他の実施形態による第1当接部61の付近を拡大して示している。なお、図4および図5による実施形態と同じ箇所については同一符号を付してその説明を省略する。図6および図7(a)において、導通板60には、第1保持部として、第1当接部61よりも外径側であって導通帯63に形成された折曲部631と、第1当接部61とから構成されている。また、反出力側のベアリングハウス520と外郭20とを組み合わせることで、第2保持部として、溝部80が形成されている。外郭20の反出力側の端面の内径側には、段差部27が形成されている。段差部27は、反出力側のベアリングハウス520の外側側面に向き合う位置に形成されている。この段差部27の形成によって、反出力側のベアリングハウス520の外径側に環状の溝部80が形成される。具体的には、溝部80は、ベアリングハウス520の外側側面と段差部27との間に形成されている。一方、導通板60には、溝部80に圧入される凸形状部632が形成される。この凸形状部632は、折曲部631と第1当接部61から構成されている。具体的には、折曲部631は、段差部27に沿うように折り曲げられている。折曲部631には、折曲部631よりも内径側で第1当接部61が連結されている。第1当接部61は、折曲部631の折り曲げ方向とは反対方向に折り曲げられており、図6に示すように、折曲部631から第1当接部61までの導通板60の断面形状が略凸形状となった凸形状部632が形成されている。折曲部631および第1当接部61、つまり、導通板60に形成された凸形状部632が溝部80に圧入されることで、反出力側のベアリングハウス520の外側側面への第1当接部61の当接状態が保持されている。
【0021】
図7(b)に、他の実施形態による第1当接部61の変形例を示している。図7(a)では第1当接部61と導通帯63の幅はそれぞれ等しくなっているが、図7(b)において、第1当接部612の幅w1は、導通帯63の幅w2よりも狭くなっている。つまり、第1当接部612は導通帯63と比べて周方向に細くなっている。第1当接部612を周方向に細くすることにより、第1当接部612が変形しやすくなり、反出力側のベアリングハウス520の外側側面に第1当接部611を当接した状態で、凸形状部632を溝部80に位置合わせしやすいため、より圧入しやすくすることができる。

【0022】
図8に、導通板60と、出力側のブラケット51に当接される第2当接部62の付近とを示している。図8(b)および図8(c)では出力側のブラケット51を外郭20から取り外した状態で示す。図8(a)および図8(b)において、外郭20の側面21のうち出力側には、段差23が設けられ、出力側のブラケット51がこの段差23に圧入されて嵌め込まれる。導通板60の導通帯63は、外郭20の側面21に形成された溝部22に収容されている。この溝部22は、段差23から外郭20の出力側端面24にかけても形成され、出力側端面24では、側面21に対し直交する方向に溝25が形成されている。
【0023】
第2当接部62は、段差23から外郭20の出力側端面24にかけて形成された溝部22に接合する接合部620と、接合部620より先端が外郭20の出力側端面24に沿うように折り曲げられ、溝部22に沿う方向であって出力側端面24から立ち上がるように設けられた先端部621とを備えている。接合部620と先端部621との間には、出力側端面24に係止される係止部622を備えている。第2当接部62の先端部621および係止部622は、出力側端面24に形成された溝25に収容されている。先端部621が溝部22に沿う方向に反っているため、外郭20の段差23から出力側端面24にかけて形成された溝部22に沿ってずらしながら出力側端面24の溝25に先端部621を収容するとき、先端部621に加わる力を溝部22に沿う方向に逃がすことができ、動かし易くすることができる。第2当接部62の接合部620には、出力側のブラケット51の内周面に接合する切起部623が形成されており、外郭20の外径側に向かって溝部22から突出するように切起こされている。つまり、切起部623は、図10に示すように、切起こし高さhの寸法が溝部22の深さdの寸法よりも大きくなるように切起こされている。このように切起部623を形成すると、接合部620が溝部21に接合されるとともに、切起部623が出力側のブラケット51に接合されたとき、出力側のブラケット51に対する第2当接部62の当接状態をより確実にすることができる。なお、本実施形態では、切起部623を接合部620に形成することで、出力側のブラケット51に対する第2当接部62の当接状態をより確実にするようにしたが、切起部623を省略して接合部620を出力側のブラケット51の内周面に接合するようにしてもよい。
【0024】
図8(c)に、溝部22の付近の変形例を示している。図8(a)では外郭20の出力側端面24には、側面21から離れた側の溝25の両側の側らに何も形成されていないが、図8(c)において、出力側端面24には、溝25の両側の側らに先端部621を保護する突起部26が形成されている。突起部26の側面は溝25の側面と連続して形成されている。溝25の両側の側らに突起部26が形成されているので、溝25に収容された第2当接部62の先端部621が出力側端面24から立ち上がるように設けられていても、先端部621が保護される。例えば、作業者の指などが先端部621に近づいても、先端部621は突起部26により保護されるため、先端部621に指が引っかからず、溝25から先端部621が外れるのを防止することができる。なお、突起部26は、溝25の片側の側らのみに形成されていても、出力側端面24の側面21に近い側に形成されていてもよい。
【0025】
図9に、他の実施形態による、導通板60と、出力側のブラケット51に当接される第2当接部62の付近とを示している。図9(b)では出力側のブラケット51を外郭20から取り外した状態で示す。なお、図8による実施形態と同じ箇所については同一符号を付してその説明を省略する。図9(a)および図9(b)において、溝部22は、段差23から外郭20の出力側端面24にかけて形成され、出力側端面24では、側面21に対し直交する方向に溝25が形成されている。この溝25の側面には出力側端面24の周方向に向かって一対の凸部28が形成されている。一方、第2当接部62は、接合部620より先端が外郭20の出力側端面24に沿うように折り曲げられ、出力側端面24に係止される係止部624を備えている。この係止部624には、溝25に形成された一対の凸部28に対応するように凹状の一対の切欠部625が形成されている。係止部624に形成された一対の切欠部625が溝25に形成された一対の凸部28に引っかかるため、溝25から係止部624が外れるのを防止できる。
【0026】
以上説明してきたように構成されたモールドモータ100は、図示しない位置検出センサにより検出されるロータ30の回転位置に応じて、電流を巻線13に流し、ステータに回転磁界を発生させることにより、ロータ30を出力回転軸31と共に回転させることができる。なお、位置検出センサ付のモールドモータ100について説明したが、センサレスのモールドモータでもよい。モールドモータ100は、例えば、空気調和機に搭載される送風ファンを駆動するモータとして使用することができ、室内機での使用では出力回転軸31にクロスフローファンが取付けられ、室外機での使用では出力回転軸31にプロペラファンが取付けられる。
【0027】
以上説明してきた本発明のモールドモータ100によれば、出力側のブラケット51と反出力側のブラケット52とが導通板60により導通され、出力側のベアリングハウス510に収容されたベアリング41の外輪402と、反出力側のベアリングハウス520に収容されたベアリング42の外輪402同士の電位が同電位になる。このため、出力側のベアリング41と反出力側のベアリング42に電流が流れることがなく、出力側のベアリング41と反出力側のベアリング42の電食の発生を防止することができる。導通板60と外郭20に形成された保持手段は、第1当接部61が反出力側のベアリングハウス520の外側側面に当接した状態を保持するため、導電性テープのように切れたり剥がれたりするのを防止することができる。そして、導通板60は、導通帯63からなる帯状に形成されているため、図11に示すように、金属板Pから導通板60をプレス打ち抜きする際に廃棄される材料が少なく、導通板60を成形する材料の歩留りを向上することができる。
【0028】
なお、本実施形態におけるモールドモータ100では、導通板60の一端側に第1当接部61を、他端側に第2当接部62を形成するようにしたが、本発明はこれに限らず、導通板60の両端に第2当接部62を形成し、外郭20の出力側および反出力側の側面に段差23を形成することにより、それぞれの第2当接部62が、外郭20の段差23に圧入される出力側のブラケット51および反出力側のブラケット52の内側に当接されるようにしてもよい。本実施形態におけるモールドモータ100では、導通板60に形成された第1当接部61を反出力側のベアリングハウス520の外側側面に当接するようにしたが、本発明はこれに限らず、第1当接部61を出力側のベアリングハウス510の外側側面に当接するようにしてもよい。本実施形態におけるモールドモータ100では、導通板60の第1当接部61の当接状態を保持する保持手段として、導通板60が外郭20の側面21および外郭20の反出力側の端面に形成された溝部22に収容された状態で、導通板60を溝部22にネジ止めするように固定してもよい。さらに、本実施形態におけるモールドモータ100では、溝部22のうち、段差23に形成された溝部22を除き、外郭20の側面21および外郭20の反出力側の端面に形成された溝部22が形成されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0029】
10 ステータコア
11 ティース部
12 インシュレータ
13 巻線
20 外郭
21 側面
22 溝部
220 突起部
23 段差
24 出力側端面
25 溝
26 突起部
27 段差部
28 凸部
30 ロータ
31 出力回転軸
32 永久磁石
400 ボール
401 内輪
402 外輪
41 出力側のベアリング
42 反出力側のベアリング
51 出力側のブラケット
510 出力側のベアリングハウス
52 反出力側のブラケット
520 反出力側のベアリングハウス
60 導通板
61 第1当接部
610 先端部
611 第1当接部
612 第1当接部
62 第2当接部
620 接合部
621 先端部
622 係止部
623 切起部
624 係止部
625 切欠部
63 導通帯
630 孔
631 折曲部
632 凸形状部
70 防振ゴム
71 面取り部
80 溝部
d 溝部22の深さ
t 導通板60の厚さ
w1 第1当接部611、第1当接部612の幅
w2 導通帯63の幅
h 切起部623の切起こし高さ
P 金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド樹脂によりモールド成形されて有底筒状の外郭が形成されたステータと、
同ステータの内径側に回転自在に配置されたロータと、
同ロータの出力回転軸の出力側と反出力側とを支持するベアリングと、
同ベアリングを収容するベアリングハウスが形成され前記外郭の出力側と反出力側の両方に配置された導電性のブラケットと、
出力側のブラケットと反出力側のブラケットとを導通させる金属製の導通板とを備え、
同導通板は、一端側に出力側または反出力側のベアリングハウスの側面に前記外郭から離れる方向に反った状態で当接するように形成された第1当接部と、
他端側に前記外郭に圧入される出力側または反出力側のブラケットの内側に当接するように形成された第2当接部と、
前記第1当接部と前記第2当接部とを連結する導通帯とからなり、
前記導通板と前記外郭には、前記第1当接部が前記ベアリングハウスの側面に当接した状態を保持する保持手段が形成されることを特徴とするモールドモータ。
【請求項2】
前記保持手段は、前記導通板に形成された第1保持部と前記外郭に形成された第2保持部とからなり、前記第1保持部が前記第2保持部に圧入されることで、前記第1当接部が前記ベアリングハウスの側面に当接した状態を保持することを特徴とする請求項1記載のモールドモータ。
【請求項3】
前記第1保持部は、前記導通帯に形成された孔からなり、前記第2保持部は、前記外郭の端面に形成された突起部からなり、前記孔が前記突起部に圧入されることを特徴とする請求項2記載のモールドモータ。
【請求項4】
前記第1保持部は、前記第1当接部よりも内径側の前記導通帯に折曲部を形成することで、前記導通板に形成される凸形状部からなり、前記第2保持部は、前記ベアリングハウスの側面に向き合うように前記外郭に段差部を形成することで、前記ベアリングハウスの外径側に形成される溝部からなり、前記凸形状部が前記溝部に圧入されることを特徴とする請求項2記載のモールドモータ。
【請求項5】
前記外郭には、前記導通板を収容する溝部が形成されることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載のモールドモータ。
【請求項6】
前記溝部の深さの寸法は、前記導通板の厚さの寸法よりも大きくなっていることを特徴とする請求項5記載のモールドモータ。
【請求項7】
前記第1当接部の幅は、前記導通帯の幅よりも細くなっていることを特徴とする請求項2乃至請求項6のいずれかに記載のモールドモータ。
【請求項8】
前記第2当接部は、前記外郭の外径側に向かって前記溝部から突出するように切起こされた切起部を備えていることを特徴とする請求項5または請求項6記載のモールドモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−81264(P2013−81264A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218632(P2011−218632)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】