ユニバーサル塩基アナログを含む組合せ核酸塩基オリゴマーならびにこれらを作製する方法および使用する方法
本発明は、ユニバーサル塩基アナログを含む絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーであって、共有結合を介する二つ以上のオリゴマー「ブロック」の連結によって形成されるオリゴマーに関する。ユニバーサル塩基は、二つのオリゴマーブロックを互いにつなぐ共有結合リンカー領域の作用から、特異的結合核酸塩基を絶縁するよう働くことができる。その結果、ユニバーサル塩基は、共有結合によって生じるTmペナルティーを少なくとも部分的に打ち消し、オリゴマーブロック及び組合せオリゴマーの必要最小限の長さを減らすのに有効である。得られる絶縁性核酸塩基組合せオリゴマーは、任意のハイブリダイゼーションに基づく用途(プローブ及びプライマーとしての用途を含む)に用いられる。本発明の組合せオリゴマーは、当該技術において現在知られている既存の組合せオリゴマー系に対して有利である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、核酸やその他のオリゴマー分子に対するハイブリッド形成(ハイブリダイゼーション)に用いる組合せオリゴマー(コンビナトリアルオリゴマー)の合成の分野に関するアッセイ方法及び材料を提供する。
【背景技術】
【0002】
序論
核酸のハイブリッド形成は、幅広い生物学的研究の技法及び臨床応用の基礎をなす基本的なプロセスである。ハイブリッド形成に基づく方法は、核酸の検出、定量、及び/又は分析に有用である。プローブやプライマーを用いるハイブリッド形成法は、2’−デオキシリボ核酸及びリボ核酸(すなわちDNA及びRNA)の構造のような核酸種を含むことができるが、その代わりに非DNA又は非RNAの構造(例えば修飾ヌクレオチドやその他の重合核酸塩基構造(例えばペプチド核酸(PNA)やロックト核酸(LNA)(locked nucleic acid)))を組み込むよう拡張されてきた。
【0003】
プローブに基づくアッセイは、特定のヌクレオチド種に対する選択性が要求される遺伝子発現の研究すべての基礎となっている。長い間、核酸やその他の核酸塩基ポリマーのプローブが、細菌、カビ、ウイルス、又はその他の生物体に由来する核酸が存在するかどうか試料を分析するため、そして、遺伝子に基づく疾患の検査に、臨床上用いられてきた。
【0004】
核酸増幅アッセイは、現代の生物学的分析に利用される配列特異的検出法の重要な種類の一つであり、ヒトの疾患の診断、ヒトの特定、微生物の特定、父子鑑別、ウイルス学、及びDNA配列決定において多様な用途を有している。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅法は、高い感度及び特異性で、標的核酸配列の生産及び検出を可能にする。PCR法は、急速に普及し、応用され、多くの生物学的用途(クローニング法、遺伝子発現の解析、DNA配列決定、遺伝子地図作製、医薬の発見、及びその他の多数の用途を含む)の基礎をなしてきた。PCR産物(すなわちアンプリコン)を検出するため、標的配列又はアンプリコンとハイブリダイズすることができる核酸塩基オリゴマープローブを用いる方法は、当該技術においてよく知られている。
【0005】
ゲノムやトランスクリプトームに含まれる情報は膨大である。そのため、遺伝子解析用の配列獲得やヒト疾患の理解を高めるための手法は、典型的に、高処理能力の解析を必要とし、それは、単一の用途において数万あるいは数十万ものプローブ又はプライマーを要する。プローブ又はプライマーとして用いる核酸塩基オリゴマーを速くかつ経済的に合成することが、多数の(例えば何千もの)オリゴマーを要する遺伝子解析法を実行するために必要となる。また、特定の配列のオリゴマーを高速で合成する方法は、一般により有益である。というのも、特定の配列のオリゴマーに対する要求が満たされる上に、実験をより短い時間で完了させることができるからである。
【0006】
段階的なモノマー組み立て(デノボ合成)に基づいて特定の核酸塩基ポリマーを構築する市販の手段は、残念ながら、一つのオリゴマー生産に数時間を要する上、この製造方法は、数千のプローブ又はプライマーの製造に法外な費用がかかる。従って、高処理能力の用途のためのプローブ又はプライマーとして使用できる必要な核酸塩基配列を有する数千のオリゴマーを高速で効率よく経済的に製造するための方法をもつことは、有利なはずである。
【0007】
オリゴマーブロックライブラリーの複雑度は、オリゴマーにおける特異性決定核酸塩基の部位の数によって決まる。例えば、特異性決定核酸塩基の部位を8つ有するオリゴマー(八量体)で以下の配列
【0008】
【化1】
を有するものの場合、二つの予め合成された四量体ブロックの連結反応産物として合成することができる。それらのブロックは、
【0009】
【化2】
とすることができる。
【0010】
予め合成される四量体ブロックの各部位が、天然に存在する核酸塩基の任意のものであるとすると、ライブラリーは、(44)すなわち256の可能な四量体の組合せからなることになる。一方、すべての可能な八量体を予め合成することにすると、48すなわち65536の可能なオリゴマーのライブラリーを保持する必要があることとなる。
【0011】
残念ながら、この方法は、オリゴマーブロックを連結するのに用いる付加の化学反応によって妨げられる。共有結合を形成し、オリゴマーブロックのサブユニットを連結するため、鋳型に依存しない多くの連結化学反応が、当該技術において広く知られている。しかし、得られたオリゴマーをハイブリッド形成反応に用いるとき(例えばプローブ又はプライマーとして用いるとき)、この付加化学反応に起因して、しばしば、不安定な二重鎖構造が生じる。オリゴマーブロックを組合せるのに用いる結合は、組合せオリゴマーに不安定性をもたらす。この不安定性は、形成される二重鎖の低下した融解温度(Tm)として現れてくる。すなわち、組合せオリゴマーのTmは、オリゴマーブロック又はリンカーを用いずに単一の反応で合成した同じ塩基配列のオリゴマーのTmに比べて、顕著に低くなる。このTmの低下を「Tmペナルティー」と名づける。結合部位の化学構造によってもたらされるこの不安定性は、例えば、10℃もの「Tmペナルティー」を生じさせ得る。
【0012】
この不安定性を打ち消すべく、より長い(そして結果的により複雑で高価な)オリゴマーを、満足のいく程度のハイブリッド形成安定性を得るため、調製する必要がある。しかし、より長いオリゴマーが必要になるということはまた、オリゴマーブロックライブラリーの複雑度が指数関数的に増えることを意味する。例えば、四量体オリゴマーライブラリーは256の可能なブロックを有する。五量体ライブラリーは1024の可能なブロックを含み、六量体ライブラリーは4096の可能なブロックを含む必要がある。長さで約6〜8のオリゴマーよりも顕著に長いオリゴマーのライブラリーを保持することは、実用的でなく、法外に高価なものになる。
【0013】
従って、組合せ核酸塩基オリゴマーの費用対効果の高い合成のための組成物及び方法が必要であり、十分な安定性及び特異性を保持するためオリゴマー内でより長い特異性決定配列を作る必要性が、オリゴマーを作るのに用いる付加化学反応によって生じることのない合成のための組成物及び方法が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の概要)
本発明は、リンカー構造によって互いに結合されるより小さなオリゴマーブロックから組合せオリゴマーを合成するのに有用であり得る組成物及び方法を提供する。ユニバーサル核酸塩基、又はユニバーサル核酸塩基の配列は、スペーサー領域を与えることができ、これは、オリゴマーブロックの塩基対合セグメント(すなわち特異性決定核酸塩基を含むセグメント)を、付加結合から「絶縁(隔離)」することができる。ここで、ユニバーサル核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的ポリマー構造上で塩基を顕著に区別することのない塩基を含む。特異性決定核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的ポリマー構造上で塩基を区別することができるものである。従って本発明は、ユニバーサル核酸塩基を含む組合せオリゴマーを提供し、ここで、リンカー構造に起因するTmペナルティーは、減少しているか又は無くなっている。本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを用いれば、必要なTmを得るためさらに特定の塩基配列を追加する必要なく、所定のTm範囲において、組合せ核酸塩基オリゴマーを構築することができる。
【0015】
また、本発明は、オリゴマーブロックライブラリーを提供し、そこにおいて、オリゴマーブロックのコレクションが、絶縁性組合せオリゴマーの迅速な合成のため、手元に維持され用意される。オリゴマーブロックライブラリーは、複数の特異性決定部位のために核酸塩基配列が並び替えられた複数のオリゴマーブロックを含み、さらに、核酸塩基の配列において、少なくとも一つの、より典型的には一つより多い、ユニバーサル塩基の部位を有する。オリゴマーブロックライブラリーは、いくつかの、ある態様において多数の、またある態様においてすべての、可能な核酸塩基配列の並べ替え物を含むことができる。
【0016】
典型的な態様において、本発明は、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリーを提供し、それは、複数のオリゴマーブロックを含み、ここで、各オリゴマーブロックは、それぞれ独立して、少なくとも三つの特異性決定核酸塩基及び少なくとも一つのユニバーサル核酸塩基を含む重合された核酸塩基と、重合された核酸塩基からなる分子の一方又は両方の末端に共有結合される少なくとも一つの化学反応性部分とを含む。例えば、デオキシリボヌクレオチドオリゴマーブロックは、重合された核酸塩基の3’−末端、5’−末端又は両方の末端に共有結合される化学反応性部分を有することができる。一つのオリゴマーブロック上にある該化学反応性部分は、少なくとも一つの他のオリゴマーブロック上にある化学反応性部分と反応することができ、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成するため、鋳型なしで、該オリゴマーブロック間に共有結合リンカーを形成できる。該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ハイブリッド形成の標的配列を有し、それは、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを構成するオリゴマーブロックにおいて、特異性決定核酸塩基の複合物である。
【0017】
本発明のある態様において、各オリゴマーブロックは、それぞれ独立して、約3〜約8の特異性決定核酸塩基を含む。ある態様において、オリゴマーブロックライブラリーは、約1〜約10のユニバーサル核酸塩基を含むオリゴマーブロックを含むことができる。本発明のある態様において、各オリゴマーブロックは、それぞれ独立して、約1〜約3のユニバーサル核酸塩基を含む。ユニバーサル核酸塩基は、二つの特異性決定核酸塩基の間に、それらに隣接して配置することができる。本発明のある態様において、ユニバーサル核酸塩基は、化学反応性部分の近くに、化学反応性部分から離して、あるいは、化学反応性部分に隣接して、配置することができる。
【0018】
ある態様において、ユニバーサル核酸塩基は、以下の一つ以上からなる。5−ニトロインドール、3−ニトロピロール、7−アザインドール、6−メチル−7−アザインドール、ピロールピリジン、イミジゾピリジン、イソカルボスチリル、プロピニル−7−アザインドール、プロピニルイソカルボスチリル、及びアレニル−7−アザインドール。また、ユニバーサル核酸塩基は、そのプロピニル誘導体を含む以下の化合物の一つ以上からなることができる。8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシグアノシン、8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシシチジン、2’−デオキシウリジン、2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシグアノシン、及びピロロ[2,3−d]ピリミジンヌクレオシド。また、ユニバーサル核酸塩基は、その誘導体を含む以下の化合物のいずれかからなることができる。デオキシイノシン(例えば2’−デオキシイノシンン)、7−デアザ−2’−デオキシイノシン、2’−アザ−2’−デオキシイノシン、3’−ニトロアゾール、4’−ニトロインドール、5’−ニトロインドール、6’−ニトロインドール、4−ニトロベンゾイミダゾール、ニトロインダゾール(例えば5’−ニトロインダゾール)、4−アミノベンゾイミダゾール、イミダゾ−4,5−ジカルボキサミド、3’−ニトロイミダゾール、イミダゾール−4−カルボキサミド、3−(4−ニトロアゾール−1−イル)−1,2−プロパンジオール、及び8−アザ−7−デアザアデニン(ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン)。他の例において、ユニバーサル核酸塩基は、3−メチル−7−プロビニルイソカルボスチリル基、3−メチルイソカルボスチリル基、5−メチルイソカルボスチリル基、イソカルボスチリル基、フェニル基、又はピレニル基とリボース又はデオキシリボースとを組合せることにより、ユニバーサル核酸塩基を形成してもよい。
【0019】
また、本発明は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの合成方法を提供し、該方法は、本発明の特徴を有する二つ以上のオリゴマーブロック(例えば、本発明のオリゴマーブロックライブラリーから選ばれるもの)を選択すること(ここで、該オリゴマーブロック上にある化学反応性部分は、反応して、鋳型なしで該オリゴマーブロック間に共有結合リンカーを形成できるものである)、及び、選択したオリゴマーブロックを適当な条件下で反応させることによって、該オリゴマーブロック上にある化学反応性部分を結合して該オリゴマーブロック間に共有結合リンカーを形成し、それにより、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成することを含む。本発明を実施するのに適当な化学反応性部分には、例えば、カルボキシル基、アルデヒド、ケトン、アミノ基、アミノキシ基、ハロゲン化物、及びスルフヒドリル基がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
A.定義
特に断らないかぎり、ここで用いる技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術における当業者が通常理解するところと同じ意味を有するものである。当業者に明らかなとおり、ここに記載するものに類似の又は等価な方法及び材料が多く存在し、それらは、本発明の実施に利用可能である。勿論、本発明は、決して、説明された方法や材料に限定されるものではない。本発明の目的のため、以下の用語を下記のように定義する。
【0021】
用語「核酸塩基」又は「塩基」は、そのような核酸塩基がポリマー構造に組み込まれるとき、相補的な核酸塩基又は核酸塩基アナログ(すなわち核酸塩基の誘導体)との対合において、ワトソン−クリック型の水素結合を形成することができ、相互作用を積み重ねることができる任意の窒素含有複素環式成分を意味する。「複素環式」は、一つ以上の環原子がヘテロ原子(例えば窒素、酸素又は硫黄(すなわち炭素以外))である環系を有する分子を指す。
【0022】
多数の核酸塩基、核酸塩基アナログ、及び核酸塩基誘導体が知られている。核酸塩基の非限定的な具体例には、プリン類及びピリミジン類並びにその修飾形(例えば7−デアザプリン)がある。典型的な核酸塩基には、天然に存在する核酸塩基、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、及び天然に存在する核酸塩基のアナログ(Seela、米国特許第5446139号)、例えば、7−デアザアデニン、7−デアザグアニン、7−デアザ−8−アザグアニン、7−デアザ−8−アザアデニン、イノシン、ネブラリン、ニトロピロール(Bergstrom,J.Amer.Chem.Soc.,117:1201−1209[1995])、ニトロインドール、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2,6−ジアミノプリン、ヒポキサンチン、プソイドウリジン、プソイドシトシン、プソイドイソシトシン、5−プロピニルシトシン、イソシトシン、イソグアニン(Seela、米国特許第6147199号)、7−デアザグアニン(Seela、米国特許第5990303号)、2−アザプリン(Seela、WO01/16149)、2−チオピリミジン、6−チオグアニン、4−チオチミン、4−チオウラシル、O6−メチルグアニン、N6−メチルアデニン、O4−メチルチミン、5,6−ジヒドロチミン、5,6−ジヒドロウラシル、4−メチルインドール、ピラゾロ[3,4−D]ピリミジン、「PPG」(Meyer、米国特許第6143877号及び第6127121号、Gall、WO01/38584)、及びエテノアデニン(Fasman(1989) in Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology,pp.385−394,CRC Press,Boca Raton,F1)がある。
【0023】
ここで用いる用語「核酸塩基オリゴマー」又は「オリゴマー」は、核酸塩基を含むサブユニットの重合配列物を指す。典型的に、塩基は、「核酸塩基オリゴマー」又は「オリゴマー」においてポリマー骨格構造に結合することができる。オリゴマーは、一本鎖又は二本鎖とすることができ、そして、ある遺伝子配列のセンス鎖もしくはアンチセンス鎖又は任意の他の核酸塩基配列に相補的であり得る。ある核酸塩基オリゴマーは、標的ポリヌクレオチドの相補的部分とハイブリダイズして二重鎖を形成することができる。この二重鎖は、ホモ二重鎖又はヘテロ二重鎖であり得る。ある核酸塩基オリゴマーは、典型的に短く、例えば、限定されることなく、約100核酸塩基未満の長さである。核酸塩基を含むサブユニット間の結合は、任意の種類とすることができる。適当なオリゴマー構造の非限定的な具体例には、オリゴ2’−デオキシリボヌクレオチド(すなわちDNA)及びオリゴリボヌクレオチド(すなわちRNA)、ロックト核酸(LNA)、並びにペプチド核酸(PNA)がある。核酸塩基オリゴマーは、酵素により伸長可能であるもの、又は、酵素により伸長可能でないものとすることができる。
【0024】
ここで用いる用語「核酸」は、ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログから形成される骨格を有する核酸塩基ポリマーである。好ましい核酸には、2’−デオキシリボ核酸及びリボ核酸(すなわちDNA及びRNA)がある。なお、ペプチド核酸(PNA)は、核酸模倣物であり、真の核酸ではない。
【0025】
用語「二重鎖」は、一つ以上の核酸塩基オリゴマーの分子間二本鎖部分又は分子内二本鎖部分を意味し、それは、核酸塩基のワトソン−クリック相互作用、フーグスティーン相互作用、又は他の配列特異的相互作用により、塩基対合しているものである。一態様において、二重鎖は、プライマーと鋳型鎖とからなることができる。もう一つの態様において、二重鎖は、伸長可能でない核酸塩基オリゴマープローブと標的鎖とからなることができる。「ハイブリッド」は、塩基特異的相互作用(すなわちワトソン−クリック型又はフーグスティーン型の相互作用)により相互に作用する核酸塩基オリゴマーの二重鎖、三重鎖、又はその他の塩基対合した複合体を意味する。
【0026】
ここで用いる用語「配列特異性」又は「配列特異的」は、二つ以上の重合核酸塩基配列が相補的塩基対合に起因する水素結合相互作用によりハイブリダイズする能力を意味する。標準的な塩基対合の非限定的な具体例には、アデニンのチミンとの塩基対合、あるいは、ウラシル及びグアニンのシトシンとの塩基対合がある。塩基対合モチーフの他の非限定的な具体例には、5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、2−チオウラシル、又は2−チオチミンのいずれかとアデニンとの塩基対合、5−メチルシトシン又はプソイドイソシトシンのいずれかとグアニンとの塩基対合、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)又はN9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)のいずれかとシトシンとの塩基対合、並びに、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)又はN9−(2,6−ジアミノプリン)のいずれかとチミン又はウラシルとの塩基対合があるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
「ヌクレオシド」は、天然に存在するβアノマー配置又はαアノマー配置にある糖(例えばリボース、アラビノース、キシロース、及びピラノース)の1’−炭素原子に結合した核酸塩基からなる化合物を指す。糖は、置換又は非置換のものとすることができる。置換リボースには、一つ以上の炭素原子(例えば2’−炭素原子)が一つ以上の同じ又は異なるCl、F、−R、−OR、−NR2、もしくはハロゲン基(ここで各Rは、それぞれ独立してH、C1〜C6アルキル基又はC5〜C14アリール基である)の置換基を有するリボースがあるが、これらに限定されるものではない。リボースの具体例には、リボース、2’−デオキシリボース、2’,3’−ジデオキシリボース、2’−ハロリボース、2’−フルオロリボース、2’−クロロリボース、及び2’−アルキルリボース、例えば、2’−O−メチル、4’−α−アノマーヌクレオチド、1’−α−アノマーヌクレオチド(Asseline et al.,Nucl.Acids Res.,19:4067−74[1991])、2’−4’−及び3’−4’−結合、並びに他の「ロックト」又は「LNA」、二環式糖修飾物(WO98/22489、WO98/39352、WO99/14226)がある。ポリヌクレオチド内の具体的なLNA糖アナログには、以下に示す構造のものがある。
【0028】
【化3】
式中、Bは任意の核酸塩基とすることができる。
【0029】
糖は、2’位又は3’位で修飾(例えばメトキシ、エトキシ、アリルオキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、メトキシエチル、アルコキシ、フェノキシ、アジド、アミノ、アルキルアミノ、フルオロ、クロロ、及びブロモ)を有することができる。ヌクレオシド及びヌクレオチドには、天然に存在するD立体配置異性体(D形)のほか、L立体配置異性体(L形)がある(Beigelman,米国特許第6251666号、Chu,米国特許第5753789号、Shudo,EP0540742、Garbesi et al.,Nucl.Acids Res.,21:4159−4165(1993)、Fujimori,J.Amer.Chem.Soc.,112:7435(1990)、Urata,(1993)Nucleic Acids Symposium Ser.No.29:69−70)。核酸塩基がプリン(例えばA又はG)である場合、リボース糖は核酸塩基のN9位に結合される。核酸塩基がピリミジン(例えばC、T又はU)である場合、ペントース糖は核酸塩基のN1位に結合される。
【0030】
「ヌクレオチド」は、モノマー単位として、あるいは、ポリヌクレオチド重合体内において、ヌクレオシドのリン酸エステルを指す。「ヌクレオチド5’−三リン酸」は、5’位で三リン酸エステル基を有するヌクレオチドを指し、「NTP」で表すことがあり、あるいは、リボース糖の構造の特徴を特に示すため、「dNTP」及び「ddNTP」で表すことがある。三リン酸エステル基は、種々の酸素に対して硫黄置換を含んでもよい(例えばα−チオ−ヌクレオチド5’−三リン酸)。ポリヌクレオチド及び核酸の化学の検討については、Shabarova,Z.and Bogdanov,A.Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,VCH,New York,1994を参照されたい。
【0031】
ここで用いる用語「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」は、お互い交換可能に用いられ、ヌクレオチドモノマーの一本鎖重合体及び二本鎖重合体を意味する。それらは、インターヌクレオチドホスホジエステル結合(例えば3’−5’及び2’−5’)、逆方向結合(例えば3’−3’及び5’−5’)、枝分かれ構造、又はインターヌクレオチドアナログにより結合された2’−デオキシリボヌクレオチド(DNA)及びリボヌクレオチド(RNA)を含む。「ポリヌクレオチド配列」は、該重合体に沿ったヌクレオチドモノマーの配列を指す。また、ポリヌクレオチドは、付随する対イオン、例えばH+、NH4+、トリアルキルアンモニウム、Mg2+、Na+などを有する。
【0032】
3’−5’ホスホジエステル結合によって形成されるポリヌクレオチドは、5’末端及び3’末端を有すると言われる。というのも、ポリヌクレオチドを作るよう反応するモノヌクレオチドは、一つのモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸がその隣りの3’酸素(すなわちヒドロキシル)に結合するよう、ホスホジエステル結合を介して一方向につなぎ合わされるからである。従って、ポリヌクレオチド分子の5’末端は、ヌクレオチドペントース環の5’位において遊離のリン酸基又はヒドロキシル基を有する一方、ポリヌクレオチド分子の3’末端は、ペントース環の3’位において遊離のリン酸基又はヒドロキシル基を有する。ポリヌクレオチド分子内で、他の位置又は配列に対して5’の方向にある位置又は配列は、「上流」に位置すると言われる一方、他の位置に対して3’にある位置は、「下流」であると言われる。この用語は、ポリメラーゼが、鋳型鎖に沿って5’から3’の方向に進み、ポリヌクレオチド鎖を伸長することを反映している。
【0033】
ポリヌクレオチドは、全体がデオキシリボヌクレオチドからなってもよいし、全体がリボヌクレオチドからなってもよいし、あるいは、それらのキメラ混合物からなってもよい。ポリヌクレオチドは、インターヌクレオチド、核酸塩基及び糖アナログからなってもよい。特に断らないかぎり、ポリヌクレオチド配列が示されるときは必ず、当然のことながら、ヌクレオチドは、左から右に5’から3’の方向であり、「A」はデオキシアデノシンを表し、「C」はデオキシシチジンを表し、「G」はデオキシグアノシンを表し、「T」はチミジンを表す。
【0034】
「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド配列のある特定の長さに限定されるものではなく、用語「ポリヌクレオチド」は、任意の長さのヌクレオチドの重合形態を包含する。サイズが約5〜約40の単量体単位の範囲にあるポリヌクレオチドは、典型的に当該技術においてオリゴヌクレオチドと呼ばれる。長さが数千以上の単量体ヌクレオチド単位であるポリヌクレオチドは、典型的に核酸と呼ばれる。ポリヌクレオチドは、線状、枝分かれした線状、又は環状の分子であり得る。
【0035】
同様に、用語「核酸塩基オリゴマー」又は「ポリ核酸塩基」は、共有結合した単量体核酸塩基サブユニットの重合体を表す。この用語は、核酸塩基重合体をある特定の長さに限定するものではなく、任意の長さの重合形態を包含する。
【0036】
ここで用いる用語「相補的」又は「相補性」は、ワトソン/クリック及びフーグスティーン型の塩基対合則に従う核酸塩基の逆平行鎖(すなわち核酸塩基の配列)について用いる。例えば、配列5’−AGTTC−3’(配列番号2)は、配列5’−GAACT−3’(配列番号3)に相補的である。
【0037】
ここで用いる用語「アンチセンス」は、任意のポリヌクレオチド又はその他の核酸塩基オリゴマーであって、他の核酸塩基オリゴマーに逆平行でありかつ相補的であるものを指す。用語「相補的」は、「アンチセンス」と相互に交換可能に用いられる場合がある。本発明は、任意の方法によって調製されるアンチセンスDNA、RNA又はその他の任意の核酸塩基オリゴマーを包含する。
【0038】
ここで用いる用語「Tm」は「融解温度」について用いられる。融解温度は、ホモ二重鎖又はヘテロ二重鎖にある一群の二本鎖ポリヌクレオチド分子又は核酸塩基オリゴマーの半分が解離して一本鎖になる温度である。二本鎖核酸塩基オリゴマー分子のTmは、塩基の種類、塩基配列、オリゴマー結合の構造、及び天然に存在しない配列中の特徴の存在(例えば化学合成による結合)に左右される。Tmを算出又は実験により決定する方法は当該技術において知られている。例えば、Breslauer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3746−3750(1986)、Baldino et al.Methods in Enzymol.168:761−777(1989)及びBreslauer Methods in Enzymol.259:221−242(1995)を参照。
【0039】
用語「インターヌクレオチドアナログ」は、ポリヌクレオチドのリン酸エステルアナログ又は非リン酸アナログを意味する。リン酸エステルアナログの具体例には、限定されることなく、アルキルホスホネート(例えばC1〜C4アルキルホスホネート)、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデート、及びボロノホスフェート(boronophosphate)、C1〜C6アルキル−ホスホトリエステルがあり、付随する対イオンを含むことができる。
【0040】
非リン酸のインターヌクレオチドアナログには、ペプチド核酸(一般にPNAと呼ばれる)の群があり、そこにおいて、DNA又はRNAの糖/リン酸骨格は、非環式でアキラルな天然に存在するポリアミド結合で置換される。PNAは、天然に存在しない分子であり、知られているかぎり、ポリメラーゼ酵素、ペプチダーゼ又はヌクレアーゼに対する基質とならない。PNAはポリアミドであるため、C末端(カルボキシル末端)及びN末端(アミノ末端)を有する。PNAオリゴマーのN末端は、等価なDNA又はRNAオリゴヌクレオチドの5’−リン酸の等価物であり、C末端は3’−ヒドロキシル末端に等価である。ここで用いる用語「PNA」は、当該技術において知られている関連構造物、特に他のペプチド系核酸模倣物(例えばWO96/04000参照)をも含むことを意図する。
【0041】
ここで用いる用語「置換」は、一つ以上の水素原子が一つ以上の水素でない原子、官能基、又は部分で置換された分子を指していう。例えば、非置換窒素は−NH2である一方、−NHCH3は置換窒素である。具体的な置換基には、ハロ(例えばフッ素及び塩素)、C1〜C8アルキル基、硫酸基、スルホン酸基、スルホン基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、ニトリル基、ニトロ基、アルコキシ基(−OR(ここでRはC1〜C12アルキル基))、フェノキシ基、芳香族基、フェニル基、多環式芳香族基、複素環基、水可溶化基、及び結合部分があるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
「アルキル」は、飽和もしくは不飽和で、直鎖、枝分れ鎖、環式の、あるいは置換されている炭化水素基であって、元になるアルカン、アルケン、又はアルキンの一つの炭素原子から一つの水素原子を除くことにより得られる基を意味する。典型的なアルキル基は、1〜12の飽和及び/又は不飽和の炭素からなり、メチル、エチル、シアノエチル、イソプロピル、ブチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
「アルキルジイル」は、飽和もしくは不飽和で、枝分れ鎖、直鎖、環式の、あるいは置換されている、1〜12の炭素原子を有する炭化水素基であって、元のアルカン、アルケン又はアルキンの同じ又は二つの異なる炭素原子から二つの水素原子を除くことにより得られる二つの一価のラジカル中心を有する炭化水素基を意味する。典型的なアルキルジイル基には、1,2−エチルジイル(−CH2CH2−)、1,3−プロピルジイル(−CH2CH2CH2−)、1,4−ブチルジイル(−CH2CH2CH2CH2−)などがあるがこれらに限定されるものではない。「アルコキシジイル」は、酸素から水素原子を除くことにより得られる二つの一価のラジカル中心と、炭素原子から水素原子を除くことにより得られるもう一つのラジカルを有するアルコシキル基を意味する。典型的なアルコキシジイル基には、メトキシジイル(−OCH2−)及び1,2−エトキシジイル又はエチレンオキシ(−OCH2CH2−)があるが、これらに限定されるものではない。「アルキルアミノジイル」は、窒素から水素原子を除くことにより得られる二つの一価のラジカル中心と、炭素原子から水素原子を除くことにより得られるもう一つのラジカルを有するアルキルアミノ基を意味する。典型的なアルキルアミノジイルには、−NHCH2−、−NHCH2CH2−、及び−NHCH2CH2CH2−があるが、これらに限定されるものではない。「アルキルアミドジイル」は、窒素から水素原子を除くことにより得られる二つの一価のラジカル中心と、炭素原子から水素原子を除くことにより得られるもう一つのラジカルを有するアルキルアミド基を意味する。典型的なアルキルアミドジイル基には、−NHC(O)CH2−、−NHC(O)CH2CH2−、及び−NHC(O)CH2CH2CH2−があるがこれらに限定されるものではない。
【0044】
「アリール」は、元の芳香環系の一つの炭素原子から一つの水素原子を除いて得られる5〜14の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を意味する。典型的なアリール基には、ベンゼン、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどに由来する基があるが、それらに限定されるものではなく、また、置換アリール基を含む。
【0045】
「アリールジイル」は、共役共鳴電子系を有し、かつ元のアリール化合物の二つの異なる炭素原子から二つの水素原子を除くことにより得られる少なくとも二つの一価のラジカル中心を有する5〜14炭素原子の不飽和環式又は不飽和多環式炭化水素基を意味し、置換アリールジイル基を含む。
【0046】
「置換アルキル」、「置換アルキルジイル」、「置換アリール」、及び「置換アリールジイル」は、それぞれ、アルキル、アルキルジイル、アリール、及びアリールジイルであって、一つ以上の水素原子がそれぞれ独立して他の置換基で置換されているものを意味する。典型的な置換基には、F、Cl、Br、I、R、OH、−OR、−SR、SH、NH2、NHR、NR2、−+NR3、−N=NR2、−CX3、−CN、−OCN、−SCN、−NCO、−NCS、−NO、−NO2、−N2+、−N3、−NHC(O)R、−C(O)R、−C(O)NR2、−S(O)2O−、−S(O)2R、−OS(O)2OR、−S(O)2NR、−S(O)R、−OP(O)(OR)2、−P(O)(OR)2、−P(O)(O−)2、−P(O)(OH)2、−C(O)R、−C(O)X、−C(S)R、−C(O)OR、−CO2−、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−C(NR)NR2(ここで各Rはそれぞれ独立して−H、C1〜C6アルキル基、C5〜C14アリール基、複素環、又は連結基である)があるが、これらに限定されるものではない。さらに、置換基には、二価の基、橋架け官能基、例えばジアゾ(−N=N−)基、エステル基、エーテル基、ケトン基、リン酸基、アルキルジイル基、及びアリールジイル基がある。
【0047】
ここで用いる用語「酵素により伸長可能」は、核酸塩基オリゴマーに該当する場合、ポリメラーゼ酵素によりポリヌクレオチド鋳型に相補的なヌクレオチドが組込まれる(すなわち伸長する)ための酵素基質として働くことができる核酸塩基オリゴマーを指す。酵素により伸長可能な核酸塩基オリゴマーは、ポリメラーゼの「プライマー」として働くことができ、プライマー伸長を支える。酵素により伸長可能な核酸塩基オリゴマーの具体例には、2−デオキシリボースポリヌクレオチド(DNA)及びリボースポリヌクレオチド(RNA)からなるオリゴマーがあり、ここで、該オリゴマーは、遊離のリボース糖の3’ヒドロキシル基を有する。
【0048】
ここで用いる用語「酵素により伸長可能でない」は、核酸塩基オリゴマーに該当する場合、ポリメラーゼ酵素によりポリヌクレオチド鋳型に相補的なヌクレオチドが組込まれる(すなわち伸長する)ための酵素基質として働くことができない核酸塩基オリゴマーを指す。酵素により伸長可能でない核酸塩基オリゴマーは、ポリメラーゼの「プライマー」として働くことができず、プライマー伸長を開始させることができない。酵素により伸長可能でない核酸塩基オリゴマー構造の多くの具体例が当該技術において知られている。そのような構造には、例えば、任意のポリヌクレオチドであって、(i)3’末端ヌクレオチドにおけるリボース糖の3’位にヒドロキシル基がないもの、(ii)3’末端ヌクレオチドにおいて又はその近くにおいて糖、核酸塩基、又はインターヌクレオチド結合に対し、ポリメラーゼ活性を妨げる修飾(例えば2’−O−メチル−リボヌクレオチド)を有するもの、あるいは(iii)そのオリゴマー構造においてリボース糖ホスホジエステル骨格を用いない核酸塩基オリゴマーがある。後者の具体例には、ペプチド核酸、いわゆるPNA類があるが、これに限定されるものではない。ここで用いる用語「伸長可能でないオリゴマー」及び「遮断オリゴマー(ブロッキングオリゴマー)」は、互いに交換可能に使用される。
【0049】
伸長可能でない核酸塩基オリゴマーは、「ターミネーターヌクレオチド」により形成することができる。ターミネーターヌクレオチドは、ポリメラーゼ酵素の作用によりポリヌクレオチドの3’末端に酵素的に組込むことができる一方、さらに伸長させることができないヌクレオチドである。従って、ターミネーターヌクレオチドは、酵素により組込み可能であるが、酵素により伸長可能ではない。ターミネーターヌクレオチドの具体例には、2,3−ジデオキシリボヌクレオチド(ddNTP)、2’−デオキシ,3’−フルオロヌクレオチド5’−三リン酸、及びそれらの標識された形態がある。
【0050】
ここで用いる用語「標的」、「標的ポリヌクレオチド」、「標的核酸塩基配列」、「標的配列」などは、相補的な核酸塩基ポリマー(例えばオリゴマー)とのハイブリッド形成の対象である特定のポリ核酸塩基配列を指す。標的配列の性質は、限定されるものではなく、例えば、DNA、RNA、その置換変形体及びアナログ、又はそれらの組合せからなる任意の配列の任意の核酸塩基ポリマーとすることができる。標的は、一本鎖又は二本鎖とすることができる。プライマー伸長プロセスにおいて、プライマーとハイブリッド形成して二重鎖を形成する標的ポリヌクレオチドは、「鋳型」とも呼ぶことができる。鋳型は、相補的ポリヌクレオチドを合成するためのパターン(型)として働く。本発明に用いる標的配列は、任意の生きている又はかつて生きていた生物体(例えば、原核生物、真核生物、植物、動物、及びウイルスがあるがこれらに限定されない)に由来するものであり得るほか、天然に存在しない合成の及び/又は組換えの標的配列とすることができる。
【0051】
ここで用いる用語「プローブ」は、標的ポリヌクレオチド配列との相補的塩基対合により二重鎖構造を形成できる核酸塩基オリゴマーを指し、さらにそこにおいて、形成される二重鎖は、検出され、可視化され、測定され、かつ/又は定量される。ある態様において、プローブは、固体支持体、例えば、カラム、チップ、又は他のアレイ構成物に固定される。
【0052】
ここで用いる用語「プライマー」は、標的配列の相補的部分とハイブリダイズしかつヌクレオチドの酵素による重合を開始できる(すなわちプライマー伸長を受けることができる)特定の配列の核酸塩基オリゴマーを指す。機能的定義によれば、プライマーは酵素により伸長可能である。
【0053】
用語「プライマー伸長」は、標的にアニールされる伸長可能なプライマーを、鋳型依存性ポリメラーゼを用いて5’→3’の方向に伸ばすプロセスを意味する。この伸長反応は、適当な緩衝液、塩、pH、温度、及びヌクレオチド三リン酸(そのアナログ及び誘導体を含む)、並びに鋳型依存性ポリメラーゼを用いる。プライマー伸長反応に適当な条件は、当該技術においてよく知られている。鋳型依存性ポリメラーゼは、アニールされたプライマーの3’末端から出発して鋳型鎖に相補的なヌクレオチドを組み込んで相補鎖を生成させる。
【0054】
用語「アニーリング」及び「ハイブリッド形成(ハイブリダイゼーション)」は、互いに交換可能に用いられ、一つのポリ核酸塩基ともう一つのポリ核酸塩基との塩基対合相互作用を意味し、それは、二重鎖又はその他の高次構造の形成をもたらす。その主たる相互作用は、ワトソン/クリック及びフーグスティーン型の水素結合により、塩基特異的(すなわちA/T及びG/C)である。
【0055】
用語「固体支持体」は、任意の固相材料を指し、その上で、オリゴヌクレオチドは、合成され、結合され、又は固定化される。固体支持体は、「樹脂」、「固相」及び「支持体」のような用語を包含する。固体支持体は、有機ポリマー、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、及びポリアクリルアミド、さらには、共重合体及びそのグラフト重合体からなることができる。また、固体支持体は、無機物であってもよく、例えば、ガラス、シリカ、細孔性ガラス(controlled−pore−glass)(CPG)、又は逆相シリカとすることができる。固体支持体は、シリカ、有機ポリマー、オリゴ糖、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、寒天、アガロース、セファロース(SEPHAROSE(登録商標))、セファデックス(SEPHADEX(登録商標))、セファクリル(SEPHACRYL(登録商標))、セルロース、デンプン、ナイロン、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、及びマイクロタイタープレートのような材料を含むことができる。
【0056】
固体支持体の構成は、ビーズ、球体、粒子、顆粒、ゲル、又は面の形態とすることができる。面は、平面、ほぼ平面、又は非平面とすることができる。固体支持体は、多孔性又は非多孔性とすることができ、膨潤性又は非膨潤性の特性を有しても良い。固体支持体は、ウェル、くぼみ、もしくは他の収容体、容器、機能、又は領域の形態で構成することができる。複数の固体支持体は、種々の部位でアレイの構成をとることができ、それは、自動装置による試薬の配達のためアドレス可能に構成することができ、あるいは、レーザー照射及び共焦点又は偏向の集光による走査を含む検出手段によりアドレス可能に構成することができる。
【0057】
ここで用いる「支持体結合」は、固体支持体上に又はそれに固定化されることを意味する。明らかなように、固定化は、任意の手段によって起こり得、例えば、共有結合によって、静電固定化によって、リガンド/リガンド相互作用を介する結合によって、接触によって、又は表面への付着によって起こり得る。
【0058】
ここで用いる用語「アレイ」又は「マイクロアレイ」は、固体支持体上に及び/又は容器の配置において存在するハイブリッド形成可能な要素(例えばポリヌクレオチド)の所定の空間的配置を示す。所定のアレイ構成物は、「チップ」又は「バイオチップ」と呼ばれる(M.Schena,Ed.Microarray Biochip Technology,BioTechnique Books,Eaton Publishing,Natick,MA[2000])。任意のアレイは、低密度数のアドレス可能な部位(例えば2〜約12)、中密度数(例えば百以上)の部位、又は高密度数(千以上)の部位を有することができる。典型的に、アレイ構成物は、幾何学的に規則的な形状であり、それは、製造、取り扱い、設置、積み上げ、試薬の導入、検出、及び保存を容易にする。アレイは、各部位の間隔が規則的な行列の様式に構成することができる。一方、均等な処理又はサンプリングのため、複数の部位をまとめたり、合わせたり、あるいは均一にまぜたりしてもよい。アレイは、複数のアドレス可能な部位を有することができ、その各部位は、処理能力の高い試薬の取扱い、自動配達、マスキング、又はサンプリングに対して空間的にアドレス可能なように構成される。また、アレイは、ある特定の手段(例えば、レーザー照射による走査、共焦点もしくは偏向による集光、及び化学発光があるがこれらに限定されない)による検出又は定量を容易にするよう構成することができる。その最も広い意味において、ここに記載する「アレイ」構成物には、複数のアレイ(すなわち多数のチップのアレイ)、マイクロチップ、マイクロアレイ、単一のチップ上に組立てられたマイクロアレイ、又は任意の他の類似構成物があるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
ここで用いる用語「動作可能な組合せで」、「動作可能な順序で」、「動作可能に結合され」、「動作可能に連結され」及び類似の用語は、分子同士の機能的な接触(例えば酵素と酵素基質との機能的な接触)を指していう。例えば、転写において、DNA鎖とRNAポリメラーゼとの接触は、分子の動作可能な組合せを形成し、そして、分子同士の動作可能な結合をもたらす。
【0060】
ここで用いる用語「遺伝子発現」は、染色体のゲノムヌクレオチド配列にコードされた遺伝子情報が、遺伝子の「転写」(すなわちRNAポリメラーゼの酵素作用によるもの)を通じてRNA(例えばmRNA、rRNA、tRNA又はsnRNA)に変換されるプロセスを指す。
【0061】
ここで用いる用語「試料(サンプル)」は、その最も広い意味で用いられる。「試料」は、典型的に、しかし非限定的に、生物起源のものであり、動物や植物(例えば任意の体液又は組織)、培養された細胞もしくは組織、微生物(原核生物又は真核生物)の培養物、生きた(又はかつて生きていた)培養物もしくは細胞から生産される任意の画分もしくは産物から得られる任意の種類の材料、又は合成により製造されたもしくはインビトロの試料を指すことができる。試料は、未精製でも、精製されたものでもよい。精製された試料は、主に、一つの成分、例えば全細胞RNA、全細胞mRNA、cDNA、又はcRNAを含むことができる。ある態様において、試料は、生体でない起源からの材料、例えば合成により製造される核酸塩基ポリマー(例えばオリゴマー)を含み得る。
【0062】
ここで用いる用語「インビトロ」は、人工的な環境を指し、そして、人工的な環境内で起こるプロセス又は反応を指す。用語「インビボ」は、自然環境(例えば動物内あるいは細胞内)を指し、そして、自然環境内で起こるプロセス又は反応を指す。
【0063】
ここで用いる用語「DNA依存性DNAポリメラーゼ」は、相補的で逆平行のDNA鎖を合成するため鋳型としてデオキシリボ核酸(DNA)を用いるDNAポリメラーゼを指す。
【0064】
ここで用いる用語「DNA依存性RNAポリメラーゼ」は、RNA鎖を合成するため鋳型としてデオキシリボ核酸(DNA)を用いるRNAポリメラーゼを指す。DNA依存性RNAポリメラーゼが媒介するプロセスは、一般に「転写」と呼ばれる。二本鎖DNA分子のいずれかの鎖を、RNA合成の鋳型として用いることができ、それは、DNA分子に動作可能に結合されるRNAポリメラーゼプロモーターの配列及び配向に依存する。
【0065】
ここで用いる用語「RNA依存性DNAポリメラーゼ」は、相補的で逆平行のDNA鎖を合成するため鋳型としてリボ核酸(RNA)を用いるDNAポリメラーゼを指す。RNA分子のDNA複製物を生成させるプロセスを一般に「逆転写」と呼び、それを達成する酵素は「逆転写酵素」である。ある場合、逆転写酵素活性を示す酵素は、別の活性(例えば、ヌクレアーゼ活性(例えばRNアーゼHリボヌクレアーゼ活性)及びDNA依存性DNAポリメラーゼ活性があるがこれに限定されない)も示すことがある。
【0066】
ここで用いる用語「増幅」は、一般に、ある分子の量の増加をもたらす任意のプロセスを指す。それがポリ核酸塩基分子に該当するとき、増幅は、出発物質の一つもしくは数個の複製物又は少量から、ポリ核酸塩基分子又はその一部の多数の複製物が生産されることを意味する。例えば、ポリヌクレオチドの増幅は、種々の化学的プロセス及び酵素的プロセスを包含することができる。一個又は数個の複製物の鋳型DNA分子から多数のDNA複製物をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において生成させることは、増幅の一形態である。増幅は、出発分子の完全な(厳密な)複製に限定されない。例えば、単一のDNA分子から多数のRNA分子を転写のプロセス(例えばインビトロ転写)において生成させることは、増幅の一形態である。
【0067】
ここで用いる用語「ポリメラーゼ連鎖反応」(PCR)は、試料中の標的ポリヌクレオチドのセグメントを増幅させる良く知られた方法であり、そこにおいて、該試料は、単一のポリヌクレオチド種又は複数のポリヌクレオチドとすることができる。一般に、PCR法は、モル過剰の二つ以上の伸長可能なオリゴヌクレオチドプライマーを一つ以上の必要な標的配列を含む反応混合物に導入することからなり、そこにおいて、該プライマーは、二本鎖標的配列の対向する鎖に相補的である。反応混合物は、DNAポリメラーゼの存在下、熱サイクルの厳密なプログラムに供され、その結果、DNAプライマーに隣接する必要な標的配列が増幅される。逆転写酵素PCR(RT−PCR)は、RNA鋳型と逆転写酵素を用い、DNA依存性DNAポリメラーゼプライマー伸長による複製サイクルの前に、まずDNA鋳型分子を生成させるPCR反応である。多重PCRは、典型的に二つより多いプライマーを一つの反応に含めることにより、一つの反応で一つより多い増幅産物を生産するPCR反応を指す。多種多様のPCR応用法が当該技術において広く知られており、多くの出典、例えばAusubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,Section 15,John Wiley&Sons,Inc.,New York(1994)に記載されている。
【0068】
ここで用いる用語「ポリメラーゼ伸長」は、任意のポリメラーゼ酵素によるポリヌクレオチドの鋳型依存性重合を指す。本発明をある特定のポリメラーゼの使用に限定することは意図していない。ポリメラーゼは、RNA依存性DNAポリメラーゼ(すなわち逆転写酵素、例えばモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素)、DNA依存性RNAポリメラーゼ(例えばT7ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ)、又はDNA依存性DNAポリメラーゼ(例えばTaqDNAポリメラーゼ、BstDNAポリメラーゼ、クレノウフラグメント、SEQUENASE(商標))とすることができる。ポリメラーゼは、熱安定性であってもよいしそうでなくともよく、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有しても有しなくてもよい。ポリメラーゼ伸長は、重合開始にプライマーを必要とするポリメラーゼ活性に限定されない。例えば、T7RNAポリメラーゼは、ポリメラーゼの開始及び伸長にプライマーの存在を必要としない。
【0069】
ここで用いる用語「組合せ核酸塩基オリゴマー(コンビナトリアル核酸塩基オリゴマー)」は、二つ以上の予め合成されたオリゴマーブロックから合成される核酸塩基のオリゴマーであり、そこにおいて、該オリゴマーブロックはリンカーにより共有結合される。
【0070】
ここで用いる用語「部分」は、あるより大きな構造の一部であるか、又は、より大きな構造の一部になる構造を指す。例えば「標識部分(ラベル部分)」は、それが付いた分子を識別するよう働く原子又は基(例えば蛍光レポーター色素(例えばフルオレセイン、ローダミン、又はベンゾフェノキサジン))を指し、また、「リンカー部分」は、二つの他の化学構造を連結するよう働くことができる化学構造(例えば、アミノ酸、アミノアルキルカルボン酸、アルキル二酸、アルキルオキシ二酸、又はアルキルジアミン)を指す。
【0071】
(B.発明の具体的態様の説明)
本発明は、「絶縁された組合せ核酸塩基オリゴマー(絶縁組合せ核酸塩基オリゴマー)」又は同義のものとして「絶縁性組合せオリゴマー」を提供し、それは、オリゴマーのブロック又はリンカーを用いることなく合成した同じ塩基配列のオリゴマーに比べてオリゴマーブロックを用いて合成した組合せオリゴマーはTmペナルティーによって生じた技術的障害を克服するためのものである。オリゴマーブロックを用いて合成した組合せオリゴマーのTmペナルティーを克服するための以前の試みには、より多くのオリゴマー単位を組み込むことがあった(例えば、中心にgly−gly結合を有する10mer(10単量体単位)のオリゴマーは、gly−gly結合のない8merのものとほぼ同じTmを有する)。しかし、そのような以前の方法は、必要以上により複雑かつ高価である。本発明は、そのような複雑かつ高価な従来の方法に対して改善をもたらす。
【0072】
新規な絶縁組合せ核酸塩基オリゴマーは、共有結合リンカーにより共有結合される二つ以上のオリゴマーブロックを含み、さらにそこにおいて、該絶縁組合せ核酸塩基オリゴマーは、少なくとも一つのユニバーサル核酸塩基の部位を有する。ユニバーサル核酸塩基U又はユニバーサル核酸塩基の配列は、スペーサー領域をもたらすことができ、それは、オリゴマーブロックの塩基対合セグメント(すなわち特異性決定核酸塩基Xを含むセグメント)を、付加結合から「絶縁」することができる(図1A〜1C及び2A〜2Cに模式的に示すとおり)。ユニバーサル塩基Uは、リンカーに隣接してもよいし、あるいは、一つ以上の特異性決定核酸塩基Xによりリンカーから離されてもよい(図1A〜1C及び2A〜2Cに示すとおり)。本発明の特徴を有する絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、複数のリンカーを含んでもよく、複数のスペーサー領域を含んでもよい(図3A〜3Dに模式的に示すとおり)。リンカー領域は、任意の適当な長さとすることができ、従って、オリゴマーが標的核酸鎖に接するとき、オリゴマー核酸塩基は、連続していてもよいし、分かれていてもよい(図4A及び4Bに模式的に示すとおり)。オリゴマー内のユニバーサル核酸塩基は、オリゴマーの複雑度を増すことなく、ハイブリッド形成の安定性を高める。というのも、ユニバーサル塩基は、標的鎖における任意の他の塩基に塩基対合でき、従って、特定の塩基構造をとらなくともよいからである。
【0073】
本発明の組合せオリゴマーは、製造方法に関係なく、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと呼ばれる。このオリゴマーのハイブリッド形成特性は、二つ以上の成分オリゴマーブロックの合わさった特性と、それらに結合する共有結合リンカーの性質とによってもたらされる。用語「絶縁性」は、この組合せオリゴマーの特徴を示すのに用いられる。というのも、ある態様において、ユニバーサル核酸塩基は、リンカー/付加化学反応によって生じる何らかの破壊的効果から特異性決定核酸塩基を保護する絶縁効果を有するとみなすことができ、それにより、多くの種類のリンカー化学反応に付随するTmペナルティーを最小限にするか解消するとみなすことができるからである。
【0074】
絶縁性組合せオリゴマーは、任意の構造の核酸塩基を含むことができる。そのような核酸塩基には、例えば、ポリヌクレオチド(例えば2’−デオキシリボヌクレオチドのオリゴマー)、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA)、2’−O−アルキルオリゴヌクレオチド、3’修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド、N3’−P5’ホスホルアミデート(NP)オリゴマー、MGB−オリゴヌクレオチド(小溝バインダー結合オリゴヌクレオチド)、ホスホロチオエート(PS)オリゴマー、C1〜C4アルキルホスホネートオリゴマー、ホスホルアミデート、β−ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、及びα−ホスホジエステルオリゴヌクレオチドがあるが、これらに限定されるものではない。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、その製造方法に関係なく、また、オリゴマーブロックを連結するのに使用されるリンカー化学に関係なく、そのように呼ばれる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、標識されていてもよいし、されていなくともよい。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、核酸塩基オリゴマーのハイブリッド形成を含む任意の用途において、例えば、プローブ又はプライマーとして用いることができる。
【0075】
本発明の一局面は、より小さなオリゴマーブロックから組合せオリゴマー(すなわち絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー)を合成するための組成物及び方法に関し、そこにおいて、リンカー構造に起因するTmペナルティーは減少しているか又はなくなっている。本発明を用いれば、所定のTm範囲内で組合せオリゴマーを構築することができ、そこにおいて、該オリゴマーは、必要なTmを得るため追加の特定塩基配列を含む必要がない。
【0076】
本発明のさらなる局面は、オリゴマーブロックライブラリーを提供し、そこにおいて、オリゴマーブロックのコレクションが、絶縁性組合せオリゴマーの迅速な合成のため、手元に保持され用意される。オリゴマーブロックライブラリーは、各特異性決定部位に対してA−T−G−C配列(又はRNAオリゴマーについてA−ウラシル−G−C配列)が並べ替えられたオリゴマーブロックを含み、さらに、少なくとも一つの、より典型的には一つより多い、ユニバーサル塩基の部位を、核酸塩基の配列中に有する。例えば、四量体オリゴマーの場合、あるオリゴマーブロックライブラリーは、A−T−G−U、A−T−U−C、A−U−T−G、T−U−G−U、及び一つ以上のユニバーサル塩基Uを有する他の四量体を含むことができる。
【0077】
ある場合、本発明の利点には、本発明の特徴を含まないオリゴヌクレオチドに比べて、より小さなオリゴマーブロックライブラリーを使用できるということ、望ましい配列特異性を有するオリゴマーがより速く生産されること、及びオリゴマー(特にプローブとして使用できるオリゴマー(例えば蛍光オリゴマー))の製造コストが低くなることがある。
【0078】
本発明の特徴を有する絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、一つ又は二つ以上のユニバーサル塩基を含むことができる。例えば、本発明の特徴を有する絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、約1〜約3、又は、約1〜約6、又は、約1〜約10のユニバーサル核酸塩基を含むことができる。本発明の特徴を有する絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、一つ、二つ、又は三つ以上の特異性決定ユニバーサル塩基を含むことができ、好ましくは、三つ以上の特異性決定塩基を含む。例えば、本発明の特徴を有する絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、約3〜約8の特異性決定塩基を含むことができる。
【0079】
絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックの典型的なライブラリーは、複数の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得る。例えば、オリゴマーブロックライブラリーは、3つの異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、5つの異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、10以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、25以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、64以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、100以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、200以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、500以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、1000以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、5000以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、50000以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、65536以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、その他の数の異なるオリゴマーブロックを含むことができる。例えば、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックのライブラリーは、特異性決定核酸塩基の異なる配列を有する少なくとも64の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得る。ある態様において、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックのライブラリーは、それぞれが少なくとも4つの特異性決定核酸塩基を有する複数の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得、そして、ライブラリーは、特異性決定塩基の異なる配列を有する少なくとも256の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得る。他の態様において、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックのライブラリーは、それぞれが少なくとも5つの特異性決定核酸塩基を有する複数の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得、そして、ライブラリーは、特異性決定塩基の異なる配列を有する少なくとも1024の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得る。さらなる態様において、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックのライブラリーは、それぞれが少なくとも6つの特異性決定核酸塩基を有する複数の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得、そして、ライブラリーは、特異性決定塩基の異なる配列を有する少なくとも4096の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得る。
【0080】
本発明のある態様によれば、オリゴマーブロック付加化学作用により生じるTmペナルティーを、少なくとも一つの、典型的には一つより多い、ユニバーサル塩基部位の付加により、打ち消す又は弱めることができる。該ユニバーサル塩基部位は、塩基特異的な相互作用をもたらさず、むしろ、4つの天然に存在する塩基すべてに対して安定化スタッキング相互作用を有する。一態様において、ユニバーサル塩基がリンカーと特異性決定核酸塩基との間に配置される場合、ユニバーサル塩基は、絶縁作用を有するとみなすことができる。しかし、意図するところによれば、ユニバーサル塩基を組合せオリゴマー内の他の位置に(例えば、リンカーから離れた位置に、あるいは、特異性決定塩基同士の間に挿入して)組み込んだ場合も、ユニバーサル塩基を組み込む有利な効果は達成される。
【0081】
意図するところ、任意のユニバーサル塩基が本発明に用いられる。
【0082】
本発明の絶縁性組合せオリゴマーをハイブリッド形成反応に用いるとき、該オリゴマーは、その標的にハイブリダイズし、ユニバーサル塩基は、標的鎖中の対向する任意の塩基と対合する。かくして、組合せオリゴマーは、標的特異性を決定する特異性決定塩基と、ヌクレオチドのスペーシング及びスタッキング相互作用を保持する一方、標的との塩基対合特異性に寄与しないユニバーサル塩基とを含む。絶縁性ユニバーサルスペーサー塩基の数は、絶縁性組合せオリゴマーの形成に用いる結合化学部位の種類に応じて変えることができる。オリゴマーにおける特異的塩基の数は、組合せオリゴマーを作るのに用いるオリゴマーブロックライブラリーの情報内容を決定する。
【0083】
一局面において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの特異性決定塩基は、連続した標的配列に結合する。他の局面において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの特異性決定塩基は、不連続の(すなわちギャップのある)標的配列に結合する。いずれの場合でも、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの複雑度は同じである。特異性決定塩基のブロックが標的分子中の不連続な配列と相互作用することは、絶縁性組合せオリゴマーによる情報の複雑度を変えない。
【0084】
意図するところ、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、標的分子の塩基とともに核酸塩基オリゴマーにおいて付加した塩基同士の間に安定な塩基対合をもたらす任意の重合核酸塩基構造(核酸塩基オリゴマー)を用いて合成することができる。絶縁性組合せオリゴマーは、酵素により伸長可能であるか、酵素により伸長可能でないものとすることができる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、標的配列に特異的にハイブリダイズできる重合構造を得るため、リボヌクレオチド三リン酸、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、修飾ヌクレオチド、又は任意のヌクレオチドアナログから合成できる。絶縁性組合せオリゴマーは、標的配列に特異的にハイブリダイズする能力を保持する重合構造を得るため、塩基を含む天然に存在しない重合体骨格から合成できる。一態様において、例えば、PNA又はLNAの構造を用いて、絶縁性組合せオリゴマーにおける特異性決定塩基とユニバーサル塩基の鎖を形成する。ある特定のオリゴマー構造の使用に本発明を限定することは意図するところではない。
【0085】
PNAオリゴマー核酸塩基構造とPNAオリゴマーブロックライブラリーを用いる場合、4つの特異性決定塩基とユニバーサルスペーサー塩基を用いるオリゴマーブロック(すなわち四量体ライブラリー)は、ユニバーサル塩基を含まない5つの特異性決定塩基を有するライブラリー(すなわち五量体ライブラリー)から生成される組合せオリゴマーと同程度に高いTm値を有する絶縁性組合せオリゴマーを生成させることができる。完全な五量体ライブラリーは(45)すなわち1024のオリゴマーからなる一方、完全な四量体ライブラリーわずか(44)すなわち256のオリゴマーからなるため、製造コストが節減される。5つの特異性決定塩基とユニバーサルスペーサー塩基を用いるオリゴマーブロックのライブラリー(すなわち五量体ライブラリー)は、ユニバーサル塩基を含まない6つあるいは7つの特異性決定塩基を有するライブラリーから生成される組合せオリゴマーと同程度に高いTm値を有する絶縁性組合せオリゴマーを生成させることができ、それに伴い、ユニバーサル塩基を含まないより大きなライブラリーに比べてコストが節減される。同様に、6つ、7つ、8つ、9つ、または10以上の特異性決定塩基とユニバーサルスペーサー塩基を用いるオリゴマーブロックのライブラリーは、ユニバーサル塩基を含まない7つ、8つ、9つ、10、11、12、又は13以上の特異性決定塩基を有するライブラリーから生成される組合せオリゴマーと同程度に高いTm値を有する絶縁性組合せオリゴマーを生成させることができ、それに伴いやはり、ユニバーサル塩基を含まないより大きなライブラリーに比べてコストが顕著に節減される。
【0086】
一態様において、例えば、ブロックオリゴマーにおける可変の特異性決定部位の数が3〜8の場合、完全にそろったブロックオリゴマーの数(核酸塩基としてA、C、G、及びT(又はウラシル))は、それぞれ64、256、1024、4096、16384、65536となる。
【0087】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの配列特異性は、各オリゴマーブロックにおける特異性決定核酸塩基によって決まってくる。本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの標的となり得る相補的配列は、試料における核酸塩基の特定の標的配列にハイブリダイズするよう設計された複数のオリゴマーブロックの合わさった核酸塩基配列である。よって、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのハイブリッド形成性核酸塩基配列は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの少なくとも二つのオリゴマーブロック間に分配されている(必ずしも均等に分配されているとは限らない)。
【0088】
従って、使用されるアッセイの種類について十分考慮して、適当なハイブリッド形成条件下で絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが標的配列と二本鎖複合体を形成するよう、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの長さ及び配列の要件を選ぶことが一般的である。一態様において、標的配列の核酸塩基は連続的である(すなわち標的配列中にギャップがない)。他の態様において、標的配列の核酸塩基は連続的でない(すなわち、標的配列中にギャップがある)。標的の核酸塩基が不連続である場合、ギャップの大きさは、可変であり、一核酸塩基のように小さくすることができ、あるいは、約10核酸塩基のように大きくすることができる。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成するため使用される付加化学部位の種類は、ギャップのある配列を標的とすべきか否か、そして、ギャップをどれだけ大きくすればよいかを律することとなる。意図するところ、大きく、曲がらない、あるいは、さもなくば立体障害性の、化学基又は結合を有する付加化学部位を用いる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ギャップのある標的配列により効率的にハイブリダイズすることができる。
【0089】
最も単純な態様において、例えば、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、二つのオリゴマーブロックの連結反応から形成される。しかし、本発明は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを得るため、二つより多いオリゴマーブロックの連結反応にも対応する。この場合、複数のオリゴマーブロックを順番に付加することができ、あるいは、単一の反応で同時に結合することができる。組合せオリゴマーを形成する方法にかかわらず、二つのみのオリゴマーブロックの共有結合に本発明の絶縁性組合せオリゴマーを限定することは意図するところではない。一態様において、本発明は、例えば、5’末端ブロック及び3’末端オリゴマーブロックに加えて、二つより多いオリゴマーブロックの連結に対応する。
【0090】
上述したような組合せオリゴマーを形成する方法にかかわらず、他の態様において、連結反応の産物は、必要に応じて、さらに長くする/伸ばすことができる。従って、該方法を繰返すことによりさらに長くした/伸ばしたオリゴマーを生産するよう、組合せオリゴマーそれ自体をオリゴマーブロックとして用いることができる。先に形成した絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを、連結反応条件下で、第三のオリゴマーブロック及び必要に応じてさらなる試薬と反応させる。これにより、伸長された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが形成される。このプロセスは、組合せオリゴマーが必要な長さになるまで必要に応じて繰返すことができる。そのような伸長を続けるプロセスは、例えば、アレイの調製に有用であり得る。というのも、より長いオリゴマーがそのような用途にしばしば用いられるからである。
【0091】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロックの合成の後、オリゴマーは、さらなる精製工程に供してもよいし、供さなくともよい。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー自体が精製されたオリゴマーブロックサブユニットから製造されるので、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの生成は、ほぼ純粋な反応生成物をもたらし、そこにおいて、さらなる精製は不必要となり得る。生成物がさらなる精製を必要としない場合、一旦適当なブロックライブラリーを構築すれば、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの合成は、迅速で経済的なものとなり得る。さらに、未反応の成分オリゴマーブロックは、典型的に短すぎて、周囲温度(室温)又はそれより高い温度で安定なハイブリッドを形成しない。そのため、未反応の成分は、一般に、多くの種類の用途において顕著な問題を引起さない。
【0092】
もし本発明のオリゴマー構造物をさらに精製する必要があるならば、重合核酸塩基構造物を精製するための任意の通常のプロトコルを利用することができる。そのようなプロトコルは、当該技術において日常的なものであり、当業者に知られており、また、多数の容易に入手できる出典に記載されている。必要な純度により、もしそうであれば、どのような種類の精製プロトコルを用いるべきか決めることができる。一態様において、精製は、通常の方法、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行う。他の態様において、精製は、任意の形態のアフィニティークロマトグラフィー又はサイズ排除クロマトグラフィーにより行う。他の態様において、精製は、任意の市販の精製キット(固有の試薬を用いる)により行う。
【0093】
一局面において、本発明は、少なくとも二つの成分オリゴマーブロックから絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを合成するための、鋳型に基づかない方法を提供する。通常、該方法は、少なくとも二つのオリゴマーブロック(ここで、該二つのオリゴマーブロックはそれぞれ、適当な化学反応性基を含む)を反応させて、5’オリゴマーブロック及び3’オリゴマーブロックの核酸塩基間の共有結合以外の共有結合リンカーをもたらし、それにより、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成することを含む。核酸塩基の鋳型なしで、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーができる。また、合成のための該方法は、さらなる試薬、例えば一つまたは複数の縮合試薬を含むことができる。該方法は、水溶液中で行ってもよいし、行わなくともよい。オリゴマーブロック上の種々の部分を、連結反応の間、保護基により保護してもよいし、保護しなくともよい。
【0094】
C.ユニバーサル塩基
ここで及び当該技術で用いる用語「ユニバーサル塩基」、「ユニバーサルスペーサー塩基」、「ユニバーサル核酸塩基」、「不活性塩基」、「非識別性塩基」などは、核酸塩基の形態(例えばヌクレオチド又はPNA)で重合構造に組込まれるとき、核酸塩基を有する相補的重合構造上で、塩基を有意に識別(区別)しない塩基を指す。従って、ユニバーサル塩基は、相補的ポリマー上で塩基と塩基対合してもよいが、対向するポリ核酸塩基鎖上の相補的位置にある異なった塩基に対して、有意に異なった態様で塩基対合するものではない。一方、ユニバーサル塩基は、相補的ポリマー上で、任意の塩基と有意な程度に塩基対合しなくともよい。第一のヌクレオチド配列が、少なくとも部分的に相補的な第二のヌクレオチド配列とハイブリダイズする場合、該第一のヌクレオチド配列に含まれるユニバーサル塩基は、Tmペナルティーを減少させるのに有効である。さもなくば、該第一のヌクレオチド配列の部位にミスマッチのヌクレオチドが含まれることにより、Tmペナルティーが生じ得る。一つのユニバーサル塩基は、そのようなミスマッチに係るTmペナルティーを、約1℃、約2℃、約4℃、約6℃、約8℃、約10℃、又はそれ以上、減らすのに有効であり得る。同様に、複数のユニバーサル塩基の群又は組合せは、配列ミスマッチのTmペナルティーを、約2℃、約5℃、約10℃、約15℃、約25℃、約50℃、又はそれ以上、減らすのに有効であり得る。配列ミスマッチのTmペナルティーがそのように減少することは、配列ミスマッチによるエネルギーペナルティーが約1kcal/モル、約2kcal/モル、約5kcal/モル、約15kcal/モル、約25kcal/モル、約50kcal/モル、又はそれ以上減少することによって、ハイブリッド形成の不安定化の量が減らされる結果となり得る。「ユニバーサル核酸塩基」は、ユニバーサル塩基及び骨格構造を含む。
【0095】
一態様において、例えば、好ましいユニバーサル塩基は、オリゴ核酸塩基の二重鎖にある複数の天然塩基に対向するとき、それらの天然塩基のそれぞれに適当に等しく塩基対合することができる。しかし、天然塩基のサブセットと対合できるユニバーサル塩基も、本発明に用いられる。
【0096】
一態様において、例えば、ユニバーサル塩基は、ユニバーサルヌクレオチドを作るため、ペントース糖(例えばリボース)骨格の1’炭素に共有結合させてもよい。この場合、核酸塩基の重合は、ホスホジエステル結合により、DNA又はRNAのいずれかを形成する。他の態様において、ユニバーサル塩基は、ユニバーサルPNAを作るため、2−アミノエチルグリシンポリアミドポリマーへのメチレンカルボニル結合により、N−[2−(アミノエチル)]グリシン骨格のN−α−グリセリン窒素に共有結合させてもよい。
【0097】
一般的に、ユニバーサル塩基は、天然に存在しないものであり、主として、二重鎖DNAに効率的に収まる疎水性分子である(すなわち、その疎水的性質のため、スタッキング相互作用をもたらすことができる)。ユニバーサル塩基は、典型的に、窒素含有芳香族複素環式部分を指し、それは、天然に存在する塩基のそれぞれ又はあるサブセット(一部)と対合する際、安定な逆方向の二重鎖オリゴマーの相互作用に加わることができる。
【0098】
ユニバーサル核酸塩基は、他の核酸塩基に特異的に水素結合してもよいし、しなくてもよい。好ましい一態様において、ユニバーサル核酸塩基は、ある特定の塩基に対して優先的な親和性を有するものではない一方、核酸塩基の逆平行ポリマー上で任意の他の塩基と安定に塩基対合できる能力を有するものである。他の態様において、ユニバーサル核酸塩基は、核酸塩基ポリマー中の隣接する核酸塩基と、あるいは、相補的核酸塩基ポリマー中の核酸塩基と、疎水性の塩基スタッキング相互作用を示してもよいし、示さなくともよい。
従って、ユニバーサル核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的重合体構造上で塩基を有意に区別(識別)しない塩基とすることができ、そして、特異性決定核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的重合体構造上で塩基を区別(識別)できる塩基とすることができる。
【0099】
ユニバーサル塩基のアナログは、当該技術において知られており、それは、ヌクレオシド形、5−ニトロ,1−(β−D−2−デオキシリボフラノシル)インドール(5−ニトロインドールと呼ぶ)(Loakes and Brown,Nucleic Acids Res.22:4039−4043[1994]参照)、及び1−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−3−ニトロピロール(3−ニトロピロールと呼ぶ)(Nichols et al.,Nature 396:492−493[1994]及びBergstrom et al.,J.Am.Chem Soc.117:1201−1209[1995]参照)を含む。さらに、例えば、Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260(5):2605−2608(1995)、Habener et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:1735−1739[1988]、Van Aershot et al.,Nucleic Acids Res.23:4363−4370[1995]、Luo et al.,Nucleic Acids Res.24:3071−3078[1996]、Amosova et al.,Nucleic Acids Res.25:1930−1934[1997]、Berger et al.,Nucleic Acids Res.28:2911−2914[2000]、Seela et al.,Nucleic Acids Res.28:3224−3232[2000]、Loakes,Nucleic Acids Res.29:2437−2447[2000]、Harki et al.,Biochemistry 41:9026−9033[2002]、He et al.,Nucleic Acids Res.30:5485−5496[2002]を参照されたい。ユニバーサル塩基は、ワトソン−クリック型水素結合及び塩基スタッキングをもたらすことができるものであってもよい。ユニバーサル塩基を論じる文献には、さらに、Berger et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.(2000)39:2940−42、Wu et al.,J.Am.Chem.Soc.(2000)122:7621−32、Berger et al.,Nuc.Acids Res.(2000)28:2911−14、Smith et al.,Nucleosides&Nucleotides(1998)17:541−554、及びOgawa et al.,J.Am.Chem.Soc.(2000)122:3274−87がある。
【0100】
種々のユニバーサル塩基が当該技術において知られており、それらには、例えば、アザインドール(7AI)、イソカルボスチリル(ICS)、プロピニルイソカルボスチリル(PICS)、6−メチル−7−アザインドール(M7AI)、イミジゾピリジン(ImPy)、ピロールピリジン(PP)、プロピニル−7−アザインドール(P7AI)、及びアレニル−7−アザインドール(A7AI)があるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
N8−(7−デアザ−8−アザ−アデニン)は、ユニバーサル塩基であり、任意の他の核酸塩基、例えば、次のいずれかと対合する。アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、5−メチルシトシン、プソイドイソシトシン、2−チオウラシル及び2−チオチミン、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)、N9−(2,6−ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)、又はN9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)(例えば、Seela et al.,Nucl.Acids,Res.:28(17):3224−3232(2000)参照)。他のユニバーサル塩基には、5−ニトロインドール、3−ニトロピロール、6−メチル−7−アザインドール、ピロールピリジン、イミジゾピリジン、イソカルボスチリル、プロピニル−7−アザインドール、プロピニルイソカルボスチリル、アレニル−7−アザインドール、8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシグアノシン、8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシシチジン、2’−デオキシウリジン、2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシグアノシン、ピロロ[2,3−d]ピリミジン、3−ニトロピロール、デオキシイノシン(例えば2’−デオキシイノシンン)、7−デアザ−2’−デオキシイノシン、2’−アザ−2’−デオキシイノシン、3’−ニトロアゾール、4’−ニトロインドール、5’−ニトロインドール、6’−ニトロインドール、4−ニトロベンゾイミダゾール、ニトロインダゾール(例えば5’−ニトロインダゾール)、4−アミノベンゾイミダゾール、イミダゾ−4,5−ジカルボキサミド、3’−ニトロイミダゾール、イミダゾール−4−カルボキサミド、3−(4−ニトロアゾール−1−イル)−1,2−プロパンジオール、及び8−アザ−7−デアザアデニン(ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン)がある。他の例において、ユニバーサル核酸塩基は、3−メチル−7−プロピニルイソカルボスチリル基、3−メチルイソカルボスチリル基、5−メチルイソカルボスチリル基、イソカルボスチリル基、フェニル基、又はピレニル基とリボース又はデオキシリボースとを組合せることにより、ユニバーサル核酸塩基を形成してもよい。
【0102】
D.オリゴマーブロック
ここで用いる用語「ブロック」又は「オリゴマーブロック」が表すところは、適当な骨格(主鎖)によって機能的に連結された核酸塩基からなる核酸塩基オリゴマーであって、オリゴマーブロックが少なくとも一つのさらなるオリゴマーブロックと連結でき、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを生成させることができる核酸塩基オリゴマーである。オリゴマーブロックは、(1)オリゴマーブロック中の核酸塩基及び骨格の配向に関して、及び(2)連結の対象となるオリゴマーブロックに関して、5’又は3’の配向を有する。例えば、オリゴマーブロックがその3’末端に結合された化学部分を有する場合、そのオリゴマーブロックは、5’末端に適当な付加化学部分を有するオリゴマーブロックに連結することになる。従って、オリゴマーブロックは、例えば、5’−オリゴマーブロック又は3’−オリゴマーブロックとなり得る。
【0103】
オリゴマーブロックは、一つ以上のレポーター部分で標識されていてもよいし、されていなくともよく、かつ/又は一つ以上の保護された若しくは保護されていない官能基を含んでもよい。二つのオリゴマーブロックを連結する手段は限定的なものではなく、種々の適当な化学作用及び構造が、当業者に知られている。
【0104】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを合成するのに用いるオリゴマーブロックは、最小限三つの部分(これらは特異性決定核酸塩基である)、ユニバーサル核酸塩基、及び該オリゴマーの3’末端又は5’末端のいずれかにある化学反応性部分を含む。ポリマー骨格(主鎖)(すなわち塩基を支える足場として働く構造)をある特定の化学構造に限定することは意図するところではない。実際、多種多様の使用可能な構造が、本発明に用いる当該技術において知られている。
【0105】
一態様において、核酸塩基オリゴマーは、オリゴマーブロックを形成するため、ポリヌクレオチド化学を用い、そこにおいて、ポリヌクレオチドは、天然に存在するリボヌクレオチド及び/又は2’−デオキシリボヌクレオチドからなる。これらの構造は、酵素により伸長可能であり、そして、DNA依存性又はRNA依存性のポリメラーゼによる酵素的DNA又はRNA合成の開始用プライマーとして働くことができる。
【0106】
他の態様において、核酸塩基オリゴマーに使用される核酸塩基は、酵素により伸長可能でないものである。すなわち、そのようなオリゴマーは、DNA依存性又はRNA依存性のポリメラーゼによる酵素的DNA又はRNA合成の開始においてプライマーとして働くことができない種々の修飾されたヌクレオチド塩基、ヌクレオチドアナログ、又は修飾された鎖骨格を含む。多数のそのような構造が当該技術において知られており、種々の出典に記載されている(例えばWO95/08556及びWO99/34014参照)。ある態様の組合せ核酸塩基オリゴマー配列は、相補的な標的分子に配列特異的な態様で結合できる一方、該核酸塩基オリゴマーの伸長可能でない化学構造のために、酵素的DNA又はRNA合成が起こらない。例えば、あるオリゴマーは、ヌクレオチド付加に必要なリボース糖環の3’ヒドロキシル基がないために、酵素により伸長させることができない。
【0107】
酵素により伸長可能でない核酸塩基構造の多数が知られており、そして、本発明に用いられる。本発明の方法をある特定の伸長可能でない核酸塩基構造の使用に限定することは意図するところではない。一般に、本発明に用いる酵素により伸長可能でない核酸塩基構造は、ある特定の有利な特性を示し得、そのような特性には、以下のいずれか又は全てが含まれ得る。(1)所定の塩基配列を有するオリゴマーブロックを容易に合成することができ、かつそれは水溶液に対して何らかの溶解性を有し得る。(2)得られる組合せオリゴマーは、相補的な標的配列に配列特異的な態様で結合することができ、安定なヘテロ二重鎖を形成できる。(3)該ヘテロ二重鎖は、ヌクレアーゼ消化を受けない。
【0108】
酵素により伸長可能でない核酸塩基オリゴマー構造をある特定のものに限定することは本発明の意図するところではない。本発明に用いる酵素により伸長可能でない核酸塩基の具体例には、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA類、WO98/22489、WO98/39352、及びWO99/14226参照)、2’−O−アルキルオリゴヌクレオチド(例えば2’−O−メチル修飾オリゴヌクレオチド、Majlessi et al.,Nucleic Acids Research,26(9):2224−2229[1998]参照)、3’修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド、N3’−P5’ホスホルアミデート(NP)オリゴマー、MGB−オリゴヌクレオチド(小溝バインダー結合オリゴヌクレオチド)、ホスホロチオエート(PS)オリゴマー、C1〜C4アルキルホスホネートオリゴマー(例えばメチルホスホネート(MP)オリゴマー)、ホスホルアミデート、β−ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、及びα−ホスホジエステルオリゴヌクレオチドがあるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
連結のためのオリゴマーブロック末端の修飾に加えて、オリゴマーブロックは、修飾かつ/又は適当に保護することができ、それにより、標識又は表面への結合のための官能基を組み込むことができる。そのような官能基は、以下のような因子に応じて、連結反応工程の前又は後のいずれかで利用することができる。(1)オリゴマー合成化学(例えば過酷な脱保護の条件は標識を破壊し得る)、選択される縮合/連結の化学反応(例えば必要な標識の官能基が、縮合化学反応を妨害し得る)、及び官能基を使用する目的(例えば、それが、標識のためか、固体支持体への結合のためであるか)。
【0110】
特異性決定核酸塩基サブユニットを含む塩基を四つの天然に存在する塩基、すなわちアデニン、チミン、グアニン、及びシトシン(すなわちA、T、G及びC)にそれぞれ限定することは意図するところではない。ある態様において、天然に存在しない塩基を、配列特異的核酸塩基の部位に用いる。以下の天然に存在しない塩基を含む核酸塩基の使用は本発明の意図するところである。5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、5−メチルシトシン、プソイドイソシトシン、2−チオウラシル及び2−チオチミン、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)、N9−(2,6−ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)、並びにN9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)。これらの塩基に対する結合対モチーフは当該技術において知られている。
【0111】
全長の(省略されていない)絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成するよう連結のためオリゴマーブロックを選ぶ場合、二つのブロックは、必ずしも同じ化学構造又は構成である必要はない。従って、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、キメラの構造とすることができ、例えば、そこにおいて、二つのオリゴマーブロックは、異なる化学構造の核酸塩基からなる(例えばDNAとPNA)。例えば米国特許第6316230号及びWO96/40709参照。本発明は、キメラの絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを意図し、そこにおいて、複数のオリゴマーブロックは異なる化学構造を有し、例えば、一つのオリゴマーブロックはペプチド核酸からなることができ、他のオリゴマーブロックはポリヌクレオチドからなることができる。これらのブロックを適当なリンカー化学作用を用いて連結し、キメラの絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成できる。意図するところ、一つのオリゴマーブロック内の核酸塩基サブユニットは、異なる化学構造を有することができる。均一なオリゴマー構造と同様に、本発明のキメラオリゴマーは、酵素により伸長可能でなくともよいし、伸長可能であってもよい。
【0112】
例えば、D−DNAヌクレオチドを有する一つのオリゴマーブロックをL−DNA分子を有する他のオリゴマーブロックに連結すれば、キメラの絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを得ることができ、これは、試料中の標的ヌクレオチド配列の認識に影響を及ぼすことなく、最小限の非特異的結合で、レポーターオリゴマーの標的となることができる。L−DNAはD−DNAとハイブリダイズしないため、例えば、試料中の標的ヌクレオチド配列とD−DNAオリゴマーとのハイブリッド形成を妨げることなく、L−DNAを含む部分は、レポーター部分を有する相補的L−DNAオリゴマーとハイブリダイズすることができる。また、L−DNAとD−DNAとの間に結合親和性がないため、レポーターオリゴマーの非特異的結合は大きく減る。というのも、L−DNAレポーターオリゴマーは、ほとんどの生物学的試料に存在しないL−DNAのみとハイブリダイズするからである。そのようなキメラのD−DNA−L−DNA絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、従って、標的ヌクレオチドの存在下、例えば、キメラのオリゴマーに対して高い特異性を有する標識で容易に標識(ラベル)することができる。
【0113】
一局面において、本発明は、異なる構造を有する複数のオリゴマーブロックの連結により形成される絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを意図する。例えば、一つのオリゴマーブロックにおいて、ユニバーサル核酸塩基は、リンカー化学部位に隣接して配置することができ、一方、他の構造において、ユニバーサル核酸塩基は、リンカー化学部位から離して配置することができ、あるいは、特異性決定核酸塩基の間に挿入することができる。意図するところ、そのような異なる構造を有する複数のオリゴマーブロックは、適当なリンカー化学部位を用いて、互いに連結し、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成できる。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを合成するため、同じ化学構造又は構成を有するオリゴマーブロックを使用することに本発明は限定されるものではない。
【0114】
E.結合化学
ここで用いる用語「リンカー」は、化学部分を意味し、典型的に、少なくとも三つの原子分の長さで、核酸塩基ポリマーの核酸塩基を含む骨格のサブユニットの一部ではなく、二つのオリゴマーブロック間に共有結合をもたらす化学部分を意味する。二つのオリゴマーブロックの連結に先立って、集まって機能的な共有結合リンカーを形成できる複数の原子を、それぞれ独立して3’オリゴマーブロック及び5’オリゴマーブロックに結合させることができ、その場合、完全なリンカーは、3’ブロックと5’ブロックの化学的連結の後に初めて形成される。その長さに応じて、リンカーは、連結されるオリゴマーブロック間の間隔を決めるスペーサーとして機能し得る。
【0115】
ここで用いる用語「連結化学」は、用語「リンカー化学」又は「付加化学」と交換可能に用いられることがあり、そこにおいて、それらの表現は、二つのオリゴマーブロックを連結する機能的リンカーをもたらす化学的な実体及び反応を指す。
二つのオリゴマーブロックの連結に先立って、集まって機能的な共有結合リンカーを形成できる複数の原子を、典型的にそれぞれ独立して、3’オリゴマーブロックと5’オリゴマーブロックの末端に結合する。その場合、完全なリンカーは、3’ブロックと5’ブロックの機能的な化学連結反応の後初めて形成される。リンカーは、スペーサー、ユニバーサル核酸塩基、又は特異性決定核酸塩基とする必要がない。本発明の具体的態様において、リンカーは非塩基であり、すなわちリンカーは、核酸塩基を含まず、かつ、リンカーを画定する原子は、核酸塩基オリゴマーのモノマーサブユニット又はオリゴマーブロックの任意の他の部分(例えばスペーサー)を構成する原子ではない。本発明の具体的態様において、一つ以上のユニバーサル核酸塩基は、スペーサー領域を形成するのに有効なリンカーの近く又は隣に配置することができ、該スペーサー領域は、二つのオリゴマーブロックをつなぐ付加結合から、特異性決定核酸塩基を絶縁するよう機能することができる。
【0116】
本発明は、ある特定の結合化学及び構造に限定しようとするものではない。逆に、結合化学に精通している者であれば、本発明と共に用いる可能な数多くの付加化学構造を直ちに認識するはずである。ここに記述するある特定の化学作用又は構造は単に例示を目的とするものであり、決して本発明を限定しようとするものではない。
【0117】
明らかなように、本発明の具体的態様において有用な連結化学は、それがオリゴマーブロック間に機能的な共有結合リンカーをもたらすものであるかぎり、本発明において限定されるものではない。機能的リンカーは、二つ(又は二つ以上)のオリゴマーブロックからなる核酸塩基が同じ5’→3’の方向性を有するように、そして、該機能的リンカーにより、オリゴマーブロック中の特異性決定核酸塩基が集まって相補的標的配列に対する特異性を確定できるように、オリゴマーブロックを結合するリンカーである。すなわち、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが結合する標的配列は、複数のオリゴマーブロックすべての特異性決定塩基によって決まる。
【0118】
ある態様において、例えば、複数のオリゴマーブロックを連結する作用は「縮合反応」であり、そこにおいて、一般に、複数のオリゴマーブロックの連結は、選択された特定の化学作用に従って、反応物から水分子が最終的になくなるよう、オリゴマーブロックの末端に付加された化学部分が反応することにより、もたらされる。選択される特定の反応条件は、選択された特定の化学作用に従い、それは、結合化学に精通している者によく知られたことである。ある態様(すべての態様ではない)において、用語「連結」と「縮合」は交換可能である。厳密に言えば、オリゴマーブロックを共有結合(すなわち連結)するため適当な方法のすべてが縮合反応である訳ではない。
【0119】
本発明の絶縁性組合せオリゴマーを形成するのに適当な広範囲の付加/連結化学及び試薬は、当業者に明らかである。そのような情報は、当業者によく知られているだけでなく、種々の出典(例えばHermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press(1996)を含む)に教示されている。
【0120】
図5〜8は、使用可能な種々の連結化学作用の非限定的ないくつかの例を示す。示されるこれらの例は、異なる種類の化学作用を例示するためのものであり、決して、本発明をある特定の種類の連結化学作用に限定しようとするものではない。
【0121】
図5A及び5Bを参照して、適切に調製されたオリゴマーブロックは、カルボジイミド、例えば水溶性カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いて、連結することができる。図5Aに示すように、この試薬を用いるとき、典型的に、オリゴマーブロックの一つはカルボン酸部分を含み、もう一つはアミノ基を含む。それらのオリゴマーは、水溶液(必要に応じて1%〜75%(v/v)の有機修飾剤を含む)において連結できる。そのpHは例えば6.5未満である。活性化剤、例えばチアゾール化合物(例えば1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール[HOAt]又は1−ヒドロキシベンゾトリアゾール[HOBt])の添加を利用して、縮合/連結反応の全収率を上げることができる。従って、この化学作用を選ぶ場合、連結を行うため、カルボジイミドとともに活性化剤を用いることが好ましい。
【0122】
図5Bに示すオリゴマーブロックはさらにN−[2−アミノエチル]−グリシンのスペーサー部分を含むという点で、図5Bは図5Aと異なる。
【0123】
図6A〜6C並びに7A及び7Bを参照して、オリゴマーブロックの連結/縮合のためのいくつかの選択肢が示され、そこにおいて、水素化シアノホウ素ナトリウム(NaCNBH4)が還元剤として用いられている。明らかなとおり、水素化シアノホウ素ナトリウムは、これらの戦略を連結に用いてオリゴマーブロックの連結をもたらすのに使用できる多くの還元剤の一つである。
【0124】
図6A及び6Bを参照して、連結すべきオリゴマーブロックの一つはアミンを含み、連結すべき他のオリゴマーブロックはアルデヒドを含む。これらのオリゴマーブロックは合わされてイミン形成できる。イミンの形態はしばしば不安定で可逆的であるため、イミンはしばしば、例えば、水素化シアノホウ素ナトリウムにより、還元され、その結果、連結された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成する。図6A及び6Bは図5A及び5Bに類似し、そこにおいて、オリゴマーブロックは必要に応じてスペーサー部分をさらに含んでもよい。
【0125】
図6C並びに図7A及び7Bを参照して、連結すべきオリゴマーブロックの一つはアルデヒド又はケトン、例えばグリシナール又はβ−アリナールであり、連結すべき他のオリゴマーブロックは、アミノオキシ含有部分、例えばアミノオキシアセチル基を含む。適切に修飾されたオリゴマーブロックの反応により、イミンよりも安定なイミノキシ組合せオリゴマーが形成される。従って、イミノキシ組合せオリゴマーは、調製してそのまま使用でき、あるいは、必要に応じて、例えば水素化シアノホウ素ナトリウムにより還元することができ、それにより、図示するように、各オリゴマーブロック内にスペーサーを含む、より安定な絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成できる。
【0126】
図7Cは、アルデヒドとセミカルバジン誘導体のアミノ基とを伴う絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック間の連結反応を示す。左側に示す絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックの化学反応性部分(アルデヒド)と右側に示す絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックの化学反応性部分(アミン)とが反応して、図示するような共有結合リンカーを形成するセミカルバゾンが得られる。共有結合リンカーは、二つの絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを連結して絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成する。
【0127】
図7Dは、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックをつなぐ共有結合リンカーを形成するディールス−アルダー型連結反応を示す。図示するとおり、左側に示す化学反応性部分(フラン誘導体)と右側に示すマレイミドの化学反応性部分とのディールス−アルダー型反応によって共有結合リンカーが形成され、それは、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック同士を連結して絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーをもたらす。
【0128】
図8A〜8Cを参照して、それぞれの場合、オリゴマーブロックの一つは、求核性チオールと脱離基を含む。図8Aは、Lu et al.,J.Am.Chem.Soc.,118(36):8518−8523(1996)に従う連結反応を示す。求核性チオール、例えば2−アミノエチルチオール(図8C)、2−チオアセチル又は3−チオプロピオニルと、例えばハロアセチル(図8B)、マレイミド(図8C)、又はビニルのいずれかとの反応により、同様に組合せオリゴマーが得られる。
【0129】
本発明による絶縁性組合せオリゴマーの形成に適する連結/縮合化学の他の非限定的な具体例は、当該技術において広く知られており、DNA又はPNAを含むことができる。例えば、ディールス−アルダー型反応(例えばマレイミドとフラン間)をこの方法で用いて組合せオリゴマーを形成してもよい(また、該反応を用いて色素又は他の標識をそのようなオリゴマーに付加してもよい。例えば、Graham et al.,Tetrahedron Lett.43:4785−4788(2002)の記載参照)。
本発明のある態様において、オリゴマーブロック連結工程で核酸塩基保護基が使用される。ここで用いる「核酸塩基保護基」は、核酸塩基のある官能基に共有結合して、ある特定の化学反応中(例えば連結反応工程中)、該官能基を不活性(非反応性)にする化学部分である。例えば、アデニン、シトシン、及びグアニンの環外アミノ基は、典型的に、デノボ化学オリゴマー合成の間、適当な保護基で保護される。化学反応中、官能基を不活性(非反応性)にするため形成される該官能基の塩は、共有結合がないため、ここで用いる核酸塩基保護基ではない。
【0130】
しかし、核酸塩基保護基の使用は、本発明の利用に必須ではなく、従って、保護基を用いることに本発明は限定されるものではない。
また、リンカー部分は、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックにおいてスペーサーとして働くのに役立つことができ、嵩張った化学基又は可撓性のない化学結合による悪影響を最小限にすることができる。ハイブリッド形成を保護し又は促進するため、あるいは、本発明のオリゴマーのプローブ/標識特性を保護し又は高めるため、どのようにリンカー部分をスペーサー部分として用いればよいかは、当業者が理解できるところである。本発明を特定のスペーサー構造に限定することは、意図するところではない。しかし、一態様において、オリゴマーブロックがPNA構造を含むとき、PNAサブユニットのN−(2−アミノエチル)−グリシン部分の第一級アミン及びカルボニル炭素は、スペーサーの原子とみなされない。
【0131】
ある態様において、一つのスペーサー又は複数のスペーサー部分を、オリゴマーブロックの付加化学部位と核酸塩基との間に配置することができる。他の態様において、スペーサーは、標識に隣接して用いることができ、その目的は、例えば、標識のオリゴマーへの化学結合を容易にするため、あるいは、標識に伴うある特性(例えば蛍光)を保持又は高めるためである。また、スペーサー部分は、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロックの水溶性を向上させるため、付随的に又は意図的に用いることができる(例えばGildea et al.,Tett.Lett.,39:7255−7258[1998]参照)。
【0132】
本発明での使用に適するスペーサー/リンカー部分の非限定的な具体例は、例えば以下のものからなる。一つ以上のアミノアルキルカルボン酸(例えばアミノカプロン酸)、アミノ酸の側鎖(例えばリジン又はオルニチンの側鎖)、天然のポリペプチド及びタンパク質に存在する一つ以上のアミノ酸(例えばグリシン)、天然のポリペプチド及びタンパク質に一般的には存在しない一つ以上のアミノ酸(例えばオルニチン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、ホモシステイン、ホモセリン、シトルリン、カナバニン、ジエンコル酸、及びβ−シアノアラニン)、一つ以上のO−リンカー残基、アミノオキシアルキル酸(例えば8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸)、アルキル二酸(例えばコハク酸)、アルキルオキシ二酸(例えばジグリコール酸)、アルキルジアミン(例えば1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン)、アミノ酸グリシン、アミノ酸二量体gly−gly、アミノ酸二量体gly−lys、アミノ酸二量体lys−gly、アミノ酸二量体glu−gly、アミノ酸二量体gly−cys、アミノ酸二量体cys−gly、及びアミノ酸二量体asp−gly。
【0133】
F.ペプチド核酸
本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、任意の適当なインターヌクレオチドアナログから合成できる。酵素により伸長可能な構造及び酵素により伸長可能でない構造の両方を本発明に用いることができるため、重合体構造が標的核酸塩基配列と逆平行配列特異的に塩基対合できるかぎり、塩基配列を支える足場(骨格)は限定されない。
【0134】
リン酸を含まず、リボースを含まない多くのインターヌクレオチドアナログ構造の相当数が、適当な核酸塩基オリゴマー形成するため、当該技術において知られており、任意のそのような構造は、本発明に用いることができる。そのような構造の検討について、例えばWO96/04000を参照されたい。
【0135】
非リン酸非リボースの構造の一つで、核酸塩基ポリマーの合成に広く用いられてきたものに、ペプチド(又はポリアミド)核酸(通常PNAと呼ばれる)の群がある。これらのPNA構造において、DNA又はRNAのホスホ−ジエステルリボース骨格は、非環式でアキラルな天然の擬ペプチドポリアミド結合で置き換えられてきた(米国特許第5539082号、WO92/20702、Nielsen et al.,Science 254:1497−1500[1991]、Egholm et al.,Nature 365:566−568[1993])。このPNA骨格は、共有結合される核酸塩基のための足場を形成し、所定の塩基配列を有するオリゴマー構造を形成する。PNAは、しばしば、真の核酸のアナログというよりむしろ、核酸模倣物として特徴付けられる。というのも、その構造が完全に合成によるものであり、核酸に由来しないからである。
【0136】
ある態様において、N−(2−アミノエチル)グリシン繰返し単位からなるPNA骨格が用いられる。しかし、本発明のPNA構造をこのglyPNA結合構造に限定しようとするものではない。2−アミノエチルグリシンポリアミド核酸塩基ポリマーは、よく研究されており、際立ったハイブリッド形成特異性と親和性を有することが知られている。この分子の部分構造を、カルボキシル末端アミドとともに図2に示す(ここでBは任意の核酸塩基である)。
【0137】
【化4】
その名前にもかかわらず、PNAは決して真にペプチドではなく、核酸でもなく、酸性でもない。PNAは、天然に存在しない分子であり、ポリメラーゼ酵素、ペプチダーゼ、又はヌクレアーゼの基質とならないことが知られている。PNAはポリアミドであるため、C末端(カルボキシル末端)及びN末端(アミノ末端)を有する。標的配列への逆平行結合(すなわちハイブリッド形成)に適するPNAオリゴマーを設計するため、PNAオリゴマー核酸塩基配列のN末端は、DNA又はRNAオリゴヌクレオチドの5’リン酸末端に等価であり、そのC末端は3’ヒドロキシル末端に等価である。
【0138】
用語「PNA」は、当該技術において知られる関連構造、特に他のペプチド系核酸模倣物(例えばWO96/04000参照)をも含むことを意図してここに用いられる。一般に「PNA」は、二つ以上のPNAサブユニット(残基)を含む一方、核酸サブユニット(又はそのアナログ)を含まない任意のオリゴマー又はポリマーセグメント(例えばオリゴマーブロック)を意味する。用語「PNA」の範囲は、例えば、限定されることなく、米国特許第5539082号、第5527675号、第5623049号、第5714331号、第5718262号、第5736336号、第5773571号、第5766855号、第5786461号、第5837459号、第5891625号、第5972610号、第5986053号、及び第6107470号(これらすべての内容はこの引用により本明細書に記載されたものとする)に記載されるオリゴマー又はポリマーセグメントを含む。また、用語PNAは、以下の刊行物に記載の核酸模倣物の二つ以上のサブユニットを含む任意のオリゴマー又はポリマーセグメントにも該当する。Lagriffoul et al.,Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 4:1081−1082(1994)、Petersen et al.,Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 6:793−796(1996)、Diderichsen et al.,Tett.Lett.,37:475−478(1996)、Fujii et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,7:637−627(1997)、Jordan et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,7:687−690(1997)、Krotz et al.,Tett.Lett.,36:6941−6944(1995)、Lagriffoul et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,4:1081−1082(1994)、Diederichsen,Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 7:1743−1746(1997)、Lowe et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.,1,(1997)1:539−546、Lowe et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.,11:547−554(1997)、Lowe et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.11:555−560(1997)、Howarth et al.,J.Org.Chem.,62:5441−5450(1997)、Altmann et al.,Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 7:1119−1122(1997)、Diederichsen,Bioorganic&Med.Chem.Lett.,8:165−168(1998)、Diederichsen et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,37:302−305(1998)、Cantin et al.,Tett.Lett.,38:4211−4214(1997)、Ciapetti et al.,Tetrahedron 53:1167−1176(1997)、Lagriffoule et al.,Chem.Eur.J.,3:912−919(1997)、Kumar et al.,Organic Letters 3(9):1269−1272(2001)、及びWO96/04000に開示されるShah et al.のthe Peptide−Based Nucleic Acid Mimics(PENAMs)。誤解を避けるためであるが、一つ以上のアミノ酸サブユニット又は一つ以上の標識もしくはリンカーをPNAオリゴマー又はセグメント(例えばPNAオリゴマーブロック)に結合してもPNAキメラは生じない。
【0139】
PNAの化学合成法は当該技術においてよく知られている(例えば、Nielsen et al.,Peptide Nucleic Acids−Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,Norfolk England(1999)、Nielsen(Ed.),Peptide Nucleic Acids−Methods and Protocols,Humana Press(2002)、Hyrup and Nielsen,Bioorg.Med.Chem.,4(1):5−23(1996)、WO92/20702、WO92/20703及び米国特許第5539082号参照)。PNAオリゴマーの化学的組立ては、固相ペプチド合成に類似し、そこにおいて、組立ての各サイクルで、オリゴマーは反応性のアルキルアミノ末端を有し、それは、成長するオリゴマーに付加すべき次のモノマー単位と縮合される。標準的なペプチド化学を利用するので、例えば固相合成を用いて、天然及び非天然のアミノ酸をPNAオリゴマーに組み込むことができる。PNAオリゴマーの支持体結合自動化学合成のための化学試薬及び器械は市販されており、特定の核酸塩基配列を有するPNAオリゴマーは、市販品の提供者(例えばApplied Biosystems,Foster City,CA)から容易にあつらえることができる。標識PNAオリゴマーも、同様に、カスタムPNAオリゴマーの販売者から入手可能である。
【0140】
PNAは、サブマイクロモル〜ミリモル以上の任意のスケールで合成できる。最も便利には、PNAは、2マイクロモルのスケールで、Fmoc/Bhoc、tBoc/Z、又はMMT保護基モノマーを用いて、XAL又はPAL支持体上でのExpedite合成装置(Applied Biosystems)で、又は、MBHA支持体を用いるModel433A合成装置(Applied Biosystems)で、又は、他の自動合成装置で、固相合成により合成される。PNAはポリアミドであるため、カルボキシ末端(すなわちC末端)及びアミノ末端(すなわちN末端)を有する。標的配列への逆平行結合に適するハイブリッド形成プローブを設計するため、PNAプローブのプロービング核酸塩基配列のN末端は、等価なDNA又はRNAオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル末端に相当する。
【0141】
ある態様において、PNAオリゴマーは、さらに、そして必要に応じて、リンカー/スペーサー部分を含み、これは、当該技術において知られているように、PNAオリゴマーの溶解性を高めるため組み込まれる(WO99/37670及びGildea et al.,Tetrahedron Letters 39:7255−7258[1998]参照)。このリンカー/スペーサーは、内部、アミノ末端部、又はカルボキシ末端部に組み込むことができ、そして、一つ又は一つより多いリンカー/スペーサーをオリゴマーに組み込むことができる。
【0142】
他の態様において、本発明に用いられるPNA分子は、キラル分子であり、すなわちエナンチオマーの形態を有する。キラル構造を有するペプチド核酸は当該技術において知られている(D’Costa et al.,Tetrahedron Letters 43:883−886[2002])。
【0143】
FRET型プローブとして用いるためのPNAオリゴマーの標識及び使用の方法は、当該技術においてよく知られており、種々の出典に記載されている(例えばPCT WO99/21881、WO99/22018及びWO99/49293参照)。
【0144】
G.オリゴマーブロックライブラリー
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの合成に用いるオリゴマーブロックは、任意の長さとすることができる。オリゴマーブロックの長さは、本発明の実施において、特定の数の単量体に必ずしも限定されるものではない。一態様において、例えば、複数のオリゴマーブロックは、それぞれ独立して、約3〜約8の特異性決定核酸塩基を含むように選ぶことができる。さらに、オリゴマーブロックは、任意の数のユニバーサル核酸塩基を含むことができる。例えば、一態様において、複数のオリゴマーブロックは、それぞれ独立して、約1〜約10のユニバーサル核酸塩基を含むことができる。
【0145】
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの合成に使用するオリゴマーブロックを予め合成しておき、そして、所定のライブラリーに維持しておくことができる。一態様において、これらのオリゴマーブロックライブラリーは、特異性決定核酸塩基部位のそれぞれにおいて、天然に存在する四つのDNA核酸塩基(A、C、G及びT)の可能な並べ替えすべてを含む。他の態様においては、A−T−G−Cの並べ替えすべてがライブラリーに集められるわけではない。さらなる態様において、オリゴマーブロックライブラリーは、特異性決定核酸塩基部位のそれぞれにおいて、天然に存在する四つのRNA核酸塩基(A、C、G及びウラシル)の可能な並べ替えすべてを含む。さらに他の態様においては、A−T−G−ウラシルの並べ替えすべてがライブラリーに集められるわけではない。
【0146】
他の態様において、核酸塩基構造内に非天然の塩基を用いることが意図される。オリゴマーブロックライブラリーのサイズ(すなわち多様度)は、所定の位置における並べ替えの数を可変部位の数で累乗することにより決定される。例えば、天然に存在する塩基を用いて5つの特異性決定核酸塩基を有するオリゴマーブロックを形成する場合、オリゴマーブロックのライブラリーは、45の可能なバリエーション、すなわち1024の可能なオリゴマーブロックの配列を一式として含むことができる。可変核酸塩基部位に加えて、ブロックはさらにユニバーサル核酸塩基を含むこととなる。典型的に、オリゴマーブロックライブラリーは、同じ数のユニバーサル核酸塩基をそれぞれ有する複数の絶縁性オリゴマー核酸塩基ブロックを含むこととなる。しかし、絶縁性核酸塩基の数が異なる複数のオリゴマーブロックを絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックのライブラリーに含めてもよい。従って、例えば、五つの特異性決定核酸塩基をそれぞれ有する複数のオリゴマーブロックのオリゴマーブロックライブラリーは、一つ、二つ、三つ、及び四つのユニバーサル核酸塩基を含むブロックを有してもよい。
【0147】
一般に、オリゴマーブロックライブラリーは、すべてが同じ数の特異性決定核酸塩基を有する複数のオリゴマーブロックを含むこととなる。従って、例えば、四つの特異性決定核酸塩基を有するオリゴマーブロックのオリゴマーブロックライブラリーは、四つの特異性決定核酸塩基をそれぞれ有する256(44)の異なるオリゴマーブロックを含むこととなり、四つより少ない又は多い特異性決定核酸塩基を有するオリゴマーブロックを含まないこととなる。しかし、本発明の特徴を有する絶縁性オリゴマーブロックライブラリーのある態様では、ライブラリーは、特異性決定核酸塩基の数が異なる複数の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含んでもよい。
【0148】
しかし、本発明のオリゴマーブロックライブラリーが所定の長さのオリゴマーブロックについてすべての可能な核酸塩基配列の並べ替えを含まなければならないという訳ではない。すなわち、オリゴマーブロックライブラリーが「完全な」ライブラリーである必要はない。実際、本発明のブロックライブラリーがブロックオリゴマーを一式全部含むということは必要条件ではなく、あるいは、一つ又は複数のライブラリーのブロックオリゴマーの組が、すべて同じ種類、長さ、又は多様度であることは必要条件ではない。さらに、一組のライブラリーのオリゴマーブロックがすべて同じ長さ又は組成である必要はない。一局面において、一つより多いオリゴマーブロック(すなわち少なくとも二つのオリゴマーブロック)の任意のコレクションをライブラリーとみなすことができる。ある特定の態様において、ライブラリーは、一つ以上の天然に存在しない核酸塩基を含むことができ、あるいは、天然に存在しない核酸塩基のみを含むことができる。
【0149】
さらに明らかなとおり、ライブラリーのオリゴマーブロックは、例えば支持体に結合させることができる。一局面において、ライブラリーは、固体支持体に付着させられたブロックオリゴマーのアレイとして存在することができる。例えば、ブロックオリゴマーのアレイは、ガラス板に付着させることができ、マイクロアレイリーダー又はマイクロアレイスキャナーでの検査に適するアレイを形成できる(例えば、DeRisi et al.,Science 278:680−686(1997)、Lashkari et al.,P.N.A.S.94:13057−13062(1997)参照)。
【0150】
例えば、本発明の一局面において、連結反応に使用されるオリゴマーブロックは、一つ又は複数のブロックライブラリーに含まれるオリゴマーブロックから選択することができ、それにより、迅速で、効率的でかつ/又は適当なスケールの、選ばれた用途に適する、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの合成が可能になる。従って、オリゴマーブロックの一つ又は複数のライブラリーを合成して使用することは、異なるが所定の核酸塩基配列の多数のオリゴマーブロックを迅速に、効率的にかつ/又は適当なスケールで合成するのを容易にし、そこにおいて、ライブラリーから作ることができる異なった核酸塩基配列の可能な絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの数は、ライブラリーのオリゴマーブロック組の多様度によって決まり、また、オリゴマーブロック組の多様度は、該組にある異なった核酸塩基配列のオリゴマーの数に依存することとなる。
【0151】
H.絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの標識
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックが、核酸、修飾核酸、核酸アナログ(例えばペプチド核酸)、又はそれらの任意の組合せもしくは変形物から合成されるかどうかにかかわらず、本発明の実施に使用される分子は、適当な標識(ラベル)/レポーター部分で標識することができる。例えば、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックは、色素、蛍光標識、発光標識、放射性標識、抗原、ハプテン、酵素、酵素基質、保護基、及び化学反応性基からなる標識の群より選ばれる一つ又は複数の標識でラベルすることができる。その他の標識もまた、これらの標識に加えて、又はこれらの標識と組み合わせて、用いてもよい。
【0152】
核酸塩基オリゴマーに関してここで用いる用語「標識(ラベル)」は、オリゴマーに結合できる任意の部分であって、(i)検出可能なシグナルをもたらす部分(ここで該シグナルは、可視波長スペクトルもしくは任意の他の波長のものとすることができ、又は、粒子タイプ(例えば放射性同位体の崩壊粒子)とすることができる)、(ii)第二の標識と相互作用して第二の標識がもたらす検出可能なシグナルを変更又は修飾する部分(すなわちエネルギー移動標識対(エネルギートランスファーラベル対)(例えばFRET対)、(iii)ハイブリッド形成(すなわち二重鎖形成)を安定化する部分、(iv)捕捉機能(例えば、疎水性アフィニティー、抗体/抗原、イオン錯体生成)を与える部分、又は(v)物性(例えば、電気泳動移動性、疎水性、親水性、溶解性、又はクロマトグラフィー挙動)を変える部分である。既知の標識、結合、連結基、試薬、反応条件、並びに分析及び精製の方法を用いる多数の知られた技法の任意の一つを用いて、標識を行うことができる。標識には、発光化合物又は光吸収化合物であって、検出可能な蛍光シグナル、化学発光シグナル、又は生物発光シグナルを生成させるか又は消滅させる化合物が含まれる(Kricka,L.in Nonisotopic DNA Probe Techniques(1992),Academic Press,San Diego,pp.3−28)。ここで用いる用語「標識(ラベル)」と「レポーター」とは交換可能に使用できる場合がある。
【0153】
意図するところ、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックは、任意の標識部分を用いて、あるいは、核酸、修飾核酸もしくは核酸アナログを標識するため当該技術において現在知られている技法を用いて、標識することができる。本発明を何らかのある特定の標識法に限定することは意図するところではない。核酸、修飾核酸及び核酸アナログを標識するための技法は、当該技術において広く知られており、標識のための念入りな検討及び詳細なプロトコルが、多くの出典から可能である。例えば、“Non−Radioactive Labeling,A Practical Introduction,”Garman,Academic Press,San Diego,CA(1997)参照。
【0154】
標識又はレポーターの部分は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロック内の任意の部位に結合できる。標識は、オリゴマーの末端又はオリゴマーブロックの内部(例えば核酸塩基内又は核酸塩基に結合)に配置できる。標識は、完全なオリゴマー又はオリゴマーブロックの合成の後に設けるか、オリゴマー又はオリゴマーブロックの合成中に取り込むことができる。一方、標識は、リンカー化学部位と核酸塩基との間に配置される必要に応じたスペーサー領域に組込むか又は付加する(すなわち一体化する)ことができる。
【0155】
生物分子を標識するのに有用な蛍光レポーター色素には、フルオレセイン類(米国特許第5188934号、第6008379号、第6020481号)、ローダミン類(米国特許第5366860号、第5847162号、第5936087号、第6051719号、第6191278号)、ベンゾフェノキサジン類(米国特許第6140500号)、ドナーとアクセプターのエネルギー移動色素対(米国特許第5863727号、第5800996号、第5945526号)、及びシアニン類(Kubista、WO97/45539号)のほか、検出可能なシグナルを生成できるその他の任意の蛍光標識がある。フルオレセイン色素の具体例には、6−カルボキシフルオレセイン、2’,4’,1,4−テトラクロロフルオレセイン、及び2’,4’,5’,7’,1,4−ヘキサクロロフルオレセイン(Menchen、米国特許第5118934号)がある。
【0156】
蛍光標識についてここで用いる用語「消光(消滅)」は、蛍光標識(すなわち蛍光レポーター部分)の蛍光が減少することを意味する。ドナー部分は蛍光団とすることができ、アクセプター部分(「消光」部分)は蛍光団であってもよいし、非蛍光部分であってもよい。ある態様において、蛍光の減少は、そのメカニズムにかかわらず、消光(剤)部分に伴う蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により生じる。エネルギー移動は、一対のエネルギー移動標識の要素間(該エネルギー移動標識の対は、少なくとも一つのアクセプター部分と少なくとも一つのドナー部分を有する)で生じ得る。本発明の具体的態様において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、標識の少なくとも一つのエネルギー移動対を有することができる。エネルギー移動対の標識は、オリゴマー末端に結合してもよいし、あるいは、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の部位に結合してもよい。その代わりに、あるいは、それに加えて、アクセプター部分及びドナー部分を、異なる複数のオリゴマーブロックに結合してもよい。
【0157】
もう一つの種類の標識は、ハイブリッド形成安定化部分であり、これは、二重鎖のハイブリッド形成を増強、安定化、又は左右するよう機能する(例えば、インターカレーター、小溝バインダー、及び架橋官能基)(Blackburn and Gait,Eds,“DNA and RNA Structure”in Nucleic Acids in Chemistry and Biology,2nd Edition,(1996)Oxford University Press,pp.15−81)。さらに他の種類の標識は、特異的又は非特異的な捕捉により分子の分離又は固定化を行うものである。例えばビオチン、ジゴキシゲニン、及びその他のハプテン類(Andrus,“Chemical methods for 5’non−isotopic labelling of PCR probes and primers”(1995) in PCR2:A Practical Approach,Oxford University Press,Oxford,pp.39−54)がそれである。適当なハプテンには、フルオレセイン、ビオチン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、リポ多糖、アポトランスフェリン、フェロトランスフェリン、インシュリン、サイトカイン、gp120、β−アクチン、白血球機能関連抗原1(LFA−1、CD11a/CD18)、Mac−1(CD11b/CD18)、グリコフォリン、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、インテグリン、アンキリン、フィブリノーゲン、第X因子、細胞間接着分子1(ICAM−1)、細胞間接着分子2(ICAM−2)、スペクトリン、フォドリン、CD4、サイトカイン受容体、インシュリン受容体、トランスフェリン受容体、Fe+++、ポリミキシンB、エンドトキシン中和タンパク質(ENP)、抗体特異的抗原、アビジン、ストレプトアビジン、並びにビオチンがある。非放射性標識の方法、技術、及び試薬が、Non−Radioactive Labelling,A Practical Introduction,Garman(1997)Academic Press,San Diegoに概説されている。ある態様において、用語「標識(ラベル)」と「レポーター」は交換可能に使用される。
【0158】
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロックを直接標識するのに適したレポーター/標識部分の非限定的な具体例には、量子ドット、小溝バインダー、デキストラン抱合体、枝分かれ核酸検出システム、発色団、蛍光団、消光剤、スピン標識、放射性同位体、酵素、ハプテン、アクリジニウムエステル、及び化学発光化合物があるが、これらに限定されるものではない。消光部分も可能な標識である。その他の適当な標識試薬及び標識結合の好ましい方法は、当業者に明らかなところである。ここに記載するいかなる具体例も単に例示を目的とするもので、限定的なものではない。
【0159】
標識
ハプテンの非限定的な具体例には、5(6)−カルボキシフルオレセイン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、及びビオチンがあるが、これらに限定されるものではない。
【0160】
蛍光色素(蛍光団)の非限定的な具体例には、5(6)−カルボキシフルオレセイン(Flu)、2’,4’,1,4−テトラクロロフルオレセイン、及び2’,4’,5’,7’,1,4−ヘキサクロロフルオレセイン、その他のフルオレセイン色素類(例えば米国特許第5188934号、第6008379号、第6020481号参照(この引用によりこれらの内容は本明細書に記載されたものとする))、6−((7−アミノ−4−メチルクマリン−3−アセチル)アミノ)ヘキサン酸(Cou)、5(及び6)−カルボキシ−X−ローダミン(Rox)、その他のローダミン色素類(例えば米国特許第5366860号、第5847162号、第5936087号、第6051719号、第6191278号、第6248884号参照(この引用によりこれらの内容は本明細書に記載されたものとする))、ベンゾフェノキサジン類(例えば米国特許第6140500号参照(この引用によりその内容は本明細書に記載されたものとする))、シアニン2(Cy2)色素、シアニン3(Cy3)色素、シアニン3.5(Cy3.5)色素、シアニン5(Cy5)色素、シアニン5.5(Cy5.5)色素、シアニン7(Cy7)色素、シアニン9(Cy9)色素(シアニン色素2、3、3.5、5、及び5.5は、NHSエステルとして、Amersham,Arlington Heights ILから入手できる)、その他のシアニン色素類(Kubista,WO97/45539)、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、5(6)−カルボキシ−テトラメチルローダミン(Tamara)、Dye 1、Dye 2又はAlexa色素シリーズ(Molecular Probes,Eugene,OR)があるが、これらに限定されるものではない。
【0161】
標識として利用可能な酵素の非限定的な具体例には、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ダイズペルオキシダーゼ(SBP)、リボヌクレアーゼ、及びプロテアーゼがあるが、これらに限定されるものではない。
【0162】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、エネルギー移動標識対と組合せて、エネルギー移動の用途に適するプローブ(例えばFRETプローブ又はリアルタイムPCR解析(すなわちTAQMAN(登録商標)解析)での利用に適したプローブ)を形成するのに使用できる。
【0163】
小溝バインダーの非限定的な具体例にはCDPI3がある(例えばWO01/31063参照)。
【0164】
標識の選択及び保護基の手引き
当業者に明らかなとおり、本発明に従いオリゴマーブロックを連結して絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成しようとする場合、オリゴマーブロックの潜在的に反応性の化学基の性質全体を、潜在的な副反応又は交差反応に対して、考慮すべきである。保護基もまた、適宜、潜在的な副反応又は交差反応を最小限にするか又は排除するため、用いることができる。例えば、連結して絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成する前にオリゴマーブロックを標識する場合、選択できる種々の連結化学作用の性質を見て、一つ又は複数の標識上にある官能基の反応の可能性を考慮することが賢明である。
【0165】
例えば、アミノ基、カルボン酸基及び水溶性カルボジイミドを伴う連結反応を行う場合、保護されていない反応性のアミノ官能基及びカルボキシル官能基を回避して可能性のある副反応/交差反応を避けるように、標識(例えばエネルギー移動対の標識)を通常選択すべきである。かくして、選択される特定の連結反応化学の性質からみて、成分の反応性官能基の性質を考慮することにより、当業者は、どのようにして最適な連結反応条件をもたらせばよいか分かるはずである。
【0166】
連結用の化学反応性基でオリゴマーブロック末端を修飾することに加えて、オリゴマーブロックを、修飾かつ/又は保護して、標識又は表面への結合のための官能基を組み込むことができる。そのような官能基は、以下のような因子に応じて、連結反応の前又は後のいずれかで利用することができる。因子:オリゴマー合成化学(例えば過酷な脱保護の条件が必要な場合、標識を破壊し得る)、選択される連結化学反応(例えば必要な標識の官能基が、縮合化学反応を妨害し得る)、及び官能基を使用する目的(例えば、それが、標識のためか、固体支持体への結合のためであるか)。
【0167】
PNAの標識/修飾
一態様において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックはPNAを含む。意図するところ、PNAの標識又は修飾に使用できる任意の試薬または方法は、本発明にも使用できる。例えば、標識PNA分子の作製及び使用のため当該技術において知られている任意の技法を、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックに使用できる。
【0168】
PNA類を標識する非限定的な方法は、当該技術においてよく知られており、種々の出典に記載されている。例えば、米国特許第6110676号、第6280964号、WO99/22018、WO99/21881、WO99/37670、WO99/49293、及びNielsen et al.,Peptide Nucleic Acids:Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,Norfolk,England(1999)参照。
【0169】
ペプチドとPNAの合成化学は本質的に同じであるため、ペプチドの標識に通常使用される任意の方法を、PNAオリゴマーの標識を行うのにしばしば適用できる。一般に、PNAポリマーのN末端は、カルボン酸基又は活性化カルボン酸基を有する成分との反応により標識することができる。一つ以上のスペーサー部分を、必要に応じて、標識部分とオリゴマーの塩基を含むサブユニット(すなわち核酸塩基)との間に導入できる。一般に、スペーサー部分は、標識反応を行う前に組み込むことができる。必要ならば、スペーサーを標識内に埋め込むことができ、従ってそれを標識反応中に組み込むことができる。
【0170】
典型的に、PNAオリゴマーがその上で組み立てられる支持体と共に、まず標識部分又は官能基部分を取り付けることにより、該ポリマーのC末端を標識できる。次いで、PNAオリゴマーの最初の核酸塩基を含むシントンを、該標識部分又は官能基部分と縮合させることができる。一方、一つ以上のスペーサー部分(例えば8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸、「O−リンカー」)を、標識部分又は官能基部分とオリゴマーの最初の核酸塩基サブユニットとの間に導入することができる。一旦、調製すべき分子が完全に組み立てられ、標識されかつ/又は修飾されたなら、標準的な方法を用いて、それを支持体から切り離し、脱保護し、そして、精製することができる。
【0171】
一方、オリゴマーを支持体に結合させたまま、組立てられた又は部分的に組立てられたポリマー上に官能基を導入することができる。そして該官能基は、任意の目的に利用でき、例えば、支持体にオリゴマーを取り付けることや、あるいは、レポーター部分と反応させること、例えば、連結後に他のオリゴマーブロックと反応させることに利用できる(「連結後」は、一つ以上のオリゴマーブロックを連結することにより絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが完全に形成さられた後の時点を意味する)。しかし、この方法は、組立て完了後に反応性官能基が生じるよう、適当に保護された官能基を、組立てにおいてオリゴマーに組み込むことを必要とする。従って、保護された官能基を、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロック内の任意の位置(例えば、オリゴマーブロックの末端、オリゴマーブロックの内部、又はリンカーもしくはスペーサーと一体的な位置に結合)に取り付けることができる。
【0172】
例えば、リジンのε−アミノ基は、4−メチル−トリフェニルメチル(Mtt)、4−メトキシ−トリフェニルメチル(MMT)又は4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル(DMT)の保護基で保護できる。Mtt、MMT又はDMTの基は、穏やかな酸性条件下で合成樹脂の処理により、オリゴマー(市販のFmocPNAモノマーとPALリンカーを有するポリスチレン支持体とを用いて組立てられる(PerSeptive Biosystems,Inc.,Framingham,MA))から除去できる。その結果、ポリマーを支持体に結合させたまま、例えば、ドナー部分、アクセプター部分、又は他のレポーター部分を、リジンアミノ酸のε−アミノ基と縮合させることができる。完全な組立て及び標識の後、よく知られた方法を用いて、ポリマーを、支持体から切り離し、脱保護し、そして、精製することができる。
【0173】
さらに他の方法により、オリゴマーブロックを支持体から切り離した後、標識をオリゴマーブロックに取付けたり、あるいは、オリゴマーブロックを連結した後、標識を絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに取付けることができる。オリゴマーの製造に使用される開裂、脱保護、又は精製の方法に標識が適合しない場合、これらの方法は好ましい。この方法により、絶縁性組合せPNAオリゴマー又はPNAオリゴマーブロックは、一般に、ポリマー上の官能基又は標識上の官能基の反応により、溶液において標識される。当業者に明らかなとおり、このカップリング溶液の組成は、オリゴマー及び標識(例えばドナー又はアクセプター部分)の性質によって変わってくる。このカップリングに使用される溶液は、有機溶媒、水、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。一般に、有機溶媒は、極性で非求核性の溶媒である。適当な有機溶媒の非限定的な具体例には、アセトニトリル(ACN)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、及びN−メチルピロリドン(NMP)がある。
【0174】
オリゴマー及び標識上の官能基の性質は限定されない。例えば、標識すべきオリゴマー上の官能基は求核基(例えばアミノ基)とすることができ、標識上の官能基は求電子基(例えばカルボン酸又は活性化カルボン酸)とすることができる。意図するところ、求核基と求電子基の配置は逆にすることができ、従って、オリゴマー上の官能基を求電子基とし、標識上の官能基を求核基とすることができる。活性化カルボン酸の官能基の非限定的な具体例には、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルがある。水溶液において、PNA又は標識のいずれかのカルボン酸基は、(選択した成分の性質に応じて)例えば、水溶性カルボジイミドで活性化できる。試薬1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)は、市販の試薬であり、水性アミド形成縮合反応に専用で販売されている。
【0175】
I.キメラの絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロック
意図するところ、本発明のオリゴマー(絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのほか、個々のオリゴマーブロックを含む)はキメラの性質とすることができる。すなわち、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及び/又は個々のオリゴマーブロックは、核酸塩基又は異なる構造からなり得る。
【0176】
例えば、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの場合、オリゴマーは、二つ以上のオリゴマーブロックからなり得、そこにおいて、異なるオリゴマーブロックの核酸塩基構造は、異なる構造のものである。例えば、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、二つのオリゴマーブロックから合成することができ、そこにおいて、一つのオリゴマーブロックはPNAから合成され、もう一つのオリゴマーブロックはデオキシリボヌクレオチド(DNA)から合成できる。さらに意図するところ、単一のオリゴマーブロック自身をキメラとすることができる。例えば、一つのオリゴマーブロックは、PNA核酸塩基とDNA核酸塩基とを含むことができる。
【0177】
非限定的な具体例として、PNAを含むキメラの核酸塩基構造、例えばPNAとポリヌクレオチドの両方の構造を含むキメラは、当該技術において知られている。これらキメラの合成、標識、及び修飾は、当業者に知られた方法を用いることができる。例えばWO96/40709(現在米国特許第6063569号として発行、その内容はこの引用により本明細書に記載されたものとする)参照。さらに、PNA合成及び標識のための上記方法は、多くの場合、例えばPNAキメラのPNA部分の修飾に用いることができる。さらに、核酸の合成及び標識のためのよく知られた方法を、多くの場合、PNAキメラの核酸部分の修飾に用いることができる。その具体的な方法は、米国特許第5476925号、第5453496号、第5446137号、第5419966号、第5391723号、第5391667号、第5380833号、第5348868号、第5281701号、第5278302号、第5262530号、第5243038号、第5218103号、第5204456号、第5204455号、第5198540号、第5175209号、第5164491号、第5112962号、第5071974号、第5047524号、第4980460号、第4923901号、第4786724号、第4725677号、第4659774号、第4500707号、第4458066号、及び第4415732号に示されており、その各内容はこの引用により本明細書に記載されたものとする。
【0178】
J.製造物
本発明は、製造物(例えばキット)を提供し、それは、少なくとも一つの本発明の絶縁性組合せオリゴマー又はオリゴマーブロックを含む。所定の態様において、キットは、方法の実施に用いる二つ以上の成分を合わせることによって、対象となるプロセス、方法、アッセイ、分析、又は操作の性能を促進するよう働く。キットは、方法の使用に必要な任意の化学試薬、酵素、又は備品を含むことができる。所定の態様において、キットは、最終使用者による測定の必要性を最小限にするため、予め測定された量の成分を含む。所定の態様において、キットは、一つ以上の本発明の方法を実施するための説明書を含む。所定の態様において、キットの構成要素は、互いに組合せて操作するため、最適化されている。
【0179】
本発明のキットに用いるとき、絶縁性組合せオリゴマーは、ある特定の標的配列に対して配列特異性に作ることができ、そして、標識してもよいし、標識しなくともよい。絶縁性組合せオリゴマーを標識する場合、選ばれる標識は意図する用途での使用に適するものである。絶縁性組合せオリゴマーは、任意の適当なポリ核酸塩基(例えばPNA)から調製できる。本発明のオリゴマーは、適当な容器(例えばチューブ又はアンプル)に包装することができ、また、乾燥(例えば凍結乾燥)した形態又は水を含む形態で包装することができる。必要であれば、キットにおける製造物は、輸送及び/又は貯蔵中、冷蔵又は冷凍することができる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーを含む任意の製造物は、製品の説明書、製品の仕様書、又は製品の使用説明書をさらに含むことができる。
【0180】
さらに、本発明のキットは、例えば、限定されることなく、試料の採取及び/又は精製のための器具及び試薬、生成物の採取及び/又は精製のための器具及び試薬、サンプルチューブ、ホルダー、トレー、ラック、皿、プレート、キット使用者用の説明書、溶液、緩衝剤又は他の化学試薬、標準化、規格化、及び/又は対照試料に使用すべき適当な試料を含むことができる。また、本発明のキットは、都合のよい貯蔵及び輸送のため、例えば蓋つき箱に包装できる。
【0181】
キットに含まれる絶縁性組合せオリゴマーは、標識されていてもよいし、されていなくともよい。他の態様において、本発明は、標識されていない絶縁性組合せオリゴマーとともに、該オリゴマーを標識するための手段を含むキットを提供する。他の態様において、本発明は、標識されている又は標識されていない絶縁性組合せオリゴマーとともに、該オリゴマーを視覚化又は検出するための手段(例えば器具及び/又は試薬)を含むキットを提供する。
【0182】
また、本発明は、種々の方法(例えば配列特異的ハイブリッド形成を伴う任意の方法)において本発明の絶縁性組合せオリゴマーの利用を容易にするキットを提供する。これらの方法を実施するための材料及び試薬は、該方法の実行を容易にすべくキットに設けることができる。本発明のキットは、少なくとも一つの絶縁性組合せオリゴマーを含み、そして必要に応じて、相当数の他の構成要素をさらに含むことができ、そのような構成要素には、(i)一つ以上の緩衝剤、(ii)一つ以上のヌクレオチド三リン酸、(iii)核酸増幅用マスターミックス、(iv)一つ以上のポリメラーゼ酵素、又は(v)核酸生成物の分離/精製に適する試薬又は備品があるが、これらに限定されることはない。一態様において、キットは、PCR反応においてプライマーとして使用するのに適する少なくとも二つのオリゴヌクレオチドプライマーを含む。
【0183】
ある態様において、本発明は、TAQMAN(登録商標)リアルタイムPCR解析を行うためのキットを提供する。これらのキットは、例えば、試料採取用の試薬、逆転写酵素、逆転写酵素開始及び最初の鎖cDNA合成に適するプライマー、少なくとも一つの適当なブロッキング核酸塩基オリゴマー、第二の鎖cDNA合成に適するプライマー、DNA依存性DNAポリメラーゼ、遊離のデオキシリボヌクレオチド三リン酸、及び反応により生成したcDNA分子の分離/精製に適する試薬を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0184】
本発明のキットを提供する一態様において、単一の標的配列に特異的な単一の核酸塩基オリゴマーが用意される。他の態様において、複数の標的に特異的な複数の核酸塩基オリゴマーが、キットにおいて用意される。例えば、二つの絶縁性組合せオリゴマーの組を、単一のキットにおいて用意することができ、そこにおいて、該二つのオリゴマーは、PCR反応のような核酸増幅反応においてプライマーとして用いることができる。ある態様において、固相又は固体の表面に付着させた本発明の絶縁性組合せオリゴマーを有するキットが提供される。所定の態様において、本発明のキットは、少なくとも一つの標的核酸鋳型において配列決定するため用いることができる。
【0185】
さらに他の態様において、本発明は、本発明の絶縁性組合せオリゴマーを用いて遺伝子発現を分析するためのキットを提供する。これらのキットは、適当なアレイ又はチップの構造物に付着させた複数の本発明の絶縁性組合せオリゴマーとともに、ハイブリダイズした複合体の検出/視覚化に必要な試薬を含むことができる。
【0186】
K.エネルギー移動の応用(例えばFRET又はTAQMAN(登録商標))に用いるための絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの標識
エネルギー移動標識のセットで構成される標識対(又はエネルギー移動標識対)もまた、エネルギー移動の用途(例えば蛍光共鳴エネルギー移動もしくはFRETのプローブ又はリアルタイムPCR解析(すなわちTAQMAN(登録商標)解析)での使用に適するプローブ)において、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに用いることができる。エネルギー移動プローブのセットは、細胞/分子生物学の研究において広範かつ多様に用いられており、その合成及び利用のためのプロトコルは、当該技術において広く知られている。例えばWO99/21881、WO99/22018及びWO99/49293参照。
【0187】
一般に、エネルギー移動対は、少なくとも二つの標識を指し、ここで一つの標識(「ドナー」又は「クエンチャー(消光体)」と呼ばれることがある)の放射(発光)が、もう一つの標識(「アクセプター」と呼ばれることがある)の強度に影響を及ぼす。一態様において、一つ以上のドナー部分と一つ以上のアクセプター部分の両方が蛍光団であり、かつ、標識はFRET対からなる。エネルギー移動対の標識は、オリゴマーブロック末端で絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに結合させることができ、あるいは、オリゴマーブロック内の部位もしくは絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の他の部位(例えばスペーサー部分に一体的)に結合させることができる。一態様において、エネルギー移動対の二つの標識のそれぞれを、組合せオリゴマーの最も離れた末端に結合することができる。一態様において、一つのオリゴマーブロックはドナー部分を含み、もう一つのオリゴマーブロックはアクセプター部分を含む。
【0188】
この応用において、エネルギー移動対は、少なくとも一つのエネルギー移動ドナーと、少なくとも一つのエネルギー移動アクセプター部分とを含む。多くの場合、エネルギー移動対は、単一のドナー部分と単一のアクセプター部分とを含むことになるが、これに限定されるものではない。あるエネルギー移動対は、一つより多いドナー部分及び/又は一つより多いアクセプター部分を含んでもよい。ドナー及びアクセプターの部分は、一つ以上のアクセプター部分が、一つ以上のドナー部分から移動したエネルギーを受け入れるように、あるいは、一つ以上のドナー部分からのシグナルを消滅させるように、働く。一態様において、一つ以上のドナー部分と一つ以上のアクセプター部分の両方が蛍光団であり、かつ、標識はFRET対からなる。適当なスペクトル特性を有する種々の蛍光団が、エネルギー移動アクセプターとして働き得るが、アクセプター部分は非蛍光性クエンチャー型部分でもよい。
【0189】
消光部分の非限定的な具体例には、アリールジアゾ化合物のようなジアゾ含有部分、例えば4−((−4−ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸(ダブシル)、ダブシル、もう一つの追加のジアゾ及び/又はアリール基を含む同族体、例えばFast Black(例えば米国特許第6117986号参照)、シアニン色素類(例えば米国特許第6080868号参照)、及びその他の発色団、例えばアントラキノン、マラカイトグリーン、ニトロチアゾール、及びニトロイミダゾール化合物があるが、これらに限定されるものではない。
【0190】
ドナー部分とアクセプター部分との間でのエネルギーの移動は、任意のエネルギー移動プロセスを介して起こり得、例えば、一つ以上のエネルギー移動対の密接に関連する部分の衝突を介して、又は、FRETのような非発光(非放射)のプロセスを介して起こり得る。FRETが生じるのにドナー部分とアクセプター部分との間のエネルギー移動が必要とすることは、該部分同士がきわめて接近していること、及び、一つ以上のドナーの発光スペクトルが、一つ以上のアクセプターの吸収スペクトルに対して実質的な重なりを有することである(Yaron et al.,Analytical Biochemistry 95:228−235(1979)、特に232頁1欄〜234頁1欄参照)。一方、衝突を介して(放射なしで)エネルギーの移動が、非常に密接に関連するドナー部分とアクセプター部分との間で起こり得、これは、一つ以上のドナー部分の発光スペクトルが、一つ以上のアクセプター部分の吸収スペクトルに対して実質的な重なりを有する場合でも有しない場合でも起こり得る(Yaron et al.,Analytical Biochemistry 95:228−235(1979)、特に229頁1欄〜232頁1欄参照)。このプロセスは分子内衝突と呼ばれる。というのも、クエンチングが、ドナー部分とアクセプター部分の直接的接触により起こると考えられるからである(Yaron et al.,上記参照)。当然のことながら、本願におけるエネルギー移動への言及は、これらの機械論的にはっきりした現象のすべてを包含する。また当然のことながら、エネルギー移動は、一つより多いエネルギー移動のプロセスを通じて同時に起こり得、また、検出可能なシグナルの変化は、二つ以上のエネルギー移動プロセスの作用の尺度となり得る。従って、エネルギー移動のメカニズムは、本発明を限定するものではない。実際、エネルギー移動が生じる一つ又は複数のメカニズムを明らかにすることは、本発明を為し又は用いるのに必要ではない。
【0191】
エネルギー移動対は、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと標的との間の核酸塩基ハイブリッド形成を検出/モニターするのに用いることができる。この態様で用いるとき、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、プローブとして用いる前に、適当なエネルギー移動対で標識することができる。この種の用途に用いる適当なエネルギー移動対は、当該技術において知られており、そこにおいて、そのようなプローブは、「線状標識(リニアビーコン)」又は「分子標識(モレキュラービーコン)」と呼ばれることがある(例えばWO99/21881参照)。
【0192】
適当に標識された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと標的配列との間のハイブリダイゼーション複合物の形成は、ハイブリダイズしない状態で絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが存在するときと比べてハイブリダイゼーション複合物を形成したときに検出可能に異なる少なくとも一つのエネルギー移動対の少なくとも一つの物性を測定することにより、モニターすることができる。この検出可能なシグナルの変化は、組合せオリゴマーが標的配列にハイブリダイゼーションすることにより生じる、ドナー部分とアクセプター部分との間のエネルギー移動の効率の変化に起因する。
【0193】
例えば、検出の手段は、エネルギー移動対のドナー又はアクセプターの蛍光団の蛍光を測定することを含むことができる。一態様において、エネルギー移動対は、少なくとも一つのドナー蛍光団と、少なくとも一つのアクセプター(蛍光性又は非蛍光性)クエンチャーとを含み、それにより、該ドナー蛍光団の蛍光の測定値を、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと標的配列とのハイブリッド形成の検出、特定又は定量に用いることができる。例えば、組合せオリゴマーが標的配列とハイブリッド形成したとき、ドナーの蛍光団の蛍光は測定可能に増加し得る。
【0194】
他の態様において、エネルギー移動対の標識は、複数の異なる本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに設けられ、そこにおいて、一つのオリゴマーはクエンチャー部分単独で標識され、また、一つのオリゴマーはアクセプター部分単独で標識され、さらにそこにおいて、それらのオリゴマーは、重複核酸塩基相補性の領域を有し、かつ、一つのオリゴマーはさらに、他のオリゴマーと異なる標的に対して特異的である。この種の標識系は、種々の用途があり、当該技術において知られている(例えばWO99/49293参照)。この標識法は、本発明の新規な絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと組合わせて用いることができる。
【0195】
この系において、オリゴマー、クエンチャー及び標的を含む複合体が形成されるとき、標的上の少なくとも一つのドナー部分は、第二の標的に結合される第二の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー上にある少なくとも一つのアクセプター部分に十分接近した範囲に配置される。対をなすドナー部分とアクセプター部分は非常に接近するので、このエネルギー移動対の部分間でエネルギーの移動が起こる。しかし、検出複合体の一つが解離するとき、例えば、ポリメラーゼが、検出複合体の鎖の一つを複製するとき、ドナー及びアクセプターの部分は、エネルギー移動対のドナーとアクセプターの部分からエネルギーの実質的な移動を生じさせるのに十分な相互作用をもはやもたらさず、エネルギー移動対のドナー及び/又はアクセプターの部分からの検出可能なシグナルの相関的変化が生じる。その結果、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを含む複合体の形成又は解離の測定は、構成要素である標識した絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが独立して存在し結合していないときと比べて複合体を形成したときに検出可能に異なるエネルギー移動対の少なくとも一つの要素の少なくとも一つの物性を測定することにより、行うことができる。
【0196】
L.応用及び使用方法
本発明の組成物及び方法は、種々の用途に用いられる。実際、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、任意の他の核酸塩基オリゴマーがハイブリッド形成プロトコルに用いられる任意の用途に用いることができる(すなわちプローブ又はプライマーとして)。例えば、本発明の組成物及び方法は、遺伝子発現の解析に用いられる。ここに論じるいくつかの用途のみに本発明を用いることは意図するところではなく、本発明の絶縁性組合せオリゴマーについて種々の用途があることを当業者は直ちに認識するはずである。ここに記載する用途は、例示を目的とし、限定的ではなく、また、そのような具体例は網羅的なものではない。当然のことながら、本発明の用途は、ここに記載するある特定の用途に限定されず、本発明は、オリゴマー核酸塩基配列をプローブ又はプライマーとして組み込む任意のプロトコルに用いることができる。
【0197】
プローブ又はプライマーとして用いるとき、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、配列特異性を有する標的配列とハイブリダイズすることが必要である。かくして、プローブとして用いるとき、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの固有の特徴にさらなる制限は設けられない。しかし、プライマーとして用いるとき、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、少なくとも一つのポリメラーゼ酵素により伸長可能である必要がある。
【0198】
本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、所定の特異性を有する多数の(数百又は数千もしくは数百万もの)オリゴマー配列を用いる高処理能力の用途に特に用いることができる。
【0199】
ハイブリッド形成の指示薬としての絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー
一態様において、本発明は、試料中に標的核酸塩基配列が存在するかどうかを検出するための組成物及び方法を提供し、それらは、適当に標識された本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを用いる。
【0200】
該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、当該技術において知られているような標識のエネルギー移動対(例えば、標識のFRET対)を含むことができ、それにより、該エネルギー移動対の少なくとも一つのアクセプター部分は、オリゴマーブロックの一つに結合され、一方、少なくとも一つのドナー部分は、もう一つのオリゴマーブロックに結合され、そこにおいて、標識は、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが配列特異的に標的にハイブリダイズするとき少なくとも一つの該標識の検出可能なシグナルの変化が容易になる位置で、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに結合される。標的配列に対するハイブリッド形成を示すためのFRET型プローブの合成及び使用の方法は当該技術において知られている。例えばWO99/21881、WO99/22018及びWO99/49293参照。
【0201】
酵素開裂部位を有する絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー
一態様において、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、その付加物またはリンカーにおいて酵素開裂部位を含むよう設計することができ、そこにおいて、該開裂部位は、該オリゴマーと標的配列とのハイブリッド形成に対して開裂から保護されている。かくして、本発明は、絶縁性組合せオリゴマーが標的配列に結合されるか否かを判定するための方法を提供する。
【0202】
この方法において、酵素開裂部位を含む絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、標識の適当なFRET対で標識される。この標識されたオリゴマーと可能性のある標的とは、適当な結合条件下で合わされ、複合体を形成するようハイブリッド形成を可能にする。
【0203】
ハイブリッド形成反応の後、反応混合物は、適当な酵素開裂条件下で、該開裂部位の開裂に適する酵素で処理される。適当な酵素開裂条件は、該酵素が基質に作用するよう働く条件である。多数の酵素が、そのような用途のため市販されており、市販品提供者からの製品に関する資料は、適当な酵素開裂条件に関する情報を提供するはずである。
【0204】
該オリゴマーがその標的配列にハイブリダイズした場合、該開裂部位は酵素から保護され、そして、該組合せオリゴマーは開裂しないままである。しかし、プローブが標的にハイブリダイズしない場合、酵素は、該オリゴマーを開裂し、その結果、ハイブリダイズした状態に比べてFRET標識の強度が変化する。
【0205】
この方法によれば、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが標的配列に結合すると、酵素は、該オリゴマーを実質的に開裂しなくなる。従って、結合により、該オリゴマーは、酵素による実質的な分解から守られる。その結果、アッセイによってオリゴマーが実質的に分解されないと判定される場合、それは標的配列に結合しているはずである。逆に、オリゴマーが分解から守られなかった場合、可能性のある標的配列が存在しなかったと結論づけることができる。さらに、明らかなように、そのようなアッセイは酵素による事象に基づくため、標的配列の量は、酵素活性を定量することにより決定することができる。
【0206】
この方法が、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの標的配列への結合を伴うとき、ハイブリッド形成は、適当なハイブリッド形成条件下で起こり、そこにおいて、該標的配列は、標識されたオリゴマーより高い濃度とすることができる。それにより、連続した核酸塩基の標的配列が存在する場合、利用可能なオリゴマーの実質的にすべてが、配列特異的に結合する。
【0207】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、例えば、オリゴマーブロック内の一つ以上のリンカー配列に酵素開裂部位を含むよう、あるいは、取り付け部分の一部として酵素開裂部位を含むよう、設計できる。かくして、そのように設計されるリンカーを組み込むことにより、本発明は、例えば、試料中に可能性のある標的結合パートナーが存在するか否か、そして、どれぐらいの量で存在するか、決定するための方法を提供する。
【0208】
開裂部位を含むリンカー又はスペーサーの非限定的な具体例には、lys−X、arg−X、Glu−X、asp−X、asn−X、phe−X、leu−X、lys−gly、arg−gly、glu−gly、及びasp−glu(ここでXは天然に存在する任意のアミノ酸である)があるが、これらに限定されるものではない。これらの基質の一つ以上を開裂するのに適する酵素の非限定的な具体例の群は、エンドプロテイナーゼGlu−C(EC3.4.21.19)、Lys−C(EC3.4.21.50)、Arg−C(EC3.4.22.8)、Asp−N(EC3.4.24.33)、パパイン(EC3.4.22.2)、ペプシン(EC3.4.23.1)、プロテイナーゼK(3.4.21.14)、キモトリプシン(EC3.4.21.1)、及びトリプシン(3.4.21.4)を含む。
【0209】
PCR産物のリアルタイムモニタリング
エネルギー移動(例えばFRET)標識を本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックと組み合わせた一般的な応用は、上述したところである。エネルギー移動標識のもう一つの応用は、PCR産物の蓄積をリアルタイムにモニターする(すなわちTAQMAN(登録商標)解析)のに適したプローブの合成である。
【0210】
本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、リアルタイム定量的PCR解析においてFRET型プローブとして用いることができる。リアルタイムPCR解析は、蓄積するPCR産物をモニターすることを指す(蛍光5’ヌクレアーゼアッセイ、すなわちTAQMAN(登録商標)解析としても知られる)。TAQMAN(登録商標)プローブの合成および使用の方法は、当該技術においてよく知られている。例えば、Holland et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276−7280[1991]及びHeid et al.,Genome Research 6:986−994[1996]参照。
【0211】
一般に、TAQMAN(登録商標)PCR法は、二つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、鋳型特異的なPCR反応からアンプリコンを生成させる。第三の非プライミング核酸塩基オリゴマー(必ずしもヌクレオチドオリゴマーである必要はない)もまた、反応に含まれる(TAQMAN(登録商標)プローブ)。このプローブは、TaqDNAポリメラーゼ酵素により伸長可能でない構造を有し、そして、二つのPCRプライマー間にあるヌクレオチド配列にハイブリダイズするよう設計されている。TAQMAN(登録商標)プローブは、対向する末端にある、レポーター蛍光色素とクエンチャー蛍光色素とで標識される。該プローブがPCRアンプリコンにアニールされるときのように、該二つの色素が互いに接近すると、レーザーにより誘導されるレポーター色素からの発光は、クエンチング色素により消滅させられる。
【0212】
TAQMAN(登録商標)PCR反応は、高温に晒されても5’−3’ヌクレアーゼ活性を維持する耐熱性のDNA依存性DNAポリメラーゼ(例えばTaqDNAポリメラーゼ)を用いる。PCR増幅反応中、TaqDNAポリメラーゼは、アンプリコンにハイブリダイズした標識プローブを開裂する。生じるプローブフラグメントは、溶液中で解離し、放出されたレポーター色素からのシグナルは、第二の蛍光団のクエンチング作用(消光作用)を免れる。合成された新しい分子のそれぞれについてレポーター色素の一分子が開放され、そして、消光されなかったレポーター色素の検出が、データの定量的な見積もりの基礎となり、その結果、放出された蛍光レポーター色素の量が、アンプリコン産物の量に正比例することとなる。
【0213】
TAQMAN(登録商標)アッセイデータは、しきいサイクル値(CT)として表され、これは、レポーター色素からの蛍光が統計的に有意な検出可能レベルとなるのに必要なPCRサイクルの最小数である。上述したように、蛍光の値が、すべてのPCRサイクルにおいて記録され、それは、増幅反応におけるその時点で増幅された生成物の量を表す。
【0214】
TAQMAN(登録商標)RT−PCRは、市販の装置を用いて行うことができ、例えば、ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems,Foster City,CA)又はLightcycler(Roche Molecular Biochemicals,Mannheim,Germany)を用いて行うことができる。該システムは、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラ、及びコンピュータからなる。ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection System(配列検出システム)は、サーモサイクラー上の96ウェル型において試料を増幅する。増幅中、レーザーにより誘導される蛍光シグナルは、96ウェルすべてについて光ファイバーケーブルを介してリアルタイムに集められ、CCDで検出される。該システムは、該装置の作動及びデータの解析のためのソフトウェアを含む。
【0215】
遺伝子発現の解析
本発明により提供される絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ハイブリッド形成アッセイ(例えば遺伝子発現の解析)に用いることができる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、二つの一般的なキャパシティにおいて、プローブとして使用される。まず、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、標的ポリヌクレオチドを検出するため標識して用いることができる。第二に、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、固相に固定化することができ、そして、アレイ又はチップ型の遺伝子発現解析システムにおいて用いることができる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーをある特定のハイブリッド形成の様式、プロトコル又は条件での使用に限定することは、意図するところではなく、当業者は、種々のハイブリッド形成プロトコルに精通しており、そして、多くのハイブリッド形成の様式にそれらを適用して本発明の効果が得られることは、当業者に明らかなことである。
【0216】
一局面において、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、ハイブリッド形成及びプローブとしての使用の前に標識される。標識プローブの使用法に何らかの限定を設けることは本発明の意図するところではない。ここで用いる用語「標識」は、標的ヌクレオチド配列の分離、クローニング、検出、視覚化、又は定量を可能にする任意の部分を指す。オリゴマーに共有結合される標識は、それ自体で検出可能とすることができ(例えばフルオレセイン又は放射性同位体)、あるいは逆に、二次試薬と相互作用するまで、直接的には視覚化できないものであってもよい(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン結合色素又は発色基質の存在が必要な共役酵素)。標的配列との複合体(例えば二重鎖)にある場合、標識絶縁性組合せオリゴマーは、適当な方法(例えば、放射検出、比色測定、蛍光、化学発光、生物発光、及び酵素結合アッセイがあるがこれらに限定されない)を用いて検出できる。多数のオリゴマー標識/検出法が当該技術において広く知られており、それらのすべてを本発明に用いることができる。本発明をある特定の標識法に限定することは意図するところではない。
【0217】
第二の局面において、ハイブリッド形成反応は、当該技術において知られるように、高処理能力の態様において行われる。一般に、高処理能力のハイブリッド形成の様式は、固体支持体に付着させたプローブ(すなわち本発明の絶縁性組合せオリゴマー)を用いる。該固体支持体は、任意の組成及び構造とすることができ、そして、有機及び無機の支持体を含み、ビーズ、球体、粒子、顆粒、平面もしくは非平面の表面からなることができ、かつ/又はウェル、皿、プレート、スライド、ウェハ、又は他の任意の種類の支持体の形態とすることができる。ある態様において、固体支持体の構造及び構成は、ロボットによる自動化技術が容易になるよう設計される。検出、測定及び/又は定量の工程は、自動化技術を用いても行える。
【0218】
ある態様において、ハイブリッド形成の様式は、当該技術に広く知られるとおり「アレイ」、「マイクロアレイ」、「チップ」、又は「バイオチップ」である(例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 22,“Nucleic Acid Arrays,”John Wiley&Sons,Inc.,New York[1994]及びM.Schena,(ed.),Microarray Biochip Technology,BioTechnique Books,Eaton Publishing,Natich,MA[2000]参照)。一般に、アレイの様式は、多数の試料の自動分析を容易にし、かつ/又は、多数のアドレス可能な位置を有し、それにより、非常に多くの遺伝子について、遺伝子発現のパターンを非常に速く調査できる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、プローブとして用いるとき、アレイの様式で用いることができるが、本発明の絶縁性組合せオリゴマープローブをある特定のアレイ又はハイブリッド形成の様式で用いることに限定することは、意図するところではない。
【0219】
ポリヌクレオチド試料をハイブリッド形成アッセイに用いる場合、一般に、ハイブリッド形成の前にポリヌクレオチドプールの標識が必要であり、それにより、固定化プローブと標的の相互作用が検出できる。種々のポリヌクレオチド標識法が当該技術において知られており、本発明をある特定のポリヌクレオチド標識法に限定することは意図するところではない。標識したポリヌクレオチド試料により、固体支持体(例えばマイクロアレイ)に付着させたプローブとともに二重鎖になるポリヌクレオチド種を検出できる。付着させたプローブとともに二重鎖となる標識ポリヌクレオチドは、適当な検出法を用いて検出できる。
【0220】
本発明の一態様において、ポリヌクレオチドプール(RNA又はDNA分子のいずれかを含む)の標識は、合成時にできつつあるポリヌクレオチド分子に適当な標識を組み込むことにより達成される。例えば、色素が結合したUTPを、できつつあるRNA鎖に組み込むことができる。他の態様において、ポリヌクレオチドプールの標識は、ポリヌクレオチドプールを合成した後に達成される。この態様において、RNA又はDNA分子は、鎖合成の後にポリヌクレオチドに結合される(すなわち抱合されるか、あるいは、共有結合される)適当な標識を用いてラベルされる。
【0221】
さらに他の態様において、試料中のポリヌクレオチドの標識していないプールを、標識工程が不要な方法を用いて、ハイブリッド形成又は遺伝子発現解析に直接使用できる。例えば、付着させたプローブとの二重鎖形成は、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用して検出できる。例えばSPREETA(商標)SPRバイオセンサー(Texas Instruments,Dallas,TX)及びBIACORE(登録商標)2000(BIACORE(登録商標)、Uppsala,Sweden)を参照。また、共鳴光散乱法を用いることができ、それにより、標識されていないプローブを用いるハイブリッド形成解析において二重鎖の形成を検出できる(Lu et al.,Sensors 1:148−160[2001])。
【0222】
本発明をある特定の標識法、プロービング法、又はハイブリッド形成法に限定することは意図するところではない。当業者は、多種多様のそのようなプロトコル及び試薬を熟知しており、それらのすべてを、本発明の絶縁性組合せオリゴマーとともに用いることができる。
【0223】
ハイブリッド形成反応での使用
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックは、ハイブリッド形成(すなわち二つの相補的核酸塩基配列同士による複合体の形成)を伴う任意の方法に用いられる。相補性は100%である必要はなく、100%未満の相補性であっても、効果的なハイブリッド形成は起こり得る。
【0224】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックの可能な用途は、決して限定されるものではない。従って、当業者に明らかなとおり、本発明の組成物を用いて実施するようなハイブリッド形成反応に使用すべき具体的条件は、同様に限定されるものではなく、特定の用途及び使用されるオリゴマーの一次配列によって変わってくる。特定の用途のためのハイブリッド形成条件を記載する多種多様の出典が利用可能である。例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 22,“Nucleic Acid Arrays,”John Wiley&Sons,Inc.,New York[1994]及びM.Schena,(ed.),Microarray Biochip Technology,BioTechnique Books,Eaton Publishing,Natick,MA[2000]参照。
【0225】
当業者に明らかなとおり、ある特定のハイブリッド形成反応のストリンジェンシーは多くの変数に左右される。当該技術は「低ストリンジェンシー」又は「高ストリンジェンシー」という用語を用いるが、任意の又はすべてのハイブリッド形成反応に普遍的にあてはまる低ストリンジェンシー又は高ストリンジェンシーの厳密な条件を定義することは、不可能ではないにしても、実際的ではない。
【0226】
特定のハイブリッド形成反応に使用できる「ストリンジェンシー」のより有用な定義は、所定の一連のハイブリッド形成条件が、同じ実験系における別の一連のハイブリッド形成条件と比べてより多くストリンジェントであるかより少なくストリンジェントであるかを規定することである。当業者に明らかなとおり、種々の因子がストリンジェンシーを決定しており、そのような因子には、塩濃度(すなわちイオン強度)、ハイブリッド形成温度、界面活性剤濃度、pH、化学変性剤(例えばホルムアミド)の存在/濃度、及びカオトロピック剤(例えば尿素)の存在/濃度があるが、これらに限定されるものではない。特定のオリゴマーに最適なストリンジェンシーは、多くの場合、上述したストリンジェンシー因子のいくつかを固定し、そして、一つのストリンジェンシー因子を変化させる効果を測定する、よく知られた技法により見出される。一般に、これらの同じストリンジェンシー因子が、任意の核酸塩基構造に対するハイブリッド形成ストリンジェンシーを調節するのに適用される。一つの例外は、核酸とのハイブリッド形成反応にPNAオリゴマー構造を用いることである。というのもPNAハイブリッド形成の安定性は、イオン強度にほとんど依存しないからである。アッセイに最適な又は適するストリンジェンシーは、必要な程度の識別(弁別)が達成されるまで、各ストリンジェンシー因子を検討することにより、実験に基づいて決定してもよい。
【0227】
固体支持体(例えばアレイ)への固定化
一局面において、本発明は、固体支持体に付着させられた絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを製造しかつ使用するための組成物及び方法に関する。多種多様の固体支持体が本発明に使用される。ある特定の種類の固体支持体を用いることに本発明は限定されるものではない。同様に、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを固体支持体に付着させる態様も決して限定されるものではない。
【0228】
一態様において、支持体に結合された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、複数のオリゴマーのアレイ(例えばチップ)を形成する。重合核酸塩基構造(例えば核酸、修飾核酸、核酸アナログ、又はキメラ構造)を含むアレイの作製及び使用のための詳細な方法は、当該技術においてよく知られており、多くの出典に記載されている。例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 22,“Nucleic Acid Arrays,”John Wiley&Sons,Inc.,New York[1994]及びM.Schena,(ed.),Microarray Biochip Technology,BioTechnique Books,Eaton Publishing,Natick,MA[2000]参照。固体支持体、より具体的にはアレイを用いる、核酸、修飾核酸、及び核酸アナログの合成及び使用のための任意の方法を、本発明との利用に適用できる。
【0229】
これらのアレイを合成できる種々の方法がある。一局面において、予め合成された本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを、当該技術において知られる任意の方法(例えばUV架橋)を用いてアレイの固体支持体に付着させることができる。
【0230】
一方、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、固体支持体自体の上で、二つ以上のオリゴマーブロックを連結することにより合成できる。例えば、リンカー化学部位がその後の化学反応に利用できるように、一つのオリゴマーブロックを固体支持体に結合させることができる。一旦、固体支持体に付着させられると、予め形成した第二のオリゴマーブロックを、アレイ上で直接反応させることができ、その結果、第一のオリゴマーブロックとの共有結合が生じ、アレイに結合された完全な絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーをもたらす。この方法は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの必要なアレイが構成されるまで、アレイにおける一つの部位又は二つ以上の異なる部位で一つ以上のさらなるオリゴマーブロックを用いて連結工程を繰り返すことをさらに含むことができる。
【0231】
他の局面において、本発明は、アレイを形成することに関し、そこにおいて、予め形成された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー上にある官能基が、反応させられて、固体支持体に結合されたもう一つの官能基と結合を形成し、それにより、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを、該固体支持体の表面に共有結合させる。この方法は、オリゴマーの必要なアレイが得られるまで、一つの部位又は二つ以上の異なる部位で一つ又は二つ以上の異なる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを用いてオリゴマー結合工程を繰り返すことをさらに含む。
【0232】
各支持体結合オリゴマーの位置及び配列が分かっているため、アレイを用いて、試料中の一つ以上の標的配列の存在及び量を、同時に検出、特定及び/又は定量することができる。例えば、標的配列は、アレイ表面上の相補的な絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーにより捕捉することができ、次いで、該標的配列を含む複合体を、検出できる。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの配列は、アレイ表面の各位置において分かっているので、該アレイ上で生成する検出可能なシグナルの位置を測定することにより、一つ又は複数の標的配列の配列を、直接、検出、特定及び/又は定量できる。かくして、アレイは、診断の用途又は化合物のスクリーニング(例えば治療化合物の開発における)に有用である。
【0233】
一態様において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及び/又はオリゴマーブロックは、UV架橋のよく知られたプロセスを用いて表面に固定化できる。
【0234】
他の態様において、オリゴマーブロックは、脱保護(ただし合成支持体からの切り離しは除く)に適する態様で表面において合成できる(例えばWeiler et al.,Hybridization based DNA screening on peptide nucleic acid(PNA)oligomer arrays,”Nucl.Acids Res.,25(14):2792−2799(1997)参照)。さらに他の態様において、一つ以上の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロックを、該オリゴマー上にある適当な官能基を該表面の官能基と反応させることにより、該表面に共有結合させることができる(例えばGeiger et al.,PNA Array technology in molecular diagnostics,Nucleosides&Nucleotides 17(9−11):1717−1724(1998)参照)。この方法は有利である。というのも、該表面に固定化されたオリゴマーは、高度に純化でき、そして、所定の化学反応を用いて結合させることにより、非特異的相互作用を最小限にするか解消できる可能性があるからである。
【0235】
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及び/又はオリゴマーブロックを固体支持体表面に化学結合させる方法は、固定化すべきオリゴマーの求核基(例えばアミン又はチオール)を固体支持体表面にある求電子基と反応させることを用いることができる。一方、求核体を支持体上に存在させ、求電子体(例えば活性化カルボン酸)をオリゴマー上に存在させることができる。一態様において、オリゴマーブロックがPNAを含む場合、使用するPNAは、固定化反応の前に修飾すべきかもしれないし、そうでないかもしれない。というのも、PNAは、その構造中にアミノ末端を有するからである。
【0236】
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロックを表面に固定化するのに適した条件は、当該技術において広く知られており、オリゴマーの標識に適した条件に通常類似する。固体支持体への固定化反応は標識反応に類似し、そこにおいて、標識の代わりに、ポリマーが結合されるべき表面が用いられる。本発明をある特定の固定化化学又は方法に限定することは意図するところではない。
【0237】
アミノ基、カルボン酸基、イソシアネート、イソチオシアネート、及びマレイミド基で誘導体化した多くの種類の固体支持体が市販されている。適当な固体支持体の非限定的な具体例には、任意の種類のチップ(例えばアレイ)、膜、ガラス、細孔ガラス(CPG)、ポリスチレン粒子(ビーズ)、シリカ、及び金ナノ粒子がある。上述した固定化の方法すべては、決して限定的なものでなく、単なる例示にすぎない。
【0238】
生物体の検出/特定
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、生物体、特に病原体の検出、特定及び/又は計数に用いられる。そのような生物体には、食物、飲料、水、医薬製品、パーソナルケア製品、酪農製品、又は植物、動物、ヒト、もしくは環境に由来する試料中のウイルス、細菌及び真核生物が含まれ得る。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、食物、飲料、水、医薬製品、パーソナルケア製品、酪農製品、又は環境試料を調製又は保存するのに使用される原料、器具、製品、又はプロセスの分析に使用される。さらに、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ヒト又は動物の治療において扱われる臨床試料、器具、備品、もしくは製品中の、さらには、臨床標本及び臨床環境中の、病原体(例えば種々の細菌、ウイルス及び真核生物)を検出するのに用いられる。例えば、対象となる微生物の分析は、ここに記載される本発明により生成されるプローブを用いてFISH又は多重FISHを使用して行うことができる(例えば、BP合衆国出願番号09/335629及び09/368089参照)。
【0239】
本発明の組成物、方法、キット、ライブラリー、及びアレイは、発現解析、一塩基多型(SNP)解析、ヒト、動物、真菌類、酵母、ウイルス及び植物(遺伝子修飾した生物体を含む)の遺伝子解析、治療モニタリング、薬理ゲノミクス、薬理遺伝学、発生機構学、及び高処理能力のスクリーニング操作のような分野に特に有用である。本発明の組合せライブラリーは、これらのプローブ集約型の用途に有用である。というのも、他の種類の組合せ核酸塩基オリゴマーライブラリーに見られるようなオリゴマーブロック連結化学作用によって生じる二重鎖安定性の破綻(すなわちTmペナルティー)を有さない、選択性/識別性の高い組合せオリゴマーの、充実した、迅速で、効率的かつ適当なスケールの合成が、それにより容易になるからである。
【0240】
多重分析
所定の態様において、本発明は、多重ハイブリッド形成アッセイに用いる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを提供する。多重アッセイにおいて、対象となる多数の条件が同時に又は順次検査される。多重分析は、アッセイを行う間又は行った後、試料要素又はそれに伴うデータを選別する能力に依存する。多重アッセイの実施において、一つ又は二つ以上のそれぞれ独立して検出可能な個々の部分を用いることができ、それにより、アッセイで同時に使用すべき二つ以上の異なる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを標識することができる。ここで使用する「それぞれ独立して検出可能な」は、一つの標識を、少なくとも一つのさらなる他の標識の存在下、それと独立して、測定できることを意味する。それぞれ独立して検出可能な部分の各々を区別かつ/又は定量できる能力により、ハイブリッド形成アッセイを多重化する手段がもたらされる。というのも、データは、個々のそれぞれ独立して標識された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと試料中検出しようとする特定の標的配列とのハイブリッド形成に相関するからである。従って、本発明の多重アッセイは、例えば、同じ試料で同じアッセイにおいて、二つ以上の標的配列の存在、不在、数、位置又は性質を同時に又は順次検出するため、用いることができる。
【0241】
ブロッキングプローブ(遮断プローブ)
ブロッキングプローブは、第二の核酸塩基配列の非標的配列への結合を抑制するのに使用できる核酸塩基オリゴマーである。ある態様において、該第二の核酸塩基オリゴマーは標識されている。好ましいブロッキングプローブはPNAプローブである(例えばCoull et al.,米国特許第6110676号(この引用によりその内容は本明細書に記載されたものとする)参照)。本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ブロッキングプローブとして使用できる。当該技術においてこれらの分子は「プローブ」と呼ばれるが、これはやや誤った名称である。というのも、この核酸塩基オリゴマーは、標識されず、検出もされないからである。
【0242】
典型的に、ブロッキングプローブは、プローブ核酸塩基配列と密接に関連しており、好ましくは、ブロッキングプローブは、アッセイで検出しようとする標的配列に対し、一つ以上の単一点突然変異を有するものである。ブロッキングプローブは、非標的配列とハイブリッド形成することにより、プローブ核酸塩基配列と非標的配列のハイブリッド形成よりも熱力学的に安定な複合体を形成すると考えられる。このより安定で好ましい複合体の形成により、プローブ核酸塩基配列と非標的配列とによる安定性の低い好ましくない複合体の形成が妨げられるが、そのメカニズムの解明は本発明の実施又は利用に必要ではない。かくして、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、アッセイに存在し得そしてアッセイの実行を妨げ得る非標的配列と第二の核酸塩基オリゴマーの結合を抑制するため、ブロッキングプローブとして用いられる(Fiandaca et al.,“PNA Blocker Probes Enhance Specificity In Probe Assays”,Peptide Nucleic Acids:Protocols and Applications,pp.129−141,Horizon Scientific Press,Wymondham,UK,1999参照)。本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、また、これらのプロトコルに使用される第二の(典型的に標識された)核酸塩基分子として利用できる。本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーをブロッキングプローブとして用いることは、より一般的に、ハイブリッド形成反応において本発明のオリゴマーを任意の種類の特異的又は非特異的核酸塩基拮抗体として用いることにつながる。
【0243】
ポリメラーゼのプライミング
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、プライマー伸長を用いる任意の用途、すなわち、ポリメラーゼ酵素による鋳型依存性のリボヌクレオチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)の伸長のため、オリゴマーがプライマーとして作用する任意の反応、に用いられる。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーをプライマーとして用いるとき、それは、酵素による伸長を可能にする構造を有する必要がある。これは、典型的に、ポリメラーゼプライマーとして機能する目的のため、核酸塩基オリゴマー中に、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含むサブユニットが最小限の数、存在することを必要とする。一態様において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーをプライマーとして用いるとき、該オリゴマーはキメラであり、従って、該オリゴマーは、ヌクレオチドとともに、他の種類の核酸塩基構造(例えばPNAを含む)からなる。
【0244】
なお、一局面において、「プライマー伸長」の用語は、転写開始部位の地図を作成するための分子遺伝学的技法に関してある特定の意味を有する。しかし、ここで該用語は、鋳型により誘導され、プライマーにより開始される任意のポリメラーゼ反応を表す最も一般的な意味で使用される。
【0245】
実験法又は診断法においてプライマー伸長反応を用いる多種多様の用途が当該技術でよく知られている。ある特定の種類のプライマー伸長反応に絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを用いることに本発明を限定することは、決して意図するところではない。種々のプライマー伸長反応が、現代の分子生物学の技法において広く使用されている。例えば、糖核酸配列決定は、鋳型にアニールされる核酸塩基オリゴマープライマー、デオキシリボヌクレオチド三リン酸類(dNTP類)、ポリメラーゼ、及び反応において結合される四つのジデオキシヌクレオチドターミネーター(該四つのターミネーターは、個々の反応で付加されるか、あるいは、一反応で一緒に付加される)を用いる。そして、反応混合物は、プライマー伸長を達成するため、適当な条件下でインキュベートされる。
【0246】
一局面において、プライマー伸長反応はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRに基づく技法を用いるプロトコル及び種々の用途は当該技術においてよく知られている。例えば、Mullis et al.,(1986)Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology 51:263、Eckert et al.,(1990)Nucl.Acids Res.18:3739、Dieffenbach et al.,(1995)PCR Primer:a laboratory manual,CSHL Press,Cold Springs Harbor,USA参照。一般的に、PCR反応は、少なくとも一つの鋳型、少なくとも一つのプライマー、少なくとも一つのポリメラーゼ、及び伸長可能なヌクレオチドを含む。PCR反応におけるプライマーの少なくとも一つを本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーとすることができる。PCR反応は温度サイクルに供され、その結果、反応混合物において、アニーリング、プライマー伸長、及び鋳型の解離が繰り返される。これにより、標的鋳型の少なくとも一部に相補的なプライマー伸長産物(すなわちアンプリコン)が生成する。
【0247】
マイクロサテライト(VNTR配列(Variable Number of Tandem Repeat)及びショートタンデムリピート(STR)を含む)の解析は、プライマー伸長反応を用いるもう一つの広く利用される方法である。STRは、ゲノムにおける一つ以上の位置でタンデムに(縦列に)繰り返される2〜7ヌクレオチドの配列である。タンデムリピートの数は個々に異なる。所定の遺伝子解析法のため、繰り返し領域に隣接する特定のプライマーを用いたPCRにより、STRが増幅され、繰り返しの数が測定される。所定の技法において、測定は、サイズの区別(例えば電気泳動、質量分析、又はクロマトグラフィーによる)を用いて行われる。
【0248】
ユニバーサル核酸塩基を含むオリゴマーブロックの使用
意図するところ、ユニバーサル核酸塩基を含むオリゴマーブロックは、組合せオリゴマーの合成以外の用途にも使用できる。例えば、少なくとも一つのユニバーサル核酸塩基を含むオリゴマーブロックは、該オリゴマーブロック上にある化学反応性部分を介して固相に共有結合させる(すなわちリンカーを介して)ことができ、そして、特定の核酸塩基配列に結合する種々の分子を分離(単離)かつ/又は精製するためのアフィニティーリガンドとして用いることができる。一局面において、固相は、例えば、ビーズ(例えばセファロース(SEPHAROSE(登録商標))ビーズ)とすることができ、該ビーズはクロマトグラフィーのカラムに固定化できる。
【0249】
一局面において、付着させられたオリゴマーブロックの核酸塩基に結合する分子は、別のポリ核酸塩基分子であり、それは、塩基対合相互作用の法則に従って結合する。固相に結合したオリゴマーブロックの核酸塩基と核酸塩基標的とがハイブリダイゼーション複合体を形成した後、核酸(又は他の核酸塩基を含む構造)を分離/精製できる。この技法は、例えば、酵素による分解の後に断片化又は消化されたDNAを分析するのに用いられ、あるいは、発現又は他の方法により生産されたDNAオリゴマーを解析するのに用いられる。
【0250】
他の局面において、固相に付着させられたオリゴマーブロックは、配列特異的な態様でオリゴマーブロックの核酸塩基に結合するタンパク質を分離/精製するのに、使用できる。この場合、オリゴマーブロックの核酸塩基は、一本鎖結合タンパク質又は二本鎖結合タンパク質の分離/精製のため、一本鎖又は二本鎖の構造で調製できる。
【0251】
ゲノム解析
絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー、及び絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ゲノム解析に使用してもよい。例えば、ハイブリッド形成が生じるかどうか判定するため、ゲノム材料の標的試料を、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含むプローブと、又は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと、接触させることができる。プローブと標的とのハイブリッド形成は、プローブに相補的な核酸塩基配列が標的に存在することを意味する。
【0252】
本発明の好ましい態様において、ゲノム材料の標的試料は、オリゴマーブロックライブラリーから作られる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーからなる複数のプローブに、接触させることができる。一つ以上のプローブと標的とのハイブリッド形成は、一つ以上のハイブリッド形成するプローブ配列に相補的な核酸塩基配列が標的に存在することを意味する。そのようなハイブリッド形成は、プローブに結合した蛍光標識からの蛍光を検出することにより、プローブに結合した蛍光標識からの蛍光の消滅により、プローブ上の抗原への抗体の結合により、放射性標識プローブから出される放射能の検出により、あるいは、他の標識及び検出の方法により、検出できる。
【0253】
遺伝子発現解析
遺伝子発現を示す試料中の標的遺伝子又は他の核酸塩基配列(例えば、対象となる細胞から得られるmRNAに由来するcDNA)を検出することにより、遺伝子発現を解析することができる。例えば、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに相補的な核酸塩基の存在を検出するため、オリゴマーブロックライブラリーから形成される絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを備える複数のプローブに、対象となる細胞から得られるcDNAライブラリーを接触させることができる。そのような解析は、特定の核酸塩基配列の発現を判定するため用いることができ、そして、そのような核酸塩基配列を含む遺伝子の発現を示し得るものである。
【0254】
そのような遺伝子発現解析は、異なる条件下で類似する細胞について行うことができ、あるいは、細胞周期の異なる部分における細胞から行うことができる(例えばDeRisi et al.,Science 278:680−686(1997)参照)。異なる条件下又は細胞周期の異なる部分においてどんな遺伝子の作用が変化するかを明らかにするため、そのような遺伝子発現解析の結果の比較を用いることができる。同様に、正常細胞とがん性細胞との比較は、正常条件とがん性条件との間の遺伝子発現の差異を明らかにし得る。従って、例えば、正常細胞およびがん性細胞よりcDNAが得られる場合、本発明の特徴を有するオリゴマーブロックライブラリーからの絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを用いて、そのようなcDNAとのハイブリッド形成の比較に基づき、正常細胞とがん性細胞との間の遺伝子発現の差異を明らかにすることができる。
【実施例】
【0255】
L.実施例
以下の実施例は、本発明のある特定の具体的態様及び局面をさらに例示するため提供される。これらの実施例は、本発明の任意の局面の範囲を限定するためのものではない。特定の反応条件及び試薬が記載されるが、当然のことながら、本発明に用いることができ、本発明の技術範囲を逸脱しない代わりの又は等価な条件が存在することは、当業者に明らかなことである。
【0256】
実施例1
この実施例では、組合せ核酸塩基オリゴマーを、二つの予め形成したオリゴマーブロックから合成し、それにより、PNA構造を有する組合せオリゴマーを形成する。
【0257】
二つの予め合成したPNAオリゴマーブロックからの組合せPNAオリゴマーの合成
市販の試薬及び装置(Applied Biosystems)を用いて、サブマイクロモル〜ミリモルの範囲のスケールでPNAオリゴマーを合成する。A、G、C及びTのPNAモノマーは市販品である(Applied Biosystems)。ユニバーサル塩基を含むPNAモノマーの合成は、公知の方法(例えば、Nielsen et al.,Peptide Nucleic Acids;Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,Norfolk,England,1999)に従い、適当に保護したユニバーサル塩基をFmoc保護した2−アミノエチルグリシン骨格にメチレンカルボニルリンカーを介して結合することにより行う。PNA合成は、標準的なペプチド合成化学を用いる。従って、天然及び非天然のアミノ酸並びにそれらの誘導体は、PNAオリゴマーに容易に組み込まれる。誘導体化したXAL、PAL、PEG、PAM固体支持体上で、Expedite合成装置(Applied Biosystems)において、補助試薬の存在下、Fmoc/Bhoc、tBoc/Z又はMMTで保護したPNAモノマーを結合させることにより、PNAオリゴマーは最も都合よく合成される。モデル433Aペプチド合成装置(Applied Biosystems)もまた、MBHA支持体を用いるPNA合成に使用できる。
【0258】
PNAは、ポリアミドであり、ペプチドのようにC末端(カルボキシル末端)とN末端(アミノ末端)を有する。C末端はオリゴヌクレオチドの3’末端と等価であり、N末端はオリゴヌクレオチドの5’末端と等価である。このPNAオリゴマーは、標準的な合成及び脱保護の条件下、N末端で遊離のアミノ基を、C末端でカルボキサミド基を有することになる。PAL、XAL及びMBHAの固体支持体を用いるPNAの合成は、カルボキサミドをC末端でもたらし、そして、保護された又は遊離のアミノ基をN末端でもたらす。しかし、PEG及びPAMの固体支持体を使用すると、遊離のカルボキシル基がC末端でもたらされ、保護された又は遊離のアミノ基がN末端でもたらされることとなる。PNA合成においてどの固体支持体を選ぶかは、PNAオリゴマーの使用目的によって決まる。
【0259】
実施例2
ヒトApoE遺伝子に対するPNAオリゴマープローブブロックの合成
【0260】
【化5】
Xはユニバーサル塩基であり、glyはグリシンリンカーである。
【0261】
プローブの左半分は、C末端で遊離のカルボキシル基を必要とする。これは、グリシン誘導体化PEG支持体並びにG、C及びユニバーサル塩基PNAモノマーを用いることにより、Expedite合成装置において2マイクロモルのスケールで、Applied Biosystemsにより提供されるPNA合成プロトコル及びマニュアルに従って、得られる。レポーター色素はN末端アミノ基に結合される一方、PNAは標準的手順により固体支持体に結合される。その代わりに、PNAを支持体から切り離した後、レポーター色素をN末端アミノ基に結合させてもよい。プローブの精製は、単純な沈殿又はHPLCにより行う。
【0262】
プローブの右半分は、G、C、ユニバーサル塩基PNAモノマー、Fmoc保護グリシン、及びリンカー上にあるクエンチャーを含むPAL又はXALの固体支持体を用いることにより、合成する。リンカーはリジンである。その代わりの方法では、支持体からPNAを切り離した後、クエンチャーをリジンの側鎖アミノ基に結合する。この場合、グリシン単位のFmoc保護基を、クエンチャー結合工程において保持する。このプローブは、グリシンからFmoc基を除去した後、プローブの左半分と結合できるようになる。
【0263】
予め合成したプローブの左半分及び右半分からのヒトApoE遺伝子プローブの合成
半分二つの連結反応を、賦活剤の存在下、有機溶媒(ACN、DMF、NMP、DMSOなど)、水性溶媒(水又は緩衝液)、又は有機溶媒と水性溶媒の混合物において行う。一般的に使用される賦活剤(例えば、EDC、HOAt、又はEDCとHOATの混合物)及びその他の知られた賦活剤を結合反応に用いる。該プローブの半分を、等モル量ずつ、適当な一種以上の溶媒において、賦活剤とともに、混合する。反応の進行をHPLCで追跡する。生成物の精製をHPLC又は他の方法により行う。プローブの標識を、蛍光標識2’,7’ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシローダミン(JOE)の付加により行う。
【0264】
実施例3
組合せオリゴマープローブを使用するリアルタイムモニタリングによる試料中の特定ヌクレオチド配列の検出
この実施例では、TAQMAN(登録商標)リアルタイムPCRモニタリングシステムにおいて、組合せオリゴマープローブを用い、アポリポたんぱくE(ApoE)遺伝子のセグメントに相当するPCR産物の蓄積をモニターすることを説明する。試験され比較される試料は、不死化細胞株(Coriell Cell Repository,Coriell Institute for Medical Research,Camden NJ)から分離されるヒトゲノムDNA試料である。
【0265】
25マイクロリットルの複数の反応材料を混合する。そのそれぞれは以下を含有する。
【0266】
12.5μl 2× TAQMAN(登録商標)ユニバーサルPCRマスターミックス(Applied Biosystems)
【0267】
【化6】
10ng ヒトゲノム標的DNA
ApoEセグメントを温度サイクリング条件により増幅する。その条件は、50℃2分から始まり、95℃10分、次いで、40サイクルの:92℃で変性15秒並びに60℃1分のアニーリング及び伸長である。温度サイクリング及びリアルタイム蛍光検出をABI PRISM(登録商標)7700配列検出システム(Applied Biosystems)において行う。
【0268】
蛍光バックグランドを上回るレポーターシグナルの検出は、ヒトゲノムDNA試料中のApoEセグメントの存在を意味する。
【0269】
実施例4
組合せオリゴマープローブライブラリーを使用する試料中の特定ヌクレオチド配列の検出
この実施例では、ApoE PCR産物の生成の間、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのライブラリーをプローブとして用いて核酸塩基配列の生成をモニタリングすることを説明する。試験され比較される試料は、不死化細胞株(Coriell Cell Repository,Coriell Institute for Medical Research,Camden NJ)から分離されるヒトゲノムDNA試料である。異なる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを、一連の96ウェルプレートの各ウェルに添加する。この実施例において、3つの特異性決定核酸塩基及び1つのユニバーサル塩基を有するオリゴマーブロックの連結によって形成される4096の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー(そのようなプローブの完全なライブラリーからなる可能な65536の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのうち4096)を、3つの1536ウェルプレート(Nalge Nunc,Rochester NY 14625 USA)において、相当する数のウェルに添加する。
【0270】
25マイクロリットルの複数の反応材料を混合する。そのそれぞれは以下を含有する。
【0271】
12.5μl 2× TAQMAN(登録商標)ユニバーサルPCRマスターミックス(Applied Biosystems)
【0272】
【化7】
200nM 絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマープローブ
10ng ヒトゲノム標的DNA
ApoEセグメントを温度サイクリング条件により増幅する。その条件は、50℃2分から始まり、95℃10分、次いで、40サイクルの:92℃で変性15秒並びに60℃1分のアニーリング及び伸長である。温度サイクリング及びリアルタイム蛍光検出をABI PRISM(登録商標)7700配列検出システム(Applied Biosystems)において行う。
【0273】
蛍光バックグランドを十分上回るレポーターシグナルの検出は、そのウェルに添加した絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーとヒトゲノムDNA試料中のApoEセグメントとのハイブリッド形成を意味する。
【0274】
実施例5
組合せオリゴマープローブライブラリーのアレイを使用する試料中の特定ヌクレオチド配列の検出
この実施例では、核酸塩基配列とApoE PCR産物とのハイブリッド形成を説明する。該ハイブリッド形成では、アレイに付着させられた絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのライブラリーをハイブリッド形成のプローブとして用いる。試験され比較される試料は、不死化細胞株(Coriell Cell Repository,Coriell Institute for Medical Research,Camden NJ)から分離されるヒトゲノムDNA試料である。
【0275】
3つの特異性決定核酸塩基及び1つのユニバーサル塩基を有するオリゴマーブロック(そのようなプローブの完全なライブラリーからなる)の連結によって形成される可能な65536の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーすべてを同時に含むマイクロアレイを、該オリゴマーを含む溶液をガラス基板にスポットすることにより、作製する(DeRisi et al.,Science 278:680−686(1997)、Lashkari et al.,P.N.A.S.94:13057−13062(1997))。
【0276】
ヒトゲノムDNA試料は上述したように調製する。精製cDNAを、10μgポリ(dA)及び0.3μlの10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む11μlの3.5×塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)中に再懸濁する。その溶液を、2分間沸騰させ、その後、室温に冷却した後、カバーガラス下、マイクロアレイプレートに塗布する。次いで、そのスライドガラスをハイブリッド形成チャンバに配置し、水浴において62℃で10時間インキュベートする。次いでスライドガラスを2×SSC、0.2%SDSにおいて5分間洗浄し、その後、0.05×SSCにおいて1分間洗浄する。次いでスライドガラスを、Beckman CS−6R遠心機において500rpmで遠心して乾燥させる。
【0277】
スライドガラスを、GenePix4000マイクロアレイスキャナー(Axon Instruments,UnionCity,CA 94587 USA)においてスキャンする。アレイ上の位置における蛍光バックグランドを上回るレポーターシグナルの検出は、その位置における絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーとヒトゲノムDNA試料中のApoEセグメントとのハイブリッド形成を意味する。
【0278】
本明細書で述べたすべての特許、公開特許出願、及び刊行物は、それを引用することにより、その内容がそっくり本明細書に記載されたものとする。本発明の記載した組成物及び方法について、種々の修飾・変更及び変形が、本発明の範囲及び精神を逸脱することなく存在することは、当業者に明らかなことである。種々の特定の態様について本発明を記載してきたが、当然のことながら、請求の範囲に記載する本発明は、そのような特定の態様に不当に限定すべきものではない。実際、本発明を実施するための記載した態様について、種々の修飾・変更が、当業者に明らかであり、それらは、請求の範囲内として解釈されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】図1A〜1Cは、本発明の核酸塩基オリゴマーブロック及び絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのある態様の一般化した構造を示し、そこにおいて、ユニバーサル塩基はリンカーに隣接する(すなわち近くにある)。図1Aは5’−オリゴマーブロックの構造を示す。図1Bは3’−オリゴマーブロックの構造を示す。図1Cは、5’−オリゴマーブロックと3’−オリゴマーブロックを連結した後の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの構造を示す。各Xは、特異性決定核酸塩基であり、そこにおいて、例えば、核酸塩基は、それぞれ独立して、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、又はウラシルからなることができる。Uはユニバーサル核酸塩基である。「L」は5’リンカーまたは3’リンカーの化学部位を表す。「リンカー(LINKER)」は、オリゴマーブロックの連結反応の後に形成される共有結合を表す。a、b、c及びdは、整数である。
【図2】図2A〜2Cは、本発明の核酸塩基オリゴマーブロック及び絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのある態様の一般化した構造を示し、そこにおいて、一つ以上のユニバーサル塩基はリンカーから離れている。図2Aは5’−オリゴマーブロックの構造を示す。図2Bは3’−オリゴマーブロックの構造を示す。図2Cは、5’−オリゴマーブロックと3’−オリゴマーブロックを連結した後の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの構造を示す。各Xは、特異性決定核酸塩基であり、そこにおいて、例えば、核酸塩基は、それぞれ独立して、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、又はウラシルからなることができる。Uはユニバーサル核酸塩基である。「L」は5’リンカーまたは3’リンカーの化学部位を表す。「リンカー(LINKER)」は、オリゴマーブロックの連結化学反応の後に形成される共有結合を表す。a、b、c及びdは、整数である。
【図3】図3A〜3Dは、本発明のオリゴマーブロック及び絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのある態様の一般化した構造を示し、そこにおいて、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、二つより多いオリゴマーブロックの連結反応から形成される。図3Aは5’−オリゴマーブロックの構造を示す。図3Bは3’−オリゴマーブロックの構造を示す。図3Cは内部オリゴマーブロックの構造を示す。図3Dは、5’−オリゴマーブロック、内部オリゴマーブロック及び3’−オリゴマーブロックを連結した後の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの構造を示す。各Xは、特異性決定核酸塩基であり、そこにおいて、例えば、核酸塩基は、それぞれ独立して、塩基であるアデニン、グアニン、チミン、シトシン、又はウラシルからなることができる。Uはユニバーサル核酸塩基である。「L」は5’リンカーまたは3’リンカーの化学部位を表す。「リンカー(LINKER)」は、オリゴマーブロックの連結化学反応の後に形成される共有結合を表す。a〜gは、整数である。
【図4】図4A及び4Bは、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの二つの具体例を示しており、そこにおいて、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、標的配列に対して、連続した相補性を有してもよいし、有しなくともよい。図4Aは、連続した相補性で(すなわちギャップなしで)標的核酸塩基配列にハイブリダイズする絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを示す。図4Bは、連続していない相補性で(すなわちギャップありで)標的核酸塩基配列にハイブリダイズする絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを示す。
【図5】図5A及び5Bは二つの具体的な連結反応を示し、そこにおいて、一つのオリゴマーブロックはカルボン酸基を含み、第二のオリゴマーブロックはアミノ基を含む。そして、これら二つの反応性基は、相互に作用してペプチド型結合を形成する。
【図6】図6A〜6Cは、ホウ水素化物還元を伴う三つの具体的な連結反応を示す。
【図7A】図7A〜7Dは具体的な連結反応を示す。図7A及び7Bは、ホウ水素化物還元を伴う二つの具体的な連結反応を示す。
【図7B】図7A〜7Dは具体的な連結反応を示す。図7A及び7Bは、ホウ水素化物還元を伴う二つの具体的な連結反応を示す。
【図7C】図7A〜7Dは具体的な連結反応を示す。図7Cは、アルデヒド及びアミノ基を伴う具体的な連結反応を示す。
【図7D】図7A〜7Dは具体的な連結反応を示す。図7Dは、具体的なディールス−アルダー型連結反応を示す。
【図8】図8A〜8Cは、チオール反応性基を伴う三つの具体的な連結反応を示す。
【図9】図9は、ユニバーサル塩基のいくつかの非限定的な具体例の構造を示す。(A)7−アザインドール(7AIと表示)、(B)6−メチル−7−アザインドール(M7AIと表示)、(C)ピロールピリジン(PPと表示)、(D)イミジゾピリジン(ImPyと表示)、(E)イソカルボスチリル(ICSと表示)、(F)プロピニル−7−アザインドール(P7AIと表示)、(G)プロピニルイソカルボスチリル(PICSと表示)、及び(H)アレニル−7−アザインドール(A7AI)と表示。この図で使用する「R」は、塩基が結合する骨格構造である。
【図10】図10は、天然に存在する塩基を含む他の塩基と塩基対合できる塩基の構造を示す。(A)5−プロピニル−ウラシル、(B)2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、(C)2−チオ−チミン、(D)2−チオ−ウラシル、(E)N9−(7−デアザ−グアニン)、(E)N9−(デアザ−8−アザ−グアニン)、(F)N9−(2,6−ジアミノプリン)、(G)N8−(7−デアザ−8−アザアデニン)。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、核酸やその他のオリゴマー分子に対するハイブリッド形成(ハイブリダイゼーション)に用いる組合せオリゴマー(コンビナトリアルオリゴマー)の合成の分野に関するアッセイ方法及び材料を提供する。
【背景技術】
【0002】
序論
核酸のハイブリッド形成は、幅広い生物学的研究の技法及び臨床応用の基礎をなす基本的なプロセスである。ハイブリッド形成に基づく方法は、核酸の検出、定量、及び/又は分析に有用である。プローブやプライマーを用いるハイブリッド形成法は、2’−デオキシリボ核酸及びリボ核酸(すなわちDNA及びRNA)の構造のような核酸種を含むことができるが、その代わりに非DNA又は非RNAの構造(例えば修飾ヌクレオチドやその他の重合核酸塩基構造(例えばペプチド核酸(PNA)やロックト核酸(LNA)(locked nucleic acid)))を組み込むよう拡張されてきた。
【0003】
プローブに基づくアッセイは、特定のヌクレオチド種に対する選択性が要求される遺伝子発現の研究すべての基礎となっている。長い間、核酸やその他の核酸塩基ポリマーのプローブが、細菌、カビ、ウイルス、又はその他の生物体に由来する核酸が存在するかどうか試料を分析するため、そして、遺伝子に基づく疾患の検査に、臨床上用いられてきた。
【0004】
核酸増幅アッセイは、現代の生物学的分析に利用される配列特異的検出法の重要な種類の一つであり、ヒトの疾患の診断、ヒトの特定、微生物の特定、父子鑑別、ウイルス学、及びDNA配列決定において多様な用途を有している。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅法は、高い感度及び特異性で、標的核酸配列の生産及び検出を可能にする。PCR法は、急速に普及し、応用され、多くの生物学的用途(クローニング法、遺伝子発現の解析、DNA配列決定、遺伝子地図作製、医薬の発見、及びその他の多数の用途を含む)の基礎をなしてきた。PCR産物(すなわちアンプリコン)を検出するため、標的配列又はアンプリコンとハイブリダイズすることができる核酸塩基オリゴマープローブを用いる方法は、当該技術においてよく知られている。
【0005】
ゲノムやトランスクリプトームに含まれる情報は膨大である。そのため、遺伝子解析用の配列獲得やヒト疾患の理解を高めるための手法は、典型的に、高処理能力の解析を必要とし、それは、単一の用途において数万あるいは数十万ものプローブ又はプライマーを要する。プローブ又はプライマーとして用いる核酸塩基オリゴマーを速くかつ経済的に合成することが、多数の(例えば何千もの)オリゴマーを要する遺伝子解析法を実行するために必要となる。また、特定の配列のオリゴマーを高速で合成する方法は、一般により有益である。というのも、特定の配列のオリゴマーに対する要求が満たされる上に、実験をより短い時間で完了させることができるからである。
【0006】
段階的なモノマー組み立て(デノボ合成)に基づいて特定の核酸塩基ポリマーを構築する市販の手段は、残念ながら、一つのオリゴマー生産に数時間を要する上、この製造方法は、数千のプローブ又はプライマーの製造に法外な費用がかかる。従って、高処理能力の用途のためのプローブ又はプライマーとして使用できる必要な核酸塩基配列を有する数千のオリゴマーを高速で効率よく経済的に製造するための方法をもつことは、有利なはずである。
【0007】
オリゴマーブロックライブラリーの複雑度は、オリゴマーにおける特異性決定核酸塩基の部位の数によって決まる。例えば、特異性決定核酸塩基の部位を8つ有するオリゴマー(八量体)で以下の配列
【0008】
【化1】
を有するものの場合、二つの予め合成された四量体ブロックの連結反応産物として合成することができる。それらのブロックは、
【0009】
【化2】
とすることができる。
【0010】
予め合成される四量体ブロックの各部位が、天然に存在する核酸塩基の任意のものであるとすると、ライブラリーは、(44)すなわち256の可能な四量体の組合せからなることになる。一方、すべての可能な八量体を予め合成することにすると、48すなわち65536の可能なオリゴマーのライブラリーを保持する必要があることとなる。
【0011】
残念ながら、この方法は、オリゴマーブロックを連結するのに用いる付加の化学反応によって妨げられる。共有結合を形成し、オリゴマーブロックのサブユニットを連結するため、鋳型に依存しない多くの連結化学反応が、当該技術において広く知られている。しかし、得られたオリゴマーをハイブリッド形成反応に用いるとき(例えばプローブ又はプライマーとして用いるとき)、この付加化学反応に起因して、しばしば、不安定な二重鎖構造が生じる。オリゴマーブロックを組合せるのに用いる結合は、組合せオリゴマーに不安定性をもたらす。この不安定性は、形成される二重鎖の低下した融解温度(Tm)として現れてくる。すなわち、組合せオリゴマーのTmは、オリゴマーブロック又はリンカーを用いずに単一の反応で合成した同じ塩基配列のオリゴマーのTmに比べて、顕著に低くなる。このTmの低下を「Tmペナルティー」と名づける。結合部位の化学構造によってもたらされるこの不安定性は、例えば、10℃もの「Tmペナルティー」を生じさせ得る。
【0012】
この不安定性を打ち消すべく、より長い(そして結果的により複雑で高価な)オリゴマーを、満足のいく程度のハイブリッド形成安定性を得るため、調製する必要がある。しかし、より長いオリゴマーが必要になるということはまた、オリゴマーブロックライブラリーの複雑度が指数関数的に増えることを意味する。例えば、四量体オリゴマーライブラリーは256の可能なブロックを有する。五量体ライブラリーは1024の可能なブロックを含み、六量体ライブラリーは4096の可能なブロックを含む必要がある。長さで約6〜8のオリゴマーよりも顕著に長いオリゴマーのライブラリーを保持することは、実用的でなく、法外に高価なものになる。
【0013】
従って、組合せ核酸塩基オリゴマーの費用対効果の高い合成のための組成物及び方法が必要であり、十分な安定性及び特異性を保持するためオリゴマー内でより長い特異性決定配列を作る必要性が、オリゴマーを作るのに用いる付加化学反応によって生じることのない合成のための組成物及び方法が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の概要)
本発明は、リンカー構造によって互いに結合されるより小さなオリゴマーブロックから組合せオリゴマーを合成するのに有用であり得る組成物及び方法を提供する。ユニバーサル核酸塩基、又はユニバーサル核酸塩基の配列は、スペーサー領域を与えることができ、これは、オリゴマーブロックの塩基対合セグメント(すなわち特異性決定核酸塩基を含むセグメント)を、付加結合から「絶縁(隔離)」することができる。ここで、ユニバーサル核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的ポリマー構造上で塩基を顕著に区別することのない塩基を含む。特異性決定核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的ポリマー構造上で塩基を区別することができるものである。従って本発明は、ユニバーサル核酸塩基を含む組合せオリゴマーを提供し、ここで、リンカー構造に起因するTmペナルティーは、減少しているか又は無くなっている。本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを用いれば、必要なTmを得るためさらに特定の塩基配列を追加する必要なく、所定のTm範囲において、組合せ核酸塩基オリゴマーを構築することができる。
【0015】
また、本発明は、オリゴマーブロックライブラリーを提供し、そこにおいて、オリゴマーブロックのコレクションが、絶縁性組合せオリゴマーの迅速な合成のため、手元に維持され用意される。オリゴマーブロックライブラリーは、複数の特異性決定部位のために核酸塩基配列が並び替えられた複数のオリゴマーブロックを含み、さらに、核酸塩基の配列において、少なくとも一つの、より典型的には一つより多い、ユニバーサル塩基の部位を有する。オリゴマーブロックライブラリーは、いくつかの、ある態様において多数の、またある態様においてすべての、可能な核酸塩基配列の並べ替え物を含むことができる。
【0016】
典型的な態様において、本発明は、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリーを提供し、それは、複数のオリゴマーブロックを含み、ここで、各オリゴマーブロックは、それぞれ独立して、少なくとも三つの特異性決定核酸塩基及び少なくとも一つのユニバーサル核酸塩基を含む重合された核酸塩基と、重合された核酸塩基からなる分子の一方又は両方の末端に共有結合される少なくとも一つの化学反応性部分とを含む。例えば、デオキシリボヌクレオチドオリゴマーブロックは、重合された核酸塩基の3’−末端、5’−末端又は両方の末端に共有結合される化学反応性部分を有することができる。一つのオリゴマーブロック上にある該化学反応性部分は、少なくとも一つの他のオリゴマーブロック上にある化学反応性部分と反応することができ、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成するため、鋳型なしで、該オリゴマーブロック間に共有結合リンカーを形成できる。該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ハイブリッド形成の標的配列を有し、それは、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを構成するオリゴマーブロックにおいて、特異性決定核酸塩基の複合物である。
【0017】
本発明のある態様において、各オリゴマーブロックは、それぞれ独立して、約3〜約8の特異性決定核酸塩基を含む。ある態様において、オリゴマーブロックライブラリーは、約1〜約10のユニバーサル核酸塩基を含むオリゴマーブロックを含むことができる。本発明のある態様において、各オリゴマーブロックは、それぞれ独立して、約1〜約3のユニバーサル核酸塩基を含む。ユニバーサル核酸塩基は、二つの特異性決定核酸塩基の間に、それらに隣接して配置することができる。本発明のある態様において、ユニバーサル核酸塩基は、化学反応性部分の近くに、化学反応性部分から離して、あるいは、化学反応性部分に隣接して、配置することができる。
【0018】
ある態様において、ユニバーサル核酸塩基は、以下の一つ以上からなる。5−ニトロインドール、3−ニトロピロール、7−アザインドール、6−メチル−7−アザインドール、ピロールピリジン、イミジゾピリジン、イソカルボスチリル、プロピニル−7−アザインドール、プロピニルイソカルボスチリル、及びアレニル−7−アザインドール。また、ユニバーサル核酸塩基は、そのプロピニル誘導体を含む以下の化合物の一つ以上からなることができる。8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシグアノシン、8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシシチジン、2’−デオキシウリジン、2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシグアノシン、及びピロロ[2,3−d]ピリミジンヌクレオシド。また、ユニバーサル核酸塩基は、その誘導体を含む以下の化合物のいずれかからなることができる。デオキシイノシン(例えば2’−デオキシイノシンン)、7−デアザ−2’−デオキシイノシン、2’−アザ−2’−デオキシイノシン、3’−ニトロアゾール、4’−ニトロインドール、5’−ニトロインドール、6’−ニトロインドール、4−ニトロベンゾイミダゾール、ニトロインダゾール(例えば5’−ニトロインダゾール)、4−アミノベンゾイミダゾール、イミダゾ−4,5−ジカルボキサミド、3’−ニトロイミダゾール、イミダゾール−4−カルボキサミド、3−(4−ニトロアゾール−1−イル)−1,2−プロパンジオール、及び8−アザ−7−デアザアデニン(ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン)。他の例において、ユニバーサル核酸塩基は、3−メチル−7−プロビニルイソカルボスチリル基、3−メチルイソカルボスチリル基、5−メチルイソカルボスチリル基、イソカルボスチリル基、フェニル基、又はピレニル基とリボース又はデオキシリボースとを組合せることにより、ユニバーサル核酸塩基を形成してもよい。
【0019】
また、本発明は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの合成方法を提供し、該方法は、本発明の特徴を有する二つ以上のオリゴマーブロック(例えば、本発明のオリゴマーブロックライブラリーから選ばれるもの)を選択すること(ここで、該オリゴマーブロック上にある化学反応性部分は、反応して、鋳型なしで該オリゴマーブロック間に共有結合リンカーを形成できるものである)、及び、選択したオリゴマーブロックを適当な条件下で反応させることによって、該オリゴマーブロック上にある化学反応性部分を結合して該オリゴマーブロック間に共有結合リンカーを形成し、それにより、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成することを含む。本発明を実施するのに適当な化学反応性部分には、例えば、カルボキシル基、アルデヒド、ケトン、アミノ基、アミノキシ基、ハロゲン化物、及びスルフヒドリル基がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
A.定義
特に断らないかぎり、ここで用いる技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術における当業者が通常理解するところと同じ意味を有するものである。当業者に明らかなとおり、ここに記載するものに類似の又は等価な方法及び材料が多く存在し、それらは、本発明の実施に利用可能である。勿論、本発明は、決して、説明された方法や材料に限定されるものではない。本発明の目的のため、以下の用語を下記のように定義する。
【0021】
用語「核酸塩基」又は「塩基」は、そのような核酸塩基がポリマー構造に組み込まれるとき、相補的な核酸塩基又は核酸塩基アナログ(すなわち核酸塩基の誘導体)との対合において、ワトソン−クリック型の水素結合を形成することができ、相互作用を積み重ねることができる任意の窒素含有複素環式成分を意味する。「複素環式」は、一つ以上の環原子がヘテロ原子(例えば窒素、酸素又は硫黄(すなわち炭素以外))である環系を有する分子を指す。
【0022】
多数の核酸塩基、核酸塩基アナログ、及び核酸塩基誘導体が知られている。核酸塩基の非限定的な具体例には、プリン類及びピリミジン類並びにその修飾形(例えば7−デアザプリン)がある。典型的な核酸塩基には、天然に存在する核酸塩基、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、及び天然に存在する核酸塩基のアナログ(Seela、米国特許第5446139号)、例えば、7−デアザアデニン、7−デアザグアニン、7−デアザ−8−アザグアニン、7−デアザ−8−アザアデニン、イノシン、ネブラリン、ニトロピロール(Bergstrom,J.Amer.Chem.Soc.,117:1201−1209[1995])、ニトロインドール、2−アミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2,6−ジアミノプリン、ヒポキサンチン、プソイドウリジン、プソイドシトシン、プソイドイソシトシン、5−プロピニルシトシン、イソシトシン、イソグアニン(Seela、米国特許第6147199号)、7−デアザグアニン(Seela、米国特許第5990303号)、2−アザプリン(Seela、WO01/16149)、2−チオピリミジン、6−チオグアニン、4−チオチミン、4−チオウラシル、O6−メチルグアニン、N6−メチルアデニン、O4−メチルチミン、5,6−ジヒドロチミン、5,6−ジヒドロウラシル、4−メチルインドール、ピラゾロ[3,4−D]ピリミジン、「PPG」(Meyer、米国特許第6143877号及び第6127121号、Gall、WO01/38584)、及びエテノアデニン(Fasman(1989) in Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology,pp.385−394,CRC Press,Boca Raton,F1)がある。
【0023】
ここで用いる用語「核酸塩基オリゴマー」又は「オリゴマー」は、核酸塩基を含むサブユニットの重合配列物を指す。典型的に、塩基は、「核酸塩基オリゴマー」又は「オリゴマー」においてポリマー骨格構造に結合することができる。オリゴマーは、一本鎖又は二本鎖とすることができ、そして、ある遺伝子配列のセンス鎖もしくはアンチセンス鎖又は任意の他の核酸塩基配列に相補的であり得る。ある核酸塩基オリゴマーは、標的ポリヌクレオチドの相補的部分とハイブリダイズして二重鎖を形成することができる。この二重鎖は、ホモ二重鎖又はヘテロ二重鎖であり得る。ある核酸塩基オリゴマーは、典型的に短く、例えば、限定されることなく、約100核酸塩基未満の長さである。核酸塩基を含むサブユニット間の結合は、任意の種類とすることができる。適当なオリゴマー構造の非限定的な具体例には、オリゴ2’−デオキシリボヌクレオチド(すなわちDNA)及びオリゴリボヌクレオチド(すなわちRNA)、ロックト核酸(LNA)、並びにペプチド核酸(PNA)がある。核酸塩基オリゴマーは、酵素により伸長可能であるもの、又は、酵素により伸長可能でないものとすることができる。
【0024】
ここで用いる用語「核酸」は、ヌクレオチド又はヌクレオチドアナログから形成される骨格を有する核酸塩基ポリマーである。好ましい核酸には、2’−デオキシリボ核酸及びリボ核酸(すなわちDNA及びRNA)がある。なお、ペプチド核酸(PNA)は、核酸模倣物であり、真の核酸ではない。
【0025】
用語「二重鎖」は、一つ以上の核酸塩基オリゴマーの分子間二本鎖部分又は分子内二本鎖部分を意味し、それは、核酸塩基のワトソン−クリック相互作用、フーグスティーン相互作用、又は他の配列特異的相互作用により、塩基対合しているものである。一態様において、二重鎖は、プライマーと鋳型鎖とからなることができる。もう一つの態様において、二重鎖は、伸長可能でない核酸塩基オリゴマープローブと標的鎖とからなることができる。「ハイブリッド」は、塩基特異的相互作用(すなわちワトソン−クリック型又はフーグスティーン型の相互作用)により相互に作用する核酸塩基オリゴマーの二重鎖、三重鎖、又はその他の塩基対合した複合体を意味する。
【0026】
ここで用いる用語「配列特異性」又は「配列特異的」は、二つ以上の重合核酸塩基配列が相補的塩基対合に起因する水素結合相互作用によりハイブリダイズする能力を意味する。標準的な塩基対合の非限定的な具体例には、アデニンのチミンとの塩基対合、あるいは、ウラシル及びグアニンのシトシンとの塩基対合がある。塩基対合モチーフの他の非限定的な具体例には、5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、2−チオウラシル、又は2−チオチミンのいずれかとアデニンとの塩基対合、5−メチルシトシン又はプソイドイソシトシンのいずれかとグアニンとの塩基対合、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)又はN9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)のいずれかとシトシンとの塩基対合、並びに、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)又はN9−(2,6−ジアミノプリン)のいずれかとチミン又はウラシルとの塩基対合があるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
「ヌクレオシド」は、天然に存在するβアノマー配置又はαアノマー配置にある糖(例えばリボース、アラビノース、キシロース、及びピラノース)の1’−炭素原子に結合した核酸塩基からなる化合物を指す。糖は、置換又は非置換のものとすることができる。置換リボースには、一つ以上の炭素原子(例えば2’−炭素原子)が一つ以上の同じ又は異なるCl、F、−R、−OR、−NR2、もしくはハロゲン基(ここで各Rは、それぞれ独立してH、C1〜C6アルキル基又はC5〜C14アリール基である)の置換基を有するリボースがあるが、これらに限定されるものではない。リボースの具体例には、リボース、2’−デオキシリボース、2’,3’−ジデオキシリボース、2’−ハロリボース、2’−フルオロリボース、2’−クロロリボース、及び2’−アルキルリボース、例えば、2’−O−メチル、4’−α−アノマーヌクレオチド、1’−α−アノマーヌクレオチド(Asseline et al.,Nucl.Acids Res.,19:4067−74[1991])、2’−4’−及び3’−4’−結合、並びに他の「ロックト」又は「LNA」、二環式糖修飾物(WO98/22489、WO98/39352、WO99/14226)がある。ポリヌクレオチド内の具体的なLNA糖アナログには、以下に示す構造のものがある。
【0028】
【化3】
式中、Bは任意の核酸塩基とすることができる。
【0029】
糖は、2’位又は3’位で修飾(例えばメトキシ、エトキシ、アリルオキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、メトキシエチル、アルコキシ、フェノキシ、アジド、アミノ、アルキルアミノ、フルオロ、クロロ、及びブロモ)を有することができる。ヌクレオシド及びヌクレオチドには、天然に存在するD立体配置異性体(D形)のほか、L立体配置異性体(L形)がある(Beigelman,米国特許第6251666号、Chu,米国特許第5753789号、Shudo,EP0540742、Garbesi et al.,Nucl.Acids Res.,21:4159−4165(1993)、Fujimori,J.Amer.Chem.Soc.,112:7435(1990)、Urata,(1993)Nucleic Acids Symposium Ser.No.29:69−70)。核酸塩基がプリン(例えばA又はG)である場合、リボース糖は核酸塩基のN9位に結合される。核酸塩基がピリミジン(例えばC、T又はU)である場合、ペントース糖は核酸塩基のN1位に結合される。
【0030】
「ヌクレオチド」は、モノマー単位として、あるいは、ポリヌクレオチド重合体内において、ヌクレオシドのリン酸エステルを指す。「ヌクレオチド5’−三リン酸」は、5’位で三リン酸エステル基を有するヌクレオチドを指し、「NTP」で表すことがあり、あるいは、リボース糖の構造の特徴を特に示すため、「dNTP」及び「ddNTP」で表すことがある。三リン酸エステル基は、種々の酸素に対して硫黄置換を含んでもよい(例えばα−チオ−ヌクレオチド5’−三リン酸)。ポリヌクレオチド及び核酸の化学の検討については、Shabarova,Z.and Bogdanov,A.Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,VCH,New York,1994を参照されたい。
【0031】
ここで用いる用語「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」は、お互い交換可能に用いられ、ヌクレオチドモノマーの一本鎖重合体及び二本鎖重合体を意味する。それらは、インターヌクレオチドホスホジエステル結合(例えば3’−5’及び2’−5’)、逆方向結合(例えば3’−3’及び5’−5’)、枝分かれ構造、又はインターヌクレオチドアナログにより結合された2’−デオキシリボヌクレオチド(DNA)及びリボヌクレオチド(RNA)を含む。「ポリヌクレオチド配列」は、該重合体に沿ったヌクレオチドモノマーの配列を指す。また、ポリヌクレオチドは、付随する対イオン、例えばH+、NH4+、トリアルキルアンモニウム、Mg2+、Na+などを有する。
【0032】
3’−5’ホスホジエステル結合によって形成されるポリヌクレオチドは、5’末端及び3’末端を有すると言われる。というのも、ポリヌクレオチドを作るよう反応するモノヌクレオチドは、一つのモノヌクレオチドペントース環の5’リン酸がその隣りの3’酸素(すなわちヒドロキシル)に結合するよう、ホスホジエステル結合を介して一方向につなぎ合わされるからである。従って、ポリヌクレオチド分子の5’末端は、ヌクレオチドペントース環の5’位において遊離のリン酸基又はヒドロキシル基を有する一方、ポリヌクレオチド分子の3’末端は、ペントース環の3’位において遊離のリン酸基又はヒドロキシル基を有する。ポリヌクレオチド分子内で、他の位置又は配列に対して5’の方向にある位置又は配列は、「上流」に位置すると言われる一方、他の位置に対して3’にある位置は、「下流」であると言われる。この用語は、ポリメラーゼが、鋳型鎖に沿って5’から3’の方向に進み、ポリヌクレオチド鎖を伸長することを反映している。
【0033】
ポリヌクレオチドは、全体がデオキシリボヌクレオチドからなってもよいし、全体がリボヌクレオチドからなってもよいし、あるいは、それらのキメラ混合物からなってもよい。ポリヌクレオチドは、インターヌクレオチド、核酸塩基及び糖アナログからなってもよい。特に断らないかぎり、ポリヌクレオチド配列が示されるときは必ず、当然のことながら、ヌクレオチドは、左から右に5’から3’の方向であり、「A」はデオキシアデノシンを表し、「C」はデオキシシチジンを表し、「G」はデオキシグアノシンを表し、「T」はチミジンを表す。
【0034】
「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド配列のある特定の長さに限定されるものではなく、用語「ポリヌクレオチド」は、任意の長さのヌクレオチドの重合形態を包含する。サイズが約5〜約40の単量体単位の範囲にあるポリヌクレオチドは、典型的に当該技術においてオリゴヌクレオチドと呼ばれる。長さが数千以上の単量体ヌクレオチド単位であるポリヌクレオチドは、典型的に核酸と呼ばれる。ポリヌクレオチドは、線状、枝分かれした線状、又は環状の分子であり得る。
【0035】
同様に、用語「核酸塩基オリゴマー」又は「ポリ核酸塩基」は、共有結合した単量体核酸塩基サブユニットの重合体を表す。この用語は、核酸塩基重合体をある特定の長さに限定するものではなく、任意の長さの重合形態を包含する。
【0036】
ここで用いる用語「相補的」又は「相補性」は、ワトソン/クリック及びフーグスティーン型の塩基対合則に従う核酸塩基の逆平行鎖(すなわち核酸塩基の配列)について用いる。例えば、配列5’−AGTTC−3’(配列番号2)は、配列5’−GAACT−3’(配列番号3)に相補的である。
【0037】
ここで用いる用語「アンチセンス」は、任意のポリヌクレオチド又はその他の核酸塩基オリゴマーであって、他の核酸塩基オリゴマーに逆平行でありかつ相補的であるものを指す。用語「相補的」は、「アンチセンス」と相互に交換可能に用いられる場合がある。本発明は、任意の方法によって調製されるアンチセンスDNA、RNA又はその他の任意の核酸塩基オリゴマーを包含する。
【0038】
ここで用いる用語「Tm」は「融解温度」について用いられる。融解温度は、ホモ二重鎖又はヘテロ二重鎖にある一群の二本鎖ポリヌクレオチド分子又は核酸塩基オリゴマーの半分が解離して一本鎖になる温度である。二本鎖核酸塩基オリゴマー分子のTmは、塩基の種類、塩基配列、オリゴマー結合の構造、及び天然に存在しない配列中の特徴の存在(例えば化学合成による結合)に左右される。Tmを算出又は実験により決定する方法は当該技術において知られている。例えば、Breslauer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:3746−3750(1986)、Baldino et al.Methods in Enzymol.168:761−777(1989)及びBreslauer Methods in Enzymol.259:221−242(1995)を参照。
【0039】
用語「インターヌクレオチドアナログ」は、ポリヌクレオチドのリン酸エステルアナログ又は非リン酸アナログを意味する。リン酸エステルアナログの具体例には、限定されることなく、アルキルホスホネート(例えばC1〜C4アルキルホスホネート)、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデート、及びボロノホスフェート(boronophosphate)、C1〜C6アルキル−ホスホトリエステルがあり、付随する対イオンを含むことができる。
【0040】
非リン酸のインターヌクレオチドアナログには、ペプチド核酸(一般にPNAと呼ばれる)の群があり、そこにおいて、DNA又はRNAの糖/リン酸骨格は、非環式でアキラルな天然に存在するポリアミド結合で置換される。PNAは、天然に存在しない分子であり、知られているかぎり、ポリメラーゼ酵素、ペプチダーゼ又はヌクレアーゼに対する基質とならない。PNAはポリアミドであるため、C末端(カルボキシル末端)及びN末端(アミノ末端)を有する。PNAオリゴマーのN末端は、等価なDNA又はRNAオリゴヌクレオチドの5’−リン酸の等価物であり、C末端は3’−ヒドロキシル末端に等価である。ここで用いる用語「PNA」は、当該技術において知られている関連構造物、特に他のペプチド系核酸模倣物(例えばWO96/04000参照)をも含むことを意図する。
【0041】
ここで用いる用語「置換」は、一つ以上の水素原子が一つ以上の水素でない原子、官能基、又は部分で置換された分子を指していう。例えば、非置換窒素は−NH2である一方、−NHCH3は置換窒素である。具体的な置換基には、ハロ(例えばフッ素及び塩素)、C1〜C8アルキル基、硫酸基、スルホン酸基、スルホン基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、ニトリル基、ニトロ基、アルコキシ基(−OR(ここでRはC1〜C12アルキル基))、フェノキシ基、芳香族基、フェニル基、多環式芳香族基、複素環基、水可溶化基、及び結合部分があるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
「アルキル」は、飽和もしくは不飽和で、直鎖、枝分れ鎖、環式の、あるいは置換されている炭化水素基であって、元になるアルカン、アルケン、又はアルキンの一つの炭素原子から一つの水素原子を除くことにより得られる基を意味する。典型的なアルキル基は、1〜12の飽和及び/又は不飽和の炭素からなり、メチル、エチル、シアノエチル、イソプロピル、ブチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
「アルキルジイル」は、飽和もしくは不飽和で、枝分れ鎖、直鎖、環式の、あるいは置換されている、1〜12の炭素原子を有する炭化水素基であって、元のアルカン、アルケン又はアルキンの同じ又は二つの異なる炭素原子から二つの水素原子を除くことにより得られる二つの一価のラジカル中心を有する炭化水素基を意味する。典型的なアルキルジイル基には、1,2−エチルジイル(−CH2CH2−)、1,3−プロピルジイル(−CH2CH2CH2−)、1,4−ブチルジイル(−CH2CH2CH2CH2−)などがあるがこれらに限定されるものではない。「アルコキシジイル」は、酸素から水素原子を除くことにより得られる二つの一価のラジカル中心と、炭素原子から水素原子を除くことにより得られるもう一つのラジカルを有するアルコシキル基を意味する。典型的なアルコキシジイル基には、メトキシジイル(−OCH2−)及び1,2−エトキシジイル又はエチレンオキシ(−OCH2CH2−)があるが、これらに限定されるものではない。「アルキルアミノジイル」は、窒素から水素原子を除くことにより得られる二つの一価のラジカル中心と、炭素原子から水素原子を除くことにより得られるもう一つのラジカルを有するアルキルアミノ基を意味する。典型的なアルキルアミノジイルには、−NHCH2−、−NHCH2CH2−、及び−NHCH2CH2CH2−があるが、これらに限定されるものではない。「アルキルアミドジイル」は、窒素から水素原子を除くことにより得られる二つの一価のラジカル中心と、炭素原子から水素原子を除くことにより得られるもう一つのラジカルを有するアルキルアミド基を意味する。典型的なアルキルアミドジイル基には、−NHC(O)CH2−、−NHC(O)CH2CH2−、及び−NHC(O)CH2CH2CH2−があるがこれらに限定されるものではない。
【0044】
「アリール」は、元の芳香環系の一つの炭素原子から一つの水素原子を除いて得られる5〜14の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素基を意味する。典型的なアリール基には、ベンゼン、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどに由来する基があるが、それらに限定されるものではなく、また、置換アリール基を含む。
【0045】
「アリールジイル」は、共役共鳴電子系を有し、かつ元のアリール化合物の二つの異なる炭素原子から二つの水素原子を除くことにより得られる少なくとも二つの一価のラジカル中心を有する5〜14炭素原子の不飽和環式又は不飽和多環式炭化水素基を意味し、置換アリールジイル基を含む。
【0046】
「置換アルキル」、「置換アルキルジイル」、「置換アリール」、及び「置換アリールジイル」は、それぞれ、アルキル、アルキルジイル、アリール、及びアリールジイルであって、一つ以上の水素原子がそれぞれ独立して他の置換基で置換されているものを意味する。典型的な置換基には、F、Cl、Br、I、R、OH、−OR、−SR、SH、NH2、NHR、NR2、−+NR3、−N=NR2、−CX3、−CN、−OCN、−SCN、−NCO、−NCS、−NO、−NO2、−N2+、−N3、−NHC(O)R、−C(O)R、−C(O)NR2、−S(O)2O−、−S(O)2R、−OS(O)2OR、−S(O)2NR、−S(O)R、−OP(O)(OR)2、−P(O)(OR)2、−P(O)(O−)2、−P(O)(OH)2、−C(O)R、−C(O)X、−C(S)R、−C(O)OR、−CO2−、−C(S)OR、−C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NR2、−C(S)NR2、−C(NR)NR2(ここで各Rはそれぞれ独立して−H、C1〜C6アルキル基、C5〜C14アリール基、複素環、又は連結基である)があるが、これらに限定されるものではない。さらに、置換基には、二価の基、橋架け官能基、例えばジアゾ(−N=N−)基、エステル基、エーテル基、ケトン基、リン酸基、アルキルジイル基、及びアリールジイル基がある。
【0047】
ここで用いる用語「酵素により伸長可能」は、核酸塩基オリゴマーに該当する場合、ポリメラーゼ酵素によりポリヌクレオチド鋳型に相補的なヌクレオチドが組込まれる(すなわち伸長する)ための酵素基質として働くことができる核酸塩基オリゴマーを指す。酵素により伸長可能な核酸塩基オリゴマーは、ポリメラーゼの「プライマー」として働くことができ、プライマー伸長を支える。酵素により伸長可能な核酸塩基オリゴマーの具体例には、2−デオキシリボースポリヌクレオチド(DNA)及びリボースポリヌクレオチド(RNA)からなるオリゴマーがあり、ここで、該オリゴマーは、遊離のリボース糖の3’ヒドロキシル基を有する。
【0048】
ここで用いる用語「酵素により伸長可能でない」は、核酸塩基オリゴマーに該当する場合、ポリメラーゼ酵素によりポリヌクレオチド鋳型に相補的なヌクレオチドが組込まれる(すなわち伸長する)ための酵素基質として働くことができない核酸塩基オリゴマーを指す。酵素により伸長可能でない核酸塩基オリゴマーは、ポリメラーゼの「プライマー」として働くことができず、プライマー伸長を開始させることができない。酵素により伸長可能でない核酸塩基オリゴマー構造の多くの具体例が当該技術において知られている。そのような構造には、例えば、任意のポリヌクレオチドであって、(i)3’末端ヌクレオチドにおけるリボース糖の3’位にヒドロキシル基がないもの、(ii)3’末端ヌクレオチドにおいて又はその近くにおいて糖、核酸塩基、又はインターヌクレオチド結合に対し、ポリメラーゼ活性を妨げる修飾(例えば2’−O−メチル−リボヌクレオチド)を有するもの、あるいは(iii)そのオリゴマー構造においてリボース糖ホスホジエステル骨格を用いない核酸塩基オリゴマーがある。後者の具体例には、ペプチド核酸、いわゆるPNA類があるが、これに限定されるものではない。ここで用いる用語「伸長可能でないオリゴマー」及び「遮断オリゴマー(ブロッキングオリゴマー)」は、互いに交換可能に使用される。
【0049】
伸長可能でない核酸塩基オリゴマーは、「ターミネーターヌクレオチド」により形成することができる。ターミネーターヌクレオチドは、ポリメラーゼ酵素の作用によりポリヌクレオチドの3’末端に酵素的に組込むことができる一方、さらに伸長させることができないヌクレオチドである。従って、ターミネーターヌクレオチドは、酵素により組込み可能であるが、酵素により伸長可能ではない。ターミネーターヌクレオチドの具体例には、2,3−ジデオキシリボヌクレオチド(ddNTP)、2’−デオキシ,3’−フルオロヌクレオチド5’−三リン酸、及びそれらの標識された形態がある。
【0050】
ここで用いる用語「標的」、「標的ポリヌクレオチド」、「標的核酸塩基配列」、「標的配列」などは、相補的な核酸塩基ポリマー(例えばオリゴマー)とのハイブリッド形成の対象である特定のポリ核酸塩基配列を指す。標的配列の性質は、限定されるものではなく、例えば、DNA、RNA、その置換変形体及びアナログ、又はそれらの組合せからなる任意の配列の任意の核酸塩基ポリマーとすることができる。標的は、一本鎖又は二本鎖とすることができる。プライマー伸長プロセスにおいて、プライマーとハイブリッド形成して二重鎖を形成する標的ポリヌクレオチドは、「鋳型」とも呼ぶことができる。鋳型は、相補的ポリヌクレオチドを合成するためのパターン(型)として働く。本発明に用いる標的配列は、任意の生きている又はかつて生きていた生物体(例えば、原核生物、真核生物、植物、動物、及びウイルスがあるがこれらに限定されない)に由来するものであり得るほか、天然に存在しない合成の及び/又は組換えの標的配列とすることができる。
【0051】
ここで用いる用語「プローブ」は、標的ポリヌクレオチド配列との相補的塩基対合により二重鎖構造を形成できる核酸塩基オリゴマーを指し、さらにそこにおいて、形成される二重鎖は、検出され、可視化され、測定され、かつ/又は定量される。ある態様において、プローブは、固体支持体、例えば、カラム、チップ、又は他のアレイ構成物に固定される。
【0052】
ここで用いる用語「プライマー」は、標的配列の相補的部分とハイブリダイズしかつヌクレオチドの酵素による重合を開始できる(すなわちプライマー伸長を受けることができる)特定の配列の核酸塩基オリゴマーを指す。機能的定義によれば、プライマーは酵素により伸長可能である。
【0053】
用語「プライマー伸長」は、標的にアニールされる伸長可能なプライマーを、鋳型依存性ポリメラーゼを用いて5’→3’の方向に伸ばすプロセスを意味する。この伸長反応は、適当な緩衝液、塩、pH、温度、及びヌクレオチド三リン酸(そのアナログ及び誘導体を含む)、並びに鋳型依存性ポリメラーゼを用いる。プライマー伸長反応に適当な条件は、当該技術においてよく知られている。鋳型依存性ポリメラーゼは、アニールされたプライマーの3’末端から出発して鋳型鎖に相補的なヌクレオチドを組み込んで相補鎖を生成させる。
【0054】
用語「アニーリング」及び「ハイブリッド形成(ハイブリダイゼーション)」は、互いに交換可能に用いられ、一つのポリ核酸塩基ともう一つのポリ核酸塩基との塩基対合相互作用を意味し、それは、二重鎖又はその他の高次構造の形成をもたらす。その主たる相互作用は、ワトソン/クリック及びフーグスティーン型の水素結合により、塩基特異的(すなわちA/T及びG/C)である。
【0055】
用語「固体支持体」は、任意の固相材料を指し、その上で、オリゴヌクレオチドは、合成され、結合され、又は固定化される。固体支持体は、「樹脂」、「固相」及び「支持体」のような用語を包含する。固体支持体は、有機ポリマー、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、及びポリアクリルアミド、さらには、共重合体及びそのグラフト重合体からなることができる。また、固体支持体は、無機物であってもよく、例えば、ガラス、シリカ、細孔性ガラス(controlled−pore−glass)(CPG)、又は逆相シリカとすることができる。固体支持体は、シリカ、有機ポリマー、オリゴ糖、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、寒天、アガロース、セファロース(SEPHAROSE(登録商標))、セファデックス(SEPHADEX(登録商標))、セファクリル(SEPHACRYL(登録商標))、セルロース、デンプン、ナイロン、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、及びマイクロタイタープレートのような材料を含むことができる。
【0056】
固体支持体の構成は、ビーズ、球体、粒子、顆粒、ゲル、又は面の形態とすることができる。面は、平面、ほぼ平面、又は非平面とすることができる。固体支持体は、多孔性又は非多孔性とすることができ、膨潤性又は非膨潤性の特性を有しても良い。固体支持体は、ウェル、くぼみ、もしくは他の収容体、容器、機能、又は領域の形態で構成することができる。複数の固体支持体は、種々の部位でアレイの構成をとることができ、それは、自動装置による試薬の配達のためアドレス可能に構成することができ、あるいは、レーザー照射及び共焦点又は偏向の集光による走査を含む検出手段によりアドレス可能に構成することができる。
【0057】
ここで用いる「支持体結合」は、固体支持体上に又はそれに固定化されることを意味する。明らかなように、固定化は、任意の手段によって起こり得、例えば、共有結合によって、静電固定化によって、リガンド/リガンド相互作用を介する結合によって、接触によって、又は表面への付着によって起こり得る。
【0058】
ここで用いる用語「アレイ」又は「マイクロアレイ」は、固体支持体上に及び/又は容器の配置において存在するハイブリッド形成可能な要素(例えばポリヌクレオチド)の所定の空間的配置を示す。所定のアレイ構成物は、「チップ」又は「バイオチップ」と呼ばれる(M.Schena,Ed.Microarray Biochip Technology,BioTechnique Books,Eaton Publishing,Natick,MA[2000])。任意のアレイは、低密度数のアドレス可能な部位(例えば2〜約12)、中密度数(例えば百以上)の部位、又は高密度数(千以上)の部位を有することができる。典型的に、アレイ構成物は、幾何学的に規則的な形状であり、それは、製造、取り扱い、設置、積み上げ、試薬の導入、検出、及び保存を容易にする。アレイは、各部位の間隔が規則的な行列の様式に構成することができる。一方、均等な処理又はサンプリングのため、複数の部位をまとめたり、合わせたり、あるいは均一にまぜたりしてもよい。アレイは、複数のアドレス可能な部位を有することができ、その各部位は、処理能力の高い試薬の取扱い、自動配達、マスキング、又はサンプリングに対して空間的にアドレス可能なように構成される。また、アレイは、ある特定の手段(例えば、レーザー照射による走査、共焦点もしくは偏向による集光、及び化学発光があるがこれらに限定されない)による検出又は定量を容易にするよう構成することができる。その最も広い意味において、ここに記載する「アレイ」構成物には、複数のアレイ(すなわち多数のチップのアレイ)、マイクロチップ、マイクロアレイ、単一のチップ上に組立てられたマイクロアレイ、又は任意の他の類似構成物があるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
ここで用いる用語「動作可能な組合せで」、「動作可能な順序で」、「動作可能に結合され」、「動作可能に連結され」及び類似の用語は、分子同士の機能的な接触(例えば酵素と酵素基質との機能的な接触)を指していう。例えば、転写において、DNA鎖とRNAポリメラーゼとの接触は、分子の動作可能な組合せを形成し、そして、分子同士の動作可能な結合をもたらす。
【0060】
ここで用いる用語「遺伝子発現」は、染色体のゲノムヌクレオチド配列にコードされた遺伝子情報が、遺伝子の「転写」(すなわちRNAポリメラーゼの酵素作用によるもの)を通じてRNA(例えばmRNA、rRNA、tRNA又はsnRNA)に変換されるプロセスを指す。
【0061】
ここで用いる用語「試料(サンプル)」は、その最も広い意味で用いられる。「試料」は、典型的に、しかし非限定的に、生物起源のものであり、動物や植物(例えば任意の体液又は組織)、培養された細胞もしくは組織、微生物(原核生物又は真核生物)の培養物、生きた(又はかつて生きていた)培養物もしくは細胞から生産される任意の画分もしくは産物から得られる任意の種類の材料、又は合成により製造されたもしくはインビトロの試料を指すことができる。試料は、未精製でも、精製されたものでもよい。精製された試料は、主に、一つの成分、例えば全細胞RNA、全細胞mRNA、cDNA、又はcRNAを含むことができる。ある態様において、試料は、生体でない起源からの材料、例えば合成により製造される核酸塩基ポリマー(例えばオリゴマー)を含み得る。
【0062】
ここで用いる用語「インビトロ」は、人工的な環境を指し、そして、人工的な環境内で起こるプロセス又は反応を指す。用語「インビボ」は、自然環境(例えば動物内あるいは細胞内)を指し、そして、自然環境内で起こるプロセス又は反応を指す。
【0063】
ここで用いる用語「DNA依存性DNAポリメラーゼ」は、相補的で逆平行のDNA鎖を合成するため鋳型としてデオキシリボ核酸(DNA)を用いるDNAポリメラーゼを指す。
【0064】
ここで用いる用語「DNA依存性RNAポリメラーゼ」は、RNA鎖を合成するため鋳型としてデオキシリボ核酸(DNA)を用いるRNAポリメラーゼを指す。DNA依存性RNAポリメラーゼが媒介するプロセスは、一般に「転写」と呼ばれる。二本鎖DNA分子のいずれかの鎖を、RNA合成の鋳型として用いることができ、それは、DNA分子に動作可能に結合されるRNAポリメラーゼプロモーターの配列及び配向に依存する。
【0065】
ここで用いる用語「RNA依存性DNAポリメラーゼ」は、相補的で逆平行のDNA鎖を合成するため鋳型としてリボ核酸(RNA)を用いるDNAポリメラーゼを指す。RNA分子のDNA複製物を生成させるプロセスを一般に「逆転写」と呼び、それを達成する酵素は「逆転写酵素」である。ある場合、逆転写酵素活性を示す酵素は、別の活性(例えば、ヌクレアーゼ活性(例えばRNアーゼHリボヌクレアーゼ活性)及びDNA依存性DNAポリメラーゼ活性があるがこれに限定されない)も示すことがある。
【0066】
ここで用いる用語「増幅」は、一般に、ある分子の量の増加をもたらす任意のプロセスを指す。それがポリ核酸塩基分子に該当するとき、増幅は、出発物質の一つもしくは数個の複製物又は少量から、ポリ核酸塩基分子又はその一部の多数の複製物が生産されることを意味する。例えば、ポリヌクレオチドの増幅は、種々の化学的プロセス及び酵素的プロセスを包含することができる。一個又は数個の複製物の鋳型DNA分子から多数のDNA複製物をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において生成させることは、増幅の一形態である。増幅は、出発分子の完全な(厳密な)複製に限定されない。例えば、単一のDNA分子から多数のRNA分子を転写のプロセス(例えばインビトロ転写)において生成させることは、増幅の一形態である。
【0067】
ここで用いる用語「ポリメラーゼ連鎖反応」(PCR)は、試料中の標的ポリヌクレオチドのセグメントを増幅させる良く知られた方法であり、そこにおいて、該試料は、単一のポリヌクレオチド種又は複数のポリヌクレオチドとすることができる。一般に、PCR法は、モル過剰の二つ以上の伸長可能なオリゴヌクレオチドプライマーを一つ以上の必要な標的配列を含む反応混合物に導入することからなり、そこにおいて、該プライマーは、二本鎖標的配列の対向する鎖に相補的である。反応混合物は、DNAポリメラーゼの存在下、熱サイクルの厳密なプログラムに供され、その結果、DNAプライマーに隣接する必要な標的配列が増幅される。逆転写酵素PCR(RT−PCR)は、RNA鋳型と逆転写酵素を用い、DNA依存性DNAポリメラーゼプライマー伸長による複製サイクルの前に、まずDNA鋳型分子を生成させるPCR反応である。多重PCRは、典型的に二つより多いプライマーを一つの反応に含めることにより、一つの反応で一つより多い増幅産物を生産するPCR反応を指す。多種多様のPCR応用法が当該技術において広く知られており、多くの出典、例えばAusubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,Section 15,John Wiley&Sons,Inc.,New York(1994)に記載されている。
【0068】
ここで用いる用語「ポリメラーゼ伸長」は、任意のポリメラーゼ酵素によるポリヌクレオチドの鋳型依存性重合を指す。本発明をある特定のポリメラーゼの使用に限定することは意図していない。ポリメラーゼは、RNA依存性DNAポリメラーゼ(すなわち逆転写酵素、例えばモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)逆転写酵素)、DNA依存性RNAポリメラーゼ(例えばT7ポリメラーゼ、SP6ポリメラーゼ、T3ポリメラーゼ)、又はDNA依存性DNAポリメラーゼ(例えばTaqDNAポリメラーゼ、BstDNAポリメラーゼ、クレノウフラグメント、SEQUENASE(商標))とすることができる。ポリメラーゼは、熱安定性であってもよいしそうでなくともよく、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有しても有しなくてもよい。ポリメラーゼ伸長は、重合開始にプライマーを必要とするポリメラーゼ活性に限定されない。例えば、T7RNAポリメラーゼは、ポリメラーゼの開始及び伸長にプライマーの存在を必要としない。
【0069】
ここで用いる用語「組合せ核酸塩基オリゴマー(コンビナトリアル核酸塩基オリゴマー)」は、二つ以上の予め合成されたオリゴマーブロックから合成される核酸塩基のオリゴマーであり、そこにおいて、該オリゴマーブロックはリンカーにより共有結合される。
【0070】
ここで用いる用語「部分」は、あるより大きな構造の一部であるか、又は、より大きな構造の一部になる構造を指す。例えば「標識部分(ラベル部分)」は、それが付いた分子を識別するよう働く原子又は基(例えば蛍光レポーター色素(例えばフルオレセイン、ローダミン、又はベンゾフェノキサジン))を指し、また、「リンカー部分」は、二つの他の化学構造を連結するよう働くことができる化学構造(例えば、アミノ酸、アミノアルキルカルボン酸、アルキル二酸、アルキルオキシ二酸、又はアルキルジアミン)を指す。
【0071】
(B.発明の具体的態様の説明)
本発明は、「絶縁された組合せ核酸塩基オリゴマー(絶縁組合せ核酸塩基オリゴマー)」又は同義のものとして「絶縁性組合せオリゴマー」を提供し、それは、オリゴマーのブロック又はリンカーを用いることなく合成した同じ塩基配列のオリゴマーに比べてオリゴマーブロックを用いて合成した組合せオリゴマーはTmペナルティーによって生じた技術的障害を克服するためのものである。オリゴマーブロックを用いて合成した組合せオリゴマーのTmペナルティーを克服するための以前の試みには、より多くのオリゴマー単位を組み込むことがあった(例えば、中心にgly−gly結合を有する10mer(10単量体単位)のオリゴマーは、gly−gly結合のない8merのものとほぼ同じTmを有する)。しかし、そのような以前の方法は、必要以上により複雑かつ高価である。本発明は、そのような複雑かつ高価な従来の方法に対して改善をもたらす。
【0072】
新規な絶縁組合せ核酸塩基オリゴマーは、共有結合リンカーにより共有結合される二つ以上のオリゴマーブロックを含み、さらにそこにおいて、該絶縁組合せ核酸塩基オリゴマーは、少なくとも一つのユニバーサル核酸塩基の部位を有する。ユニバーサル核酸塩基U又はユニバーサル核酸塩基の配列は、スペーサー領域をもたらすことができ、それは、オリゴマーブロックの塩基対合セグメント(すなわち特異性決定核酸塩基Xを含むセグメント)を、付加結合から「絶縁」することができる(図1A〜1C及び2A〜2Cに模式的に示すとおり)。ユニバーサル塩基Uは、リンカーに隣接してもよいし、あるいは、一つ以上の特異性決定核酸塩基Xによりリンカーから離されてもよい(図1A〜1C及び2A〜2Cに示すとおり)。本発明の特徴を有する絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、複数のリンカーを含んでもよく、複数のスペーサー領域を含んでもよい(図3A〜3Dに模式的に示すとおり)。リンカー領域は、任意の適当な長さとすることができ、従って、オリゴマーが標的核酸鎖に接するとき、オリゴマー核酸塩基は、連続していてもよいし、分かれていてもよい(図4A及び4Bに模式的に示すとおり)。オリゴマー内のユニバーサル核酸塩基は、オリゴマーの複雑度を増すことなく、ハイブリッド形成の安定性を高める。というのも、ユニバーサル塩基は、標的鎖における任意の他の塩基に塩基対合でき、従って、特定の塩基構造をとらなくともよいからである。
【0073】
本発明の組合せオリゴマーは、製造方法に関係なく、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと呼ばれる。このオリゴマーのハイブリッド形成特性は、二つ以上の成分オリゴマーブロックの合わさった特性と、それらに結合する共有結合リンカーの性質とによってもたらされる。用語「絶縁性」は、この組合せオリゴマーの特徴を示すのに用いられる。というのも、ある態様において、ユニバーサル核酸塩基は、リンカー/付加化学反応によって生じる何らかの破壊的効果から特異性決定核酸塩基を保護する絶縁効果を有するとみなすことができ、それにより、多くの種類のリンカー化学反応に付随するTmペナルティーを最小限にするか解消するとみなすことができるからである。
【0074】
絶縁性組合せオリゴマーは、任意の構造の核酸塩基を含むことができる。そのような核酸塩基には、例えば、ポリヌクレオチド(例えば2’−デオキシリボヌクレオチドのオリゴマー)、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA)、2’−O−アルキルオリゴヌクレオチド、3’修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド、N3’−P5’ホスホルアミデート(NP)オリゴマー、MGB−オリゴヌクレオチド(小溝バインダー結合オリゴヌクレオチド)、ホスホロチオエート(PS)オリゴマー、C1〜C4アルキルホスホネートオリゴマー、ホスホルアミデート、β−ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、及びα−ホスホジエステルオリゴヌクレオチドがあるが、これらに限定されるものではない。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、その製造方法に関係なく、また、オリゴマーブロックを連結するのに使用されるリンカー化学に関係なく、そのように呼ばれる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、標識されていてもよいし、されていなくともよい。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、核酸塩基オリゴマーのハイブリッド形成を含む任意の用途において、例えば、プローブ又はプライマーとして用いることができる。
【0075】
本発明の一局面は、より小さなオリゴマーブロックから組合せオリゴマー(すなわち絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー)を合成するための組成物及び方法に関し、そこにおいて、リンカー構造に起因するTmペナルティーは減少しているか又はなくなっている。本発明を用いれば、所定のTm範囲内で組合せオリゴマーを構築することができ、そこにおいて、該オリゴマーは、必要なTmを得るため追加の特定塩基配列を含む必要がない。
【0076】
本発明のさらなる局面は、オリゴマーブロックライブラリーを提供し、そこにおいて、オリゴマーブロックのコレクションが、絶縁性組合せオリゴマーの迅速な合成のため、手元に保持され用意される。オリゴマーブロックライブラリーは、各特異性決定部位に対してA−T−G−C配列(又はRNAオリゴマーについてA−ウラシル−G−C配列)が並べ替えられたオリゴマーブロックを含み、さらに、少なくとも一つの、より典型的には一つより多い、ユニバーサル塩基の部位を、核酸塩基の配列中に有する。例えば、四量体オリゴマーの場合、あるオリゴマーブロックライブラリーは、A−T−G−U、A−T−U−C、A−U−T−G、T−U−G−U、及び一つ以上のユニバーサル塩基Uを有する他の四量体を含むことができる。
【0077】
ある場合、本発明の利点には、本発明の特徴を含まないオリゴヌクレオチドに比べて、より小さなオリゴマーブロックライブラリーを使用できるということ、望ましい配列特異性を有するオリゴマーがより速く生産されること、及びオリゴマー(特にプローブとして使用できるオリゴマー(例えば蛍光オリゴマー))の製造コストが低くなることがある。
【0078】
本発明の特徴を有する絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、一つ又は二つ以上のユニバーサル塩基を含むことができる。例えば、本発明の特徴を有する絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、約1〜約3、又は、約1〜約6、又は、約1〜約10のユニバーサル核酸塩基を含むことができる。本発明の特徴を有する絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、一つ、二つ、又は三つ以上の特異性決定ユニバーサル塩基を含むことができ、好ましくは、三つ以上の特異性決定塩基を含む。例えば、本発明の特徴を有する絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、約3〜約8の特異性決定塩基を含むことができる。
【0079】
絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックの典型的なライブラリーは、複数の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得る。例えば、オリゴマーブロックライブラリーは、3つの異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、5つの異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、10以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、25以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、64以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、100以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、200以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、500以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、1000以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、5000以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、50000以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、65536以上の異なるオリゴマーブロックを含むことができ、又は、その他の数の異なるオリゴマーブロックを含むことができる。例えば、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックのライブラリーは、特異性決定核酸塩基の異なる配列を有する少なくとも64の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得る。ある態様において、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックのライブラリーは、それぞれが少なくとも4つの特異性決定核酸塩基を有する複数の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得、そして、ライブラリーは、特異性決定塩基の異なる配列を有する少なくとも256の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得る。他の態様において、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックのライブラリーは、それぞれが少なくとも5つの特異性決定核酸塩基を有する複数の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得、そして、ライブラリーは、特異性決定塩基の異なる配列を有する少なくとも1024の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得る。さらなる態様において、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックのライブラリーは、それぞれが少なくとも6つの特異性決定核酸塩基を有する複数の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得、そして、ライブラリーは、特異性決定塩基の異なる配列を有する少なくとも4096の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含み得る。
【0080】
本発明のある態様によれば、オリゴマーブロック付加化学作用により生じるTmペナルティーを、少なくとも一つの、典型的には一つより多い、ユニバーサル塩基部位の付加により、打ち消す又は弱めることができる。該ユニバーサル塩基部位は、塩基特異的な相互作用をもたらさず、むしろ、4つの天然に存在する塩基すべてに対して安定化スタッキング相互作用を有する。一態様において、ユニバーサル塩基がリンカーと特異性決定核酸塩基との間に配置される場合、ユニバーサル塩基は、絶縁作用を有するとみなすことができる。しかし、意図するところによれば、ユニバーサル塩基を組合せオリゴマー内の他の位置に(例えば、リンカーから離れた位置に、あるいは、特異性決定塩基同士の間に挿入して)組み込んだ場合も、ユニバーサル塩基を組み込む有利な効果は達成される。
【0081】
意図するところ、任意のユニバーサル塩基が本発明に用いられる。
【0082】
本発明の絶縁性組合せオリゴマーをハイブリッド形成反応に用いるとき、該オリゴマーは、その標的にハイブリダイズし、ユニバーサル塩基は、標的鎖中の対向する任意の塩基と対合する。かくして、組合せオリゴマーは、標的特異性を決定する特異性決定塩基と、ヌクレオチドのスペーシング及びスタッキング相互作用を保持する一方、標的との塩基対合特異性に寄与しないユニバーサル塩基とを含む。絶縁性ユニバーサルスペーサー塩基の数は、絶縁性組合せオリゴマーの形成に用いる結合化学部位の種類に応じて変えることができる。オリゴマーにおける特異的塩基の数は、組合せオリゴマーを作るのに用いるオリゴマーブロックライブラリーの情報内容を決定する。
【0083】
一局面において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの特異性決定塩基は、連続した標的配列に結合する。他の局面において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの特異性決定塩基は、不連続の(すなわちギャップのある)標的配列に結合する。いずれの場合でも、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの複雑度は同じである。特異性決定塩基のブロックが標的分子中の不連続な配列と相互作用することは、絶縁性組合せオリゴマーによる情報の複雑度を変えない。
【0084】
意図するところ、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、標的分子の塩基とともに核酸塩基オリゴマーにおいて付加した塩基同士の間に安定な塩基対合をもたらす任意の重合核酸塩基構造(核酸塩基オリゴマー)を用いて合成することができる。絶縁性組合せオリゴマーは、酵素により伸長可能であるか、酵素により伸長可能でないものとすることができる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、標的配列に特異的にハイブリダイズできる重合構造を得るため、リボヌクレオチド三リン酸、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、修飾ヌクレオチド、又は任意のヌクレオチドアナログから合成できる。絶縁性組合せオリゴマーは、標的配列に特異的にハイブリダイズする能力を保持する重合構造を得るため、塩基を含む天然に存在しない重合体骨格から合成できる。一態様において、例えば、PNA又はLNAの構造を用いて、絶縁性組合せオリゴマーにおける特異性決定塩基とユニバーサル塩基の鎖を形成する。ある特定のオリゴマー構造の使用に本発明を限定することは意図するところではない。
【0085】
PNAオリゴマー核酸塩基構造とPNAオリゴマーブロックライブラリーを用いる場合、4つの特異性決定塩基とユニバーサルスペーサー塩基を用いるオリゴマーブロック(すなわち四量体ライブラリー)は、ユニバーサル塩基を含まない5つの特異性決定塩基を有するライブラリー(すなわち五量体ライブラリー)から生成される組合せオリゴマーと同程度に高いTm値を有する絶縁性組合せオリゴマーを生成させることができる。完全な五量体ライブラリーは(45)すなわち1024のオリゴマーからなる一方、完全な四量体ライブラリーわずか(44)すなわち256のオリゴマーからなるため、製造コストが節減される。5つの特異性決定塩基とユニバーサルスペーサー塩基を用いるオリゴマーブロックのライブラリー(すなわち五量体ライブラリー)は、ユニバーサル塩基を含まない6つあるいは7つの特異性決定塩基を有するライブラリーから生成される組合せオリゴマーと同程度に高いTm値を有する絶縁性組合せオリゴマーを生成させることができ、それに伴い、ユニバーサル塩基を含まないより大きなライブラリーに比べてコストが節減される。同様に、6つ、7つ、8つ、9つ、または10以上の特異性決定塩基とユニバーサルスペーサー塩基を用いるオリゴマーブロックのライブラリーは、ユニバーサル塩基を含まない7つ、8つ、9つ、10、11、12、又は13以上の特異性決定塩基を有するライブラリーから生成される組合せオリゴマーと同程度に高いTm値を有する絶縁性組合せオリゴマーを生成させることができ、それに伴いやはり、ユニバーサル塩基を含まないより大きなライブラリーに比べてコストが顕著に節減される。
【0086】
一態様において、例えば、ブロックオリゴマーにおける可変の特異性決定部位の数が3〜8の場合、完全にそろったブロックオリゴマーの数(核酸塩基としてA、C、G、及びT(又はウラシル))は、それぞれ64、256、1024、4096、16384、65536となる。
【0087】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの配列特異性は、各オリゴマーブロックにおける特異性決定核酸塩基によって決まってくる。本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの標的となり得る相補的配列は、試料における核酸塩基の特定の標的配列にハイブリダイズするよう設計された複数のオリゴマーブロックの合わさった核酸塩基配列である。よって、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのハイブリッド形成性核酸塩基配列は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの少なくとも二つのオリゴマーブロック間に分配されている(必ずしも均等に分配されているとは限らない)。
【0088】
従って、使用されるアッセイの種類について十分考慮して、適当なハイブリッド形成条件下で絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが標的配列と二本鎖複合体を形成するよう、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの長さ及び配列の要件を選ぶことが一般的である。一態様において、標的配列の核酸塩基は連続的である(すなわち標的配列中にギャップがない)。他の態様において、標的配列の核酸塩基は連続的でない(すなわち、標的配列中にギャップがある)。標的の核酸塩基が不連続である場合、ギャップの大きさは、可変であり、一核酸塩基のように小さくすることができ、あるいは、約10核酸塩基のように大きくすることができる。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成するため使用される付加化学部位の種類は、ギャップのある配列を標的とすべきか否か、そして、ギャップをどれだけ大きくすればよいかを律することとなる。意図するところ、大きく、曲がらない、あるいは、さもなくば立体障害性の、化学基又は結合を有する付加化学部位を用いる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ギャップのある標的配列により効率的にハイブリダイズすることができる。
【0089】
最も単純な態様において、例えば、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、二つのオリゴマーブロックの連結反応から形成される。しかし、本発明は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを得るため、二つより多いオリゴマーブロックの連結反応にも対応する。この場合、複数のオリゴマーブロックを順番に付加することができ、あるいは、単一の反応で同時に結合することができる。組合せオリゴマーを形成する方法にかかわらず、二つのみのオリゴマーブロックの共有結合に本発明の絶縁性組合せオリゴマーを限定することは意図するところではない。一態様において、本発明は、例えば、5’末端ブロック及び3’末端オリゴマーブロックに加えて、二つより多いオリゴマーブロックの連結に対応する。
【0090】
上述したような組合せオリゴマーを形成する方法にかかわらず、他の態様において、連結反応の産物は、必要に応じて、さらに長くする/伸ばすことができる。従って、該方法を繰返すことによりさらに長くした/伸ばしたオリゴマーを生産するよう、組合せオリゴマーそれ自体をオリゴマーブロックとして用いることができる。先に形成した絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを、連結反応条件下で、第三のオリゴマーブロック及び必要に応じてさらなる試薬と反応させる。これにより、伸長された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが形成される。このプロセスは、組合せオリゴマーが必要な長さになるまで必要に応じて繰返すことができる。そのような伸長を続けるプロセスは、例えば、アレイの調製に有用であり得る。というのも、より長いオリゴマーがそのような用途にしばしば用いられるからである。
【0091】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロックの合成の後、オリゴマーは、さらなる精製工程に供してもよいし、供さなくともよい。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー自体が精製されたオリゴマーブロックサブユニットから製造されるので、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの生成は、ほぼ純粋な反応生成物をもたらし、そこにおいて、さらなる精製は不必要となり得る。生成物がさらなる精製を必要としない場合、一旦適当なブロックライブラリーを構築すれば、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの合成は、迅速で経済的なものとなり得る。さらに、未反応の成分オリゴマーブロックは、典型的に短すぎて、周囲温度(室温)又はそれより高い温度で安定なハイブリッドを形成しない。そのため、未反応の成分は、一般に、多くの種類の用途において顕著な問題を引起さない。
【0092】
もし本発明のオリゴマー構造物をさらに精製する必要があるならば、重合核酸塩基構造物を精製するための任意の通常のプロトコルを利用することができる。そのようなプロトコルは、当該技術において日常的なものであり、当業者に知られており、また、多数の容易に入手できる出典に記載されている。必要な純度により、もしそうであれば、どのような種類の精製プロトコルを用いるべきか決めることができる。一態様において、精製は、通常の方法、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行う。他の態様において、精製は、任意の形態のアフィニティークロマトグラフィー又はサイズ排除クロマトグラフィーにより行う。他の態様において、精製は、任意の市販の精製キット(固有の試薬を用いる)により行う。
【0093】
一局面において、本発明は、少なくとも二つの成分オリゴマーブロックから絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを合成するための、鋳型に基づかない方法を提供する。通常、該方法は、少なくとも二つのオリゴマーブロック(ここで、該二つのオリゴマーブロックはそれぞれ、適当な化学反応性基を含む)を反応させて、5’オリゴマーブロック及び3’オリゴマーブロックの核酸塩基間の共有結合以外の共有結合リンカーをもたらし、それにより、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成することを含む。核酸塩基の鋳型なしで、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーができる。また、合成のための該方法は、さらなる試薬、例えば一つまたは複数の縮合試薬を含むことができる。該方法は、水溶液中で行ってもよいし、行わなくともよい。オリゴマーブロック上の種々の部分を、連結反応の間、保護基により保護してもよいし、保護しなくともよい。
【0094】
C.ユニバーサル塩基
ここで及び当該技術で用いる用語「ユニバーサル塩基」、「ユニバーサルスペーサー塩基」、「ユニバーサル核酸塩基」、「不活性塩基」、「非識別性塩基」などは、核酸塩基の形態(例えばヌクレオチド又はPNA)で重合構造に組込まれるとき、核酸塩基を有する相補的重合構造上で、塩基を有意に識別(区別)しない塩基を指す。従って、ユニバーサル塩基は、相補的ポリマー上で塩基と塩基対合してもよいが、対向するポリ核酸塩基鎖上の相補的位置にある異なった塩基に対して、有意に異なった態様で塩基対合するものではない。一方、ユニバーサル塩基は、相補的ポリマー上で、任意の塩基と有意な程度に塩基対合しなくともよい。第一のヌクレオチド配列が、少なくとも部分的に相補的な第二のヌクレオチド配列とハイブリダイズする場合、該第一のヌクレオチド配列に含まれるユニバーサル塩基は、Tmペナルティーを減少させるのに有効である。さもなくば、該第一のヌクレオチド配列の部位にミスマッチのヌクレオチドが含まれることにより、Tmペナルティーが生じ得る。一つのユニバーサル塩基は、そのようなミスマッチに係るTmペナルティーを、約1℃、約2℃、約4℃、約6℃、約8℃、約10℃、又はそれ以上、減らすのに有効であり得る。同様に、複数のユニバーサル塩基の群又は組合せは、配列ミスマッチのTmペナルティーを、約2℃、約5℃、約10℃、約15℃、約25℃、約50℃、又はそれ以上、減らすのに有効であり得る。配列ミスマッチのTmペナルティーがそのように減少することは、配列ミスマッチによるエネルギーペナルティーが約1kcal/モル、約2kcal/モル、約5kcal/モル、約15kcal/モル、約25kcal/モル、約50kcal/モル、又はそれ以上減少することによって、ハイブリッド形成の不安定化の量が減らされる結果となり得る。「ユニバーサル核酸塩基」は、ユニバーサル塩基及び骨格構造を含む。
【0095】
一態様において、例えば、好ましいユニバーサル塩基は、オリゴ核酸塩基の二重鎖にある複数の天然塩基に対向するとき、それらの天然塩基のそれぞれに適当に等しく塩基対合することができる。しかし、天然塩基のサブセットと対合できるユニバーサル塩基も、本発明に用いられる。
【0096】
一態様において、例えば、ユニバーサル塩基は、ユニバーサルヌクレオチドを作るため、ペントース糖(例えばリボース)骨格の1’炭素に共有結合させてもよい。この場合、核酸塩基の重合は、ホスホジエステル結合により、DNA又はRNAのいずれかを形成する。他の態様において、ユニバーサル塩基は、ユニバーサルPNAを作るため、2−アミノエチルグリシンポリアミドポリマーへのメチレンカルボニル結合により、N−[2−(アミノエチル)]グリシン骨格のN−α−グリセリン窒素に共有結合させてもよい。
【0097】
一般的に、ユニバーサル塩基は、天然に存在しないものであり、主として、二重鎖DNAに効率的に収まる疎水性分子である(すなわち、その疎水的性質のため、スタッキング相互作用をもたらすことができる)。ユニバーサル塩基は、典型的に、窒素含有芳香族複素環式部分を指し、それは、天然に存在する塩基のそれぞれ又はあるサブセット(一部)と対合する際、安定な逆方向の二重鎖オリゴマーの相互作用に加わることができる。
【0098】
ユニバーサル核酸塩基は、他の核酸塩基に特異的に水素結合してもよいし、しなくてもよい。好ましい一態様において、ユニバーサル核酸塩基は、ある特定の塩基に対して優先的な親和性を有するものではない一方、核酸塩基の逆平行ポリマー上で任意の他の塩基と安定に塩基対合できる能力を有するものである。他の態様において、ユニバーサル核酸塩基は、核酸塩基ポリマー中の隣接する核酸塩基と、あるいは、相補的核酸塩基ポリマー中の核酸塩基と、疎水性の塩基スタッキング相互作用を示してもよいし、示さなくともよい。
従って、ユニバーサル核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的重合体構造上で塩基を有意に区別(識別)しない塩基とすることができ、そして、特異性決定核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的重合体構造上で塩基を区別(識別)できる塩基とすることができる。
【0099】
ユニバーサル塩基のアナログは、当該技術において知られており、それは、ヌクレオシド形、5−ニトロ,1−(β−D−2−デオキシリボフラノシル)インドール(5−ニトロインドールと呼ぶ)(Loakes and Brown,Nucleic Acids Res.22:4039−4043[1994]参照)、及び1−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−3−ニトロピロール(3−ニトロピロールと呼ぶ)(Nichols et al.,Nature 396:492−493[1994]及びBergstrom et al.,J.Am.Chem Soc.117:1201−1209[1995]参照)を含む。さらに、例えば、Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260(5):2605−2608(1995)、Habener et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:1735−1739[1988]、Van Aershot et al.,Nucleic Acids Res.23:4363−4370[1995]、Luo et al.,Nucleic Acids Res.24:3071−3078[1996]、Amosova et al.,Nucleic Acids Res.25:1930−1934[1997]、Berger et al.,Nucleic Acids Res.28:2911−2914[2000]、Seela et al.,Nucleic Acids Res.28:3224−3232[2000]、Loakes,Nucleic Acids Res.29:2437−2447[2000]、Harki et al.,Biochemistry 41:9026−9033[2002]、He et al.,Nucleic Acids Res.30:5485−5496[2002]を参照されたい。ユニバーサル塩基は、ワトソン−クリック型水素結合及び塩基スタッキングをもたらすことができるものであってもよい。ユニバーサル塩基を論じる文献には、さらに、Berger et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.(2000)39:2940−42、Wu et al.,J.Am.Chem.Soc.(2000)122:7621−32、Berger et al.,Nuc.Acids Res.(2000)28:2911−14、Smith et al.,Nucleosides&Nucleotides(1998)17:541−554、及びOgawa et al.,J.Am.Chem.Soc.(2000)122:3274−87がある。
【0100】
種々のユニバーサル塩基が当該技術において知られており、それらには、例えば、アザインドール(7AI)、イソカルボスチリル(ICS)、プロピニルイソカルボスチリル(PICS)、6−メチル−7−アザインドール(M7AI)、イミジゾピリジン(ImPy)、ピロールピリジン(PP)、プロピニル−7−アザインドール(P7AI)、及びアレニル−7−アザインドール(A7AI)があるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
N8−(7−デアザ−8−アザ−アデニン)は、ユニバーサル塩基であり、任意の他の核酸塩基、例えば、次のいずれかと対合する。アデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル、5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、5−メチルシトシン、プソイドイソシトシン、2−チオウラシル及び2−チオチミン、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)、N9−(2,6−ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)、又はN9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)(例えば、Seela et al.,Nucl.Acids,Res.:28(17):3224−3232(2000)参照)。他のユニバーサル塩基には、5−ニトロインドール、3−ニトロピロール、6−メチル−7−アザインドール、ピロールピリジン、イミジゾピリジン、イソカルボスチリル、プロピニル−7−アザインドール、プロピニルイソカルボスチリル、アレニル−7−アザインドール、8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシグアノシン、8−アザ−7−デアザ−2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシシチジン、2’−デオキシウリジン、2’−デオキシアデノシン、2’−デオキシグアノシン、ピロロ[2,3−d]ピリミジン、3−ニトロピロール、デオキシイノシン(例えば2’−デオキシイノシンン)、7−デアザ−2’−デオキシイノシン、2’−アザ−2’−デオキシイノシン、3’−ニトロアゾール、4’−ニトロインドール、5’−ニトロインドール、6’−ニトロインドール、4−ニトロベンゾイミダゾール、ニトロインダゾール(例えば5’−ニトロインダゾール)、4−アミノベンゾイミダゾール、イミダゾ−4,5−ジカルボキサミド、3’−ニトロイミダゾール、イミダゾール−4−カルボキサミド、3−(4−ニトロアゾール−1−イル)−1,2−プロパンジオール、及び8−アザ−7−デアザアデニン(ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−アミン)がある。他の例において、ユニバーサル核酸塩基は、3−メチル−7−プロピニルイソカルボスチリル基、3−メチルイソカルボスチリル基、5−メチルイソカルボスチリル基、イソカルボスチリル基、フェニル基、又はピレニル基とリボース又はデオキシリボースとを組合せることにより、ユニバーサル核酸塩基を形成してもよい。
【0102】
D.オリゴマーブロック
ここで用いる用語「ブロック」又は「オリゴマーブロック」が表すところは、適当な骨格(主鎖)によって機能的に連結された核酸塩基からなる核酸塩基オリゴマーであって、オリゴマーブロックが少なくとも一つのさらなるオリゴマーブロックと連結でき、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを生成させることができる核酸塩基オリゴマーである。オリゴマーブロックは、(1)オリゴマーブロック中の核酸塩基及び骨格の配向に関して、及び(2)連結の対象となるオリゴマーブロックに関して、5’又は3’の配向を有する。例えば、オリゴマーブロックがその3’末端に結合された化学部分を有する場合、そのオリゴマーブロックは、5’末端に適当な付加化学部分を有するオリゴマーブロックに連結することになる。従って、オリゴマーブロックは、例えば、5’−オリゴマーブロック又は3’−オリゴマーブロックとなり得る。
【0103】
オリゴマーブロックは、一つ以上のレポーター部分で標識されていてもよいし、されていなくともよく、かつ/又は一つ以上の保護された若しくは保護されていない官能基を含んでもよい。二つのオリゴマーブロックを連結する手段は限定的なものではなく、種々の適当な化学作用及び構造が、当業者に知られている。
【0104】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを合成するのに用いるオリゴマーブロックは、最小限三つの部分(これらは特異性決定核酸塩基である)、ユニバーサル核酸塩基、及び該オリゴマーの3’末端又は5’末端のいずれかにある化学反応性部分を含む。ポリマー骨格(主鎖)(すなわち塩基を支える足場として働く構造)をある特定の化学構造に限定することは意図するところではない。実際、多種多様の使用可能な構造が、本発明に用いる当該技術において知られている。
【0105】
一態様において、核酸塩基オリゴマーは、オリゴマーブロックを形成するため、ポリヌクレオチド化学を用い、そこにおいて、ポリヌクレオチドは、天然に存在するリボヌクレオチド及び/又は2’−デオキシリボヌクレオチドからなる。これらの構造は、酵素により伸長可能であり、そして、DNA依存性又はRNA依存性のポリメラーゼによる酵素的DNA又はRNA合成の開始用プライマーとして働くことができる。
【0106】
他の態様において、核酸塩基オリゴマーに使用される核酸塩基は、酵素により伸長可能でないものである。すなわち、そのようなオリゴマーは、DNA依存性又はRNA依存性のポリメラーゼによる酵素的DNA又はRNA合成の開始においてプライマーとして働くことができない種々の修飾されたヌクレオチド塩基、ヌクレオチドアナログ、又は修飾された鎖骨格を含む。多数のそのような構造が当該技術において知られており、種々の出典に記載されている(例えばWO95/08556及びWO99/34014参照)。ある態様の組合せ核酸塩基オリゴマー配列は、相補的な標的分子に配列特異的な態様で結合できる一方、該核酸塩基オリゴマーの伸長可能でない化学構造のために、酵素的DNA又はRNA合成が起こらない。例えば、あるオリゴマーは、ヌクレオチド付加に必要なリボース糖環の3’ヒドロキシル基がないために、酵素により伸長させることができない。
【0107】
酵素により伸長可能でない核酸塩基構造の多数が知られており、そして、本発明に用いられる。本発明の方法をある特定の伸長可能でない核酸塩基構造の使用に限定することは意図するところではない。一般に、本発明に用いる酵素により伸長可能でない核酸塩基構造は、ある特定の有利な特性を示し得、そのような特性には、以下のいずれか又は全てが含まれ得る。(1)所定の塩基配列を有するオリゴマーブロックを容易に合成することができ、かつそれは水溶液に対して何らかの溶解性を有し得る。(2)得られる組合せオリゴマーは、相補的な標的配列に配列特異的な態様で結合することができ、安定なヘテロ二重鎖を形成できる。(3)該ヘテロ二重鎖は、ヌクレアーゼ消化を受けない。
【0108】
酵素により伸長可能でない核酸塩基オリゴマー構造をある特定のものに限定することは本発明の意図するところではない。本発明に用いる酵素により伸長可能でない核酸塩基の具体例には、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA類、WO98/22489、WO98/39352、及びWO99/14226参照)、2’−O−アルキルオリゴヌクレオチド(例えば2’−O−メチル修飾オリゴヌクレオチド、Majlessi et al.,Nucleic Acids Research,26(9):2224−2229[1998]参照)、3’修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド、N3’−P5’ホスホルアミデート(NP)オリゴマー、MGB−オリゴヌクレオチド(小溝バインダー結合オリゴヌクレオチド)、ホスホロチオエート(PS)オリゴマー、C1〜C4アルキルホスホネートオリゴマー(例えばメチルホスホネート(MP)オリゴマー)、ホスホルアミデート、β−ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、及びα−ホスホジエステルオリゴヌクレオチドがあるが、これらに限定されるものではない。
【0109】
連結のためのオリゴマーブロック末端の修飾に加えて、オリゴマーブロックは、修飾かつ/又は適当に保護することができ、それにより、標識又は表面への結合のための官能基を組み込むことができる。そのような官能基は、以下のような因子に応じて、連結反応工程の前又は後のいずれかで利用することができる。(1)オリゴマー合成化学(例えば過酷な脱保護の条件は標識を破壊し得る)、選択される縮合/連結の化学反応(例えば必要な標識の官能基が、縮合化学反応を妨害し得る)、及び官能基を使用する目的(例えば、それが、標識のためか、固体支持体への結合のためであるか)。
【0110】
特異性決定核酸塩基サブユニットを含む塩基を四つの天然に存在する塩基、すなわちアデニン、チミン、グアニン、及びシトシン(すなわちA、T、G及びC)にそれぞれ限定することは意図するところではない。ある態様において、天然に存在しない塩基を、配列特異的核酸塩基の部位に用いる。以下の天然に存在しない塩基を含む核酸塩基の使用は本発明の意図するところである。5−プロピニル−ウラシル、2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、5−メチルシトシン、プソイドイソシトシン、2−チオウラシル及び2−チオチミン、2−アミノプリン、N9−(2−アミノ−6−クロロプリン)、N9−(2,6−ジアミノプリン)、ヒポキサンチン、N9−(7−デアザ−グアニン)、並びにN9−(7−デアザ−8−アザ−グアニン)。これらの塩基に対する結合対モチーフは当該技術において知られている。
【0111】
全長の(省略されていない)絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成するよう連結のためオリゴマーブロックを選ぶ場合、二つのブロックは、必ずしも同じ化学構造又は構成である必要はない。従って、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、キメラの構造とすることができ、例えば、そこにおいて、二つのオリゴマーブロックは、異なる化学構造の核酸塩基からなる(例えばDNAとPNA)。例えば米国特許第6316230号及びWO96/40709参照。本発明は、キメラの絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを意図し、そこにおいて、複数のオリゴマーブロックは異なる化学構造を有し、例えば、一つのオリゴマーブロックはペプチド核酸からなることができ、他のオリゴマーブロックはポリヌクレオチドからなることができる。これらのブロックを適当なリンカー化学作用を用いて連結し、キメラの絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成できる。意図するところ、一つのオリゴマーブロック内の核酸塩基サブユニットは、異なる化学構造を有することができる。均一なオリゴマー構造と同様に、本発明のキメラオリゴマーは、酵素により伸長可能でなくともよいし、伸長可能であってもよい。
【0112】
例えば、D−DNAヌクレオチドを有する一つのオリゴマーブロックをL−DNA分子を有する他のオリゴマーブロックに連結すれば、キメラの絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを得ることができ、これは、試料中の標的ヌクレオチド配列の認識に影響を及ぼすことなく、最小限の非特異的結合で、レポーターオリゴマーの標的となることができる。L−DNAはD−DNAとハイブリダイズしないため、例えば、試料中の標的ヌクレオチド配列とD−DNAオリゴマーとのハイブリッド形成を妨げることなく、L−DNAを含む部分は、レポーター部分を有する相補的L−DNAオリゴマーとハイブリダイズすることができる。また、L−DNAとD−DNAとの間に結合親和性がないため、レポーターオリゴマーの非特異的結合は大きく減る。というのも、L−DNAレポーターオリゴマーは、ほとんどの生物学的試料に存在しないL−DNAのみとハイブリダイズするからである。そのようなキメラのD−DNA−L−DNA絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、従って、標的ヌクレオチドの存在下、例えば、キメラのオリゴマーに対して高い特異性を有する標識で容易に標識(ラベル)することができる。
【0113】
一局面において、本発明は、異なる構造を有する複数のオリゴマーブロックの連結により形成される絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを意図する。例えば、一つのオリゴマーブロックにおいて、ユニバーサル核酸塩基は、リンカー化学部位に隣接して配置することができ、一方、他の構造において、ユニバーサル核酸塩基は、リンカー化学部位から離して配置することができ、あるいは、特異性決定核酸塩基の間に挿入することができる。意図するところ、そのような異なる構造を有する複数のオリゴマーブロックは、適当なリンカー化学部位を用いて、互いに連結し、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成できる。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを合成するため、同じ化学構造又は構成を有するオリゴマーブロックを使用することに本発明は限定されるものではない。
【0114】
E.結合化学
ここで用いる用語「リンカー」は、化学部分を意味し、典型的に、少なくとも三つの原子分の長さで、核酸塩基ポリマーの核酸塩基を含む骨格のサブユニットの一部ではなく、二つのオリゴマーブロック間に共有結合をもたらす化学部分を意味する。二つのオリゴマーブロックの連結に先立って、集まって機能的な共有結合リンカーを形成できる複数の原子を、それぞれ独立して3’オリゴマーブロック及び5’オリゴマーブロックに結合させることができ、その場合、完全なリンカーは、3’ブロックと5’ブロックの化学的連結の後に初めて形成される。その長さに応じて、リンカーは、連結されるオリゴマーブロック間の間隔を決めるスペーサーとして機能し得る。
【0115】
ここで用いる用語「連結化学」は、用語「リンカー化学」又は「付加化学」と交換可能に用いられることがあり、そこにおいて、それらの表現は、二つのオリゴマーブロックを連結する機能的リンカーをもたらす化学的な実体及び反応を指す。
二つのオリゴマーブロックの連結に先立って、集まって機能的な共有結合リンカーを形成できる複数の原子を、典型的にそれぞれ独立して、3’オリゴマーブロックと5’オリゴマーブロックの末端に結合する。その場合、完全なリンカーは、3’ブロックと5’ブロックの機能的な化学連結反応の後初めて形成される。リンカーは、スペーサー、ユニバーサル核酸塩基、又は特異性決定核酸塩基とする必要がない。本発明の具体的態様において、リンカーは非塩基であり、すなわちリンカーは、核酸塩基を含まず、かつ、リンカーを画定する原子は、核酸塩基オリゴマーのモノマーサブユニット又はオリゴマーブロックの任意の他の部分(例えばスペーサー)を構成する原子ではない。本発明の具体的態様において、一つ以上のユニバーサル核酸塩基は、スペーサー領域を形成するのに有効なリンカーの近く又は隣に配置することができ、該スペーサー領域は、二つのオリゴマーブロックをつなぐ付加結合から、特異性決定核酸塩基を絶縁するよう機能することができる。
【0116】
本発明は、ある特定の結合化学及び構造に限定しようとするものではない。逆に、結合化学に精通している者であれば、本発明と共に用いる可能な数多くの付加化学構造を直ちに認識するはずである。ここに記述するある特定の化学作用又は構造は単に例示を目的とするものであり、決して本発明を限定しようとするものではない。
【0117】
明らかなように、本発明の具体的態様において有用な連結化学は、それがオリゴマーブロック間に機能的な共有結合リンカーをもたらすものであるかぎり、本発明において限定されるものではない。機能的リンカーは、二つ(又は二つ以上)のオリゴマーブロックからなる核酸塩基が同じ5’→3’の方向性を有するように、そして、該機能的リンカーにより、オリゴマーブロック中の特異性決定核酸塩基が集まって相補的標的配列に対する特異性を確定できるように、オリゴマーブロックを結合するリンカーである。すなわち、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが結合する標的配列は、複数のオリゴマーブロックすべての特異性決定塩基によって決まる。
【0118】
ある態様において、例えば、複数のオリゴマーブロックを連結する作用は「縮合反応」であり、そこにおいて、一般に、複数のオリゴマーブロックの連結は、選択された特定の化学作用に従って、反応物から水分子が最終的になくなるよう、オリゴマーブロックの末端に付加された化学部分が反応することにより、もたらされる。選択される特定の反応条件は、選択された特定の化学作用に従い、それは、結合化学に精通している者によく知られたことである。ある態様(すべての態様ではない)において、用語「連結」と「縮合」は交換可能である。厳密に言えば、オリゴマーブロックを共有結合(すなわち連結)するため適当な方法のすべてが縮合反応である訳ではない。
【0119】
本発明の絶縁性組合せオリゴマーを形成するのに適当な広範囲の付加/連結化学及び試薬は、当業者に明らかである。そのような情報は、当業者によく知られているだけでなく、種々の出典(例えばHermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press(1996)を含む)に教示されている。
【0120】
図5〜8は、使用可能な種々の連結化学作用の非限定的ないくつかの例を示す。示されるこれらの例は、異なる種類の化学作用を例示するためのものであり、決して、本発明をある特定の種類の連結化学作用に限定しようとするものではない。
【0121】
図5A及び5Bを参照して、適切に調製されたオリゴマーブロックは、カルボジイミド、例えば水溶性カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いて、連結することができる。図5Aに示すように、この試薬を用いるとき、典型的に、オリゴマーブロックの一つはカルボン酸部分を含み、もう一つはアミノ基を含む。それらのオリゴマーは、水溶液(必要に応じて1%〜75%(v/v)の有機修飾剤を含む)において連結できる。そのpHは例えば6.5未満である。活性化剤、例えばチアゾール化合物(例えば1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール[HOAt]又は1−ヒドロキシベンゾトリアゾール[HOBt])の添加を利用して、縮合/連結反応の全収率を上げることができる。従って、この化学作用を選ぶ場合、連結を行うため、カルボジイミドとともに活性化剤を用いることが好ましい。
【0122】
図5Bに示すオリゴマーブロックはさらにN−[2−アミノエチル]−グリシンのスペーサー部分を含むという点で、図5Bは図5Aと異なる。
【0123】
図6A〜6C並びに7A及び7Bを参照して、オリゴマーブロックの連結/縮合のためのいくつかの選択肢が示され、そこにおいて、水素化シアノホウ素ナトリウム(NaCNBH4)が還元剤として用いられている。明らかなとおり、水素化シアノホウ素ナトリウムは、これらの戦略を連結に用いてオリゴマーブロックの連結をもたらすのに使用できる多くの還元剤の一つである。
【0124】
図6A及び6Bを参照して、連結すべきオリゴマーブロックの一つはアミンを含み、連結すべき他のオリゴマーブロックはアルデヒドを含む。これらのオリゴマーブロックは合わされてイミン形成できる。イミンの形態はしばしば不安定で可逆的であるため、イミンはしばしば、例えば、水素化シアノホウ素ナトリウムにより、還元され、その結果、連結された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成する。図6A及び6Bは図5A及び5Bに類似し、そこにおいて、オリゴマーブロックは必要に応じてスペーサー部分をさらに含んでもよい。
【0125】
図6C並びに図7A及び7Bを参照して、連結すべきオリゴマーブロックの一つはアルデヒド又はケトン、例えばグリシナール又はβ−アリナールであり、連結すべき他のオリゴマーブロックは、アミノオキシ含有部分、例えばアミノオキシアセチル基を含む。適切に修飾されたオリゴマーブロックの反応により、イミンよりも安定なイミノキシ組合せオリゴマーが形成される。従って、イミノキシ組合せオリゴマーは、調製してそのまま使用でき、あるいは、必要に応じて、例えば水素化シアノホウ素ナトリウムにより還元することができ、それにより、図示するように、各オリゴマーブロック内にスペーサーを含む、より安定な絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成できる。
【0126】
図7Cは、アルデヒドとセミカルバジン誘導体のアミノ基とを伴う絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック間の連結反応を示す。左側に示す絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックの化学反応性部分(アルデヒド)と右側に示す絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックの化学反応性部分(アミン)とが反応して、図示するような共有結合リンカーを形成するセミカルバゾンが得られる。共有結合リンカーは、二つの絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを連結して絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成する。
【0127】
図7Dは、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックをつなぐ共有結合リンカーを形成するディールス−アルダー型連結反応を示す。図示するとおり、左側に示す化学反応性部分(フラン誘導体)と右側に示すマレイミドの化学反応性部分とのディールス−アルダー型反応によって共有結合リンカーが形成され、それは、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック同士を連結して絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーをもたらす。
【0128】
図8A〜8Cを参照して、それぞれの場合、オリゴマーブロックの一つは、求核性チオールと脱離基を含む。図8Aは、Lu et al.,J.Am.Chem.Soc.,118(36):8518−8523(1996)に従う連結反応を示す。求核性チオール、例えば2−アミノエチルチオール(図8C)、2−チオアセチル又は3−チオプロピオニルと、例えばハロアセチル(図8B)、マレイミド(図8C)、又はビニルのいずれかとの反応により、同様に組合せオリゴマーが得られる。
【0129】
本発明による絶縁性組合せオリゴマーの形成に適する連結/縮合化学の他の非限定的な具体例は、当該技術において広く知られており、DNA又はPNAを含むことができる。例えば、ディールス−アルダー型反応(例えばマレイミドとフラン間)をこの方法で用いて組合せオリゴマーを形成してもよい(また、該反応を用いて色素又は他の標識をそのようなオリゴマーに付加してもよい。例えば、Graham et al.,Tetrahedron Lett.43:4785−4788(2002)の記載参照)。
本発明のある態様において、オリゴマーブロック連結工程で核酸塩基保護基が使用される。ここで用いる「核酸塩基保護基」は、核酸塩基のある官能基に共有結合して、ある特定の化学反応中(例えば連結反応工程中)、該官能基を不活性(非反応性)にする化学部分である。例えば、アデニン、シトシン、及びグアニンの環外アミノ基は、典型的に、デノボ化学オリゴマー合成の間、適当な保護基で保護される。化学反応中、官能基を不活性(非反応性)にするため形成される該官能基の塩は、共有結合がないため、ここで用いる核酸塩基保護基ではない。
【0130】
しかし、核酸塩基保護基の使用は、本発明の利用に必須ではなく、従って、保護基を用いることに本発明は限定されるものではない。
また、リンカー部分は、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックにおいてスペーサーとして働くのに役立つことができ、嵩張った化学基又は可撓性のない化学結合による悪影響を最小限にすることができる。ハイブリッド形成を保護し又は促進するため、あるいは、本発明のオリゴマーのプローブ/標識特性を保護し又は高めるため、どのようにリンカー部分をスペーサー部分として用いればよいかは、当業者が理解できるところである。本発明を特定のスペーサー構造に限定することは、意図するところではない。しかし、一態様において、オリゴマーブロックがPNA構造を含むとき、PNAサブユニットのN−(2−アミノエチル)−グリシン部分の第一級アミン及びカルボニル炭素は、スペーサーの原子とみなされない。
【0131】
ある態様において、一つのスペーサー又は複数のスペーサー部分を、オリゴマーブロックの付加化学部位と核酸塩基との間に配置することができる。他の態様において、スペーサーは、標識に隣接して用いることができ、その目的は、例えば、標識のオリゴマーへの化学結合を容易にするため、あるいは、標識に伴うある特性(例えば蛍光)を保持又は高めるためである。また、スペーサー部分は、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロックの水溶性を向上させるため、付随的に又は意図的に用いることができる(例えばGildea et al.,Tett.Lett.,39:7255−7258[1998]参照)。
【0132】
本発明での使用に適するスペーサー/リンカー部分の非限定的な具体例は、例えば以下のものからなる。一つ以上のアミノアルキルカルボン酸(例えばアミノカプロン酸)、アミノ酸の側鎖(例えばリジン又はオルニチンの側鎖)、天然のポリペプチド及びタンパク質に存在する一つ以上のアミノ酸(例えばグリシン)、天然のポリペプチド及びタンパク質に一般的には存在しない一つ以上のアミノ酸(例えばオルニチン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、ホモシステイン、ホモセリン、シトルリン、カナバニン、ジエンコル酸、及びβ−シアノアラニン)、一つ以上のO−リンカー残基、アミノオキシアルキル酸(例えば8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸)、アルキル二酸(例えばコハク酸)、アルキルオキシ二酸(例えばジグリコール酸)、アルキルジアミン(例えば1,8−ジアミノ−3,6−ジオキサオクタン)、アミノ酸グリシン、アミノ酸二量体gly−gly、アミノ酸二量体gly−lys、アミノ酸二量体lys−gly、アミノ酸二量体glu−gly、アミノ酸二量体gly−cys、アミノ酸二量体cys−gly、及びアミノ酸二量体asp−gly。
【0133】
F.ペプチド核酸
本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、任意の適当なインターヌクレオチドアナログから合成できる。酵素により伸長可能な構造及び酵素により伸長可能でない構造の両方を本発明に用いることができるため、重合体構造が標的核酸塩基配列と逆平行配列特異的に塩基対合できるかぎり、塩基配列を支える足場(骨格)は限定されない。
【0134】
リン酸を含まず、リボースを含まない多くのインターヌクレオチドアナログ構造の相当数が、適当な核酸塩基オリゴマー形成するため、当該技術において知られており、任意のそのような構造は、本発明に用いることができる。そのような構造の検討について、例えばWO96/04000を参照されたい。
【0135】
非リン酸非リボースの構造の一つで、核酸塩基ポリマーの合成に広く用いられてきたものに、ペプチド(又はポリアミド)核酸(通常PNAと呼ばれる)の群がある。これらのPNA構造において、DNA又はRNAのホスホ−ジエステルリボース骨格は、非環式でアキラルな天然の擬ペプチドポリアミド結合で置き換えられてきた(米国特許第5539082号、WO92/20702、Nielsen et al.,Science 254:1497−1500[1991]、Egholm et al.,Nature 365:566−568[1993])。このPNA骨格は、共有結合される核酸塩基のための足場を形成し、所定の塩基配列を有するオリゴマー構造を形成する。PNAは、しばしば、真の核酸のアナログというよりむしろ、核酸模倣物として特徴付けられる。というのも、その構造が完全に合成によるものであり、核酸に由来しないからである。
【0136】
ある態様において、N−(2−アミノエチル)グリシン繰返し単位からなるPNA骨格が用いられる。しかし、本発明のPNA構造をこのglyPNA結合構造に限定しようとするものではない。2−アミノエチルグリシンポリアミド核酸塩基ポリマーは、よく研究されており、際立ったハイブリッド形成特異性と親和性を有することが知られている。この分子の部分構造を、カルボキシル末端アミドとともに図2に示す(ここでBは任意の核酸塩基である)。
【0137】
【化4】
その名前にもかかわらず、PNAは決して真にペプチドではなく、核酸でもなく、酸性でもない。PNAは、天然に存在しない分子であり、ポリメラーゼ酵素、ペプチダーゼ、又はヌクレアーゼの基質とならないことが知られている。PNAはポリアミドであるため、C末端(カルボキシル末端)及びN末端(アミノ末端)を有する。標的配列への逆平行結合(すなわちハイブリッド形成)に適するPNAオリゴマーを設計するため、PNAオリゴマー核酸塩基配列のN末端は、DNA又はRNAオリゴヌクレオチドの5’リン酸末端に等価であり、そのC末端は3’ヒドロキシル末端に等価である。
【0138】
用語「PNA」は、当該技術において知られる関連構造、特に他のペプチド系核酸模倣物(例えばWO96/04000参照)をも含むことを意図してここに用いられる。一般に「PNA」は、二つ以上のPNAサブユニット(残基)を含む一方、核酸サブユニット(又はそのアナログ)を含まない任意のオリゴマー又はポリマーセグメント(例えばオリゴマーブロック)を意味する。用語「PNA」の範囲は、例えば、限定されることなく、米国特許第5539082号、第5527675号、第5623049号、第5714331号、第5718262号、第5736336号、第5773571号、第5766855号、第5786461号、第5837459号、第5891625号、第5972610号、第5986053号、及び第6107470号(これらすべての内容はこの引用により本明細書に記載されたものとする)に記載されるオリゴマー又はポリマーセグメントを含む。また、用語PNAは、以下の刊行物に記載の核酸模倣物の二つ以上のサブユニットを含む任意のオリゴマー又はポリマーセグメントにも該当する。Lagriffoul et al.,Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 4:1081−1082(1994)、Petersen et al.,Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 6:793−796(1996)、Diderichsen et al.,Tett.Lett.,37:475−478(1996)、Fujii et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,7:637−627(1997)、Jordan et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,7:687−690(1997)、Krotz et al.,Tett.Lett.,36:6941−6944(1995)、Lagriffoul et al.,Bioorg.Med.Chem.Lett.,4:1081−1082(1994)、Diederichsen,Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 7:1743−1746(1997)、Lowe et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.,1,(1997)1:539−546、Lowe et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.,11:547−554(1997)、Lowe et al.,J.Chem.Soc.Perkin Trans.11:555−560(1997)、Howarth et al.,J.Org.Chem.,62:5441−5450(1997)、Altmann et al.,Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 7:1119−1122(1997)、Diederichsen,Bioorganic&Med.Chem.Lett.,8:165−168(1998)、Diederichsen et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,37:302−305(1998)、Cantin et al.,Tett.Lett.,38:4211−4214(1997)、Ciapetti et al.,Tetrahedron 53:1167−1176(1997)、Lagriffoule et al.,Chem.Eur.J.,3:912−919(1997)、Kumar et al.,Organic Letters 3(9):1269−1272(2001)、及びWO96/04000に開示されるShah et al.のthe Peptide−Based Nucleic Acid Mimics(PENAMs)。誤解を避けるためであるが、一つ以上のアミノ酸サブユニット又は一つ以上の標識もしくはリンカーをPNAオリゴマー又はセグメント(例えばPNAオリゴマーブロック)に結合してもPNAキメラは生じない。
【0139】
PNAの化学合成法は当該技術においてよく知られている(例えば、Nielsen et al.,Peptide Nucleic Acids−Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,Norfolk England(1999)、Nielsen(Ed.),Peptide Nucleic Acids−Methods and Protocols,Humana Press(2002)、Hyrup and Nielsen,Bioorg.Med.Chem.,4(1):5−23(1996)、WO92/20702、WO92/20703及び米国特許第5539082号参照)。PNAオリゴマーの化学的組立ては、固相ペプチド合成に類似し、そこにおいて、組立ての各サイクルで、オリゴマーは反応性のアルキルアミノ末端を有し、それは、成長するオリゴマーに付加すべき次のモノマー単位と縮合される。標準的なペプチド化学を利用するので、例えば固相合成を用いて、天然及び非天然のアミノ酸をPNAオリゴマーに組み込むことができる。PNAオリゴマーの支持体結合自動化学合成のための化学試薬及び器械は市販されており、特定の核酸塩基配列を有するPNAオリゴマーは、市販品の提供者(例えばApplied Biosystems,Foster City,CA)から容易にあつらえることができる。標識PNAオリゴマーも、同様に、カスタムPNAオリゴマーの販売者から入手可能である。
【0140】
PNAは、サブマイクロモル〜ミリモル以上の任意のスケールで合成できる。最も便利には、PNAは、2マイクロモルのスケールで、Fmoc/Bhoc、tBoc/Z、又はMMT保護基モノマーを用いて、XAL又はPAL支持体上でのExpedite合成装置(Applied Biosystems)で、又は、MBHA支持体を用いるModel433A合成装置(Applied Biosystems)で、又は、他の自動合成装置で、固相合成により合成される。PNAはポリアミドであるため、カルボキシ末端(すなわちC末端)及びアミノ末端(すなわちN末端)を有する。標的配列への逆平行結合に適するハイブリッド形成プローブを設計するため、PNAプローブのプロービング核酸塩基配列のN末端は、等価なDNA又はRNAオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル末端に相当する。
【0141】
ある態様において、PNAオリゴマーは、さらに、そして必要に応じて、リンカー/スペーサー部分を含み、これは、当該技術において知られているように、PNAオリゴマーの溶解性を高めるため組み込まれる(WO99/37670及びGildea et al.,Tetrahedron Letters 39:7255−7258[1998]参照)。このリンカー/スペーサーは、内部、アミノ末端部、又はカルボキシ末端部に組み込むことができ、そして、一つ又は一つより多いリンカー/スペーサーをオリゴマーに組み込むことができる。
【0142】
他の態様において、本発明に用いられるPNA分子は、キラル分子であり、すなわちエナンチオマーの形態を有する。キラル構造を有するペプチド核酸は当該技術において知られている(D’Costa et al.,Tetrahedron Letters 43:883−886[2002])。
【0143】
FRET型プローブとして用いるためのPNAオリゴマーの標識及び使用の方法は、当該技術においてよく知られており、種々の出典に記載されている(例えばPCT WO99/21881、WO99/22018及びWO99/49293参照)。
【0144】
G.オリゴマーブロックライブラリー
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの合成に用いるオリゴマーブロックは、任意の長さとすることができる。オリゴマーブロックの長さは、本発明の実施において、特定の数の単量体に必ずしも限定されるものではない。一態様において、例えば、複数のオリゴマーブロックは、それぞれ独立して、約3〜約8の特異性決定核酸塩基を含むように選ぶことができる。さらに、オリゴマーブロックは、任意の数のユニバーサル核酸塩基を含むことができる。例えば、一態様において、複数のオリゴマーブロックは、それぞれ独立して、約1〜約10のユニバーサル核酸塩基を含むことができる。
【0145】
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの合成に使用するオリゴマーブロックを予め合成しておき、そして、所定のライブラリーに維持しておくことができる。一態様において、これらのオリゴマーブロックライブラリーは、特異性決定核酸塩基部位のそれぞれにおいて、天然に存在する四つのDNA核酸塩基(A、C、G及びT)の可能な並べ替えすべてを含む。他の態様においては、A−T−G−Cの並べ替えすべてがライブラリーに集められるわけではない。さらなる態様において、オリゴマーブロックライブラリーは、特異性決定核酸塩基部位のそれぞれにおいて、天然に存在する四つのRNA核酸塩基(A、C、G及びウラシル)の可能な並べ替えすべてを含む。さらに他の態様においては、A−T−G−ウラシルの並べ替えすべてがライブラリーに集められるわけではない。
【0146】
他の態様において、核酸塩基構造内に非天然の塩基を用いることが意図される。オリゴマーブロックライブラリーのサイズ(すなわち多様度)は、所定の位置における並べ替えの数を可変部位の数で累乗することにより決定される。例えば、天然に存在する塩基を用いて5つの特異性決定核酸塩基を有するオリゴマーブロックを形成する場合、オリゴマーブロックのライブラリーは、45の可能なバリエーション、すなわち1024の可能なオリゴマーブロックの配列を一式として含むことができる。可変核酸塩基部位に加えて、ブロックはさらにユニバーサル核酸塩基を含むこととなる。典型的に、オリゴマーブロックライブラリーは、同じ数のユニバーサル核酸塩基をそれぞれ有する複数の絶縁性オリゴマー核酸塩基ブロックを含むこととなる。しかし、絶縁性核酸塩基の数が異なる複数のオリゴマーブロックを絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックのライブラリーに含めてもよい。従って、例えば、五つの特異性決定核酸塩基をそれぞれ有する複数のオリゴマーブロックのオリゴマーブロックライブラリーは、一つ、二つ、三つ、及び四つのユニバーサル核酸塩基を含むブロックを有してもよい。
【0147】
一般に、オリゴマーブロックライブラリーは、すべてが同じ数の特異性決定核酸塩基を有する複数のオリゴマーブロックを含むこととなる。従って、例えば、四つの特異性決定核酸塩基を有するオリゴマーブロックのオリゴマーブロックライブラリーは、四つの特異性決定核酸塩基をそれぞれ有する256(44)の異なるオリゴマーブロックを含むこととなり、四つより少ない又は多い特異性決定核酸塩基を有するオリゴマーブロックを含まないこととなる。しかし、本発明の特徴を有する絶縁性オリゴマーブロックライブラリーのある態様では、ライブラリーは、特異性決定核酸塩基の数が異なる複数の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含んでもよい。
【0148】
しかし、本発明のオリゴマーブロックライブラリーが所定の長さのオリゴマーブロックについてすべての可能な核酸塩基配列の並べ替えを含まなければならないという訳ではない。すなわち、オリゴマーブロックライブラリーが「完全な」ライブラリーである必要はない。実際、本発明のブロックライブラリーがブロックオリゴマーを一式全部含むということは必要条件ではなく、あるいは、一つ又は複数のライブラリーのブロックオリゴマーの組が、すべて同じ種類、長さ、又は多様度であることは必要条件ではない。さらに、一組のライブラリーのオリゴマーブロックがすべて同じ長さ又は組成である必要はない。一局面において、一つより多いオリゴマーブロック(すなわち少なくとも二つのオリゴマーブロック)の任意のコレクションをライブラリーとみなすことができる。ある特定の態様において、ライブラリーは、一つ以上の天然に存在しない核酸塩基を含むことができ、あるいは、天然に存在しない核酸塩基のみを含むことができる。
【0149】
さらに明らかなとおり、ライブラリーのオリゴマーブロックは、例えば支持体に結合させることができる。一局面において、ライブラリーは、固体支持体に付着させられたブロックオリゴマーのアレイとして存在することができる。例えば、ブロックオリゴマーのアレイは、ガラス板に付着させることができ、マイクロアレイリーダー又はマイクロアレイスキャナーでの検査に適するアレイを形成できる(例えば、DeRisi et al.,Science 278:680−686(1997)、Lashkari et al.,P.N.A.S.94:13057−13062(1997)参照)。
【0150】
例えば、本発明の一局面において、連結反応に使用されるオリゴマーブロックは、一つ又は複数のブロックライブラリーに含まれるオリゴマーブロックから選択することができ、それにより、迅速で、効率的でかつ/又は適当なスケールの、選ばれた用途に適する、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの合成が可能になる。従って、オリゴマーブロックの一つ又は複数のライブラリーを合成して使用することは、異なるが所定の核酸塩基配列の多数のオリゴマーブロックを迅速に、効率的にかつ/又は適当なスケールで合成するのを容易にし、そこにおいて、ライブラリーから作ることができる異なった核酸塩基配列の可能な絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの数は、ライブラリーのオリゴマーブロック組の多様度によって決まり、また、オリゴマーブロック組の多様度は、該組にある異なった核酸塩基配列のオリゴマーの数に依存することとなる。
【0151】
H.絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの標識
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックが、核酸、修飾核酸、核酸アナログ(例えばペプチド核酸)、又はそれらの任意の組合せもしくは変形物から合成されるかどうかにかかわらず、本発明の実施に使用される分子は、適当な標識(ラベル)/レポーター部分で標識することができる。例えば、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックは、色素、蛍光標識、発光標識、放射性標識、抗原、ハプテン、酵素、酵素基質、保護基、及び化学反応性基からなる標識の群より選ばれる一つ又は複数の標識でラベルすることができる。その他の標識もまた、これらの標識に加えて、又はこれらの標識と組み合わせて、用いてもよい。
【0152】
核酸塩基オリゴマーに関してここで用いる用語「標識(ラベル)」は、オリゴマーに結合できる任意の部分であって、(i)検出可能なシグナルをもたらす部分(ここで該シグナルは、可視波長スペクトルもしくは任意の他の波長のものとすることができ、又は、粒子タイプ(例えば放射性同位体の崩壊粒子)とすることができる)、(ii)第二の標識と相互作用して第二の標識がもたらす検出可能なシグナルを変更又は修飾する部分(すなわちエネルギー移動標識対(エネルギートランスファーラベル対)(例えばFRET対)、(iii)ハイブリッド形成(すなわち二重鎖形成)を安定化する部分、(iv)捕捉機能(例えば、疎水性アフィニティー、抗体/抗原、イオン錯体生成)を与える部分、又は(v)物性(例えば、電気泳動移動性、疎水性、親水性、溶解性、又はクロマトグラフィー挙動)を変える部分である。既知の標識、結合、連結基、試薬、反応条件、並びに分析及び精製の方法を用いる多数の知られた技法の任意の一つを用いて、標識を行うことができる。標識には、発光化合物又は光吸収化合物であって、検出可能な蛍光シグナル、化学発光シグナル、又は生物発光シグナルを生成させるか又は消滅させる化合物が含まれる(Kricka,L.in Nonisotopic DNA Probe Techniques(1992),Academic Press,San Diego,pp.3−28)。ここで用いる用語「標識(ラベル)」と「レポーター」とは交換可能に使用できる場合がある。
【0153】
意図するところ、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックは、任意の標識部分を用いて、あるいは、核酸、修飾核酸もしくは核酸アナログを標識するため当該技術において現在知られている技法を用いて、標識することができる。本発明を何らかのある特定の標識法に限定することは意図するところではない。核酸、修飾核酸及び核酸アナログを標識するための技法は、当該技術において広く知られており、標識のための念入りな検討及び詳細なプロトコルが、多くの出典から可能である。例えば、“Non−Radioactive Labeling,A Practical Introduction,”Garman,Academic Press,San Diego,CA(1997)参照。
【0154】
標識又はレポーターの部分は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロック内の任意の部位に結合できる。標識は、オリゴマーの末端又はオリゴマーブロックの内部(例えば核酸塩基内又は核酸塩基に結合)に配置できる。標識は、完全なオリゴマー又はオリゴマーブロックの合成の後に設けるか、オリゴマー又はオリゴマーブロックの合成中に取り込むことができる。一方、標識は、リンカー化学部位と核酸塩基との間に配置される必要に応じたスペーサー領域に組込むか又は付加する(すなわち一体化する)ことができる。
【0155】
生物分子を標識するのに有用な蛍光レポーター色素には、フルオレセイン類(米国特許第5188934号、第6008379号、第6020481号)、ローダミン類(米国特許第5366860号、第5847162号、第5936087号、第6051719号、第6191278号)、ベンゾフェノキサジン類(米国特許第6140500号)、ドナーとアクセプターのエネルギー移動色素対(米国特許第5863727号、第5800996号、第5945526号)、及びシアニン類(Kubista、WO97/45539号)のほか、検出可能なシグナルを生成できるその他の任意の蛍光標識がある。フルオレセイン色素の具体例には、6−カルボキシフルオレセイン、2’,4’,1,4−テトラクロロフルオレセイン、及び2’,4’,5’,7’,1,4−ヘキサクロロフルオレセイン(Menchen、米国特許第5118934号)がある。
【0156】
蛍光標識についてここで用いる用語「消光(消滅)」は、蛍光標識(すなわち蛍光レポーター部分)の蛍光が減少することを意味する。ドナー部分は蛍光団とすることができ、アクセプター部分(「消光」部分)は蛍光団であってもよいし、非蛍光部分であってもよい。ある態様において、蛍光の減少は、そのメカニズムにかかわらず、消光(剤)部分に伴う蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により生じる。エネルギー移動は、一対のエネルギー移動標識の要素間(該エネルギー移動標識の対は、少なくとも一つのアクセプター部分と少なくとも一つのドナー部分を有する)で生じ得る。本発明の具体的態様において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、標識の少なくとも一つのエネルギー移動対を有することができる。エネルギー移動対の標識は、オリゴマー末端に結合してもよいし、あるいは、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の部位に結合してもよい。その代わりに、あるいは、それに加えて、アクセプター部分及びドナー部分を、異なる複数のオリゴマーブロックに結合してもよい。
【0157】
もう一つの種類の標識は、ハイブリッド形成安定化部分であり、これは、二重鎖のハイブリッド形成を増強、安定化、又は左右するよう機能する(例えば、インターカレーター、小溝バインダー、及び架橋官能基)(Blackburn and Gait,Eds,“DNA and RNA Structure”in Nucleic Acids in Chemistry and Biology,2nd Edition,(1996)Oxford University Press,pp.15−81)。さらに他の種類の標識は、特異的又は非特異的な捕捉により分子の分離又は固定化を行うものである。例えばビオチン、ジゴキシゲニン、及びその他のハプテン類(Andrus,“Chemical methods for 5’non−isotopic labelling of PCR probes and primers”(1995) in PCR2:A Practical Approach,Oxford University Press,Oxford,pp.39−54)がそれである。適当なハプテンには、フルオレセイン、ビオチン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、リポ多糖、アポトランスフェリン、フェロトランスフェリン、インシュリン、サイトカイン、gp120、β−アクチン、白血球機能関連抗原1(LFA−1、CD11a/CD18)、Mac−1(CD11b/CD18)、グリコフォリン、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、インテグリン、アンキリン、フィブリノーゲン、第X因子、細胞間接着分子1(ICAM−1)、細胞間接着分子2(ICAM−2)、スペクトリン、フォドリン、CD4、サイトカイン受容体、インシュリン受容体、トランスフェリン受容体、Fe+++、ポリミキシンB、エンドトキシン中和タンパク質(ENP)、抗体特異的抗原、アビジン、ストレプトアビジン、並びにビオチンがある。非放射性標識の方法、技術、及び試薬が、Non−Radioactive Labelling,A Practical Introduction,Garman(1997)Academic Press,San Diegoに概説されている。ある態様において、用語「標識(ラベル)」と「レポーター」は交換可能に使用される。
【0158】
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロックを直接標識するのに適したレポーター/標識部分の非限定的な具体例には、量子ドット、小溝バインダー、デキストラン抱合体、枝分かれ核酸検出システム、発色団、蛍光団、消光剤、スピン標識、放射性同位体、酵素、ハプテン、アクリジニウムエステル、及び化学発光化合物があるが、これらに限定されるものではない。消光部分も可能な標識である。その他の適当な標識試薬及び標識結合の好ましい方法は、当業者に明らかなところである。ここに記載するいかなる具体例も単に例示を目的とするもので、限定的なものではない。
【0159】
標識
ハプテンの非限定的な具体例には、5(6)−カルボキシフルオレセイン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、及びビオチンがあるが、これらに限定されるものではない。
【0160】
蛍光色素(蛍光団)の非限定的な具体例には、5(6)−カルボキシフルオレセイン(Flu)、2’,4’,1,4−テトラクロロフルオレセイン、及び2’,4’,5’,7’,1,4−ヘキサクロロフルオレセイン、その他のフルオレセイン色素類(例えば米国特許第5188934号、第6008379号、第6020481号参照(この引用によりこれらの内容は本明細書に記載されたものとする))、6−((7−アミノ−4−メチルクマリン−3−アセチル)アミノ)ヘキサン酸(Cou)、5(及び6)−カルボキシ−X−ローダミン(Rox)、その他のローダミン色素類(例えば米国特許第5366860号、第5847162号、第5936087号、第6051719号、第6191278号、第6248884号参照(この引用によりこれらの内容は本明細書に記載されたものとする))、ベンゾフェノキサジン類(例えば米国特許第6140500号参照(この引用によりその内容は本明細書に記載されたものとする))、シアニン2(Cy2)色素、シアニン3(Cy3)色素、シアニン3.5(Cy3.5)色素、シアニン5(Cy5)色素、シアニン5.5(Cy5.5)色素、シアニン7(Cy7)色素、シアニン9(Cy9)色素(シアニン色素2、3、3.5、5、及び5.5は、NHSエステルとして、Amersham,Arlington Heights ILから入手できる)、その他のシアニン色素類(Kubista,WO97/45539)、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、5(6)−カルボキシ−テトラメチルローダミン(Tamara)、Dye 1、Dye 2又はAlexa色素シリーズ(Molecular Probes,Eugene,OR)があるが、これらに限定されるものではない。
【0161】
標識として利用可能な酵素の非限定的な具体例には、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ダイズペルオキシダーゼ(SBP)、リボヌクレアーゼ、及びプロテアーゼがあるが、これらに限定されるものではない。
【0162】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、エネルギー移動標識対と組合せて、エネルギー移動の用途に適するプローブ(例えばFRETプローブ又はリアルタイムPCR解析(すなわちTAQMAN(登録商標)解析)での利用に適したプローブ)を形成するのに使用できる。
【0163】
小溝バインダーの非限定的な具体例にはCDPI3がある(例えばWO01/31063参照)。
【0164】
標識の選択及び保護基の手引き
当業者に明らかなとおり、本発明に従いオリゴマーブロックを連結して絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成しようとする場合、オリゴマーブロックの潜在的に反応性の化学基の性質全体を、潜在的な副反応又は交差反応に対して、考慮すべきである。保護基もまた、適宜、潜在的な副反応又は交差反応を最小限にするか又は排除するため、用いることができる。例えば、連結して絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成する前にオリゴマーブロックを標識する場合、選択できる種々の連結化学作用の性質を見て、一つ又は複数の標識上にある官能基の反応の可能性を考慮することが賢明である。
【0165】
例えば、アミノ基、カルボン酸基及び水溶性カルボジイミドを伴う連結反応を行う場合、保護されていない反応性のアミノ官能基及びカルボキシル官能基を回避して可能性のある副反応/交差反応を避けるように、標識(例えばエネルギー移動対の標識)を通常選択すべきである。かくして、選択される特定の連結反応化学の性質からみて、成分の反応性官能基の性質を考慮することにより、当業者は、どのようにして最適な連結反応条件をもたらせばよいか分かるはずである。
【0166】
連結用の化学反応性基でオリゴマーブロック末端を修飾することに加えて、オリゴマーブロックを、修飾かつ/又は保護して、標識又は表面への結合のための官能基を組み込むことができる。そのような官能基は、以下のような因子に応じて、連結反応の前又は後のいずれかで利用することができる。因子:オリゴマー合成化学(例えば過酷な脱保護の条件が必要な場合、標識を破壊し得る)、選択される連結化学反応(例えば必要な標識の官能基が、縮合化学反応を妨害し得る)、及び官能基を使用する目的(例えば、それが、標識のためか、固体支持体への結合のためであるか)。
【0167】
PNAの標識/修飾
一態様において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックはPNAを含む。意図するところ、PNAの標識又は修飾に使用できる任意の試薬または方法は、本発明にも使用できる。例えば、標識PNA分子の作製及び使用のため当該技術において知られている任意の技法を、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックに使用できる。
【0168】
PNA類を標識する非限定的な方法は、当該技術においてよく知られており、種々の出典に記載されている。例えば、米国特許第6110676号、第6280964号、WO99/22018、WO99/21881、WO99/37670、WO99/49293、及びNielsen et al.,Peptide Nucleic Acids:Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,Norfolk,England(1999)参照。
【0169】
ペプチドとPNAの合成化学は本質的に同じであるため、ペプチドの標識に通常使用される任意の方法を、PNAオリゴマーの標識を行うのにしばしば適用できる。一般に、PNAポリマーのN末端は、カルボン酸基又は活性化カルボン酸基を有する成分との反応により標識することができる。一つ以上のスペーサー部分を、必要に応じて、標識部分とオリゴマーの塩基を含むサブユニット(すなわち核酸塩基)との間に導入できる。一般に、スペーサー部分は、標識反応を行う前に組み込むことができる。必要ならば、スペーサーを標識内に埋め込むことができ、従ってそれを標識反応中に組み込むことができる。
【0170】
典型的に、PNAオリゴマーがその上で組み立てられる支持体と共に、まず標識部分又は官能基部分を取り付けることにより、該ポリマーのC末端を標識できる。次いで、PNAオリゴマーの最初の核酸塩基を含むシントンを、該標識部分又は官能基部分と縮合させることができる。一方、一つ以上のスペーサー部分(例えば8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸、「O−リンカー」)を、標識部分又は官能基部分とオリゴマーの最初の核酸塩基サブユニットとの間に導入することができる。一旦、調製すべき分子が完全に組み立てられ、標識されかつ/又は修飾されたなら、標準的な方法を用いて、それを支持体から切り離し、脱保護し、そして、精製することができる。
【0171】
一方、オリゴマーを支持体に結合させたまま、組立てられた又は部分的に組立てられたポリマー上に官能基を導入することができる。そして該官能基は、任意の目的に利用でき、例えば、支持体にオリゴマーを取り付けることや、あるいは、レポーター部分と反応させること、例えば、連結後に他のオリゴマーブロックと反応させることに利用できる(「連結後」は、一つ以上のオリゴマーブロックを連結することにより絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが完全に形成さられた後の時点を意味する)。しかし、この方法は、組立て完了後に反応性官能基が生じるよう、適当に保護された官能基を、組立てにおいてオリゴマーに組み込むことを必要とする。従って、保護された官能基を、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロック内の任意の位置(例えば、オリゴマーブロックの末端、オリゴマーブロックの内部、又はリンカーもしくはスペーサーと一体的な位置に結合)に取り付けることができる。
【0172】
例えば、リジンのε−アミノ基は、4−メチル−トリフェニルメチル(Mtt)、4−メトキシ−トリフェニルメチル(MMT)又は4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル(DMT)の保護基で保護できる。Mtt、MMT又はDMTの基は、穏やかな酸性条件下で合成樹脂の処理により、オリゴマー(市販のFmocPNAモノマーとPALリンカーを有するポリスチレン支持体とを用いて組立てられる(PerSeptive Biosystems,Inc.,Framingham,MA))から除去できる。その結果、ポリマーを支持体に結合させたまま、例えば、ドナー部分、アクセプター部分、又は他のレポーター部分を、リジンアミノ酸のε−アミノ基と縮合させることができる。完全な組立て及び標識の後、よく知られた方法を用いて、ポリマーを、支持体から切り離し、脱保護し、そして、精製することができる。
【0173】
さらに他の方法により、オリゴマーブロックを支持体から切り離した後、標識をオリゴマーブロックに取付けたり、あるいは、オリゴマーブロックを連結した後、標識を絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに取付けることができる。オリゴマーの製造に使用される開裂、脱保護、又は精製の方法に標識が適合しない場合、これらの方法は好ましい。この方法により、絶縁性組合せPNAオリゴマー又はPNAオリゴマーブロックは、一般に、ポリマー上の官能基又は標識上の官能基の反応により、溶液において標識される。当業者に明らかなとおり、このカップリング溶液の組成は、オリゴマー及び標識(例えばドナー又はアクセプター部分)の性質によって変わってくる。このカップリングに使用される溶液は、有機溶媒、水、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。一般に、有機溶媒は、極性で非求核性の溶媒である。適当な有機溶媒の非限定的な具体例には、アセトニトリル(ACN)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メチルスルホキシド、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、及びN−メチルピロリドン(NMP)がある。
【0174】
オリゴマー及び標識上の官能基の性質は限定されない。例えば、標識すべきオリゴマー上の官能基は求核基(例えばアミノ基)とすることができ、標識上の官能基は求電子基(例えばカルボン酸又は活性化カルボン酸)とすることができる。意図するところ、求核基と求電子基の配置は逆にすることができ、従って、オリゴマー上の官能基を求電子基とし、標識上の官能基を求核基とすることができる。活性化カルボン酸の官能基の非限定的な具体例には、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルがある。水溶液において、PNA又は標識のいずれかのカルボン酸基は、(選択した成分の性質に応じて)例えば、水溶性カルボジイミドで活性化できる。試薬1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)は、市販の試薬であり、水性アミド形成縮合反応に専用で販売されている。
【0175】
I.キメラの絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロック
意図するところ、本発明のオリゴマー(絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのほか、個々のオリゴマーブロックを含む)はキメラの性質とすることができる。すなわち、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及び/又は個々のオリゴマーブロックは、核酸塩基又は異なる構造からなり得る。
【0176】
例えば、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの場合、オリゴマーは、二つ以上のオリゴマーブロックからなり得、そこにおいて、異なるオリゴマーブロックの核酸塩基構造は、異なる構造のものである。例えば、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、二つのオリゴマーブロックから合成することができ、そこにおいて、一つのオリゴマーブロックはPNAから合成され、もう一つのオリゴマーブロックはデオキシリボヌクレオチド(DNA)から合成できる。さらに意図するところ、単一のオリゴマーブロック自身をキメラとすることができる。例えば、一つのオリゴマーブロックは、PNA核酸塩基とDNA核酸塩基とを含むことができる。
【0177】
非限定的な具体例として、PNAを含むキメラの核酸塩基構造、例えばPNAとポリヌクレオチドの両方の構造を含むキメラは、当該技術において知られている。これらキメラの合成、標識、及び修飾は、当業者に知られた方法を用いることができる。例えばWO96/40709(現在米国特許第6063569号として発行、その内容はこの引用により本明細書に記載されたものとする)参照。さらに、PNA合成及び標識のための上記方法は、多くの場合、例えばPNAキメラのPNA部分の修飾に用いることができる。さらに、核酸の合成及び標識のためのよく知られた方法を、多くの場合、PNAキメラの核酸部分の修飾に用いることができる。その具体的な方法は、米国特許第5476925号、第5453496号、第5446137号、第5419966号、第5391723号、第5391667号、第5380833号、第5348868号、第5281701号、第5278302号、第5262530号、第5243038号、第5218103号、第5204456号、第5204455号、第5198540号、第5175209号、第5164491号、第5112962号、第5071974号、第5047524号、第4980460号、第4923901号、第4786724号、第4725677号、第4659774号、第4500707号、第4458066号、及び第4415732号に示されており、その各内容はこの引用により本明細書に記載されたものとする。
【0178】
J.製造物
本発明は、製造物(例えばキット)を提供し、それは、少なくとも一つの本発明の絶縁性組合せオリゴマー又はオリゴマーブロックを含む。所定の態様において、キットは、方法の実施に用いる二つ以上の成分を合わせることによって、対象となるプロセス、方法、アッセイ、分析、又は操作の性能を促進するよう働く。キットは、方法の使用に必要な任意の化学試薬、酵素、又は備品を含むことができる。所定の態様において、キットは、最終使用者による測定の必要性を最小限にするため、予め測定された量の成分を含む。所定の態様において、キットは、一つ以上の本発明の方法を実施するための説明書を含む。所定の態様において、キットの構成要素は、互いに組合せて操作するため、最適化されている。
【0179】
本発明のキットに用いるとき、絶縁性組合せオリゴマーは、ある特定の標的配列に対して配列特異性に作ることができ、そして、標識してもよいし、標識しなくともよい。絶縁性組合せオリゴマーを標識する場合、選ばれる標識は意図する用途での使用に適するものである。絶縁性組合せオリゴマーは、任意の適当なポリ核酸塩基(例えばPNA)から調製できる。本発明のオリゴマーは、適当な容器(例えばチューブ又はアンプル)に包装することができ、また、乾燥(例えば凍結乾燥)した形態又は水を含む形態で包装することができる。必要であれば、キットにおける製造物は、輸送及び/又は貯蔵中、冷蔵又は冷凍することができる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーを含む任意の製造物は、製品の説明書、製品の仕様書、又は製品の使用説明書をさらに含むことができる。
【0180】
さらに、本発明のキットは、例えば、限定されることなく、試料の採取及び/又は精製のための器具及び試薬、生成物の採取及び/又は精製のための器具及び試薬、サンプルチューブ、ホルダー、トレー、ラック、皿、プレート、キット使用者用の説明書、溶液、緩衝剤又は他の化学試薬、標準化、規格化、及び/又は対照試料に使用すべき適当な試料を含むことができる。また、本発明のキットは、都合のよい貯蔵及び輸送のため、例えば蓋つき箱に包装できる。
【0181】
キットに含まれる絶縁性組合せオリゴマーは、標識されていてもよいし、されていなくともよい。他の態様において、本発明は、標識されていない絶縁性組合せオリゴマーとともに、該オリゴマーを標識するための手段を含むキットを提供する。他の態様において、本発明は、標識されている又は標識されていない絶縁性組合せオリゴマーとともに、該オリゴマーを視覚化又は検出するための手段(例えば器具及び/又は試薬)を含むキットを提供する。
【0182】
また、本発明は、種々の方法(例えば配列特異的ハイブリッド形成を伴う任意の方法)において本発明の絶縁性組合せオリゴマーの利用を容易にするキットを提供する。これらの方法を実施するための材料及び試薬は、該方法の実行を容易にすべくキットに設けることができる。本発明のキットは、少なくとも一つの絶縁性組合せオリゴマーを含み、そして必要に応じて、相当数の他の構成要素をさらに含むことができ、そのような構成要素には、(i)一つ以上の緩衝剤、(ii)一つ以上のヌクレオチド三リン酸、(iii)核酸増幅用マスターミックス、(iv)一つ以上のポリメラーゼ酵素、又は(v)核酸生成物の分離/精製に適する試薬又は備品があるが、これらに限定されることはない。一態様において、キットは、PCR反応においてプライマーとして使用するのに適する少なくとも二つのオリゴヌクレオチドプライマーを含む。
【0183】
ある態様において、本発明は、TAQMAN(登録商標)リアルタイムPCR解析を行うためのキットを提供する。これらのキットは、例えば、試料採取用の試薬、逆転写酵素、逆転写酵素開始及び最初の鎖cDNA合成に適するプライマー、少なくとも一つの適当なブロッキング核酸塩基オリゴマー、第二の鎖cDNA合成に適するプライマー、DNA依存性DNAポリメラーゼ、遊離のデオキシリボヌクレオチド三リン酸、及び反応により生成したcDNA分子の分離/精製に適する試薬を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0184】
本発明のキットを提供する一態様において、単一の標的配列に特異的な単一の核酸塩基オリゴマーが用意される。他の態様において、複数の標的に特異的な複数の核酸塩基オリゴマーが、キットにおいて用意される。例えば、二つの絶縁性組合せオリゴマーの組を、単一のキットにおいて用意することができ、そこにおいて、該二つのオリゴマーは、PCR反応のような核酸増幅反応においてプライマーとして用いることができる。ある態様において、固相又は固体の表面に付着させた本発明の絶縁性組合せオリゴマーを有するキットが提供される。所定の態様において、本発明のキットは、少なくとも一つの標的核酸鋳型において配列決定するため用いることができる。
【0185】
さらに他の態様において、本発明は、本発明の絶縁性組合せオリゴマーを用いて遺伝子発現を分析するためのキットを提供する。これらのキットは、適当なアレイ又はチップの構造物に付着させた複数の本発明の絶縁性組合せオリゴマーとともに、ハイブリダイズした複合体の検出/視覚化に必要な試薬を含むことができる。
【0186】
K.エネルギー移動の応用(例えばFRET又はTAQMAN(登録商標))に用いるための絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの標識
エネルギー移動標識のセットで構成される標識対(又はエネルギー移動標識対)もまた、エネルギー移動の用途(例えば蛍光共鳴エネルギー移動もしくはFRETのプローブ又はリアルタイムPCR解析(すなわちTAQMAN(登録商標)解析)での使用に適するプローブ)において、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに用いることができる。エネルギー移動プローブのセットは、細胞/分子生物学の研究において広範かつ多様に用いられており、その合成及び利用のためのプロトコルは、当該技術において広く知られている。例えばWO99/21881、WO99/22018及びWO99/49293参照。
【0187】
一般に、エネルギー移動対は、少なくとも二つの標識を指し、ここで一つの標識(「ドナー」又は「クエンチャー(消光体)」と呼ばれることがある)の放射(発光)が、もう一つの標識(「アクセプター」と呼ばれることがある)の強度に影響を及ぼす。一態様において、一つ以上のドナー部分と一つ以上のアクセプター部分の両方が蛍光団であり、かつ、標識はFRET対からなる。エネルギー移動対の標識は、オリゴマーブロック末端で絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに結合させることができ、あるいは、オリゴマーブロック内の部位もしくは絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の他の部位(例えばスペーサー部分に一体的)に結合させることができる。一態様において、エネルギー移動対の二つの標識のそれぞれを、組合せオリゴマーの最も離れた末端に結合することができる。一態様において、一つのオリゴマーブロックはドナー部分を含み、もう一つのオリゴマーブロックはアクセプター部分を含む。
【0188】
この応用において、エネルギー移動対は、少なくとも一つのエネルギー移動ドナーと、少なくとも一つのエネルギー移動アクセプター部分とを含む。多くの場合、エネルギー移動対は、単一のドナー部分と単一のアクセプター部分とを含むことになるが、これに限定されるものではない。あるエネルギー移動対は、一つより多いドナー部分及び/又は一つより多いアクセプター部分を含んでもよい。ドナー及びアクセプターの部分は、一つ以上のアクセプター部分が、一つ以上のドナー部分から移動したエネルギーを受け入れるように、あるいは、一つ以上のドナー部分からのシグナルを消滅させるように、働く。一態様において、一つ以上のドナー部分と一つ以上のアクセプター部分の両方が蛍光団であり、かつ、標識はFRET対からなる。適当なスペクトル特性を有する種々の蛍光団が、エネルギー移動アクセプターとして働き得るが、アクセプター部分は非蛍光性クエンチャー型部分でもよい。
【0189】
消光部分の非限定的な具体例には、アリールジアゾ化合物のようなジアゾ含有部分、例えば4−((−4−ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸(ダブシル)、ダブシル、もう一つの追加のジアゾ及び/又はアリール基を含む同族体、例えばFast Black(例えば米国特許第6117986号参照)、シアニン色素類(例えば米国特許第6080868号参照)、及びその他の発色団、例えばアントラキノン、マラカイトグリーン、ニトロチアゾール、及びニトロイミダゾール化合物があるが、これらに限定されるものではない。
【0190】
ドナー部分とアクセプター部分との間でのエネルギーの移動は、任意のエネルギー移動プロセスを介して起こり得、例えば、一つ以上のエネルギー移動対の密接に関連する部分の衝突を介して、又は、FRETのような非発光(非放射)のプロセスを介して起こり得る。FRETが生じるのにドナー部分とアクセプター部分との間のエネルギー移動が必要とすることは、該部分同士がきわめて接近していること、及び、一つ以上のドナーの発光スペクトルが、一つ以上のアクセプターの吸収スペクトルに対して実質的な重なりを有することである(Yaron et al.,Analytical Biochemistry 95:228−235(1979)、特に232頁1欄〜234頁1欄参照)。一方、衝突を介して(放射なしで)エネルギーの移動が、非常に密接に関連するドナー部分とアクセプター部分との間で起こり得、これは、一つ以上のドナー部分の発光スペクトルが、一つ以上のアクセプター部分の吸収スペクトルに対して実質的な重なりを有する場合でも有しない場合でも起こり得る(Yaron et al.,Analytical Biochemistry 95:228−235(1979)、特に229頁1欄〜232頁1欄参照)。このプロセスは分子内衝突と呼ばれる。というのも、クエンチングが、ドナー部分とアクセプター部分の直接的接触により起こると考えられるからである(Yaron et al.,上記参照)。当然のことながら、本願におけるエネルギー移動への言及は、これらの機械論的にはっきりした現象のすべてを包含する。また当然のことながら、エネルギー移動は、一つより多いエネルギー移動のプロセスを通じて同時に起こり得、また、検出可能なシグナルの変化は、二つ以上のエネルギー移動プロセスの作用の尺度となり得る。従って、エネルギー移動のメカニズムは、本発明を限定するものではない。実際、エネルギー移動が生じる一つ又は複数のメカニズムを明らかにすることは、本発明を為し又は用いるのに必要ではない。
【0191】
エネルギー移動対は、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと標的との間の核酸塩基ハイブリッド形成を検出/モニターするのに用いることができる。この態様で用いるとき、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、プローブとして用いる前に、適当なエネルギー移動対で標識することができる。この種の用途に用いる適当なエネルギー移動対は、当該技術において知られており、そこにおいて、そのようなプローブは、「線状標識(リニアビーコン)」又は「分子標識(モレキュラービーコン)」と呼ばれることがある(例えばWO99/21881参照)。
【0192】
適当に標識された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと標的配列との間のハイブリダイゼーション複合物の形成は、ハイブリダイズしない状態で絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが存在するときと比べてハイブリダイゼーション複合物を形成したときに検出可能に異なる少なくとも一つのエネルギー移動対の少なくとも一つの物性を測定することにより、モニターすることができる。この検出可能なシグナルの変化は、組合せオリゴマーが標的配列にハイブリダイゼーションすることにより生じる、ドナー部分とアクセプター部分との間のエネルギー移動の効率の変化に起因する。
【0193】
例えば、検出の手段は、エネルギー移動対のドナー又はアクセプターの蛍光団の蛍光を測定することを含むことができる。一態様において、エネルギー移動対は、少なくとも一つのドナー蛍光団と、少なくとも一つのアクセプター(蛍光性又は非蛍光性)クエンチャーとを含み、それにより、該ドナー蛍光団の蛍光の測定値を、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと標的配列とのハイブリッド形成の検出、特定又は定量に用いることができる。例えば、組合せオリゴマーが標的配列とハイブリッド形成したとき、ドナーの蛍光団の蛍光は測定可能に増加し得る。
【0194】
他の態様において、エネルギー移動対の標識は、複数の異なる本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに設けられ、そこにおいて、一つのオリゴマーはクエンチャー部分単独で標識され、また、一つのオリゴマーはアクセプター部分単独で標識され、さらにそこにおいて、それらのオリゴマーは、重複核酸塩基相補性の領域を有し、かつ、一つのオリゴマーはさらに、他のオリゴマーと異なる標的に対して特異的である。この種の標識系は、種々の用途があり、当該技術において知られている(例えばWO99/49293参照)。この標識法は、本発明の新規な絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと組合わせて用いることができる。
【0195】
この系において、オリゴマー、クエンチャー及び標的を含む複合体が形成されるとき、標的上の少なくとも一つのドナー部分は、第二の標的に結合される第二の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー上にある少なくとも一つのアクセプター部分に十分接近した範囲に配置される。対をなすドナー部分とアクセプター部分は非常に接近するので、このエネルギー移動対の部分間でエネルギーの移動が起こる。しかし、検出複合体の一つが解離するとき、例えば、ポリメラーゼが、検出複合体の鎖の一つを複製するとき、ドナー及びアクセプターの部分は、エネルギー移動対のドナーとアクセプターの部分からエネルギーの実質的な移動を生じさせるのに十分な相互作用をもはやもたらさず、エネルギー移動対のドナー及び/又はアクセプターの部分からの検出可能なシグナルの相関的変化が生じる。その結果、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを含む複合体の形成又は解離の測定は、構成要素である標識した絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが独立して存在し結合していないときと比べて複合体を形成したときに検出可能に異なるエネルギー移動対の少なくとも一つの要素の少なくとも一つの物性を測定することにより、行うことができる。
【0196】
L.応用及び使用方法
本発明の組成物及び方法は、種々の用途に用いられる。実際、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、任意の他の核酸塩基オリゴマーがハイブリッド形成プロトコルに用いられる任意の用途に用いることができる(すなわちプローブ又はプライマーとして)。例えば、本発明の組成物及び方法は、遺伝子発現の解析に用いられる。ここに論じるいくつかの用途のみに本発明を用いることは意図するところではなく、本発明の絶縁性組合せオリゴマーについて種々の用途があることを当業者は直ちに認識するはずである。ここに記載する用途は、例示を目的とし、限定的ではなく、また、そのような具体例は網羅的なものではない。当然のことながら、本発明の用途は、ここに記載するある特定の用途に限定されず、本発明は、オリゴマー核酸塩基配列をプローブ又はプライマーとして組み込む任意のプロトコルに用いることができる。
【0197】
プローブ又はプライマーとして用いるとき、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、配列特異性を有する標的配列とハイブリダイズすることが必要である。かくして、プローブとして用いるとき、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの固有の特徴にさらなる制限は設けられない。しかし、プライマーとして用いるとき、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、少なくとも一つのポリメラーゼ酵素により伸長可能である必要がある。
【0198】
本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、所定の特異性を有する多数の(数百又は数千もしくは数百万もの)オリゴマー配列を用いる高処理能力の用途に特に用いることができる。
【0199】
ハイブリッド形成の指示薬としての絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー
一態様において、本発明は、試料中に標的核酸塩基配列が存在するかどうかを検出するための組成物及び方法を提供し、それらは、適当に標識された本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを用いる。
【0200】
該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、当該技術において知られているような標識のエネルギー移動対(例えば、標識のFRET対)を含むことができ、それにより、該エネルギー移動対の少なくとも一つのアクセプター部分は、オリゴマーブロックの一つに結合され、一方、少なくとも一つのドナー部分は、もう一つのオリゴマーブロックに結合され、そこにおいて、標識は、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが配列特異的に標的にハイブリダイズするとき少なくとも一つの該標識の検出可能なシグナルの変化が容易になる位置で、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに結合される。標的配列に対するハイブリッド形成を示すためのFRET型プローブの合成及び使用の方法は当該技術において知られている。例えばWO99/21881、WO99/22018及びWO99/49293参照。
【0201】
酵素開裂部位を有する絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー
一態様において、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、その付加物またはリンカーにおいて酵素開裂部位を含むよう設計することができ、そこにおいて、該開裂部位は、該オリゴマーと標的配列とのハイブリッド形成に対して開裂から保護されている。かくして、本発明は、絶縁性組合せオリゴマーが標的配列に結合されるか否かを判定するための方法を提供する。
【0202】
この方法において、酵素開裂部位を含む絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、標識の適当なFRET対で標識される。この標識されたオリゴマーと可能性のある標的とは、適当な結合条件下で合わされ、複合体を形成するようハイブリッド形成を可能にする。
【0203】
ハイブリッド形成反応の後、反応混合物は、適当な酵素開裂条件下で、該開裂部位の開裂に適する酵素で処理される。適当な酵素開裂条件は、該酵素が基質に作用するよう働く条件である。多数の酵素が、そのような用途のため市販されており、市販品提供者からの製品に関する資料は、適当な酵素開裂条件に関する情報を提供するはずである。
【0204】
該オリゴマーがその標的配列にハイブリダイズした場合、該開裂部位は酵素から保護され、そして、該組合せオリゴマーは開裂しないままである。しかし、プローブが標的にハイブリダイズしない場合、酵素は、該オリゴマーを開裂し、その結果、ハイブリダイズした状態に比べてFRET標識の強度が変化する。
【0205】
この方法によれば、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが標的配列に結合すると、酵素は、該オリゴマーを実質的に開裂しなくなる。従って、結合により、該オリゴマーは、酵素による実質的な分解から守られる。その結果、アッセイによってオリゴマーが実質的に分解されないと判定される場合、それは標的配列に結合しているはずである。逆に、オリゴマーが分解から守られなかった場合、可能性のある標的配列が存在しなかったと結論づけることができる。さらに、明らかなように、そのようなアッセイは酵素による事象に基づくため、標的配列の量は、酵素活性を定量することにより決定することができる。
【0206】
この方法が、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの標的配列への結合を伴うとき、ハイブリッド形成は、適当なハイブリッド形成条件下で起こり、そこにおいて、該標的配列は、標識されたオリゴマーより高い濃度とすることができる。それにより、連続した核酸塩基の標的配列が存在する場合、利用可能なオリゴマーの実質的にすべてが、配列特異的に結合する。
【0207】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、例えば、オリゴマーブロック内の一つ以上のリンカー配列に酵素開裂部位を含むよう、あるいは、取り付け部分の一部として酵素開裂部位を含むよう、設計できる。かくして、そのように設計されるリンカーを組み込むことにより、本発明は、例えば、試料中に可能性のある標的結合パートナーが存在するか否か、そして、どれぐらいの量で存在するか、決定するための方法を提供する。
【0208】
開裂部位を含むリンカー又はスペーサーの非限定的な具体例には、lys−X、arg−X、Glu−X、asp−X、asn−X、phe−X、leu−X、lys−gly、arg−gly、glu−gly、及びasp−glu(ここでXは天然に存在する任意のアミノ酸である)があるが、これらに限定されるものではない。これらの基質の一つ以上を開裂するのに適する酵素の非限定的な具体例の群は、エンドプロテイナーゼGlu−C(EC3.4.21.19)、Lys−C(EC3.4.21.50)、Arg−C(EC3.4.22.8)、Asp−N(EC3.4.24.33)、パパイン(EC3.4.22.2)、ペプシン(EC3.4.23.1)、プロテイナーゼK(3.4.21.14)、キモトリプシン(EC3.4.21.1)、及びトリプシン(3.4.21.4)を含む。
【0209】
PCR産物のリアルタイムモニタリング
エネルギー移動(例えばFRET)標識を本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックと組み合わせた一般的な応用は、上述したところである。エネルギー移動標識のもう一つの応用は、PCR産物の蓄積をリアルタイムにモニターする(すなわちTAQMAN(登録商標)解析)のに適したプローブの合成である。
【0210】
本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、リアルタイム定量的PCR解析においてFRET型プローブとして用いることができる。リアルタイムPCR解析は、蓄積するPCR産物をモニターすることを指す(蛍光5’ヌクレアーゼアッセイ、すなわちTAQMAN(登録商標)解析としても知られる)。TAQMAN(登録商標)プローブの合成および使用の方法は、当該技術においてよく知られている。例えば、Holland et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276−7280[1991]及びHeid et al.,Genome Research 6:986−994[1996]参照。
【0211】
一般に、TAQMAN(登録商標)PCR法は、二つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、鋳型特異的なPCR反応からアンプリコンを生成させる。第三の非プライミング核酸塩基オリゴマー(必ずしもヌクレオチドオリゴマーである必要はない)もまた、反応に含まれる(TAQMAN(登録商標)プローブ)。このプローブは、TaqDNAポリメラーゼ酵素により伸長可能でない構造を有し、そして、二つのPCRプライマー間にあるヌクレオチド配列にハイブリダイズするよう設計されている。TAQMAN(登録商標)プローブは、対向する末端にある、レポーター蛍光色素とクエンチャー蛍光色素とで標識される。該プローブがPCRアンプリコンにアニールされるときのように、該二つの色素が互いに接近すると、レーザーにより誘導されるレポーター色素からの発光は、クエンチング色素により消滅させられる。
【0212】
TAQMAN(登録商標)PCR反応は、高温に晒されても5’−3’ヌクレアーゼ活性を維持する耐熱性のDNA依存性DNAポリメラーゼ(例えばTaqDNAポリメラーゼ)を用いる。PCR増幅反応中、TaqDNAポリメラーゼは、アンプリコンにハイブリダイズした標識プローブを開裂する。生じるプローブフラグメントは、溶液中で解離し、放出されたレポーター色素からのシグナルは、第二の蛍光団のクエンチング作用(消光作用)を免れる。合成された新しい分子のそれぞれについてレポーター色素の一分子が開放され、そして、消光されなかったレポーター色素の検出が、データの定量的な見積もりの基礎となり、その結果、放出された蛍光レポーター色素の量が、アンプリコン産物の量に正比例することとなる。
【0213】
TAQMAN(登録商標)アッセイデータは、しきいサイクル値(CT)として表され、これは、レポーター色素からの蛍光が統計的に有意な検出可能レベルとなるのに必要なPCRサイクルの最小数である。上述したように、蛍光の値が、すべてのPCRサイクルにおいて記録され、それは、増幅反応におけるその時点で増幅された生成物の量を表す。
【0214】
TAQMAN(登録商標)RT−PCRは、市販の装置を用いて行うことができ、例えば、ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems,Foster City,CA)又はLightcycler(Roche Molecular Biochemicals,Mannheim,Germany)を用いて行うことができる。該システムは、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラ、及びコンピュータからなる。ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection System(配列検出システム)は、サーモサイクラー上の96ウェル型において試料を増幅する。増幅中、レーザーにより誘導される蛍光シグナルは、96ウェルすべてについて光ファイバーケーブルを介してリアルタイムに集められ、CCDで検出される。該システムは、該装置の作動及びデータの解析のためのソフトウェアを含む。
【0215】
遺伝子発現の解析
本発明により提供される絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ハイブリッド形成アッセイ(例えば遺伝子発現の解析)に用いることができる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、二つの一般的なキャパシティにおいて、プローブとして使用される。まず、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、標的ポリヌクレオチドを検出するため標識して用いることができる。第二に、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、固相に固定化することができ、そして、アレイ又はチップ型の遺伝子発現解析システムにおいて用いることができる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーをある特定のハイブリッド形成の様式、プロトコル又は条件での使用に限定することは、意図するところではなく、当業者は、種々のハイブリッド形成プロトコルに精通しており、そして、多くのハイブリッド形成の様式にそれらを適用して本発明の効果が得られることは、当業者に明らかなことである。
【0216】
一局面において、本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、ハイブリッド形成及びプローブとしての使用の前に標識される。標識プローブの使用法に何らかの限定を設けることは本発明の意図するところではない。ここで用いる用語「標識」は、標的ヌクレオチド配列の分離、クローニング、検出、視覚化、又は定量を可能にする任意の部分を指す。オリゴマーに共有結合される標識は、それ自体で検出可能とすることができ(例えばフルオレセイン又は放射性同位体)、あるいは逆に、二次試薬と相互作用するまで、直接的には視覚化できないものであってもよい(例えば、ビオチン/ストレプトアビジン結合色素又は発色基質の存在が必要な共役酵素)。標的配列との複合体(例えば二重鎖)にある場合、標識絶縁性組合せオリゴマーは、適当な方法(例えば、放射検出、比色測定、蛍光、化学発光、生物発光、及び酵素結合アッセイがあるがこれらに限定されない)を用いて検出できる。多数のオリゴマー標識/検出法が当該技術において広く知られており、それらのすべてを本発明に用いることができる。本発明をある特定の標識法に限定することは意図するところではない。
【0217】
第二の局面において、ハイブリッド形成反応は、当該技術において知られるように、高処理能力の態様において行われる。一般に、高処理能力のハイブリッド形成の様式は、固体支持体に付着させたプローブ(すなわち本発明の絶縁性組合せオリゴマー)を用いる。該固体支持体は、任意の組成及び構造とすることができ、そして、有機及び無機の支持体を含み、ビーズ、球体、粒子、顆粒、平面もしくは非平面の表面からなることができ、かつ/又はウェル、皿、プレート、スライド、ウェハ、又は他の任意の種類の支持体の形態とすることができる。ある態様において、固体支持体の構造及び構成は、ロボットによる自動化技術が容易になるよう設計される。検出、測定及び/又は定量の工程は、自動化技術を用いても行える。
【0218】
ある態様において、ハイブリッド形成の様式は、当該技術に広く知られるとおり「アレイ」、「マイクロアレイ」、「チップ」、又は「バイオチップ」である(例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 22,“Nucleic Acid Arrays,”John Wiley&Sons,Inc.,New York[1994]及びM.Schena,(ed.),Microarray Biochip Technology,BioTechnique Books,Eaton Publishing,Natich,MA[2000]参照)。一般に、アレイの様式は、多数の試料の自動分析を容易にし、かつ/又は、多数のアドレス可能な位置を有し、それにより、非常に多くの遺伝子について、遺伝子発現のパターンを非常に速く調査できる。本発明の絶縁性組合せオリゴマーは、プローブとして用いるとき、アレイの様式で用いることができるが、本発明の絶縁性組合せオリゴマープローブをある特定のアレイ又はハイブリッド形成の様式で用いることに限定することは、意図するところではない。
【0219】
ポリヌクレオチド試料をハイブリッド形成アッセイに用いる場合、一般に、ハイブリッド形成の前にポリヌクレオチドプールの標識が必要であり、それにより、固定化プローブと標的の相互作用が検出できる。種々のポリヌクレオチド標識法が当該技術において知られており、本発明をある特定のポリヌクレオチド標識法に限定することは意図するところではない。標識したポリヌクレオチド試料により、固体支持体(例えばマイクロアレイ)に付着させたプローブとともに二重鎖になるポリヌクレオチド種を検出できる。付着させたプローブとともに二重鎖となる標識ポリヌクレオチドは、適当な検出法を用いて検出できる。
【0220】
本発明の一態様において、ポリヌクレオチドプール(RNA又はDNA分子のいずれかを含む)の標識は、合成時にできつつあるポリヌクレオチド分子に適当な標識を組み込むことにより達成される。例えば、色素が結合したUTPを、できつつあるRNA鎖に組み込むことができる。他の態様において、ポリヌクレオチドプールの標識は、ポリヌクレオチドプールを合成した後に達成される。この態様において、RNA又はDNA分子は、鎖合成の後にポリヌクレオチドに結合される(すなわち抱合されるか、あるいは、共有結合される)適当な標識を用いてラベルされる。
【0221】
さらに他の態様において、試料中のポリヌクレオチドの標識していないプールを、標識工程が不要な方法を用いて、ハイブリッド形成又は遺伝子発現解析に直接使用できる。例えば、付着させたプローブとの二重鎖形成は、表面プラズモン共鳴(SPR)を利用して検出できる。例えばSPREETA(商標)SPRバイオセンサー(Texas Instruments,Dallas,TX)及びBIACORE(登録商標)2000(BIACORE(登録商標)、Uppsala,Sweden)を参照。また、共鳴光散乱法を用いることができ、それにより、標識されていないプローブを用いるハイブリッド形成解析において二重鎖の形成を検出できる(Lu et al.,Sensors 1:148−160[2001])。
【0222】
本発明をある特定の標識法、プロービング法、又はハイブリッド形成法に限定することは意図するところではない。当業者は、多種多様のそのようなプロトコル及び試薬を熟知しており、それらのすべてを、本発明の絶縁性組合せオリゴマーとともに用いることができる。
【0223】
ハイブリッド形成反応での使用
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックは、ハイブリッド形成(すなわち二つの相補的核酸塩基配列同士による複合体の形成)を伴う任意の方法に用いられる。相補性は100%である必要はなく、100%未満の相補性であっても、効果的なハイブリッド形成は起こり得る。
【0224】
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及びオリゴマーブロックの可能な用途は、決して限定されるものではない。従って、当業者に明らかなとおり、本発明の組成物を用いて実施するようなハイブリッド形成反応に使用すべき具体的条件は、同様に限定されるものではなく、特定の用途及び使用されるオリゴマーの一次配列によって変わってくる。特定の用途のためのハイブリッド形成条件を記載する多種多様の出典が利用可能である。例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 22,“Nucleic Acid Arrays,”John Wiley&Sons,Inc.,New York[1994]及びM.Schena,(ed.),Microarray Biochip Technology,BioTechnique Books,Eaton Publishing,Natick,MA[2000]参照。
【0225】
当業者に明らかなとおり、ある特定のハイブリッド形成反応のストリンジェンシーは多くの変数に左右される。当該技術は「低ストリンジェンシー」又は「高ストリンジェンシー」という用語を用いるが、任意の又はすべてのハイブリッド形成反応に普遍的にあてはまる低ストリンジェンシー又は高ストリンジェンシーの厳密な条件を定義することは、不可能ではないにしても、実際的ではない。
【0226】
特定のハイブリッド形成反応に使用できる「ストリンジェンシー」のより有用な定義は、所定の一連のハイブリッド形成条件が、同じ実験系における別の一連のハイブリッド形成条件と比べてより多くストリンジェントであるかより少なくストリンジェントであるかを規定することである。当業者に明らかなとおり、種々の因子がストリンジェンシーを決定しており、そのような因子には、塩濃度(すなわちイオン強度)、ハイブリッド形成温度、界面活性剤濃度、pH、化学変性剤(例えばホルムアミド)の存在/濃度、及びカオトロピック剤(例えば尿素)の存在/濃度があるが、これらに限定されるものではない。特定のオリゴマーに最適なストリンジェンシーは、多くの場合、上述したストリンジェンシー因子のいくつかを固定し、そして、一つのストリンジェンシー因子を変化させる効果を測定する、よく知られた技法により見出される。一般に、これらの同じストリンジェンシー因子が、任意の核酸塩基構造に対するハイブリッド形成ストリンジェンシーを調節するのに適用される。一つの例外は、核酸とのハイブリッド形成反応にPNAオリゴマー構造を用いることである。というのもPNAハイブリッド形成の安定性は、イオン強度にほとんど依存しないからである。アッセイに最適な又は適するストリンジェンシーは、必要な程度の識別(弁別)が達成されるまで、各ストリンジェンシー因子を検討することにより、実験に基づいて決定してもよい。
【0227】
固体支持体(例えばアレイ)への固定化
一局面において、本発明は、固体支持体に付着させられた絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを製造しかつ使用するための組成物及び方法に関する。多種多様の固体支持体が本発明に使用される。ある特定の種類の固体支持体を用いることに本発明は限定されるものではない。同様に、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを固体支持体に付着させる態様も決して限定されるものではない。
【0228】
一態様において、支持体に結合された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、複数のオリゴマーのアレイ(例えばチップ)を形成する。重合核酸塩基構造(例えば核酸、修飾核酸、核酸アナログ、又はキメラ構造)を含むアレイの作製及び使用のための詳細な方法は、当該技術においてよく知られており、多くの出典に記載されている。例えば、Ausubel et al.(eds.),Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 22,“Nucleic Acid Arrays,”John Wiley&Sons,Inc.,New York[1994]及びM.Schena,(ed.),Microarray Biochip Technology,BioTechnique Books,Eaton Publishing,Natick,MA[2000]参照。固体支持体、より具体的にはアレイを用いる、核酸、修飾核酸、及び核酸アナログの合成及び使用のための任意の方法を、本発明との利用に適用できる。
【0229】
これらのアレイを合成できる種々の方法がある。一局面において、予め合成された本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを、当該技術において知られる任意の方法(例えばUV架橋)を用いてアレイの固体支持体に付着させることができる。
【0230】
一方、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、固体支持体自体の上で、二つ以上のオリゴマーブロックを連結することにより合成できる。例えば、リンカー化学部位がその後の化学反応に利用できるように、一つのオリゴマーブロックを固体支持体に結合させることができる。一旦、固体支持体に付着させられると、予め形成した第二のオリゴマーブロックを、アレイ上で直接反応させることができ、その結果、第一のオリゴマーブロックとの共有結合が生じ、アレイに結合された完全な絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーをもたらす。この方法は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの必要なアレイが構成されるまで、アレイにおける一つの部位又は二つ以上の異なる部位で一つ以上のさらなるオリゴマーブロックを用いて連結工程を繰り返すことをさらに含むことができる。
【0231】
他の局面において、本発明は、アレイを形成することに関し、そこにおいて、予め形成された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー上にある官能基が、反応させられて、固体支持体に結合されたもう一つの官能基と結合を形成し、それにより、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを、該固体支持体の表面に共有結合させる。この方法は、オリゴマーの必要なアレイが得られるまで、一つの部位又は二つ以上の異なる部位で一つ又は二つ以上の異なる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを用いてオリゴマー結合工程を繰り返すことをさらに含む。
【0232】
各支持体結合オリゴマーの位置及び配列が分かっているため、アレイを用いて、試料中の一つ以上の標的配列の存在及び量を、同時に検出、特定及び/又は定量することができる。例えば、標的配列は、アレイ表面上の相補的な絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーにより捕捉することができ、次いで、該標的配列を含む複合体を、検出できる。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの配列は、アレイ表面の各位置において分かっているので、該アレイ上で生成する検出可能なシグナルの位置を測定することにより、一つ又は複数の標的配列の配列を、直接、検出、特定及び/又は定量できる。かくして、アレイは、診断の用途又は化合物のスクリーニング(例えば治療化合物の開発における)に有用である。
【0233】
一態様において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及び/又はオリゴマーブロックは、UV架橋のよく知られたプロセスを用いて表面に固定化できる。
【0234】
他の態様において、オリゴマーブロックは、脱保護(ただし合成支持体からの切り離しは除く)に適する態様で表面において合成できる(例えばWeiler et al.,Hybridization based DNA screening on peptide nucleic acid(PNA)oligomer arrays,”Nucl.Acids Res.,25(14):2792−2799(1997)参照)。さらに他の態様において、一つ以上の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロックを、該オリゴマー上にある適当な官能基を該表面の官能基と反応させることにより、該表面に共有結合させることができる(例えばGeiger et al.,PNA Array technology in molecular diagnostics,Nucleosides&Nucleotides 17(9−11):1717−1724(1998)参照)。この方法は有利である。というのも、該表面に固定化されたオリゴマーは、高度に純化でき、そして、所定の化学反応を用いて結合させることにより、非特異的相互作用を最小限にするか解消できる可能性があるからである。
【0235】
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー及び/又はオリゴマーブロックを固体支持体表面に化学結合させる方法は、固定化すべきオリゴマーの求核基(例えばアミン又はチオール)を固体支持体表面にある求電子基と反応させることを用いることができる。一方、求核体を支持体上に存在させ、求電子体(例えば活性化カルボン酸)をオリゴマー上に存在させることができる。一態様において、オリゴマーブロックがPNAを含む場合、使用するPNAは、固定化反応の前に修飾すべきかもしれないし、そうでないかもしれない。というのも、PNAは、その構造中にアミノ末端を有するからである。
【0236】
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー又はオリゴマーブロックを表面に固定化するのに適した条件は、当該技術において広く知られており、オリゴマーの標識に適した条件に通常類似する。固体支持体への固定化反応は標識反応に類似し、そこにおいて、標識の代わりに、ポリマーが結合されるべき表面が用いられる。本発明をある特定の固定化化学又は方法に限定することは意図するところではない。
【0237】
アミノ基、カルボン酸基、イソシアネート、イソチオシアネート、及びマレイミド基で誘導体化した多くの種類の固体支持体が市販されている。適当な固体支持体の非限定的な具体例には、任意の種類のチップ(例えばアレイ)、膜、ガラス、細孔ガラス(CPG)、ポリスチレン粒子(ビーズ)、シリカ、及び金ナノ粒子がある。上述した固定化の方法すべては、決して限定的なものでなく、単なる例示にすぎない。
【0238】
生物体の検出/特定
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、生物体、特に病原体の検出、特定及び/又は計数に用いられる。そのような生物体には、食物、飲料、水、医薬製品、パーソナルケア製品、酪農製品、又は植物、動物、ヒト、もしくは環境に由来する試料中のウイルス、細菌及び真核生物が含まれ得る。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、食物、飲料、水、医薬製品、パーソナルケア製品、酪農製品、又は環境試料を調製又は保存するのに使用される原料、器具、製品、又はプロセスの分析に使用される。さらに、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ヒト又は動物の治療において扱われる臨床試料、器具、備品、もしくは製品中の、さらには、臨床標本及び臨床環境中の、病原体(例えば種々の細菌、ウイルス及び真核生物)を検出するのに用いられる。例えば、対象となる微生物の分析は、ここに記載される本発明により生成されるプローブを用いてFISH又は多重FISHを使用して行うことができる(例えば、BP合衆国出願番号09/335629及び09/368089参照)。
【0239】
本発明の組成物、方法、キット、ライブラリー、及びアレイは、発現解析、一塩基多型(SNP)解析、ヒト、動物、真菌類、酵母、ウイルス及び植物(遺伝子修飾した生物体を含む)の遺伝子解析、治療モニタリング、薬理ゲノミクス、薬理遺伝学、発生機構学、及び高処理能力のスクリーニング操作のような分野に特に有用である。本発明の組合せライブラリーは、これらのプローブ集約型の用途に有用である。というのも、他の種類の組合せ核酸塩基オリゴマーライブラリーに見られるようなオリゴマーブロック連結化学作用によって生じる二重鎖安定性の破綻(すなわちTmペナルティー)を有さない、選択性/識別性の高い組合せオリゴマーの、充実した、迅速で、効率的かつ適当なスケールの合成が、それにより容易になるからである。
【0240】
多重分析
所定の態様において、本発明は、多重ハイブリッド形成アッセイに用いる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを提供する。多重アッセイにおいて、対象となる多数の条件が同時に又は順次検査される。多重分析は、アッセイを行う間又は行った後、試料要素又はそれに伴うデータを選別する能力に依存する。多重アッセイの実施において、一つ又は二つ以上のそれぞれ独立して検出可能な個々の部分を用いることができ、それにより、アッセイで同時に使用すべき二つ以上の異なる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを標識することができる。ここで使用する「それぞれ独立して検出可能な」は、一つの標識を、少なくとも一つのさらなる他の標識の存在下、それと独立して、測定できることを意味する。それぞれ独立して検出可能な部分の各々を区別かつ/又は定量できる能力により、ハイブリッド形成アッセイを多重化する手段がもたらされる。というのも、データは、個々のそれぞれ独立して標識された絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと試料中検出しようとする特定の標的配列とのハイブリッド形成に相関するからである。従って、本発明の多重アッセイは、例えば、同じ試料で同じアッセイにおいて、二つ以上の標的配列の存在、不在、数、位置又は性質を同時に又は順次検出するため、用いることができる。
【0241】
ブロッキングプローブ(遮断プローブ)
ブロッキングプローブは、第二の核酸塩基配列の非標的配列への結合を抑制するのに使用できる核酸塩基オリゴマーである。ある態様において、該第二の核酸塩基オリゴマーは標識されている。好ましいブロッキングプローブはPNAプローブである(例えばCoull et al.,米国特許第6110676号(この引用によりその内容は本明細書に記載されたものとする)参照)。本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ブロッキングプローブとして使用できる。当該技術においてこれらの分子は「プローブ」と呼ばれるが、これはやや誤った名称である。というのも、この核酸塩基オリゴマーは、標識されず、検出もされないからである。
【0242】
典型的に、ブロッキングプローブは、プローブ核酸塩基配列と密接に関連しており、好ましくは、ブロッキングプローブは、アッセイで検出しようとする標的配列に対し、一つ以上の単一点突然変異を有するものである。ブロッキングプローブは、非標的配列とハイブリッド形成することにより、プローブ核酸塩基配列と非標的配列のハイブリッド形成よりも熱力学的に安定な複合体を形成すると考えられる。このより安定で好ましい複合体の形成により、プローブ核酸塩基配列と非標的配列とによる安定性の低い好ましくない複合体の形成が妨げられるが、そのメカニズムの解明は本発明の実施又は利用に必要ではない。かくして、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、アッセイに存在し得そしてアッセイの実行を妨げ得る非標的配列と第二の核酸塩基オリゴマーの結合を抑制するため、ブロッキングプローブとして用いられる(Fiandaca et al.,“PNA Blocker Probes Enhance Specificity In Probe Assays”,Peptide Nucleic Acids:Protocols and Applications,pp.129−141,Horizon Scientific Press,Wymondham,UK,1999参照)。本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、また、これらのプロトコルに使用される第二の(典型的に標識された)核酸塩基分子として利用できる。本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーをブロッキングプローブとして用いることは、より一般的に、ハイブリッド形成反応において本発明のオリゴマーを任意の種類の特異的又は非特異的核酸塩基拮抗体として用いることにつながる。
【0243】
ポリメラーゼのプライミング
本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、プライマー伸長を用いる任意の用途、すなわち、ポリメラーゼ酵素による鋳型依存性のリボヌクレオチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)の伸長のため、オリゴマーがプライマーとして作用する任意の反応、に用いられる。絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーをプライマーとして用いるとき、それは、酵素による伸長を可能にする構造を有する必要がある。これは、典型的に、ポリメラーゼプライマーとして機能する目的のため、核酸塩基オリゴマー中に、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含むサブユニットが最小限の数、存在することを必要とする。一態様において、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーをプライマーとして用いるとき、該オリゴマーはキメラであり、従って、該オリゴマーは、ヌクレオチドとともに、他の種類の核酸塩基構造(例えばPNAを含む)からなる。
【0244】
なお、一局面において、「プライマー伸長」の用語は、転写開始部位の地図を作成するための分子遺伝学的技法に関してある特定の意味を有する。しかし、ここで該用語は、鋳型により誘導され、プライマーにより開始される任意のポリメラーゼ反応を表す最も一般的な意味で使用される。
【0245】
実験法又は診断法においてプライマー伸長反応を用いる多種多様の用途が当該技術でよく知られている。ある特定の種類のプライマー伸長反応に絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを用いることに本発明を限定することは、決して意図するところではない。種々のプライマー伸長反応が、現代の分子生物学の技法において広く使用されている。例えば、糖核酸配列決定は、鋳型にアニールされる核酸塩基オリゴマープライマー、デオキシリボヌクレオチド三リン酸類(dNTP類)、ポリメラーゼ、及び反応において結合される四つのジデオキシヌクレオチドターミネーター(該四つのターミネーターは、個々の反応で付加されるか、あるいは、一反応で一緒に付加される)を用いる。そして、反応混合物は、プライマー伸長を達成するため、適当な条件下でインキュベートされる。
【0246】
一局面において、プライマー伸長反応はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。PCRに基づく技法を用いるプロトコル及び種々の用途は当該技術においてよく知られている。例えば、Mullis et al.,(1986)Cold Spring Harbor Symposia on Quantitative Biology 51:263、Eckert et al.,(1990)Nucl.Acids Res.18:3739、Dieffenbach et al.,(1995)PCR Primer:a laboratory manual,CSHL Press,Cold Springs Harbor,USA参照。一般的に、PCR反応は、少なくとも一つの鋳型、少なくとも一つのプライマー、少なくとも一つのポリメラーゼ、及び伸長可能なヌクレオチドを含む。PCR反応におけるプライマーの少なくとも一つを本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーとすることができる。PCR反応は温度サイクルに供され、その結果、反応混合物において、アニーリング、プライマー伸長、及び鋳型の解離が繰り返される。これにより、標的鋳型の少なくとも一部に相補的なプライマー伸長産物(すなわちアンプリコン)が生成する。
【0247】
マイクロサテライト(VNTR配列(Variable Number of Tandem Repeat)及びショートタンデムリピート(STR)を含む)の解析は、プライマー伸長反応を用いるもう一つの広く利用される方法である。STRは、ゲノムにおける一つ以上の位置でタンデムに(縦列に)繰り返される2〜7ヌクレオチドの配列である。タンデムリピートの数は個々に異なる。所定の遺伝子解析法のため、繰り返し領域に隣接する特定のプライマーを用いたPCRにより、STRが増幅され、繰り返しの数が測定される。所定の技法において、測定は、サイズの区別(例えば電気泳動、質量分析、又はクロマトグラフィーによる)を用いて行われる。
【0248】
ユニバーサル核酸塩基を含むオリゴマーブロックの使用
意図するところ、ユニバーサル核酸塩基を含むオリゴマーブロックは、組合せオリゴマーの合成以外の用途にも使用できる。例えば、少なくとも一つのユニバーサル核酸塩基を含むオリゴマーブロックは、該オリゴマーブロック上にある化学反応性部分を介して固相に共有結合させる(すなわちリンカーを介して)ことができ、そして、特定の核酸塩基配列に結合する種々の分子を分離(単離)かつ/又は精製するためのアフィニティーリガンドとして用いることができる。一局面において、固相は、例えば、ビーズ(例えばセファロース(SEPHAROSE(登録商標))ビーズ)とすることができ、該ビーズはクロマトグラフィーのカラムに固定化できる。
【0249】
一局面において、付着させられたオリゴマーブロックの核酸塩基に結合する分子は、別のポリ核酸塩基分子であり、それは、塩基対合相互作用の法則に従って結合する。固相に結合したオリゴマーブロックの核酸塩基と核酸塩基標的とがハイブリダイゼーション複合体を形成した後、核酸(又は他の核酸塩基を含む構造)を分離/精製できる。この技法は、例えば、酵素による分解の後に断片化又は消化されたDNAを分析するのに用いられ、あるいは、発現又は他の方法により生産されたDNAオリゴマーを解析するのに用いられる。
【0250】
他の局面において、固相に付着させられたオリゴマーブロックは、配列特異的な態様でオリゴマーブロックの核酸塩基に結合するタンパク質を分離/精製するのに、使用できる。この場合、オリゴマーブロックの核酸塩基は、一本鎖結合タンパク質又は二本鎖結合タンパク質の分離/精製のため、一本鎖又は二本鎖の構造で調製できる。
【0251】
ゲノム解析
絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー、及び絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ゲノム解析に使用してもよい。例えば、ハイブリッド形成が生じるかどうか判定するため、ゲノム材料の標的試料を、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを含むプローブと、又は、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと、接触させることができる。プローブと標的とのハイブリッド形成は、プローブに相補的な核酸塩基配列が標的に存在することを意味する。
【0252】
本発明の好ましい態様において、ゲノム材料の標的試料は、オリゴマーブロックライブラリーから作られる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーからなる複数のプローブに、接触させることができる。一つ以上のプローブと標的とのハイブリッド形成は、一つ以上のハイブリッド形成するプローブ配列に相補的な核酸塩基配列が標的に存在することを意味する。そのようなハイブリッド形成は、プローブに結合した蛍光標識からの蛍光を検出することにより、プローブに結合した蛍光標識からの蛍光の消滅により、プローブ上の抗原への抗体の結合により、放射性標識プローブから出される放射能の検出により、あるいは、他の標識及び検出の方法により、検出できる。
【0253】
遺伝子発現解析
遺伝子発現を示す試料中の標的遺伝子又は他の核酸塩基配列(例えば、対象となる細胞から得られるmRNAに由来するcDNA)を検出することにより、遺伝子発現を解析することができる。例えば、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに相補的な核酸塩基の存在を検出するため、オリゴマーブロックライブラリーから形成される絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを備える複数のプローブに、対象となる細胞から得られるcDNAライブラリーを接触させることができる。そのような解析は、特定の核酸塩基配列の発現を判定するため用いることができ、そして、そのような核酸塩基配列を含む遺伝子の発現を示し得るものである。
【0254】
そのような遺伝子発現解析は、異なる条件下で類似する細胞について行うことができ、あるいは、細胞周期の異なる部分における細胞から行うことができる(例えばDeRisi et al.,Science 278:680−686(1997)参照)。異なる条件下又は細胞周期の異なる部分においてどんな遺伝子の作用が変化するかを明らかにするため、そのような遺伝子発現解析の結果の比較を用いることができる。同様に、正常細胞とがん性細胞との比較は、正常条件とがん性条件との間の遺伝子発現の差異を明らかにし得る。従って、例えば、正常細胞およびがん性細胞よりcDNAが得られる場合、本発明の特徴を有するオリゴマーブロックライブラリーからの絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを用いて、そのようなcDNAとのハイブリッド形成の比較に基づき、正常細胞とがん性細胞との間の遺伝子発現の差異を明らかにすることができる。
【実施例】
【0255】
L.実施例
以下の実施例は、本発明のある特定の具体的態様及び局面をさらに例示するため提供される。これらの実施例は、本発明の任意の局面の範囲を限定するためのものではない。特定の反応条件及び試薬が記載されるが、当然のことながら、本発明に用いることができ、本発明の技術範囲を逸脱しない代わりの又は等価な条件が存在することは、当業者に明らかなことである。
【0256】
実施例1
この実施例では、組合せ核酸塩基オリゴマーを、二つの予め形成したオリゴマーブロックから合成し、それにより、PNA構造を有する組合せオリゴマーを形成する。
【0257】
二つの予め合成したPNAオリゴマーブロックからの組合せPNAオリゴマーの合成
市販の試薬及び装置(Applied Biosystems)を用いて、サブマイクロモル〜ミリモルの範囲のスケールでPNAオリゴマーを合成する。A、G、C及びTのPNAモノマーは市販品である(Applied Biosystems)。ユニバーサル塩基を含むPNAモノマーの合成は、公知の方法(例えば、Nielsen et al.,Peptide Nucleic Acids;Protocols and Applications,Horizon Scientific Press,Norfolk,England,1999)に従い、適当に保護したユニバーサル塩基をFmoc保護した2−アミノエチルグリシン骨格にメチレンカルボニルリンカーを介して結合することにより行う。PNA合成は、標準的なペプチド合成化学を用いる。従って、天然及び非天然のアミノ酸並びにそれらの誘導体は、PNAオリゴマーに容易に組み込まれる。誘導体化したXAL、PAL、PEG、PAM固体支持体上で、Expedite合成装置(Applied Biosystems)において、補助試薬の存在下、Fmoc/Bhoc、tBoc/Z又はMMTで保護したPNAモノマーを結合させることにより、PNAオリゴマーは最も都合よく合成される。モデル433Aペプチド合成装置(Applied Biosystems)もまた、MBHA支持体を用いるPNA合成に使用できる。
【0258】
PNAは、ポリアミドであり、ペプチドのようにC末端(カルボキシル末端)とN末端(アミノ末端)を有する。C末端はオリゴヌクレオチドの3’末端と等価であり、N末端はオリゴヌクレオチドの5’末端と等価である。このPNAオリゴマーは、標準的な合成及び脱保護の条件下、N末端で遊離のアミノ基を、C末端でカルボキサミド基を有することになる。PAL、XAL及びMBHAの固体支持体を用いるPNAの合成は、カルボキサミドをC末端でもたらし、そして、保護された又は遊離のアミノ基をN末端でもたらす。しかし、PEG及びPAMの固体支持体を使用すると、遊離のカルボキシル基がC末端でもたらされ、保護された又は遊離のアミノ基がN末端でもたらされることとなる。PNA合成においてどの固体支持体を選ぶかは、PNAオリゴマーの使用目的によって決まる。
【0259】
実施例2
ヒトApoE遺伝子に対するPNAオリゴマープローブブロックの合成
【0260】
【化5】
Xはユニバーサル塩基であり、glyはグリシンリンカーである。
【0261】
プローブの左半分は、C末端で遊離のカルボキシル基を必要とする。これは、グリシン誘導体化PEG支持体並びにG、C及びユニバーサル塩基PNAモノマーを用いることにより、Expedite合成装置において2マイクロモルのスケールで、Applied Biosystemsにより提供されるPNA合成プロトコル及びマニュアルに従って、得られる。レポーター色素はN末端アミノ基に結合される一方、PNAは標準的手順により固体支持体に結合される。その代わりに、PNAを支持体から切り離した後、レポーター色素をN末端アミノ基に結合させてもよい。プローブの精製は、単純な沈殿又はHPLCにより行う。
【0262】
プローブの右半分は、G、C、ユニバーサル塩基PNAモノマー、Fmoc保護グリシン、及びリンカー上にあるクエンチャーを含むPAL又はXALの固体支持体を用いることにより、合成する。リンカーはリジンである。その代わりの方法では、支持体からPNAを切り離した後、クエンチャーをリジンの側鎖アミノ基に結合する。この場合、グリシン単位のFmoc保護基を、クエンチャー結合工程において保持する。このプローブは、グリシンからFmoc基を除去した後、プローブの左半分と結合できるようになる。
【0263】
予め合成したプローブの左半分及び右半分からのヒトApoE遺伝子プローブの合成
半分二つの連結反応を、賦活剤の存在下、有機溶媒(ACN、DMF、NMP、DMSOなど)、水性溶媒(水又は緩衝液)、又は有機溶媒と水性溶媒の混合物において行う。一般的に使用される賦活剤(例えば、EDC、HOAt、又はEDCとHOATの混合物)及びその他の知られた賦活剤を結合反応に用いる。該プローブの半分を、等モル量ずつ、適当な一種以上の溶媒において、賦活剤とともに、混合する。反応の進行をHPLCで追跡する。生成物の精製をHPLC又は他の方法により行う。プローブの標識を、蛍光標識2’,7’ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシローダミン(JOE)の付加により行う。
【0264】
実施例3
組合せオリゴマープローブを使用するリアルタイムモニタリングによる試料中の特定ヌクレオチド配列の検出
この実施例では、TAQMAN(登録商標)リアルタイムPCRモニタリングシステムにおいて、組合せオリゴマープローブを用い、アポリポたんぱくE(ApoE)遺伝子のセグメントに相当するPCR産物の蓄積をモニターすることを説明する。試験され比較される試料は、不死化細胞株(Coriell Cell Repository,Coriell Institute for Medical Research,Camden NJ)から分離されるヒトゲノムDNA試料である。
【0265】
25マイクロリットルの複数の反応材料を混合する。そのそれぞれは以下を含有する。
【0266】
12.5μl 2× TAQMAN(登録商標)ユニバーサルPCRマスターミックス(Applied Biosystems)
【0267】
【化6】
10ng ヒトゲノム標的DNA
ApoEセグメントを温度サイクリング条件により増幅する。その条件は、50℃2分から始まり、95℃10分、次いで、40サイクルの:92℃で変性15秒並びに60℃1分のアニーリング及び伸長である。温度サイクリング及びリアルタイム蛍光検出をABI PRISM(登録商標)7700配列検出システム(Applied Biosystems)において行う。
【0268】
蛍光バックグランドを上回るレポーターシグナルの検出は、ヒトゲノムDNA試料中のApoEセグメントの存在を意味する。
【0269】
実施例4
組合せオリゴマープローブライブラリーを使用する試料中の特定ヌクレオチド配列の検出
この実施例では、ApoE PCR産物の生成の間、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのライブラリーをプローブとして用いて核酸塩基配列の生成をモニタリングすることを説明する。試験され比較される試料は、不死化細胞株(Coriell Cell Repository,Coriell Institute for Medical Research,Camden NJ)から分離されるヒトゲノムDNA試料である。異なる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを、一連の96ウェルプレートの各ウェルに添加する。この実施例において、3つの特異性決定核酸塩基及び1つのユニバーサル塩基を有するオリゴマーブロックの連結によって形成される4096の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー(そのようなプローブの完全なライブラリーからなる可能な65536の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのうち4096)を、3つの1536ウェルプレート(Nalge Nunc,Rochester NY 14625 USA)において、相当する数のウェルに添加する。
【0270】
25マイクロリットルの複数の反応材料を混合する。そのそれぞれは以下を含有する。
【0271】
12.5μl 2× TAQMAN(登録商標)ユニバーサルPCRマスターミックス(Applied Biosystems)
【0272】
【化7】
200nM 絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマープローブ
10ng ヒトゲノム標的DNA
ApoEセグメントを温度サイクリング条件により増幅する。その条件は、50℃2分から始まり、95℃10分、次いで、40サイクルの:92℃で変性15秒並びに60℃1分のアニーリング及び伸長である。温度サイクリング及びリアルタイム蛍光検出をABI PRISM(登録商標)7700配列検出システム(Applied Biosystems)において行う。
【0273】
蛍光バックグランドを十分上回るレポーターシグナルの検出は、そのウェルに添加した絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーとヒトゲノムDNA試料中のApoEセグメントとのハイブリッド形成を意味する。
【0274】
実施例5
組合せオリゴマープローブライブラリーのアレイを使用する試料中の特定ヌクレオチド配列の検出
この実施例では、核酸塩基配列とApoE PCR産物とのハイブリッド形成を説明する。該ハイブリッド形成では、アレイに付着させられた絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのライブラリーをハイブリッド形成のプローブとして用いる。試験され比較される試料は、不死化細胞株(Coriell Cell Repository,Coriell Institute for Medical Research,Camden NJ)から分離されるヒトゲノムDNA試料である。
【0275】
3つの特異性決定核酸塩基及び1つのユニバーサル塩基を有するオリゴマーブロック(そのようなプローブの完全なライブラリーからなる)の連結によって形成される可能な65536の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーすべてを同時に含むマイクロアレイを、該オリゴマーを含む溶液をガラス基板にスポットすることにより、作製する(DeRisi et al.,Science 278:680−686(1997)、Lashkari et al.,P.N.A.S.94:13057−13062(1997))。
【0276】
ヒトゲノムDNA試料は上述したように調製する。精製cDNAを、10μgポリ(dA)及び0.3μlの10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む11μlの3.5×塩化ナトリウム−クエン酸ナトリウム(SSC)中に再懸濁する。その溶液を、2分間沸騰させ、その後、室温に冷却した後、カバーガラス下、マイクロアレイプレートに塗布する。次いで、そのスライドガラスをハイブリッド形成チャンバに配置し、水浴において62℃で10時間インキュベートする。次いでスライドガラスを2×SSC、0.2%SDSにおいて5分間洗浄し、その後、0.05×SSCにおいて1分間洗浄する。次いでスライドガラスを、Beckman CS−6R遠心機において500rpmで遠心して乾燥させる。
【0277】
スライドガラスを、GenePix4000マイクロアレイスキャナー(Axon Instruments,UnionCity,CA 94587 USA)においてスキャンする。アレイ上の位置における蛍光バックグランドを上回るレポーターシグナルの検出は、その位置における絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーとヒトゲノムDNA試料中のApoEセグメントとのハイブリッド形成を意味する。
【0278】
本明細書で述べたすべての特許、公開特許出願、及び刊行物は、それを引用することにより、その内容がそっくり本明細書に記載されたものとする。本発明の記載した組成物及び方法について、種々の修飾・変更及び変形が、本発明の範囲及び精神を逸脱することなく存在することは、当業者に明らかなことである。種々の特定の態様について本発明を記載してきたが、当然のことながら、請求の範囲に記載する本発明は、そのような特定の態様に不当に限定すべきものではない。実際、本発明を実施するための記載した態様について、種々の修飾・変更が、当業者に明らかであり、それらは、請求の範囲内として解釈されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】図1A〜1Cは、本発明の核酸塩基オリゴマーブロック及び絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのある態様の一般化した構造を示し、そこにおいて、ユニバーサル塩基はリンカーに隣接する(すなわち近くにある)。図1Aは5’−オリゴマーブロックの構造を示す。図1Bは3’−オリゴマーブロックの構造を示す。図1Cは、5’−オリゴマーブロックと3’−オリゴマーブロックを連結した後の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの構造を示す。各Xは、特異性決定核酸塩基であり、そこにおいて、例えば、核酸塩基は、それぞれ独立して、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、又はウラシルからなることができる。Uはユニバーサル核酸塩基である。「L」は5’リンカーまたは3’リンカーの化学部位を表す。「リンカー(LINKER)」は、オリゴマーブロックの連結反応の後に形成される共有結合を表す。a、b、c及びdは、整数である。
【図2】図2A〜2Cは、本発明の核酸塩基オリゴマーブロック及び絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのある態様の一般化した構造を示し、そこにおいて、一つ以上のユニバーサル塩基はリンカーから離れている。図2Aは5’−オリゴマーブロックの構造を示す。図2Bは3’−オリゴマーブロックの構造を示す。図2Cは、5’−オリゴマーブロックと3’−オリゴマーブロックを連結した後の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの構造を示す。各Xは、特異性決定核酸塩基であり、そこにおいて、例えば、核酸塩基は、それぞれ独立して、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、又はウラシルからなることができる。Uはユニバーサル核酸塩基である。「L」は5’リンカーまたは3’リンカーの化学部位を表す。「リンカー(LINKER)」は、オリゴマーブロックの連結化学反応の後に形成される共有結合を表す。a、b、c及びdは、整数である。
【図3】図3A〜3Dは、本発明のオリゴマーブロック及び絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのある態様の一般化した構造を示し、そこにおいて、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、二つより多いオリゴマーブロックの連結反応から形成される。図3Aは5’−オリゴマーブロックの構造を示す。図3Bは3’−オリゴマーブロックの構造を示す。図3Cは内部オリゴマーブロックの構造を示す。図3Dは、5’−オリゴマーブロック、内部オリゴマーブロック及び3’−オリゴマーブロックを連結した後の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの構造を示す。各Xは、特異性決定核酸塩基であり、そこにおいて、例えば、核酸塩基は、それぞれ独立して、塩基であるアデニン、グアニン、チミン、シトシン、又はウラシルからなることができる。Uはユニバーサル核酸塩基である。「L」は5’リンカーまたは3’リンカーの化学部位を表す。「リンカー(LINKER)」は、オリゴマーブロックの連結化学反応の後に形成される共有結合を表す。a〜gは、整数である。
【図4】図4A及び4Bは、本発明の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの二つの具体例を示しており、そこにおいて、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、標的配列に対して、連続した相補性を有してもよいし、有しなくともよい。図4Aは、連続した相補性で(すなわちギャップなしで)標的核酸塩基配列にハイブリダイズする絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを示す。図4Bは、連続していない相補性で(すなわちギャップありで)標的核酸塩基配列にハイブリダイズする絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを示す。
【図5】図5A及び5Bは二つの具体的な連結反応を示し、そこにおいて、一つのオリゴマーブロックはカルボン酸基を含み、第二のオリゴマーブロックはアミノ基を含む。そして、これら二つの反応性基は、相互に作用してペプチド型結合を形成する。
【図6】図6A〜6Cは、ホウ水素化物還元を伴う三つの具体的な連結反応を示す。
【図7A】図7A〜7Dは具体的な連結反応を示す。図7A及び7Bは、ホウ水素化物還元を伴う二つの具体的な連結反応を示す。
【図7B】図7A〜7Dは具体的な連結反応を示す。図7A及び7Bは、ホウ水素化物還元を伴う二つの具体的な連結反応を示す。
【図7C】図7A〜7Dは具体的な連結反応を示す。図7Cは、アルデヒド及びアミノ基を伴う具体的な連結反応を示す。
【図7D】図7A〜7Dは具体的な連結反応を示す。図7Dは、具体的なディールス−アルダー型連結反応を示す。
【図8】図8A〜8Cは、チオール反応性基を伴う三つの具体的な連結反応を示す。
【図9】図9は、ユニバーサル塩基のいくつかの非限定的な具体例の構造を示す。(A)7−アザインドール(7AIと表示)、(B)6−メチル−7−アザインドール(M7AIと表示)、(C)ピロールピリジン(PPと表示)、(D)イミジゾピリジン(ImPyと表示)、(E)イソカルボスチリル(ICSと表示)、(F)プロピニル−7−アザインドール(P7AIと表示)、(G)プロピニルイソカルボスチリル(PICSと表示)、及び(H)アレニル−7−アザインドール(A7AI)と表示。この図で使用する「R」は、塩基が結合する骨格構造である。
【図10】図10は、天然に存在する塩基を含む他の塩基と塩基対合できる塩基の構造を示す。(A)5−プロピニル−ウラシル、(B)2−チオ−5−プロピニル−ウラシル、(C)2−チオ−チミン、(D)2−チオ−ウラシル、(E)N9−(7−デアザ−グアニン)、(E)N9−(デアザ−8−アザ−グアニン)、(F)N9−(2,6−ジアミノプリン)、(G)N8−(7−デアザ−8−アザアデニン)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリーであって、
各オリゴマーブロックは独立して、末端を有する重合核酸塩基の配列を備え、
該配列は、少なくとも3つの特異性決定核酸塩基及び少なくとも1つのユニバーサル核酸塩基、並びに該重合核酸塩基の配列の末端に共有結合した少なくとも一つの化学反応性部分を含み、ここで、ユニバーサル核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的重合構造上で塩基を有意に識別しない塩基を含み、かつ、特異性決定核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的重合構造上で塩基を識別することができるものであり、
1つのオリゴマーブロック上にある該化学反応性部分は、他の少なくとも1つのオリゴマーブロック上にある該化学反応性部分と反応することができ、鋳型なしで該オリゴマーブロック同士の間に共有結合リンカーを形成して絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成できるものであり、かつ
該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、特異性決定核酸塩基の複合体であるハイブリッド形成標的配列を、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを構成する該オリゴマーブロックにおいて有する、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項2】
各オリゴマーブロックは、独立して、約1〜約10のユニバーサル核酸塩基を備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項3】
各オリゴマーブロックは、独立して、約1〜約3のユニバーサル核酸塩基を備える、請求項2の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項4】
各オリゴマーブロックは、独立して、約3〜約8の特異性決定核酸塩基を備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項5】
前記ユニバーサル核酸塩基は、前記化学反応性部分の近傍にある、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項6】
前記ユニバーサル核酸塩基は、前記化学反応性部分に隣接する、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項7】
前記ユニバーサル核酸塩基は、前記化学反応性部分から離れている、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項8】
前記ユニバーサル核酸塩基は、2つの特異性決定核酸塩基の間にあり、かつ、該2つの特異性決定核酸塩基に隣接する、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項9】
前記ユニバーサル核酸塩基は、ヒポキサンチン、5−ニトロ,1−(β−D−2−デオキシリボフラノシル)インドール(5−ニトロインドールと呼ぶ)、1−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−3−ニトロピロール(3−ニトロピロールと呼ぶ)、7−アザインドール(7AIT)、N8−(7−デアザ−8アザ−アデニン)、(B)6−メチル−7−アザインドール(M7AI)、(C)ピロールピリジン(PP)、(D)イミジゾピリジン(ImPy)、(E)イソカルボスチリル(ICS)、(F)プロピニル−7−アザインドール(P7AI)、(G)プロピニルイソカルボスチリル(PICS)、(H)アレニル−7−アザインドール(A7AI)、及びN8−(7−デアザ−8−アザ−アデニン)から選ばれるユニバーサル塩基を含む、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項10】
前記第一の化学反応性部分及び前記第二の化学反応性部分は、カルボキシル基、ケトン、アルデヒド、ジエン、ジエノフィル、ヒドラジン、セミカルバジド、アミノ基、アミノキシ基、ハロゲン化物、及びスルフヒドリル基から選ばれるものである、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項11】
前記第一の化学反応性部分はカルボキシル基を含み、かつ前記第二の化学反応性部分はアミノ基を含む、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項12】
前記第一の化学反応性部分はジエンを含み、かつ前記第二の化学反応性部分はジエノフィルを含む、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項13】
前記第一の化学反応性部分はヒドラジンを含み、かつ前記第二の化学反応性部分はセミカルバジドを含む、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項14】
各オリゴマーブロックは、独立して、ペプチド核酸(PNA)、D−デオキシリボヌクレオチド、L−デオキシリボヌクレオチド、ロックト核酸(LNA)、2’−O−アルキルオリゴヌクレオチド、3’修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド、N3’−P5’ホスホルアミデート(NP)オリゴマー、MGB−オリゴヌクレオチド、ホスホロチオエート(PS)オリゴマー、C1〜C4アルキルホスホネートオリゴマー、ホスホルアミデート、β−ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、又はα−ホスホジエステルオリゴヌクレオチドである核酸塩基を備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項15】
オリゴマーブロックは、二つ以上の異なる構造の核酸塩基を備え、かつそのようなオリゴマーブロックはキメラである、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項16】
前記キメラのオリゴマーブロックの前記核酸塩基は、ペプチド核酸(PNA)、D−デオキシリボヌクレオチド、L−デオキシリボヌクレオチド、ロックト核酸(LNA)、2’−O−アルキルオリゴヌクレオチド、3’修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド、N3’−P5’ホスホルアミデート(NP)オリゴマー、MGB−オリゴヌクレオチド、ホスホロチオエート(PS)オリゴマー、C1〜C4アルキルホスホネートオリゴマー、ホスホルアミデート、β−ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、又はα−ホスホジエステルオリゴヌクレオチドから選ばれる少なくとも二つの構造を備える、請求項15の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項17】
前記オリゴマーブロックは、一つ以上の保護基を備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項18】
前記オリゴマーブロックは、検出可能なシグナルをもたらすことができる少なくとも一つの標識を備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項19】
前記標識は、色素、蛍光標識、発光標識、放射性標識、抗原、ハプテン、酵素、酵素基質、保護基、及び化学反応性基からなる標識の群より選ばれるものである、請求項18の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項20】
前記標識は、第2の標識と相互作用できるものである、請求項18の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項21】
前記ハプテンは、フルオレセイン、ビオチン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、リポ多糖、アポトランスフェリン、フェロトランスフェリン、インシュリン、サイトカイン、gp120、β−アクチン、白血球機能関連抗原1(LFA−1、CD11a/CD18)、Mac−1(CD11b/CD18)、グリコフォリン、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、インテグリン、アンキリン、フィブリノーゲン、第X因子、細胞間接着分子1(ICAM−1)、細胞間接着分子2(ICAM−2)、スペクトリン、フォドリン、CD4、サイトカイン受容体、インシュリン受容体、トランスフェリン受容体、Fe+++、ポリミキシンB、エンドトキシン中和タンパク質(ENP)、抗体特異的抗原、アビジン、ストレプトアビジン、並びにビオチンからなる群より選ばれるものである、請求項19の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項22】
前記ライブラリーは、特異性決定核酸塩基の配列が異なる少なくとも64の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項23】
前記配列は、少なくとも4つの特異性決定核酸塩基を含み、前記ライブラリーは、特異性決定核酸塩基の配列が異なる少なくとも256の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項24】
前記配列は、少なくとも5つの特異性決定核酸塩基を含み、前記ライブラリーは、特異性決定核酸塩基の配列が異なる少なくとも1024の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項25】
前記配列は、少なくとも6つの特異性決定核酸塩基を含み、前記ライブラリーは、特異性決定核酸塩基の配列が異なる少なくとも4096の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項26】
複数の共有結合された絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーであって、
該複数の共有結合された絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、少なくとも、第一の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックと、共有結合リンカーによってそれに共有結合された第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックとを備え、ここで、
該第一及び第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックはそれぞれ、重合骨格構造に共有結合された少なくとも3つの特異性決定核酸塩基と、該骨格構造に共有結合された少なくとも1つのユニバーサル核酸塩基とを備え、かつ
該共有結合リンカーは、該第一及び第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックの化学反応性部分同士の鋳型なしでの化学反応によって生じた化学結合を備える、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項27】
前記絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックオリゴマーの二量体を備える、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項28】
ユニバーサル核酸塩基が前記化学反応性部分に隣接している、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項29】
ユニバーサル核酸塩基が前記化学反応性部分から離れている、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項30】
ユニバーサル核酸塩基が、2つの特異性決定核酸塩基の間にあり、かつ、該2つの特異性決定核酸塩基に隣接する、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項31】
ユニバーサル核酸塩基は、ヒポキサンチン、5−ニトロ,1−(β−D−2−デオキシリボフラノシル)インドール(5−ニトロインドールと呼ぶ)、1−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−3−ニトロピロール(3−ニトロピロールと呼ぶ)、7−アザインドール(7AIT)、N8−(7−デアザ−8アザ−アデニン)、(B)6−メチル−7−アザインドール(M7AI)、(C)ピロールピリジン(PP)、(D)イミジゾピリジン(ImPy)、(E)イソカルボスチリル(ICS)、(F)プロピニル−7−アザインドール(P7AI)、(G)プロピニルイソカルボスチリル(PICS)、(H)アレニル−7−アザインドール(A7AI)、及びN8−(7−デアザ−8−アザ−アデニン)から選ばれるユニバーサル塩基からなる、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項32】
前記共有結合リンカーは、アミド結合、ペプチド結合、アミノ結合、アミノキシ結合、ジエン、セミカルバゾン、及びスルフィド結合から選ばれるものである、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項33】
前記リンカーはアミノ酸リンカーである、請求項32の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項34】
前記リンカーは、グリシン(gly)リンカー、リジン(lys)リンカー、グルタミン酸(glu)リンカー、システイン(cys)リンカー、アスパラギン酸(asp)リンカー、及びオルニチンリンカーから選ばれるものである、請求項33の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項35】
前記リンカーは二アミノ酸リンカーである、請求項33の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項36】
前記二アミノ酸リンカーは、グリシン−グリシン、リジン−グリシン、グルタミン酸−グリシン、グリシン−システイン、システイン−グリシン、アスパラギン酸−グリシン、アスパラギン酸−グルタミン酸、アルギニン−グリシン、リジン−X、アルギニン−X、グルタミン酸−X、アスパラギン酸−X、アスパラギン−X、フェニルアラニン−X、ロイシン−X、及びオルニチン−X(ここでXは天然に存在する任意のアミノ酸を表す)から選ばれるものである、請求項35の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項37】
前記第一及び第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、約3〜約8の特異性決定核酸塩基を備える、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項38】
前記第一及び第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、約1〜約10のユニバーサル核酸塩基を備える、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項39】
前記第一及び第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、約1〜約3のユニバーサル核酸塩基を備える、請求項38の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項40】
前記共有結合リンカーはユニバーサル核酸塩基に隣接する、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項41】
前記共有結合リンカーは前記特異性決定核酸塩基に隣接する、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項42】
前記重合骨格構造は、ペプチド核酸(PNA)、D−デオキシリボヌクレオチド、L−デオキシリボヌクレオチド、ロックト核酸(LNA)、2’−O−アルキルオリゴヌクレオチド、3’修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド、N3’−P5’ホスホルアミデート(NP)オリゴマー、MGB−オリゴヌクレオチド、ホスホロチオエート(PS)オリゴマー、C1〜C4アルキルホスホネートオリゴマー、ホスホルアミデート、β−ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、又はα−ホスホジエステルオリゴヌクレオチドの配列の一部を形成する、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項43】
検出可能なシグナルをもたらすことができる少なくとも一つの標識を備える、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項44】
前記標識は、色素、蛍光標識、発光標識、放射性標識、抗原、ハプテン、酵素、酵素基質、保護基、及び化学反応性基からなる標識の群より選ばれるものである、請求項43の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項45】
前記標識は、第2の標識と相互作用できるものである、請求項43の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項46】
前記ハプテンは、フルオレセイン、ビオチン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、リポ多糖、アポトランスフェリン、フェロトランスフェリン、インシュリン、サイトカイン、gp120、β−アクチン、白血球機能関連抗原1(LFA−1、CD11a/CD18)、Mac−1(CD11b/CD18)、グリコフォリン、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、インテグリン、アンキリン、フィブリノーゲン、第X因子、細胞間接着分子1(ICAM−1)、細胞間接着分子2(ICAM−2)、スペクトリン、フォドリン、CD4、サイトカイン受容体、インシュリン受容体、トランスフェリン受容体、Fe+++、ポリミキシンB、エンドトキシン中和タンパク質(ENP)、抗体特異的抗原、アビジン、ストレプトアビジン、並びにビオチンからなる群より選ばれるものである、請求項44の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項47】
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを合成するための方法であって、
請求項1のオリゴマーブロックライブラリーから二つ以上のオリゴマーブロックを選ぶこと(ここで、該オリゴマーブロック上にある該化学反応性部分は、反応して鋳型なしで該オリゴマーブロック同士の間に共有結合リンカーを形成できるものである)、及び
該選ばれたオリゴマーブロックを適当な条件下で反応させることにより、該オリゴマーブロック上にある該化学反応性部分を結合して該オリゴマーブロック同士の間に共有結合リンカーを形成し、それにより該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成すること、を包含する方法。
【請求項48】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは酵素により伸長可能でないものである、請求項47の方法。
【請求項49】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、修飾されたヌクレオチド又はインターヌクレオチドアナログを備える、請求項48の方法。
【請求項50】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ペプチド核酸を備える、請求項48の方法。
【請求項51】
前記オリゴマーブロックを構成する核酸塩基は異なる構造のものであり、かつ前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーはキメラである、請求項47の方法。
【請求項52】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、少なくとも一つのポリメラーゼ酵素により酵素的に伸長可能なものである、請求項47の方法。
【請求項53】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、一つ以上の標識をさらに備える、請求項47の方法。
【請求項54】
前記標識は、オリゴマーブロックの末端、オリゴマーブロックの内部の位置、又は前記リンカーに一体的な位置で結合される、請求項53の方法。
【請求項55】
前記標識は、発色団、蛍光色素、蛍光団、クエンチャー、スピン標識、放射性同位体、酵素、ハプテン、化学発光化合物、及び生物発光化合物からなる群より選ばれるものである、請求項53の方法。
【請求項56】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、標識の少なくとも一つのエネルギー移動対を備え、ここで前記標識の対は、少なくとも一つのアクセプター部分及び少なくとも一つのドナー部分を備える、請求項53の方法。
【請求項57】
前記エネルギー移動対の標識は、前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの末端又は前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の部位に結合される、請求項56の方法。
【請求項58】
前記エネルギー移動対は、単一のドナー部分及び単一のアクセプター部分を備える、請求項56の方法。
【請求項59】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、リアルタイムPCRモニタリング用のプローブである、請求項56の方法。
【請求項60】
標識の前記エネルギー移動対は、前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが標的配列にハイブリダイズしていないときと比べて前記絶縁性組合せオリゴマーが標的配列にハイブリダイズしたときに前記標識の少なくとも一つにおける検出可能なシグナルの変化が容易になる位置で、前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに結合される、請求項56の方法。
【請求項61】
前記アクセプター部分及びドナー部分は、異なるオリゴマーブロックに結合される、請求項56の方法。
【請求項62】
前記アクセプター及びドナーの部分の両方が蛍光団である、請求項58の方法。
【請求項63】
前記ドナー部分はドナー蛍光団であり、かつ前記アクセプターは非蛍光性のクエンチャー部分である、請求項58の方法。
【請求項64】
前記酵素は、アルカリホスファターゼ、ダイズペルオキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、グルコアミラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、及びプロテアーゼからなる群より選ばれるものである、請求項55の方法。
【請求項65】
前記ハプテンは、フルオレセイン、ビオチン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、リポ多糖、アポトランスフェリン、フェロトランスフェリン、インシュリン、サイトカイン、gp120、β−アクチン、白血球機能関連抗原1(LFA−1、CD11a/CD18)、Mac−1(CD11b/CD18)、グリコフォリン、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、インテグリン、アンキリン、フィブリノーゲン、第X因子、細胞間接着分子1(ICAM−1)、細胞間接着分子2(ICAM−2)、スペクトリン、フォドリン、CD4、サイトカイン受容体、インシュリン受容体、トランスフェリン受容体、Fe+++、ポリミキシンB、エンドトキシン中和タンパク質(ENP)、抗体特異的抗原、アビジン、ストレプトアビジン、並びにビオチンからなる群より選ばれるものである、請求項55の方法。
【請求項66】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは固体支持体に付着させられる、請求項47の方法。
【請求項67】
前記固体支持体は、シリカ、逆相シリカ、有機ポリマー、オリゴ糖、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ガラス、細孔性ガラス(controlled−pore−glass)(CPG)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、ポリアクリルアミド、共重合体及びグラフト重合体から選ばれる材料からなる、請求項66の方法。
【請求項68】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、一つより多い絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを備えるアレイに存在する、請求項66の方法。
【請求項69】
標的と、請求項47の方法により製造される絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーとを備える複合体であって、
前記標的は、連結されて前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを生成させるオリゴマーブロックの特異性決定核酸塩基に相補的な核酸塩基配列を有し、かつ
前記複合体は、前記標的の核酸塩基と前記オリゴマーのユニバーサル核酸塩基及び特異性決定核酸塩基との間で塩基対合が起こるよう、前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと前記標的とをハイブリッド形成させることにより形成されるものである、複合体。
【請求項70】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の前記特異性決定核酸塩基は、連続した標的配列に結合する、請求項69の複合体。
【請求項71】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の特異性決定核酸塩基の配列は、非連続の標的配列に結合する、請求項69の複合体。
【請求項72】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の特異性決定核酸塩基の配列は、ギャップのある標的配列と結合する、請求項69の複合体。
【請求項73】
固体支持体と、
末端を有する重合核酸塩基の配列を有する絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックとを備える絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック構造物であって、
該配列は、少なくとも3つの特異性決定核酸塩基及び少なくとも1つのユニバーサル核酸塩基、並びに該重合核酸塩基の配列の末端に共有結合した少なくとも一つの化学反応性部分を含み、
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを構成する該オリゴマーブロック中の特異性決定核酸塩基の複合物であるハイブリッド形成標的配列を有し、かつ
該化学反応性部分は、別のオリゴマーブロック上にある化学反応性部分と反応することができ、それにより、鋳型なしで、該オリゴマーブロック同士の間に共有結合リンカーを形成し、該固体支持体に付着する絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成できる、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック構造物。
【請求項74】
前記固体支持体は、シリカ、逆相シリカ、有機ポリマー、オリゴ糖、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ガラス、細孔性ガラス(controlled−pore−glass)(CPG)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、ポリアクリルアミド、共重合体及びグラフト重合体、デキストラン、寒天、アガロース、セファロース(SEPHAROSE(登録商標))、セファデックス(SEPHADEX(登録商標))、セファクリル(SEPHACRYL(登録商標))、セルロース、デンプン、ナイロン、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、及びマイクロタイタープレートから選ばれる固体支持体を含む、請求項73の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック構造物。
【請求項75】
特異性決定核酸塩基の配列が異なる複数の異なる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを備える、請求項73の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック構造物。
【請求項76】
前記固体支持体は、特異性決定核酸塩基の配列が異なる、異なる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのアレイを備える、請求項75の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック構造物。
【請求項1】
複数の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリーであって、
各オリゴマーブロックは独立して、末端を有する重合核酸塩基の配列を備え、
該配列は、少なくとも3つの特異性決定核酸塩基及び少なくとも1つのユニバーサル核酸塩基、並びに該重合核酸塩基の配列の末端に共有結合した少なくとも一つの化学反応性部分を含み、ここで、ユニバーサル核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的重合構造上で塩基を有意に識別しない塩基を含み、かつ、特異性決定核酸塩基は、核酸塩基を有する相補的重合構造上で塩基を識別することができるものであり、
1つのオリゴマーブロック上にある該化学反応性部分は、他の少なくとも1つのオリゴマーブロック上にある該化学反応性部分と反応することができ、鋳型なしで該オリゴマーブロック同士の間に共有結合リンカーを形成して絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成できるものであり、かつ
該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、特異性決定核酸塩基の複合体であるハイブリッド形成標的配列を、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを構成する該オリゴマーブロックにおいて有する、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項2】
各オリゴマーブロックは、独立して、約1〜約10のユニバーサル核酸塩基を備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項3】
各オリゴマーブロックは、独立して、約1〜約3のユニバーサル核酸塩基を備える、請求項2の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項4】
各オリゴマーブロックは、独立して、約3〜約8の特異性決定核酸塩基を備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項5】
前記ユニバーサル核酸塩基は、前記化学反応性部分の近傍にある、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項6】
前記ユニバーサル核酸塩基は、前記化学反応性部分に隣接する、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項7】
前記ユニバーサル核酸塩基は、前記化学反応性部分から離れている、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項8】
前記ユニバーサル核酸塩基は、2つの特異性決定核酸塩基の間にあり、かつ、該2つの特異性決定核酸塩基に隣接する、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項9】
前記ユニバーサル核酸塩基は、ヒポキサンチン、5−ニトロ,1−(β−D−2−デオキシリボフラノシル)インドール(5−ニトロインドールと呼ぶ)、1−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−3−ニトロピロール(3−ニトロピロールと呼ぶ)、7−アザインドール(7AIT)、N8−(7−デアザ−8アザ−アデニン)、(B)6−メチル−7−アザインドール(M7AI)、(C)ピロールピリジン(PP)、(D)イミジゾピリジン(ImPy)、(E)イソカルボスチリル(ICS)、(F)プロピニル−7−アザインドール(P7AI)、(G)プロピニルイソカルボスチリル(PICS)、(H)アレニル−7−アザインドール(A7AI)、及びN8−(7−デアザ−8−アザ−アデニン)から選ばれるユニバーサル塩基を含む、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項10】
前記第一の化学反応性部分及び前記第二の化学反応性部分は、カルボキシル基、ケトン、アルデヒド、ジエン、ジエノフィル、ヒドラジン、セミカルバジド、アミノ基、アミノキシ基、ハロゲン化物、及びスルフヒドリル基から選ばれるものである、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項11】
前記第一の化学反応性部分はカルボキシル基を含み、かつ前記第二の化学反応性部分はアミノ基を含む、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項12】
前記第一の化学反応性部分はジエンを含み、かつ前記第二の化学反応性部分はジエノフィルを含む、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項13】
前記第一の化学反応性部分はヒドラジンを含み、かつ前記第二の化学反応性部分はセミカルバジドを含む、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項14】
各オリゴマーブロックは、独立して、ペプチド核酸(PNA)、D−デオキシリボヌクレオチド、L−デオキシリボヌクレオチド、ロックト核酸(LNA)、2’−O−アルキルオリゴヌクレオチド、3’修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド、N3’−P5’ホスホルアミデート(NP)オリゴマー、MGB−オリゴヌクレオチド、ホスホロチオエート(PS)オリゴマー、C1〜C4アルキルホスホネートオリゴマー、ホスホルアミデート、β−ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、又はα−ホスホジエステルオリゴヌクレオチドである核酸塩基を備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項15】
オリゴマーブロックは、二つ以上の異なる構造の核酸塩基を備え、かつそのようなオリゴマーブロックはキメラである、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項16】
前記キメラのオリゴマーブロックの前記核酸塩基は、ペプチド核酸(PNA)、D−デオキシリボヌクレオチド、L−デオキシリボヌクレオチド、ロックト核酸(LNA)、2’−O−アルキルオリゴヌクレオチド、3’修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド、N3’−P5’ホスホルアミデート(NP)オリゴマー、MGB−オリゴヌクレオチド、ホスホロチオエート(PS)オリゴマー、C1〜C4アルキルホスホネートオリゴマー、ホスホルアミデート、β−ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、又はα−ホスホジエステルオリゴヌクレオチドから選ばれる少なくとも二つの構造を備える、請求項15の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項17】
前記オリゴマーブロックは、一つ以上の保護基を備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項18】
前記オリゴマーブロックは、検出可能なシグナルをもたらすことができる少なくとも一つの標識を備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項19】
前記標識は、色素、蛍光標識、発光標識、放射性標識、抗原、ハプテン、酵素、酵素基質、保護基、及び化学反応性基からなる標識の群より選ばれるものである、請求項18の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項20】
前記標識は、第2の標識と相互作用できるものである、請求項18の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項21】
前記ハプテンは、フルオレセイン、ビオチン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、リポ多糖、アポトランスフェリン、フェロトランスフェリン、インシュリン、サイトカイン、gp120、β−アクチン、白血球機能関連抗原1(LFA−1、CD11a/CD18)、Mac−1(CD11b/CD18)、グリコフォリン、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、インテグリン、アンキリン、フィブリノーゲン、第X因子、細胞間接着分子1(ICAM−1)、細胞間接着分子2(ICAM−2)、スペクトリン、フォドリン、CD4、サイトカイン受容体、インシュリン受容体、トランスフェリン受容体、Fe+++、ポリミキシンB、エンドトキシン中和タンパク質(ENP)、抗体特異的抗原、アビジン、ストレプトアビジン、並びにビオチンからなる群より選ばれるものである、請求項19の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項22】
前記ライブラリーは、特異性決定核酸塩基の配列が異なる少なくとも64の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項23】
前記配列は、少なくとも4つの特異性決定核酸塩基を含み、前記ライブラリーは、特異性決定核酸塩基の配列が異なる少なくとも256の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項24】
前記配列は、少なくとも5つの特異性決定核酸塩基を含み、前記ライブラリーは、特異性決定核酸塩基の配列が異なる少なくとも1024の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項25】
前記配列は、少なくとも6つの特異性決定核酸塩基を含み、前記ライブラリーは、特異性決定核酸塩基の配列が異なる少なくとも4096の異なる絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える、請求項1の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックライブラリー。
【請求項26】
複数の共有結合された絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックを備える絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーであって、
該複数の共有結合された絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、少なくとも、第一の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックと、共有結合リンカーによってそれに共有結合された第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックとを備え、ここで、
該第一及び第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックはそれぞれ、重合骨格構造に共有結合された少なくとも3つの特異性決定核酸塩基と、該骨格構造に共有結合された少なくとも1つのユニバーサル核酸塩基とを備え、かつ
該共有結合リンカーは、該第一及び第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックの化学反応性部分同士の鋳型なしでの化学反応によって生じた化学結合を備える、絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項27】
前記絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックオリゴマーの二量体を備える、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項28】
ユニバーサル核酸塩基が前記化学反応性部分に隣接している、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項29】
ユニバーサル核酸塩基が前記化学反応性部分から離れている、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項30】
ユニバーサル核酸塩基が、2つの特異性決定核酸塩基の間にあり、かつ、該2つの特異性決定核酸塩基に隣接する、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項31】
ユニバーサル核酸塩基は、ヒポキサンチン、5−ニトロ,1−(β−D−2−デオキシリボフラノシル)インドール(5−ニトロインドールと呼ぶ)、1−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)−3−ニトロピロール(3−ニトロピロールと呼ぶ)、7−アザインドール(7AIT)、N8−(7−デアザ−8アザ−アデニン)、(B)6−メチル−7−アザインドール(M7AI)、(C)ピロールピリジン(PP)、(D)イミジゾピリジン(ImPy)、(E)イソカルボスチリル(ICS)、(F)プロピニル−7−アザインドール(P7AI)、(G)プロピニルイソカルボスチリル(PICS)、(H)アレニル−7−アザインドール(A7AI)、及びN8−(7−デアザ−8−アザ−アデニン)から選ばれるユニバーサル塩基からなる、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項32】
前記共有結合リンカーは、アミド結合、ペプチド結合、アミノ結合、アミノキシ結合、ジエン、セミカルバゾン、及びスルフィド結合から選ばれるものである、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項33】
前記リンカーはアミノ酸リンカーである、請求項32の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項34】
前記リンカーは、グリシン(gly)リンカー、リジン(lys)リンカー、グルタミン酸(glu)リンカー、システイン(cys)リンカー、アスパラギン酸(asp)リンカー、及びオルニチンリンカーから選ばれるものである、請求項33の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項35】
前記リンカーは二アミノ酸リンカーである、請求項33の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項36】
前記二アミノ酸リンカーは、グリシン−グリシン、リジン−グリシン、グルタミン酸−グリシン、グリシン−システイン、システイン−グリシン、アスパラギン酸−グリシン、アスパラギン酸−グルタミン酸、アルギニン−グリシン、リジン−X、アルギニン−X、グルタミン酸−X、アスパラギン酸−X、アスパラギン−X、フェニルアラニン−X、ロイシン−X、及びオルニチン−X(ここでXは天然に存在する任意のアミノ酸を表す)から選ばれるものである、請求項35の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項37】
前記第一及び第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、約3〜約8の特異性決定核酸塩基を備える、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項38】
前記第一及び第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、約1〜約10のユニバーサル核酸塩基を備える、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項39】
前記第一及び第二の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックは、約1〜約3のユニバーサル核酸塩基を備える、請求項38の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項40】
前記共有結合リンカーはユニバーサル核酸塩基に隣接する、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項41】
前記共有結合リンカーは前記特異性決定核酸塩基に隣接する、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項42】
前記重合骨格構造は、ペプチド核酸(PNA)、D−デオキシリボヌクレオチド、L−デオキシリボヌクレオチド、ロックト核酸(LNA)、2’−O−アルキルオリゴヌクレオチド、3’修飾オリゴデオキシリボヌクレオチド、N3’−P5’ホスホルアミデート(NP)オリゴマー、MGB−オリゴヌクレオチド、ホスホロチオエート(PS)オリゴマー、C1〜C4アルキルホスホネートオリゴマー、ホスホルアミデート、β−ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、又はα−ホスホジエステルオリゴヌクレオチドの配列の一部を形成する、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項43】
検出可能なシグナルをもたらすことができる少なくとも一つの標識を備える、請求項26の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項44】
前記標識は、色素、蛍光標識、発光標識、放射性標識、抗原、ハプテン、酵素、酵素基質、保護基、及び化学反応性基からなる標識の群より選ばれるものである、請求項43の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項45】
前記標識は、第2の標識と相互作用できるものである、請求項43の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項46】
前記ハプテンは、フルオレセイン、ビオチン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、リポ多糖、アポトランスフェリン、フェロトランスフェリン、インシュリン、サイトカイン、gp120、β−アクチン、白血球機能関連抗原1(LFA−1、CD11a/CD18)、Mac−1(CD11b/CD18)、グリコフォリン、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、インテグリン、アンキリン、フィブリノーゲン、第X因子、細胞間接着分子1(ICAM−1)、細胞間接着分子2(ICAM−2)、スペクトリン、フォドリン、CD4、サイトカイン受容体、インシュリン受容体、トランスフェリン受容体、Fe+++、ポリミキシンB、エンドトキシン中和タンパク質(ENP)、抗体特異的抗原、アビジン、ストレプトアビジン、並びにビオチンからなる群より選ばれるものである、請求項44の絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー。
【請求項47】
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを合成するための方法であって、
請求項1のオリゴマーブロックライブラリーから二つ以上のオリゴマーブロックを選ぶこと(ここで、該オリゴマーブロック上にある該化学反応性部分は、反応して鋳型なしで該オリゴマーブロック同士の間に共有結合リンカーを形成できるものである)、及び
該選ばれたオリゴマーブロックを適当な条件下で反応させることにより、該オリゴマーブロック上にある該化学反応性部分を結合して該オリゴマーブロック同士の間に共有結合リンカーを形成し、それにより該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成すること、を包含する方法。
【請求項48】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは酵素により伸長可能でないものである、請求項47の方法。
【請求項49】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、修飾されたヌクレオチド又はインターヌクレオチドアナログを備える、請求項48の方法。
【請求項50】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、ペプチド核酸を備える、請求項48の方法。
【請求項51】
前記オリゴマーブロックを構成する核酸塩基は異なる構造のものであり、かつ前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーはキメラである、請求項47の方法。
【請求項52】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、少なくとも一つのポリメラーゼ酵素により酵素的に伸長可能なものである、請求項47の方法。
【請求項53】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、一つ以上の標識をさらに備える、請求項47の方法。
【請求項54】
前記標識は、オリゴマーブロックの末端、オリゴマーブロックの内部の位置、又は前記リンカーに一体的な位置で結合される、請求項53の方法。
【請求項55】
前記標識は、発色団、蛍光色素、蛍光団、クエンチャー、スピン標識、放射性同位体、酵素、ハプテン、化学発光化合物、及び生物発光化合物からなる群より選ばれるものである、請求項53の方法。
【請求項56】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、標識の少なくとも一つのエネルギー移動対を備え、ここで前記標識の対は、少なくとも一つのアクセプター部分及び少なくとも一つのドナー部分を備える、請求項53の方法。
【請求項57】
前記エネルギー移動対の標識は、前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーの末端又は前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の部位に結合される、請求項56の方法。
【請求項58】
前記エネルギー移動対は、単一のドナー部分及び単一のアクセプター部分を備える、請求項56の方法。
【請求項59】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、リアルタイムPCRモニタリング用のプローブである、請求項56の方法。
【請求項60】
標識の前記エネルギー移動対は、前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーが標的配列にハイブリダイズしていないときと比べて前記絶縁性組合せオリゴマーが標的配列にハイブリダイズしたときに前記標識の少なくとも一つにおける検出可能なシグナルの変化が容易になる位置で、前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーに結合される、請求項56の方法。
【請求項61】
前記アクセプター部分及びドナー部分は、異なるオリゴマーブロックに結合される、請求項56の方法。
【請求項62】
前記アクセプター及びドナーの部分の両方が蛍光団である、請求項58の方法。
【請求項63】
前記ドナー部分はドナー蛍光団であり、かつ前記アクセプターは非蛍光性のクエンチャー部分である、請求項58の方法。
【請求項64】
前記酵素は、アルカリホスファターゼ、ダイズペルオキシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、グルコアミラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、及びプロテアーゼからなる群より選ばれるものである、請求項55の方法。
【請求項65】
前記ハプテンは、フルオレセイン、ビオチン、2,4−ジニトロフェニル、ジゴキシゲニン、リポ多糖、アポトランスフェリン、フェロトランスフェリン、インシュリン、サイトカイン、gp120、β−アクチン、白血球機能関連抗原1(LFA−1、CD11a/CD18)、Mac−1(CD11b/CD18)、グリコフォリン、ラミニン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、インテグリン、アンキリン、フィブリノーゲン、第X因子、細胞間接着分子1(ICAM−1)、細胞間接着分子2(ICAM−2)、スペクトリン、フォドリン、CD4、サイトカイン受容体、インシュリン受容体、トランスフェリン受容体、Fe+++、ポリミキシンB、エンドトキシン中和タンパク質(ENP)、抗体特異的抗原、アビジン、ストレプトアビジン、並びにビオチンからなる群より選ばれるものである、請求項55の方法。
【請求項66】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは固体支持体に付着させられる、請求項47の方法。
【請求項67】
前記固体支持体は、シリカ、逆相シリカ、有機ポリマー、オリゴ糖、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ガラス、細孔性ガラス(controlled−pore−glass)(CPG)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、ポリアクリルアミド、共重合体及びグラフト重合体から選ばれる材料からなる、請求項66の方法。
【請求項68】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、一つより多い絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを備えるアレイに存在する、請求項66の方法。
【請求項69】
標的と、請求項47の方法により製造される絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーとを備える複合体であって、
前記標的は、連結されて前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを生成させるオリゴマーブロックの特異性決定核酸塩基に相補的な核酸塩基配列を有し、かつ
前記複合体は、前記標的の核酸塩基と前記オリゴマーのユニバーサル核酸塩基及び特異性決定核酸塩基との間で塩基対合が起こるよう、前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーと前記標的とをハイブリッド形成させることにより形成されるものである、複合体。
【請求項70】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の前記特異性決定核酸塩基は、連続した標的配列に結合する、請求項69の複合体。
【請求項71】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の特異性決定核酸塩基の配列は、非連続の標的配列に結合する、請求項69の複合体。
【請求項72】
前記絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマー内の特異性決定核酸塩基の配列は、ギャップのある標的配列と結合する、請求項69の複合体。
【請求項73】
固体支持体と、
末端を有する重合核酸塩基の配列を有する絶縁性核酸塩基オリゴマーブロックとを備える絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック構造物であって、
該配列は、少なくとも3つの特異性決定核酸塩基及び少なくとも1つのユニバーサル核酸塩基、並びに該重合核酸塩基の配列の末端に共有結合した少なくとも一つの化学反応性部分を含み、
絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーは、該絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを構成する該オリゴマーブロック中の特異性決定核酸塩基の複合物であるハイブリッド形成標的配列を有し、かつ
該化学反応性部分は、別のオリゴマーブロック上にある化学反応性部分と反応することができ、それにより、鋳型なしで、該オリゴマーブロック同士の間に共有結合リンカーを形成し、該固体支持体に付着する絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを形成できる、絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック構造物。
【請求項74】
前記固体支持体は、シリカ、逆相シリカ、有機ポリマー、オリゴ糖、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ガラス、細孔性ガラス(controlled−pore−glass)(CPG)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフルオロエチレン、ポリエチレンオキシ、ポリアクリルアミド、共重合体及びグラフト重合体、デキストラン、寒天、アガロース、セファロース(SEPHAROSE(登録商標))、セファデックス(SEPHADEX(登録商標))、セファクリル(SEPHACRYL(登録商標))、セルロース、デンプン、ナイロン、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、及びマイクロタイタープレートから選ばれる固体支持体を含む、請求項73の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック構造物。
【請求項75】
特異性決定核酸塩基の配列が異なる複数の異なる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーを備える、請求項73の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック構造物。
【請求項76】
前記固体支持体は、特異性決定核酸塩基の配列が異なる、異なる絶縁性組合せ核酸塩基オリゴマーのアレイを備える、請求項75の絶縁性核酸塩基オリゴマーブロック構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2007−516695(P2007−516695A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533773(P2006−533773)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018800
【国際公開番号】WO2004/111072
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(500069057)アプレラ コーポレイション (120)
【住所又は居所原語表記】850 Lincoln Centre Drive Foster City CALIFORNIA 94404 U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018800
【国際公開番号】WO2004/111072
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(500069057)アプレラ コーポレイション (120)
【住所又は居所原語表記】850 Lincoln Centre Drive Foster City CALIFORNIA 94404 U.S.A.
【Fターム(参考)】
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