説明

ユーザ側装置、IP電話システム、及び電話機の位置固定方法

【課題】IP電話システムにおいて、各ユーザの電話機の位置を特定することによって、緊急電話をも含めて0AB〜J番号サービスを可能にすることである。
【解決手段】電話機に接続されるユーザ側装置に、電話機の回線をあらわす経路情報識別子を割り当てておき、電話機から発信の際、当該経路情報識別子を認証サーバに送信する。認証サーバは、与えられた経路情報識別子が所定の識別子と一致した場合、当該電話機の位置を認証、固定する。経路情報識別子としては、VLAN−ID、NAS_PORT_IDを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はIP網に接続された電話機を含むIP電話システム、当該IP電話システムに用いられるユーザ側装置、及び、電話機の位置を固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、通話料の安価なIP電話サービスに対する関心が高くなっており、当該IP電話サービスは、今後、益々普及していくものと予測される。通常、IP電話サービスに用いられる電話番号としては、「050」で始まるの電話番号が用いられているが、固定電話と同じ形式の電話番号(一般に、0AB〜J番号と呼ばれる)をも利用できるIP電話サービスも知られている。このように、0AB〜J番号利用のIP電話サービスには、従来の固定電話サービスと同様な信頼性を保つために種々の制約が課せられており、これらの制約のために、0AB〜J番号を利用したIP電話サービスの普及は遅れる傾向にある。
【0003】
この種の0AB〜J番号に課せられている制約の一つとして、固定電話の電話番号と発信場所とを対応させることが要求されている。これは、固定電話の場合、警察或いは消防等のような緊急電話の際にコールバックして、固定電話の位置を確認する必要があるためである。
【0004】
一方、通常のIP電話サービスに使用されるIP電話装置は、特開2003−158553号公報(特許文献1)に見られるように、パソコンとヘッドセットとを一体化したものが多く、パソコンのキーボードを利用して入力された電話番号をIPアドレスに変換して、ルータを介してIPネットワークに接続する構成を備えている。即ち、特許文献1に示されたIP電話装置は、相手側IP電話装置に対してピアツーピア(peer to peer)方式で情報を送受信する通信装置と、当該通信装置が受信した電話番号とIP電話装置自体の電話番号とを照合する電話番号検索装置とを備えている。電話番号検索装置における照合の結果、両者が一致する場合に限り、通信装置は当該IP電話装置自体のIPアドレスを返信し、このIPアドレスを用いて、相手側のIP電話装置と呼接続している。
【0005】
このことからも明らかな通り、特許文献1は、0AB〜J番号を利用したIP電話サービスを実現することについては何等開示していない。したがって、電話機の電話番号と当該電話機の位置とを固定する必要性並びにそのための手段について、特許文献1は何等示唆していない。
【0006】
また、現在利用中の電話番号を使用できる従来のシステムは、国内通話、携帯電話、国際電話等には対応できるものの緊急通話用に加入電話回線を残すことが提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−158553号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電話料金を抑えることができるIP電話サービスはユーザにとって極めて魅力的であり、更に、現在利用されている電話番号を利用できる0AB〜J番号サービスを提供することはユーザにとって極めて利便性が高い。したがって、0AB〜J番号サービスを実現することは、IP電話サービスの普及に大きな役割を果たすものと考えられる。
【0009】
しかしながら、IP電話装置自体、当該IP電話装置にコンピュータと同様に、IPアドレスを割り当て、当該IPアドレスを用いた接続が行われている。このことは、IP電話装置をどの電話回線に接続しても使用できるように構成することを意味している。したがって、各IP電話装置の位置を固定することについて従来提案されていないのが実情であり、緊急電話の際のためには加入者回線を残すことのみが検討されている。
【0010】
本発明の目的は、電話機の位置を認証して、緊急電話の際にも対応できる電話機用ユーザ側装置を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、電話機に対応した接続経路を示す識別子を用いて電話機の位置を認識する電話機用ユーザ側装置を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、ユーザ側装置からの識別子を用いて、電話機の位置を認証できるIP電話システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、IP網を介して電話サービスを行うのに使用されるユーザ側装置において、電話機と接続できると共に、前記電話機の接続されるべき回線の電話機用識別子を割り当てられた端末装置を備え、前記電話機用識別子を用いて、前記電話機の収容位置を認証及び固定できることを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、前記電話機用識別子は当該電話機の回線に対応したVLAN(Virtual Local Area Network)−ID(Identifier)であることを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、前記電話機用識別子として、前記VLAN−IDのほかに、前記電話機固有のMAC(Media Access Control)アドレスを含んでいることを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、前記端末装置に接続された顧客宅内装置(Customer Premises Equipment)を更に備えていることを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0017】
本発明の第5の態様によれば、前記端末装置は、前記電話機からの発信を検出し、当該電話機固有の電話機用MACアドレスを付与する手段を備え、当該端末装置に接続されるCPEは前記電話機用MACアドレスを検出して、当該電話機用識別子として、当該電話機用回線をあらわすVLAN−IDを生成する手段を有することを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0018】
本発明の第6の態様によれば、前記CPEは前記VLAN−IDの生成の際、前記電話機のサービスクラス(CoS)をあらわすサービスクラス(CoS)番号をも生成されることを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0019】
本発明の第7の態様によれば、前記CPEは前記端末装置からの前記電話機用MACアドレスをそのまま出力することを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0020】
本発明の第8の態様によれば、前記端末装置はコンピュータにも接続できる構成を備え、前記コンピュータには、当該コンピュータの接続されるべき回線をあらわすコンピュータ用識別子として、VLAN−IDが割り当てられており、当該コンピュータ用VLAN−IDは前記電話機のVLAN−IDとは異なっていることを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0021】
本発明の第9の態様によれば、前記端末装置は、前記電話機からの発信を検出して、当該電話機用識別子として、前記電話機及び他の電話機に対して共通に割り当てられた回線をあらわす共通VLAN−IDを付与する付与部を備え、前記端末装置に接続されるCPEは前記共通VLAN−IDを前記電話機に割り当てられた固有VLAN−IDに変換する変更手段とを備えていることを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0022】
本発明の第10の態様によれば、前記端末装置の前記付与部は、前記電話機からの発信の際、当該電話機固有のMACアドレス及びサービスクラス(CoS)番号をも付与し、前記共通VLAN−IDと共に、タグとして前記CPEに出力することを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0023】
本発明の第11の態様によれば、前記変更手段は、前記タグのうち、前記共通VLAN−IDを前記固有VLAN−IDに変更し、前記タグのMACアドレス及びCoS番号をそのまま出力することを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0024】
本発明の第12の態様によれば、前記端末装置の前記付与部は、前記コンピュータからの発信の際、当該コンピュータをあらわすMACアドレスを検出して、当該コンピュータ及び他のコンピュータに共通に割り当てられた回線をあらわすコンピュータ用共通VLAN−IDを付与し、前記CPEは前記コンピュータ用共通VLAN−IDを変更することなく出力することを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0025】
本発明の第13の態様によれば、前記端末装置の付与部は、更に、前記コンピュータのデータ通信に割り当てられたCoS番号をも付与し、前記CPEは、前記コンピュータのMACアドレス及びCoS番号を変更することなく出力することを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0026】
本発明の第14の態様によれば、前記端末装置に接続される前記電話機には、他のユーザの電話機とは、互いに異なる電話機用固有VLAN−IDが付与されており、前記端末装置に接続される前記コンピュータには、他のユーザのコンピュータと共通のコンピュータ用共通VLAN−IDが付与されていることを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0027】
本発明の第15の態様によれば、前記端末装置は、前記電話機からの発信を検出し、当該電話機用固有のVLAN−IDと、当該電話機固有のMACアドレスを付与する第1タグ付加部を備え、当該端末装置に接続される前記コンピュータからのコンピュータMACアドレスをそのまま前記CPEに出力することを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0028】
本発明の第16の態様によれば、前記CPEは、前記端末装置からのコンピュータMACアドレスを検出し、前記コンピュータ用共通VLAN−IDを付与し、前記コンピュータ用MACアドレスと共に出力する第2タグ付加部を含み、前記端末装置からの前記電話機固有のVLAN−ID及びMACアドレスをそのまま出力することを特徴とするユーザ側装置が得られる。
【0029】
本発明の第17の態様によれば、IP網を介して電話サービスを行うIP電話システムにおいて、電話機を収容できると共に、前記電話機固有の電話機用識別子を設定する端末装置を備えたユーザ側装置と、前記電話機用識別子を用いて、前記電話機の収容位置を認証する上位装置とを有することを特徴とするIP電話システムが得られる。
【0030】
本発明の第18の態様によれば、前記電話機用識別子は前記IP電話サービス用電話機に定められた固有の電話機用VLAN−IDを含んでいることを特徴とするIP電話システムが得られる。
【0031】
本発明の第19の態様によれば、前記上位装置は、前記端末装置を収容する加入者収容装置と、前記電話機用固有VLAN−IDを前記端末装置に割り当てられた所定ポートを備え、前記電話機用固有VLAN−IDと前記所定ポートの番号とを用いて、前記電話機の収容位置を認証するサーバ手段とを有することを特徴とするIP電話システムが得られる。
【0032】
本発明の第20の態様によれば、前記サーバ手段は、互いに異なる前記端末装置を互いに異なるポートに収容し、前記各端末装置の前記電話機用固有VLAN−ID及び所定ポート番号に応じた経路を設定する第1のサーバと、第1のサーバからの前記各電話機用固有VLAN−ID及び所定ポート番号から前記各端末装置の位置を認証する第2のサーバとを有することを特徴とするIP電話システムが得られる。
【0033】
本発明の第21の態様によれば、前記端末装置には、ユーザIDとユーザパスワードとが割り当てられており、前記第2のサーバは、前記ユーザID及びユーザパスワードと、前記電話機固有VLAN−IDとの関係を示すテーブルを備え、前記ユーザID及びユーザパスワードと前記電話機固有VLAN−IDとが割り当てられたものと一致するか否かを検出することにより、前記端末装置に接続された電話機の位置を認証すると共に、前記端末装置が所定の位置に接続されているか否かを検出することを特徴とするIP電話システムが得られる。
【0034】
本発明の第22の態様によれば、前記第2のサーバは前記ポート番号をも参照して各端末装置の認証を行なうことを特徴とするIP電話システムが得られる。
【0035】
本発明の第23の態様によれば、前記端末装置は前記割り当てられたユーザID及びユーザパスワードを前記第2のサーバに出力することを特徴とするIP電話システムが得られる。
【0036】
本発明の第24の態様によれば、前記第1のサーバがBAS(Broadband Access Server)であり、他方、第2のサーバがRADIUS(Remote Authentication Dial−In User Server)であることを特徴とするIP電話システムが得られる。
【0037】
本発明の第25の態様によれば、前記各端末装置は、前記電話機以外にもコンピュータをも収容できる構成を備え、前記各端末装置は当該コンピュータに対して前記電話機用VLAN−IDとは異なるコンピュータ用VLAN−IDを付与することを特徴とするIP電話システムが得られる。
【0038】
本発明の第26の態様によれば、前記各端末装置は、前記電話機以外に、前記コンピュータを収容できる構成を備え、前記各端末装置は当該コンピュータには識別子を付与しないことを特徴とするIP電話システムが得られる。
【0039】
本発明の第27の態様によれば、前記端末装置はVA(Voice Adapter)であることを特徴とするIP電話システムが得られる。
【0040】
本発明の第28の態様によれば、IP網を介して電話サービスを行うIP電話システムに使用される電話機の位置固定方法において、前記各電話機の接続されるべき回線をあらわす前記各電話機固有の電話機用識別子を付与しておき、当該電話機用識別子を利用して、前記各電話機の位置を認証、固定することを特徴とする電話機の位置固定方法が得られる。
【0041】
本発明の第29の態様によれば、前記電話機用識別子はVLAN−IDを含み、前記各電話機の位置を固定する際には、前記VLAN−IDが正規のVLAN−IDであるか否かを判定することによって、前記各電話機の位置固定を行うことを特徴とする電話機の位置固定方法が得られる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、割り当てられた回線の経路情報を電話機用識別子として利用することによって電話機の接続位置を特定することができるユーザ側装置が得られる。
【0043】
更に、本発明では、電話機用識別子として、VLAN−IDを含むタグをユーザ側端末で生成して、上位装置で、当該VLAN−IDと、ユーザID及びユーザパスワードとの関係とから、各ユーザ側端末に接続された電話機の位置を特定できるIP電話システムが得られる。このように、位置を特定された電話機は、緊急電話をも含めて0AB〜J番号による発信を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態に係るIP電話システム20の概略構成が示されている。図1に示されたIP電話システム20は加入者収容装置(CO:Central Office)22、BAS(Broadband Access Server)24、及び、RADIUS(Remote Authentication Dial−In User Server)26とを備え、加入者収容装置22には、複数の顧客宅内装置(CPE)(Customer Premises Equipment)30(図では、2つのCPE301、302のみが示されている)がユーザ毎に収容されている。図示された加入者収容装置22は最大4096の電話機を収容できる。
【0045】
ここで、CPE301及び302はMC(メディアコンバータ)32を有し、当該各CPE301及び302のMC321及び322はそれぞれVoIP(Voice over Internet Protocol)−TA(Terminal Adapter)(以下、端末装置と呼ぶ)341及び342に接続されている。また、端末装置341は、パーソナルコンピュータ(PC)361及び電話機381の双方と接続できるように構成されており、同様に、端末装置342も、パーソナルコンピュータ(PC)362及び電話機382の双方と接続できるように構成されている。尚、これら端末装置341及び342は事業者から各ユーザに提供されても良いし、ユーザ自身によって購入されたものであっても良い。以下では、端末装置341とCPE301との組合せ、及び、端末装置342とCPE302との組合せをユーザ側装置と呼ぶものとする。
【0046】
端末装置341及び342にそれぞれ接続されるPC361及び362には、NIC(Network Interface Card)等により固有のMAC(Media Access Control)アドレスが与えられているが、電話機381及び382には、MACアドレスは付与されていない。図示されたCPE301及び302に設けられたMC321、322は、加入者収容装置22とそれぞれ光ケーブルによって接続され、FTTH(Fiber To The Home)システムが構成されているものとして説明する。しかしながら、本発明は何等これに限定されることなく、DSL等の他の媒体を用いたシステム或いはPON(Passive Optical Network)を構成したシステムにも同様に適用できる。
【0047】
ここで、端末装置341のPC用及び電話機用回線は、それぞれ、回線に割り当てられた電話機用回線識別子(ここでは、VLAN−ID:10及び20)によって識別することができ、他方、端末装置342のPC用及び電話機用回線も、それぞれ、回線に割り当てられた識別子(VLAN−ID:100及び30)によって識別することができる。即ち、上記した識別子は電話機の経路をあらわす経路情報として役立ち、上記したVLAN−IDは経路情報の一部を形成している。換言すれば、これらVLAN−IDをRADIUS26で個別に識別、認証できれば、電話機381及び382の接続位置を固定できる。
【0048】
図示された各端末装置341及び342は、音声を優先して、通常のイーサネット(登録商標)パケットを送出するものとする。ここでは、説明の便宜上、PC361、362に関連した系をサービス系と呼び、電話機381、382に関連した系をVoIP系と呼ぶものとする。このように、各端末装置341及び342は電話機381、382からの音声に応答して、VoIP系音声パケットを生成するから、VA(Voice Adapter)と呼ぶこともできる。
【0049】
図示されたCPE301及び302は、PC361、362及び電話機381、382の回線を識別し、当該回線に応じた識別子(VLAN−ID:10及び20、VLAN−ID:100及び30)を各パケットに付与する機能を備えている。更に、加入者収容装置(CO)22はPC361、362からのパケットをBAS24の予め定められたポートに出力する機能を有すると共に、電話機381、382からのパケットをPC361、362からのパケットとは異なるポートに出力する機能を備えている。ここでは、PC361、362の接続されるべきBAS24のポートを第1のポート群と呼び、他方、電話機381、381の接続されるべきBAS24のポートを第2のポート群と呼ぶ。
【0050】
この例では、BAS24は複数のポートを有する複数のNAS(Network Access Server)を含んでおり、上記した第1及び第2のポート群には、NASポートに付与されたポート番号が付与されている。更に、各NASには、IPアドレス(NAS_IP)が割り当てられている。この構成では、RADIUS26は、当該NAS_IPを識別することにより、BAS24を識別すると共に、BAS24内のNASポートに付与されたポート番号を識別することができる。
【0051】
上記した説明では、上記したVLAN−IDがCPE301、302によって生成されるものとしたが、各端末装置341及び342で生成されても良い。
【0052】
図1に示されたBAS24は第1のポート群に対して設けられた第1のバーチャルルータ(VR)241と、第2のポート群に対して設けられた第2のバーチャルルータ(VR)242とを具備している。第1及び第2のVR241、242はRADIUS26内に設けられた個別のサービス用サーバ261及びVoIP用サーバ262に接続されている。この場合、サービス用サーバ261はID、PWD(パスワード)をPPPoEにより認証し、他方、VoIP用サーバ262は、ID/PWD/VLAN−IDにより、認証し、位置を固定する。
【0053】
図1に示されたRADIUS26は、端末装置341に接続された電話機381、382の位置をVLAN_ID、NAS_PORT番号、及び、NAS_IPによって特定することができる。ここでは、VLAN_ID及びNAS_PORT番号の組み合わせをNAS_PORT_IDと呼ぶものとすると、RADIUS26のVoIP用サーバ262は、電話機381及び382の位置をNAS_PORT_IDとNAS_IPとによって認証することができる。
【0054】
このため、RADIUS26のVoIP用サーバ262には、ユーザ1及び2のID/PWDと、NAS_PORT_ID及びNAS_IPとの対応関係を示すテーブルが備えられている。
【0055】
以下、本発明の一実施形態に係る電話機381、382の位置固定方法について説明する。
【0056】
図1に示された例において、例えば、ユーザ1の端末装置341、342を構成するVAには、それぞれ初期設定動作によって、電話機381、382に対応して、固有のユーザID、パスワード(PWD)、SIP(Session Initiation Protocol)サーバ(図示せず)のURL、VLAN_ID、及び、SIPのPWD/IDが割り当てられているものとする。更に、端末装置341、342には、0AB〜J方式の電話番号が割り当てられている。
【0057】
この状態で、例えば、ユーザ1が、端末装置341を起動させると、当該電話機381の接続されている端末装置341のIDとPWDとが、端末装置341から自動的にCPE321に送信される。図示されたCPE321は、当該電話機381の回線を識別し、当該回線に付与されているVLAN_ID:20をユーザ1のID及びPWDと共に、加入者収容装置22に出力する。
【0058】
加入者収容装置22はCPE321からVLAN_ID:20を受け、当該VLAN_ID:20がVoIP系であることを認識して、当該VLAN_ID:20、ID、及び、PWDをBAS24の第2のポート群に出力する。このとき、第2のポート群の番号であるNAS_PORT番号とVLAN_IDとがBAS24によって識別され、これらNAS_PORT番号とVLAN_IDがポート識別信号(NAS_PORT_ID)として、BAS24に保持される。
【0059】
RADIUS26は、VoIP用VR242からの認証要求を受けて、VoIP用VR242のNAS_IPを認識する。この場合、RADIUS26には、当該NAS_IPに対応したVoIP用VR242からNAS_PORT_IDが与えられ、当該RADIUS26のVoIP用サーバ262に保持されたテーブルをアクセスする。RADIUS26のVoIP用サーバ262は、テーブルに格納されたID/PWDと、NAS_PORT_IDとの関係がユーザ側から送られてきたものと一致するか否かを検出し、一致が検出された場合、当該電話機381は正しい位置に接続されているものとして、その位置を特定し、認証する。
【0060】
このようにして、RADIUS26は、電話機381の接続された端末装置341に割り当てられたID、PWD(端末識別情報)と、NAS_IP、及び、NAS_PORT_IDとを含む経路識別情報から電話機381の位置を認証する。このため、RADIUS26には、前述したように、端末識別情報と経路情報の対応関係を示すテーブルが含まれている。
【0061】
RADIUS26によって電話機381の位置が認証されると、VoIP用サーバ262は端末装置341にIPアドレスを割り当て、端末装置341は当該割り当てられたIPアドレスを用いてSIPサーバにアクセスし、以後、電話機381のおけるAB〜Jに必要な位置固定を実現する。このように、電話機381の位置固定が行われると、以後、0AB〜Jによる発信条件の一つが満足され、0AB〜Jの発信を実現できる状態になる。
【0062】
端末装置342に収容されている電話機382を位置固定する場合にも同様な動作が行われる。尚、位置を特定された電話機から、端末装置を介して110番、119番を用いた緊急電話も別の回線を用意することなく行うことが可能になる。
【0063】
一方、図1に示されたPC361又は362からサービス系の発信が行われる場合には、当該PC361、362の位置を特定する必要はない。このため、図示された実施形態では、PC361、362を用いたサービス系からの発信に対しては、RADIUS26(具体的には、サービス用サーバ261)はこれらPC361、362の位置固定を行わない。ここでは、端末装置341において前述した初期設定が行われているものとして、PC361から発信が行われる場合について説明する。まず、PC361から発信が行われると、端末装置341に割り当てられた識別番号ID、パスワードPWDがVLAN−ID:10の回線を通して、CPE321に送信され、当該CPE321はPC10の回線を識別して、VLAN−ID:10を付加して加入者収容装置(CO)22に送信する。加入者収容装置22はVLAN−ID:10がサービス系の識別信号であることを判別して、サービス系に割り当てられたBAS24の第1のポート群に当該VLAN−ID:10をID及びPWDと共に出力する。
【0064】
この結果、当該VLAN−ID:10はBAS24内のサービス用VR241を介して、RADIUS26内のサービス用サーバ261に出力される。当該サービス用サーバ261はID及びPWDから、端末装置341に接続されたPC361を認証する。
【0065】
同様に、PC362から発信が行われる場合にも、当該PC362に接続された端末装置342からID及びPWDがCPE322に送信され、CPE322で、端末装置342に接続されたPC362に対応した回線を示すVLAN−ID:100が加入者収容装置22に送信され、当該VLAN−ID:100に応じたBAS24内のサービス用VR241を介してRADIUS26内のサービス用サーバ261に与えられる。サービス用サーバ261では、端末装置342に接続されたPC361を認証するが、位置固定は行わない。
【0066】
次に、図2を参照して、図1を参照して説明した電話機の位置固定が十分か否かを検証する。電話機の位置固定が十分かどうかは、初期設定された端末装置34(添字省略)が当該端末装置34に割り当てられた所定回線以外の回線に接続された場合、当該端末装置34が所定回線に接続されていないことをRADIUS26で認識できるか否かを評価することによって検証できる。
【0067】
このため、図2では、ユーザ1〜8の第1〜第8の電話機381〜388が複数の回線を介してBAS24に接続されている場合について説明する。
【0068】
ユーザ1〜8のうち、ユーザ1の電話機381は第1の端末装置341及びVLAN−ID:10を付与された回線を通じて加入者収容装置(以下、第1のCO)221に接続されている。ここで、端末装置341には、初期設定により、ID及びPWDとして、USER1及びAAAが与えられているものとする。
【0069】
また、ユーザ2の電話機382は、第2の端末装置342及びVLAN−ID:20が付与された回線を介して、第1の電話機381と同様に、第1のCO221に接続されている。第2の端末装置342には、ID及びPWDとして、それぞれUSER2及びBBBが与えられているものとする。第1及び第2の端末装置341及び342を収容した第1のCO221はBAS24を構成するNASAのポート1に接続され、当該NASAを介してRADIUS26に接続されている。
【0070】
更に、第3の電話機383及び384を接続した第3及び第4の端末装置343及び344は、それぞれVLAN−ID:30及びVLAN−ID40を割り当てられた回線を通じて第2のCO222に収容されており、当該第2のCO222もNASAのポート1に接続されている。この例では、第3の端末装置343のID及びPWDはそれぞれUSER3及びCCCであるものとする。また、第4の端末装置344のID及びPWDは、それぞれUSER4及びDDDであるものとする。同様に、第5及び第6の端末装置345及び346には、ID:USER5、PWD:EEE、及び、ID:USER6及びFFFがそれぞれ与えられているものとし、更に、第7及び第8の端末装置347及び348には、ID:USER7、PWD:GGG、及び、ID:USER8及びHHHがそれぞれ与えられているものとする。
【0071】
ここで、第1の端末装置341が第3の端末装置343と置き換えられ、第2のCO222に接続されたものとする。この場合、第2のCO222には、第1の端末装置341のID:USER1及びPWD:AAAが与えられることになるが、第2のCO222ではこれらID及びPWDの相違を識別することはできない。しかしながら、第2のCO222に接続された回線のVLAN−IDは30であり、第1の端末装置341の接続されているVLAN−ID:10とは相違している。したがって、第2のCO222或いは図示しないCPEにおいて、回線に割り当てられたVLAN−IDを識別することにより、第1の端末装置341が第3の端末装置343に成りすまして接続されるのを拒否することができる。このことは、他の第2〜第4の端末装置342〜344がこれら端末装置に割り当てられた回線以外の回線に接続された場合も同様である。
【0072】
このように、第1〜第4の端末装置341〜344に対して、回線によって定まる固有のVLAN−IDを付与することによって、各端末装置が他の端末装置として使用されるのを拒否できる。
【0073】
更に、図2を参照すると、第5のユーザの第5の端末装置345及び第6のユーザの第6の端末装置346がそれぞれVLAN−ID:10及びVLAN−ID:20の回線を介して、第3のCO223に接続され、当該第3のCO223はNASAのポート2に接続されている。このように、第5及び第6の端末装置345及び346のVLAN−ID:10及び20は第1及び第2の端末装置341及び342のVLAN−IDとそれぞれ共通であり、共通のNASAに接続されている。しかしながら、第3のCO223は第1のCO221とNASAの互いに異なるポートに接続されている。
【0074】
したがって、RADIUS26では、共通のVLAN−IDを有する回線を通して、本来の端末装置とは異なる端末装置が接続されても、NASAのポート番号を識別することにより、本来の端末装置のみを識別、認証できる。このことを考慮して、図1に示した例では、NASポート番号をNAS_PORT_IDの一部として利用している。
【0075】
次に、第7及び第8の端末装置347及び348はNASAとは異なるNASBに第4のCO224を介して接続されている。NASAとNASBとは、NAS_IPによって識別することができる。したがって、この実施形態では、各端末装置が接続される経路を示す経路情報として、NAS_IPをも使用している。
【0076】
このように、経路情報として、VLAN−ID及びNAS_PORT番号からなるNAS_PORT_IDと、NAS_IPとを用いることによって、各端末装置341〜348を認証、識別することができる。このように、端末装置341〜348からの認証要求によって、RADIUS26は各端末装置341〜348の位置を固定的に認識することができ、結果として、各端末装置341〜348に接続される電話機の位置も特定される。
【0077】
この構成によれば、各端末装置341〜348が起動されると、自動的にRADIUS26に対して、端末装置341〜348の認証依頼が出力され、各端末装置341〜348(即ち、電話機381〜388)の認証後、SIPサーバの接続が可能となる。これによって、各端末装置341〜381の位置が固定され、以後、電話機381〜388では、0AB〜J番号による発信も可能になる。
【0078】
図3を参照して、本発明の他の実施形態に係るIP電話システムを説明する。図示されたIP電話システム20は、PC361、362の発信に対しては当該PC361、362に割り当てられたVLAN−IDをタグの形では付与せず、他方、電話機381、382からの発信に対しては当該電話機の回線に割り当てられたVLAN−IDをタグとして付与することができる端末装置341及び342を備えている点で、図1に示されたIP電話システムと相違している。
【0079】
具体的に言えば、図3に示された端末装置341は電話機381からのパケットに対して、当該電話機381用の回線に割り当てられたVLAN−ID:20を付与し、同様に、端末装置342は電話機382からのパケットに対してVLAN−ID:30を付与する機能を備えている。
【0080】
他方、CPE301、302のMC321、322はそれぞれVoIP系のVLAN−IDをポート単位で設定して、CO22に接続すると共に、サービス系のタグのないパケットを送信する。CO22はサービス系のタグのないパケットに対して、VLAN−ID:10を設定し、当該サービス系に定められたBAS24のVR241にVLAN−ID:10と共に出力する。他方、CO22はVoIP系のパケットに付与されたVLAN−ID20、30をそのまま通過させ、当該VoIP系パケットに定められたBASポートを介してサービス用VR242に出力する。BAS24及びRADIUS26では、図1と同様にして、各電話機381、382の位置を認証して固定する。
【0081】
図1及び図3に示した実施形態では、各ユーザ1及び2のPC(361又は362)と電話機(381又は382)とに、互いに異なるVLAN−IDを付与し、当該VLAN−IDを経路識別情報の一部として使用することによって、各電話機381、382の位置をRADIUS26によって認証、固定する場合を説明した。このように、ユーザ側で電話機381、382に固有のVLAN−IDを付与する方式として種々の方式が考えられる。
【0082】
図4を参照して、図1及び図3に適用できるVLAN−ID付与方式の一例を説明する。まず、各ユーザのPC361及び362に設けられたNIC(Network Interface Card)には、当該NIC固有のMAC(Media Access Control)アドレスが割り当てられており、このため、PC361、362のパケットには、データリンク層(レイヤ2)のヘッダとして、MAC(Media Access Control)アドレスが書き込まれている。ここでは、PC361及び362に対して、MACアドレスとして、それぞれMAC:A及びMAC:Cが割り当てられているものとする。
【0083】
図示された例では、端末装置(VoIP−TA)341には、図1及び図3と同様に、PC361及び電話機381が接続されており、他方、端末装置(VoIP−TA)342には、PC362及び電話機382が接続されている。以下、図示された端末装置341及び342は互いに同一の構成を有しているものとして説明するが、両端末装置341、342は必ずしも同一の構成である必要はない。尚、端末装置341とCPE301、端末装置342とCPE302とは一体化され、ユーザ1及び2の宅内に配置されても良い。尚、図示されたCPE301、302と加入者収容装置20とは光ケーブルで接続されて、FTTHシステムを構成していても良いし、他の媒体を利用したシステムであっても良い。
【0084】
図示された端末装置341、342は、電話機381、382からのVoIP系のパケットをサービス系、即ち、PC361、362からのパケットに優先して出力する機能を備え、この例では、イーサネット(登録商標)パケット形式で出力するものとする。端末装置341、342は電話機381、382から与えられる音声をVoIP系パケットとして出力する。この場合、端末装置341は電話機381のMACアドレスとしてMAC:Bを付与する機能を備え、この結果、端末装置341からは、MAC:Bを有するVoIPパケットが送出される。他方、端末装置342は電話機382に対して付与されたMACアドレス(MAC:D)を有するVoIPパケットを出力する機能を備えている。
【0085】
他方、端末装置341、342はPC361、362からのMAC:A、MAC:CのMACアドレスを有するパケットをそのまま上位のCPE301、302に送出する。このように、電話機381、382に対しても、端末装置341、342においてMACアドレスを付与することにより、上位装置では、PC、電話機のいずれからのパケットであることを検出できる。
【0086】
端末装置341に接続されたCPE301は、MAC:A及びMAC:Bを受けて、これらMAC:A、MAC:Bを検出するMACアドレス検出部402を備えている。当該MACアドレス検出部402は、PC361、電話機381のどちらから受信したパケットであるかを検出する一方、検出されたPC361、電話機381に応じたタグを付与する機能を有している。
【0087】
同様に、CPE302も、MACアドレス検出部402を備えており、当該MACアドレス検出部402はMAC:C及びMAC:Dを検出することにより、当該検出結果に応じたタグを受信したパケットに付与する機能を有している。
【0088】
図示された例では、MACアドレス検出部401はサービス系のパケットに対して割り当てられたVLAN−ID:Xをパケットに付与すると共に、当該パケットのサービスクラス(CoS)を示すCoS番号1を付与している。結果として、サービス系のパケットには、図4に示されるように、CoS:1,VLAN−ID:X,MAC:Aからなるタグが与えられる。
【0089】
更に、MACアドレス検出部401はVoIP系のパケットに対して割り当てられたVLAN−ID:Yを付与すると共に、VoIP系パケットのサービスクラスを示すCoS番号(CoS:7)をVoIP系パケットに与え、結果として、VoIP系パケットには、図4に示すように、CoS:7、VLAN−ID:Y、及び、MAC:Bからなるタグが含まれることになる。
【0090】
このように、サービスクラス(CoS)番号、VLAN−ID、及び、MAC:Aからなるタグを含むパケットは加入者収容装置(CO)20に与えられ、加入者収容装置20において、サービス系パケット及びVoIPパケットに応じたVLANを介してBAS24に送信され、図1又は図3と同様にして、電話機381の認証及び固定が行われる。
【0091】
CPE302のMACアドレス検出部402においても、MACアドレス検出部401と同様な動作が行われ、PC362からのサービス系パケットには、CoS:1、VLAN−ID:X、及び、MAC:Cからなるタグが付与され、加入者収容装置20に送出され、他方、電話機382のVoIP系パケットには、CoS:7、VLAN−ID:Z、及び、MAC:Dからなるタグが付与され、加入者収容装置20に送信される。これらのタグを有するパケットも図1及び図3と同様に処理され、電話機382の認証及び固定が行われる。
【0092】
この場合、CPE301、302はVLAN−IDによってサービス系パケットとVoIP系パケットとの振り分けを行っているから、各パケットのタグ中に含まれているVLAN−IDはパケットの経路情報としての機能を備えている。
【0093】
図5を参照して、図1及び図3に適用することができるVLAN−IDの付与方式の他の構成例を説明する。ここでは、サービス系のパケットに、全てのユーザに共通VLAN−IDが付与された場合の構成例が示されており、この例の場合、サービス系パケットには、VLAN−ID:Xが与えられるものとする。他方、VoIP系パケットにも、全ユーザに共通にVLAN−ID:Yが付与されるものとし、VLAN−ID:YはVLAN−ID:Xとは相違しているものとする。尚、端末装置361及び362はVoIP系の音声パケットをサービス系のパケットに優先して出力することは図4に示した端末装置341、342と同様である。
【0094】
図5に示された端末装置341には、PC361及び電話機381が接続されており、図4の場合と同様に、PC361からはMAC:AのMACアドレスを含むパケットが与えられ、電話機381からの音声はMACアドレスを含んでいない。また、端末装置342には、PC362及び電話機382が接続されており、PC362からはMAC:Cを含むパケットが与えられている。
【0095】
この構成例では、端末装置341及び342において、共通のVLAN−ID:X及びYが付与されるものとする。図示された端末装置341はタグ付与部451を備え、当該タグ付与部451はPC361及び電話機381の端末装置341に対する接続位置によってサービス系パケットとVoIP系音声とを識別するものとして説明するが、MACアドレス(MAC:A)の有無を端末装置341において検出することによっても、サービス系パケットかVoIP系の音声を識別しても良い。サービス系パケットが与えられると、タグ付与部451はサービス系に割り当てられたVLAN−ID:XとCoS:1とをパケットに付与し、図5に示されたように、CoS:1、VLAN−ID:X、及び、MAC:Aからなるタグを含むパケットを生成する。他方、VoIP系の音声である場合、タグ付与部51は当該VoIP系に定められたCoS:7、VLAN−ID:Y、及び、MAC:Bからなるタグを含むVoIP系パケットを生成する。
【0096】
同様に、PC362及び電話機382に接続された端末装置342も、タグ付与部452を備え、当該タグ付与部452において、図5に示すように、CoS:1、VLAN−ID:X、MAC:Cからなるタグを含むサービス系パケットを生成する一方、Cos:7、VLAN−ID:Y、MAC:Dからなるタグを含むVoIP系パケットを生成する。
【0097】
上述したように、端末装置341及び342から生成されるサービス系パケットには、共通のVLAN−ID:Xが含まれているが、MACアドレスが相違するため、両端末装置341、342からのサービス系パケットを識別できる。
【0098】
同様に、端末装置341及び342から生成されるVoIP系音声パケットには、共通のVLAN−ID:Yが含まれており、MACアドレス(MAC:B,MAC:C)が相違するため、両端末装置341、342からのVoIP系パケットを識別することはできる。
【0099】
しかしながら、経路情報としてのVLAN−ID:Yが共通であるため、当該VLAN−ID:Yにより、電話機381及び382を個別に識別して認証することはできない。尚、サービス系パケットについては、PC361、362の位置を特定する必要がないため、互いに共通のVLAN−ID:Xがパケットに含まれていても問題は生じない。
【0100】
上記した点を考慮して、図5に示された例では、端末装置341に接続されるCPE301に、端末装置341からのVLAN−ID:Yを当該端末装置341特有のVLAN−ID:Lに変更するタグ変更部471が設けられている。このタグ変更部471では、MAC:B及びCoS:7は変更されず、他方、サービス系パケットはそのまま通過する。
【0101】
他方、CPE302も、端末装置342から与えられるVLAN−ID:Yを当該端末装置342特有のVLAN−ID:Nに変更するタグ変更部472を備えている。ここで、VLAN−ID:NとVLAN−ID:Lとを互いに相違させることによって、端末装置341及び342(即ち、電話機381、382)の位置を個別に識別、認証できる。
【0102】
CPE301、302に接続された加入者収容装置20は、上記したタグを含むパケットを受けて、スイッチ50に出力する。サービス系共通のVLAN−ID:Xを検出して、サービス系パケットに割り当てられたVLAN上に、サービス系パケットを送出する。
【0103】
同様に、スイッチ50はVLAN−ID:L、VLAN−ID:Nとから、VoIP系音声パケットに定められたVLANを識別して、図1及び3に示されたBAS24に出力する。BAS24及びRADIUS26では、前述したように、電話機381、382の位置固定動作が行われる。
【0104】
図6を参照して、VLAN−IDを付与するための他の構成例を説明する。この構成例は、サービス系パケットにはユーザ共通のVLAN−IDを設定し、VoIP系パケットには、ユーザ毎に異なるVLAN−IDを設定する場合である。この例においても、端末装置341、342はVoIP系音声パケットをサービス系パケットに優先して出力する。
【0105】
このため、図6に示された端末装置341は当該端末装置341に接続された位置によって、PC361と電話機381の接続を識別するものとする。このことは、端末装置342においても同様である。このため、第1のタグ付加部521は、当該電話機381からの音声をパケット化する場合、電話機381固有のMACアドレス(MAC:B)を付与すると共に、当該端末装置341に定められたVLANを識別するVLAN−ID(VLAN−ID:Y)とCoS:7とを付与することによってタグを形成する。
【0106】
一方、当該端末装置341に接続されたCPE301はサービス系パケットに共通に設定されたVLANに接続するために、当該サービス系パケット用VLANを識別するVLAN−ID(VLAN−ID:X)を生成する必要がある。
【0107】
このため、図示されたCPE301の第2タグ付加部541は、MAC:Aのアドレスを有するサービス系パケットを受け、当該MAC:Cをそのまま通過させると共に、VLAN−ID:X及びCoS:1をタグとして付与する。または、VLANタグが付与されていないパケットにはタグを付与し、タグ付きのパケットは通過させる方法もある。この結果、CPE301の第2タグ付加部541から加入者収容装置22には、図6に示すように、CoS:1、VLAN−ID:X、MAC:Aからなるタグを含むサービス系パケットが出力され、当該パケットは、サービス系パケットに設定されたVLAN−ID:X上に送出される。
【0108】
一方、VoIP系音声パケットに付与されたタグはそのままCPE301から加入者収容装置20に出力される。この例の場合、VLAN−ID:Yを含むVoIP系音声パケットは、当該VLAN−ID:Yで識別されるVLAN上に出力される。
【0109】
同様に、PC362及び電話機382に接続された端末装置342は第1タグ付加部522を有し、当該第1タグ付加部522により、当該端末装置342に設定されたVLAN−ID:Z及びMAC:Dを生成し、CoS:7と共にタグを形成する。当該タグを含むVoIP系音声パケットはCPE302を通過して、直接、加入者収容装置20に送られ、当該VLAN−ID:Zで指示されたVLAN上に出力される。他方、MAC:Cを含むサービス系パケットは端末装置342を通過して、CPE302の第2タグ付加部542に供給される。
【0110】
第2タグ付加部542はサービス系パケットに共通なVLAN−ID:Xを付与すると共に、CoS:1を付与し、これによって、MAC:Cと共にタグを形成する。このようなタグを含むサービス系パケットはサービス系パケットに共通なVLAN:X上に出力される。
【0111】
これらVLAN上に出力されたサービス系パケット及びVoIP系音声パケットは図1及び3を参照して説明した手法により処理されるから、ここでは説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上説明したように、本発明に係るIP電話システムは、音声パケットにVLAN−IDを付与できる端末装置(VoIP−TA)を設けることにより、当該端末装置に接続される電話機等の機器の位置を識別、認証することができるため、電話機等の機器の位置を認識、固定でき、この結果、緊急電話番号に対する発信の際にも位置を認識することができる0AB〜J番号サービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の一実施形態に係るIP電話システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示されたIP電話システムの動作を説明するブロック図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るIP電話システムの構成を示すブロック図である。
【図4】図1及び図2のIP電話システムに適用できるVLAN−ID付与方式の一例を示すフロック図である。
【図5】VLAN−ID付与方式の他の構成例を示すブロック図である。
【図6】VLAN−ID付与方式の更に他の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0114】
20 IP電話システム
22 加入者収容装置(CO)
24 BAS
241、242 VR
26 RADIUS
261 サービス用サーバ
262 VoIP用サーバ
301、302 CPE
321、322 MC
341、342 端末装置(VoIP−TA)
361、362 PC
381、382 電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP網を介して電話サービスを行うのに使用されるユーザ側装置において、電話機と接続できると共に、前記電話機の接続されるべき回線の電話機用識別子を割り当てられた端末装置を備え、前記電話機用識別子を用いて、前記電話機の収容位置を認証及び固定できることを特徴とするユーザ側装置。
【請求項2】
請求項1において、前記電話機用識別子は当該電話機の回線に対応したVLAN(Virtual Local Area Network)−ID(Identifier)であることを特徴とするユーザ側装置。
【請求項3】
請求項2において、前記電話機用識別子として、前記VLAN−IDのほかに、前記電話機固有のMAC(Media Access Control)アドレスを含んでいることを特徴とするユーザ側装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記端末装置に接続された顧客宅内装置(Customer Premises Equipment)を更に備えていることを特徴とするユーザ側装置。
【請求項5】
請求項1において、前記端末装置は、前記電話機からの発信を検出し、当該電話機固有の電話機用MACアドレスを付与する手段を備え、当該端末装置に接続されるCPEは前記電話機用MACアドレスを検出して、当該電話機用識別子として、当該電話機用回線をあらわすVLAN−IDを生成する手段を有することを特徴とするユーザ側装置。
【請求項6】
請求項5において、前記CPEは前記VLAN−IDの生成の際、前記電話機のサービスクラス(CoS)をあらわすサービスクラス(CoS)番号をも生成されることを特徴とするユーザ側装置。
【請求項7】
請求項6において、前記CPEは前記端末装置からの前記電話機用MACアドレスをそのまま出力することを特徴とするユーザ側装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、前記端末装置はコンピュータにも接続できる構成を備え、前記コンピュータには、当該コンピュータの接続されるべき回線をあらわすコンピュータ用識別子として、VLAN−IDが割り当てられており、当該コンピュータ用VLAN−IDは前記電話機のVLAN−IDとは異なっていることを特徴とするユーザ側装置。
【請求項9】
請求項1において、前記端末装置は、前記電話機からの発信を検出して、当該電話機用識別子として、前記電話機及び他の電話機に対して共通に割り当てられた回線をあらわす共通VLAN−IDを付与する付与部を備え、前記端末装置に接続されるCPEは前記共通VLAN−IDを前記電話機に割り当てられた固有VLAN−IDに変換する変更手段とを備えていることを特徴とするユーザ側装置。
【請求項10】
請求項9において、前記端末装置の前記付与部は、前記電話機からの発信の際、当該電話機固有のMACアドレス及びサービスクラス(CoS)番号をも付与し、前記共通VLAN−IDと共に、タグとして前記CPEに出力することを特徴とするユーザ側装置。
【請求項11】
請求項10において、前記変更手段は、前記タグのうち、前記共通VLAN−IDを前記固有VLAN−IDに変更し、前記タグのMACアドレス及びCoS番号をそのまま出力することを特徴とするユーザ側装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかにおいて、前記端末装置の前記付与部は、前記コンピュータからの発信の際、当該コンピュータをあらわすMACアドレスを検出して、当該コンピュータ及び他のコンピュータに共通に割り当てられた回線をあらわすコンピュータ用共通VLAN−IDを付与し、前記CPEは前記コンピュータ用共通VLAN−IDを変更することなく出力することを特徴とするユーザ側装置。
【請求項13】
請求項12において、前記端末装置の付与部は、更に、前記コンピュータのデータ通信に割り当てられたCoS番号をも付与し、前記CPEは、前記コンピュータのMACアドレス及びCoS番号を変更することなく出力することを特徴とするユーザ側装置。
【請求項14】
請求項1において、前記端末装置に接続される前記電話機には、他のユーザの電話機とは、互いに異なる電話機用固有VLAN−IDが付与されており、前記端末装置に接続される前記コンピュータには、他のユーザのコンピュータと共通のコンピュータ用共通VLAN−IDが付与されていることを特徴とするユーザ側装置。
【請求項15】
請求項14において、前記端末装置は、前記電話機からの発信を検出し、当該電話機用固有のVLAN−IDと、当該電話機固有のMACアドレスを付与する第1タグ付加部を備え、当該端末装置に接続される前記コンピュータからのコンピュータMACアドレスをそのまま前記CPEに出力することを特徴とするユーザ側装置。
【請求項16】
請求項15において、前記CPEは、前記端末装置からのコンピュータMACアドレスを検出し、前記コンピュータ用共通VLAN−IDを付与し、前記コンピュータ用MACアドレスと共に出力する第2タグ付加部を含み、前記端末装置からの前記電話機固有のVLAN−ID及びMACアドレスをそのまま出力することを特徴とするユーザ側装置。
【請求項17】
IP網を介して電話サービスを行うIP電話システムにおいて、電話機を収容できると共に、前記電話機固有の電話機用識別子を設定する端末装置を備えたユーザ側装置と、前記電話機用識別子を用いて、前記電話機の収容位置を認証する上位装置とを有することを特徴とするIP電話システム。
【請求項18】
請求項17において、前記電話機用識別子は前記IP電話サービス用電話機に定められた固有の電話機用VLAN−IDを含んでいることを特徴とするIP電話システム。
【請求項19】
請求項18において、前記上位装置は、前記端末装置を収容する加入者収容装置と、前記電話機用固有VLAN−IDを前記端末装置に割り当てられた所定ポートを備え、前記電話機用固有VLAN−IDと前記所定ポートの番号とを用いて、前記電話機の収容位置を認証するサーバ手段とを有することを特徴とするIP電話システム。
【請求項20】
請求項19において、前記サーバ手段は、互いに異なる前記端末装置を互いに異なるポートに収容し、前記各端末装置の前記電話機用固有VLAN−ID及び所定ポート番号に応じた経路を設定する第1のサーバと、第1のサーバからの前記各電話機用固有VLAN−ID及び所定ポート番号から前記各端末装置の位置を認証する第2のサーバとを有することを特徴とするIP電話システム。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれかにおいて、前記端末装置には、ユーザIDとユーザパスワードとが割り当てられており、前記第2のサーバは、前記ユーザID及びユーザパスワードと、前記電話機固有VLAN−IDとの関係を示すテーブルを備え、前記ユーザID及びユーザパスワードと前記電話機固有VLAN−IDとが割り当てられたものと一致するか否かを検出することにより、前記端末装置に接続された電話機の位置を認証すると共に、前記端末装置が所定の位置に接続されているか否かを検出することを特徴とするIP電話システム。
【請求項22】
請求項21において、前記第2のサーバは前記ポート番号をも参照して各端末装置の認証を行うことを特徴とするIP電話システム。
【請求項23】
請求項21において、前記端末装置は前記割り当てられたユーザID及びユーザパスワードを前記第2のサーバに出力することを特徴とするIP電話システム。
【請求項24】
請求項20において、前記第1のサーバがBAS(Broadband Access Server)であり、他方、第2のサーバがRADIUS(Remote Authentication Dial−In User Server)であることを特徴とするIP電話システム。
【請求項25】
請求項17において、前記各端末装置は、前記電話機以外にもコンピュータをも収容できる構成を備え、前記各端末装置は当該コンピュータに対して前記電話機用VLAN−IDとは異なるコンピュータ用VLAN−IDを付与することを特徴とするIP電話システム。
【請求項26】
請求項17において、前記各端末装置は、前記電話機以外に、前記コンピュータを収容できる構成を備え、前記各端末装置は当該コンピュータには識別子を付与しないことを特徴とするIP電話システム。
【請求項27】
請求項17〜26のいずれかにおいて、前記端末装置はVA(Voice Adapter)であることを特徴とするIP電話システム。
【請求項28】
IP網を介して電話サービスを行うIP電話システムに使用される電話機の位置固定方法において、前記各電話機の接続されるべき回線をあらわす前記各電話機固有の電話機用識別子を付与しておき、当該電話機用識別子を利用して、前記各電話機の位置を認証、固定することを特徴とする電話機の位置固定方法。
【請求項29】
請求項28において、前記電話機用識別子はVLAN−IDを含み、前記各電話機の位置を固定する際には、前記VLAN−IDが正規のVLAN−IDであるか否かを判定することによって、前記各電話機の位置固定を行うことを特徴とする電話機の位置固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−311159(P2006−311159A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130715(P2005−130715)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(598069423)株式会社ケイ・オプティコム (9)
【Fターム(参考)】