説明

ライムキルンの排熱回収方法

【課題】 製紙工業における石灰再生処理装置ライムキルンの排熱を有効に熱回収するシステムを提供する。
【解決手段】ライムキルン110の排ガス流路の集塵装置121と脱硫装置128の間に排ガス中の硫黄酸化物による酸露点腐食を防止するためにPFA又はFEPフッ素樹脂ライニングを施した熱交換器130を配し、排ガス中に含まれる硫黄酸化物の露点以下のガス温度まで熱回収することで、大きな熱回収をすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙工業における、ライムキルンの排熱の回収に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
製紙工業における苛性化工程では緑液と生石灰(CaO)から白液を製造するが、副産物として炭酸カルシュームのスラッジである石灰泥(CaCO)ができる。石灰焼成工程ではこの石灰泥を脱水した後、ライムキルンを用い水分を多量に含む(15%〜30%)石灰泥(CaCO)を乾燥し、焼成して化成化工程で使用可能な生石灰(CaO)に再生する。
【0003】
そのライムキルン焼成工程では石灰泥を約1200℃前後まで昇温し、石灰泥(CaCO)を生石灰(CaO)と炭酸ガス(CO)に分解する。その際、乾燥、焼成用空気は焼成された生石灰(CaO)と熱交換され、ライムキルンに吹き込まれ、重油バーナーにより1400℃〜1500℃まで昇温され、キルンに連続的に投入される石灰泥と熱交換され200℃〜300℃まで温度低下し後、排ガス処理装置に送られる。
【0004】
生石灰の粉塵を多量に含む排ガスは、まず除塵装置に投入される。バグフィルター、マルチサイクロン、電気集塵機などの除塵装置により、0.01〜0.5g/Nm程度に除塵された排ガスは、更にスクラバー等の湿式排ガス処理装置を通過し、重油バーナーで燃焼された重油の硫黄分による硫黄酸化物も除去され、排ガス温度も60〜80℃まで低下し、大気に排出されている。
【0005】
一方、ライムキルン排ガスには石灰泥に含まれている、多量の水分が蒸発し、蒸気として混在しているため、排ガス量に対してガスが持つ熱量は大きい。
【0006】
以上のようにライムキルンの排ガスは、200〜300℃程度まで既に排熱回収がされていること、除塵前の排ガスに粉塵が多く含まれていること、排ガス中に硫黄酸化物が含まれているため、更に排熱回収を計画しても硫黄酸化物による酸露点を考慮して排熱回収を試みても、大きな熱量回収が出来ないこと、ライムキルン自身が多量の熱を放熱していること、ガスーガスによる熱交換では設備の近くに排熱の利用箇所がないことなど、多くの問題点を抱えているため排熱回収がなされていなかった。

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、製紙工業のライムキルン設備において、排ガス中に含まれる粉塵を考慮し、硫黄酸化物による露点腐食を防止できる熱交換器を設置し回収した熱量を容易に移動できる媒体にし、有効利用が可能な、出来るだけ高い温度で熱回収することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題に対し、ライムキルンの排ガスフローの中で上流に集塵装置を配し、下流にスクラバー等の湿式排ガス処理設備を配したフローに限定して、その設備の間に硫黄酸化物による露点腐食に有効なPFAフッ素樹脂によって伝熱面および露点温度以下のガスに接する金属面を被覆した熱交換器を配することにより、容易に入手可能であり、且つ搬送しやすい水に熱量を吸収させ排ガスの酸露点以下まで熱量を回収することを、最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明はPFAフッ素樹脂被服の伝熱面を持つ熱交換器を用い排ガス中に含まれる硫黄酸化物の酸露点以下まで熱回収することによりライムキルン排ガスの特徴である多量の水分を含む排ガスから蒸気の凝縮点以下まで排ガス温度を下げ、蒸気の持つ大きな熱量である潜熱を熱回収することに利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1はライムキルンにPFAフッ素樹脂被服の熱交換器を配した実施方法を示した説明図である。(実施例1)
【図2】図2はPFAフッ素樹脂被服を施し排ガス中の酸による露点腐食を防止し、且つ片側支持により機材の膨張収縮によるストレスを防止した熱交換器の説明図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係わるライムキルン110の排熱回収システムの概要を説明するための図である。なお、図1に示す熱交換器130は後述するように給水管125と温水回収管126を有し、高温水の有効利用箇所に供給され省エネルギーが図られる。
【0013】
図1においてライムキルン110はロングキルンと称されるライムキルンの例であり、ライディングリング111、ガースギア112、石灰泥(CaCO)フィードコンベア113、熱回収用サテライトクーラー114、燃焼フード115、燃焼一次空気吹込口116、重油バーナー117、排気温度計118、排ガスO計119、排ガス用ダクト120、生石灰(CaO)排出口131を有している。
【0014】
ライムキルン110より排出された排ガスは電気集塵機またはマルチサイクロンなどの集塵装置121を経て、IDF誘引送風機122、PFAフッ素樹脂ライニング熱交換器130に至る。PFAフッ素樹脂ライニング熱交換器130の入口には温度センサ123を設け、PFAフッ素樹脂の安全使用最高温度250℃以下を確保するため常温空気混入用冷却ファン124を設けインバータ制御により熱交換器入口温度を250℃以下に温度制御される。PFAフッ素樹脂ライニング熱交換器で露点温度以下まで熱を放出したガスは酸による露点腐食防止のためのPFAフッ素樹脂ライニングダクト127を経て、スクラバーなどの排煙脱硫装置128に至り、更なる除塵及び脱硫され排気筒129に至る。
【0015】
図2は実施例1で示したPFAフッ素樹脂ライニング熱交換器130の詳細を説明した図である。ライムキルン排ガス入口201a、ライムキルン排ガス出口201b、温水入口200a、温水出口200b、本体PFAフッ素樹脂ライニング205により構成され、伝熱管202は片側に固定されており、ガス側温度の変化による伝熱管202の膨張収縮を他の一方に自由に逃がすように設計されている。また伝熱管202と熱膨張率の違うPFAフッ素樹脂ライニング203の伸びもU字管側に逃がせる構造となっている。
【産業上の利用可能性】
【0016】
製紙工業の石灰再生プラントとしてのライムキルンの熱回収は現在のところ、石灰再生プラント内で利用されるに留まっている。それ以上の熱回収は排ガス中の硫黄酸化物より派生する酸露点腐食による設備の劣化を防止するため、および石灰再生プラント近くに有効な熱回収箇所が無いために、行われていないのが現状である。また回収した熱をどう利用するかも大きな問題である。製紙工業においては多量の40℃前後の温排水があり、その熱量は一部しか使用されていない。一方、晒し工程においては、80℃前後の多量の洗浄温水を必要とし、一部熱回収による温水を使用しているが、その量は排熱回収だけでは不足し、フレッシュ蒸気により加熱製造されている。本発明は、上記問題点を解決し熱回収を有効として大きな省エネを図り、且つ地球温暖化防止にも役立つものである。
【符号の説明】
【0017】
110 ライムキルン、111 ライディングリング、112 ガースギア、113 石灰泥(CaCO)フィードコンベア、114 サテライトクーラー、115 燃焼フード、116 燃焼一次空気吹込口、117 重油バーナー、118 排気温度計、119 排ガスO計、120 排ガス用ダクト、121 集塵装置、122 IDF誘引送風機、 123 熱交換器入口温度センサ、124 常温空気混入用冷却ファン、125 給水管、126 温水回収管、127 PFAフッ素樹脂ライニングダクト、128 排煙脱硫装置、129 排気筒、130 PFAフッ素樹脂ライニング熱交換器、131 生石灰(CaO)排出口、200a 温水入口、200b 温水出口、201a 排ガス入口、201b 排ガス出口、202 伝熱管、203 PFAフッ素樹脂ライニング、204 伝熱管固定部、205 本体PFAフッ素樹脂ライニング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙工業のライムキルンから排出された排ガスの流れの上流に除塵装置、下流に脱硫装置が配されている設備の間に硫黄酸化物による露点腐食を防止するためにPFAフッ素樹脂ライニングを施した熱交換器を配したことを特徴とするライムキルン排熱回収システム。
【請求項2】
製紙工業のライムキルン排ガスの熱回収を目的とした、硫黄酸化物による露点腐食を防止するためのPFAフッ素樹脂ライニングを施した熱交換器が設置されたシステムにおいて、且つ熱交換器入口での排ガス温度が250℃以上の設備条件の場合、熱回収用熱交換器の上流に外気導入により熱交換器入口排ガス温度をPFAフッ素樹脂の安全使用温度の250℃以下に低下させることを目的とした希釈空気混入用送風機を設けたシステム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−1641(P2011−1641A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143799(P2009−143799)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(594015602)
【Fターム(参考)】