説明

ラインヘッド及び該ラインヘッドを用いた画像形成装置

【課題】スポットの形成に関わる光ビームの光量の過度な減少を抑制して、良好なスポット形成の実現を可能にする技術を提供する。
【解決手段】被走査面に光ビームを結像するラインヘッドであって、透明基板の裏面上に形成された発光素子を複数有する発光素子グループと、その一方面が透明基板の表面に当接するとともにその他方面が結像レンズに対向するように配置され、更に、発光素子グループに対して一方面から他方面に貫通して穿設された導光孔を有する遮光部材とを備え、透明基板の表面のうち発光素子から射出された光ビームが全反射されることなく通過可能である領域を通過領域としたとき、導光孔は、その一方面における開口部が複数の発光素子それぞれの通過領域の全てを含むように穿設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被走査面に対して光ビームを走査するラインヘッド及び該ラインヘッドを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のラインヘッドとしては、例えば特許文献1に記載のように、複数の発光素子を配置して構成される発光素子グループ(同特許文献における「発光素子アレイ」)を用いたものが提案されている。さらに、特許文献1記載のラインヘッドでは、複数の発光素子グループを並べて配置するとともに、該複数の発光素子グループに対して一対一で対応して複数の結像レンズを配置している。そして、発光素子グループの発光素子から射出された光ビームは、該発光素子グループに対向する結像レンズにより結像されて、被走査面にスポットが形成される。
【0003】
【特許文献1】特開2000−158705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなラインヘッドにおいては、なるべく多くの光量でスポットを形成するという観点から、複数の発光素子それぞれから射出される光ビームをできるだけ対応する結像レンズに入射させることが好適である。しかしながら、発光素子から結像レンズに至るまでの構成が適切でないことにより、発光素子から射出された光ビームのうち結像レンズに入射する光ビームの光量が過度に減少する場合があった。その結果、スポット形成に関わる光ビームの光量が過度に減少し、良好なスポット形成が実現できない場合があった。
【0005】
この発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、複数の発光素子から射出された光ビームを、該複数の発光素子に対応する結像レンズで被走査面に結像するラインヘッドにおいて、スポットの形成に関わる光ビームの光量の過度な減少を抑制して、良好なスポット形成の実現を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかるラインヘッドは、被走査面に光ビームを結像してスポットを形成するラインヘッドであって、上記目的を達成するために、光ビームを透過可能な透明基板と、透明基板の裏面上に形成された発光素子を複数有する発光素子グループと、透明基板の表面側に発光素子グループに対応して配置されるとともに、発光素子グループに属する複数の発光素子から射出される光ビームを被走査面に結像する結像レンズと、その一方面が透明基板の表面に当接するとともにその他方面が結像レンズに対向するように配置され、更に、発光素子グループに対して一方面から他方面に貫通して穿設された導光孔を有する遮光部材とを備え、透明基板の表面のうち発光素子から射出された光ビームが該表面において全反射されることなく通過可能である領域を通過領域としたとき、導光孔は、その一方面における開口部が複数の発光素子それぞれの通過領域の全てを含むように穿設されていることを特徴としている。
【0007】
このように構成されたラインヘッドは、発光素子グループが有する複数の発光素子それぞれから射出された光ビームを、対応する結像レンズにより結像することで、被走査面にスポットを形成する。よって、良好なスポット形成という観点から、複数の発光素子それぞれから射出される光ビームをできるだけ対応する結像レンズに入射させることが好適である。しかしながら、発光素子から結像レンズに至るまでの構成が適切でないことにより、発光素子から射出された光ビームのうち結像レンズに入射する光ビームの光量が過度に減少する場合がある。
【0008】
つまり、上述のように構成されたラインヘッドは、その一方面が透明基板の表面に当接するとともにその他方面が結像レンズに対向するように配置された遮光部材を、備えている。更に、かかる遮光部材は、発光素子グループに対してその一方面から他方面に貫通して穿設された導光孔を有している。よって、透明基板を介して発光素子グループから射出される光ビームは、遮光部材に穿設された導光孔によって対応する結像レンズへと導かれる。つまり、結像レンズに入射可能な光ビームは、該結像レンズに対応する導光孔の一方面における開口部を通過した光ビームのみである。したがって、できるだけ多くの光ビームを結像レンズに入射するにあたっては、発光素子から射出されて透明基板の表面を通過してきた光ビームを、効率的に導光孔の一方面における開口部に通過させることが好適である。
【0009】
しかしながら、発光素子グループに対する開口部の構成が適切でないと、発光素子から射出されて透明基板の表面を通過してきた光ビームの一部が該開口部を通過できない場合がある。その結果、結像レンズに入射する光ビームの光量が過度に減少する場合がある。
【0010】
これに対して、この発明にかかるラインヘッドは次のように構成されている。即ち、この発明にかかるラインヘッドでは、導光孔は、その一方面における開口部が複数の発光素子それぞれの通過領域の全てを含むように穿設されている。ここで、通過領域とは、透明基板の表面のうち発光素子から射出された光ビームが該表面において全反射されることなく通過可能である領域を言う。つまり、発光素子グループが有する複数の発光素子それぞれの通過領域を通過する光ビームは、略全て導光孔の一方面における開口部を通過することとなる。よって、発光素子から結像レンズに入射する光ビームの光量の過度な減少を抑制して、良好なスポット形成の実現が可能となる。
【0011】
また、上述のラインヘッドにおいて、導光孔を、結像レンズの光軸に対して対称な直柱体状に穿設しても良い。ここで、直柱体とは、底面と側面が直交する柱体を言う。つまり、導光孔の一方開口部及び他方開口部のそれぞれが、直柱体の底面に相当する。ここで、導光孔の一方開口部・他方開口部はそれぞれ、導光孔の一方面における開口部・導光孔の他方面における開口部を意味する。このように構成されたラインヘッドでは、互いに合同関係にある導光孔の一方開口部及び他方開口部が、それぞれの対称軸を共通にしつつ、結像レンズの光軸方向に並ぶこととなる。したがって、導光孔の一方開口部を通過した光ビームを、効率的に該導光孔の他方開口部に導いて結像レンズに入射させることが可能となる。よって、より良好なスポット形成が可能となり好適である。
【0012】
また、導光孔が円柱状に穿設されているラインヘッドにあっては、次のように構成しても良い。つまり、複数の発光素子のうち結像レンズの光軸から最も離れた発光素子を最外素子と定義し、該最外素子の通過領域を最外通過領域と定義したとき、導光孔の一方面における開口部の半径が、該最外通過領域のうち結像レンズの光軸から最も離れた位置と該光軸との距離よりも大きいくなるように、ラインヘッドを構成しても良い。このように構成されたラインヘッドでは、導光孔は、その一方面における開口部が複数の発光素子それぞれの通過領域の全てを含むように穿設されることとなる。したがって、発光素子グループが有する複数の発光素子それぞれの通過領域を通過する光ビームは、略全て導光孔の一方面における開口部を通過することとなる。よって、最外素子から結像レンズに入射する光ビームの光量の過度な減少を抑制して、良好なスポット形成の実現が可能となり好適である。
【0013】
また、透明基板の厚さがtであるとともに屈折率がnであるラインヘッドにあっては、次のように構成しても良い。つまり、複数の発光素子グループそれぞれについて、最外素子と結像レンズの光軸との距離をaと、導光孔の一方面における開口部の半径をROとしたとき、次式
【数1】

を満たすように、ラインヘッドを構成しても良い。このように構成されたラインヘッドでは、導光孔は、その一方面における開口部が複数の発光素子それぞれの通過領域の全てを含むように穿設されることとなる。したがって、発光素子グループが有する複数の発光素子それぞれの通過領域を通過する光ビームは、略全て導光孔の一方面における開口部を通過することとなる。よって、最外素子から結像レンズに入射する光ビームの光量の過度な減少を抑制して、良好なスポット形成の実現が可能となり好適である。
【0014】
また、複数の発光素子グループそれぞれについて、複数の発光素子が結像レンズの光軸に対して対称に配置されるように、ラインヘッドを構成しても良い。なんとなれば、対称配置により距離aが極小値をとり、上記不等式を満足させるのに有利に作用するからである。
【0015】
また、結像レンズの半径が、導光孔の他方面における開口部の周縁部のうち光軸から最も離れた点と該光軸との距離よりも大きくなるように、ラインヘッドを構成していも良い。特に、導光孔が円柱状に穿設されているラインヘッドにあっては、結像レンズの半径を、導光孔の他方面における開口部の半径よりも大きく構成しても良い。このように構成した場合、導光孔の他方面における開口部を、結像レンズが確実に覆うこととなる。よって、導光孔の他方面における開口部を通過した光ビームを、効率的に結像レンズに入射させることができ、より良好なスポット形成の実現が可能となり好適である。
【0016】
また、この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、その表面が副走査方向に搬送される潜像担持体と、潜像担持体の表面を被走査面として該潜像担持体表面にスポットを形成する上記ラインヘッドと同一構成を有する露光手段とを備えることを特徴としている。よって、発光素子から結像レンズに至るまでの構成が適切でないことに起因した、結像レンズに入射する光ビームの光量の過度な減少を抑制することが可能となる。その結果、最外素子に対応するスポットの形成に関わる光ビームの光量の過度な減少を抑制することができ、良好なスポットによる画像形成の実現が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置における画像形成ステーションの配置を示す図である。さらに、図3は図1の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリなどを有するメインコントローラMCに与えられると、このメインコントローラMCがエンジンコントローラECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラECがエンジン部EGおよびヘッドコントローラHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0018】
この実施形態にかかる画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラMC、エンジンコントローラECおよびヘッドコントローラHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0019】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0020】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モータに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナ27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0021】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラを備えている。この帯電ローラは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0022】
ラインヘッド29は、感光体ドラム21の軸方向(図1の紙面に対して垂直な方向)に配列された複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、これらの発光素子から、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に向けて光を照射して該表面に静電潜像を形成する。
【0023】
現像部25は、その表面にトナーが担持する現像ローラ251を有する。そして、現像ローラ251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラ251に印加される現像バイアスによって、現像ローラ251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラ251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0024】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、後に詳述する転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0025】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナ27が設けられている。この感光体クリーナ27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0026】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラ82と、図1において駆動ローラ82の左側に配設される従動ローラ83(ブレード対向ローラ)と、これらのローラに張架され駆動ローラ82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0027】
カラーモード実行時は、図1および図2に示すように全ての一次転写ローラ85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0028】
いわゆるタンデム方式の画像形成装置では、感光体ドラム21から転写ベルト81にトナー像が一次転写される一次転写位置は、各画像形成ステーションごとに異なった位置となる。この実施形態においては、イエロー用画像形成ステーション2Y、マゼンタ用画像形成ステーション2M、シアン用画像形成ステーション2Cおよびブラック用画像形成ステーション2Kが転写ベルト81の移動方向に沿ってこの順番に配置されている。したがって、イエロー一次転写位置TR1yとマゼンタ一次転写位置TR1mとは距離Lym、マゼンタ一次転写位置TR1mとシアン一次転写位置TR1cとは距離Lmc、シアン一次転写位置TR1cとブラック一次転写位置TR1kとは距離Lckだけ離隔している。
【0029】
一方、モノクロモード実行時は、4個の一次転写ローラのうち、一次転写ローラ85Y、85Mおよび85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Cから離間させるとともにブラック色に対応した一次転写ローラ85Kのみを画像形成ステーション2Kに当接させることで、モノクロ用の画像形成ステーション2Kのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、一次転写ローラ85Kと画像形成ステーション2Kとの間にのみ一次転写位置TR1kが形成される。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラ85Kに一次転写バイアスを印加することで、画像形成ステーション2Kに設けられた感光体ドラム21の表面上に形成されたブラックトナー像を、一次転写位置TR1kにおいて転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0030】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラ85Kの下流側で且つ駆動ローラ82の上流側に配設された下流ガイドローラ86を備える。この下流ガイドローラ86は、一次転写ローラ85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラ85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0031】
また、下流ガイドローラ86に巻き掛けられた転写ベルト81の表面に対向してパッチセンサ89が設けられている。パッチセンサ89は例えば反射型フォトセンサからなり、転写ベルト81表面の反射率の変化を光学的に検出することにより、必要に応じて転写ベルト81上に形成されるパッチ画像の位置やその濃度などを検出する。
【0032】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラ79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラ79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラ対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラ82と二次転写ローラ121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0033】
二次転写ローラ121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラ駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラ131と、この加熱ローラ131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラ131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラ1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラ1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラ131の周面に押し付けることで、加熱ローラ131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0034】
前記した駆動ローラ82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラ121のバックアップローラとしての機能も兼ねている。駆動ローラ82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラ121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0035】
また、この装置では、ブレード対向ローラ83に対向してクリーナ部71が配設されている。クリーナ部71は、クリーナブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラ83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラ83と一体的に構成されている。
【0036】
なお、この実施形態においては、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナ27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラECに伝達されるとともに、各メモリ内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0037】
図4は、本発明にかかるラインヘッドの一実施形態の概略を示す斜視図である。また、図5は、本発明にかかるラインヘッドの一実施形態の副走査方向の断面図である。本実施形態におけるラインヘッド29(露光手段)は、主走査方向MDを長手方向とするケース291を備えるとともに、かかるケース291の両端には、位置決めピン2911とねじ挿入孔2912が設けられている。そして、かかる位置決めピン2911を、感光体ドラム21を覆うとともに感光体ドラム21に対して位置決めされた感光体カバー(図示省略)に穿設された位置決め孔(図示省略)に嵌め込むことで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決めされる。そして更に、ねじ挿入孔2912を介して固定ねじを感光体カバーのねじ孔(図示省略)にねじ込んで固定することで、ラインヘッド29が感光体ドラム21に対して位置決め固定される。
【0038】
ケース291は、感光体ドラム21の表面に対向する位置にマイクロレンズアレイ299を保持するとともに、その内部に、該マイクロレンズアレイ299に近い順番で、遮光部材297及びガラス基板293を備えている。また、ガラス基板293の裏面(ガラス基板293が有する2つの面のうちマイクロレンズアレイ299と逆側の面)には、複数の発光素子グループ295が設けられている。即ち、複数の発光素子グループ295は、ガラス基板293の裏面に、主走査方向MD及び副走査方向SDに互いに所定間隔だけ離れて2次元的に配置されている。ここで、複数の発光素子グループ295の各々は、複数の発光素子を2次元的に配列して構成されている。また、本実施形態では、発光素子として有機EL(Electro-Luminescence)を用いる。つまり、本実施形態では、ガラス基板293の裏面に有機ELを発光素子として配置している。そして、複数の発光素子それぞれから感光体ドラム21の方向に射出される光ビームは、ガラス基板293(透明基板)を介して遮光部材297へ向うこととなる。
【0039】
遮光部材297には、複数の発光素子グループ295に対して一対一で複数の導光孔2971が穿設されている。また、かかる導光孔2971は、ガラス基板293の法線と平行な線を中心軸として遮光部材297を貫通する略円柱状の孔として穿設されている。つまり、発光素子グループ295に属する発光素子2951から出た光は、該発光素子グループ295に対応する導光孔2971によって、マイクロレンズアレイ299に導かれる。そして、遮光部材297に穿設された導光孔2971を通過した光ビームは、マイクロレンズアレイ299により、感光体ドラム21の表面にスポットとして結像されることとなる。
【0040】
図5に示すように、固定器具2914によって、裏蓋2913がガラス基板293を介してケース291に押圧されている。つまり、固定器具2914は、裏蓋2913をケース291側に押圧する弾性力を有するとともに、かかる弾性力により裏蓋2913を押圧することで、ケース291の内部を光密に(つまり、ケース291内部から光が漏れないように、及び、ケース291の外部から光が侵入しないように)密閉している。なお、固定器具2914は、ケース291の長手方向に複数箇所設けられている。また、発光素子グループ295は、封止部材294により覆われている。
【0041】
図6は、マイクロレンズアレイの概略を示す斜視図である。また、図7は、マイクロレンズアレイの主走査方向の断面図である。マイクロレンズアレイ299は、ガラス基板2991を有するとともに、該ガラス基板2991を挟むように一対一で配置された2枚のレンズ2993A,2993Bにより構成されるレンズ対を複数有している。なお、これらレンズ2993A,2993Bは樹脂により形成することができる。
【0042】
つまり、ガラス基板2991の表面2991Aには複数のレンズ2993Aが配置されるとともに、複数のレンズ2993Aに一対一で対応するように、複数のレンズ2993Bがガラス基板2991の裏面2991Bに配置されている。また、レンズ対を構成する2枚のレンズ2993A,2993Bは、相互に光軸OAを共通にする。また、これら複数のレンズ対は、複数の発光素子グループ295に一対一で配置されている。なお、この明細書では、一対一の対を成すレンズ対2993A,2993Bと、かかるレンズ対によって挟まれたガラス基板2991とから成る光学系を「マイクロレンズML」と称することとする。そして、これら複数のレンズ対(マイクロレンズML)は、発光素子グループ295の配置に対応して、主走査方向MD及び副走査方向SDに互いに所定間隔だけ離れて2次元的に配置されている。
【0043】
複数のマイクロレンズMLのそれぞれは、対応する発光素子グループ295の発光素子2951からの光ビームを、所定の光学倍率で感光体ドラム21の表面に結像させる。このとき、発光素子2951から射出された光ビームは、マイクロレンズMLの光軸OAに対して180°回転して感光体ドラム21の表面に結像される。つまり、感光体ドラム21の表面には、発光素子2951の倒立像としてスポットが形成される。このように、光軸OAに対して反転した像を感光体ドラム21の表面に結像するマイクロレンズMLの特性を、本明細書では「反転特性」と称することとする。
【0044】
図8は、発光素子グループ、遮光部材及びマイクロレンズの関係を示す図である。同図が示すように、厚さt且つ屈折率nのガラス基板293(透明基板)の裏面に、複数の発光素子グループ295が離散的に並べて配置されている。そして、これら複数の発光素子グループ295に対して、一対一で対応して複数のマイクロレンズML(結像レンズ)が配置されている。また、遮光部材297は、その一方面がガラス基板の表面に当接するとともにその他方面が複数のマイクロレンズMLに対向するように配置されている。そして、遮光部材297には、複数の発光素子グループ295に対して一対一で複数の導光孔2971が、遮光部材297の一方面から他方面に貫通して穿設されている。つまり、導光孔2971は、遮光部材297の一方面に一方開口部OP2971Aを、遮光部材297の他方面に他方開口部OP2971Bを有する。また、これら複数の導光孔2971は、対向するマイクロレンズMLの光軸OAに対して対称な直柱体状に、より具体的には円柱状に穿設されている。つまり、導光孔2971の一方開口部OP2971A及び他方開口部OP2971Bのそれぞれが、直柱体の底面に相当する。なお、本明細書において、「直柱体」とは底面と側面が直交する柱体を言う。また、これら一方開口部OP2971A及び他方開口部OP2971Bの径は、マイクロレンズMLの径と略等しく設定されている。
【0045】
このように、本実施形態におけるラインヘッド29は、複数のマイクロレンズMLに対して一対一で穿設された複数の導光孔2971を有する遮光部材297を備えている。よって、ガラス基板293(透明基板)を介して発光素子グループ295から射出される光ビームは、遮光部材297に穿設された導光孔2971により、対向するマイクロレンズML(結像レンズ)へと導かれる。つまり、マイクロレンズMLに入射可能な光ビームは、該マイクロレンズMLに対応する導光孔2971の一方面における開口部OP2971Aを通過した光ビームのみである。
【0046】
図9は、発光素子グループ及びマイクロレンズの配置を示す図である。同図が示すように、本実施形態では、複数の発光素子グループ295が、主走査方向MD及び副走査方向SDに互いに所定間隔だけ離れて2次元的に配置されている。そして、複数の発光素子グループ295に一対一で対応して、複数のマイクロレンズML(結像レンズ)が配置されている。同図が示す通り、これら複数のマイクロレンズMLは、マイクロレンズMLを主走査方向MDにレンズ間隔LSで並べたレンズ列RMLを成すように、配置されている。そして、かかるレンズ列RMLは副走査方向SDに3列並ぶとともに、複数のマイクロレンズMLはそれぞれの主走査方向位置が異なるように配置されている。また、複数のマイクロレンズMLは、主走査方向位置が隣り合う2個のマイクロレンズMLの副走査方向位置が互いに異なるように、配置されている。つまり、主走査方向位置が隣り合う2個のマイクロレンズMLが互いに異なるレンズ列RMLに属するとともに、該2個のマイクロレンズMLの間の主走査方向距離がLS/mに略等しくなるように、複数のマイクロレンズMLは配置されている。ここで、値mは、副走査方向SDに並ぶレンズ列RMLの列数であり、本実施形態ではm=3となる。そして、マイクロレンズMLの半径RLは、レンズ間隔LSの半分よりも小さく設定されている。
【0047】
上述してきたように、発光素子2951から射出された光ビームは、ガラス基板293を通過した後、遮光部材293の導光孔2971の一方開口部OP2971Aへと入射する。また、ガラス基板293は、その厚さがtであるとともにその屈折率がnである。よって、発光素子2951から射出された光ビームの一部は、ガラス基板293の表面(ガラス基板293が有する2つの面のうち遮光部材297に当接する面)で全反射される。つまり、導光孔2971の一方開口部OP2971Aに入射可能な光ビームは、ガラス基板293の表面の通過領域TAを通過した光ビームのみである。ここで、通過領域TAとは、ガラス基板293(透明基板)の表面のうち発光素子から射出された光ビームが該表面において全反射されることなく通過可能である領域を言う。
【0048】
図10,11は、発光素子と通過領域との関係を示す図である。それぞれの図が示すように、通過領域TAは、発光素子2951を中心とした略円状となる。そして、ガラス基板293(透明基板)の厚さはtであり屈折率はnであるため、通過領域TAの半径rは
【数2】

で与えられる。この理由について説明する。
【0049】
通過領域TAの境界線上において、発光素子2951から射出された光ビームは全反射される。つまり、通過領域TAの同図右側端部である点Pにおいて、発光素子2951から射出された光ビームは全反射される。よって、ガラス基板293の表面の法線と発光素子2951から点Pに向う光ビームとが成す角度をθとすると、次式
【数3】

が成立する。
【0050】
ここで
【数4】

が成立することを利用すると、数3は次式のように変形できる。
【0051】
【数5】

【0052】
そして、数5を半径rについて解くと、次式
【数6】

が導かれる。
【0053】
図12は、通過領域と一方開口部OP2971Aとの関係を示す図である。上述の通り、導光孔2971の一方開口部OP2971Aに入射可能な光ビームは、ガラス基板293の表面の通過領域TAを通過した光ビームのみである。これに対して、本実施形態は、一方開口部OP2971Aが発光素子グループ295に属する複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAの全て(同図において破線で囲まれる領域)を含むように、導光孔2971を穿設している。
【0054】
ところで、本実施形態では、導光孔2971は円柱状に穿設されている。よって、一方開口部OP2971Aの形状は円となる。そこで、本実施形態では、一方開口部OP2971Aが発光素子それぞれの通過領域TAの全てを含むように構成するにあたり、具体的には、発光素子2951と一方開口部OP2971Aとの関係を次のように構成している。
【0055】
図13は、発光素子と一方開口部との関係を示す図である。ここで、用語について定義する。まず、発光素子グループ295に属する発光素子2951のうちマイクロレンズMLの光軸OAから最も離れた発光素子を最外素子OM2951と定義する。また、最外素子OM2951の通過領域を最外通過領域OMTAと定義する。そして、同図が示すように、本実施形態は、一方開口部OP2971Aの半径ROが、最外通過領域OMTAのうちマイクロレンズMLの光軸OAから最も離れた位置と該光軸OAとの距離Iよりも大きくなるように、ラインヘッド29を構成している。つまり、本実施形態は、一方開口部OP2971Aの半径ROを距離Iよりも大きくすることで、該一方開口部OP2971Aが複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAの全てを含むように(図12で示したように)、ラインヘッド29を構成している。
【0056】
また、上述の通り、通過領域TAの半径rは数2で与えられる。よって、本実施形態では、図13に示すように、距離Iは、次式
【数7】

で与えられることとなる。ここで、値aは、最外素子OM2951と該最外素子OM2951が属する発光素子グループ295に対応するマイクロレンズMLの光軸OAとの距離である。
【0057】
つまり、本実施形態では、一方開口部OP2971Aの半径ROが次式
【数1】

を満たすことで、一方開口部OP2971Aの半径ROは距離Iよりも大きくなる。そして、このように一方開口部OP2971Aを構成することで、一方開口部OP2971Aは、発光素子グループ295に属する複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAの全てを含むこととなる。
【0058】
図14及び図15は、本実施形態におけるラインヘッドの動作説明図である。以下に、図3、図14、図15を用いて本実施形態におけるラインヘッド29によるスポット形成動作を説明する。また、発明の理解を容易にするため、ここでは主走査方向MDに伸びる直線上に複数のスポットを等間隔で並べて形成する場合について説明する。本実施形態では、感光体ドラム21(潜像担持体)の表面(被走査面)を副走査方向SDに搬送しながら、ヘッド制御モジュール54により複数の発光素子2951を所定のタイミングで発光させることで、主走査方向MDに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0059】
つまり、本実施形態のラインヘッド29では、副走査方向位置SD1〜SD6の各位置に対応して、副走査方向SDに6個の発光素子列R2951が並べて配置されている(図14)。そこで、本実施形態では、同一の副走査方向位置にある発光素子列R2951は、略同一のタイミングで発光させるとともに、異なる副走査方向位置にある発光素子列R2951は、互いに異なるタイミングで発光させる。より具体的には、副走査方向位置SD1〜SD6の順番で、発光素子列R2951を発光させる。そして、感光体ドラム21の表面を副走査方向SDに搬送しながら、上述の順番で発光素子列R2951を発光させることで、該表面の主走査方向MDに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0060】
かかる動作を、図14,15を用いて説明する。まず最初に、副走査方向SDに最上流の発光素子グループ295A1,295A2,295A3,…に属する副走査方向位置SD1の発光素子列R2951の発光素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転特性を有するマイクロレンズMLにより、反転されて感光体ドラム表面に結像される。つまり、図15の「1回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。なお、同図において、白抜きの丸印は、未だ形成されておらず今後形成される予定のスポットを表す。また、同図において、符号295C1,295B1,295A1,295C2でラベルされたスポットは、それぞれに付された符号に対応する発光素子グループ295により形成されるスポットであることを示す。
【0061】
次に、同発光素子グループ295A1,295A2,295A3,…に属する副走査方向位置SD2の発光素子列R2951の発光素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転特性を有するマイクロレンズMLにより、反転されて感光体ドラム表面に結像される。つまり、図15の「2回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。ここで、感光体ドラム21の表面の搬送方向が副走査方向SDであるのに対して、副走査方向SDの下流側の発光素子列R2951から順番に(つまり、副走査方向位置SD1,SD2の順番に)発光させたのは、マイクロレンズMLが反転特性を有することに対応するためである。
【0062】
次に、副走査方向上流側から2番目の発光素子グループ295B1,295B2,295B3,…に属する副走査方向位置SD3の発光素子列R2951の発光素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転特性を有するマイクロレンズMLにより、反転されて感光体ドラム表面に結像される。つまり、図15の「3回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0063】
次に、同発光素子グループ295B1,295B2,295B3,…に属する副走査方向位置SD4の発光素子列R2951の発光素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転特性を有するマイクロレンズMLにより、反転されて感光体ドラム表面に結像される。つまり、図15の「4回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0064】
次に、副走査方向最下流の発光素子グループ295C1,295C2,295C3,…に属する副走査方向位置SD5の発光素子列R2951の発光素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転特性を有するマイクロレンズMLにより、反転されて感光体ドラム表面に結像される。つまり、図15の「5回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。
【0065】
そして最後に、同発光素子グループ295C1,295C2,295C3,…に属する副走査方向位置SD6の発光素子列R2951の発光素子2951を発光させる。そして、かかる発光動作により射出される複数の光ビームは、上述の反転特性を有するマイクロレンズMLにより、反転されて感光体ドラム表面に結像される。つまり、図15の「6回目」のハッチングパターンの位置にスポットが形成される。このように、1〜6回目までの発光動作を実行することで、主走査方向MDに伸びる直線上に複数のスポットを並べて形成する。
【0066】
上述のように、本実施形態におけるラインヘッド29は、その一方面がガラス基板293(透明基板)の表面に当接するとともにその他方面がマイクロレンズML(結像レンズ)に対向するように配置された遮光部材297を、備えている。更に、かかる遮光部材297は、発光素子グループ295に対してその一方面から他方面に貫通して穿設された導光孔2971を有している。よって、ガラス基板293を介して発光素子グループ295から射出される光ビームは、遮光部材297に穿設された導光孔2971によって対応するマイクロレンズMLへと導かれる。つまり、マイクロレンズMLに入射可能な光ビームは、該マイクロレンズMLに対応する導光孔2971の一方面における開口部OP2971Aを通過した光ビームのみである。したがって、できるだけ多くの光ビームをマイクロレンズMLに入射するにあたっては、発光素子2951から射出されてガラス基板293の表面を通過してきた光ビームを、効率的に導光孔2971の一方面における開口部OP2971Aに通過させることが好適である。
【0067】
しかしながら、発光素子グループ295に対する開口部OP2971Aの構成が適切でないと、発光素子2971から射出されてガラス基板293の表面を通過してきた光ビームの一部が該開口部OP2971Aを通過できない場合がある。その結果、マイクロレンズMLに入射する光ビームの光量が過度に減少する場合がある。
【0068】
これに対して、本実施形態のラインヘッド29では、導光孔2971は、その一方面における開口部OP2971Aが複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAの全てを含むように穿設されている。つまり、発光素子グループ295が有する複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAを通過する光ビームは、略全て導光孔2971の一方面における開口部OP2971Aを通過することとなる。よって、発光素子2951からマイクロレンズML(結像レンズ)に入射する光ビームの光量の過度な減少を抑制して、良好なスポット形成の実現が可能となる。
【0069】
また、本実施形態のラインヘッド29では、一方開口部OP2971Aの形状が円であることに着目して、ラインヘッド29を次のように構成している。即ち、一方開口部OP2971Aの半径ROが、最外通過領域OMTAのうちマイクロレンズMLの光軸OAから最も離れた位置と該光軸OAとの距離Iよりも大きくなるように、ラインヘッド29を構成している。より具体的には、最外通過領域OMTAの半径rが数2で与えられるという知見に基づいて、一方開口部OP2971Aの半径ROが、次式
【数1】

を満たすように、ラインヘッド29を構成している。つまり、本実施形態は、一方開口部OP2971Aの半径ROが上記不等式を満たすように要求することで、一方開口部OP2971Aが複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAの全てを含むように、ラインヘッド29を構成している。よって、発光素子2951からマイクロレンズML(結像レンズ)に入射する光ビームの光量の過度な減少を抑制して、良好なスポット形成の実現が可能となっている。
【0070】
また、上記実施形態では、発光素子グループ295が有する複数の発光素子2951がマイクロレンズMLの光軸OAに対して対称に配置されるように、ラインヘッド29を構成しており好適である。なんとなれば、対称配置により距離aが極小値をとり、上記不等式を満足させるのに有利に作用するからである。
【0071】
また、上述のラインヘッド29では、導光孔2971は、マイクロレンズMLの光軸OAに対して対称な直柱体状に穿設されている。よって、互いに合同関係にある導光孔2971の一方開口部OP2971A及び他方開口部OP2971Bが、それぞれの対称軸を共通にしつつ、マイクロレンズMLの光軸方向に並ぶこととなる。したがって、導光孔2971の一方開口部OP2971Aを通過した光ビームを、効率的に該導光孔2971の他方開口部OP2971Bに導いてマイクロレンズMLに入射させることが可能となる。よって、より良好なスポット形成が可能となり好適である。
【0072】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、他方開口部OP2971Bの径をマイクロレンズMLの径と略等しくしているが、マイクロレンズMLの径の設定方法はこれに限られず、次に示す設定例のように設定しても良い。
【0073】
図16は、マイクロレンズの径の別の設定例を示す図である。同図が示すように、この設定例では、マイクロレンズMLの半径RLは、他方開口部OP2971Bの半径Jよりも大きく設定されている。特に、このように構成した場合、導光孔2971の他方面における開口部OP2971Bを、マイクロレンズMLが確実に覆うこととなる。よって、導光孔2971の他方開口部OP2971Bを通過した光ビームを、効率的にマイクロレンズMLに入射させることができ、より良好なスポット形成の実現が可能となり好適である。
【0074】
また、上記実施形態では、導光孔2971を円柱状に穿設しているが、導光孔2971の形状はこれに限られない。すなわち、上述の議論から判るように、要は、導光孔2971が、その一方面における開口部OP2971Aが複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAの全てを含むように、穿設されることで、本発明の効果を奏することが可能である。つまり、このように導光孔2971を穿設することで、発光素子グループ295が有する複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAを通過する光ビームは、略全て導光孔2971の一方面における開口部OP2971Aを通過することとなる。よって、発光素子2951からマイクロレンズML(結像レンズ)に入射する光ビームの光量の過度な減少を抑制して、良好なスポット形成の実現が可能となる。したがって、次に示すように導光孔2971を穿設しても良い。
【0075】
図17は、導光孔の別の形状を示す図である。同図が示すように、導光孔2971の一方開口部OP2971Aは、主走査方向MDに長く該主走査方向MDに直交する方向に短い形状を有している。また、導光孔2971は、その一方面における開口部OP2971Aが複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAの全てを含むように穿設されている。よって、図17に示すように導光孔が穿設されたラインヘッドにおいても、発光素子2951からマイクロレンズML(結像レンズ)に入射する光ビームの光量の過度な減少を抑制して、良好なスポット形成の実現が可能となる。
【0076】
また、図17に示す一方開口部OP2971Aを底面とする直柱体状に、導光孔2971が穿設されている場合は、次に示すようにマイクロレンズMLの径を設定しても良い。図18は、マイクロレンズの径と他方開口部との関係を示す図である。同図が示すように、他方開口部OP2971Bは、マイクロレンズMLの光軸に対して対称である。また、マイクロレンズMLの半径RLは、他方開口部OP2971Bの周縁部のうち光軸OAから最も離れた点と該光軸OAとの距離Jよりも大きい。したがって、導光孔2971の他方面における開口部OP2971Bを、マイクロレンズMLが確実に覆うこととなる。よって、導光孔2971の他方開口部OP2971Bを通過した光ビームを、効率的にマイクロレンズMLに入射させることができ、より良好なスポット形成の実現が可能となり好適である。
【0077】
上記実施形態では、主走査方向MDに発光素子2951を4個並べて構成される発光素子列R2951を副走査方向SDに2列並べて、発光素子グループ295を構成している(図9,11)。しかしながら、発光素子グループ295の構成態様はこれに限られず、次のように構成していも良い。
【0078】
図19は、発光素子グループの別の構成態様を示す図である。図19に示すように、主走査方向MDに発光素子2951を並べて構成される発光素子列R2951を副走査方向SDに3列並べて、発光素子グループ295は構成されている。詳述すると、図19に示す構成態様は、同図の上段と下段とに、5個の発光素子2951を主走査方向MDに並べて構成される発光素子列R2951を配置するとともに、同図中段に、6個の発光素子2951を主走査方向MDに並べて構成される発光素子列R2951を配置している。つまり、16個の発光素子2951により発光素子グループ295は構成されている。
【0079】
そして、図19に示す構成態様においても、導光孔2971は、その一方面における開口部OP2971Aが複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAの全てを含むように穿設されている。つまり、発光素子グループ295が有する複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAを通過する光ビームは、略全て導光孔2971の一方面における開口部OP2971Aを通過することとなる。よって、発光素子2951からマイクロレンズML(結像レンズ)に入射する光ビームの光量の過度な減少を抑制して、良好なスポット形成の実現が可能となる。
【0080】
また、上記実施形態では、導光孔2971は、マイクロレンズMLの光軸に対して対称に穿設されている。しかしながら、導光孔2971がかかる対称性を有することは、本発明に必須では無い。つまり、要は、導光孔2971を、その一方面における開口部OP2971Aが複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAの全てを含むように穿設することで、発光素子2951からマイクロレンズML(結像レンズ)に入射する光ビームの光量の過度な減少を抑制して良好なスポット形成を実現するという本発明の効果を奏する事ができる。
【0081】
また、上記実施形態では、透明基板をガラスで構成しているが、透明基板の材質がガラスに限られないことは言うまでもない。つまり、光ビームを透過可能である材質により透明基板を構成することができる。
【0082】
また、上記実施形態では、発光素子グループ295に属する複数の発光素子2951を光軸OAに対して対称に配置しているが、かかる配置は本発明に必須の要件ではない。但し、このように配置することで、距離aが極小値となり、上記数1で表される不等式を満足させるのに有利に作用し、その結果、良好なスポット形成が簡易に実現されるという点で好適である。
【0083】
また、上記実施形態では、レンズ列RMLを副走査方向SDに3列並べているが、レンズ列RMLの配列数はこれに限られず、必要に応じて変更可能である。つまり、レンズ列RMLの配列数を1列または2列としても良いし、3列以上であっても良い。
【0084】
また、上記実施形態では、本発明にかかるラインヘッドを用いて、図15に示すような主走査方向MDに直線状に複数個のスポットを等間隔で並べて形成している。しかしながら、かかるスポット形成動作は、本発明にかかるラインヘッドの動作の一例を示すものであり、該ラインヘッドが実行可能な動作はこれに限られるものではない。つまり、ラインヘッド29の具体的動作に関わらず、導光孔2971を、その一方面における開口部OP2971Aが複数の発光素子2951それぞれの通過領域TAの全てを含むように穿設することで、発光素子2951からマイクロレンズML(結像レンズ)に入射する光ビームの光量の過度な減少を抑制して良好なスポット形成を実現するという本発明の効果を奏する事ができる。
【0085】
また、上記実施形態では、カラー画像形成装置に本発明が適用されているが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、いわゆる単色画像を形成するモノクロ画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図。
【図2】図1の画像形成装置における画像形成ステーションの配置を示す図。
【図3】図1の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図4】本発明にかかるラインヘッドの一実施形態の概略を示す斜視図。
【図5】本発明にかかるラインヘッドの一実施形態の副走査方向の断面図。
【図6】マイクロレンズアレイの概略を示す斜視図。
【図7】マイクロレンズアレイの主走査方向の断面図。
【図8】発光素子グループ、遮光部材及びマイクロレンズの関係を示す図。
【図9】発光素子グループ及びマイクロレンズの配置を示す図。
【図10】発光素子と通過領域との関係を示す図。
【図11】発光素子と通過領域との関係を示す図。
【図12】通過領域と一方開口部との関係を示す図。
【図13】発光素子と一方開口部との関係を示す図。
【図14】本実施形態におけるラインヘッドの動作説明図。
【図15】本実施形態におけるラインヘッドの動作説明図。
【図16】マイクロレンズの径の別の設定例を示す図。
【図17】導光孔の別の形状を示す図。
【図18】マイクロレンズの径と他方開口部との関係を示す図。
【図19】発光素子グループの別の構成態様を示す図。
【符号の説明】
【0087】
21…感光体ドラム(潜像担持体)、 29…ラインヘッド(露光手段)、 295…発光素子グループ、 2951…発光素子、 OM2951…最外素子、 293…ガラス基板(透明基板)、 297…遮光部材、 2971…導光孔、 OP2971A…一方開口部、 OP2971B…他方開口部、 299…マイクロレンズアレイ、 2991…ガラス基板、 2993A,2993B…レンズ、 ML…マイクロレンズ(結像レンズ)、TA…通過領域、 OMTA…最外通過領域、 OA…光軸、 MD…主走査方向、 SD…副走査方向、 t…透明基板の厚さ、 n…透明基板の屈折率、 a…最外素子と光軸との距離、 RL…マイクロレンズの半径、 RO…一方開口部の半径、 I…最外通過領域のうち光軸から最も離れた位置と該光軸との距離、 J…他方開口部の周縁部のうち光軸から最も離れた点と該光軸との距離(他方開口部の半径)、 r…通過領域の半径、 P…通過領域の端部にある点、 θ…ガラス基板(透明基板)の表面の法線と最外素子から点Pに向う光ビームとが成す角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被走査面に光ビームを結像してスポットを形成するラインヘッドにおいて、
光ビームを透過可能な透明基板と、
前記透明基板の裏面上に形成された発光素子を複数有する発光素子グループと、
前記透明基板の表面側に前記発光素子グループに対応して配置されるとともに、前記発光素子グループに属する複数の発光素子から射出される光ビームを前記被走査面に結像する結像レンズと、
その一方面が前記透明基板の表面に当接するとともにその他方面が前記結像レンズに対向するように配置され、更に、前記発光素子グループに対して前記一方面から前記他方面に貫通して穿設された導光孔を有する遮光部材と
を備え、
前記透明基板の表面のうち前記発光素子から射出された光ビームが該表面において全反射されることなく通過可能である領域を通過領域としたとき、
前記導光孔は、その前記一方面における開口部が前記複数の発光素子それぞれの通過領域の全てを含むように穿設されていることを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
前記導光孔は、前記結像レンズの光軸に対して対称な直柱体状に穿設されている請求項1記載のラインヘッド。
【請求項3】
前記導光孔は円柱状に穿設されている請求項2記載のラインヘッドであって、
前記複数の発光素子のうち前記結像レンズの光軸から最も離れた発光素子を最外素子と定義し、該最外素子の前記通過領域を最外通過領域と定義したとき、前記導光孔の前記一方面における開口部の半径は、該最外通過領域のうち前記結像レンズの光軸から最も離れた位置と該光軸との距離よりも大きいラインヘッド。
【請求項4】
前記透明基板はその厚さがtであるとともにその屈折率がnである請求項3記載のラインヘッドであって、
前記複数の発光素子グループそれぞれについて、前記最外素子と前記結像レンズの光軸との距離をaと、前記導光孔の前記一方面における開口部の半径をROとしたとき、次式
【数1】

を満たすラインヘッド。
【請求項5】
前記複数の発光素子は前記結像レンズの光軸に対して対称に配置されている請求項4記載のラインヘッド。
【請求項6】
前記結像レンズの半径は、前記導光孔の前記他方面における開口部の周縁部のうち前記光軸から最も離れた点と該光軸との距離よりも大きい請求項2乃至5のいずれかに記載のラインヘッド。
【請求項7】
前記導光孔は円柱状に穿設されている請求項6記載のラインヘッドであって、
前記結像レンズの半径は、前記導光孔の前記他方面における開口部の半径よりも大きいラインヘッド。
【請求項8】
その表面が前記副走査方向に搬送される潜像担持体と、
前記潜像担持体の表面を被走査面として該潜像担持体表面にスポットを形成する請求項1乃至7のいずれかに記載のラインヘッドと同一構成を有する露光手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−68545(P2008−68545A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250371(P2006−250371)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】