ラクトフェリン断片及び加水分解物の使用
本発明は、骨格成長の刺激、骨吸収の阻害、軟骨細胞増殖の刺激、骨芽細胞増殖の刺激、破骨細胞発生の阻害、或いは骨格、関節又は軟骨の障害の治療のための、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨格成長の刺激、骨吸収の阻害、軟骨細胞増殖の刺激、骨芽細胞増殖の刺激、破骨細胞発生の阻害、或いは骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクトフェリンは、涙、胆汁、気管支粘液、胃腸液、頚管−膣粘液、精液及び乳汁を含むほとんどの外分泌液中に存在する、80kDの鉄結合性糖タンパク質である。それは、循環する多形核好中球の二次特殊顆粒の主要構成成分である。最もラクトフェリンに富む供給源は、哺乳動物の乳及び初乳である。
【0003】
ラクトフェリンは、2〜7μg/mlの濃度で循環する。それは、鉄代謝の制御、免疫機能、及び胚発生を含む、想定された複数の生物学的役割を有する。ラクトフェリンは、グラム陽性及びグラム陰性細菌、酵母、及び真菌を含むさまざまな病原体に対する抗菌活性を有する。ラクトフェリンの抗菌効果は、病原体の成長のために必須である鉄を結合するその能力に部分的に基づく。ラクトフェリンはまた、数種のウイルスの複製を阻害し、そして、細菌膜上のリポポリサッカライドのリピドA成分に結合することによって、数種の細菌の抗生物質及びリゾチームに対する感受性を増加させる。
【0004】
PCT国際特許出願公開第WO03/082921号は、1分子あたり2つ以上の金属イオンを含まない純粋なラクトフェリンポリペプチドが、骨格成長を刺激し、そして骨吸収を阻害することができることを報告する。
【0005】
骨の健康を維持し又は改善するための改善された方法を提供すること、或いは少なくとも有用な選択の範囲を公衆に提供することが望ましいであろう。
【発明の開示】
【0006】
したがって、1の側面において本発明は、骨格、関節又は軟骨の障害を治療又は予防するための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物の使用に関する。
【0007】
1つの実施態様において本発明は、骨格成長を刺激すること、骨吸収を阻害すること、軟膏細胞増殖を刺激すること、骨芽細胞増殖を刺激すること、破骨細胞発生を阻害すること、又はそれらの組み合わせによって、骨格、関節又は軟骨の障害を治療又は予防するための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物の使用に関する。
【0008】
他の側面において本発明は、治療を必要とする対象に、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物の有効量を投与することを含む、骨格、関節又は軟骨の障害を治療又は予防する方法に関する。
【0009】
1つの実施態様において本発明は、骨格成長の刺激すること、骨吸収を阻害すること、軟骨細胞増殖を刺激すること、骨芽細胞増殖を刺激すること、破骨細胞発生を阻害すること又はそれらの組み合わせによって、骨格、関節又は軟骨の障害を治療又は予防する方法に関する。
【0010】
以下の実施態様は、上記の側面のいずれかに関連することができる。
【0011】
1つの実施態様において、本発明は、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物を含む乳汁成分の使用に関する。
【0012】
1つの実施態様において、骨格の障害は、骨粗鬆症、リューマチ様関節炎、骨関節炎、肝性骨異栄養症、骨軟化症、クル病、嚢胞性線維性骨炎、腎性骨異栄養症、骨硬化症、骨減少症、骨性線維形成不全症(fibrogenesis-imperfecta ossium)、二次性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病、サルコイドーシス、ステロイド性骨粗鬆症、特発性高カルシウム血症、パジェット病、又は骨形成不全である。他の実施態様においては、該障害は骨粗鬆症である。他の実施態様においては、該障害はリューマチ様関節炎である。他の実施態様においては、該障害は骨関節炎である。他の実施態様においては、関節又は軟骨の障害は、リューマチ様関節炎又は骨関節炎である。
【0013】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、以下の:
(a)切断されたラクトフェリンポリペプチド、又は
(b)ラクトフェリンのN−葉断片、又は
(c)ラクトフェリンのC−葉断片、又は
(d)ラクトフェリシン、又は
(e)ラクトフェランピン、又は
(f)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33から選ばれる断片、又は
(g)(a)〜(f)のいずれかの機能的変異体、又は
(h)(a)〜(g)のいずれかの機能的断片、又は
(i)(a)〜(h)から選ばれるいずれか2つ以上の混合物
から選ばれる断片であるか、或いはラクトフェリン加水分解物は、上記(a)〜(i)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む。
【0014】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、以下の:
(a)ラクトフェリンのN−葉断片、又は
(b)ラクトフェリシン、又は
(c)(a)若しくは(b)の機能的変異体、又は
(d)(a)若しくは(b)若しくは(c)の機能的断片、又は
(e)(a)〜(d)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
であるか、或いはラクトフェリン加水分解物は、上記(a)〜(e)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む。
【0015】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、以下の:
(a)ラクトフェリンのC−葉断片、又は
(b)ラクトフェランピン、又は
(c)(a)若しくは(b)の機能的変異体、又は
(d)(a)若しくは(b)若しくは(c)の機能的断片、又は
(e)(a)〜(d)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物、
から選ばれるか、或いは、ラクトフェリン加水分解物は、上記(a)〜(e)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む。
【0016】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、以下の:
(a)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33から選ばれる断片、又は
(b)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33の機能的変異体、又は
(c)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33の機能的断片、又は
(d)(a)〜(c)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物、
から選ばれるか、或いは、ラクトフェリン加水分解物は、上記(a)〜(d)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む。
【0017】
1つの実施態様においては、切断されたラクトフェリンポリペプチドは、配列番号1、2、3及び4から選ばれるポリペプチドであり、該ポリペプチドのN−末端、C−末端又はN−末端とC−末端の両方において少なくとも約10アミノ酸が切断されている。
【0018】
1つの実施態様においては、切断されたラクトフェリンポリペプチドは、配列番号20、24又は26のポリペプチド、或いはそれらの混合物である。
【0019】
1つの実施態様においては、N−葉断片又はその機能的断片は、配列番号5、6、9、10、12、25、27及び29から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である。
【0020】
1つの実施態様においては、C−葉断片又はその機能的断片は、配列番号7、8、11、18、19、21及び23から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である。
【0021】
1つの実施態様においては、ラクトフェリシン断片又はその機能的断片は、配列番号13、14、15、16、17及び28から選ばれるポリペプチドであるか又はそのいずれか2つ以上の混合物である。
【0022】
1つの実施態様においては、ラクトフェランピン断片は、配列番号30、31、32、及び33から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である。
【0023】
1つの実施態様においては、加水分解物は、(プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、又はアミノペプチダーゼ加水分解物を含むがこれらに限られない)完全又は部分的酵素加水分解物、(バシラス、ビフィダス、エンテロコッカス、ラクトバシラス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ペディオコッカス、プロピオンバクター、シュードモナス又はストレプトコッカス属からの細菌又はそれらの混合物による加水分解を含むがこれらに限られない)微生物による完全又は部分的な加水分解物、(トリフルオロ酢酸及び塩酸加水分解物を含むがこれらに限られない)完全又は部分的な酸加水分解物、臭化シアン加水分解物或いはそれらの混合物である。
【0024】
1つの実施態様においては、加水分解物は、配列番号1、2、3及び4のポリペプチドから選ばれるラクトフェリンポリペプチドの加水分解物又はそれらの混合物である。他の実施態様においては、加水分解物は、配列番号5〜33のポリペプチドから選ばれる少なくとも1つのポリペプチドの加水分解物、又はそれらの混合物である。
【0025】
1つの実施態様においては、酵素は、プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、又はそれらの混合物から選ばれる。他の実施態様においては、酵素はトリプシンである。
【0026】
1つの実施態様においては、酵素はトリプシンであり、かつラクトフェリンは配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0027】
1つの実施態様においては、加水分解物は、以下のペプチド:
【化1】
或いは、骨芽細胞増殖を刺激するか又は破骨細胞発生を阻害するか又はその両方を行うことのできるそれらの選択物を含む。1つの実施態様においては、加水分解物はトリプシン加水分解物である。1つの実施態様においては、加水分解は加熱によって終了される。
【0028】
1つの実施態様においては、加水分解物は、以下のペプチド:
【化2】
或いは、骨芽細胞増殖を刺激するか又は破骨細胞発生を阻害するか又はその両方を行うことのできるそれらの選択物を含む。1つの実施態様においては、加水分解物はペプシン加水分解物である。1つの実施態様においては、加水分解はpHを変更、好ましくは約8.0に変更することによって終了される。
【0029】
1つの実施態様において、加水分解物は以下のペプチド:
【化3】
或いは、骨芽細胞増殖を刺激するか又は破骨細胞発生を阻害するか又はその両方を行うことのできるそれらの選択物を含む。1つの実施態様において、加水分解物はペプシン加水分解物である。1つの実施態様においては、加水分解は加熱によって終了される。
【0030】
1つの実施態様においては、微生物は、バシラス属、ビフィダス属、エンテロコッカス属、ラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、プロピオンバクター属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属又はそれらの混合物から選択される。
【0031】
1つの実施態様においては、酸は、トリフルオロ酢酸及び塩酸から選ばれる。
【0032】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、ヒトラクトフェリン断片又はウシラクトフェリン断片又はそれらの混合物である。他の実施態様においては、ラクトフェリン加水分解物は、ヒトラクトフェリン加水分解物又はウシラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物である。
【0033】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、天然ラクトフェリン、組換えラクトフェリン、合成ラクトフェリン、またはそれらの混合物である。1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は組換えヒトラクトフェリン断片である。1つの実施態様においては、ラクトフェリン加水分解物は、天然ラクトフェリン、組換えラクトフェリン又は合成ラクトフェリンポリペプチドの加水分解物又はその混合物である。
【0034】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン又はラクトフェリン断片は、非グリコシル化又はグリコシル化されている。1つの実施態様においては、ラクトフェリンは、天然又は非天然のヒト又はウシグリコシル基で完全に又は部分的にグリコシル化されている。
【0035】
1つの実施態様においては、乳汁成分は、ウシ乳汁成分又は加水分解されたウシ乳汁成分である。
【0036】
1つの実施態様においては、組成物又は乳汁成分は、約50〜100重量%、或いは少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は99重量%の少なくとも1種のラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物を含む。他の実施態様においては、組成物又は乳汁成分は、約60〜100重量%、或いは少なくとも約60、65、70、75、80、85、90、95、又は99重量%の少なくとも1種のラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物を含む。他の実施態様においては、組成物又は乳汁成分は、約70〜100重量%、或いは少なくとも約70、75、80、85、90、95、又は99重量%の少なくとも1種のラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物を含む。他の実施態様においては、組成物又は乳汁成分は、約80〜100重量%、或いは少なくとも約80、85、90、95、又は99重量%の少なくとも1種のラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物を含む。
【0037】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、金属イオンに結合する金属イオン結合部位を含む。1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、独立して空であるか又は金属イオンに結合した、2つの金属イオン結合部位を含む。1つの実施態様においては、金属イオンは、ビスマスイオン、鉄イオン、銅イオン、クロミウムイオン、コバルトイオン、マグネシウムイオン、又は亜鉛イオンから選ばれる。1つの実施態様においては、金属イオンは、鉄イオンである。
【0038】
1つの実施態様においては、組成物は、局所用剤形、経口剤形、栄養補助食品又は医薬である。1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片、ラクトフェリン加水分解物、乳汁成分又はそれらの混合物は、局所に、経口で、又は腸管外に投与される。
【0039】
1つの実施態様においては、本発明による使用のための乳汁成分、ラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物は、食品、食品添加物、栄養補助食品、医療用食品、飲料、飲料添加物、栄養補助食品組成物又は医薬組成物の形態であってよい。これらの組成物は、タンパク質を担持することのできる、任意の食用消費財を含んでよい。好適な食用消費財の例は、製菓製品、再構成されたフルーツ製品、スナックバー、ムエスリバー、スプレッド、ディップ、ヨーグルト及びチーズを含む乳製品、乳ベースの飲料及び非乳ベースの飲料を含む飲料、乳粉末、乳ベース及び非乳ベースのスポーツサプリメントを含むスポーツサプリメント、プロテインスプリンクルなどの食品添加物、及び乳サプリメント錠剤を含む乳サプリメント製品を含む。本発明において有用な好適な栄養補助食品組成物は、同様の形態で提供されてよい。
【0040】
1つの実施態様においては、これらの組成物はさらに、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、ビタミンC,ビタミンD,ビタミンE,ビタミンK2、又はその混合物などの他の骨形成促進剤を含んでよい。
【0041】
本明細書中に開示された数値範囲(1〜10など)は、その範囲内の(1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10などの)すべての有理数を含み、(2〜8、1.5〜5.5及び3.1〜4.7などの)その範囲内の任意の有理数の範囲への言及も含み、そしてしたがって、本明細書中に明確に開示されたすべての範囲のすべての部分範囲は、本明細書中に明確に開示される。これらは、特別に意図されたものの単なる例示であり、列挙された最低値及び最高値の間の数値のすべての可能な組み合わせは、同様に、本出願中に明示されたと考えられるべきである。
【0042】
詳細な説明
本発明は、いくつかのラクトフェリン断片及びラクトフェリン加水分解物が、骨格成長の刺激、骨吸収の阻害、軟骨細胞増殖の刺激、骨芽細胞増殖の刺激、破骨細胞発生の阻害、又は骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防或いはそれらの組み合わせにおいて有用であるという、予期しない発見に基づく。
【0043】
1.定義
本明細書及び請求項中で使用される「含んでいる」という用語は、「少なくとも一部が、〜から成る」を意味する。この用語を含む本明細書及び請求項の記載を解釈する場合、各記述中で該用語によって前置きされる特徴は、すべて存在しなくてはならないが、他の特徴も存在することができる。「含む」及び「含まれる」などの関連する用語は、同様に解釈されるべきである。
【0044】
「有効量」は、治療効果を与えるために必要な量である。動物及びヒトのための(体表面積平方メートル当たりのミリグラムに基づく)用量の相互関係は、Freireichら(1966)によって記述される。体表面積は、対象の体高及び体重からおよそ決定されることができる。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardley, New York, 1970, 537を参照のこと。当業者に理解されるであろうとおり、有効用量は、投与経路、賦形剤の使用などに依存する。
【0045】
「機能的断片」という用語は、以下の実施例にしたがってアッセイされた場合に活性を有し、そして骨格成長を刺激し、骨吸収を阻害し、軟骨細胞増殖を刺激し、骨芽細胞増殖を刺激し、又は破骨細胞の発生を阻害し、或いはそれらの組み合わせをなすことのできる、ラクトフェリンポリペプチド断片を意味することを意図される。
【0046】
「機能的加水分解物」という用語は、以下の実施例にしたがってアッセイされた場合に活性を有し、そして骨格成長を刺激し、骨吸収を阻害し、軟骨細胞増殖を刺激し、骨芽細胞増殖を刺激し、又は破骨細胞の発生を阻害し、或いはそれらの組み合わせをなすことのできる、完全な又は部分的なラクトフェリンポリペプチド加水分解物を意味することを意図される。
【0047】
「機能的変異体」という用語は、以下の実施例にしたがってアッセイされた場合に活性を有し、そして骨格成長を刺激し、骨吸収を阻害し、軟骨細胞増殖を刺激し、骨芽細胞増殖を刺激し、又は破骨細胞の発生を阻害し、或いはそれらの組み合わせをなすことのできる、ラクトフェリン断片の変異体を意味することを意図される。
【0048】
ラクトフェリンポリペプチド又は断片に関して使用される場合の「グリコシル化」という用語は、ラクトフェリンが、天然又は非天然のヒト又はウシグリコシル基で、完全に又は部分的にグリコシル化されていることを意味することを意図される。ラクトフェリンのグリコシル化及びアグリコシル形態は知られている(Pierce, et al., (1991); Metz-Boutigue, et al. (1984); van Veen et al.(2004)を参照のこと)。
【0049】
「ラクトフェランピン」という用語は、van der Kraanら(2004)によって記載された配列番号2の残基268〜284(268WKLLSKAQEKFGKNKSR284−配列番号30)及びその断片をさす。ラクトフェランピン断片は、配列番号2の、268WKLLSKAQEKF278(配列番号31)、279GKNKSR284(配列番号32)及び268WKLLSKAQEKFGKNKS283(配列番号33)を含むが、これらに限られない。
【0050】
「ラクトフェリシン」という用語は、ラクトフェリンN-末端断片を意味すると意図される。「ウシラクトフェリシン」は一般に、ウシラクトフェリン(配列番号2)の、残基17〜41、又は17〜42、すなわち、FKCRRWQWRMKKLGAPSITCVRRAF(配列番号13)、又はFKCRRWQWRMKKLGAPSITCVRRAFA(配列番号14)をさす(Hwang, et al. (1998); Kuwata et al., (1998))。「ヒトラクトフェリシン」は一般に、ヒトラクトフェリン(配列番号4)の残基1〜47、すなわち、GRRRRSVQWCAVSQPEATKCFQWQRNMRKVRGPPVSCIKRDSPIQCI(配列番号15)をさす(Bellamy, et al., (1992))。
【0051】
「ラクトフェリン断片」という用語は、ラクトフェリンポリペプチドの天然又は非天然の部分を含み、そして切断された野生型ラクトフェリンポリペプチドを含む、非グリコシル化又はグリコシル化ポリペプチド配列を意味すると意図される。有用なラクトフェリン断片は、ラクトフェリンの加水分解物の個々の成分、N又はC葉(それぞれ、ラクトフェリンのN−及びC−末端金属イオン結合部分;Baker, et al., (2002))、N-又はC-葉の断片、ラクトフェリシン(Hwang, et al., (1998); Kuwata, et al. (1998); Bellamy, et al. (1992))、及び(人工的又は自然のプロセスによって)生成されそして以下に考察する知られた技術によって同定される断片を含む。有用な断片は、より詳細に以下に記載される。
【0052】
「ラクトフェリン加水分解物」という用語は、完全長ラクトトランスフェリン又はラクトフェリン分子又はそのN若しくはC葉、又はそれらの混合物の、(プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、及びアミノペプチダーゼ加水分解物を含むがこれらに限定されない)任意の完全又は部分的な酵素加水分解物、又は酸加水分解物、又はそれらの混合物を意味すると意図される。有用な加水分解物は、以下においてより詳細に記載される。
【0053】
1つの実施態様においては、加水分解物は、(プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、及びアミノペプチダーゼ加水分解物を含むがこれらに限定されない)完全又は部分的な酵素加水分解物、(バシラス、ビフィダス、エンテロコッカス、ラクトバシラス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ペディオコッカス、プロピオンバクター、シュードモナス又はストレプトコッカス属からの細菌又はそれらの混合物による加水分解を含むがこれらに限定されない)完全又は部分的な微生物加水分解物、(トリフルオロ酢酸及び塩酸加水分解物を含むがこれらに限定されない)完全又は部分的な酸加水分解物、臭化シアン加水分解物、或いはそれらの混合物である。1つの実施態様においては、加水分解物は、部分的又は完全に加水分解されたラクトフェリンから本質的になるか又は該ラクトフェリンからなる。
【0054】
「ラクトフェリンポリペプチド」という用語は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4の非グリコシル化又はグリコシル化アミノ酸配列、或いは、以下に記載のような他の種からの対応する配列をさす。
【0055】
「治療」という用語及びその派生語は、それらの可能な最も広い状況下で解釈されなくてはならない。該用語は、対象が完全に回復するまで治療されることを意味すると解釈されてはならない。
【0056】
「変異体」という用語は、(対立遺伝子多型などの)天然の、又は(人工的に生成された突然変異体などの)非天然のラクトフェリンポリペプチド又はラクトフェリン断片であって、1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、又は置換によって、(以下に列挙するもののような)所与の種のラクトフェリンポリペプチドの優勢な野生型アミノ酸配列とは異なるものをさす。かかる変異体を生成する方法は、本分野で知られており、そして以下に検討される。有用な組換えラクトフェリン及びラクトフェリン断片、並びにそれらの製造方法は、米国特許第US5,571,691号、同第US5,571,697号、同第US5,571,896号、同第US5,766,939号、同第US5,849,881号、同第US5,849,885号、同第US5,861,491号、同第US5,919,913号、同第US5,955,316号、同第US6,066,469号、同第US6,080,599号、同第US6,100,054号、同第US6,111,081号、同第US6,228,614号、同第US6,277,817号、同第US6,333,311号、同第US6,455,687号、同第US6,569,831号、同第US6,635,447号、米国特許出願第US2005-0064546号及び同第US2005-0114911号の明細書中に報告されている。有用な変異体は、ウシラクトフェリン変異体bLf-a及びbLf-bも含む(Tsuji, et al. (1989); Yoshida, et al. (1991))。さらなる有用な変異体は、ラクトフェリンのグリコシル化及びアグリコシル形態(Pierce, et al. (1991); Metz-Boutigue, et al. (1984); van Veen, et al. (2004))及びグリコシル化突然変異体を含む。
【0057】
一般に、ポリペプチド配列変異体は、以下の実施例にしたがってアッセイした場合、質的な生理活性を共有する。さらに、これらのポリペプチド配列変異体は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有することができる。「変異体」という用語の意味には、ラクトフェリンポリペプチドのホモローグも含まれる。ホモローグは、典型的には、異なる種に由来するが、本明細書に開示された対応するポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能又は活性を有するポリペプチドである。
【0058】
本発明による使用のためのラクトフェリン変異体断片は、野生型ラクトフェリンの部位特異的突然変異誘発及び得られたポリヌクレオチドの発現;ランダムな又は選択されたプライマープールを用いたPCRなどの発現可能なポリヌクレオチド断片を生成するための技術;野生型又は変異体ラクトフェリンポリペプチドの完全又は部分的なタンパク分解又は加水分解のための技術;及びポリペプチドの化学合成技術などの、しかしこれらに限定されない、野生型タンパク質の突然変異誘発技術を含むがこれらに限定されない技術によって生成されてよい(例えば、Sambrook, et al. (1989)及びかかる技術に関するその他の考察を参照のこと)。ラクトフェリンの変異体又は断片は、ラクトフェリンDNA又はRNA或いはその変異体または断片からの組換え分子としての発現によって調製されてよい。ラクトフェリンの変異体又は断片をコードする核酸配列は、アスペルギルスなどの、しかしこれらに限定されない真核細胞、或いは、E.コリなどの、しかしこれらに限定されない細菌細胞を含む、細胞中での発現のための好適なベクター中に挿入されてよい。ラクトフェリン変異体又は断片は、エラープローンPCR及びDNAシャッフリングを含むがこれに限定されない知られたPCR技術を用いて調製されてよい。エラープローンPCRは、PCR産物の長さ全体に沿って高率の点突然変異が得られるように、DNAポリメラーゼの複製忠実度が低い条件下でPCRを実施するための方法である(Leung, et al. (1989); Cadwell, et al. (1992))。DNAシャッフリングは、配列相同性に基づくDNA分子のランダムな断片化、その後のPCR反応におけるプライマー伸長によるクロスオーバーの修復により引き起こされる、異なるが関連性の高いDNA配列を有するDNA分子間のインビトロでの強制的な相同組換えをさす(Stemmer (1994))。ラクトフェリンの変異体又は断片は、知られた有機合成法によって生成されてもよい。
【0059】
ラクトフェリンの金属イオン結合性断片は、金属アフィニティークロマトグラフィーなどを含むがこれに限定されない、金属結合性ポリペプチドの単離のための知られた技術によって得られることができる。ラクトフェリンの断片は、Fe3+などの遊離の又は固定化された金属イオンと接触され、そして好適な様式で精製されてよい。例えば、断片は、中性のpHにおいて、イミノ二酢酸またはトリス(カルボキシメチル)エチレンジアミンリガンドを含むクロマトグラフィーマトリックスにキレーションによって固定化された金属イオンと接触させられてよい。結合した断片は、支持マトリックスから溶出され、そして使用する緩衝液のpH及びイオン強度を低下させることによって収集されてよい。金属結合断片は、以下に記載の方法によって調製されてよい。
【0060】
ラクトフェリンの機能的変異体、断片及び加水分解物は、ラクトフェリンの変異体、断片及び加水分解物を選択し、そして、以下に記載の実施例に示す方法論を採用することにより、本発明の方法においてそれらの有効性を評価することによって得られることができる。
【0061】
好ましい変異体ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4に対して、少なくとも約70、75、80、85、90、95、又は99%の同一性、好ましくは少なくとも約90、95又は99%の同一性を有することが好ましい。変異体断片は、配列番号5〜33を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の断片に対して、少なくとも約70、75、80、85、90、95又は99%、好ましくは少なくとも約90、95又は99%の同一性を有することが好ましい。
【0062】
ポリペプチド配列同一性は、以下のやり方で決定されることができる。NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)から公的に入手可能な、b12seq中のBLASTP(BLASTプログラムパッケージソフト、バージョン2.2.10[2004年10月])を用いて、対象ポリペプチド配列が候補ポリペプチド配列と比較される。低情報量領域(low complexity region)のフィルタ処理を行わない以外は、b12seqのデフォルトパラメータが使用される。
【0063】
ポリペプチド配列同一性は、グローバルシーケンスアラインメントプログラムを用いて、候補ポリヌクレオチド配列及び対象ポリヌクレオチド配列間の重複の全長にわたって計算されることもできる。(http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/において入手可能な)EMBOSS-ニードル及びGAP(Huang X.(1994) On Global Sequence Alignment. Computer Applications in the Biosciences 10, 227-235)も、ポリペプチド配列同一性を計算するために好適なグローバルシーケンスアラインメントプログラムである。
【0064】
ポリペプチド変異体は、1つ以上の特別に同定された配列に類似性を示し、それらの配列との機能的等価性を保存する可能性があり、そして偶然に発生するとは期待できないものも包含する。ポリペプチドに関するかかる配列類似性は、NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)からのBLAST(バージョン2.2.10[2004年10月])からの公的に入手可能なb12seqプログラムを用いて決定されることができる。
【0065】
その生理活性を顕著に変更しない、記載されたポリペプチド配列の1つ又は数個のアミノ酸の保存的置換も、本発明に包含される。当業者は、表現型的にサイレントなアミノ酸置換を行うための方法を知っているであろう(Bowie et al., 1990などを参照のこと)。
【0066】
2.ラクトフェリン断片
有用なラクトフェリン断片は、ラクトフェリンの加水分解物の個々の成分、N及びC葉のどちらか又は両方を含む断片(Baker, et al. (2002))、N又はC葉の断片、ラクトフェリシン(Hwang, et al. (1998); Kuwata, et al. (1998); Bellamy, et al. (1992))及び以下に述べる知られた技術によって(人工的又は自然のプロセスによって)生成され、そして同定される断片を含む。有用な断片は、以下の表2にも記載される。表2中の配列番号2又は4への言及は、完全長配列又は「残基」欄に定義された特定の断片のいずれかをさすことを意味する。「残基」欄に列挙されたすべての断片は、権利請求された発明の実施において有用であると考えられ、したがって、配列番号2又は4の一定の残基に関連して記載された断片は、権利請求された発明の範囲内において有用であるとして、特別にかつ独立して開示されることを意味する。
【0067】
ウシ及びヒトラクトフェリン(ラクトフェリン前駆体)、ラクトフェリン及びその中のペプチドの確認された配列は、Swiss-Prot(http://au.expasy. org/cgi-bin/sprot-search-ful)において見出されることができる。
【0068】
1つの実施態様においては、断片又は加水分解物は、ウシラクトフェリシンB断片などの、寄託番号P24627のウシラクトフェリン前駆体(配列番号1)の断片又は加水分解物である。
【0069】
1つの実施態様においては、断片又は加水分解物は、カリオシン−1(Kaliocin-1)、ラクトフェロキシンA(Lactoferroxin A)(配列番号3の残基339〜344−YLGSGY)、ラクトフェロキシンB(配列番号3の残基544〜548−RYYGY)及びラクトフェロキシンC(配列番号3の残基681〜687−KYLGPQY)断片などのヒトラクトトランスフェリン前駆体寄託番号P02788(配列番号3)の断片又は加水分解物である(Viejo-Diaz, et al., (2003); Tani, et al., (1990))。
【0070】
報告されており、本発明の実施に有用なラクトフェリンアミノ酸及びmRNA配列の他の例は、ヒトラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号AAW71443及びNP 002334)及びmRNA配列(寄託番号NM 002343);ウシラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号NP 851341及びCAA38572)及びmRNA配列(寄託番号X54801及びNM 180998);ヤギラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号JC2323、CAA55517及びAAA97958)及びmRNA配列(寄託番号U53857);ウマラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号CAA09407)及びmRNA配列(寄託番号AJ010930);ヒツジラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号NP 001020033)及びmRNA配列(寄託番号NM 001024862);ブタラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号NP 999527、AAL40161及びAAP70487)及びmRNA配列(寄託番号NM 214362);マウスラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号NP 032548及びA28438)及びmRNA配列(寄託番号NM 008522);水牛ラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号CAA06441)及びmRNA配列(寄託番号AJ005203);並びにラクダラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号CAB53387)及びmRNA配列(寄託番号AJ131674)を含むが、これらに限定されない。これらの配列は、野生型又は変異体形態で本発明にしたがって使用されることができる。これらの配列によってコードされるポリペプチドは、知られた技術を用いて、自然の供給源から単離されるか、組換えタンパク質として製造されるか又は有機合成によって製造されることができる。
【0071】
1つの実施態様においては、ラクトフェリンは、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、水牛、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、ラマ、ウシ又はヒトのラクトフェリンである。好ましくは、ラクトフェリンはウシラクトフェリンである。
【0072】
他の実施態様においては、ラクトフェリンは、組換えのヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、水牛、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、ラマ、ウシ又はヒトのラクトフェリンである。好ましくは、ラクトフェリンは組換えウシラクトフェリンである。組換えラクトフェリンは、無細胞発現系、或いはトランスジェニック動物、植物、真菌又は細菌、又は他の有用な種における発現によって生成されることができる。或いは、ラクトフェリンは、知られた有機合成法を用いて生成されることができる。
【0073】
さらに他の実施態様においては、ラクトフェリンは、乳汁、好ましくはヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、水牛、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、ラマ、ウシ又はヒトの乳汁から単離される。好ましくは、ラクトフェリンは、陽イオン交換クロマトグラフィーとその後の限外濾過及び透析によって乳汁から単離される。
【0074】
好ましいラクトフェリン断片は、以下の:
(a)配列番号5〜33から選ばれるアミノ酸配列に対して、少なくとも約70、75、80、85、90、95又は99%同一性を有する断片、又は
(b)約10〜約300アミノ酸、好ましくは約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295又は300アミノ酸が切断された配列番号1、2、3、又は4のポリペプチドを含み、N−末端、C−末端又はN−末端及びC−末端の両方が切断されたポリペプチドを含む、切断されたラクトフェリンポリペプチド、又は
(c)配列番号4の残基1〜333(配列番号5;ヒト)、或いは、約10〜約300アミノ酸、好ましくは約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295又は300アミノ酸の長さのその断片を含む配列番号12及び15から選ばれる断片などの、N−葉断片、又は
(d)配列番号2の残基1〜280(配列番号6;ウシ)又は配列番号2の残基1〜281(配列番号9;ウシ)、又は配列番号2の残基1〜284(配列番号10;ウシ)、或いは、配列番号13、14、16、17、25、27及び28から選ばれる断片などの、約10〜約275アミノ酸、好ましくは約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、又は275アミノ酸の長さのこれらの配列のうちの1つの断片を含む、N−葉断片、
(e)配列番号2の残基345〜689(配列番号7;ウシ)又は配列番号2の残基285〜689(配列番号8;ウシ)、又は配列番号2の残基283〜689(配列番号11;ウシ)、又は配列番号2の残基342〜689(配列番号18;ウシ)、或いは配列番号19、21及び23から選ばれる断片などの、約10〜約400アミノ酸、好ましくは約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、又は400アミノ酸の長さのこれらの配列のうちの1つの断片を含む、C−葉断片、又は
(f)配列番号13(ウシ)、14(ウシ)又は15(ヒト)、配列番号16、17又は28などの約10、15又は20アミノ酸の長さの配列番号13又は14の断片、或いは約10〜約45アミノ酸、好ましくは約10、15、20、25、30、35、40又は45アミノ酸の長さの配列番号15の断片を含むラクトフェリシン、又は
(g)配列番号30のラクトフェランピン又は配列番号31、32及び33から選ばれるその断片、又は
(h)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32及び33から選ばれる断片、
を含むが、これらに限定されない。
【0075】
1つの実施態様においては、断片は、上記の(a)〜(h)のいずれかの機能的変異体もしくは機能的断片であることができる。1つの実施態様は、(a)〜(h)又はその機能的変異体もしくは機能的断片のうちのいずれか2つ以上の混合物を提供する。1つの実施態様は断片の混合物を含む。
【0076】
1つの実施態様においては、切断されたラクトフェリンポリペプチドは、配列番号20のポリペプチドである(N−末端切断)。他の実施態様においては、切断されたラクトフェリンポリペプチドは、配列番号24又は26のポリペプチドである(内部ポリペプチド)。
【0077】
1つの実施態様においては、N−葉断片又はその機能的断片は、配列番号5、6、9、10(N−葉)、12、25、27及び29(N−葉ペプチド)から選ばれるポリペプチド、又はそのうちのいずれか2つ以上の混合物である。
【0078】
1つの実施態様においては、C−葉断片又はその機能的断片は、配列番号7、8、11(C−葉)、18、19、21及び23(C−葉断片)から選ばれるポリペプチド、又はそのうちのいずれか2つ以上の混合物である。
【0079】
1つの実施態様においては、ラクトフェリシン断片又はその機能的断片は、配列番号13、14、15(ラクトフェリシン)、16、17(ラクトフェリシンペプチド)及び28(合成ラクトフェリシン)から選ばれるポリペプチド又はそのうちのいずれか2つ以上の混合物である。
【0080】
1つの実施態様においては、ラクトフェランピン断片は、配列番号30、31、32及び33から選ばれるポリペプチド又はそれらのうちのいずれか2つ以上の混合物である。
【0081】
3.乳汁からのラクトフェリンの単離
以下は、ウシ乳汁からラクトフェリンを単離するための例示的手順である。
【0082】
新鮮なスキムミルク(7L、pH6.5)を、5ml/分の流速、4℃で、ミリQ水で平衡化したS Sepharose Fast Flow の300mlカラムを通す。ベッドボリュームの2.5倍の水で未結合のタンパク質を洗い流し、そして結合したタンパク質を、0.1M、0.35M、及び1.0Mの塩化ナトリウムをそれぞれ含むベッドボリュームの2.5倍で段階的に溶出する。淡いピンクのバンドとして1M塩化ナトリウム中で溶出するラクトフェリンを、単一の分画として集め、ミリQ水で透析し、その後凍結乾燥する。凍結乾燥粉末を、25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5に溶解し、そしてS Sepharose Fast Flowで上記緩衝液中1Mまでの塩化ナトリウムグラジエントを用い、流速3ml/分のクロマトグラフィーに供する。ゲル電気泳動及び逆相HPLCで測定して十分な純度を有するラクトフェリンを含む分画を併合し、透析して凍結乾燥する。ラクトフェリンの最終的な精製は、0.15Mの塩化カリウムを含む、80mMのリン酸二カリウム、pH8.6中、Sephacryl 300上でのゲル濾過によって達成される。選択された分画を併合し、ミリQ水に対して透析し、凍結乾燥する。この調製物の純度については、HPLC分析によって95%超であり、鉄飽和形態のラクトフェリンについては約19以下のスペクトル比(280nm/465nm)である。
【0083】
4.ラクトフェリンの鉄飽和又は欠乏
鉄飽和は、10mM二炭酸ナトリウムを含む50mMトリス、pH7.8中の精製ラクトフェリンの1%溶液に2:1モル過剰で5mMニトリロトリ酢酸第二鉄(ferric nitrilotriacetate)(Foley and Bates(1987))を加えることによって達成される。過剰のニトリロトリ酢酸第二鉄は、100容のミリQ水(2回取り替える)に対して、全部で20時間、4℃で透析することによって除去される。鉄負荷(ホロ−)ラクトフェリンはその後凍結乾燥される。
【0084】
鉄欠乏(アポ−)ラクトフェリンは、高度に精製されたラクトフェリンサンプルの1%水溶液を、30容の500mg/LのEDTA二ナトリウムを含む、0.1Mクエン酸、pH2.3に対して、30時間、4℃で透析することによって調製される(Masson and Heremans (1966))。その後、クエン酸及びEDTAは、30容のミリQ水(1回取り替える)に対して透析することによって除去され、得られた無色の溶液は凍結乾燥されてよい。
【0085】
ラクトフェリンポリペプチドは、(天然のラクトフェリンポリペプチドにおけるような)鉄イオン又は(銅イオン、クロムイオン、コバルトイオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、又は亜鉛イオンなどの)非鉄金属イオンを含むことができる。例えば、ウシ乳汁から単離されたラクトフェリンは、鉄除去され、そして他の種類の金属イオンを負荷されることができる。例えば、銅の負荷は、上記の鉄負荷と同じ方法によって達成されることができる。他の金属イオンをラクトフェリンに負荷するためには、Ainscoughら(1979)の方法が使用可能である。
【0086】
本発明による使用のための組成物の調製においては、ラクトフェリンポリペプチド又は金属イオン結合性ラクトフェリン断片は、単一の種のもの、又は様々な種のものであることができる。例えば、ポリペプチド又は断片はそれぞれ、様々な数の金属イオン又は様々な種の金属イオンを含むことができるか;又はいくつかは完全長ポリペプチドであり、いくつかは断片であるなど、ポリペプチドの長さは多様であることができ、そして断片はそれぞれ完全長ポリペプチドの特定の部分を表すことができる。かかる調製物は、天然源から得られるか又は異なるラクトフェリンポリペプチド種を混合することによって得ることができる。例えば、様々な長さのラクトフェリンポリペプチドの混合物は、完全長ラクトフェリンポリペプチドの(完全な又は部分的な)プロテイナーゼ消化によって調製可能である。消化の程度は、プロテイナーゼ量又はインキュベーション時間を操作することなどの本分野で周知であって以下に記載の方法によって制御可能である。完全な消化は、完全長ラクトフェリンポリペプチドの様々な断片の混合物を生成し;部分消化は、完全長ラクトフェリンポリペプチド及び様々な断片の混合物を生成する。
【0087】
5.ラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物の調製
1つの実施態様においては、加水分解物は、(プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、又はアミノペプチダーゼ加水分解物を含むがこれらに限定されない)完全な又は部分的な酵素加水分解物、(バシラス、ビフィダス、エンテロコッカス、ラクトバシラス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ペディオコッカス、プロピオンバクター、シュードモナス又はストレプトコッカス属の細菌或いはそれらの混合物による加水分解物を含むがこれらに限定されない)完全な又は部分的な微生物加水分解物、(トリフルオロ酢酸及び塩酸加水分解物を含むがこれらに限定されない)完全な又は部分的な酸加水分解物、臭化シアン加水分解物又はそれらの混合物である。
【0088】
標的ペプチドを含む加水分解物は、ペプシン、トリプシン又はキモトリプシンなどの既知の切断特性を有する好適な酵素を選択し、インキュベーションのpH、温度、時間及び酵素基質比を制御/制限することによって調製可能である。かかる単離されたペプチドの微調整は、特定のエンドペプチダーゼを用いて行なわれうる。1つの実施態様においては、加水分解は加熱によって終了される。他の実施態様においては、加水分解はpHを調節することによって終了される。1つの実施態様においては、酵素はペプシンであり、加水分解はpHを約6.0以上に調節することによって終了される。他の実施態様においては、酵素はトリプシンであり、加水分解はpHを約3.0未満又は約11超に調節することによって終了される。他の実施態様においては、酵素はトリプシンであり、加水分解は約40℃以上のインキュベーションによって終了される。この実施態様においては、トリプシンに由来するペプチドの存在は、インキュベーション中の自己分解を示唆し、したがって、加水分解は自己制限的である。
【0089】
例として、ウシラクトフェリシンは、pH2.0で45分間、37℃で(Facon & Skura, 1996)、又はpH2.5、37℃で4時間、3%(基質に対して重量/重量)の酵素を用いてウシラクトフェリンをペプシンで切断することによって生成可能である(Tomita et al., 1994)。そして、ペプチドは逆相HPLC(Tomita et al., 1994)又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(Tomita et al., 2002)によって単離されることができる。場合により、加水分解は、NaOHなどでpHを8.0に調節することによって終了される。
【0090】
他の例としては、0.1M二炭酸アンモニウム、pH8.0中の2%w/vウシラクトフェリン(配列番号2)が、1:40のE:S比のトリプシン(Sigma T1426, Sigma Chemical Co, MO, USA)で35℃、20時間で加水分解された。反応は、SDS-PAGEによってモニターされた。加水分解物を80℃で10分間加熱して、残留酵素を不活性化し、凍結乾燥によってペプチドを回収した。ペプチドは、Orbitrap ESI-TRAP(Thermo Electron Corporation)上、LC/MS/MSによって同定された(表1a)。
【0091】
或いは、ラクトフェリンペプチドは、ヒトカリオシン−1(NH2-FFSASCVPGADKGQFPNLCRLCAGTGENKCA-COOH)及びラクトフェリシン由来ペプチド(NH2-TKCFQWQRNMRKVRGPPVSCIKR-COOH)についてViejo-Diazら(2003)に;及びウシラクトフェリシンペプチド(NH2-RPWQWRMKKLG-COOH)についてNguyenら(2005)に;及びラクトフェランピン(NH2-WKLLSKAQEKFGKNKSR-COOH)及びより短い断片についてvan der Kraanら(2004)に記載された確立された合成Fmoc化学によって生成可能である。
【0092】
一般には、加水分解物を分子量スタンダードと比較することによって加水分解の程度を推定するために、SDS-PAGEが使用されてよい。加水分解物中の様々な種を分離し、そして分子量分布プロフィールを推定するために、サイズ排除クロマトグラフィーが使用されてよい。
【0093】
好ましい加水分解方法においては、ウシラクトフェリンが、50mMトリスpH8.0、5mM CaCl2中に20mg/mLで溶解された。1:50w/wの酵素基質比でトリプシン(Sigma T8642, TPCK処理、ウシ膵臓由来のXII型、11700U/mgタンパク質)が加えられ、そして混合物が25℃で3時間インキュベートされた。PMSFを1mMの最終濃度で加えることによって反応が停止され、そしてSDS-PAGEによって消化の程度がモニターされた。トリプシン消化物(4mL)が、50mM トリス、0.15M NaCl pH8.0中のSephacryl S300(Amersham GE)(90cm×2.6cmカラム)のゲル濾過に供された。ウシラクトフェリンの主要断片を含む好適な分画(Legrand et al., 1984)を、リン酸ナトリウム緩衝液pH6.5及び1M NaClまでの塩グラジエントを用いるS Sepharose fast Flow(AmershamGE)(15cm×1.6cmカラム)上の陽イオン交換クロマトグラフィーに供した。C葉とN+C葉の最終的な分離は、溶出液として10%v/v酢酸を用いる上記のSephacryl S300上でのゲル濾過をさらに行うことによって達成された(Mata et al., 1994)。(ミリQ水に対して)透析され、そして凍結乾燥された断片の同一性は、SDS-PAGE及びエドマンN-末端配列決定法によって確認された。
【0094】
他の方法においては、上記のトリプシン消化物は、Superti et al., (2001)中のように、Vydac C18カラム上のRP-HPLCによって分離され、そしてC-葉及びN-葉断片に対応する高質量の断片が回収された。同一性は、MALDI MSによって確認された。
【0095】
6.医薬用途及び治療方法
ラクトフェリン断片又は加水分解物又はそれらの混合物は、骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のために使用されることができる。かかる障害の例は、骨粗鬆症、リューマチ様関節炎、骨関節炎、肝性骨異栄養症、骨軟化症、クル病、嚢胞性線維性骨炎、腎性骨異栄養症、骨硬化症、骨減少症、骨性線維形成不全症(fibrogenesis-imperfecta ossium)、二次性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病、サルコイドーシス、ステロイド性骨粗鬆症、特発性高カルシウム血症、パジェット病、又は骨形成不全を含むがこれらに限定されない。
【0096】
本発明による使用のための栄養補助食品組成物は、(カプセル、ミニバッグ、又は錠剤などの)栄養補助食品又は(乳汁、ジュース、ソフトドリンク、ハーブティーバッグ、又は菓子などの)食品であることができる。該組成物は、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、又はアミノ酸などの他の栄養を含むこともできる。該組成物は、錠剤、ハード又はソフトカプセル、水性又は油性懸濁液、又はシロップなどの経口用途に好適な形態;或いは、水性プロピレングリコール溶液、又は緩衝化水性溶液などの腸管外用途に好適な形態であることができる。栄養補助食品組成物中の活性成分の量は、対象の特定のニーズに大きく依存する。該量はまた、当業者に理解されるとおり、投与経路、及び可能性のある他の骨形成促進剤の併用に依存して変化する。
【0097】
本発明の範囲内には、上記のラクトフェリン断片又は加水分解物又はそれらの混合物のうちの少なくとも1つの有効量及び医薬として許容可能な担体を含む医薬組成物もある。該組成物は、断片の組み合わせ、加水分解物の組み合わせ、又は断片及び加水分解物の組み合わせを含むことができる。医薬組成物は、上記の骨に関連した障害を予防し治療するために使用可能である。医薬組成物はさらに、有効量の他の骨形成促進剤を含むことができる。医薬として許容可能な担体は、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌及び抗真菌剤、並びに等張剤及び吸収遅延剤を含む。
【0098】
少なくとも1つの上記ラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物は、慣用方法を用いるさまざまな投与経路のための剤形に製剤化されることができる。例えば、それは経口投与のためにカプセル、ジェルシール、又は錠剤に製剤されることができる。カプセルは、ゼラチン又はセルロースなどの任意の標準的な医薬として許容可能な物質を含むことができる。錠剤は、少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物と固体担体及び潤滑剤の混合物を圧縮することによって慣用の手順にしたがって製剤されることができる。固体担体の例は、デンプン及び糖のベントナイトを含む。少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物は、ラクトース又はマンニトールなどの結合剤、慣用の充填剤、及び打錠剤を含むハードシェル錠剤又はカプセルの形態で投与されることもできる。医薬組成物は、腸管外経路を介して投与されることができる。腸管外の剤形の例は、活性剤の水溶液、等張食塩水又は5%グルコース溶液、或いは他の周知の医薬として許容可能な賦形剤を含む。シクロデキストリン又は本分野に精通した者に周知の他の溶解剤が、治療剤の送達のための医薬賦形剤として利用可能である。
【0099】
本発明による有用な組成物の有効性は、インビトロ及びインビボの両方で評価されることができる。例えば、以下の実施例を参照のこと。すなわち、組成物は、インビトロで骨芽細胞及び軟骨細胞の増殖を促進するか又は破骨細胞形成を阻害するその能力について試験されることができる。インビボでの研究のためには、組成物は(マウスなどの)動物に注射され、そして骨組織に対するその効果が評価されることができる。その結果に基づいて、適切な用量範囲及び投与経路が決定されることができる。
【0100】
例えば、本発明による使用のための少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物を含む食品、食品添加物又は栄養補助食品は、タンパク質を担持することのできる食用消費財を含む。好適な食用消費財の例は、菓子製品、再構成されたフルーツ製品、スナックバー、ムエスリバー、スプレッド、ディップ、ヨーグルト及びチーズを含む乳製品、乳ベース又は非乳ベースの飲料を含む飲料、乳粉末、乳ベース及び非乳ベースののスポーツサプリメントを含むスポーツサプリメント、プロテインスプリンクルなどの食品添加物、及び乳サプリメント錠剤を含む乳サプリメント製品を含む。本明細書において有用な好適な栄養補助食品組成物は、類似の形態で提供されることができる。
【0101】
好適な医薬組成物は、意図される剤形及び標準的な医薬の製剤慣習に関して選択された、好適な医薬として許容可能な賦形剤、希釈剤、又は担体とともに製剤されることができる。本明細書において有用な剤形は、散剤、液体、錠剤又はカプセルとして経口投与されることができる。好適な剤形は、必要に応じて、乳化剤、抗酸化剤、風味剤又は着色剤を含む追加の剤を含むことができる。本明細書において有用な剤形は、活性成分の即時の、遅延型の、改変された、持続型の、パルス状の、又は制御された放出に適合されることができる。
【0102】
本明細書における使用のために好ましいラクトフェリン組成物は、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物、あるいは断片、加水分解物又はその両方の混合物を含む。好ましくは、ラクトフェリンはウシラクトフェリンである。好ましくは、組成物は、カゼインなどの食用タンパク質又は他の保護タンパク質をさらに含む。好ましくは、組成物は、約0.1〜90重量%のラクトフェリン及び約10〜90重量%のカゼイン又は他の保護タンパク質を含む。より好ましくは、組成物は、約0.5〜10重量%のラクトフェリン及び約10〜99重量%のカゼイン又は他の保護タンパク質から本質的になる。最も好ましくは、組成物は、約1重量%のラクトフェリン及び約20重量%のカゼイン又は他の保護タンパク質から本質的に成る。
【0103】
少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物はまた、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内及び腫瘍内投与を含むが、これらに限定されない腸管外経路によって投与されることもできる。好ましくは、少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物は注射によって腸管外投与される。当業者は、過度の実験をすることなく、腸管外投与のための好適な製剤を調製することができるであろう。
【0104】
少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物は、単独で、又は1つ以上の他の治療剤(例えば、栄養補助食品、医薬品又は医療用食品)とともに使用されることができる。他の治療剤とともに使用された場合、2つの剤の投与は別々に、同時に又は連続的であることができる。同時投与は、両方の剤を含む単一の剤形及び分離した剤形中の2つの剤を実質的に同時に投与することを含む。連続投与は、様々なスケジュールにしたがって2つの剤を投与すること、好ましくはその間に2つの剤が提供される重複期間があること、を含む。それとともに本発明の組成物が併用投与されることのできる好適な剤は、他の骨成長剤又は骨の病気の治療剤、及び本分野で知られた他の好適な剤を含む。かかる剤は、好ましくは静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、髄内、硬膜外、皮内、経皮(局所)、経粘膜、関節内、及び胸膜内である腸管外、並びに経口、吸入及び直腸に投与されることが好ましい。
【0105】
さらに、本発明による組成物が、特別な場合において対象に利益をもたらす追加の活性成分とともに製剤されてよいことは考慮される。例えば、病気の過程の同じ又は異なる面を標的とする治療剤が使用されることができる。
【0106】
理解されるであろうとおり、投与される組成物の用量、投与期間、及び全体的な投与計画は、対象の症状の重篤度、治療されるべき障害の型、選択された投与様式、及び対象の年齢、性別及び/又は一般的な健康状態などの変数に依存して対象間で異なりうる。
【0107】
投与は、単回日用量または適切であるように別々に分割された多数の用量を含むことは理解されるべきである。
【0108】
そのスキル及びこの開示を考慮した当業者は、過度の実験をすることなく、所与の状態のための(日用量及び投与のタイミングを含む)有効な投与計画を決定することができるであろうことは理解されるべきである。
【0109】
本発明の様々な側面が、非限定的な方法で以下の実施例を参照することによって例解される。
【実施例】
【0110】
実施例1−ラクトフェリン断片が初代ラット骨芽細胞の増殖を促進する
骨芽細胞を、先にLoweら(1991)により記載されたとおりに、コラゲナーゼ消化によって20日のラット胎児頭頂骨から単離した。頭頂骨を無菌的に切開し、前部及び頭頂部の骨の骨膜を剥離した。縫合組織(suture tissue)を含まない骨の中心部分のみを集めた。頭頂骨を、3mMのEDTA(pH7.4)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)で15分間、37℃、振とう恒温槽中で2回処理した。PBSで1回洗浄後、頭頂骨を3mlの1mg/mlのコラゲナーゼで7分間、37℃で2回処理した。上清を消化物I及びIIから捨てた後、頭頂骨をさらに2回、3mlの2mg/mlコラゲナーゼ(30分、37℃)で処理した。消化物III及びIVの上清をプールし、遠心分離し、そして細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)を含むダルベッコの改変イーグル培地(DME)で洗浄し、DME/10%FCS中に懸濁し、そして75cm3フラスコ中に入れた。5%CO2及び95%空気下で細胞を37℃でインキュベートした。5〜6日でコンフルエンスに達し、そのときに細胞を継代培養した。トリプシン−EDTA(0.05%/0.53mM)を用いてトリプシン処理後、5%FCSを含む最小必須培地(MEM)で細胞をすすぎ、そして新鮮な培地中に再懸濁し、24ウエルプレート中に5×104細胞/ml(ウエルあたり0.5mlの細胞懸濁液、すなわち、1.4×104細胞/cm2)で蒔いた。これらの細胞の骨芽細胞様の特徴は、高レベルのアルカリホスファターゼ活性及びオステオカルシン産生(Groot, et al., (1985))並びに副甲状腺ホルモン及びプロスタグランジンに対する高感度なアデニレートシクラーゼ応答(Hermann-Erlee, et al. (1986))の実証によって確立されている。
【0111】
増殖試験(細胞カウント及びチミジン取り込み)を、活発に増殖している細胞集団と不活発に増殖している細胞集団の両方において実施した。活発に増殖する細胞を作り出すためには、(継代培養24時間後の)コンフルエント未満の集団を、1%FCSとラクトフェリン断片サンプルを含む新鮮なMEM中に置いた(以下の表1を参照のこと)。不活発に増殖する細胞を作り出すために、コンフルエント未満の集団を、0.1%ウシ血清アルブミンとラクトフェリン断片サンプルを含む無血清培地中に置いた。ラクトフェリン断片サンプルを加えて6、24、及び48時間後に細胞数を分析した。トリプシン/EDTA(0.05%/0.53mM)に、約5分間、37℃で露出することによって、ウエルから細胞を分離した後、細胞数を測定した。計数は、血球計チャンバー中で実施した。活発に増殖する細胞及び不活発に増殖する細胞中への[3H]−チミジンの取り込みを、インキュベーション終了の2時間前に、[3H]−チミジン(1μCi/ウエル)で細胞をパルスすることによって評価した。非放射性チミジンを含むMEMで細胞を洗浄し、続いて10%トリクロロ酢酸を加えることによって、6、24又は48時間で実験を終了した。沈殿をエタノール:エーテル(3:1)で2回洗浄し、そしてウエルを室温で乾燥させた。残渣を2M KOH中に55℃で30分間溶解し、1M HClで中和し、そして放射活性をアリコートについて計測した。細胞計測数及びチミジン取り込みの両方について、各時点における各実験を、少なくとも6ウエルからなる実験群を用いて少なくとも4回別々に実施した。
【0112】
精製されたラクトフェリン断片サンプルの有糸分裂促進性応答は、骨芽細胞増殖速度を顕著に増加させることがわかった(すなわち、増殖細胞のDNA中へのチミジン取り込みの増加)。上記の骨形成性応答を、よく知られた骨芽細胞有糸分裂促進因子であるインスリン様成長因子1(IGF-1)のものと比較した。ラクトフェリン断片の応答の強度は、同じ骨芽細胞培養系におけるIGF-1に類似していた。
【0113】
表1は、実施例1において使用したラクトフェリン断片及び骨芽細胞増殖を刺激する最小用量範囲を記載する。結果は、上記のとおり、図1〜5及び8〜10にも示す。
【0114】
【表1】
【0115】
表1に関しては、大括弧中の文字は以下を表す:
(a)新生児ハムスターの腎臓細胞から発現された(Tweedie, et al.(1994))
(b)トリプシンによる切断及びMALDI-TOFマススペクトロメトリーによる確認(Superti, et al. (2001)
(c)SDS-PAGEにより見られる2つの主要な切断断片を生じる、ウシラクトフェリンのトリプシンによる制御された加水分解。サイズ排除及びイオン交換クロマトグラフィーにより単離された「C-葉」、エドマン配列決定により10アミノ酸残基が、SDS-PAGEによりサイズの同一性が確認される。N+C葉については、「N-葉」の同一性は、エドマン配列決定による10アミノ酸残基、そしてSDS-PAGEによるサイズにより確認され;「C-葉」の同一性はエドマン配列決定による10アミノ酸残基、そしてサイズにより確認される。エドマン配列決定により決定された、K282S283における追加の切断点の存在。Legrand et al. (1984)を参照のこと。
(d)Bachem(Switzerland)により製造された。
(e)American Peptide Company(USA)により製造された。Tomita et al. (1994)及びVogel, et al. (2002)も参照のこと。
(f)Auspep(Australia)により製造された。Tomita et al. (1994)及びVogel, et al. (2002)も参照のこと。
(g)0.1M 二炭酸アンモニウム、pH8.0中の2%w/vウシラクトフェリン(配列番号2)を、1:40のE:S比のトリプシン(Sigma T1426, Sigma Chemical Co., MO, USA)で20時間、35℃で加水分解した。反応をSDS-PAGEでモニターした。加水分解物を10分間、80℃まで加熱して、残りの酵素を不活性化し、そして、凍結乾燥によってペプチドを回収した。Orbitrap ESI-TRAP(Thermo Electron Corporation)でのLC/MS/MSによってペプチドを同定した(表1a)。同定されたペプチドのリストは、存在したかもしれないが分析条件下で検出されなかったか又は確認されなかった他のペプチドを必ずしも除外するものではない。ペプチドスコアが相同性又は同一性を示す場合、そして5個の連続した「y」又は「b」イオンがMS/MSデータ中にあったか、或いは短い配列では、4つの連続した「y」及び/または「b」のイオンが少なくとも2組あった場合にのみ、ペプチドを確認した。
(h)Auspep(Australia)により製造された。
(i)ウシラクトフェリン(配列番号2)を、1%(w/v)でミリQ水中に溶解し、そして、HClでpHを2.0に調整した。ペプシン(Sigma P7012)を、1:100のE:Sで加え、そして、SDS-PAGEでモニターしながら加水分解を35℃で20時間継続した。NaOHでpHを8.0に調整することによって加水分解を終了し、凍結乾燥によってペプチドを回収した。Orbitrap ESI-TRAP(Thermo Electron Corporation)でのLC/MS/MSによってペプチドを同定した(表1b)。ペプチドのリストは、存在したかもしれないが分析条件下で検出されなかった他のペプチドを必ずしも除外するものではない。
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
実施例2−ラクトフェリン断片が破骨細胞の発生を阻害する
ウシ骨髄培養を使用して、破骨細胞発生に対するラクトフェリン断片の効果を決定した。使用した方法は、先に記載されている(Cornish, et al., (2001)を参照のこと)。培地で骨髄腔を洗い流すことによって、4〜6週齢のSwiss雄性マウスの長骨から骨髄を得た。細胞懸濁液を2時間インキュベートし、そして非接着細胞を48ウエルプレートに播き、そして1,25ビタミンD3富化培地中で様々な濃度のラクトフェリン断片とともに1週間培養した。細胞を固定し、そして染色し、そして破骨細胞様の多核細胞を計数した。
【0122】
完全長組換えヒトラクトフェリンの組換えN-葉断片(配列番号5)及びラクトフェリンC-葉断片(配列番号8)を試験した。陽性阻害剤対照としてオステオプロテゲリンを使用した。完全長組換えヒトラクトフェリンも試験した。結果を上記の図6及び7に示す。
【0123】
実施例3−他のペプシン消化
ウシラクトフェリン(配列番号2)を、1%(w/v)でミリQ水中に溶解し、そしてHClでpHを2.0に調整した。1:100のE:Sでペプシン(Sigma P7012)を加え、そして、SDS-PAGEでモニターしながら加水分解を20時間、35℃で継続した。NaOHでpH8.0に調節することによって加水分解を終了し、加水分解物を80℃で10分間加熱して酵素を不活性化した。少量の不溶性物質を遠心分離によって除き、そして上清のペプチドを凍結乾燥によって回収した。Orbitrap ESI-TRAP(Thermo Electron Corporation)でのLC/MS/MSによってペプチドを同定した(表1c)。ペプチドのリストは、存在したかもしれないが分析条件下で検出されなかった他のペプチドを必ずしも除外するものではない。
【0124】
【表7】
【0125】
【表8】
【0126】
実施例4−軟骨細胞の増殖
無菌条件下でヒツジの脛骨及び大腿骨表面から軟骨組織(全層スライス)を取り外すことによって軟骨細胞を単離する。スライスを5%FBS(v/v)及び抗生物質(ペニシリン50g/L、ストレプトマイシン50g/L及びネオマイシン100g/L)を含むダルベッコ改変イーグル(DME)培地中に入れ、手術用メスの刃で細かく刻む。組織を取り出し、先ずプロナーゼ(0.8%w/vで90分)とともに、次にコラゲナーゼ(0.1%w/vで18時間)とともに37℃でインキュベートして消化を完結させる。遠心分離(1300rpmで10分間)により細胞を消化物から分離し、DME/5%FBS中に再懸濁し、90Fm孔サイズのナイロンメッシュスクリーンを通して未消化断片を除去し、そして再び遠心分離した。そして、細胞を洗浄し、同じ培地に2回再懸濁し、DME/10%FBSを入れた75cm2フラスコ中に播き、そして、37℃で5%CO2/95%空気下でインキュベートした。7日までにコンフルエンスに達し、そのときに細胞を継代培養する。トリプシン−EDTA(0.05%/0.53mM)を用いてトリプシン処理した後、DME/5%FBSで細胞をすすぎ、そして新鮮な培地中に再懸濁し、そして、24ウエルプレートに播いた(5×104細胞/mL、0.5mL/ウエル)。チミジン取り込みの測定は、骨芽細胞様細胞の培養について上記したように、増殖を止めた細胞集団においてチミジンの取り込み測定を実施した。
【0127】
実施例5−インビボでの骨成長の刺激
Cornishら((1993)Endocrinology 132, 1359-1366)により記載されたマウスモデルは、ラクトフェリン断片及び加水分解物によるインビボでの骨成長の刺激を評価するために使用されてよい。ラクトフェリン断片又は加水分解物の注射は5日間毎日与え、動物は1週間後にと殺する。骨形成は、新たに形成された骨の蛍光標識によって決定される。骨吸収及び骨量の指数は、画像分析ソフトウエアによって支援された慣用の光学顕微鏡によって測定される。
【0128】
適用
適用1
フルーツが添加された又はされない、14〜17%の固形分を含むヨーグルトの組を以下のように調製することができる。中温で加熱処理したスキムミルク粉末(109〜152g)及びALACO安定化剤(100g)を、50℃の水約880ml中で再構成する。無水乳脂肪(20g)を添加し、そして30分間混合する。混合物を60℃に加熱し、200バールでホモジェナイズし、そして90℃で低温殺菌する。40〜42℃の温度まで冷却後、スターター混合物及び凍結乾燥した上記のタンパク調製物(95%純度或いはそれほど精製度の高くない供給源からの質の等価なラクトフェリン断片又はその加水分解物を50mg以下)を添加する。所望により、新鮮なフルーツもこの時点で加えることができる。そして、混合物を容器に充填し、pH4.2〜4.4に達するまで40℃でインキュベートし、ブラストクーラー中で冷蔵する。
【0129】
同じヨーグルトの組を調製するための別の方法は、指示された量又は用量比率としての指示された量のラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物を乾燥混合して、ヨーグルト生成におけるその使用前に乾燥乳固体とする。
【0130】
適用2
スキムミルク又は全乳粉末とカルシウム及び凍結乾燥ラクトフェリン断片または加水分解物またはその混合物の乾燥混合物は、機能性食品又は機能性食品成分として使用可能な乳ベースの製剤又は組成物を生じさせることができる。かかる組成物は、再構成乳、乳粉末成分、乳製品デザート、機能性食品、チーズ又はバター又は飲料、そして栄養補助食品もしくは健康補助食品として使用可能である。乾燥成分を、乳粉末:カルシウム:活性ラクトフェリン断片又は加水分解物が90:9.5:0.5〜94:5.95:0.0001の間の比で混合すると、かかる用途のために好適な組成物を提供する。
【0131】
適用3
乳粉末、カルシウム、及びラクトフェリン断片又は加水分解物またはその混合物が混合された組成物は、骨の健康のための機能性食品、骨の健康のための食品成分、又は骨の健康のための栄養を送達するための食品成分として、健康食品の範囲内で使用可能である。
【0132】
かかる組成物のためには、組成物のカルシウム及びタンパク質含量は、必要とされ、許容可能な栄養の限度に調節される必要がある。商業的に入手可能な成分である乳粉末は、典型的には、それらの供給源に依存して100gの粉末あたり300〜900mgのカルシウムを含む。カルシウムの供給源が粉末に添加されて、混合物としての乳粉末成分の3重量%までカルシウム含量を拡張してもよい。商業的に入手可能な乳成分又は乳ベースのタンパク質粉末成分のタンパク質レベルは、成分の種類、その製造方法、及びその意図された用途に依存して異なる。乳粉末成分は典型的に12%〜92%のタンパク質を含む。例は、商業的に入手可能なスキムミルク及び全入粉末、食品グレードのカゼイン、カゼイネート、乳タンパク質濃縮粉末、スプレー乾燥された限外濾過又はマイクロフィルター濾過された残余物(retentate)粉末及び乳タンパク質単離物製品である。ラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物は、タンパク質とカルシウムの混合物中に組み込まれて、健康食品及び健康飲料中の成分として使用可能な栄養乳粉末を生成する。かかる混合物は、ヨーグルト及びヨーグルトドリンク、酸性飲料、乳粉末成分混合物、低温殺菌液体乳製品、UHT乳製品、発酵乳製品、酸性化乳飲料、ミルク及びシリアルの組み合わせ製品、麦芽乳、ミルク及び大豆の組み合わせ製品の調製における使用に好適な成分を提供する。かかる用途のためには、混合物は、カルシウム含量が0.001%〜3.5%(w/w)、タンパク質組成が2%〜92%である組成を有することができ、そして、骨芽細胞増殖剤としてのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物が、0.000001%〜5.5%のレベルで加えられる。
【0133】
工業的応用
本発明の医薬としての使用及び方法は、骨格成長の刺激、骨吸収の阻害、軟骨細胞増殖の刺激、骨芽細胞増殖の刺激、破骨細胞発生の阻害、或いは骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のために使用されることができる。該使用及び方法は、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物を含む、(食品又は栄養補助食品としての)食品組成物、栄養補助食品組成物、又は医薬組成物を採用することによって実施されることができる。
【0134】
当業者は、上記記載が例示のみのために提供され、そして本発明がそれに限定されないことを理解するであろう。
【0135】
【表9】
【0136】
【表10】
【0137】
【表11】
【0138】
【表12】
【0139】
【表13】
【0140】
【表14】
【0141】
【表15】
【0142】
【表16】
【0143】
【表17】
【0144】
【化4】
【0145】
【化5】
【0146】
【化6】
【0147】
【化7】
【0148】
【化8】
【0149】
【化9】
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、完全長組換えヒトラクトフェリンに比較した、組換えヒトラクトフェリン(rhLf)N-葉断片(配列番号5)の骨芽細胞増殖効果を示すグラフである(μg/ml)。*は、p<0.05で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図2】図2は、ヒトラクトフェリンN-葉断片(配列番号12、Bachem, Switzerland)[ANOVA, P<0.019;nLF 0.1μg/ml及びnLF 1μg/ml、P<0.05(ダネットの多重比較検定)]に比較した、ウシラクトフェリシン(配列番号16、American Peptide Company, USA)[ANOVA, P<0.006;LFC 0.1μg/ml P<0.05(ダネットの多重比較検定);LFC 10μg/ml P<0.01(ダネットの多重比較検定)]の骨芽細胞増殖効果を示すグラフである。
【図3】図3は、ウシC-葉断片(配列番号8)及び切断されたが分離されていないウシN-及びC-葉(配列番号8、9、10及び11)が、初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的でもあることを示すグラフである(x軸の単位はM、モルである)。*は、p<0.05で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図4】図4は、ウシN-葉(配列番号6)及びウシC-葉(配列番号7)がどちらも初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである(μg/ml)。*は、p<0.05で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図5】図5は、合成ウシラクトフェリシンペプチドが初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである(配列番号17)(μg/ml)。*は、p<0.05で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図6】図6は、完全長組換えヒトラクトフェリン又は完全長組換えヒトラクトフェリンの組換えN-葉断片(配列番号5)に曝露したときの、骨髄培養中での破骨細胞発生の阻害を示すグラフである。OPGはオステオプロテゲリン、陽性阻害剤対照。ANOVA P<0.0001;(ダネット)すべての*についてP<0.01。
【図7】図7は、ラクトフェリンC-葉断片(配列番号8)に曝露したときの、骨髄培養中での破骨細胞発生の阻害を示すグラフである。OPGはオステオプロテゲリン、陽性阻害剤対照。ANOVA P<0.0001;C-葉 50μg/ml P<0.05(ダネットの多重比較検定);OPG 10ng/ml P<0.01(ダネットの多重比較検定)。
【図8】図8は、ウシラクトフェリン(配列番号2)のトリプシン加水分解物も初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである。*は、p<0.03で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図9】図9は、合成ウシラクトフェランピン(配列番号33)も初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである。*は、p<0.02で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図10】図10は、合成ウシラクトフェリシン(配列番号14)も初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである。*は、p<0.01で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図11】図11は、ウシラクトフェランピン(配列番号33)、配列番号2のトリプシン加水分解物及び配列番号2のペプシン加水分解物が、初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである。*は、対照と有意に異なることを意味する。
【図12】図12は、ウシラクトフェリシン(配列番号14)が、0.01μg/mlで初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである。*は、対照と有意に異なることを意味する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨格成長の刺激、骨吸収の阻害、軟骨細胞増殖の刺激、骨芽細胞増殖の刺激、破骨細胞発生の阻害、或いは骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクトフェリンは、涙、胆汁、気管支粘液、胃腸液、頚管−膣粘液、精液及び乳汁を含むほとんどの外分泌液中に存在する、80kDの鉄結合性糖タンパク質である。それは、循環する多形核好中球の二次特殊顆粒の主要構成成分である。最もラクトフェリンに富む供給源は、哺乳動物の乳及び初乳である。
【0003】
ラクトフェリンは、2〜7μg/mlの濃度で循環する。それは、鉄代謝の制御、免疫機能、及び胚発生を含む、想定された複数の生物学的役割を有する。ラクトフェリンは、グラム陽性及びグラム陰性細菌、酵母、及び真菌を含むさまざまな病原体に対する抗菌活性を有する。ラクトフェリンの抗菌効果は、病原体の成長のために必須である鉄を結合するその能力に部分的に基づく。ラクトフェリンはまた、数種のウイルスの複製を阻害し、そして、細菌膜上のリポポリサッカライドのリピドA成分に結合することによって、数種の細菌の抗生物質及びリゾチームに対する感受性を増加させる。
【0004】
PCT国際特許出願公開第WO03/082921号は、1分子あたり2つ以上の金属イオンを含まない純粋なラクトフェリンポリペプチドが、骨格成長を刺激し、そして骨吸収を阻害することができることを報告する。
【0005】
骨の健康を維持し又は改善するための改善された方法を提供すること、或いは少なくとも有用な選択の範囲を公衆に提供することが望ましいであろう。
【発明の開示】
【0006】
したがって、1の側面において本発明は、骨格、関節又は軟骨の障害を治療又は予防するための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物の使用に関する。
【0007】
1つの実施態様において本発明は、骨格成長を刺激すること、骨吸収を阻害すること、軟膏細胞増殖を刺激すること、骨芽細胞増殖を刺激すること、破骨細胞発生を阻害すること、又はそれらの組み合わせによって、骨格、関節又は軟骨の障害を治療又は予防するための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物の使用に関する。
【0008】
他の側面において本発明は、治療を必要とする対象に、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物の有効量を投与することを含む、骨格、関節又は軟骨の障害を治療又は予防する方法に関する。
【0009】
1つの実施態様において本発明は、骨格成長の刺激すること、骨吸収を阻害すること、軟骨細胞増殖を刺激すること、骨芽細胞増殖を刺激すること、破骨細胞発生を阻害すること又はそれらの組み合わせによって、骨格、関節又は軟骨の障害を治療又は予防する方法に関する。
【0010】
以下の実施態様は、上記の側面のいずれかに関連することができる。
【0011】
1つの実施態様において、本発明は、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物を含む乳汁成分の使用に関する。
【0012】
1つの実施態様において、骨格の障害は、骨粗鬆症、リューマチ様関節炎、骨関節炎、肝性骨異栄養症、骨軟化症、クル病、嚢胞性線維性骨炎、腎性骨異栄養症、骨硬化症、骨減少症、骨性線維形成不全症(fibrogenesis-imperfecta ossium)、二次性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病、サルコイドーシス、ステロイド性骨粗鬆症、特発性高カルシウム血症、パジェット病、又は骨形成不全である。他の実施態様においては、該障害は骨粗鬆症である。他の実施態様においては、該障害はリューマチ様関節炎である。他の実施態様においては、該障害は骨関節炎である。他の実施態様においては、関節又は軟骨の障害は、リューマチ様関節炎又は骨関節炎である。
【0013】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、以下の:
(a)切断されたラクトフェリンポリペプチド、又は
(b)ラクトフェリンのN−葉断片、又は
(c)ラクトフェリンのC−葉断片、又は
(d)ラクトフェリシン、又は
(e)ラクトフェランピン、又は
(f)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33から選ばれる断片、又は
(g)(a)〜(f)のいずれかの機能的変異体、又は
(h)(a)〜(g)のいずれかの機能的断片、又は
(i)(a)〜(h)から選ばれるいずれか2つ以上の混合物
から選ばれる断片であるか、或いはラクトフェリン加水分解物は、上記(a)〜(i)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む。
【0014】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、以下の:
(a)ラクトフェリンのN−葉断片、又は
(b)ラクトフェリシン、又は
(c)(a)若しくは(b)の機能的変異体、又は
(d)(a)若しくは(b)若しくは(c)の機能的断片、又は
(e)(a)〜(d)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
であるか、或いはラクトフェリン加水分解物は、上記(a)〜(e)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む。
【0015】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、以下の:
(a)ラクトフェリンのC−葉断片、又は
(b)ラクトフェランピン、又は
(c)(a)若しくは(b)の機能的変異体、又は
(d)(a)若しくは(b)若しくは(c)の機能的断片、又は
(e)(a)〜(d)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物、
から選ばれるか、或いは、ラクトフェリン加水分解物は、上記(a)〜(e)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む。
【0016】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、以下の:
(a)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33から選ばれる断片、又は
(b)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33の機能的変異体、又は
(c)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33の機能的断片、又は
(d)(a)〜(c)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物、
から選ばれるか、或いは、ラクトフェリン加水分解物は、上記(a)〜(d)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む。
【0017】
1つの実施態様においては、切断されたラクトフェリンポリペプチドは、配列番号1、2、3及び4から選ばれるポリペプチドであり、該ポリペプチドのN−末端、C−末端又はN−末端とC−末端の両方において少なくとも約10アミノ酸が切断されている。
【0018】
1つの実施態様においては、切断されたラクトフェリンポリペプチドは、配列番号20、24又は26のポリペプチド、或いはそれらの混合物である。
【0019】
1つの実施態様においては、N−葉断片又はその機能的断片は、配列番号5、6、9、10、12、25、27及び29から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である。
【0020】
1つの実施態様においては、C−葉断片又はその機能的断片は、配列番号7、8、11、18、19、21及び23から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である。
【0021】
1つの実施態様においては、ラクトフェリシン断片又はその機能的断片は、配列番号13、14、15、16、17及び28から選ばれるポリペプチドであるか又はそのいずれか2つ以上の混合物である。
【0022】
1つの実施態様においては、ラクトフェランピン断片は、配列番号30、31、32、及び33から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である。
【0023】
1つの実施態様においては、加水分解物は、(プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、又はアミノペプチダーゼ加水分解物を含むがこれらに限られない)完全又は部分的酵素加水分解物、(バシラス、ビフィダス、エンテロコッカス、ラクトバシラス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ペディオコッカス、プロピオンバクター、シュードモナス又はストレプトコッカス属からの細菌又はそれらの混合物による加水分解を含むがこれらに限られない)微生物による完全又は部分的な加水分解物、(トリフルオロ酢酸及び塩酸加水分解物を含むがこれらに限られない)完全又は部分的な酸加水分解物、臭化シアン加水分解物或いはそれらの混合物である。
【0024】
1つの実施態様においては、加水分解物は、配列番号1、2、3及び4のポリペプチドから選ばれるラクトフェリンポリペプチドの加水分解物又はそれらの混合物である。他の実施態様においては、加水分解物は、配列番号5〜33のポリペプチドから選ばれる少なくとも1つのポリペプチドの加水分解物、又はそれらの混合物である。
【0025】
1つの実施態様においては、酵素は、プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、又はそれらの混合物から選ばれる。他の実施態様においては、酵素はトリプシンである。
【0026】
1つの実施態様においては、酵素はトリプシンであり、かつラクトフェリンは配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0027】
1つの実施態様においては、加水分解物は、以下のペプチド:
【化1】
或いは、骨芽細胞増殖を刺激するか又は破骨細胞発生を阻害するか又はその両方を行うことのできるそれらの選択物を含む。1つの実施態様においては、加水分解物はトリプシン加水分解物である。1つの実施態様においては、加水分解は加熱によって終了される。
【0028】
1つの実施態様においては、加水分解物は、以下のペプチド:
【化2】
或いは、骨芽細胞増殖を刺激するか又は破骨細胞発生を阻害するか又はその両方を行うことのできるそれらの選択物を含む。1つの実施態様においては、加水分解物はペプシン加水分解物である。1つの実施態様においては、加水分解はpHを変更、好ましくは約8.0に変更することによって終了される。
【0029】
1つの実施態様において、加水分解物は以下のペプチド:
【化3】
或いは、骨芽細胞増殖を刺激するか又は破骨細胞発生を阻害するか又はその両方を行うことのできるそれらの選択物を含む。1つの実施態様において、加水分解物はペプシン加水分解物である。1つの実施態様においては、加水分解は加熱によって終了される。
【0030】
1つの実施態様においては、微生物は、バシラス属、ビフィダス属、エンテロコッカス属、ラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、プロピオンバクター属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属又はそれらの混合物から選択される。
【0031】
1つの実施態様においては、酸は、トリフルオロ酢酸及び塩酸から選ばれる。
【0032】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、ヒトラクトフェリン断片又はウシラクトフェリン断片又はそれらの混合物である。他の実施態様においては、ラクトフェリン加水分解物は、ヒトラクトフェリン加水分解物又はウシラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物である。
【0033】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、天然ラクトフェリン、組換えラクトフェリン、合成ラクトフェリン、またはそれらの混合物である。1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は組換えヒトラクトフェリン断片である。1つの実施態様においては、ラクトフェリン加水分解物は、天然ラクトフェリン、組換えラクトフェリン又は合成ラクトフェリンポリペプチドの加水分解物又はその混合物である。
【0034】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン又はラクトフェリン断片は、非グリコシル化又はグリコシル化されている。1つの実施態様においては、ラクトフェリンは、天然又は非天然のヒト又はウシグリコシル基で完全に又は部分的にグリコシル化されている。
【0035】
1つの実施態様においては、乳汁成分は、ウシ乳汁成分又は加水分解されたウシ乳汁成分である。
【0036】
1つの実施態様においては、組成物又は乳汁成分は、約50〜100重量%、或いは少なくとも約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は99重量%の少なくとも1種のラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物を含む。他の実施態様においては、組成物又は乳汁成分は、約60〜100重量%、或いは少なくとも約60、65、70、75、80、85、90、95、又は99重量%の少なくとも1種のラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物を含む。他の実施態様においては、組成物又は乳汁成分は、約70〜100重量%、或いは少なくとも約70、75、80、85、90、95、又は99重量%の少なくとも1種のラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物を含む。他の実施態様においては、組成物又は乳汁成分は、約80〜100重量%、或いは少なくとも約80、85、90、95、又は99重量%の少なくとも1種のラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はそれらの混合物を含む。
【0037】
1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、金属イオンに結合する金属イオン結合部位を含む。1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片は、独立して空であるか又は金属イオンに結合した、2つの金属イオン結合部位を含む。1つの実施態様においては、金属イオンは、ビスマスイオン、鉄イオン、銅イオン、クロミウムイオン、コバルトイオン、マグネシウムイオン、又は亜鉛イオンから選ばれる。1つの実施態様においては、金属イオンは、鉄イオンである。
【0038】
1つの実施態様においては、組成物は、局所用剤形、経口剤形、栄養補助食品又は医薬である。1つの実施態様においては、ラクトフェリン断片、ラクトフェリン加水分解物、乳汁成分又はそれらの混合物は、局所に、経口で、又は腸管外に投与される。
【0039】
1つの実施態様においては、本発明による使用のための乳汁成分、ラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物は、食品、食品添加物、栄養補助食品、医療用食品、飲料、飲料添加物、栄養補助食品組成物又は医薬組成物の形態であってよい。これらの組成物は、タンパク質を担持することのできる、任意の食用消費財を含んでよい。好適な食用消費財の例は、製菓製品、再構成されたフルーツ製品、スナックバー、ムエスリバー、スプレッド、ディップ、ヨーグルト及びチーズを含む乳製品、乳ベースの飲料及び非乳ベースの飲料を含む飲料、乳粉末、乳ベース及び非乳ベースのスポーツサプリメントを含むスポーツサプリメント、プロテインスプリンクルなどの食品添加物、及び乳サプリメント錠剤を含む乳サプリメント製品を含む。本発明において有用な好適な栄養補助食品組成物は、同様の形態で提供されてよい。
【0040】
1つの実施態様においては、これらの組成物はさらに、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、ビタミンC,ビタミンD,ビタミンE,ビタミンK2、又はその混合物などの他の骨形成促進剤を含んでよい。
【0041】
本明細書中に開示された数値範囲(1〜10など)は、その範囲内の(1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9及び10などの)すべての有理数を含み、(2〜8、1.5〜5.5及び3.1〜4.7などの)その範囲内の任意の有理数の範囲への言及も含み、そしてしたがって、本明細書中に明確に開示されたすべての範囲のすべての部分範囲は、本明細書中に明確に開示される。これらは、特別に意図されたものの単なる例示であり、列挙された最低値及び最高値の間の数値のすべての可能な組み合わせは、同様に、本出願中に明示されたと考えられるべきである。
【0042】
詳細な説明
本発明は、いくつかのラクトフェリン断片及びラクトフェリン加水分解物が、骨格成長の刺激、骨吸収の阻害、軟骨細胞増殖の刺激、骨芽細胞増殖の刺激、破骨細胞発生の阻害、又は骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防或いはそれらの組み合わせにおいて有用であるという、予期しない発見に基づく。
【0043】
1.定義
本明細書及び請求項中で使用される「含んでいる」という用語は、「少なくとも一部が、〜から成る」を意味する。この用語を含む本明細書及び請求項の記載を解釈する場合、各記述中で該用語によって前置きされる特徴は、すべて存在しなくてはならないが、他の特徴も存在することができる。「含む」及び「含まれる」などの関連する用語は、同様に解釈されるべきである。
【0044】
「有効量」は、治療効果を与えるために必要な量である。動物及びヒトのための(体表面積平方メートル当たりのミリグラムに基づく)用量の相互関係は、Freireichら(1966)によって記述される。体表面積は、対象の体高及び体重からおよそ決定されることができる。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardley, New York, 1970, 537を参照のこと。当業者に理解されるであろうとおり、有効用量は、投与経路、賦形剤の使用などに依存する。
【0045】
「機能的断片」という用語は、以下の実施例にしたがってアッセイされた場合に活性を有し、そして骨格成長を刺激し、骨吸収を阻害し、軟骨細胞増殖を刺激し、骨芽細胞増殖を刺激し、又は破骨細胞の発生を阻害し、或いはそれらの組み合わせをなすことのできる、ラクトフェリンポリペプチド断片を意味することを意図される。
【0046】
「機能的加水分解物」という用語は、以下の実施例にしたがってアッセイされた場合に活性を有し、そして骨格成長を刺激し、骨吸収を阻害し、軟骨細胞増殖を刺激し、骨芽細胞増殖を刺激し、又は破骨細胞の発生を阻害し、或いはそれらの組み合わせをなすことのできる、完全な又は部分的なラクトフェリンポリペプチド加水分解物を意味することを意図される。
【0047】
「機能的変異体」という用語は、以下の実施例にしたがってアッセイされた場合に活性を有し、そして骨格成長を刺激し、骨吸収を阻害し、軟骨細胞増殖を刺激し、骨芽細胞増殖を刺激し、又は破骨細胞の発生を阻害し、或いはそれらの組み合わせをなすことのできる、ラクトフェリン断片の変異体を意味することを意図される。
【0048】
ラクトフェリンポリペプチド又は断片に関して使用される場合の「グリコシル化」という用語は、ラクトフェリンが、天然又は非天然のヒト又はウシグリコシル基で、完全に又は部分的にグリコシル化されていることを意味することを意図される。ラクトフェリンのグリコシル化及びアグリコシル形態は知られている(Pierce, et al., (1991); Metz-Boutigue, et al. (1984); van Veen et al.(2004)を参照のこと)。
【0049】
「ラクトフェランピン」という用語は、van der Kraanら(2004)によって記載された配列番号2の残基268〜284(268WKLLSKAQEKFGKNKSR284−配列番号30)及びその断片をさす。ラクトフェランピン断片は、配列番号2の、268WKLLSKAQEKF278(配列番号31)、279GKNKSR284(配列番号32)及び268WKLLSKAQEKFGKNKS283(配列番号33)を含むが、これらに限られない。
【0050】
「ラクトフェリシン」という用語は、ラクトフェリンN-末端断片を意味すると意図される。「ウシラクトフェリシン」は一般に、ウシラクトフェリン(配列番号2)の、残基17〜41、又は17〜42、すなわち、FKCRRWQWRMKKLGAPSITCVRRAF(配列番号13)、又はFKCRRWQWRMKKLGAPSITCVRRAFA(配列番号14)をさす(Hwang, et al. (1998); Kuwata et al., (1998))。「ヒトラクトフェリシン」は一般に、ヒトラクトフェリン(配列番号4)の残基1〜47、すなわち、GRRRRSVQWCAVSQPEATKCFQWQRNMRKVRGPPVSCIKRDSPIQCI(配列番号15)をさす(Bellamy, et al., (1992))。
【0051】
「ラクトフェリン断片」という用語は、ラクトフェリンポリペプチドの天然又は非天然の部分を含み、そして切断された野生型ラクトフェリンポリペプチドを含む、非グリコシル化又はグリコシル化ポリペプチド配列を意味すると意図される。有用なラクトフェリン断片は、ラクトフェリンの加水分解物の個々の成分、N又はC葉(それぞれ、ラクトフェリンのN−及びC−末端金属イオン結合部分;Baker, et al., (2002))、N-又はC-葉の断片、ラクトフェリシン(Hwang, et al., (1998); Kuwata, et al. (1998); Bellamy, et al. (1992))、及び(人工的又は自然のプロセスによって)生成されそして以下に考察する知られた技術によって同定される断片を含む。有用な断片は、より詳細に以下に記載される。
【0052】
「ラクトフェリン加水分解物」という用語は、完全長ラクトトランスフェリン又はラクトフェリン分子又はそのN若しくはC葉、又はそれらの混合物の、(プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、及びアミノペプチダーゼ加水分解物を含むがこれらに限定されない)任意の完全又は部分的な酵素加水分解物、又は酸加水分解物、又はそれらの混合物を意味すると意図される。有用な加水分解物は、以下においてより詳細に記載される。
【0053】
1つの実施態様においては、加水分解物は、(プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、及びアミノペプチダーゼ加水分解物を含むがこれらに限定されない)完全又は部分的な酵素加水分解物、(バシラス、ビフィダス、エンテロコッカス、ラクトバシラス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ペディオコッカス、プロピオンバクター、シュードモナス又はストレプトコッカス属からの細菌又はそれらの混合物による加水分解を含むがこれらに限定されない)完全又は部分的な微生物加水分解物、(トリフルオロ酢酸及び塩酸加水分解物を含むがこれらに限定されない)完全又は部分的な酸加水分解物、臭化シアン加水分解物、或いはそれらの混合物である。1つの実施態様においては、加水分解物は、部分的又は完全に加水分解されたラクトフェリンから本質的になるか又は該ラクトフェリンからなる。
【0054】
「ラクトフェリンポリペプチド」という用語は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4の非グリコシル化又はグリコシル化アミノ酸配列、或いは、以下に記載のような他の種からの対応する配列をさす。
【0055】
「治療」という用語及びその派生語は、それらの可能な最も広い状況下で解釈されなくてはならない。該用語は、対象が完全に回復するまで治療されることを意味すると解釈されてはならない。
【0056】
「変異体」という用語は、(対立遺伝子多型などの)天然の、又は(人工的に生成された突然変異体などの)非天然のラクトフェリンポリペプチド又はラクトフェリン断片であって、1つ以上のアミノ酸の付加、欠失、又は置換によって、(以下に列挙するもののような)所与の種のラクトフェリンポリペプチドの優勢な野生型アミノ酸配列とは異なるものをさす。かかる変異体を生成する方法は、本分野で知られており、そして以下に検討される。有用な組換えラクトフェリン及びラクトフェリン断片、並びにそれらの製造方法は、米国特許第US5,571,691号、同第US5,571,697号、同第US5,571,896号、同第US5,766,939号、同第US5,849,881号、同第US5,849,885号、同第US5,861,491号、同第US5,919,913号、同第US5,955,316号、同第US6,066,469号、同第US6,080,599号、同第US6,100,054号、同第US6,111,081号、同第US6,228,614号、同第US6,277,817号、同第US6,333,311号、同第US6,455,687号、同第US6,569,831号、同第US6,635,447号、米国特許出願第US2005-0064546号及び同第US2005-0114911号の明細書中に報告されている。有用な変異体は、ウシラクトフェリン変異体bLf-a及びbLf-bも含む(Tsuji, et al. (1989); Yoshida, et al. (1991))。さらなる有用な変異体は、ラクトフェリンのグリコシル化及びアグリコシル形態(Pierce, et al. (1991); Metz-Boutigue, et al. (1984); van Veen, et al. (2004))及びグリコシル化突然変異体を含む。
【0057】
一般に、ポリペプチド配列変異体は、以下の実施例にしたがってアッセイした場合、質的な生理活性を共有する。さらに、これらのポリペプチド配列変異体は、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有することができる。「変異体」という用語の意味には、ラクトフェリンポリペプチドのホモローグも含まれる。ホモローグは、典型的には、異なる種に由来するが、本明細書に開示された対応するポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能又は活性を有するポリペプチドである。
【0058】
本発明による使用のためのラクトフェリン変異体断片は、野生型ラクトフェリンの部位特異的突然変異誘発及び得られたポリヌクレオチドの発現;ランダムな又は選択されたプライマープールを用いたPCRなどの発現可能なポリヌクレオチド断片を生成するための技術;野生型又は変異体ラクトフェリンポリペプチドの完全又は部分的なタンパク分解又は加水分解のための技術;及びポリペプチドの化学合成技術などの、しかしこれらに限定されない、野生型タンパク質の突然変異誘発技術を含むがこれらに限定されない技術によって生成されてよい(例えば、Sambrook, et al. (1989)及びかかる技術に関するその他の考察を参照のこと)。ラクトフェリンの変異体又は断片は、ラクトフェリンDNA又はRNA或いはその変異体または断片からの組換え分子としての発現によって調製されてよい。ラクトフェリンの変異体又は断片をコードする核酸配列は、アスペルギルスなどの、しかしこれらに限定されない真核細胞、或いは、E.コリなどの、しかしこれらに限定されない細菌細胞を含む、細胞中での発現のための好適なベクター中に挿入されてよい。ラクトフェリン変異体又は断片は、エラープローンPCR及びDNAシャッフリングを含むがこれに限定されない知られたPCR技術を用いて調製されてよい。エラープローンPCRは、PCR産物の長さ全体に沿って高率の点突然変異が得られるように、DNAポリメラーゼの複製忠実度が低い条件下でPCRを実施するための方法である(Leung, et al. (1989); Cadwell, et al. (1992))。DNAシャッフリングは、配列相同性に基づくDNA分子のランダムな断片化、その後のPCR反応におけるプライマー伸長によるクロスオーバーの修復により引き起こされる、異なるが関連性の高いDNA配列を有するDNA分子間のインビトロでの強制的な相同組換えをさす(Stemmer (1994))。ラクトフェリンの変異体又は断片は、知られた有機合成法によって生成されてもよい。
【0059】
ラクトフェリンの金属イオン結合性断片は、金属アフィニティークロマトグラフィーなどを含むがこれに限定されない、金属結合性ポリペプチドの単離のための知られた技術によって得られることができる。ラクトフェリンの断片は、Fe3+などの遊離の又は固定化された金属イオンと接触され、そして好適な様式で精製されてよい。例えば、断片は、中性のpHにおいて、イミノ二酢酸またはトリス(カルボキシメチル)エチレンジアミンリガンドを含むクロマトグラフィーマトリックスにキレーションによって固定化された金属イオンと接触させられてよい。結合した断片は、支持マトリックスから溶出され、そして使用する緩衝液のpH及びイオン強度を低下させることによって収集されてよい。金属結合断片は、以下に記載の方法によって調製されてよい。
【0060】
ラクトフェリンの機能的変異体、断片及び加水分解物は、ラクトフェリンの変異体、断片及び加水分解物を選択し、そして、以下に記載の実施例に示す方法論を採用することにより、本発明の方法においてそれらの有効性を評価することによって得られることができる。
【0061】
好ましい変異体ポリペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4に対して、少なくとも約70、75、80、85、90、95、又は99%の同一性、好ましくは少なくとも約90、95又は99%の同一性を有することが好ましい。変異体断片は、配列番号5〜33を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の断片に対して、少なくとも約70、75、80、85、90、95又は99%、好ましくは少なくとも約90、95又は99%の同一性を有することが好ましい。
【0062】
ポリペプチド配列同一性は、以下のやり方で決定されることができる。NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)から公的に入手可能な、b12seq中のBLASTP(BLASTプログラムパッケージソフト、バージョン2.2.10[2004年10月])を用いて、対象ポリペプチド配列が候補ポリペプチド配列と比較される。低情報量領域(low complexity region)のフィルタ処理を行わない以外は、b12seqのデフォルトパラメータが使用される。
【0063】
ポリペプチド配列同一性は、グローバルシーケンスアラインメントプログラムを用いて、候補ポリヌクレオチド配列及び対象ポリヌクレオチド配列間の重複の全長にわたって計算されることもできる。(http://www.ebi.ac.uk/emboss/align/において入手可能な)EMBOSS-ニードル及びGAP(Huang X.(1994) On Global Sequence Alignment. Computer Applications in the Biosciences 10, 227-235)も、ポリペプチド配列同一性を計算するために好適なグローバルシーケンスアラインメントプログラムである。
【0064】
ポリペプチド変異体は、1つ以上の特別に同定された配列に類似性を示し、それらの配列との機能的等価性を保存する可能性があり、そして偶然に発生するとは期待できないものも包含する。ポリペプチドに関するかかる配列類似性は、NCBI(ftp://ftp.ncbi.nih.gov/blast/)からのBLAST(バージョン2.2.10[2004年10月])からの公的に入手可能なb12seqプログラムを用いて決定されることができる。
【0065】
その生理活性を顕著に変更しない、記載されたポリペプチド配列の1つ又は数個のアミノ酸の保存的置換も、本発明に包含される。当業者は、表現型的にサイレントなアミノ酸置換を行うための方法を知っているであろう(Bowie et al., 1990などを参照のこと)。
【0066】
2.ラクトフェリン断片
有用なラクトフェリン断片は、ラクトフェリンの加水分解物の個々の成分、N及びC葉のどちらか又は両方を含む断片(Baker, et al. (2002))、N又はC葉の断片、ラクトフェリシン(Hwang, et al. (1998); Kuwata, et al. (1998); Bellamy, et al. (1992))及び以下に述べる知られた技術によって(人工的又は自然のプロセスによって)生成され、そして同定される断片を含む。有用な断片は、以下の表2にも記載される。表2中の配列番号2又は4への言及は、完全長配列又は「残基」欄に定義された特定の断片のいずれかをさすことを意味する。「残基」欄に列挙されたすべての断片は、権利請求された発明の実施において有用であると考えられ、したがって、配列番号2又は4の一定の残基に関連して記載された断片は、権利請求された発明の範囲内において有用であるとして、特別にかつ独立して開示されることを意味する。
【0067】
ウシ及びヒトラクトフェリン(ラクトフェリン前駆体)、ラクトフェリン及びその中のペプチドの確認された配列は、Swiss-Prot(http://au.expasy. org/cgi-bin/sprot-search-ful)において見出されることができる。
【0068】
1つの実施態様においては、断片又は加水分解物は、ウシラクトフェリシンB断片などの、寄託番号P24627のウシラクトフェリン前駆体(配列番号1)の断片又は加水分解物である。
【0069】
1つの実施態様においては、断片又は加水分解物は、カリオシン−1(Kaliocin-1)、ラクトフェロキシンA(Lactoferroxin A)(配列番号3の残基339〜344−YLGSGY)、ラクトフェロキシンB(配列番号3の残基544〜548−RYYGY)及びラクトフェロキシンC(配列番号3の残基681〜687−KYLGPQY)断片などのヒトラクトトランスフェリン前駆体寄託番号P02788(配列番号3)の断片又は加水分解物である(Viejo-Diaz, et al., (2003); Tani, et al., (1990))。
【0070】
報告されており、本発明の実施に有用なラクトフェリンアミノ酸及びmRNA配列の他の例は、ヒトラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号AAW71443及びNP 002334)及びmRNA配列(寄託番号NM 002343);ウシラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号NP 851341及びCAA38572)及びmRNA配列(寄託番号X54801及びNM 180998);ヤギラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号JC2323、CAA55517及びAAA97958)及びmRNA配列(寄託番号U53857);ウマラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号CAA09407)及びmRNA配列(寄託番号AJ010930);ヒツジラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号NP 001020033)及びmRNA配列(寄託番号NM 001024862);ブタラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号NP 999527、AAL40161及びAAP70487)及びmRNA配列(寄託番号NM 214362);マウスラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号NP 032548及びA28438)及びmRNA配列(寄託番号NM 008522);水牛ラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号CAA06441)及びmRNA配列(寄託番号AJ005203);並びにラクダラクトフェリンのアミノ酸配列(寄託番号CAB53387)及びmRNA配列(寄託番号AJ131674)を含むが、これらに限定されない。これらの配列は、野生型又は変異体形態で本発明にしたがって使用されることができる。これらの配列によってコードされるポリペプチドは、知られた技術を用いて、自然の供給源から単離されるか、組換えタンパク質として製造されるか又は有機合成によって製造されることができる。
【0071】
1つの実施態様においては、ラクトフェリンは、ヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、水牛、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、ラマ、ウシ又はヒトのラクトフェリンである。好ましくは、ラクトフェリンはウシラクトフェリンである。
【0072】
他の実施態様においては、ラクトフェリンは、組換えのヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、水牛、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、ラマ、ウシ又はヒトのラクトフェリンである。好ましくは、ラクトフェリンは組換えウシラクトフェリンである。組換えラクトフェリンは、無細胞発現系、或いはトランスジェニック動物、植物、真菌又は細菌、又は他の有用な種における発現によって生成されることができる。或いは、ラクトフェリンは、知られた有機合成法を用いて生成されることができる。
【0073】
さらに他の実施態様においては、ラクトフェリンは、乳汁、好ましくはヒツジ、ヤギ、ブタ、マウス、水牛、ラクダ、ヤク、ウマ、ロバ、ラマ、ウシ又はヒトの乳汁から単離される。好ましくは、ラクトフェリンは、陽イオン交換クロマトグラフィーとその後の限外濾過及び透析によって乳汁から単離される。
【0074】
好ましいラクトフェリン断片は、以下の:
(a)配列番号5〜33から選ばれるアミノ酸配列に対して、少なくとも約70、75、80、85、90、95又は99%同一性を有する断片、又は
(b)約10〜約300アミノ酸、好ましくは約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295又は300アミノ酸が切断された配列番号1、2、3、又は4のポリペプチドを含み、N−末端、C−末端又はN−末端及びC−末端の両方が切断されたポリペプチドを含む、切断されたラクトフェリンポリペプチド、又は
(c)配列番号4の残基1〜333(配列番号5;ヒト)、或いは、約10〜約300アミノ酸、好ましくは約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295又は300アミノ酸の長さのその断片を含む配列番号12及び15から選ばれる断片などの、N−葉断片、又は
(d)配列番号2の残基1〜280(配列番号6;ウシ)又は配列番号2の残基1〜281(配列番号9;ウシ)、又は配列番号2の残基1〜284(配列番号10;ウシ)、或いは、配列番号13、14、16、17、25、27及び28から選ばれる断片などの、約10〜約275アミノ酸、好ましくは約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、又は275アミノ酸の長さのこれらの配列のうちの1つの断片を含む、N−葉断片、
(e)配列番号2の残基345〜689(配列番号7;ウシ)又は配列番号2の残基285〜689(配列番号8;ウシ)、又は配列番号2の残基283〜689(配列番号11;ウシ)、又は配列番号2の残基342〜689(配列番号18;ウシ)、或いは配列番号19、21及び23から選ばれる断片などの、約10〜約400アミノ酸、好ましくは約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、又は400アミノ酸の長さのこれらの配列のうちの1つの断片を含む、C−葉断片、又は
(f)配列番号13(ウシ)、14(ウシ)又は15(ヒト)、配列番号16、17又は28などの約10、15又は20アミノ酸の長さの配列番号13又は14の断片、或いは約10〜約45アミノ酸、好ましくは約10、15、20、25、30、35、40又は45アミノ酸の長さの配列番号15の断片を含むラクトフェリシン、又は
(g)配列番号30のラクトフェランピン又は配列番号31、32及び33から選ばれるその断片、又は
(h)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32及び33から選ばれる断片、
を含むが、これらに限定されない。
【0075】
1つの実施態様においては、断片は、上記の(a)〜(h)のいずれかの機能的変異体もしくは機能的断片であることができる。1つの実施態様は、(a)〜(h)又はその機能的変異体もしくは機能的断片のうちのいずれか2つ以上の混合物を提供する。1つの実施態様は断片の混合物を含む。
【0076】
1つの実施態様においては、切断されたラクトフェリンポリペプチドは、配列番号20のポリペプチドである(N−末端切断)。他の実施態様においては、切断されたラクトフェリンポリペプチドは、配列番号24又は26のポリペプチドである(内部ポリペプチド)。
【0077】
1つの実施態様においては、N−葉断片又はその機能的断片は、配列番号5、6、9、10(N−葉)、12、25、27及び29(N−葉ペプチド)から選ばれるポリペプチド、又はそのうちのいずれか2つ以上の混合物である。
【0078】
1つの実施態様においては、C−葉断片又はその機能的断片は、配列番号7、8、11(C−葉)、18、19、21及び23(C−葉断片)から選ばれるポリペプチド、又はそのうちのいずれか2つ以上の混合物である。
【0079】
1つの実施態様においては、ラクトフェリシン断片又はその機能的断片は、配列番号13、14、15(ラクトフェリシン)、16、17(ラクトフェリシンペプチド)及び28(合成ラクトフェリシン)から選ばれるポリペプチド又はそのうちのいずれか2つ以上の混合物である。
【0080】
1つの実施態様においては、ラクトフェランピン断片は、配列番号30、31、32及び33から選ばれるポリペプチド又はそれらのうちのいずれか2つ以上の混合物である。
【0081】
3.乳汁からのラクトフェリンの単離
以下は、ウシ乳汁からラクトフェリンを単離するための例示的手順である。
【0082】
新鮮なスキムミルク(7L、pH6.5)を、5ml/分の流速、4℃で、ミリQ水で平衡化したS Sepharose Fast Flow の300mlカラムを通す。ベッドボリュームの2.5倍の水で未結合のタンパク質を洗い流し、そして結合したタンパク質を、0.1M、0.35M、及び1.0Mの塩化ナトリウムをそれぞれ含むベッドボリュームの2.5倍で段階的に溶出する。淡いピンクのバンドとして1M塩化ナトリウム中で溶出するラクトフェリンを、単一の分画として集め、ミリQ水で透析し、その後凍結乾燥する。凍結乾燥粉末を、25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5に溶解し、そしてS Sepharose Fast Flowで上記緩衝液中1Mまでの塩化ナトリウムグラジエントを用い、流速3ml/分のクロマトグラフィーに供する。ゲル電気泳動及び逆相HPLCで測定して十分な純度を有するラクトフェリンを含む分画を併合し、透析して凍結乾燥する。ラクトフェリンの最終的な精製は、0.15Mの塩化カリウムを含む、80mMのリン酸二カリウム、pH8.6中、Sephacryl 300上でのゲル濾過によって達成される。選択された分画を併合し、ミリQ水に対して透析し、凍結乾燥する。この調製物の純度については、HPLC分析によって95%超であり、鉄飽和形態のラクトフェリンについては約19以下のスペクトル比(280nm/465nm)である。
【0083】
4.ラクトフェリンの鉄飽和又は欠乏
鉄飽和は、10mM二炭酸ナトリウムを含む50mMトリス、pH7.8中の精製ラクトフェリンの1%溶液に2:1モル過剰で5mMニトリロトリ酢酸第二鉄(ferric nitrilotriacetate)(Foley and Bates(1987))を加えることによって達成される。過剰のニトリロトリ酢酸第二鉄は、100容のミリQ水(2回取り替える)に対して、全部で20時間、4℃で透析することによって除去される。鉄負荷(ホロ−)ラクトフェリンはその後凍結乾燥される。
【0084】
鉄欠乏(アポ−)ラクトフェリンは、高度に精製されたラクトフェリンサンプルの1%水溶液を、30容の500mg/LのEDTA二ナトリウムを含む、0.1Mクエン酸、pH2.3に対して、30時間、4℃で透析することによって調製される(Masson and Heremans (1966))。その後、クエン酸及びEDTAは、30容のミリQ水(1回取り替える)に対して透析することによって除去され、得られた無色の溶液は凍結乾燥されてよい。
【0085】
ラクトフェリンポリペプチドは、(天然のラクトフェリンポリペプチドにおけるような)鉄イオン又は(銅イオン、クロムイオン、コバルトイオン、ビスマスイオン、マンガンイオン、又は亜鉛イオンなどの)非鉄金属イオンを含むことができる。例えば、ウシ乳汁から単離されたラクトフェリンは、鉄除去され、そして他の種類の金属イオンを負荷されることができる。例えば、銅の負荷は、上記の鉄負荷と同じ方法によって達成されることができる。他の金属イオンをラクトフェリンに負荷するためには、Ainscoughら(1979)の方法が使用可能である。
【0086】
本発明による使用のための組成物の調製においては、ラクトフェリンポリペプチド又は金属イオン結合性ラクトフェリン断片は、単一の種のもの、又は様々な種のものであることができる。例えば、ポリペプチド又は断片はそれぞれ、様々な数の金属イオン又は様々な種の金属イオンを含むことができるか;又はいくつかは完全長ポリペプチドであり、いくつかは断片であるなど、ポリペプチドの長さは多様であることができ、そして断片はそれぞれ完全長ポリペプチドの特定の部分を表すことができる。かかる調製物は、天然源から得られるか又は異なるラクトフェリンポリペプチド種を混合することによって得ることができる。例えば、様々な長さのラクトフェリンポリペプチドの混合物は、完全長ラクトフェリンポリペプチドの(完全な又は部分的な)プロテイナーゼ消化によって調製可能である。消化の程度は、プロテイナーゼ量又はインキュベーション時間を操作することなどの本分野で周知であって以下に記載の方法によって制御可能である。完全な消化は、完全長ラクトフェリンポリペプチドの様々な断片の混合物を生成し;部分消化は、完全長ラクトフェリンポリペプチド及び様々な断片の混合物を生成する。
【0087】
5.ラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物の調製
1つの実施態様においては、加水分解物は、(プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、又はアミノペプチダーゼ加水分解物を含むがこれらに限定されない)完全な又は部分的な酵素加水分解物、(バシラス、ビフィダス、エンテロコッカス、ラクトバシラス、ラクトコッカス、ロイコノストック、ペディオコッカス、プロピオンバクター、シュードモナス又はストレプトコッカス属の細菌或いはそれらの混合物による加水分解物を含むがこれらに限定されない)完全な又は部分的な微生物加水分解物、(トリフルオロ酢酸及び塩酸加水分解物を含むがこれらに限定されない)完全な又は部分的な酸加水分解物、臭化シアン加水分解物又はそれらの混合物である。
【0088】
標的ペプチドを含む加水分解物は、ペプシン、トリプシン又はキモトリプシンなどの既知の切断特性を有する好適な酵素を選択し、インキュベーションのpH、温度、時間及び酵素基質比を制御/制限することによって調製可能である。かかる単離されたペプチドの微調整は、特定のエンドペプチダーゼを用いて行なわれうる。1つの実施態様においては、加水分解は加熱によって終了される。他の実施態様においては、加水分解はpHを調節することによって終了される。1つの実施態様においては、酵素はペプシンであり、加水分解はpHを約6.0以上に調節することによって終了される。他の実施態様においては、酵素はトリプシンであり、加水分解はpHを約3.0未満又は約11超に調節することによって終了される。他の実施態様においては、酵素はトリプシンであり、加水分解は約40℃以上のインキュベーションによって終了される。この実施態様においては、トリプシンに由来するペプチドの存在は、インキュベーション中の自己分解を示唆し、したがって、加水分解は自己制限的である。
【0089】
例として、ウシラクトフェリシンは、pH2.0で45分間、37℃で(Facon & Skura, 1996)、又はpH2.5、37℃で4時間、3%(基質に対して重量/重量)の酵素を用いてウシラクトフェリンをペプシンで切断することによって生成可能である(Tomita et al., 1994)。そして、ペプチドは逆相HPLC(Tomita et al., 1994)又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(Tomita et al., 2002)によって単離されることができる。場合により、加水分解は、NaOHなどでpHを8.0に調節することによって終了される。
【0090】
他の例としては、0.1M二炭酸アンモニウム、pH8.0中の2%w/vウシラクトフェリン(配列番号2)が、1:40のE:S比のトリプシン(Sigma T1426, Sigma Chemical Co, MO, USA)で35℃、20時間で加水分解された。反応は、SDS-PAGEによってモニターされた。加水分解物を80℃で10分間加熱して、残留酵素を不活性化し、凍結乾燥によってペプチドを回収した。ペプチドは、Orbitrap ESI-TRAP(Thermo Electron Corporation)上、LC/MS/MSによって同定された(表1a)。
【0091】
或いは、ラクトフェリンペプチドは、ヒトカリオシン−1(NH2-FFSASCVPGADKGQFPNLCRLCAGTGENKCA-COOH)及びラクトフェリシン由来ペプチド(NH2-TKCFQWQRNMRKVRGPPVSCIKR-COOH)についてViejo-Diazら(2003)に;及びウシラクトフェリシンペプチド(NH2-RPWQWRMKKLG-COOH)についてNguyenら(2005)に;及びラクトフェランピン(NH2-WKLLSKAQEKFGKNKSR-COOH)及びより短い断片についてvan der Kraanら(2004)に記載された確立された合成Fmoc化学によって生成可能である。
【0092】
一般には、加水分解物を分子量スタンダードと比較することによって加水分解の程度を推定するために、SDS-PAGEが使用されてよい。加水分解物中の様々な種を分離し、そして分子量分布プロフィールを推定するために、サイズ排除クロマトグラフィーが使用されてよい。
【0093】
好ましい加水分解方法においては、ウシラクトフェリンが、50mMトリスpH8.0、5mM CaCl2中に20mg/mLで溶解された。1:50w/wの酵素基質比でトリプシン(Sigma T8642, TPCK処理、ウシ膵臓由来のXII型、11700U/mgタンパク質)が加えられ、そして混合物が25℃で3時間インキュベートされた。PMSFを1mMの最終濃度で加えることによって反応が停止され、そしてSDS-PAGEによって消化の程度がモニターされた。トリプシン消化物(4mL)が、50mM トリス、0.15M NaCl pH8.0中のSephacryl S300(Amersham GE)(90cm×2.6cmカラム)のゲル濾過に供された。ウシラクトフェリンの主要断片を含む好適な分画(Legrand et al., 1984)を、リン酸ナトリウム緩衝液pH6.5及び1M NaClまでの塩グラジエントを用いるS Sepharose fast Flow(AmershamGE)(15cm×1.6cmカラム)上の陽イオン交換クロマトグラフィーに供した。C葉とN+C葉の最終的な分離は、溶出液として10%v/v酢酸を用いる上記のSephacryl S300上でのゲル濾過をさらに行うことによって達成された(Mata et al., 1994)。(ミリQ水に対して)透析され、そして凍結乾燥された断片の同一性は、SDS-PAGE及びエドマンN-末端配列決定法によって確認された。
【0094】
他の方法においては、上記のトリプシン消化物は、Superti et al., (2001)中のように、Vydac C18カラム上のRP-HPLCによって分離され、そしてC-葉及びN-葉断片に対応する高質量の断片が回収された。同一性は、MALDI MSによって確認された。
【0095】
6.医薬用途及び治療方法
ラクトフェリン断片又は加水分解物又はそれらの混合物は、骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のために使用されることができる。かかる障害の例は、骨粗鬆症、リューマチ様関節炎、骨関節炎、肝性骨異栄養症、骨軟化症、クル病、嚢胞性線維性骨炎、腎性骨異栄養症、骨硬化症、骨減少症、骨性線維形成不全症(fibrogenesis-imperfecta ossium)、二次性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病、サルコイドーシス、ステロイド性骨粗鬆症、特発性高カルシウム血症、パジェット病、又は骨形成不全を含むがこれらに限定されない。
【0096】
本発明による使用のための栄養補助食品組成物は、(カプセル、ミニバッグ、又は錠剤などの)栄養補助食品又は(乳汁、ジュース、ソフトドリンク、ハーブティーバッグ、又は菓子などの)食品であることができる。該組成物は、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、又はアミノ酸などの他の栄養を含むこともできる。該組成物は、錠剤、ハード又はソフトカプセル、水性又は油性懸濁液、又はシロップなどの経口用途に好適な形態;或いは、水性プロピレングリコール溶液、又は緩衝化水性溶液などの腸管外用途に好適な形態であることができる。栄養補助食品組成物中の活性成分の量は、対象の特定のニーズに大きく依存する。該量はまた、当業者に理解されるとおり、投与経路、及び可能性のある他の骨形成促進剤の併用に依存して変化する。
【0097】
本発明の範囲内には、上記のラクトフェリン断片又は加水分解物又はそれらの混合物のうちの少なくとも1つの有効量及び医薬として許容可能な担体を含む医薬組成物もある。該組成物は、断片の組み合わせ、加水分解物の組み合わせ、又は断片及び加水分解物の組み合わせを含むことができる。医薬組成物は、上記の骨に関連した障害を予防し治療するために使用可能である。医薬組成物はさらに、有効量の他の骨形成促進剤を含むことができる。医薬として許容可能な担体は、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌及び抗真菌剤、並びに等張剤及び吸収遅延剤を含む。
【0098】
少なくとも1つの上記ラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物は、慣用方法を用いるさまざまな投与経路のための剤形に製剤化されることができる。例えば、それは経口投与のためにカプセル、ジェルシール、又は錠剤に製剤されることができる。カプセルは、ゼラチン又はセルロースなどの任意の標準的な医薬として許容可能な物質を含むことができる。錠剤は、少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物と固体担体及び潤滑剤の混合物を圧縮することによって慣用の手順にしたがって製剤されることができる。固体担体の例は、デンプン及び糖のベントナイトを含む。少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物は、ラクトース又はマンニトールなどの結合剤、慣用の充填剤、及び打錠剤を含むハードシェル錠剤又はカプセルの形態で投与されることもできる。医薬組成物は、腸管外経路を介して投与されることができる。腸管外の剤形の例は、活性剤の水溶液、等張食塩水又は5%グルコース溶液、或いは他の周知の医薬として許容可能な賦形剤を含む。シクロデキストリン又は本分野に精通した者に周知の他の溶解剤が、治療剤の送達のための医薬賦形剤として利用可能である。
【0099】
本発明による有用な組成物の有効性は、インビトロ及びインビボの両方で評価されることができる。例えば、以下の実施例を参照のこと。すなわち、組成物は、インビトロで骨芽細胞及び軟骨細胞の増殖を促進するか又は破骨細胞形成を阻害するその能力について試験されることができる。インビボでの研究のためには、組成物は(マウスなどの)動物に注射され、そして骨組織に対するその効果が評価されることができる。その結果に基づいて、適切な用量範囲及び投与経路が決定されることができる。
【0100】
例えば、本発明による使用のための少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物を含む食品、食品添加物又は栄養補助食品は、タンパク質を担持することのできる食用消費財を含む。好適な食用消費財の例は、菓子製品、再構成されたフルーツ製品、スナックバー、ムエスリバー、スプレッド、ディップ、ヨーグルト及びチーズを含む乳製品、乳ベース又は非乳ベースの飲料を含む飲料、乳粉末、乳ベース及び非乳ベースののスポーツサプリメントを含むスポーツサプリメント、プロテインスプリンクルなどの食品添加物、及び乳サプリメント錠剤を含む乳サプリメント製品を含む。本明細書において有用な好適な栄養補助食品組成物は、類似の形態で提供されることができる。
【0101】
好適な医薬組成物は、意図される剤形及び標準的な医薬の製剤慣習に関して選択された、好適な医薬として許容可能な賦形剤、希釈剤、又は担体とともに製剤されることができる。本明細書において有用な剤形は、散剤、液体、錠剤又はカプセルとして経口投与されることができる。好適な剤形は、必要に応じて、乳化剤、抗酸化剤、風味剤又は着色剤を含む追加の剤を含むことができる。本明細書において有用な剤形は、活性成分の即時の、遅延型の、改変された、持続型の、パルス状の、又は制御された放出に適合されることができる。
【0102】
本明細書における使用のために好ましいラクトフェリン組成物は、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物、あるいは断片、加水分解物又はその両方の混合物を含む。好ましくは、ラクトフェリンはウシラクトフェリンである。好ましくは、組成物は、カゼインなどの食用タンパク質又は他の保護タンパク質をさらに含む。好ましくは、組成物は、約0.1〜90重量%のラクトフェリン及び約10〜90重量%のカゼイン又は他の保護タンパク質を含む。より好ましくは、組成物は、約0.5〜10重量%のラクトフェリン及び約10〜99重量%のカゼイン又は他の保護タンパク質から本質的になる。最も好ましくは、組成物は、約1重量%のラクトフェリン及び約20重量%のカゼイン又は他の保護タンパク質から本質的に成る。
【0103】
少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物はまた、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内及び腫瘍内投与を含むが、これらに限定されない腸管外経路によって投与されることもできる。好ましくは、少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物は注射によって腸管外投与される。当業者は、過度の実験をすることなく、腸管外投与のための好適な製剤を調製することができるであろう。
【0104】
少なくとも1つのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物は、単独で、又は1つ以上の他の治療剤(例えば、栄養補助食品、医薬品又は医療用食品)とともに使用されることができる。他の治療剤とともに使用された場合、2つの剤の投与は別々に、同時に又は連続的であることができる。同時投与は、両方の剤を含む単一の剤形及び分離した剤形中の2つの剤を実質的に同時に投与することを含む。連続投与は、様々なスケジュールにしたがって2つの剤を投与すること、好ましくはその間に2つの剤が提供される重複期間があること、を含む。それとともに本発明の組成物が併用投与されることのできる好適な剤は、他の骨成長剤又は骨の病気の治療剤、及び本分野で知られた他の好適な剤を含む。かかる剤は、好ましくは静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、髄内、硬膜外、皮内、経皮(局所)、経粘膜、関節内、及び胸膜内である腸管外、並びに経口、吸入及び直腸に投与されることが好ましい。
【0105】
さらに、本発明による組成物が、特別な場合において対象に利益をもたらす追加の活性成分とともに製剤されてよいことは考慮される。例えば、病気の過程の同じ又は異なる面を標的とする治療剤が使用されることができる。
【0106】
理解されるであろうとおり、投与される組成物の用量、投与期間、及び全体的な投与計画は、対象の症状の重篤度、治療されるべき障害の型、選択された投与様式、及び対象の年齢、性別及び/又は一般的な健康状態などの変数に依存して対象間で異なりうる。
【0107】
投与は、単回日用量または適切であるように別々に分割された多数の用量を含むことは理解されるべきである。
【0108】
そのスキル及びこの開示を考慮した当業者は、過度の実験をすることなく、所与の状態のための(日用量及び投与のタイミングを含む)有効な投与計画を決定することができるであろうことは理解されるべきである。
【0109】
本発明の様々な側面が、非限定的な方法で以下の実施例を参照することによって例解される。
【実施例】
【0110】
実施例1−ラクトフェリン断片が初代ラット骨芽細胞の増殖を促進する
骨芽細胞を、先にLoweら(1991)により記載されたとおりに、コラゲナーゼ消化によって20日のラット胎児頭頂骨から単離した。頭頂骨を無菌的に切開し、前部及び頭頂部の骨の骨膜を剥離した。縫合組織(suture tissue)を含まない骨の中心部分のみを集めた。頭頂骨を、3mMのEDTA(pH7.4)を含むリン酸緩衝食塩水(PBS)で15分間、37℃、振とう恒温槽中で2回処理した。PBSで1回洗浄後、頭頂骨を3mlの1mg/mlのコラゲナーゼで7分間、37℃で2回処理した。上清を消化物I及びIIから捨てた後、頭頂骨をさらに2回、3mlの2mg/mlコラゲナーゼ(30分、37℃)で処理した。消化物III及びIVの上清をプールし、遠心分離し、そして細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)を含むダルベッコの改変イーグル培地(DME)で洗浄し、DME/10%FCS中に懸濁し、そして75cm3フラスコ中に入れた。5%CO2及び95%空気下で細胞を37℃でインキュベートした。5〜6日でコンフルエンスに達し、そのときに細胞を継代培養した。トリプシン−EDTA(0.05%/0.53mM)を用いてトリプシン処理後、5%FCSを含む最小必須培地(MEM)で細胞をすすぎ、そして新鮮な培地中に再懸濁し、24ウエルプレート中に5×104細胞/ml(ウエルあたり0.5mlの細胞懸濁液、すなわち、1.4×104細胞/cm2)で蒔いた。これらの細胞の骨芽細胞様の特徴は、高レベルのアルカリホスファターゼ活性及びオステオカルシン産生(Groot, et al., (1985))並びに副甲状腺ホルモン及びプロスタグランジンに対する高感度なアデニレートシクラーゼ応答(Hermann-Erlee, et al. (1986))の実証によって確立されている。
【0111】
増殖試験(細胞カウント及びチミジン取り込み)を、活発に増殖している細胞集団と不活発に増殖している細胞集団の両方において実施した。活発に増殖する細胞を作り出すためには、(継代培養24時間後の)コンフルエント未満の集団を、1%FCSとラクトフェリン断片サンプルを含む新鮮なMEM中に置いた(以下の表1を参照のこと)。不活発に増殖する細胞を作り出すために、コンフルエント未満の集団を、0.1%ウシ血清アルブミンとラクトフェリン断片サンプルを含む無血清培地中に置いた。ラクトフェリン断片サンプルを加えて6、24、及び48時間後に細胞数を分析した。トリプシン/EDTA(0.05%/0.53mM)に、約5分間、37℃で露出することによって、ウエルから細胞を分離した後、細胞数を測定した。計数は、血球計チャンバー中で実施した。活発に増殖する細胞及び不活発に増殖する細胞中への[3H]−チミジンの取り込みを、インキュベーション終了の2時間前に、[3H]−チミジン(1μCi/ウエル)で細胞をパルスすることによって評価した。非放射性チミジンを含むMEMで細胞を洗浄し、続いて10%トリクロロ酢酸を加えることによって、6、24又は48時間で実験を終了した。沈殿をエタノール:エーテル(3:1)で2回洗浄し、そしてウエルを室温で乾燥させた。残渣を2M KOH中に55℃で30分間溶解し、1M HClで中和し、そして放射活性をアリコートについて計測した。細胞計測数及びチミジン取り込みの両方について、各時点における各実験を、少なくとも6ウエルからなる実験群を用いて少なくとも4回別々に実施した。
【0112】
精製されたラクトフェリン断片サンプルの有糸分裂促進性応答は、骨芽細胞増殖速度を顕著に増加させることがわかった(すなわち、増殖細胞のDNA中へのチミジン取り込みの増加)。上記の骨形成性応答を、よく知られた骨芽細胞有糸分裂促進因子であるインスリン様成長因子1(IGF-1)のものと比較した。ラクトフェリン断片の応答の強度は、同じ骨芽細胞培養系におけるIGF-1に類似していた。
【0113】
表1は、実施例1において使用したラクトフェリン断片及び骨芽細胞増殖を刺激する最小用量範囲を記載する。結果は、上記のとおり、図1〜5及び8〜10にも示す。
【0114】
【表1】
【0115】
表1に関しては、大括弧中の文字は以下を表す:
(a)新生児ハムスターの腎臓細胞から発現された(Tweedie, et al.(1994))
(b)トリプシンによる切断及びMALDI-TOFマススペクトロメトリーによる確認(Superti, et al. (2001)
(c)SDS-PAGEにより見られる2つの主要な切断断片を生じる、ウシラクトフェリンのトリプシンによる制御された加水分解。サイズ排除及びイオン交換クロマトグラフィーにより単離された「C-葉」、エドマン配列決定により10アミノ酸残基が、SDS-PAGEによりサイズの同一性が確認される。N+C葉については、「N-葉」の同一性は、エドマン配列決定による10アミノ酸残基、そしてSDS-PAGEによるサイズにより確認され;「C-葉」の同一性はエドマン配列決定による10アミノ酸残基、そしてサイズにより確認される。エドマン配列決定により決定された、K282S283における追加の切断点の存在。Legrand et al. (1984)を参照のこと。
(d)Bachem(Switzerland)により製造された。
(e)American Peptide Company(USA)により製造された。Tomita et al. (1994)及びVogel, et al. (2002)も参照のこと。
(f)Auspep(Australia)により製造された。Tomita et al. (1994)及びVogel, et al. (2002)も参照のこと。
(g)0.1M 二炭酸アンモニウム、pH8.0中の2%w/vウシラクトフェリン(配列番号2)を、1:40のE:S比のトリプシン(Sigma T1426, Sigma Chemical Co., MO, USA)で20時間、35℃で加水分解した。反応をSDS-PAGEでモニターした。加水分解物を10分間、80℃まで加熱して、残りの酵素を不活性化し、そして、凍結乾燥によってペプチドを回収した。Orbitrap ESI-TRAP(Thermo Electron Corporation)でのLC/MS/MSによってペプチドを同定した(表1a)。同定されたペプチドのリストは、存在したかもしれないが分析条件下で検出されなかったか又は確認されなかった他のペプチドを必ずしも除外するものではない。ペプチドスコアが相同性又は同一性を示す場合、そして5個の連続した「y」又は「b」イオンがMS/MSデータ中にあったか、或いは短い配列では、4つの連続した「y」及び/または「b」のイオンが少なくとも2組あった場合にのみ、ペプチドを確認した。
(h)Auspep(Australia)により製造された。
(i)ウシラクトフェリン(配列番号2)を、1%(w/v)でミリQ水中に溶解し、そして、HClでpHを2.0に調整した。ペプシン(Sigma P7012)を、1:100のE:Sで加え、そして、SDS-PAGEでモニターしながら加水分解を35℃で20時間継続した。NaOHでpHを8.0に調整することによって加水分解を終了し、凍結乾燥によってペプチドを回収した。Orbitrap ESI-TRAP(Thermo Electron Corporation)でのLC/MS/MSによってペプチドを同定した(表1b)。ペプチドのリストは、存在したかもしれないが分析条件下で検出されなかった他のペプチドを必ずしも除外するものではない。
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
実施例2−ラクトフェリン断片が破骨細胞の発生を阻害する
ウシ骨髄培養を使用して、破骨細胞発生に対するラクトフェリン断片の効果を決定した。使用した方法は、先に記載されている(Cornish, et al., (2001)を参照のこと)。培地で骨髄腔を洗い流すことによって、4〜6週齢のSwiss雄性マウスの長骨から骨髄を得た。細胞懸濁液を2時間インキュベートし、そして非接着細胞を48ウエルプレートに播き、そして1,25ビタミンD3富化培地中で様々な濃度のラクトフェリン断片とともに1週間培養した。細胞を固定し、そして染色し、そして破骨細胞様の多核細胞を計数した。
【0122】
完全長組換えヒトラクトフェリンの組換えN-葉断片(配列番号5)及びラクトフェリンC-葉断片(配列番号8)を試験した。陽性阻害剤対照としてオステオプロテゲリンを使用した。完全長組換えヒトラクトフェリンも試験した。結果を上記の図6及び7に示す。
【0123】
実施例3−他のペプシン消化
ウシラクトフェリン(配列番号2)を、1%(w/v)でミリQ水中に溶解し、そしてHClでpHを2.0に調整した。1:100のE:Sでペプシン(Sigma P7012)を加え、そして、SDS-PAGEでモニターしながら加水分解を20時間、35℃で継続した。NaOHでpH8.0に調節することによって加水分解を終了し、加水分解物を80℃で10分間加熱して酵素を不活性化した。少量の不溶性物質を遠心分離によって除き、そして上清のペプチドを凍結乾燥によって回収した。Orbitrap ESI-TRAP(Thermo Electron Corporation)でのLC/MS/MSによってペプチドを同定した(表1c)。ペプチドのリストは、存在したかもしれないが分析条件下で検出されなかった他のペプチドを必ずしも除外するものではない。
【0124】
【表7】
【0125】
【表8】
【0126】
実施例4−軟骨細胞の増殖
無菌条件下でヒツジの脛骨及び大腿骨表面から軟骨組織(全層スライス)を取り外すことによって軟骨細胞を単離する。スライスを5%FBS(v/v)及び抗生物質(ペニシリン50g/L、ストレプトマイシン50g/L及びネオマイシン100g/L)を含むダルベッコ改変イーグル(DME)培地中に入れ、手術用メスの刃で細かく刻む。組織を取り出し、先ずプロナーゼ(0.8%w/vで90分)とともに、次にコラゲナーゼ(0.1%w/vで18時間)とともに37℃でインキュベートして消化を完結させる。遠心分離(1300rpmで10分間)により細胞を消化物から分離し、DME/5%FBS中に再懸濁し、90Fm孔サイズのナイロンメッシュスクリーンを通して未消化断片を除去し、そして再び遠心分離した。そして、細胞を洗浄し、同じ培地に2回再懸濁し、DME/10%FBSを入れた75cm2フラスコ中に播き、そして、37℃で5%CO2/95%空気下でインキュベートした。7日までにコンフルエンスに達し、そのときに細胞を継代培養する。トリプシン−EDTA(0.05%/0.53mM)を用いてトリプシン処理した後、DME/5%FBSで細胞をすすぎ、そして新鮮な培地中に再懸濁し、そして、24ウエルプレートに播いた(5×104細胞/mL、0.5mL/ウエル)。チミジン取り込みの測定は、骨芽細胞様細胞の培養について上記したように、増殖を止めた細胞集団においてチミジンの取り込み測定を実施した。
【0127】
実施例5−インビボでの骨成長の刺激
Cornishら((1993)Endocrinology 132, 1359-1366)により記載されたマウスモデルは、ラクトフェリン断片及び加水分解物によるインビボでの骨成長の刺激を評価するために使用されてよい。ラクトフェリン断片又は加水分解物の注射は5日間毎日与え、動物は1週間後にと殺する。骨形成は、新たに形成された骨の蛍光標識によって決定される。骨吸収及び骨量の指数は、画像分析ソフトウエアによって支援された慣用の光学顕微鏡によって測定される。
【0128】
適用
適用1
フルーツが添加された又はされない、14〜17%の固形分を含むヨーグルトの組を以下のように調製することができる。中温で加熱処理したスキムミルク粉末(109〜152g)及びALACO安定化剤(100g)を、50℃の水約880ml中で再構成する。無水乳脂肪(20g)を添加し、そして30分間混合する。混合物を60℃に加熱し、200バールでホモジェナイズし、そして90℃で低温殺菌する。40〜42℃の温度まで冷却後、スターター混合物及び凍結乾燥した上記のタンパク調製物(95%純度或いはそれほど精製度の高くない供給源からの質の等価なラクトフェリン断片又はその加水分解物を50mg以下)を添加する。所望により、新鮮なフルーツもこの時点で加えることができる。そして、混合物を容器に充填し、pH4.2〜4.4に達するまで40℃でインキュベートし、ブラストクーラー中で冷蔵する。
【0129】
同じヨーグルトの組を調製するための別の方法は、指示された量又は用量比率としての指示された量のラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物を乾燥混合して、ヨーグルト生成におけるその使用前に乾燥乳固体とする。
【0130】
適用2
スキムミルク又は全乳粉末とカルシウム及び凍結乾燥ラクトフェリン断片または加水分解物またはその混合物の乾燥混合物は、機能性食品又は機能性食品成分として使用可能な乳ベースの製剤又は組成物を生じさせることができる。かかる組成物は、再構成乳、乳粉末成分、乳製品デザート、機能性食品、チーズ又はバター又は飲料、そして栄養補助食品もしくは健康補助食品として使用可能である。乾燥成分を、乳粉末:カルシウム:活性ラクトフェリン断片又は加水分解物が90:9.5:0.5〜94:5.95:0.0001の間の比で混合すると、かかる用途のために好適な組成物を提供する。
【0131】
適用3
乳粉末、カルシウム、及びラクトフェリン断片又は加水分解物またはその混合物が混合された組成物は、骨の健康のための機能性食品、骨の健康のための食品成分、又は骨の健康のための栄養を送達するための食品成分として、健康食品の範囲内で使用可能である。
【0132】
かかる組成物のためには、組成物のカルシウム及びタンパク質含量は、必要とされ、許容可能な栄養の限度に調節される必要がある。商業的に入手可能な成分である乳粉末は、典型的には、それらの供給源に依存して100gの粉末あたり300〜900mgのカルシウムを含む。カルシウムの供給源が粉末に添加されて、混合物としての乳粉末成分の3重量%までカルシウム含量を拡張してもよい。商業的に入手可能な乳成分又は乳ベースのタンパク質粉末成分のタンパク質レベルは、成分の種類、その製造方法、及びその意図された用途に依存して異なる。乳粉末成分は典型的に12%〜92%のタンパク質を含む。例は、商業的に入手可能なスキムミルク及び全入粉末、食品グレードのカゼイン、カゼイネート、乳タンパク質濃縮粉末、スプレー乾燥された限外濾過又はマイクロフィルター濾過された残余物(retentate)粉末及び乳タンパク質単離物製品である。ラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物は、タンパク質とカルシウムの混合物中に組み込まれて、健康食品及び健康飲料中の成分として使用可能な栄養乳粉末を生成する。かかる混合物は、ヨーグルト及びヨーグルトドリンク、酸性飲料、乳粉末成分混合物、低温殺菌液体乳製品、UHT乳製品、発酵乳製品、酸性化乳飲料、ミルク及びシリアルの組み合わせ製品、麦芽乳、ミルク及び大豆の組み合わせ製品の調製における使用に好適な成分を提供する。かかる用途のためには、混合物は、カルシウム含量が0.001%〜3.5%(w/w)、タンパク質組成が2%〜92%である組成を有することができ、そして、骨芽細胞増殖剤としてのラクトフェリン断片又は加水分解物又はその混合物が、0.000001%〜5.5%のレベルで加えられる。
【0133】
工業的応用
本発明の医薬としての使用及び方法は、骨格成長の刺激、骨吸収の阻害、軟骨細胞増殖の刺激、骨芽細胞増殖の刺激、破骨細胞発生の阻害、或いは骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のために使用されることができる。該使用及び方法は、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物を含む、(食品又は栄養補助食品としての)食品組成物、栄養補助食品組成物、又は医薬組成物を採用することによって実施されることができる。
【0134】
当業者は、上記記載が例示のみのために提供され、そして本発明がそれに限定されないことを理解するであろう。
【0135】
【表9】
【0136】
【表10】
【0137】
【表11】
【0138】
【表12】
【0139】
【表13】
【0140】
【表14】
【0141】
【表15】
【0142】
【表16】
【0143】
【表17】
【0144】
【化4】
【0145】
【化5】
【0146】
【化6】
【0147】
【化7】
【0148】
【化8】
【0149】
【化9】
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、完全長組換えヒトラクトフェリンに比較した、組換えヒトラクトフェリン(rhLf)N-葉断片(配列番号5)の骨芽細胞増殖効果を示すグラフである(μg/ml)。*は、p<0.05で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図2】図2は、ヒトラクトフェリンN-葉断片(配列番号12、Bachem, Switzerland)[ANOVA, P<0.019;nLF 0.1μg/ml及びnLF 1μg/ml、P<0.05(ダネットの多重比較検定)]に比較した、ウシラクトフェリシン(配列番号16、American Peptide Company, USA)[ANOVA, P<0.006;LFC 0.1μg/ml P<0.05(ダネットの多重比較検定);LFC 10μg/ml P<0.01(ダネットの多重比較検定)]の骨芽細胞増殖効果を示すグラフである。
【図3】図3は、ウシC-葉断片(配列番号8)及び切断されたが分離されていないウシN-及びC-葉(配列番号8、9、10及び11)が、初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的でもあることを示すグラフである(x軸の単位はM、モルである)。*は、p<0.05で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図4】図4は、ウシN-葉(配列番号6)及びウシC-葉(配列番号7)がどちらも初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである(μg/ml)。*は、p<0.05で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図5】図5は、合成ウシラクトフェリシンペプチドが初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである(配列番号17)(μg/ml)。*は、p<0.05で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図6】図6は、完全長組換えヒトラクトフェリン又は完全長組換えヒトラクトフェリンの組換えN-葉断片(配列番号5)に曝露したときの、骨髄培養中での破骨細胞発生の阻害を示すグラフである。OPGはオステオプロテゲリン、陽性阻害剤対照。ANOVA P<0.0001;(ダネット)すべての*についてP<0.01。
【図7】図7は、ラクトフェリンC-葉断片(配列番号8)に曝露したときの、骨髄培養中での破骨細胞発生の阻害を示すグラフである。OPGはオステオプロテゲリン、陽性阻害剤対照。ANOVA P<0.0001;C-葉 50μg/ml P<0.05(ダネットの多重比較検定);OPG 10ng/ml P<0.01(ダネットの多重比較検定)。
【図8】図8は、ウシラクトフェリン(配列番号2)のトリプシン加水分解物も初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである。*は、p<0.03で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図9】図9は、合成ウシラクトフェランピン(配列番号33)も初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである。*は、p<0.02で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図10】図10は、合成ウシラクトフェリシン(配列番号14)も初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである。*は、p<0.01で有意に対照と異なることを意味する(ANOVAによる、ダネットの多重比較検定(post hoc Dunnett's test))。
【図11】図11は、ウシラクトフェランピン(配列番号33)、配列番号2のトリプシン加水分解物及び配列番号2のペプシン加水分解物が、初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである。*は、対照と有意に異なることを意味する。
【図12】図12は、ウシラクトフェリシン(配列番号14)が、0.01μg/mlで初代骨芽細胞に対して有糸分裂促進的であることを示すグラフである。*は、対照と有意に異なることを意味する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用であって、ここで、該ラクトフェリン断片が、以下の:
(a)切断されたラクトフェリンポリペプチド、又は
(b)ラクトフェリンのN−葉断片、又は
(c)ラクトフェリンのC−葉断片、又は
(d)ラクトフェリシン、又は
(e)ラクトフェランピン、又は
(f)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33の断片、又は
(g)(a)〜(f)のいずれかの機能的変異体、又は
(h)(a)〜(g)のいずれかの機能的断片、又は
(i)(a)〜(h)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる断片であるか、或いは上記ラクトフェリン加水分解物が、上記(a)〜(i)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、前記使用。
【請求項2】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つの切断されたラクトフェリンポリペプチド又はその機能的変異体又は機能的断片の使用。
【請求項3】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用であって、ここで、上記ラクトフェリン断片が以下の:
(a)ラクトフェリンのN−葉断片、又は
(b)ラクトフェリシン、又は
(c)(a)若しくは(b)の機能的変異体、又は
(d)(a)若しくは(b)若しくは(c)の機能的断片、又は
(e)(a)〜(d)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる断片であるか、或いは上記ラクトフェリン加水分解物が上記(a)〜(e)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、前記使用。
【請求項4】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用であって、ここで、上記ラクトフェリン断片が以下の:
(a)ラクトフェリンのC−葉断片、又は
(b)ラクトフェランピン、又は
(c)(a)若しくは(b)の機能的変異体、又は
(d)(a)若しくは(b)若しくは(c)の機能的断片、又は
(e)(a)〜(d)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる断片であるか、或いは上記ラクトフェリン加水分解物が上記(a)〜(e)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、前記使用。
【請求項5】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用であって、ここで、上記ラクトフェリン断片が以下の:
(a)配列番号7、8、11、18、19、21、23、30、31、32、若しくは33のポリペプチド、又は
(b)(a)の機能的変異体、又は
(c)(a)若しくは(b)の機能的断片、又は
(d)(a)〜(c)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる断片であるか、或いは上記ラクトフェリン加水分解物が上記(a)〜(d)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、前記使用。
【請求項6】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用であって、ここで、上記ラクトフェリン断片が以下の:
(a)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33、又は
(b)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33の機能的変異体、又は
(c)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33の機能的断片、又は
(d)(a)〜(c)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる断片であるか、或いは上記ラクトフェリン加水分解物が上記(a)〜(d)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、前記使用。
【請求項7】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン加水分解物の使用であって、ここで、上記加水分解物が、完全又は部分的酵素加水分解物、微生物による完全又は部分的な加水分解物、完全又は部分的な酸加水分解物、完全又は部分的な臭化シアン加水分解物、或いはその混合物である、前記使用。
【請求項8】
前記切断されたラクトフェリンポリペプチドが、そのN−末端、C−末端又はN−末端とC−末端の両方において少なくとも約10アミノ酸が切断されている配列番号1、2、3及び4から選ばれるポリペプチドである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項9】
前記切断されたラクトフェリンポリペプチドが、配列番号20、24又は26のポリペプチド、或いはその混合物である、請求項1、2又は8に記載の使用。
【請求項10】
前記N−葉断片又はその機能的断片が、配列番号5、6、9、10、12、25、27及び29から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である、請求項1又は3に記載の使用。
【請求項11】
前記C−葉断片又はその機能的断片が、配列番号7、8、11、18、19、21及び23から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である、請求項1又は4に記載の使用。
【請求項12】
前記ラクトフェリシン断片又はその機能的断片が、配列番号13、14、15、16、17及び28から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である、請求項1又は3に記載の使用。
【請求項13】
前記ラクトフェランピン断片が、配列番号30、31、32、及び33から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である、請求項1又は4に記載の使用。
【請求項14】
前記ラクトフェリン加水分解物が、以下の:
(a)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、若しくは33、又は
(b)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、若しくは33の機能的変異体、又は
(c)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、若しくは33の機能的断片、又は
(d)(a)〜(c)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、請求項7に記載の使用。
【請求項15】
前記酵素が、プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、又はその混合物から選ばれる、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項16】
前記酵素がトリプシンである、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項17】
前記酵素がペプシンである、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項18】
前記酵素がトリプシンであり、かつ前記ラクトフェリンが配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項19】
前記酵素がペプシンであり、かつ前記ラクトフェリンが配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項20】
前記加水分解物が、以下の:
【化1】
のペプチド、或いは骨芽細胞増殖を刺激するか又は破骨細胞発生を阻害することのできるそれからの選択物を含む、請求項7、14、16又は18に記載の使用。
【請求項21】
前記加水分解物が、以下の:
【化2】
のペプチド、或いは骨芽細胞増殖を刺激するか又は破骨細胞発生を阻害することのできるそれからの選択物を含む、請求項7、14、17又は19に記載の使用。
【請求項22】
前記微生物が、バシラス属、ビフィダス属、エンテロコッカス属、ラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、プロピオンバクター属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属又はその混合物から選ばれる、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項23】
前記酸が、トリフルオロ酢酸及び塩酸から選ばれる、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項24】
前記障害が、骨粗鬆症、リューマチ様関節炎、骨関節炎、肝性骨異栄養症、骨軟化症、クル病、嚢胞性線維性骨炎、腎性骨異栄養症、骨硬化症、骨減少症、骨性線維形成不全症、二次性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病、サルコイドーシス、ステロイド性骨粗鬆症、特発性高カルシウム血症、パジェット病、又は骨形成不全である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記障害が、骨粗鬆症である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記障害が、リューマチ様関節炎である、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
前記障害が、骨関節炎である、請求項24に記載の使用。
【請求項28】
前記組成物が、約50〜100重量%の少なくとも1種のラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物を含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
前記ラクトフェリン断片が、金属イオンに結合する金属イオン結合部位を含む、請求項1〜6及び8〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
前記ラクトフェリン断片が、独立して空であるか又は金属イオンに結合した、2つの金属イオン結合部位を含む、請求項1〜6及び8〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項31】
前記金属イオンが、ビスマスイオン、鉄イオン、銅イオン、クロミウムイオン、コバルトイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、又はその混合物から選ばれる、請求項29又は30に記載の使用。
【請求項32】
前記金属イオンが鉄イオンである、請求項29又は30に記載の使用。
【請求項33】
前記組成物が、食品、食品添加物、栄養補助食品、医療用食品、飲料、飲料添加物、栄養補助食品組成物又は医薬組成物である、請求項1〜32のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
前記組成物が医薬組成物である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記組成物が、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、ビタミンC,ビタミンD,ビタミンE及びビタミンK2から選ばれる剤、又はそのうちのいずれか2つ以上の混合物をさらに含む、請求項1〜34のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか1項において定義された、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の有効量を治療又は予防を必要とする対象に投与することを含む、骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための方法。
【請求項1】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用であって、ここで、該ラクトフェリン断片が、以下の:
(a)切断されたラクトフェリンポリペプチド、又は
(b)ラクトフェリンのN−葉断片、又は
(c)ラクトフェリンのC−葉断片、又は
(d)ラクトフェリシン、又は
(e)ラクトフェランピン、又は
(f)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33の断片、又は
(g)(a)〜(f)のいずれかの機能的変異体、又は
(h)(a)〜(g)のいずれかの機能的断片、又は
(i)(a)〜(h)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる断片であるか、或いは上記ラクトフェリン加水分解物が、上記(a)〜(i)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、前記使用。
【請求項2】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つの切断されたラクトフェリンポリペプチド又はその機能的変異体又は機能的断片の使用。
【請求項3】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用であって、ここで、上記ラクトフェリン断片が以下の:
(a)ラクトフェリンのN−葉断片、又は
(b)ラクトフェリシン、又は
(c)(a)若しくは(b)の機能的変異体、又は
(d)(a)若しくは(b)若しくは(c)の機能的断片、又は
(e)(a)〜(d)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる断片であるか、或いは上記ラクトフェリン加水分解物が上記(a)〜(e)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、前記使用。
【請求項4】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用であって、ここで、上記ラクトフェリン断片が以下の:
(a)ラクトフェリンのC−葉断片、又は
(b)ラクトフェランピン、又は
(c)(a)若しくは(b)の機能的変異体、又は
(d)(a)若しくは(b)若しくは(c)の機能的断片、又は
(e)(a)〜(d)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる断片であるか、或いは上記ラクトフェリン加水分解物が上記(a)〜(e)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、前記使用。
【請求項5】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用であって、ここで、上記ラクトフェリン断片が以下の:
(a)配列番号7、8、11、18、19、21、23、30、31、32、若しくは33のポリペプチド、又は
(b)(a)の機能的変異体、又は
(c)(a)若しくは(b)の機能的断片、又は
(d)(a)〜(c)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる断片であるか、或いは上記ラクトフェリン加水分解物が上記(a)〜(d)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、前記使用。
【請求項6】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の使用であって、ここで、上記ラクトフェリン断片が以下の:
(a)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33、又は
(b)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33の機能的変異体、又は
(c)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32若しくは33の機能的断片、又は
(d)(a)〜(c)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる断片であるか、或いは上記ラクトフェリン加水分解物が上記(a)〜(d)から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、前記使用。
【請求項7】
骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための組成物の製造における、少なくとも1つのラクトフェリン加水分解物の使用であって、ここで、上記加水分解物が、完全又は部分的酵素加水分解物、微生物による完全又は部分的な加水分解物、完全又は部分的な酸加水分解物、完全又は部分的な臭化シアン加水分解物、或いはその混合物である、前記使用。
【請求項8】
前記切断されたラクトフェリンポリペプチドが、そのN−末端、C−末端又はN−末端とC−末端の両方において少なくとも約10アミノ酸が切断されている配列番号1、2、3及び4から選ばれるポリペプチドである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項9】
前記切断されたラクトフェリンポリペプチドが、配列番号20、24又は26のポリペプチド、或いはその混合物である、請求項1、2又は8に記載の使用。
【請求項10】
前記N−葉断片又はその機能的断片が、配列番号5、6、9、10、12、25、27及び29から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である、請求項1又は3に記載の使用。
【請求項11】
前記C−葉断片又はその機能的断片が、配列番号7、8、11、18、19、21及び23から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である、請求項1又は4に記載の使用。
【請求項12】
前記ラクトフェリシン断片又はその機能的断片が、配列番号13、14、15、16、17及び28から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である、請求項1又は3に記載の使用。
【請求項13】
前記ラクトフェランピン断片が、配列番号30、31、32、及び33から選ばれるポリペプチドであるか、又はそのいずれか2つ以上の混合物である、請求項1又は4に記載の使用。
【請求項14】
前記ラクトフェリン加水分解物が、以下の:
(a)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、若しくは33、又は
(b)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、若しくは33の機能的変異体、又は
(c)配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、若しくは33の機能的断片、又は
(d)(a)〜(c)から選ばれるいずれか2つ以上の断片の混合物
から選ばれる少なくとも1つの断片を含む、請求項7に記載の使用。
【請求項15】
前記酵素が、プロテアーゼ、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、プラスミン、ペプシン、パパイン、ペプチダーゼ、アミノペプチダーゼ、又はその混合物から選ばれる、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項16】
前記酵素がトリプシンである、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項17】
前記酵素がペプシンである、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項18】
前記酵素がトリプシンであり、かつ前記ラクトフェリンが配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項19】
前記酵素がペプシンであり、かつ前記ラクトフェリンが配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドである、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項20】
前記加水分解物が、以下の:
【化1】
のペプチド、或いは骨芽細胞増殖を刺激するか又は破骨細胞発生を阻害することのできるそれからの選択物を含む、請求項7、14、16又は18に記載の使用。
【請求項21】
前記加水分解物が、以下の:
【化2】
のペプチド、或いは骨芽細胞増殖を刺激するか又は破骨細胞発生を阻害することのできるそれからの選択物を含む、請求項7、14、17又は19に記載の使用。
【請求項22】
前記微生物が、バシラス属、ビフィダス属、エンテロコッカス属、ラクトバシラス属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ペディオコッカス属、プロピオンバクター属、シュードモナス属、ストレプトコッカス属又はその混合物から選ばれる、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項23】
前記酸が、トリフルオロ酢酸及び塩酸から選ばれる、請求項7又は14に記載の使用。
【請求項24】
前記障害が、骨粗鬆症、リューマチ様関節炎、骨関節炎、肝性骨異栄養症、骨軟化症、クル病、嚢胞性線維性骨炎、腎性骨異栄養症、骨硬化症、骨減少症、骨性線維形成不全症、二次性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病、サルコイドーシス、ステロイド性骨粗鬆症、特発性高カルシウム血症、パジェット病、又は骨形成不全である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
前記障害が、骨粗鬆症である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記障害が、リューマチ様関節炎である、請求項24に記載の使用。
【請求項27】
前記障害が、骨関節炎である、請求項24に記載の使用。
【請求項28】
前記組成物が、約50〜100重量%の少なくとも1種のラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物を含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の使用。
【請求項29】
前記ラクトフェリン断片が、金属イオンに結合する金属イオン結合部位を含む、請求項1〜6及び8〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項30】
前記ラクトフェリン断片が、独立して空であるか又は金属イオンに結合した、2つの金属イオン結合部位を含む、請求項1〜6及び8〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項31】
前記金属イオンが、ビスマスイオン、鉄イオン、銅イオン、クロミウムイオン、コバルトイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、又はその混合物から選ばれる、請求項29又は30に記載の使用。
【請求項32】
前記金属イオンが鉄イオンである、請求項29又は30に記載の使用。
【請求項33】
前記組成物が、食品、食品添加物、栄養補助食品、医療用食品、飲料、飲料添加物、栄養補助食品組成物又は医薬組成物である、請求項1〜32のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
前記組成物が医薬組成物である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記組成物が、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、ビタミンC,ビタミンD,ビタミンE及びビタミンK2から選ばれる剤、又はそのうちのいずれか2つ以上の混合物をさらに含む、請求項1〜34のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
請求項1〜35のいずれか1項において定義された、少なくとも1つのラクトフェリン断片又はラクトフェリン加水分解物又はその混合物の有効量を治療又は予防を必要とする対象に投与することを含む、骨格、関節又は軟骨の障害の治療又は予防のための方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−514804(P2009−514804A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535487(P2008−535487)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/NZ2006/000263
【国際公開番号】WO2007/043900
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(501410698)オークランド ユニサービシーズ リミティド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/NZ2006/000263
【国際公開番号】WO2007/043900
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(501410698)オークランド ユニサービシーズ リミティド (4)
【Fターム(参考)】
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