説明

ラクトン不含のピロリドンからのN−ビニルピロリドンの製造方法

2−ピロリドンとアセチレンとの反応によるN−ビニルピロリドンの製造方法において、出発物質として使用される2−ピロリドン(以下、出発−2−ピロリドンと呼ばれる)が、100質量部の2−ピロリドンに対して1質量部未満のγ-ブチロラクトンを含有することを特徴とする、N−ビニルピロリドンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、出発物質として使用される2−ピロリドン(以下、出発−2−ピロリドンと呼ばれる)が、100質量部の2−ピロリドンに対して1質量部未満のγ−ブチロラクトンを含有することを特徴とする、2-ピロリドンとアセチレンとの反応によるN−ビニルピロリドンの製造方法に関する。
【0002】
N−ビニルピロリドンは工業的に2−ピロリドンをアセチレンによりビニル化することによって製造される。他方、2−ピロリドン(γ−ブチロラクタム)は、例えば、DE−A1795007号に記載されているように、ブチロラクタムとアンモニアとの反応によって得られる。N−ビニルピロリドンの製造の際に使用される2−ピロリドンは従って一般になおγ−ブチロラクトンの残量を含む。
【0003】
本発明の課題は、より高い空時収量及び可能な限り高いN−ビニルピロリドンの収率を有するN−ビニルピロリドンの製造方法である。
【0004】
それに応じて、冒頭に定義された方法が見出された。
【0005】
この方法のための出発物質は2−ピロリドン及びアセチレンである。
【0006】
本発明による方法の際に使用される2−ピロリドンは、以下、出発−2−ピロリドンと呼ばれる。
【0007】
2−ピロリドンはγ−ブチロラクタムとも呼ばれ且つ式
【化1】

の公知の化合物である。
【0008】
本発明によれば、出発−2−ピロリドンとして、100質量部の2−ピロリドンに対して、1質量部未満、有利には0.5質量部未満、特に有利には0.3質量部未満、殊に0.15質量部未満そして殊に有利には0.1質量部未満の式
【化2】

のγ−ブチロラクトンを含有する出発物質が使用される。
【0009】
γ−ブチロラクトンは後から望ましい程度まで2−ピロリドンから除去することができる。代替的に、得られる2−ピロリドンが上記の量より多くのγ−ブチロラクトンを含まないように、2−ピロリドンの製造も既に行うことができる。上記の最大含量のγ−ブチロラクトンを有する2−ピロリドンは市場で得られる。
【0010】
適当な出発−2−ピロリドンは、他の不純物又は副生成物を含んでよく、有利にはこれらを、含むとしても、ごく少量含むのみである。
【0011】
特に、適当な出発−2−ピロリドンは、100質量部の2−ピロリドンに対して、場合により以下の更なる成分を有する:
0〜2質量部、有利には0〜1質量部、特に有利には0〜0.1質量部の水及び
0〜2質量部、有利には0〜1質量部、特に有利には0〜0.1質量部のメチルピロリドン。
【0012】
出発−2−ピロリドンは、有利には97質量%を上回るまで、特に98質量%を上回るまで、特に有利には98.5質量%を上回るまで、更に特に有利には99質量%を上回るまで、殊に99.5質量%を上回るまで又は99.7質量%を上回るまで2−ピロリドンからなる。
【0013】
使用されるアセチレンも場合により副生成物及び不純物を含むことができる。特に、適当なアセチレンは場合により100質量部のアセチレンに対してわずか2質量部まで、殊に1質量部までのプロピンを含むことができる。
【0014】
この出発−2ピロリドンとアセチレンとの反応は、有利には触媒の存在下で行われる。
【0015】
触媒として殊にアルカリ金属−ピロリダートが有効であることが実証された。
【0016】
そのために、出発−2−ピロリドンは有利にはまずアルカリ金属水酸化物又はアルカリ金属アルコキシドと反応される。例えば、リチウム水酸化物、ナトリウム水酸化物又はカリウム水酸化物であってよく;特に有利にはカリウム水酸化物である。
【0017】
このアルカリ金属水酸化物は、有利には水溶液の形で使用される。アルカリ金属水酸化物の含量は、溶液を基準として、例えば、5〜90質量%であり;殊に30〜60質量%、殊に有利には45〜55質量%である。
【0018】
アルカリ金属水酸化物との反応は、有利には50〜250℃の温度且つ1ミリバール〜1バールで、殊に20〜250℃で行われる。塔頂での温度は有利には20〜100℃、殊に25〜60℃であり;塔底での温度は有利には100〜250℃、殊に120〜200℃である。
【0019】
この反応は有利には半連続的又は連続的に行われる。殊に有利には、これは連続的に行われる。
【0020】
有利には塔中の反応は、殊に有利には、上記の温度及び圧力で運転される、不規則充填物塔又は規則充填物塔中で行われる。これは有利には連続的に運転される。
【0021】
不規則充填物も規則充填物も含む塔、例えば、下部で不規則充填層を含み且つ上部で充填エレメント(例えば、取り付けられた鋼板)を有する塔が殊に有利である。
【0022】
塔は有利には少なくとも2つ、殊に有利には少なくとも3つの理論段を有する。これは例えば、2〜100個、殊に3〜20個の理論段を有することができる。
【0023】
アルカリ金属水酸化物及び2−ピロリドンは、有利にはカラムの上側三分の一に、特に有利には上側四分の一に添加される。
【0024】
反応ゾーン又は塔中のアルカリ金属水酸化物及び出発−2−ピロリドンの平均滞留時間は、6分より短く、殊に5分より短く、殊に有利には50〜200秒である。
【0025】
反応の際に相応するアルカリ金属塩、即ち、アルカリ金属ピロリダート、有利にはカリウムピロリダートが形成される。
【0026】
アルカリ金属水酸化物の量は有利には、0.25〜25質量%、有利には5〜20質量%の2−ピロリドンがピロリダート、又はカリウムピロリダートとして存在するように選択される。
【0027】
反応の生成物は塔の下部で又は塔底部で連続的に取り出すことができる。引き続き、次いで有利には別個の反応容器中でアセチレンとの反応が行われる。
【0028】
アルカリ金属塩はアセチレンとの引き続く反応(ビニル化)を触媒する。上記の塔からの搬出物は、更なる出発−2−ピロリドンと混合されてよい。
【0029】
ビニル化のために使用される2−ピロリドンは、従って有利には0.25〜10質量%まで、殊に1.5〜6質量%までピロリダートとして存在する。
【0030】
引き続くアセチレンによるビニル化は同様に非連続的、半連続的又は連続的に行うことができる。
【0031】
ビニル化は有利には連続的に行われる。
【0032】
アセチレンとの反応は有利には120〜220℃、殊に有利には140〜170℃の温度で且つ有利には1.0〜25バールそして殊に有利には10〜20バールの圧力で実施される。
【0033】
本発明による方法によってN−ビニルピロリドンが高い収率及び純度で得られる。それに対して、100質量部の2−ピロリドンに対して1質量部を上回るγ−ブチロラクトンを含む、出発−2−ピロリドンの使用は、はるかに低い収率を示す。ビニルピロリドンの収率の悪化は、ビニル化されていないγ−ブチロラクトンの単なる含量を超えるものである。従って1質量部を上回るγ−ブチロラクトンの存在によるビニルピロリドンの収率低下は、明らかなものではなく、また比例するものではない。
【0034】
実施例
実施例1
85.1g(1モル)の2−ピロリドン及び2.05g(30ミリモル)のカリウムメトキシドが装入され且つ真空中でメタノールが留去された。30gのそのように得られたバッチを、アセチレン20バール及び150℃で1時間ビニル化に供した。N−ビニルピロリドン(NVP)の収率は理論値の69%であった(ガスクロマトグラフィーにより測定される)。
【0035】
比較例1
85.1g(1モル)の2−ピロリドン、2.05g(30ミリモル)のカリウムメトキシド及び2.58g(30ミリモル)のガンマ−ブチロラクトンが装入され且つ真空中でメタノールが留去された。30gのそのように得られたバッチを、アセチレン20バール及び150℃で1時間ビニル化に供した。N−ビニルピロリドン(NVP)の収率は理論値の49%であった。
【0036】
比較例2
85.1g(1モル)の2−ピロリドン、2.05g(30ミリモル)のカリウムメトキシド及び1.29g(15ミリモル)のガンマ−ブチロラクトンが装入され且つ真空中でメタノールが留去された。30gのそのように得られたバッチを、アセチレン20バール及び150℃で1時間ビニル化に供した。N−ビニルピロリドン(NVP)の収率は理論値の52%であった。
【0037】
実施例2
85.1g(1モル)の2−ピロリドン、2.05g(30ミリモル)のカリウムメトキシド及び0.26g(3ミリモル)のガンマ−ブチロラクトンが装入され且つ真空中でメタノールが留去された。30gのそのように得られたバッチを、アセチレン20バール及び150℃で1時間ビニル化に供した。N−ビニルピロリドン(NVP)の収率は理論値の66%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−ピロリドンとアセチレンとの反応によるN−ビニルピロリドンの製造方法において、出発物質として使用される2−ピロリドン(以下、出発−2−ピロリドンと呼ばれる)が、100質量部の2−ピロリドンに対して1質量部未満のγ-ブチロラクトンを含有することを特徴とする、N−ビニルピロリドンの製造方法。
【請求項2】
出発−2−ピロリドンが0.15質量部未満のγ−ブチロラクトンを含有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
出発−2−ピロリドンとアセチレンとの反応が連続的に120〜220℃の温度且つ1〜25バールの圧力で行われることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
反応が触媒としてのカリウムピロリダートの存在下で行われることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2011−506282(P2011−506282A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536411(P2010−536411)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066251
【国際公開番号】WO2009/071479
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】