ラジアルタービンおよびラジアルタービンを備えたターボチャージャ
【課題】タービンホイールの大型化、重量増大、慣性モーメントの増大を伴わずに、タービンホイールに流入する流体の流れエネルギーを回転動力に効率的に変換可能なラジアルタービンおよび該ラジアルタービンを備えたターボチャージャを提供することを目的とする。
【解決手段】タービンホイール5のハブ外周面上に周方向に複数枚立設される動翼11と、該動翼11をガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼23と、中間部から出口部に設けられて前記上流側翼23とは周方向において位相がずれて配置される下流側翼25と、を備え、上流側翼の後縁部27と下流側翼の前縁部29とは子午面形状において領域Sで重なり合って設けられ、または一定距離以下の隙間を存して近接して設けることを特徴とする。
【解決手段】タービンホイール5のハブ外周面上に周方向に複数枚立設される動翼11と、該動翼11をガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼23と、中間部から出口部に設けられて前記上流側翼23とは周方向において位相がずれて配置される下流側翼25と、を備え、上流側翼の後縁部27と下流側翼の前縁部29とは子午面形状において領域Sで重なり合って設けられ、または一定距離以下の隙間を存して近接して設けることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ用のラジアルタービン、工場排熱や地熱などの排圧を膨脹させて動力を得る排熱回収用のエキスパンションタービン、ガスタービン用のラジアルタービン等のラジアルタービンおよび該ラジアルタービンを備えたターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
これらターボチャージャ用のラジアルタービン、排熱回収用のエキスパンションタービン、ガスタービン用のラジアルタービン等のラジアルタービンは、空気出力を回転動力へ変換する「効率の向上」と、適用されるエンジン等の出力変化に対する「回転加速度の向上」が常に要望されている。
例えば、過渡応答性が要求されるターボチャージャでは、排気エネルギーを吸い込み空気を圧縮するエネルギーへの変換効率の向上の要望と、小型軽量化を行いタービンホイールの慣性モーメントを低減し、加速時のターボエンジンのレスポンス向上に繋げるという要望がある。
【0003】
また、排熱回収用エキスパンダーなど排気エネルギーを電気エネルギーに変換に変換する設備では、タービン効率の向上による出力向上や、回収動力に対する設備コスト低減のためにタービンの小型化が要望されている。
【0004】
さらに、飛翔体用ジェットエンジンや航空機用ガスタービンエンジンに使用される場合には、小型軽量が重視され、タービン本体の小型軽量化とともに、効率向上による積載燃料の低減や、航続距離の延長が要望されている。さらに、航空機の運動性能を向上させるために急速な出力上昇を可能にするラジアルタービンの「回転加速度の向上」が要望される。
【0005】
ラジアルタービンの回転加速度の性能向上や、効率向上に関して種々の提案がなされている。例えば、特開平5−149103号公報(特許文献1)には、分割形ラジアルタービンインペラについて開示されており、タービンブレードの共振による破損を回避して、かつタービンインペラの効率向上を可能とするために、大径側タービンブレードと小径側タービンブレードとを、突部と、この突部と凹凸逆形状の切込み部との組み合わせによって接合してタービンインペラを形成する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−149103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的なラジアルタービンの子午面形状は、図14(a)に示すような形状を有している。
図14(a)において、タービンケーシング01内に収納されたタービンホイール02は、回転軸03と、該回転軸03に一体に形成されたハブ04と、ハブ04の外周に設けられたタービン翼05とを備え、タービンケーシング01内に形成されたカタツムリ状のスクロール室06により回転軸心07周りの速度を持った流れが作られてタービンホイール02の周りに旋回する。さらに、ノズル08によってその旋回速度が加速され、旋回流れがタービンホイール02のタービンホイール入口09から流入して径方向内向きに流れて、タービンホイール02の回転軸心07方向に向きを変えてタービンホイール出口010から回転軸心07の方向に排出されるようになっている。
【0008】
この図14(a)において、ノズル08は流速を高くする効果があるが、流量を制限する作用があるため、高効率が重視されるエキスパンションタービンには不可欠な要素であるが、大流量が要求され且つ流量変化が大きいターボチャージャではノズルを設けないことが一般的であり、また、その両立を狙って可変ノズルを設けることも多用されている。
【0009】
図14(b)は、翼枚数が少ないラジアルタービンの例を示しており、翼が8枚の場合のタービンホイールを軸方向下流側から見た(X方向視)図である。ターボチャージャでは一般に数枚から十数枚程度の翼枚数が使用されている。
ターボチャージャにおいて翼枚数を少なくする理由は、翼重量を小さくし、慣性モーメントを小さくすることにより、エンジンの出力増加および減少に対するターボチャージャのレスポンスの遅れ(所謂ターボラグ)を低減することにある。ところが翼枚数を少なくすると、流れのエネルギーを回転動力に変換する「変換能率」が低下する問題がある。
なお、以下この変換能率とは、タービンホイールによって流れの速度と向きを変化させることによって理論的に得られる出力への変換割合を示すものと定義する。また、この変換能率に内部損失の割合を掛けた値を「タービン効率」と定義する。
【0010】
この変換能率の低下は、次のようなメカニズムで発生する。
まず、図14(a)、(b)において、タービンホイール010の入口領域の半径内向きの流れの領域に注目しA−A断面の流れを説明する。この断面内では、渦なし流れの原理によりタービンホイールに相対的にタービンホイールの回転方向と逆方向の旋回流(見かけの旋流)011が生じる。
【0011】
その結果、タービンホイール入口09に旋回速度−ΔCu1(逆方向を示すためにマイナスを付記し、また入口を示す添え字として「1」を使用)が生じ、実質的にタービンホイール入口09の旋回速度Cu1が減少しタービンホイール02が回転エネルギーに変換できるエネルギー量が減少する。
【0012】
さらに、B−B断面は流れが半径方向内向きから軸方向に転向した後の断面である。この断面B−Bでは、主流の流れはこの断面にほぼ直角に流れるので、その流れを下流から見たときの流れ場に渦なし流れの原理が影響する。この断面でも、渦なし流れはタービンホイール010の回転方向とは逆向きの旋回流012として現れる。この旋回流012は主流の流れにほぼ直角な断面内の流れであるため、二次流れと呼ばれる。
【0013】
これら断面内の逆旋回流の流速の大きさは、翼間に分布した−2ωの渦度によって生じるものであり、おおよそそれぞれの通路の幅を代表長さとする円の半径にωを掛けた値で代表される。
【0014】
この断面B−Bにおける二次流れの効果について説明する。この二次流れが発生すると、断面B−Bのシュラウド側の旋回速度Cu2が減少し、タービンホイールが回転エネルギーに変換できるエネルギー量が減少する。逆に、ハブ側ではタービンホイールの回転方向の旋回流速が大きくなるが、シュラウド側とハブ側とでは回転軸心07からの半径が大きく異なり、回転エネルギーに変換できるエネルギー量は旋回速度Cuと翼の旋回流の旋回速度Uの積で表される量を持つので、半径の大きいシュラウド側の効果が大きい。
以上のような作用により、A−A断面でも、B−B断面でも、渦なし流れ効果により、変換能率が低下しタービン効率が低下することとなる。
【0015】
この流れのエネルギーを回転動力に変換する変換能率は主にタービンの大きさや翼面積により支配され、タービン効率はこの変換能率とタービン内部の流れの圧力損失に依存して決まる。
高効率が要求される機種では、この流れエネルギーを回転動力に変換する変換能率低下を防止するために、翼枚数を増加する。例えば、図14(c)に翼枚数を2倍にした場合を示す。このようにすると、前述した逆旋回流の代表直径が半分になるので、逆旋回流速が同様に半減し、動力への変換能率上昇し、同一サイズ(外径)のタービンホイールでも大きい回転動力を取り出すことが可能になる。
【0016】
しかし、動翼出口スロート面積が減少して、タービンの大きさを維持しながら、大きい流量にすることが困難になる問題や、重量の増加と慣性モーメントの増加という問題が生じる。
特に、ターボチャージャでは、高効率且つ、同一の大きさでより大流量を流したいという要求に加え、慣性モーメントを低くしたいという要求があるので、翼枚数を増加するとレスポンスが低下し、さらに、流量が減少するという逆効果となる問題がある。
【0017】
また、前記した特許文献1には、タービンブレードの共振による破損を回避してタービンインペラの効率向上を可能とする技術が示されているが、流れエネルギーを回転動力に効率良く変換してタービンインペラの効率向上を図る記載はない。
【0018】
そこで、本発明は以上のような問題に鑑みてなされたものであり、タービンホイールの大型化、重量増大、慣性モーメントの増大を伴わずに、タービンホイールに流入する流体の流れエネルギーを回転動力に効率的に変換可能なラジアルタービンおよび該ラジアルタービンを備えたターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するため、本発明は、タービンケーシング内に収納され、該タービンケーシングに形成されたスクロール室によって生成された回転軸周りのガスの旋回流を径方向内向きに導入してから回転軸方向に向きを変えて排出して回転運動が与えられるタービンホイールと、該タービンホイールのハブ外周面上に周方向に複数枚立設される動翼と、該動翼を構成するとともに、ガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼と、前記タービン翼を構成するとともに、中間部から出口部に設けられ、前記上流側翼とは周方向において位相がずれて配置される下流側翼と、を備え、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが子午面形状において重なり合うように配置されることを特徴とする。
【0020】
かかる発明によれば、ラジアルタービンの動翼が、流体入口から流体出口まで繋がったフルブレード(全翼)ではなく、途中で分断された上流側翼と下流側翼とによって構成し、上流側翼と下流側翼とが周方向に相対的に位相がずれて設けられる。
そして、上流側翼の後縁部と下流側翼の前縁部とは子午面形状において重なり合う領域を設けることによって、上流側翼と下流側翼とが同枚数の場合であれば、図1の断面B−Bでは翼枚数が2倍になり、これによって翼間の長さは逆に半分になるので、二次流れの強さは半分になり、下流側翼の入口部におけるシュラウド近傍の逆向きの旋回流速が半減する。これによって、下流側翼の変換能率が向上する。
【0021】
また、下流側翼の作用が上流にも及ぶので、上流側の流れの変換能率も向上する。すなわち、下流側翼の入口部において翼枚数が2倍となったことによって二次流れの低減効果が生じると同時に、この低減効果が上流側の流れにも影響して結果的にはタービンホイール全体としての入口部の旋回速度の減少を抑えて動翼全体の変換能率が向上し、タービン効率の向上効果も期待できる。
【0022】
動翼の変換能率が向上し、タービン効率が向上することができるようになるため、変換能率が向上した分、タービンホイールの動翼の翼枚数を減少させることもできる。つまり、上流側翼と、下流側翼とを設けるとともに重なり合う領域を設けたため、その重なり合う領域の分だけ重量が増加し、慣性モーメントも増加するが、変換能率が向上した分翼枚数を低減することによって対応可能となる。
【0023】
なお、本発明では、ラジアルタービンとは、背板が傾斜してなるもの、および入口が回転軸に対して傾斜して径方向に対して傾斜してガスが流入する斜流タービンも含むものとする。
また、前述した上流側翼と下流側翼との重なりは、子午面形状においてシュラウド側からハブ側に至る全域で重なり合う場合に限らず、一部で重なっていてもよい。
【0024】
また、本発明は、タービンケーシング内に収納され、該タービンケーシングに形成されたスクロール室によって生成された回転軸周りのガスの旋回流を径方向内向きに導入してから回転軸方向に向きを変えて排出して回転運動が与えられるタービンホイールと、該タービンホイールのハブ外周面上に周方向に複数枚立設される動翼と、該動翼を構成するとともに、ガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼と、前記タービン翼を構成するとともに、中間部から出口部に設けられ、前記上流側翼とは周方向において位相がずれて配置される下流側翼と、を備え、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが子午面形状において一定の距離以下の隙間を有して近接して配置されることを特徴とする。
【0025】
かかる発明によれば、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とは子午面形状において重なり合わずに一定の距離以下の隙間を有して近接して設けられていてもよく、この重なり合わない場合には上流側翼の後縁部と下流側翼の前縁部との間で生じる二次流れ強さの低減効果、すなわち、翼枚数を2倍としたのと同様の旋回流の生成による二次流れの低減効果は得られないとしても、低減の影響が得られる。この近接の間隔は、例えば、上流側翼と下流側翼の周方向間隔以下とするとよい。
重なり合わずに一定距離以下の距離を有して近接して配置させることによって、動翼の製作において重なり合うことによる流路の閉塞が少なくなるため、鋳造等による製作が容易になる利点を有する。
【0026】
また、本発明において好ましくは、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが重なり合う、または一定距離以下の隙間を存して近接する領域が、前記タービンホイールに流入したガスが半径方向から回転軸方向に向きを変える転向領域に設けられるとよい。
【0027】
このように、上流側翼はタービンホイールの半径の大きい領域に設けられ、下流側翼は半径の小さい領域に設けられ、重なり合う領域または一定距離以下の隙間を存して近接する領域が、前記タービンホイールに流入したガスが半径方向から回転軸方向に向きを変える半径の小さい転向領域に設けられるため、翼枚数の低減は半径の大きい領域の重量減少に大きく寄与し、半径の小さい領域の重量が増加する傾向を生じる。
【0028】
この半径毎の領域の重量分布の変化を慣性モーメントに関して思料すると慣性モーメントは半径の2乗に比例するので、従来タービンのような入口部から出口部の全域にわたって全翼を有するラジアルタービンに比べて、半径の大きい領域の重量低減が大きく、タービンホイール全体としての慣性モーメントの低減を効果的に達成できる。
従って、慣性モーメントを低減でき、タービンの「回転加速度の向上」ができるため、内燃機関やガスタービンに用いた場合には、ターボラグの低減による性能向上が達成される。
【0029】
また、本発明において好ましくは、前記下流側翼の前縁部の位置を前記上流側翼の圧力面側もしくは負圧面側に偏って設置されるとよい。
このように、前記下流側翼の前縁部の位置を前記上流側翼の圧力面側に偏って近接して設ける場合、翼間が狭くなることによる流れの整流作用によって、下流側翼の負圧面側の流れが下流側翼の負圧面に沿って流入させることができる。
また、前記下流側翼の前縁部の位置を前記上流側翼の負圧面側に偏って近接して設ける場合、翼間が狭くなることによる流れの整流作用によって、下流側翼の圧力面側の流れが下流側翼の圧力面に沿って流入させることができる。
従って、下流側翼の圧力面側もしくは負圧面側に沿った流れとすることができるため、下流側翼による流れ損失を低減できる。
【0030】
また、本発明において好ましくは、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部はほぼ半径方向に形成されるとよい。
このように、下流側翼の前縁部がほぼ半径方向に形成されることによって、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部との重なり合うまたは近接する領域を、回転軸方向に向きを変える転向領域の後半部に位置させることが容易になり、前述したようにタービンホイール全体としての慣性モーメントの低減を効果的に達成できるようになる。
【0031】
また、本発明において好ましくは、前記上流側翼の後縁部がほぼ半径方向に形成され、前記下流側翼の前縁部が回転軸方向とほぼ平行に形成されるとよい。
このような構成により、回転軸方向に向きを変える転向領域の全域に重なり合う領域を位置させることができる。
渦なし流れの原理によりタービンホイールに相対的にタービンホイールの回転方向と逆方向に発生する見かけの旋回流はタービンホイールの回転によるものであるため、旋回流は回転軸に平行な軸の廻りにできる。従って、下流側翼の前縁部を回転軸方向とほぼ平行に形成することによって、下流側翼の前縁部によって、下流側翼上流の旋回流を効果的に2つに分割することができる。このため、下流側翼の翼間長さに応じた二次流れを確実に低減できるので、二次流れ強さの低減によって下流側翼での変換能率をより確実に向上できるようになる。
【0032】
また、本発明において好ましくは、前記下流側翼の前縁部がほぼ半径方向に形成されるとともに、前記下流側翼の前縁部の流れ方向上流側から見た形状が、シュラウド側では子午面からタービンホイールの回転方向に開く入口角が形成され、ハブ側では子午面から回転方向と逆向きに開く入口角が形成されているとよい。
【0033】
図9のC−C断面においても、渦なし流れの原理により、タービンホイールの回転方向と逆方向に発生する見かけの旋回流が生じている(図10、11)。このため、下流側翼の前縁部におけるシュラウド側では負圧面側から流入し、ハブ側では圧力面側から流入するため、下流側翼の前縁部への衝突角度が大きくなり損失が増大する。そのため、前記下流側翼の前縁部がほぼ半径方向に形成される場合には、シュラウド側の前縁部の翼形状を子午面からタービンホイールの回転方向に開くように入口角α(図11、12)が形成され、ハブ側では子午面から回転方向と逆向きに開くように入口角β(図11、12)が形成されることによって、下流側翼の前縁部への旋回流の流入に対する衝突角度(インシデンス)を小さくでき、流れ損失を低減できる。なお、入口角α、βについては同一に設定しているが異ならせてもよい。
【0034】
また、本発明において好ましくは、前記下流側翼の前縁部が回転軸方向とほぼ平行に形成されるとともに、前記下流側翼の前縁部を回転軸方向から見た断面形状が、シュラウド側からハブ側に亘ってタービンホイールの回転方向と逆向きに開く入口角が形成されるとよい。
【0035】
前記下流側翼の前縁部が回転軸方向とほぼ平行に形成される場合においては、前記下流側翼の前縁部の子午面に直角方向の断面形状が、シュラウド側からハブ側に亘ってタービンホイールの回転方向と逆向きに開く入口角が形成されることによって、下流側翼の前縁部への旋回流の流入に対する衝突角度(インシデンス)を小さくでき、流れ損失を低減できる。
【0036】
また、本発明のラジアルタービンを具備するターボチャージャは、以上説明したラジアルタービンが設けられるとともに、該ラジアルタービンによって駆動されるコンプレッサを備えることを特徴とする。
これによって、タービンホイールの小型化、タービン翼枚数の低減、レスポンスの向上、回転動力への変換効率の向上が図れるラジアルタービンを備えたターボチャージャを得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、タービン翼をガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼と、中間部から出口部に設けられた下流側翼とで分割して構成し、上流側翼と下流側翼とは周方向において位相がずれて配置されるとともに、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とは子午面形状において重なり合う、または一定距離以下の隙間を存して近接して設けるので、タービンホイールの大型化、重量増大、慣性モーメントの増大を伴わずに、タービンホイールに流入する流体の流れエネルギーを回転動力に効率的に変換可能となる。
【0038】
また、変換能率が向上した分、翼枚数を低減することが可能になり、これによって、タービンホイールの小型化、タービン翼枚数の低減、レスポンスの向上、回転動力への変換効率の向上が図れるラジアルタービンを備えたターボチャージャを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるラジアルタービンンの全体構成を示す断面図である。
【図2】第1実施形態のタービンホイールの軸方向視を示す説明図である。
【図3】第1実施形態の上流側翼の後縁形状および下流側翼の前縁形状の変形例を示す図1対応の断面図である。
【図4】第2実施形態を示す図2に対応する説明図である。
【図5】第3実施形態を示す図1に対応する断面図である。
【図6】第3実施形態のタービンホイールの軸方向視を示す説明図である。
【図7】第3実施形態の下流側翼の前縁部の作用を示す説明図である。
【図8】第4実施形態を示す図1に対応する断面図である。
【図9】第5実施形態を示す図1に対応する断面図である。
【図10】第5実施形態のタービンホイールの軸方向視を示す説明図である。
【図11】第5実施形態のB−B線断面図、C−C線断面図を示す説明図である。
【図12】第5実施形態の下流側翼の形状を示す説明図である。
【図13】第6実施形態を示し、下流端翼の前縁形状を示す一部断面説明図である
【図14】従来技術を示す説明図であり、(a)は全体構成を示す断面図であり、(b)はタービンホイールの軸方向視を示し、(c)はタービンホイールの翼枚数を増加した場合の(b)対応説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0041】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜3を参照して説明する。
このラジアルタービン1は、車両エンジンの過給機(ターホチャージャ)に用いられる例について説明する。
図1において、ラジアルタービン1には、タービンケーシング3と、タービンケーシング3内に回転可能に支持されて収納されたタービンホイール5とが備えられている。このタービンホイール5は、回転軸7と該回転軸7に一体形成されたハブ9と、ハブ9の外周面に立設された動翼11とを備え、タービンケーシング3内に形成されたカタツムリ状のスクロール室13によって回転軸心15周りの速度を持った旋回流れが作られて、タービンホイール5の外周側を旋回する。
また、タービンケーシング3のタービンホイール5の外周側にタービンホイール5を覆うようにシュラウド部16が形成されている。
【0042】
さらに、ノズル17によってその旋回速度が加速され、旋回流れがタービンホイール5のタービンホイール入口19から流入して径方向内向きに流れて、その後向きを変えてタービンホイール5の回転軸心15の方向に流れてタービンホイール出口21から排出されるようになって。そして、排ガスの旋回流による旋回エネルギーがタービンホイール5の回転エネルギーに変換されて、タービンホイール5を回転させて、図示されないエンジンの排気部へと排ガスが排出されるようになっている。
また、このラジアルタービン1にはエンジンへの給気を加圧する図示しないコンプレッサが接続されてターボチャージャを構成している。
【0043】
なお、ノズル17は流速を高くする効果があるが、流量を制限する作用があるため、大流量が要求され且つ流量変化が大きいターボチャージャでは設けなくてもよく、また、流速と流量を変化させるために可変ノズルを設けてもよい。
【0044】
タービンホイール5のハブ9外周面上には周方向に複数枚の動翼11が立設され、この動翼11は、排ガスの入口部であるタービンホイール入口19から中間部までに設けられた上流側翼23と、中間部から排ガスの出口部であるタービンホイール出口21までに設けられた下流側翼25とによって構成され、上流側翼23と下流側翼25とは周方向において位相がずれて同枚数配置されている。
さらに、上流側翼の後縁部27と、下流側翼の前縁部29とはハブ9の子午面形状において重なり合うように設置されている。すなわち、図1において符号Sで示す領域において重なり合うように設置されている。
【0045】
そして、上流側翼の後縁部27と、下流側翼の前縁部29との重なり合う領域Sは、排ガスがタービンホイール入口19から流入して、回転軸心15へ内向き方向に流入し、中間部で回転軸心15方向に向きを変える転向領域に設けられている。
【0046】
また、上流側翼23と下流側翼25とは同数からなり周方向に相対的に位相がずれて設けられ、上流側翼の後縁部27と、下流側翼の前縁部29とは周方向において、均等な間隔になるように、上流側翼の後縁部27、27間のほぼ中央に、下流側翼の前縁部29が位置するように配置されている。
従って、重なり合う領域Sにおいては、翼枚数が周方向に等間隔に2倍設けられている関係になっている。
【0047】
以上の構成によるラジアルタービン1の作用について図2を参照して説明する。
エンジンからの排ガスは、タービンホイール5のタービンホイール入口19から径方向内向きに流れ込んで、上流側翼23の圧力面31側に当たり、タービンホイール5に図2において左回りの回転を付与するように作用する。そして回転角速度ωで回転する。
【0048】
図2において、タービンホイール5の入口領域の半径内向きの流れの領域に注目しA−A断面内では、渦なし流れの原理によりタービンホイール5に相対的にタービンホイール5の回転方向と逆方向の旋回流33が生じる。
【0049】
この逆方向の旋回流33は、下流に流れるにつれて下流側翼の前縁部29で2分割されて旋回流33a、33bとなり、逆旋回流の代表直径である翼間の長さが半分になるため、重なり合う領域Sでは、タービンホイール5の回転方向と逆向きの旋回速度も半分になる。すなわち、断面B−Bの部分では、図2に示すように、下流側翼25の入口部におけるシュラウド部16近傍に生じる逆向きの旋回流速35が半減する。
【0050】
これによって、下流側翼25の変換能率を向上することができる。そして、下流側翼25の作用が上流にも及ぶので、上流側の流れの変換能率も向上する。すなわち、下流側翼25の前縁部29の重なり合う領域Sでは、翼枚数が2倍となったことによって二次流れの低減効果が生じるが、この低減効果が上流側の流れにも影響して結果的にはタービンホイール5全体としてのタービンホイール入口19の旋回速度Cu1の減少を抑えて動翼11全体の変換能率が向上し、タービン効率の向上効果も期待できる。
【0051】
なお、上流側翼の後縁部27、および下流側翼の前縁部29の翼端形状は半径方向線に沿った直線状の形状を説明したが、図3のように、径方向に直線形状ではなく径方向に対して傾斜形状27a、29a、曲線形状27b、29bであってもよく、鋳造による一体成型が行いやすい形状に設定することで設計の自由度および製作の容易性を向上できる。
【0052】
以上のように動翼11の変換能率が向上し、タービン効率が向上できるようになるため、変換能率が向上した分、動翼11の翼枚数を減少させることができる、上流側翼23と、下流側翼25とを設けるとともに重なり合う領域Sを設けるため、その重なり合う領域の分だけ重量が増加し、慣性モーメントも増加するが、変換能率が向上した分、翼枚数を低減することによって結果的に軽量化を達成し、慣性モーメントも低減可能となる。
【0053】
すなわち、上流側翼23はタービンホイール5の半径の大きい領域に設けられ、下流側翼25は半径の小さい領域に設けられ、重なり合う領域Sが、排ガス流が回転軸方向に向きを変える半径の小さい転向領域に設けられるため、翼枚数の低減は半径の大きい領域の重量減少に大きく寄与し、重なり合う領域による重量増加は半径の小さい領域の重量増加を生じる傾向である。
【0054】
この半径毎の領域の重量分布の変化を慣性モーメントに関して思料すると慣性モーメントは半径の2乗に比例するので、従来タービンのような入口部から出口部の全域にわたって全翼を有するラジアルタービンに比べて、慣性モーメントは半径の2乗に比例するので、半径の大きい領域の重量低減が大きく、タービンホイール全体としての慣性モーメントの低減を効果的に達成できる。従って、慣性モーメントを低減でき、タービンの「回転加速度の向上」ができるため、内燃機関やガスタービンに用いた場合には、ターボラグの低減による性能向上が得られる。
【0055】
一例として、上流側翼23と下流側翼25とがそれぞれ10枚の動翼11において、重なり領域が、従来の全翼(フルブレード)の翼面積の10%であれば、翼の重量は10%重くなる。しかし、本実施形態においては重なり面積に比例して変化効率が増加すると考えられるため、重なり部分の翼面積に相当する10%の変化効率の増加が得られるので、翼枚数を9枚に減少させることができ、重量は従来と同等となる。その時、上流側翼23は下流側翼25に比べて半径が約2倍なので、翼の1枚分の慣性モーメントが減少し、重なり部の慣性モーメントの増加が約1/4故に、結果として約7.5%の慣性モーメントを低減できる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図4を参照して説明する。
第2実施形態は、第1実施形態においては、上流側翼の後縁部27、27間のほぼ中央に、下流側翼の前縁部29が位置するように配置されていたが、第2実施形態においては、下流側翼の前縁部29の位置を上流側翼23の圧力面31側もしくは負圧面37側に偏って配置するものである。第1実施形態と同様の構成について同一符号を付して説明は省略するする。
【0057】
図4に示すように、両側の上流側翼の後縁部27、27の間に配置された下流側翼の前縁部29を、上流側翼23の圧力面31側に偏って配置されている。
このように、下流側翼の前縁部29の位置を上流側翼23の圧力面31側に偏って近接して設ける場合には、上流側翼23の圧力面31側と下流側翼25の負圧面39側との間の翼間隔が狭くなることによる流れの整流作用によって、下流側翼25に沿って流れる排ガスを下流側翼25の負圧面39に沿って流すことができる。
【0058】
また、図4の下流側翼の前縁部29の配置とは逆の配置関係として、下流側翼の前縁部29の位置を上流側翼23の負圧面37側に偏って近接して設ける場合には、上流側翼23の負圧面337側と下流側翼25の圧力面41側との間の翼間隔が狭くなることによる流れの整流作用によって、下流側翼25に沿って流れる排ガスを下流側翼25の圧力面41に沿って流すことができる。
【0059】
このように、下流側翼の前縁部29と上流側翼の後縁部27との配置関係を偏らせて翼間隔を狭くして流れの整流作用によって、上流側翼23の間から下流側翼25の間に流れる排ガス流に対して、下流側翼25の圧力面41側もしくは負圧面39側に沿った流れとすることができるため、下流側翼25による流れ損失を低減できる。
【0060】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図5〜7を参照して説明する。
第1実施形態においては上流側翼の後縁部27と下流側翼の前縁部29とは、ほぼ半径方向に形成されているが、この第3実施形態では、上流側翼の後縁部27がほぼ半径方向に形成され、下流側翼の前縁部45が回転軸心15方向とほぼ平行に形成されるものである。第1実施形態と同様の構成について同一符号を付して説明は省略する。
【0061】
図5に示ように、下流側翼44の前縁部45が回転軸心15方向とほぼ平行に形成されている。
また、図7に示すように、タービンホイール5の入口領域の半径内向きの流れの領域に注目しA−A断面内では、渦なし流れの原理によりタービンホイール5に相対的にタービンホイール5の回転方向と逆方向の旋回流53が生じる。
【0062】
この逆方向の旋回流33は、下流に流れるにつれて下流側翼の前縁部45で2分割されて旋回流53a、53bとなり、逆旋回流の代表直径である翼間の長さが半分になるため、重なり合う領域Sでは、タービンホイール5の回転方向と逆向きの旋回速度も半分になる。すなわち、断面B−Bの部分では、図7に示すように、下流側翼44の入口部におけるシュラウド部16近傍に生じる逆向きの旋回流速55が半減する。
【0063】
渦なし流れの原理によりタービンホイール5に相対的にタービンホイール5の回転方向と逆方向に発生する旋回流53はタービンホイール5の回転によるものであるため、旋回流53は回転軸心15に平行な軸の廻りにできる。従って、下流側翼の前縁部45を回転軸心15方向とほぼ平行に形成することによって、下流側翼の前縁部45によって、下流側翼44上流の旋回流53の下流側への流れに沿って効果的に2つ旋回流53a、53bに分割することができる。
【0064】
すなわち、旋回流53の旋回面に対して直角方向に下流側翼の前縁部45が延びて設けられるため、この下流側縁の前縁部45によって2つの旋回流53a、53bに効果的に分割が可能である。
このため、下流側翼25の翼間長さに応じた二次流れを確実に生成できるので、二次流れ強さの低減によって下流側翼25での変換能率をより確実に向上できるようになる。
【0065】
なお、下流側翼の前縁部45の形状は、回転軸方向とほぼ平行に形成された直線状の形状を説明したが、図5のように、回転軸心15に平行に直線形状ではなく、回転軸心15方向に対して傾斜形状45aであって、曲線形状45bであってもよく、鋳造による一体成型が行いやすい形状に設定することで設計の自由度および製作の容易性を向上できる。
また、図7は、下流側翼44のA−A断面形状を分かりやすく模式的に記載したものであり、図6は下流側翼44を図2に対応するように回転軸心15方向に見た図面である。
【0066】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図8を参照して説明する。
第1実施形態においては、上流側翼の後縁部27と、下流側翼の前縁部29とはハブ9の子午面形状において重なり合うように設置されている。すなわち、図1において符号Sで示す領域において重なり合っていたが、この第4実施形態では、上流側翼の後縁部27と下流側翼の前縁部29との重なりは、子午面形状においてシュラウド側からハブ側に至る全域で重なり合う場合に限らず、一部で重なっているか、または、重なり合わずに一定の距離以下で近接して設けられている。第1実施形態と同様の構成について同一符号を付して説明は省略する。
【0067】
図8に示すように、上流側翼の後縁部27と下流側翼の前縁部29との重なりは、子午面形状においてシュラウド部16側からハブ9側に至る全域で重なり合わず、一部で重なっているか、または、重なり合わずに近接して設けられている。
図8の符号29aは下流側翼の前縁部29が、半径方向に斜めに傾斜した形状に形成され、上流側翼の後縁部27と一部において重なっている。一部において重なっていれば、第1実施形態で説明したような二次流れ強さの低減効果が、その重なり部分で得られ、また重なり状態の寸法を厳しく管理することが不要になるため、タービンホイールの製造が容易化する。
【0068】
また、下流側翼の前縁部29が、上流側翼の後縁部27と回転軸心15方向において隙間Lを介しており、重なり合わないように設置されている。
この重なり合わない場合には、上流側翼の後縁部27と下流側翼の前縁部29との間で生じる二次流れ強さの低減効果が、翼枚数を2倍としたのと同様の旋回流の生成による二次流れの低減効果ほど得られなくても低減効果の影響が得られる程度の隙間L(図8)であればよい。
この隙間Lは一定の距離以下の間隔であり、例えば、上流側翼23と下流側翼25の周方向間隔以下とする。上流側翼の後縁部27と、下流側翼の前縁部29との間で生じる二次流れの旋回流の径が、上流側翼23と下流側翼25の周方向間隔に相当するため、この間隔の範囲内であれば旋回流の影響が及ぶからである。
【0069】
なお、重なり合わずに所定の間隔を隔て上流側翼23と下流側翼25を配置することで、動翼11の鋳造等による製作において重なり合うことによる流路の閉塞がなくなるため、製作が容易になる利点を有する。
【0070】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について図9〜12を参照して説明する。
この第5実施形態は、第1実施形態の下流側翼の前縁部29の形状を、該下流側翼の前縁部29に流入される旋回流33に対して、衝突角度(インシデンス)を小さくするように傾斜している。第1実施形態と同様の構成について同一符号を付して説明は省略する。
【0071】
図9のC−C断面においても、渦なし流れの原理により、タービンホイール5の回転方向と逆方向に発生する旋回流63が生じている(図10、11)。
図11は、下流側翼25のB−B断面形状、C−C断面形状を、ハブ9側を下部にシュラウド部16を上部にして模式的に示したものである。図12は、この下流側翼25のハブ9上面の取り付け形状と、シュラウド部16側の形状をそれぞれ示すものである。
【0072】
旋回流63は、下流側翼25に対してシュラウド部16側では負圧面39側から流入し、ハブ9側では圧力面41側から流入する。このため、下流側翼の前縁部29の流れ方向上流側から見た形状が、シュラウド部16側では子午面からタービンホイール5の回転方向(ω方向)に開くように入口角α(図11、12)が形成され、ハブ側では子午面から回転方向と逆向きに開くように入口角β(図11、12)が形成される。入口角α、βについては同一に設定しているが異ならせてもよい。
【0073】
図12に示すように、下流側翼25のハブ9面上の形状と、シュラウド部16側の翼形状とをそれぞれ示すものであり、C−C断面においては、ハブ9面上の位置とシュラウド部16側の位置とが、回転軸心15を含む子午線に対して入口角α、βだけ開いた形状をしていることが分かる。
【0074】
下流側翼25の前縁部分をこのような形状に形成されることによって、下流側翼の前縁部29への旋回流63の流入に対して衝突角度(インシデンス)を小さくでき、流れ損失を低減できる。
【0075】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について図13を参照して説明する。
この第6実施形態は、第3実施形態の下流側翼の前縁部45の形状を、流入される旋回流53に対して、衝突角度(インシデンス)を小さくするように傾斜している。第3実施形態と同様の構成について同一符号を付して説明は省略する。
【0076】
図5の第3実施形態のように下流側翼の前縁部45が回転軸心15方向とほぼ平行に形成される場合においては、図13のA−A断面に示すように、この断面においても、渦なし流れの原理により、タービンホイール5の回転方向と逆方向に発生する旋回流53が生じている。この旋回流53は、下流側翼44に対して、図13の符号53で示すように旋回して流入するため、下流側翼の前縁部45の形状が、タービンホイール5の回転方向と逆向きに開く入口角γが形成されている。
【0077】
すなわち、下流側翼の前縁部45のA−A断面形状が、シュラウド側からハブ側に亘ってタービンホイール5の回転方向と逆向きに開く入口角γが形成されることによって、下流側翼の前縁部45への旋回流53の流入に対する衝突角度(インシデンス)を小さくでき、流れ損失を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、タービンホイールの大型化、重量増大、慣性モーメントの増大を伴わずに、タービンホイールに流入する流体の流れエネルギーを回転動力に効率的に変換可能であるため、ターボチャージャ用のラジアルタービン、工場排熱や地熱などの排圧を膨脹させて動力を得る排熱回収用のエキスパンションタービン、ガスタービン用のラジアルタービン等のラジアルタービンへの利用に適している。
【符号の説明】
【0079】
1 ラジアルタービン
3 タービンケーシング
5 タービンホイール
7 回転軸
9 ハブ
11 動翼
13 スクロール室
15 回転軸心
16 シュラウド部
17 ノズル
19 タービンホイール入口
21 タービンホイール出口
23 上流側翼
25、44 下流側翼
27 上流側翼の後縁部
29、45 下流側翼の前縁部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ用のラジアルタービン、工場排熱や地熱などの排圧を膨脹させて動力を得る排熱回収用のエキスパンションタービン、ガスタービン用のラジアルタービン等のラジアルタービンおよび該ラジアルタービンを備えたターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
これらターボチャージャ用のラジアルタービン、排熱回収用のエキスパンションタービン、ガスタービン用のラジアルタービン等のラジアルタービンは、空気出力を回転動力へ変換する「効率の向上」と、適用されるエンジン等の出力変化に対する「回転加速度の向上」が常に要望されている。
例えば、過渡応答性が要求されるターボチャージャでは、排気エネルギーを吸い込み空気を圧縮するエネルギーへの変換効率の向上の要望と、小型軽量化を行いタービンホイールの慣性モーメントを低減し、加速時のターボエンジンのレスポンス向上に繋げるという要望がある。
【0003】
また、排熱回収用エキスパンダーなど排気エネルギーを電気エネルギーに変換に変換する設備では、タービン効率の向上による出力向上や、回収動力に対する設備コスト低減のためにタービンの小型化が要望されている。
【0004】
さらに、飛翔体用ジェットエンジンや航空機用ガスタービンエンジンに使用される場合には、小型軽量が重視され、タービン本体の小型軽量化とともに、効率向上による積載燃料の低減や、航続距離の延長が要望されている。さらに、航空機の運動性能を向上させるために急速な出力上昇を可能にするラジアルタービンの「回転加速度の向上」が要望される。
【0005】
ラジアルタービンの回転加速度の性能向上や、効率向上に関して種々の提案がなされている。例えば、特開平5−149103号公報(特許文献1)には、分割形ラジアルタービンインペラについて開示されており、タービンブレードの共振による破損を回避して、かつタービンインペラの効率向上を可能とするために、大径側タービンブレードと小径側タービンブレードとを、突部と、この突部と凹凸逆形状の切込み部との組み合わせによって接合してタービンインペラを形成する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−149103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的なラジアルタービンの子午面形状は、図14(a)に示すような形状を有している。
図14(a)において、タービンケーシング01内に収納されたタービンホイール02は、回転軸03と、該回転軸03に一体に形成されたハブ04と、ハブ04の外周に設けられたタービン翼05とを備え、タービンケーシング01内に形成されたカタツムリ状のスクロール室06により回転軸心07周りの速度を持った流れが作られてタービンホイール02の周りに旋回する。さらに、ノズル08によってその旋回速度が加速され、旋回流れがタービンホイール02のタービンホイール入口09から流入して径方向内向きに流れて、タービンホイール02の回転軸心07方向に向きを変えてタービンホイール出口010から回転軸心07の方向に排出されるようになっている。
【0008】
この図14(a)において、ノズル08は流速を高くする効果があるが、流量を制限する作用があるため、高効率が重視されるエキスパンションタービンには不可欠な要素であるが、大流量が要求され且つ流量変化が大きいターボチャージャではノズルを設けないことが一般的であり、また、その両立を狙って可変ノズルを設けることも多用されている。
【0009】
図14(b)は、翼枚数が少ないラジアルタービンの例を示しており、翼が8枚の場合のタービンホイールを軸方向下流側から見た(X方向視)図である。ターボチャージャでは一般に数枚から十数枚程度の翼枚数が使用されている。
ターボチャージャにおいて翼枚数を少なくする理由は、翼重量を小さくし、慣性モーメントを小さくすることにより、エンジンの出力増加および減少に対するターボチャージャのレスポンスの遅れ(所謂ターボラグ)を低減することにある。ところが翼枚数を少なくすると、流れのエネルギーを回転動力に変換する「変換能率」が低下する問題がある。
なお、以下この変換能率とは、タービンホイールによって流れの速度と向きを変化させることによって理論的に得られる出力への変換割合を示すものと定義する。また、この変換能率に内部損失の割合を掛けた値を「タービン効率」と定義する。
【0010】
この変換能率の低下は、次のようなメカニズムで発生する。
まず、図14(a)、(b)において、タービンホイール010の入口領域の半径内向きの流れの領域に注目しA−A断面の流れを説明する。この断面内では、渦なし流れの原理によりタービンホイールに相対的にタービンホイールの回転方向と逆方向の旋回流(見かけの旋流)011が生じる。
【0011】
その結果、タービンホイール入口09に旋回速度−ΔCu1(逆方向を示すためにマイナスを付記し、また入口を示す添え字として「1」を使用)が生じ、実質的にタービンホイール入口09の旋回速度Cu1が減少しタービンホイール02が回転エネルギーに変換できるエネルギー量が減少する。
【0012】
さらに、B−B断面は流れが半径方向内向きから軸方向に転向した後の断面である。この断面B−Bでは、主流の流れはこの断面にほぼ直角に流れるので、その流れを下流から見たときの流れ場に渦なし流れの原理が影響する。この断面でも、渦なし流れはタービンホイール010の回転方向とは逆向きの旋回流012として現れる。この旋回流012は主流の流れにほぼ直角な断面内の流れであるため、二次流れと呼ばれる。
【0013】
これら断面内の逆旋回流の流速の大きさは、翼間に分布した−2ωの渦度によって生じるものであり、おおよそそれぞれの通路の幅を代表長さとする円の半径にωを掛けた値で代表される。
【0014】
この断面B−Bにおける二次流れの効果について説明する。この二次流れが発生すると、断面B−Bのシュラウド側の旋回速度Cu2が減少し、タービンホイールが回転エネルギーに変換できるエネルギー量が減少する。逆に、ハブ側ではタービンホイールの回転方向の旋回流速が大きくなるが、シュラウド側とハブ側とでは回転軸心07からの半径が大きく異なり、回転エネルギーに変換できるエネルギー量は旋回速度Cuと翼の旋回流の旋回速度Uの積で表される量を持つので、半径の大きいシュラウド側の効果が大きい。
以上のような作用により、A−A断面でも、B−B断面でも、渦なし流れ効果により、変換能率が低下しタービン効率が低下することとなる。
【0015】
この流れのエネルギーを回転動力に変換する変換能率は主にタービンの大きさや翼面積により支配され、タービン効率はこの変換能率とタービン内部の流れの圧力損失に依存して決まる。
高効率が要求される機種では、この流れエネルギーを回転動力に変換する変換能率低下を防止するために、翼枚数を増加する。例えば、図14(c)に翼枚数を2倍にした場合を示す。このようにすると、前述した逆旋回流の代表直径が半分になるので、逆旋回流速が同様に半減し、動力への変換能率上昇し、同一サイズ(外径)のタービンホイールでも大きい回転動力を取り出すことが可能になる。
【0016】
しかし、動翼出口スロート面積が減少して、タービンの大きさを維持しながら、大きい流量にすることが困難になる問題や、重量の増加と慣性モーメントの増加という問題が生じる。
特に、ターボチャージャでは、高効率且つ、同一の大きさでより大流量を流したいという要求に加え、慣性モーメントを低くしたいという要求があるので、翼枚数を増加するとレスポンスが低下し、さらに、流量が減少するという逆効果となる問題がある。
【0017】
また、前記した特許文献1には、タービンブレードの共振による破損を回避してタービンインペラの効率向上を可能とする技術が示されているが、流れエネルギーを回転動力に効率良く変換してタービンインペラの効率向上を図る記載はない。
【0018】
そこで、本発明は以上のような問題に鑑みてなされたものであり、タービンホイールの大型化、重量増大、慣性モーメントの増大を伴わずに、タービンホイールに流入する流体の流れエネルギーを回転動力に効率的に変換可能なラジアルタービンおよび該ラジアルタービンを備えたターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成するため、本発明は、タービンケーシング内に収納され、該タービンケーシングに形成されたスクロール室によって生成された回転軸周りのガスの旋回流を径方向内向きに導入してから回転軸方向に向きを変えて排出して回転運動が与えられるタービンホイールと、該タービンホイールのハブ外周面上に周方向に複数枚立設される動翼と、該動翼を構成するとともに、ガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼と、前記タービン翼を構成するとともに、中間部から出口部に設けられ、前記上流側翼とは周方向において位相がずれて配置される下流側翼と、を備え、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが子午面形状において重なり合うように配置されることを特徴とする。
【0020】
かかる発明によれば、ラジアルタービンの動翼が、流体入口から流体出口まで繋がったフルブレード(全翼)ではなく、途中で分断された上流側翼と下流側翼とによって構成し、上流側翼と下流側翼とが周方向に相対的に位相がずれて設けられる。
そして、上流側翼の後縁部と下流側翼の前縁部とは子午面形状において重なり合う領域を設けることによって、上流側翼と下流側翼とが同枚数の場合であれば、図1の断面B−Bでは翼枚数が2倍になり、これによって翼間の長さは逆に半分になるので、二次流れの強さは半分になり、下流側翼の入口部におけるシュラウド近傍の逆向きの旋回流速が半減する。これによって、下流側翼の変換能率が向上する。
【0021】
また、下流側翼の作用が上流にも及ぶので、上流側の流れの変換能率も向上する。すなわち、下流側翼の入口部において翼枚数が2倍となったことによって二次流れの低減効果が生じると同時に、この低減効果が上流側の流れにも影響して結果的にはタービンホイール全体としての入口部の旋回速度の減少を抑えて動翼全体の変換能率が向上し、タービン効率の向上効果も期待できる。
【0022】
動翼の変換能率が向上し、タービン効率が向上することができるようになるため、変換能率が向上した分、タービンホイールの動翼の翼枚数を減少させることもできる。つまり、上流側翼と、下流側翼とを設けるとともに重なり合う領域を設けたため、その重なり合う領域の分だけ重量が増加し、慣性モーメントも増加するが、変換能率が向上した分翼枚数を低減することによって対応可能となる。
【0023】
なお、本発明では、ラジアルタービンとは、背板が傾斜してなるもの、および入口が回転軸に対して傾斜して径方向に対して傾斜してガスが流入する斜流タービンも含むものとする。
また、前述した上流側翼と下流側翼との重なりは、子午面形状においてシュラウド側からハブ側に至る全域で重なり合う場合に限らず、一部で重なっていてもよい。
【0024】
また、本発明は、タービンケーシング内に収納され、該タービンケーシングに形成されたスクロール室によって生成された回転軸周りのガスの旋回流を径方向内向きに導入してから回転軸方向に向きを変えて排出して回転運動が与えられるタービンホイールと、該タービンホイールのハブ外周面上に周方向に複数枚立設される動翼と、該動翼を構成するとともに、ガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼と、前記タービン翼を構成するとともに、中間部から出口部に設けられ、前記上流側翼とは周方向において位相がずれて配置される下流側翼と、を備え、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが子午面形状において一定の距離以下の隙間を有して近接して配置されることを特徴とする。
【0025】
かかる発明によれば、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とは子午面形状において重なり合わずに一定の距離以下の隙間を有して近接して設けられていてもよく、この重なり合わない場合には上流側翼の後縁部と下流側翼の前縁部との間で生じる二次流れ強さの低減効果、すなわち、翼枚数を2倍としたのと同様の旋回流の生成による二次流れの低減効果は得られないとしても、低減の影響が得られる。この近接の間隔は、例えば、上流側翼と下流側翼の周方向間隔以下とするとよい。
重なり合わずに一定距離以下の距離を有して近接して配置させることによって、動翼の製作において重なり合うことによる流路の閉塞が少なくなるため、鋳造等による製作が容易になる利点を有する。
【0026】
また、本発明において好ましくは、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが重なり合う、または一定距離以下の隙間を存して近接する領域が、前記タービンホイールに流入したガスが半径方向から回転軸方向に向きを変える転向領域に設けられるとよい。
【0027】
このように、上流側翼はタービンホイールの半径の大きい領域に設けられ、下流側翼は半径の小さい領域に設けられ、重なり合う領域または一定距離以下の隙間を存して近接する領域が、前記タービンホイールに流入したガスが半径方向から回転軸方向に向きを変える半径の小さい転向領域に設けられるため、翼枚数の低減は半径の大きい領域の重量減少に大きく寄与し、半径の小さい領域の重量が増加する傾向を生じる。
【0028】
この半径毎の領域の重量分布の変化を慣性モーメントに関して思料すると慣性モーメントは半径の2乗に比例するので、従来タービンのような入口部から出口部の全域にわたって全翼を有するラジアルタービンに比べて、半径の大きい領域の重量低減が大きく、タービンホイール全体としての慣性モーメントの低減を効果的に達成できる。
従って、慣性モーメントを低減でき、タービンの「回転加速度の向上」ができるため、内燃機関やガスタービンに用いた場合には、ターボラグの低減による性能向上が達成される。
【0029】
また、本発明において好ましくは、前記下流側翼の前縁部の位置を前記上流側翼の圧力面側もしくは負圧面側に偏って設置されるとよい。
このように、前記下流側翼の前縁部の位置を前記上流側翼の圧力面側に偏って近接して設ける場合、翼間が狭くなることによる流れの整流作用によって、下流側翼の負圧面側の流れが下流側翼の負圧面に沿って流入させることができる。
また、前記下流側翼の前縁部の位置を前記上流側翼の負圧面側に偏って近接して設ける場合、翼間が狭くなることによる流れの整流作用によって、下流側翼の圧力面側の流れが下流側翼の圧力面に沿って流入させることができる。
従って、下流側翼の圧力面側もしくは負圧面側に沿った流れとすることができるため、下流側翼による流れ損失を低減できる。
【0030】
また、本発明において好ましくは、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部はほぼ半径方向に形成されるとよい。
このように、下流側翼の前縁部がほぼ半径方向に形成されることによって、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部との重なり合うまたは近接する領域を、回転軸方向に向きを変える転向領域の後半部に位置させることが容易になり、前述したようにタービンホイール全体としての慣性モーメントの低減を効果的に達成できるようになる。
【0031】
また、本発明において好ましくは、前記上流側翼の後縁部がほぼ半径方向に形成され、前記下流側翼の前縁部が回転軸方向とほぼ平行に形成されるとよい。
このような構成により、回転軸方向に向きを変える転向領域の全域に重なり合う領域を位置させることができる。
渦なし流れの原理によりタービンホイールに相対的にタービンホイールの回転方向と逆方向に発生する見かけの旋回流はタービンホイールの回転によるものであるため、旋回流は回転軸に平行な軸の廻りにできる。従って、下流側翼の前縁部を回転軸方向とほぼ平行に形成することによって、下流側翼の前縁部によって、下流側翼上流の旋回流を効果的に2つに分割することができる。このため、下流側翼の翼間長さに応じた二次流れを確実に低減できるので、二次流れ強さの低減によって下流側翼での変換能率をより確実に向上できるようになる。
【0032】
また、本発明において好ましくは、前記下流側翼の前縁部がほぼ半径方向に形成されるとともに、前記下流側翼の前縁部の流れ方向上流側から見た形状が、シュラウド側では子午面からタービンホイールの回転方向に開く入口角が形成され、ハブ側では子午面から回転方向と逆向きに開く入口角が形成されているとよい。
【0033】
図9のC−C断面においても、渦なし流れの原理により、タービンホイールの回転方向と逆方向に発生する見かけの旋回流が生じている(図10、11)。このため、下流側翼の前縁部におけるシュラウド側では負圧面側から流入し、ハブ側では圧力面側から流入するため、下流側翼の前縁部への衝突角度が大きくなり損失が増大する。そのため、前記下流側翼の前縁部がほぼ半径方向に形成される場合には、シュラウド側の前縁部の翼形状を子午面からタービンホイールの回転方向に開くように入口角α(図11、12)が形成され、ハブ側では子午面から回転方向と逆向きに開くように入口角β(図11、12)が形成されることによって、下流側翼の前縁部への旋回流の流入に対する衝突角度(インシデンス)を小さくでき、流れ損失を低減できる。なお、入口角α、βについては同一に設定しているが異ならせてもよい。
【0034】
また、本発明において好ましくは、前記下流側翼の前縁部が回転軸方向とほぼ平行に形成されるとともに、前記下流側翼の前縁部を回転軸方向から見た断面形状が、シュラウド側からハブ側に亘ってタービンホイールの回転方向と逆向きに開く入口角が形成されるとよい。
【0035】
前記下流側翼の前縁部が回転軸方向とほぼ平行に形成される場合においては、前記下流側翼の前縁部の子午面に直角方向の断面形状が、シュラウド側からハブ側に亘ってタービンホイールの回転方向と逆向きに開く入口角が形成されることによって、下流側翼の前縁部への旋回流の流入に対する衝突角度(インシデンス)を小さくでき、流れ損失を低減できる。
【0036】
また、本発明のラジアルタービンを具備するターボチャージャは、以上説明したラジアルタービンが設けられるとともに、該ラジアルタービンによって駆動されるコンプレッサを備えることを特徴とする。
これによって、タービンホイールの小型化、タービン翼枚数の低減、レスポンスの向上、回転動力への変換効率の向上が図れるラジアルタービンを備えたターボチャージャを得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、タービン翼をガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼と、中間部から出口部に設けられた下流側翼とで分割して構成し、上流側翼と下流側翼とは周方向において位相がずれて配置されるとともに、前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とは子午面形状において重なり合う、または一定距離以下の隙間を存して近接して設けるので、タービンホイールの大型化、重量増大、慣性モーメントの増大を伴わずに、タービンホイールに流入する流体の流れエネルギーを回転動力に効率的に変換可能となる。
【0038】
また、変換能率が向上した分、翼枚数を低減することが可能になり、これによって、タービンホイールの小型化、タービン翼枚数の低減、レスポンスの向上、回転動力への変換効率の向上が図れるラジアルタービンを備えたターボチャージャを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるラジアルタービンンの全体構成を示す断面図である。
【図2】第1実施形態のタービンホイールの軸方向視を示す説明図である。
【図3】第1実施形態の上流側翼の後縁形状および下流側翼の前縁形状の変形例を示す図1対応の断面図である。
【図4】第2実施形態を示す図2に対応する説明図である。
【図5】第3実施形態を示す図1に対応する断面図である。
【図6】第3実施形態のタービンホイールの軸方向視を示す説明図である。
【図7】第3実施形態の下流側翼の前縁部の作用を示す説明図である。
【図8】第4実施形態を示す図1に対応する断面図である。
【図9】第5実施形態を示す図1に対応する断面図である。
【図10】第5実施形態のタービンホイールの軸方向視を示す説明図である。
【図11】第5実施形態のB−B線断面図、C−C線断面図を示す説明図である。
【図12】第5実施形態の下流側翼の形状を示す説明図である。
【図13】第6実施形態を示し、下流端翼の前縁形状を示す一部断面説明図である
【図14】従来技術を示す説明図であり、(a)は全体構成を示す断面図であり、(b)はタービンホイールの軸方向視を示し、(c)はタービンホイールの翼枚数を増加した場合の(b)対応説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0041】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1〜3を参照して説明する。
このラジアルタービン1は、車両エンジンの過給機(ターホチャージャ)に用いられる例について説明する。
図1において、ラジアルタービン1には、タービンケーシング3と、タービンケーシング3内に回転可能に支持されて収納されたタービンホイール5とが備えられている。このタービンホイール5は、回転軸7と該回転軸7に一体形成されたハブ9と、ハブ9の外周面に立設された動翼11とを備え、タービンケーシング3内に形成されたカタツムリ状のスクロール室13によって回転軸心15周りの速度を持った旋回流れが作られて、タービンホイール5の外周側を旋回する。
また、タービンケーシング3のタービンホイール5の外周側にタービンホイール5を覆うようにシュラウド部16が形成されている。
【0042】
さらに、ノズル17によってその旋回速度が加速され、旋回流れがタービンホイール5のタービンホイール入口19から流入して径方向内向きに流れて、その後向きを変えてタービンホイール5の回転軸心15の方向に流れてタービンホイール出口21から排出されるようになって。そして、排ガスの旋回流による旋回エネルギーがタービンホイール5の回転エネルギーに変換されて、タービンホイール5を回転させて、図示されないエンジンの排気部へと排ガスが排出されるようになっている。
また、このラジアルタービン1にはエンジンへの給気を加圧する図示しないコンプレッサが接続されてターボチャージャを構成している。
【0043】
なお、ノズル17は流速を高くする効果があるが、流量を制限する作用があるため、大流量が要求され且つ流量変化が大きいターボチャージャでは設けなくてもよく、また、流速と流量を変化させるために可変ノズルを設けてもよい。
【0044】
タービンホイール5のハブ9外周面上には周方向に複数枚の動翼11が立設され、この動翼11は、排ガスの入口部であるタービンホイール入口19から中間部までに設けられた上流側翼23と、中間部から排ガスの出口部であるタービンホイール出口21までに設けられた下流側翼25とによって構成され、上流側翼23と下流側翼25とは周方向において位相がずれて同枚数配置されている。
さらに、上流側翼の後縁部27と、下流側翼の前縁部29とはハブ9の子午面形状において重なり合うように設置されている。すなわち、図1において符号Sで示す領域において重なり合うように設置されている。
【0045】
そして、上流側翼の後縁部27と、下流側翼の前縁部29との重なり合う領域Sは、排ガスがタービンホイール入口19から流入して、回転軸心15へ内向き方向に流入し、中間部で回転軸心15方向に向きを変える転向領域に設けられている。
【0046】
また、上流側翼23と下流側翼25とは同数からなり周方向に相対的に位相がずれて設けられ、上流側翼の後縁部27と、下流側翼の前縁部29とは周方向において、均等な間隔になるように、上流側翼の後縁部27、27間のほぼ中央に、下流側翼の前縁部29が位置するように配置されている。
従って、重なり合う領域Sにおいては、翼枚数が周方向に等間隔に2倍設けられている関係になっている。
【0047】
以上の構成によるラジアルタービン1の作用について図2を参照して説明する。
エンジンからの排ガスは、タービンホイール5のタービンホイール入口19から径方向内向きに流れ込んで、上流側翼23の圧力面31側に当たり、タービンホイール5に図2において左回りの回転を付与するように作用する。そして回転角速度ωで回転する。
【0048】
図2において、タービンホイール5の入口領域の半径内向きの流れの領域に注目しA−A断面内では、渦なし流れの原理によりタービンホイール5に相対的にタービンホイール5の回転方向と逆方向の旋回流33が生じる。
【0049】
この逆方向の旋回流33は、下流に流れるにつれて下流側翼の前縁部29で2分割されて旋回流33a、33bとなり、逆旋回流の代表直径である翼間の長さが半分になるため、重なり合う領域Sでは、タービンホイール5の回転方向と逆向きの旋回速度も半分になる。すなわち、断面B−Bの部分では、図2に示すように、下流側翼25の入口部におけるシュラウド部16近傍に生じる逆向きの旋回流速35が半減する。
【0050】
これによって、下流側翼25の変換能率を向上することができる。そして、下流側翼25の作用が上流にも及ぶので、上流側の流れの変換能率も向上する。すなわち、下流側翼25の前縁部29の重なり合う領域Sでは、翼枚数が2倍となったことによって二次流れの低減効果が生じるが、この低減効果が上流側の流れにも影響して結果的にはタービンホイール5全体としてのタービンホイール入口19の旋回速度Cu1の減少を抑えて動翼11全体の変換能率が向上し、タービン効率の向上効果も期待できる。
【0051】
なお、上流側翼の後縁部27、および下流側翼の前縁部29の翼端形状は半径方向線に沿った直線状の形状を説明したが、図3のように、径方向に直線形状ではなく径方向に対して傾斜形状27a、29a、曲線形状27b、29bであってもよく、鋳造による一体成型が行いやすい形状に設定することで設計の自由度および製作の容易性を向上できる。
【0052】
以上のように動翼11の変換能率が向上し、タービン効率が向上できるようになるため、変換能率が向上した分、動翼11の翼枚数を減少させることができる、上流側翼23と、下流側翼25とを設けるとともに重なり合う領域Sを設けるため、その重なり合う領域の分だけ重量が増加し、慣性モーメントも増加するが、変換能率が向上した分、翼枚数を低減することによって結果的に軽量化を達成し、慣性モーメントも低減可能となる。
【0053】
すなわち、上流側翼23はタービンホイール5の半径の大きい領域に設けられ、下流側翼25は半径の小さい領域に設けられ、重なり合う領域Sが、排ガス流が回転軸方向に向きを変える半径の小さい転向領域に設けられるため、翼枚数の低減は半径の大きい領域の重量減少に大きく寄与し、重なり合う領域による重量増加は半径の小さい領域の重量増加を生じる傾向である。
【0054】
この半径毎の領域の重量分布の変化を慣性モーメントに関して思料すると慣性モーメントは半径の2乗に比例するので、従来タービンのような入口部から出口部の全域にわたって全翼を有するラジアルタービンに比べて、慣性モーメントは半径の2乗に比例するので、半径の大きい領域の重量低減が大きく、タービンホイール全体としての慣性モーメントの低減を効果的に達成できる。従って、慣性モーメントを低減でき、タービンの「回転加速度の向上」ができるため、内燃機関やガスタービンに用いた場合には、ターボラグの低減による性能向上が得られる。
【0055】
一例として、上流側翼23と下流側翼25とがそれぞれ10枚の動翼11において、重なり領域が、従来の全翼(フルブレード)の翼面積の10%であれば、翼の重量は10%重くなる。しかし、本実施形態においては重なり面積に比例して変化効率が増加すると考えられるため、重なり部分の翼面積に相当する10%の変化効率の増加が得られるので、翼枚数を9枚に減少させることができ、重量は従来と同等となる。その時、上流側翼23は下流側翼25に比べて半径が約2倍なので、翼の1枚分の慣性モーメントが減少し、重なり部の慣性モーメントの増加が約1/4故に、結果として約7.5%の慣性モーメントを低減できる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図4を参照して説明する。
第2実施形態は、第1実施形態においては、上流側翼の後縁部27、27間のほぼ中央に、下流側翼の前縁部29が位置するように配置されていたが、第2実施形態においては、下流側翼の前縁部29の位置を上流側翼23の圧力面31側もしくは負圧面37側に偏って配置するものである。第1実施形態と同様の構成について同一符号を付して説明は省略するする。
【0057】
図4に示すように、両側の上流側翼の後縁部27、27の間に配置された下流側翼の前縁部29を、上流側翼23の圧力面31側に偏って配置されている。
このように、下流側翼の前縁部29の位置を上流側翼23の圧力面31側に偏って近接して設ける場合には、上流側翼23の圧力面31側と下流側翼25の負圧面39側との間の翼間隔が狭くなることによる流れの整流作用によって、下流側翼25に沿って流れる排ガスを下流側翼25の負圧面39に沿って流すことができる。
【0058】
また、図4の下流側翼の前縁部29の配置とは逆の配置関係として、下流側翼の前縁部29の位置を上流側翼23の負圧面37側に偏って近接して設ける場合には、上流側翼23の負圧面337側と下流側翼25の圧力面41側との間の翼間隔が狭くなることによる流れの整流作用によって、下流側翼25に沿って流れる排ガスを下流側翼25の圧力面41に沿って流すことができる。
【0059】
このように、下流側翼の前縁部29と上流側翼の後縁部27との配置関係を偏らせて翼間隔を狭くして流れの整流作用によって、上流側翼23の間から下流側翼25の間に流れる排ガス流に対して、下流側翼25の圧力面41側もしくは負圧面39側に沿った流れとすることができるため、下流側翼25による流れ損失を低減できる。
【0060】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図5〜7を参照して説明する。
第1実施形態においては上流側翼の後縁部27と下流側翼の前縁部29とは、ほぼ半径方向に形成されているが、この第3実施形態では、上流側翼の後縁部27がほぼ半径方向に形成され、下流側翼の前縁部45が回転軸心15方向とほぼ平行に形成されるものである。第1実施形態と同様の構成について同一符号を付して説明は省略する。
【0061】
図5に示ように、下流側翼44の前縁部45が回転軸心15方向とほぼ平行に形成されている。
また、図7に示すように、タービンホイール5の入口領域の半径内向きの流れの領域に注目しA−A断面内では、渦なし流れの原理によりタービンホイール5に相対的にタービンホイール5の回転方向と逆方向の旋回流53が生じる。
【0062】
この逆方向の旋回流33は、下流に流れるにつれて下流側翼の前縁部45で2分割されて旋回流53a、53bとなり、逆旋回流の代表直径である翼間の長さが半分になるため、重なり合う領域Sでは、タービンホイール5の回転方向と逆向きの旋回速度も半分になる。すなわち、断面B−Bの部分では、図7に示すように、下流側翼44の入口部におけるシュラウド部16近傍に生じる逆向きの旋回流速55が半減する。
【0063】
渦なし流れの原理によりタービンホイール5に相対的にタービンホイール5の回転方向と逆方向に発生する旋回流53はタービンホイール5の回転によるものであるため、旋回流53は回転軸心15に平行な軸の廻りにできる。従って、下流側翼の前縁部45を回転軸心15方向とほぼ平行に形成することによって、下流側翼の前縁部45によって、下流側翼44上流の旋回流53の下流側への流れに沿って効果的に2つ旋回流53a、53bに分割することができる。
【0064】
すなわち、旋回流53の旋回面に対して直角方向に下流側翼の前縁部45が延びて設けられるため、この下流側縁の前縁部45によって2つの旋回流53a、53bに効果的に分割が可能である。
このため、下流側翼25の翼間長さに応じた二次流れを確実に生成できるので、二次流れ強さの低減によって下流側翼25での変換能率をより確実に向上できるようになる。
【0065】
なお、下流側翼の前縁部45の形状は、回転軸方向とほぼ平行に形成された直線状の形状を説明したが、図5のように、回転軸心15に平行に直線形状ではなく、回転軸心15方向に対して傾斜形状45aであって、曲線形状45bであってもよく、鋳造による一体成型が行いやすい形状に設定することで設計の自由度および製作の容易性を向上できる。
また、図7は、下流側翼44のA−A断面形状を分かりやすく模式的に記載したものであり、図6は下流側翼44を図2に対応するように回転軸心15方向に見た図面である。
【0066】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について図8を参照して説明する。
第1実施形態においては、上流側翼の後縁部27と、下流側翼の前縁部29とはハブ9の子午面形状において重なり合うように設置されている。すなわち、図1において符号Sで示す領域において重なり合っていたが、この第4実施形態では、上流側翼の後縁部27と下流側翼の前縁部29との重なりは、子午面形状においてシュラウド側からハブ側に至る全域で重なり合う場合に限らず、一部で重なっているか、または、重なり合わずに一定の距離以下で近接して設けられている。第1実施形態と同様の構成について同一符号を付して説明は省略する。
【0067】
図8に示すように、上流側翼の後縁部27と下流側翼の前縁部29との重なりは、子午面形状においてシュラウド部16側からハブ9側に至る全域で重なり合わず、一部で重なっているか、または、重なり合わずに近接して設けられている。
図8の符号29aは下流側翼の前縁部29が、半径方向に斜めに傾斜した形状に形成され、上流側翼の後縁部27と一部において重なっている。一部において重なっていれば、第1実施形態で説明したような二次流れ強さの低減効果が、その重なり部分で得られ、また重なり状態の寸法を厳しく管理することが不要になるため、タービンホイールの製造が容易化する。
【0068】
また、下流側翼の前縁部29が、上流側翼の後縁部27と回転軸心15方向において隙間Lを介しており、重なり合わないように設置されている。
この重なり合わない場合には、上流側翼の後縁部27と下流側翼の前縁部29との間で生じる二次流れ強さの低減効果が、翼枚数を2倍としたのと同様の旋回流の生成による二次流れの低減効果ほど得られなくても低減効果の影響が得られる程度の隙間L(図8)であればよい。
この隙間Lは一定の距離以下の間隔であり、例えば、上流側翼23と下流側翼25の周方向間隔以下とする。上流側翼の後縁部27と、下流側翼の前縁部29との間で生じる二次流れの旋回流の径が、上流側翼23と下流側翼25の周方向間隔に相当するため、この間隔の範囲内であれば旋回流の影響が及ぶからである。
【0069】
なお、重なり合わずに所定の間隔を隔て上流側翼23と下流側翼25を配置することで、動翼11の鋳造等による製作において重なり合うことによる流路の閉塞がなくなるため、製作が容易になる利点を有する。
【0070】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について図9〜12を参照して説明する。
この第5実施形態は、第1実施形態の下流側翼の前縁部29の形状を、該下流側翼の前縁部29に流入される旋回流33に対して、衝突角度(インシデンス)を小さくするように傾斜している。第1実施形態と同様の構成について同一符号を付して説明は省略する。
【0071】
図9のC−C断面においても、渦なし流れの原理により、タービンホイール5の回転方向と逆方向に発生する旋回流63が生じている(図10、11)。
図11は、下流側翼25のB−B断面形状、C−C断面形状を、ハブ9側を下部にシュラウド部16を上部にして模式的に示したものである。図12は、この下流側翼25のハブ9上面の取り付け形状と、シュラウド部16側の形状をそれぞれ示すものである。
【0072】
旋回流63は、下流側翼25に対してシュラウド部16側では負圧面39側から流入し、ハブ9側では圧力面41側から流入する。このため、下流側翼の前縁部29の流れ方向上流側から見た形状が、シュラウド部16側では子午面からタービンホイール5の回転方向(ω方向)に開くように入口角α(図11、12)が形成され、ハブ側では子午面から回転方向と逆向きに開くように入口角β(図11、12)が形成される。入口角α、βについては同一に設定しているが異ならせてもよい。
【0073】
図12に示すように、下流側翼25のハブ9面上の形状と、シュラウド部16側の翼形状とをそれぞれ示すものであり、C−C断面においては、ハブ9面上の位置とシュラウド部16側の位置とが、回転軸心15を含む子午線に対して入口角α、βだけ開いた形状をしていることが分かる。
【0074】
下流側翼25の前縁部分をこのような形状に形成されることによって、下流側翼の前縁部29への旋回流63の流入に対して衝突角度(インシデンス)を小さくでき、流れ損失を低減できる。
【0075】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について図13を参照して説明する。
この第6実施形態は、第3実施形態の下流側翼の前縁部45の形状を、流入される旋回流53に対して、衝突角度(インシデンス)を小さくするように傾斜している。第3実施形態と同様の構成について同一符号を付して説明は省略する。
【0076】
図5の第3実施形態のように下流側翼の前縁部45が回転軸心15方向とほぼ平行に形成される場合においては、図13のA−A断面に示すように、この断面においても、渦なし流れの原理により、タービンホイール5の回転方向と逆方向に発生する旋回流53が生じている。この旋回流53は、下流側翼44に対して、図13の符号53で示すように旋回して流入するため、下流側翼の前縁部45の形状が、タービンホイール5の回転方向と逆向きに開く入口角γが形成されている。
【0077】
すなわち、下流側翼の前縁部45のA−A断面形状が、シュラウド側からハブ側に亘ってタービンホイール5の回転方向と逆向きに開く入口角γが形成されることによって、下流側翼の前縁部45への旋回流53の流入に対する衝突角度(インシデンス)を小さくでき、流れ損失を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、タービンホイールの大型化、重量増大、慣性モーメントの増大を伴わずに、タービンホイールに流入する流体の流れエネルギーを回転動力に効率的に変換可能であるため、ターボチャージャ用のラジアルタービン、工場排熱や地熱などの排圧を膨脹させて動力を得る排熱回収用のエキスパンションタービン、ガスタービン用のラジアルタービン等のラジアルタービンへの利用に適している。
【符号の説明】
【0079】
1 ラジアルタービン
3 タービンケーシング
5 タービンホイール
7 回転軸
9 ハブ
11 動翼
13 スクロール室
15 回転軸心
16 シュラウド部
17 ノズル
19 タービンホイール入口
21 タービンホイール出口
23 上流側翼
25、44 下流側翼
27 上流側翼の後縁部
29、45 下流側翼の前縁部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンケーシング内に収納され、該タービンケーシングに形成されたスクロール室によって生成された回転軸周りのガスの旋回流を径方向内向きに導入してから回転軸方向に向きを変えて排出して回転運動が与えられるタービンホイールと、
該タービンホイールのハブ外周面上に周方向に複数枚立設される動翼と、
該動翼を構成するとともに、ガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼と、
前記タービン翼を構成するとともに、中間部から出口部に設けられ、前記上流側翼とは周方向において位相がずれて配置される下流側翼と、を備え、
前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが子午面形状において重なり合うように配置されることを特徴とするラジアルタービン。
【請求項2】
タービンケーシング内に収納され、該タービンケーシングに形成されたスクロール室によって生成された回転軸周りのガスの旋回流を径方向内向きに導入してから回転軸方向に向きを変えて排出して回転運動が与えられるタービンホイールと、
該タービンホイールのハブ外周面上に周方向に複数枚立設される動翼と、
該動翼を構成するとともに、ガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼と、
前記タービン翼を構成するとともに、中間部から出口部に設けられ、前記上流側翼とは周方向において位相がずれて配置される下流側翼と、を備え、
前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが子午面形状において一定の距離以下の隙間を有して近接して配置されることを特徴とするラジアルタービン。
【請求項3】
前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが重なり合う、または一定距離以下の隙間を存して近接する領域が、前記タービンホイールに流入したガスが半径方向から回転軸方向に向きを変える転向領域に設けられることを特徴とする請求項1または2記載のラジアルタービン。
【請求項4】
前記下流側翼の前縁部の位置を前記上流側翼の圧力面側もしくは負圧面側に偏って設置されることを特徴とする請求項1または2記載のラジアルタービン。
【請求項5】
前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部はほぼ半径方向に形成されることを特徴とする請求項1または2記載のラジアルタービン。
【請求項6】
前記上流側翼の後縁部がほぼ半径方向に形成され、前記下流側翼の前縁部が回転軸方向とほぼ平行に形成されることを特徴とする請求項1または2記載のラジアルタービン。
【請求項7】
前記下流側翼の前縁部がほぼ半径方向に形成されるとともに、前記下流側翼の前縁部の流れ方向上流側から見た形状が、シュラウド側では子午面からタービンホイールの回転方向に開く入口角が形成され、ハブ側では子午面から回転方向と逆向きに開く入口角が形成されていることを特徴とする請求項5記載のラジアルタービン。
【請求項8】
前記下流側翼の前縁部が回転軸方向とほぼ平行に形成されるとともに、前記下流側翼の前縁部を回転軸方向から見た断面形状が、シュラウド側からハブ側に亘ってタービンホイールの回転方向と逆向きに開く入口角が形成されることを特徴とする請求項6記載のラジアルタービン。
【請求項9】
前記請求項1乃至8に記載のラジアルタービンが設けられるとともに、該ラジアルタービンによって駆動されるコンプレッサを備えたことを特徴とするターボチャージャ。
【請求項1】
タービンケーシング内に収納され、該タービンケーシングに形成されたスクロール室によって生成された回転軸周りのガスの旋回流を径方向内向きに導入してから回転軸方向に向きを変えて排出して回転運動が与えられるタービンホイールと、
該タービンホイールのハブ外周面上に周方向に複数枚立設される動翼と、
該動翼を構成するとともに、ガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼と、
前記タービン翼を構成するとともに、中間部から出口部に設けられ、前記上流側翼とは周方向において位相がずれて配置される下流側翼と、を備え、
前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが子午面形状において重なり合うように配置されることを特徴とするラジアルタービン。
【請求項2】
タービンケーシング内に収納され、該タービンケーシングに形成されたスクロール室によって生成された回転軸周りのガスの旋回流を径方向内向きに導入してから回転軸方向に向きを変えて排出して回転運動が与えられるタービンホイールと、
該タービンホイールのハブ外周面上に周方向に複数枚立設される動翼と、
該動翼を構成するとともに、ガスの入口部から中間部に設けられた上流側翼と、
前記タービン翼を構成するとともに、中間部から出口部に設けられ、前記上流側翼とは周方向において位相がずれて配置される下流側翼と、を備え、
前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが子午面形状において一定の距離以下の隙間を有して近接して配置されることを特徴とするラジアルタービン。
【請求項3】
前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部とが重なり合う、または一定距離以下の隙間を存して近接する領域が、前記タービンホイールに流入したガスが半径方向から回転軸方向に向きを変える転向領域に設けられることを特徴とする請求項1または2記載のラジアルタービン。
【請求項4】
前記下流側翼の前縁部の位置を前記上流側翼の圧力面側もしくは負圧面側に偏って設置されることを特徴とする請求項1または2記載のラジアルタービン。
【請求項5】
前記上流側翼の後縁部と前記下流側翼の前縁部はほぼ半径方向に形成されることを特徴とする請求項1または2記載のラジアルタービン。
【請求項6】
前記上流側翼の後縁部がほぼ半径方向に形成され、前記下流側翼の前縁部が回転軸方向とほぼ平行に形成されることを特徴とする請求項1または2記載のラジアルタービン。
【請求項7】
前記下流側翼の前縁部がほぼ半径方向に形成されるとともに、前記下流側翼の前縁部の流れ方向上流側から見た形状が、シュラウド側では子午面からタービンホイールの回転方向に開く入口角が形成され、ハブ側では子午面から回転方向と逆向きに開く入口角が形成されていることを特徴とする請求項5記載のラジアルタービン。
【請求項8】
前記下流側翼の前縁部が回転軸方向とほぼ平行に形成されるとともに、前記下流側翼の前縁部を回転軸方向から見た断面形状が、シュラウド側からハブ側に亘ってタービンホイールの回転方向と逆向きに開く入口角が形成されることを特徴とする請求項6記載のラジアルタービン。
【請求項9】
前記請求項1乃至8に記載のラジアルタービンが設けられるとともに、該ラジアルタービンによって駆動されるコンプレッサを備えたことを特徴とするターボチャージャ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−15035(P2013−15035A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146520(P2011−146520)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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