説明

ラジエーション硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いた硬化物の製造方法および光半導体装置

【課題】耐熱性、耐紫外線性、耐煮沸性、光透過性、耐収縮・クラック性に優れたラジエーション硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いた硬化物の製造方法および光半導体装置を提供する。
【解決手段】ラジエーション硬化性官能基を有する特定の置換基を有するモノフォスファゼン化合物を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物を提供し、発光ダイオード素子を封止、および/または前記発光ダイオード素子と他部材とを接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエーション硬化性樹脂組成物に関し、中でも発光ダイオード素子などの光半導体素子の外周部を封止して光半導体装置を製造するのに好適なラジエーション硬化性樹脂組成物に関する。特に、優れた耐紫外線性及び耐熱性を有し、且つ透明性に優れ、生産性にも優れた新規なラジエーション硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いた硬化物の製造方法および光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バックライト、表示板、ディスプレー、各種インジケーター等に使用されている発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子は、透明な樹脂による封止が一般的であり、封止用樹脂(封止剤)としては、透明液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂を主剤とし、これに硬化剤として透明液状の酸無水物を配合したものが、耐熱性、耐水性、機械的強度、電気特性などが良好で、かつ、透明性にも優れていることから多用されている。
【0003】
ところが、白色LED素子に用いられる青色LED素子は、青色光とともに近紫外線も発光されるため、青色LED素子近傍で、エポキシ樹脂封止剤が黄変したり、青色LED素子の発熱により熱劣化したりするという問題があった。特に電灯など高輝度が要求される用途では、青色LED素子からの発光量も多く、黄変や熱劣化が起こりやすかった。
【0004】
このため、高輝度環境下においても近紫外線による黄変が発生せず、耐熱性を有する封止剤としてシリコーン樹脂封止剤が検討されてきた。しかしながらジメチルシロキサンからなるシリコーン樹脂は、LED素子や基板との密着性が悪く、また、タック性を有するためゴミなどが付着しやすく製造上の問題が指摘されている。
【0005】
一方、アルコキシシランモノマーを加水分解・縮合して形成したポリシロキサン膜は、厚膜状態に形成すると割れが発生しやすく、LED封止剤には不適であった。
また、ペンタ(アクリロキシエチル)ホスフィニルホスフォイミドを利用する試みも為されているが、構造が十分制御されていない多官能アクリレート化は、硬化収縮が大きく、またダーク反応による2重結合の不活性さを招き、未反応不飽和成分の残存が指摘され、硬化後の熱・光による反応のためクラックや変色の指摘があり、実施にあたっては解決すべき課題が少なくない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−281868号公報
【特許文献2】特開2004−186168号公報
【特許文献3】特開平7−48526公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、近年、青色などの短波長の光を発光するLED素子が開発され、それに伴い、紫外線透過率が高く、紫外線によって透明性が損なわれることのない光半導体用の封止材料が要求されてきている。しかしながら、未だにこのような要求に十分応え得るものは得られていない。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、詳しくは、耐熱性、耐紫外線性、耐煮沸性、光透過性、耐収縮・クラック性に優れたラジエーション硬化性樹脂組成物、並びにこれを用いた硬化物の製造方法および光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、構造が制御されたラジエーション硬化性のモノフォスファゼン化合物を主成分として使用することにより耐熱性、耐紫外線性、耐煮沸性、光透過性、耐収縮・クラック性に優れた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
<1> ラジエーション硬化性官能基を有する置換モノフォスファゼン化合物を含むことを特徴とするラジエーション硬化性樹脂組成物。
【0011】
<2> 前記置換モノフォスファゼン化合物が、下記一般式(I)で表される構造であることを特徴とする<1>に記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
(上記式中、R1〜R3のうち少なくとも1つはラジエーション硬化性官能基またはそれを含む官能基であり、その他は、それぞれ独立に、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群より選ばれる官能基を表す。)
【0014】
<3> 前記置換モノフォスファゼン化合物が、下記一般式(II)で表される構造であることを特徴とする<1>に記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【0015】
【化2】

【0016】
(上記式中、XはO原子またはS原子を表し、YはC原子、Si原子またはTi原子を表し、R1〜R3のうち少なくとも1つはラジエーション硬化性官能基またはそれを含む官能基であり、その他は、それぞれ独立に、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群より選ばれる官能基を表す。)
【0017】
<4> 前記置換モノフォスファゼン化合物が、下記一般式(III)で表される構造であることを特徴とする<1>に記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【0018】
【化3】

【0019】
(上記式中、R1〜R3のうち少なくとも1つはラジエーション硬化性官能基またはそれを含む官能基であり、その他は、それぞれ独立に、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群より選ばれる官能基を表す。)
【0020】
<5> 前記置換モノフォスファゼン化合物が、下記一般式(IV)で表される構造であることを特徴とする<1>に記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【0021】
【化4】

【0022】
(上記式中、ZはO原子またはS原子を表し、R1〜R3のうち少なくとも1つはラジエーション硬化性官能基またはそれを含む官能基であり、その他は、それぞれ独立に、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群より選ばれる官能基を表す。)
【0023】
<6> さらに、単官能アクリレートおよび/または多官能アクリレートを含むことを特徴とする<1>〜<6>のいずれかに記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【0024】
<7> ラジエーション硬化により形成される硬化物が、実質的に無色透明であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれかに記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【0025】
<8> <1>〜<7>のいずれかに記載のラジエーション硬化性樹脂組成物を供給し、これをラジエーション硬化することを特徴とする硬化物の製造方法。
【0026】
<9> 少なくとも発光ダイオード素子を含む光半導体装置であって、<1>〜<7>のいずれかに記載のラジエーション硬化性樹脂組成物を用いて前記発光ダイオード素子が封止、および/または、前記発光ダイオード素子と他部材とが接着されていることを特徴とする光半導体装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、光半導体封止に適し、耐熱性、耐紫外線性、耐煮沸性、光透過性、耐収縮・クラック性に優れたラジエーション硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、前記優れた特性を有するラジエーション硬化性樹脂組成物を用いた硬化物の製造方法および光半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
一般に、分子内に−P=N−結合を有する化合物は、モノフォスファゼン化合物と命名されている。例えば、フォスフォイミデックトリクロライドCl2P(O)N=PCl3はその例である。このほか、下記化合物もその類に属する。
Cl3P=N−C(CF33、Cl3P=N−C(CH33、Cl3P=N−CCl3、Cl3P=N−CO−CF3、Cl3P=N−CO−CCl3、Cl3P=N−CO−Ph−NO2、Cl3P=N−SO2−Ph−Me、F3P=N−SO2−F、Br3P=N−SO2−F、MeCl2P=N−CO−Ph、Cl3P=N−P(S)−Cl2、Ph3P=N−P(S)−F2
【0029】
当該モノフォスファゼン化合物のP原子に直接結合しているハロゲン化合物は、適切な条件で、適切な化合物を作用させることにより選択的に求核置換反応が起こり、任意の置換基を導入することができる。
以下、その合成方法の例を挙げる。
【0030】
(1)フォスフォイミデックトリクロライドの合成
フォスフォイミデックトリクロライドは、Emsleyらによってその合成方法が報告されている(「A new and sinpleMethod of Preparing Dichlorophosphinyl phosphorimidic Trichloride」J.Emsley,Joyce Moore and P.B.Udy,J.chem.Soc.,(A) P.2863〜2864(1971))。化学反応式は以下の通りである。
【0031】
【化5】

【0032】
分離生成して得られるフォスフォイミデックトリクロライドは白色結晶で、その融点は32℃であった。
【0033】
(2)フォスフォイミデックトリクロライドの置換反応
フォスフォイミデックトリクロライドは2種類(1分子当たり計5個)の活性塩素を有している。即ち、Cl3P=におけるClと、P(O)Cl2におけるClである。以下、前者を(A)サイトと呼び、後者を(B)サイトと呼ぶ。これにラジエーション硬化性官能基を含むCH2=CH−CH2−ONaなどの求核試薬を作用させると、選択的に(A)サイトから置換基が導入される。即ち、以下の化学反応式で表すことができる。
【0034】
【化6】

【0035】
さらに続けてNaORを反応させることにより、下記化学反応式に示すように(B)サイトに置換基が導入される。
【0036】
【化7】

【0037】
また、最初にNaORを反応させ、後から(B)サイトに選択的にラジエーション硬化性官能基を導入することも可能であるとも考えられる。しかし、この合成方法では、完全に化学量論的に求核置換されているわけではなく、完全に(A)サイトのみに、または(B)サイトのみにラジエーション硬化性官能基を導入することは極めて困難である。即ち、フォスフォイミデックトリクロライド1molに対して3molのCH2=CH−CH2−ONaを作用させたとしても、得られるのは(A)サイトのみ3mol置換された(CH2=CH−CH2−O)3P=N−P(O)Cl2ばかりではなく、極端な場合、0mol置換体から5mol置換体までできる可能性があるため、構造を制御した合成方法とは言い難い。
【0038】
(3)構造が制御されたモノフォスファゼン化合物の合成
フォスフォイミデックトリクロライドの(A)サイトにのみ、または(B)サイトにのみ選択的に置換基を導入するためには、別の経路での合成方法をとる必要がある。
【0039】
3−1)Cl3P=N−P(O)(OPh)2の合成
(B)サイトにフェノキシ基が入ったモノフォスファゼン化合物は、下記スキームで合成することができる。なお、化学式中「Ph」とあるのは、フェニル基を示す(以下同様)。
【0040】
【化8】

【0041】
これに3molのラジエーション硬化性官能基含有求核試薬を反応させれば、(B)サイトには全くラジエーション硬化性官能基を含まない化合物を合成することができる。
【0042】
3−2)Ph3P=N−P(O)Cl2の合成
上記3−1)とは逆に、選択的に(B)サイトに活性塩素を残したモノフォスファゼン化合物は、以下に示す方法で合成することができる。
即ち、先に(A)サイトに非反応性置換基を導入しておき、(B)サイトにのみ特定の官能基を導入する方法である。化学反応式を以下に示す。
【0043】
【化9】

【0044】
得られた化合物に2molのラジエーション硬化性官能基含有求核試薬を反応させれば、(A)サイトには全くラジエーション硬化性官能基を含まない化合物を合成することができる。
【0045】
フォスフォイミデックトリクロライドなどは、求核置換を受ける活性塩素を5つも含み、モノフォスファゼン化合物1molに対し、5molのラジエーション硬化性官能基を導入することができる。しかし、このような高過ぎる架橋密度を形成する系においては、硬化後の収縮クラックや内部応力ひずみなどが生じ易く、硬化後の硬化物について形状維持など適正な性能を発揮することは難しい。
【0046】
また、UV(紫外線)、EB(電子線)など活性ラジエーション硬化時のいわゆるダーク反応と称する未反応残存成分の存在は、硬化後にさらなる後反応を起こす可能性が指摘されており、特に光学用途では問題となるケースが予想される。
上述の合成方法により、構造を制御し、最適な設計において任意に官能基を配置することにより、耐候性、耐光性、相溶性、透明性、耐水性、耐熱性その他必要な物性を硬化物に付与することが可能となる。
【0047】
本発明おける「ラジエーション硬化性置換基」とは、いわゆる、水銀ランプ、メタルハライドランプなどUV光やEBなど活性エネルギー線に対して硬化する特性を有する置換基を指し、当該性質を有する置換基であれば、本発明において全て使用することができる。本発明に使用可能なラジエーション硬化性置換基としては、例えば、アクリロイル基、メタクレロイル基、ビニル基、置換ビニル基、アリル基、置換アリル基、プロパギル基、置換プロパギル基、スチリル基など不飽和結合を有する置換基や、その他、エポキシ基、脂環式エポキシ基、オキセタニル基、シクロカーボネート基、シクロチオカーボネート基など光カチオン活性基を挙げることができる。
【0048】
本発明のラジエーション硬化性樹脂組成物は、上記ラジエーション硬化性官能基を有する置換モノフォスファゼン化合物を含むことを特徴とし、紫外線硬化性として使用する場合には、さらに光重合開始剤を添加する。また、さらに不飽和二重結合を1個以上有する化合物を配合して使用することもできる。
【0049】
不飽和二重結合を1個以上有する化合物として具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類;
【0050】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;
【0051】
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、nブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニル類;
【0052】
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;グリセリンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアール酸エチレンオキサイド変性ε−カプロラクトン変性トリ(メタ)アクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリプロピオネートなどの3官能(メタ)アクリレート類;
【0053】
また、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートモノプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、オリゴエステルテトラ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシ)ホスフェート、PPZ(2,2,4,4,6,6−ヘキサ{2−(メタクロイルオキシ)−エトキシ}−1,3,5−トリアザ−2,4,6−トリホスホリン)などの多官能(メタ)アクリレート類;が挙げられる。
【0054】
さらに上記の如き化合物の他にポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化マレイン酸変性ポリブタジエン等を挙げることができる。
これら不飽和二重結合を1個以上有する化合物(アクリレート)の添加量としては、(ラジエーション硬化性官能基を有する置換モノフォスファゼン化合物)/(上記(メタ)アクリレート)の成分比(質量基準)で95/5〜5/95の範囲が好ましく、70/30〜30/70の範囲がより好ましい。
【0055】
本発明のラジエーション硬化性樹脂組成物には、さらに、カチオン活性のある官能基を1個以上有する化合物を配合して使用することもできる。ここでカチオン活性のある官能基とは、エポキシ基、脂環式エポキシ基、オキセタニル基、シクロカーボネート基、シクロチオカーボネート基を含む化合物であり、具体的には、3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6メチルシクロヘキサンカーボネート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシド、ビニルシクロペンタジエンオキシド、リモネンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテルなど脂環式エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環型エポキシ樹脂や、これらを水素化したエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0056】
全エポキシ樹脂(カチオン活性エポキシ樹脂、オキセタン、シクロカーボネート他)の量としては、全樹脂中の75質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが最も好ましい。
また、脂環式エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂は、全エポキシ樹脂中の20質量%以下であることが耐紫外線性の面から好ましく、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0057】
本発明のラジエーション硬化性樹脂組成物に添加可能な光重合開始剤には、ラジカル系光重合開始剤及びカチオン系光重合開始剤が挙げられる。ラジカル系光重合開始剤は本発明における不飽和官能基部位の硬化に利用され、カチオン系光重合開始剤はエポキシ基などの重合系に使用される。本発明の目的を逸脱しない範囲でラジカル系光重合開始剤系及びカチオン系光重合開始剤系を併用しても構わない。
【0058】
使用可能なラジカル系光重合開始剤としては、光励起にってラジカル重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルフォスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物などが使用できる。同様にカチオン系光重合開始剤としては、いわゆるラジエーション感受性芳香族オニウム塩(下記式(2))であれば特に限定はない。
【0059】
(R3−C64n+MQh- ・・・(2)
(上記式(2)中、XはI,P及びSからなる群より選択される原子であり、Mは金属または半金属であり、QはCl、F、Br及びIからなる群より選択されるハロゲンであり、R3は水素または炭素数1〜12の一価炭化水素基であり、hは4〜6の整数を示し、nは2または3の整数を示す。)
上記式(2)中のMQh-がSbF6-、AsF6-、BF4-、PF6-である化合物が一般的には使用される。
【0060】
本発明のラジエーション硬化性樹脂組成物に使用されるラジカル系光重合開始剤及びカチオン系光重合開始剤の添加量としては、それぞれ0.005〜10質量%の範囲が好ましい。この範囲を超えて少ない場合は、硬化不良、硬度の不足などの問題が生じる懸念があり、多い場合は着色の問題が発生する懸念があるためそれぞれ好ましくない。
【0061】
本発明のラジエーション硬化性樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で溶媒を使用してもよい。この溶媒としては、前記オルガノシロキサン樹脂固形分が安定に溶解することが望まれる。そのためには、使用される溶媒はアルコールを含むものであることが望ましい。当該溶媒として適したアルコールとしては例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1プロパノール、2−エトキシエタノールなどが挙げられ、炭素数1〜4の低沸点アルコールが好ましく、溶解性、安定性、及び塗工性の点で2−プロパノールが特に好ましい。これに、アクリレート成分の良溶媒であるメチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、芳香族炭化水素類が推奨される。
【0062】
なお、本発明のラジエーション硬化性樹脂組成物には、塗工性及び得られる塗膜(硬化物)の平滑性を向上させる目的で、公知のレベリング剤を配合することができる。レベリング剤の配合量としては、レベリング剤以外の全ラジエーション硬化性樹脂組成物成分100質量部に対して0.001〜2質量部の範囲が好ましい。また、本発明の目的を損なわない範囲で紫外線吸収剤、光安定剤、染料、ナノフィラーなどを配合してもかまわない。
【0063】
また、本発明のラジエーション硬化性樹脂組成物は塗料、グラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ、インクジェット印刷インキなどのインキバインダー、およびラミネーション接着剤を含む各種接着剤として使用することができる。本発明のラジエーション硬化性樹脂組成物は、公知のラジエーション硬化方法により硬化させることができ、特に紫外線もしくは電子線を用いることが好ましい。
【0064】
紫外線照射により硬化させる場合には、紫外線照射装置の光源として、通常200〜500nmの波長の範囲の光を含む光源、例えば高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライド灯、ガリウム灯、キセノン灯、カーボンアーク灯等を使用することができる。紫外線の積算光量は、用途、膜厚、着色剤の有無、光重合開始剤の種類と量等により必要最低積算光量が左右されるため一概には言えない。
これら紫外線、電子線と赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用は効果的である。
【0065】
また、近年レーザー光が医療分野を中心に導入されている。例えば、歯科治療、レーザーメス、ホクロ・シミ治療などにレーザー光が導入されている。レーザー光とは、人工的に作られた単波長の光を工夫して取り出して増幅させたものであり、活性エネルギー光である。レーザーの特徴としてはコヒーレントな性質で、収束させることにより大きなエネルギーを集中させることができることにある。当然このレーザー光は本発明のラジエーション硬化性樹脂組成物の硬化にも利用することができる。具体的には炭酸ガスレーザー、ルビーレーザー、YAGレーザー、エキシマレーザー等が挙げられる。
【実施例】
【0066】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これにより本発明が限定されるものでない。
また、以下の実施例及び比較例において「%」や「部」とあるのは、いずれも質量基準である。
【0067】
[合成例1…Cl3P=N−Rべ一スラジエーション硬化性モノフォスファゼン化合物の合成]
このタイプのモノフォスファゼンは、Staudingerらの方法を若干変更して合成した。
【0068】
0.1モルのPCl3と0.15モルのPhN3をエーテル200ml中に入れ、N2ガスの発生が停止するまで反応させた。反応終了後、濾別したエーテルを留去し、残分をカラムクロマトグラフィで分離精製した。得られた生成物を元素分析と分子量測定で調べた結果、Cl3P=N−Phの計算値と実測値とがほぼ一致した。このことから下記の反応によって、標記のCl3P=N−Rタイプのモノフォスファゼンが得られたことがわかる。
【0069】
【化10】

【0070】
次いで、0.1molのNaHと0.1molのHOCH2CH2OCH2CH=CH2とをTHF中で反応させ、NaOCH2CH2OCH2CH=CH2を生成し、この混合溶液にHOCH2CH2OCH2CH=CH2のモル数よりも若干少ない量のCl3P=N−PhをTHFに溶かし、それを滴下した後50〜60℃に加温して6〜8時間攪拌した。反応終了後、THFを留去し、残分にトルエンと蒸留水を加え生成物をトルエンで抽出した。トルエン相はNa2SO4で脱水し、トルエンを留去した。残分の粗生成物はカラムクロマトグラフィで分離精製した。分離精製して得られた生成物を元素分析及び分子量測定で調べた結果、(CH2=CHCH2OCH2CH2O)3P=N−Phの計算値と実験値とがほぼ一致していることから、目的の生成物が得られたことがわかる。
【0071】
【化11】

【0072】
[合成例2・・・Cl3P=N−C(O)−Rべ一スラジエーション硬化性モノフォスファゼン化合物の合成]
このタイプのモノフォスファゼンは、Derkachらの方法を若干変更して合成した。
【0073】
0.01モルのPCl3と0.01モルのPhC(O)N3とを、100mlの四塩化炭素溶媒あるいはクロロベンゼン溶媒中に入れ、加温し、攪拌した。反応により発生するN2ガスが停止するまで反応させた後、濾別し溶媒を留去した。得られた残分をカラムクロマトグラフィで分離精製した。生成物は元紫分析及び分子量測定で調べた結果、Cl3P=N−C(O)−Ph組成の計算値と実験値がほぼ一致したことから、下記の反応式に従って生成していると思われる。
【0074】
【化12】

【0075】
次に、ラジェーション硬化可能なモノフォスファゼン化合物とするために、得られたCl3P=N−C(O)−PhにNaOCH2−CH=CH2とを反応させた。
【0076】
【化13】

【0077】
反応終了後分離精製して得られた化合物を元素分析および分子量測定で調べた結果、計算値と実験値とが一致したことから、目的の生成物(CH2=CH−CH2O)3P=N−Phが得られたことがわかる。
【0078】
[合成例3・・・Cl3P=N−SO2−Rべ一スラジエーション硬化性モノフォスファゼン化合物の合成]
このタイプのモノフォスファゼンは、Kirssnovらの反応を若干変更し合成した。
【0079】
0.02〜0.03モルのCH3−SO2−NH2と、理論量よりも5%過剰のPCl5との混合物を油浴中で加熱した。HClの発生は50〜60℃の温度で開始し、85〜90℃の温度に保持すると更にHClが発生した。HClの発生が停止するまで反応を続けた。
【0080】
反応終了後濾別によって未反応のPCl5とCH3−SO2−NH2を除去すると、濾液は透明液体であるが、結晶化した。この結晶の融点は約47〜50℃で文献値と一致していることから、Cl3P=N−S02−Rタイプのモノフォスファゼンが得られたことがわかる。
【0081】
【化14】

【0082】
次に、プロパジルアルコールHOCH2C≡CHとNaHまたはNaとの反応で、NaOCH2C≡CHをTHF中で生成させた後、使用したHOCH2C≡CHよりも若干少ないCl3P=N−SO2−CH3のタイプのモノフォスファゼンをTHFに溶かし、NaOCH2C≡CH/THF懸濁溶液に滴下した。滴下終了後50〜60℃に加温し6〜8時間撹絆した。反応終了後THFを留去し、残分をトルエンと蒸留水とで処理した。トルエン相はNa2S04で脱水後、トルエンを留去した。残分はカラムクロマトグラフィで分離生成した。得られた化合物を元素分析および分子量測定で調べた結果、(CH≡C−CH20)3P=N−S(02)−CH3組成の計算値と実験値とがほぼ一致したことから、目的の生成物が得られたことがわかる。
【0083】
[合成例4・・・Cl3P=N−P(O)−Rべ一スラジエーション硬化性モノフォスファゼン化合物の合成]
このタイプのモノフォスファゼンは、[発明を実施するための最良の形態]における「3−1)Cl3P=N−P(O)(OPh)2の合成」の項で既に述べた方法により合成した。反応式は以下の通りである。
【0084】
【化15】

【0085】
(i)(PhO)2P(O)−NH2の合成
医薬品中間体として市販されている0.25g(0.9モル)の(PhO)2P(O)Clを100mlのブチルメチルエーテルに溶かし、ドライアイス/エタノール中、−20℃以下に冷却した。
【0086】
次に、アンモニア水(28%)23mlを徐々に滴下し、1.5時間反応させた。反応後、反応液を吸引ろ過し白色固体を蒸留水で中性になるまで洗浄した後、105℃で真空乾燥し、クロロホルム溶媒で再結晶した。収量20g、収率86%たった。
生成物をH−NMR及びP−NMRで調べた結果、一NH2及び−C65に由来するピークが3.3ppm及び7.1−7.3ppmに観測された。また、−0.04ppm付近に−P(O)NH2に由来するピークが観測され、融点は145〜146℃で文献と一致している。これらのことから、この反応で目的の生成物(PhO)2P(O)−NH2が生成していることがわかる。
【0087】
(ii)Cl3P=N−P(O)(OPh)2の合成
上記(i)で得られた(PhO)2P(O)−NH2を22.4g(0.09モル)、五塩化リンPCl5を28.8g(0.09モル)及びクロロベンゼン100mlをフラスコに入れた後、乾燥窒素ガスを導入し、理論量の塩化水素の発生が確認されるまで反応混合液を攪拌した。反応終了後、反応液を吸引ろ過しろ液を減圧下で蒸留して、透明粘稠の液体が得られた。
【0088】
この生成物をP−NMR及びH−NMRで調べた結果、−PCl3及び−P(O)(OPh)2に由来するピークが−11.8〜−12ppmと−9.8〜10.1ppmに観測された。また、H−NMRで調べた結果、−OPhプロトンは7.0〜7.6ppmに観測された。このことから、目的とする標記化合物Cl3P=N−P(O)(OPh)2が生成していることがわかる。
【0089】
(iii)(CH2=CH−CH2−O−C24−O)3P=N−P(O)(OPh)2の合成
200m1フラスコに水素化ナトリムNaHを0.48g及び50m1のTHFを入れ、この溶液に3.84gの2−アリロキシエタノールを含む50mlのTHF溶液を滴下したのち、50〜60℃で2時間反応させ、その後室温まで冷却した。次に(ii)で得られた化合物Cl3P=N−P(O)(OPh)2を1.38g、50mlのTHF溶媒に溶解し、この溶液を滴下した後、50〜60℃に加温し、6時間反応させた。反応後THF溶媒を留去しトルエンと蒸留水で処理し、トルエン可溶部1.3gと0.3gの水可溶部に分離させた。
【0090】
双方の液状生成物をP―NMR及びH−NMRで調べた結果、トルエン可溶部生成物では、−P(O)(OPh)及び−P(OCH2CH2O−CH2CH=CH2)に由来するピークが−3.26ppm及び−10.6ppm付近に観測された。また、H−NMRで調べた結果、=CH2、−CH2、=CH及び−OC65に由来するピークがそれぞれ、5.21ppm、3〜4ppm、2.36ppm及び7.2〜7.3ppm付近に観測された。
【0091】
一方、水可溶部生成物のP−NMR及びH−NMRはトルエン可溶部と全く異なることから、この反応の主生成物は前者のトルエン抽出物であり、P−NMR及びH−NMRから目的の生成物(CH2=CH−CH2−O−C24−O)3P=N−P(O)(OPh)2が得られていることがわかる。
【0092】
[合成例5・・・Ph3P=N−P(O)Cl2べ一スラジエーション硬化性モノフォスファゼン化合物の合成]
このタイプのモノフォスファゼンは、[発明を実施するための最良の形態]における「3−2)Ph3P=N−P(O)Cl2の合成」の項で既に述べた方法により合成した。反応式は以下の通りである。
【0093】
【化16】

【0094】
五塩化リンPCl5を20.6g、Ph3Pを26.2g、NH2OH−HClを6.9g、及び200mlのBrC65をフラスコに入れ、乾燥窒素を導入し室温で15分攪拌した後、130〜140℃で3時間応させた。反応後、反応液をろ過し、減圧下で溶媒を留去し、得られたオイル生成物に300mlのエーテルを加えると白色固体が沈殿した。この沈殿をアセトニトリル溶媒を使用し2回再結晶し6.8gの結晶を得た。この結をP−NMRで調べた結果、−PPh3及び−P(O)Cl2に由来するピークが−14.1〜−14.3ppm及び−7.0〜−7.1ppmに観測された。また、H−NMRで調べた結果、Ph中のプロトンピークが7,2〜7.7ppmに観測された。P−NMR及びH−NMRから、生成物がPh3P=N−P(O)Cl2であることがわかる。
【0095】
次に、生成物Ph3P=N−P(O)Cl2にラジエーション硬化性官能基(−CH2−CH=CH2)を導入する。即ち、NaH0.76gとn−ヘプタン100mlとをフラスコに入れ、50mlのTHF溶媒を加えた溶液に、2.9gのアリルアルコール(CH2=CH−CH2−OH)を含む50mlのTHF溶液を滴下する。滴下後50〜60℃で24時間攪拌し反応させる。反応後、反応溶液のTHFを留去し、残分にトルエンと蒸留水を加えトルエン可溶相より3.4gの液体を得た。
【0096】
得られた生成物をP−NMRで調べた結果、−PPh3及び−P(O)(−OCH2−CH=CH22に由来するピークが11.5〜11.7ppm及び0.4〜0.6ppmに観測された。また、H−NMRで調べた結果、−Ph、−OCH2及び−CHに由来するピークがそれぞれ7,2〜7.7ppm、4.3ppm及び2.5ppmに観測された。このことから、当反応により目的の生成物Ph3P=N−P(O)(−OCH2−CH=CH22が得られたことがわかる。
【0097】
[合成例6・・・ペンタ〈アクリロキシエチル)フォスフィニルフォスフォイミドの合成]
本合成例のペンタ〈アクリロキシエチル)フォスフィニルフォスフォイミドは、まず、[発明を実施するための最良の形態]における「(1)フォスフォイミデックトリクロライドの合成」の項で既に述べた方法によりフォスフォイミデックトリクロライドCl3P=N−P(O)Cl2を合成し、これに5モルのCH2=CH−C(O)OCH2CH2O−Naを求核置換反応により反応させ、表題のペンタ(アクリロキシエチル)フォスフィニルフォスフォイミド((CH2=CH−C(O)OCH2CH2O−)3P=N−P(O)(−OCH2CH2O(O)C−CH=CH22)を得た。
【0098】
[実施例1〜5]
下記表1に示す組成で、合成例1〜5で得られた各合成物を用いて、実施例1〜5のラジエーション硬化性樹脂組成物を調製した。
得られたラジエーション硬化性樹脂組成物を用いて、石英板に硬化膜厚が100μmとなるように塗布硬化させて、実施例1〜5の評価試験片として後述する評価試験に供した。
【0099】
[比較例1]
市販のウレタンアクリレート「UN−9000H」(根上工業(株)製)をそのまま使用し、これを比較例1(モノフォスファゼンを含まないアクリレート系)の組成物とした。
これを石英板に硬化膜厚が100μmとなるように塗布硬化したものを比較例1の評価試験片として後述する評価試験に供した。
【0100】
[比較例2]
市販のPPZをそのまま使用し、これを比較例2の組成物とした。
これを石英板に硬化膜厚が100μmとなるように塗布硬化したものを比較例2の評価試験片として後述する評価試験に供した。
【0101】
[比較例3]
下記表1に示す組成で、合成例6で得られた合成物を用いて、比較例3の組成物(ペンタ置換モノフォスファゼン)を調製した。
これを石英板に硬化膜厚が100μmとなるように塗布硬化したものを比較例3の評価試験片として後述する評価試験に供した。
【0102】
【表1】

【0103】
[評価試験片作製方法]
上記各実施例及び比較例の評価試験片は、以下のように作製した。
フィルムアプリケーターを使用して、硬化膜厚が100μmになるように石英ガラス上に各組成物を塗布し、紫外線(UV)により硬化したものを評価試験片とした。
【0104】
UV硬化の条件は、ウシオ電機社製UV照射装置「UVC−5034」を用い、メタルハライドランプ490nm×630mm、80W/cm、高さ120mm、コンベヤー速度4m/分、1000mJ/cm2の条件でコンベヤー上に供試材を載せて4回パスさせてUV硬化させた物を評価試験片とした。
【0105】
[評価試験方法]
上記各実施例及び比較例で得られた各評価試験片について、以下の項目の評価試験を行った。結果は、末の表2に纏めて示す。
【0106】
(1)外観
各評価試験片表面の硬化物について目視で観察し、以下の評価基準で評価した。
A:クラック及び着色などが無く、良好。
B:わずかにクラックまたは着色が認められる。
C:顕著なクラックまたは着色が認められる。
【0107】
(2)耐UV性
UVランプ(ナショナル殺菌灯:GL−15)の直下30cmに評価試験片を並べて、240時間暴露した。暴露前後の評価試験片の外観を目視で観察し、以下の評価基準で評価した。
A:変化なし。
B:わずかに変色またはクラックが発生した。
C:顕著に変色及び/またはクラックが発生した。
【0108】
(3)耐熱性
評価試験片を150℃で240時間保管した後の外観を目視で観察し、以下の評価基準で評価した。
A:変化なし。
B:わずかに変色した。
C:顕著に変色した。
【0109】
【表2】

【0110】
[結果の考察]
以上の結果より、本発明の硬化性樹脂組成物である実施例1〜5を用いた硬化物は、外観が良好で、耐UV性及び耐熱性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエーション硬化性官能基を有する置換モノフォスファゼン化合物を含むことを特徴とするラジエーション硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記置換モノフォスファゼン化合物が、下記一般式(I)で表される構造であることを特徴とする請求項1に記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【化1】

(上記式中、R1〜R3のうち少なくとも1つはラジエーション硬化性官能基またはそれを含む官能基であり、その他は、それぞれ独立に、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群より選ばれる官能基を表す。)
【請求項3】
前記置換モノフォスファゼン化合物が、下記一般式(II)で表される構造であることを特徴とする請求項1に記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【化2】

(上記式中、XはO原子またはS原子を表し、YはC原子、Si原子またはTi原子を表し、R1〜R3のうち少なくとも1つはラジエーション硬化性官能基またはそれを含む官能基であり、その他は、それぞれ独立に、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群より選ばれる官能基を表す。)
【請求項4】
前記置換モノフォスファゼン化合物が、下記一般式(III)で表される構造であることを特徴とする請求項1に記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【化3】

(上記式中、R1〜R3のうち少なくとも1つはラジエーション硬化性官能基またはそれを含む官能基であり、その他は、それぞれ独立に、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群より選ばれる官能基を表す。)
【請求項5】
前記置換モノフォスファゼン化合物が、下記一般式(IV)で表される構造であることを特徴とする請求項1に記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【化4】

(上記式中、ZはO原子またはS原子を表し、R1〜R3のうち少なくとも1つはラジエーション硬化性官能基またはそれを含む官能基であり、その他は、それぞれ独立に、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群より選ばれる官能基を表す。)
【請求項6】
さらに、単官能アクリレートおよび/または多官能アクリレートを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
ラジエーション硬化により形成される硬化物が、実質的に無色透明であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のラジエーション硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のラジエーション硬化性樹脂組成物を供給し、これをラジエーション硬化することを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項9】
少なくとも発光ダイオード素子を含む光半導体装置であって、請求項1〜7のいずれかに記載のラジエーション硬化性樹脂組成物を用いて前記発光ダイオード素子が封止、および/または、前記発光ダイオード素子と他部材とが接着されていることを特徴とする光半導体装置。

【公開番号】特開2008−239881(P2008−239881A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84731(P2007−84731)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000101477)アトミクス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】