説明

ラジエータの取付構造

【課題】 本発明は既存の部品やレイアウトを大きく変更することなく、取付作業性,搭載性の向上を図ったラジエータの取付構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 ラジエータの左右に取り付く取付ブラケットをサイドレールに固着して、ラジエータをサイドレール間に取り付けるキャブオーバ型トラックのラジエータの取付構造であって、サイドレールの上側フランジ部の裏面側に取り付くラバー位置決めステーと、ラバー位置決めステーに設けた長孔にボルト頭が回止め嵌合してラバー位置決めステー上に倒立し、ボルト頭の座面に支持プレートを介してマウントラバーが取り付くラバー付ボルトと、取付ブラケットと上側フランジ部との間に介装されるマウントラバーと、ラバー付ボルト先端のねじ部に螺着されるナットとを備え、長孔にボルト頭を回止め嵌合してラバー位置決めステー上に倒立させたラバー付ボルトを、上側フランジ部に設けたボルト挿通孔から上方へ突出し、当該ラバー付ボルトに、マウントラバーと取付ブラケットに設けたボルト挿通孔を挿通させてナットを先端のねじ部に螺着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブオーバ型トラックに於けるラジエータの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、従来、キャブオーバ型トラックに於けるラジエータの取付構造は、ラジエータの左右にサイドサポートを装着し、両サイドサポートを、夫々、断面L字状の取付ブラケットを介してサイドレールに固着することによってラジエータをサイドレール間に取り付けている。
図6はラジエータの右サイドレール側の取付構造の詳細を示し、図中、1はラジエータの右側部に取り付くサイドサポートで、当該サイドサポート1の外側に断面L字状の取付ブラケット3が溶接されている。
【0003】
一方、サイドレール5には、その上側フランジ部7の裏面に金属製のラバー位置決めステー9が取り付き、当該ラバー位置決めステー9と上側フランジ部7との間にナット付ラバー11が介装されている。
図7及び図10に示すようにラバー位置決めステー9は、一端側にナット付ラバー11のナット13が回止め嵌合する長孔15が形成された短冊状のプレート17と、当該プレート17の他端側に溶着された断面コ字状の支持部19と、当該支持部19を挿通して上方へ突出する取付ボルト21とからなり、この取付ボルト21を上側フランジ部7の図示しないボルト挿通孔に挿通させてナットを締め付けることで、ラバー位置決めステー9が上側フランジ部7の裏面側に固定されている。
【0004】
そして、図8及び図9に示すようにナット付ラバー11は、前記長孔15に回止め嵌合可能なナット13が溶接された金属製の支持プレート23上にマウントラバー24を接着して構成されている。そして、支持プレート23とマウントラバー24は、前記プレート17に沿って夫々の2辺25,27,29,31が平行な平面視同一形状に形成されると共に、ナット13のボルト挿通孔33と同軸上にボルト挿通孔35,37が設けられている。
【0005】
その他、図6に於て、39は取付ブラケット3をサイドレール5に固定する段付きボルト、41は取付ブラケット3とサイドレール5との間に介装されたマウントラバーで、当該マウントラバー41と取付ブラケット3,フランジ部7にも、夫々、段付きボルト39の大径な軸部43が挿通するボルト挿通孔45,47,49が開口している。そして、ラジエータの取付けの際に、段付きボルト39先端のねじ部53がナット付ラバー11のナット13に螺着するようになっている。
【0006】
尚、ラジエータの左サイドレール側の取付構造は、上述した右サイドレール側の取付構造と同一であるため、その説明を省略する。
而して、上述の如き各部品によるラジエータの取付けは、図10に示すようにサイドレール5の上側フランジ部7に仮止めしたラバー位置決めステー9の長孔15にナット付ラバー11のナット13を回止め嵌合させて、上側フランジ部7のボルト挿通孔49とマウントラバー24のボルト挿通孔37を同軸上に位置決めした後、ラバー位置決めステー9を上側フランジ部7に仮固定して、ナット付ラバー11を上側フランジ部7とラバー位置決めステー9とで挟持する。尚、本固定は、全てマウント後に行う。
【0007】
そして、ボルト挿通孔45,49を合わせて上側フランジ部7上にマウントラバー41を配置し、上方からボルト挿通孔47をボルト挿通孔45に合わせて取付ブラケット3をマウントラバー41に載せた後、上方から段付きボルト39をボルト挿通孔47,45,49,37に順次挿通させて、段付きボルト39先端のねじ部53をナット13に螺着させることで、ラジエータが取付ブラケット3を介してサイドレール5にマウントされる。
【特許文献1】特開平8−261680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来の取付構造は、段付きボルト39を上方からボルト挿通孔47,45,49,37に挿通させてこれを締め付けていくに当たり、取付ブラケット3のボルト挿通孔47の位置決めがないため、段付きボルト39が掛かり難く、孔ズレが生じてしまう虞があった。
そして、斯様に孔ズレが生じてしまうと、締付けの際に段付きボルト39が斜めになって所謂「かじり」等が発生してしまう不具合が指摘されていた。
【0009】
また、孔ズレを防止するために慎重に位置合わせを行い、さぐり乍らボルト頭部をナットに十分手で締め付ける等の多大な工数を必要としていた。
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、既存の部品やレイアウトを大きく変更することなく、取付作業性,搭載性の向上を図ったラジエータの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ラジエータの左右に取り付く取付ブラケットをフレームの左右のサイドレールに固着して、ラジエータをサイドレール間に取り付けるキャブオーバ型トラックに於けるラジエータの取付構造であって、上記サイドレールの上側フランジ部の裏面側に取り付くラバー位置決めステーと、当該ラバー位置決めステーに設けた長孔にボルト頭が回止め嵌合してラバー位置決めステー上に倒立し、当該ボルト頭の座面に支持プレートを介してマウントラバーが取り付くラバー付ボルトと、取付ブラケットと上側フランジ部との間に介装される第2のマウントラバーと、上記ラバー付ボルト先端のねじ部に螺着されるナットとを備え、長孔にボルト頭を回止め嵌合してラバー位置決めステー上に倒立させたラバー付ボルトを、上側フランジ部に設けたボルト挿通孔から上方へ突出し、当該ラバー付ボルトに、第2のマウントラバーと取付ブラケットに設けたボルト挿通孔を挿通させて、上記ナットをラバー付ボルト先端のねじ部に螺着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、ラジエータの取付けに先立ち、ラバー位置決めステーにラバー付ボルトを倒立させて当該ラバー付ボルトをスタッドボルトとしてサイドレールの上側フランジ部に突出させたので、従来に比し取付ブラケットのボルト挿通孔の位置決めが可能となって孔ズレが生ずることがなくなり、この結果、ラバー付ボルトの「かじり」がなく、斜め固定が防止できることとなり、工数も大幅に低減できる。
【0012】
また、ラジエータに接続されるインタークーラパイプ等があって、取付ブラケットの上方からツールが真っ直ぐに入らない場合でも、ラバー付ボルトのスタッド構造化によって位置決めができるため、ユニバーサル工具等で締結できる利点を有する。
そして、既存の部品やレイアウトを大きく変更する必要がないため、コストへの影響を少なくしてラジエータの取付作業性,搭載性の向上を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、図6以下に示す従来例と同一のものは同一符号を付してそれらの説明は省略する。
図1は請求項1に係るラジエータの取付構造の一実施形態を示し、図1に於て、55は既述した段付きボルト39を用いたラバー付ボルトで、段付きボルト39のボルト頭57が、ラバー位置決めステー9のプレート17に設けた長孔15に回止め嵌合可能とされており、図5に示すようにボルト頭57をプレート17の長孔15に回止め嵌合させることで、段付きボルト39がプレート17上に倒立するようになっている。
【0014】
そして、図3及び図5に示すようにボルト挿通孔35に段付きボルト39の軸部43を挿通して、ボルト頭57の座面59に既述した支持プレート23を溶接すると共に、ボルト挿通孔37に軸部43を挿通して、支持プレート23に図2のマウントラバー24を接着してラバー付ボルト55が構成されている。そして、図1に示すようにラバー付ボルト55(段付きボルト39)の先端のねじ部53に、平ワッシャ61を介してナット63が螺着されるようになっている。
【0015】
尚、既述したようにその他の構成は図6以下の従来例と同様であるが、既述したボルト挿通孔47に代え、取付ブラケット3にはラバー付ボルト55のねじ部53が挿通する小径なボルト挿通孔65が設けられている。
本実施形態はこのように構成されており、上記ラバー付ボルト55を用いたラジエータの取付けは、先ず、図5に示すようにラバー位置決めステー9の長孔15にラバー付ボルト55のボルト頭57を回止め嵌合して、ラバー付ボルト55をプレート17上に倒立させておく。
【0016】
そして、サイドレール5の上側フランジ部7に設けたボルト挿通孔49にラバー付ボルト55の軸部43を挿通させて、ラバー位置決めステー9を取付ボルト21と図示しないナットで上側フランジ部7の裏面側に固定する。
而して、このラバー位置決めステー9の固定によって、ラバー付ボルト55が上側フランジ部7からスタッドボルトの態様で上方へ突出すると共に、マウントラバー24によってラバー位置決めステー9が上側フランジ部7に弾性的に支持される。
【0017】
この後、図1に示すように上方へ突出するラバー付ボルト55の軸部43に合わせて、上方からマウントラバー41のボルト挿通孔45,取付ブラケット3のボルト挿通孔65を挿通させて、ボルト挿通孔65から突出するラバー付ボルト55のねじ部53にナット63を締め付けることで、マウントラバー41が変形し乍ら取付ブラケット3がラバー付ボルト55の段部51で固定されて、ラジエータがサイドレール5間に弾性的にマウントされる。
【0018】
そして、この場合、段付き位置までのマウントラバー41の変形量は図6の従来構造と同一であるため、ばね定数は変わらない。
このように本実施形態は、図6の従来構造に代え、ラジエータの取付けに先立ち、ラバー位置決めステー9を介してラバー付ボルト55をスタッドボルトとしてサイドレール5の上側フランジ部7に突出させて、その上方からラジエータ側の取付ブラケット3を取り付けるように構成したので、図6の従来例に比し取付ブラケット3のボルト挿通孔47の位置決めが可能となって孔ズレが生ずることがなくなり、この結果、ラバー付ボルト55の「かじり」がなく、斜め固定が防止できることとなり、工数も大幅に低減できる。
【0019】
また、ラジエータに接続されるインタークーラパイプ等があって、取付ブラケット3の上方からツールが真っ直ぐに入らない場合でも、ラバー付ボルト55のスタッド構造化によって位置決めができるため、ユニバーサル工具等で締結できる利点を有する。
そして、本実施形態によれば、既存の部品やレイアウトを大きく変更する必要がないため、コストへの影響を少なくしてラジエータの取付作業性,搭載性の向上を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】請求項1の一実施形態に係るラジエータの取付構造の説明図である。
【図2】ラバー付ボルトのマウントラバーの平面図である。
【図3】ラバー付ボルトの断面図である。
【図4】ラバー付ボルトの底面図である。
【図5】ラバー位置決めステーへのラバー付ボルトの倒立方法の説明図である。
【図6】従来のラジエータの取付構造の説明図である。
【図7】ラバー位置決めステーの平面図である。
【図8】ナット付ラバーの側面図である。
【図9】ナット付ラバーの平面図である。
【図10】ラバー位置決めステーへのナット付ラバーの取付方法の説明図である。
【符号の説明】
【0021】
1 サイドサポート
3 取付ブラケット
5 サイドレール
7 上側フランジ部
9 ラバー位置決めステー
15 長孔
17 プレート
19 支持部
23 支持プレート
24,41 マウントラバー
39 段付きボルト
43 軸部
51 段部
53 ねじ部
55 ラバー付ボルト
57 ボルト頭
59 座面
61 平ワッシャ
63 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータの左右に取り付く取付ブラケットをフレームの左右のサイドレールに固着して、ラジエータをサイドレール間に取り付けるキャブオーバ型トラックに於けるラジエータの取付構造であって、
上記サイドレールの上側フランジ部の裏面側に取り付くラバー位置決めステーと、
当該ラバー位置決めステーに設けた長孔にボルト頭が回止め嵌合してラバー位置決めステー上に倒立し、当該ボルト頭の座面に支持プレートを介してマウントラバーが取り付くラバー付ボルトと、
取付ブラケットと上側フランジ部との間に介装される第2のマウントラバーと、
上記ラバー付ボルト先端のねじ部に螺着されるナットとを備え、
長孔にボルト頭を回止め嵌合してラバー位置決めステー上に倒立させたラバー付ボルトを、上側フランジ部に設けたボルト挿通孔から上方へ突出し、
当該ラバー付ボルトに、第2のマウントラバーと取付ブラケットに設けたボルト挿通孔を挿通させて、上記ナットをラバー付ボルト先端のねじ部に螺着してなることを特徴とするラジエータの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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