説明

ラップフィルムの格納用化粧箱

【課題】ラップフィルムの使い勝手の向上を図り、安全で環境への配慮を図った繰り返し使用可能なラップフィルムの格納用化粧箱を提供する。
【解決手段】格納用化粧箱1及びフィルム案内板6の材質をプラスチック製とし、繰り返し使用可能として廃棄物の低減を図った。フィルム案内板6の表面に粘着性を持たせラップフィルムが化粧箱内に巻き込まれることを防止すると共に、フィルム案内板と化粧箱側面部に切り欠きを設けラップフィルムの取り出しを容易にして使い勝手の向上を図った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドカッターを備えたことを特徴とするラップフィルムの格納用化粧箱に関し、特に繰り返し使用可能なラップフィルムの格納用化粧箱に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルムの格納用化粧箱は、通常ダンボール等の厚紙でできており、ラップフィルムを使用してしまうと、残った化粧箱、巻芯等はゴミとして処理されることになる。また、通常、金属性のカット刃が備えられ、使用時に必要量をカットして使用される。この刃の形状は鋸刃状であり誤って手を傷つける可能性がある。そこで、安全のため、金属刃の替わりに図7に示すようなスライドカッター7を用いてラップフィルムをカットすることが提案されている(特許文献1参照)。このスライドカッター7は、ラップフィルムの格納用化粧箱の前面にセットされ使用される。ラップフィルムは化粧箱本体から引き出され、スライドカッターのレール7bの上で、スライドカッター7により切断される。カット後、ラップフィルムの切断端はレール上にあり、カット時ラップフィルムを固定しカットの信頼性を上げるため、レール7bの表面に粘着性を持たせることが行われている。
【0003】
しかし、この機構では、100m未満の短いラップフィルムの場合は問題ないが、100m以上のラップフィルムで重さが増した場合、カット後のフィルムをレールの粘着力だけで支えるのは難しく、化粧箱を持ち運んだりショックが加わったりした際に、レールからラップフィルムが外れ、ラップフィルムの切断端が化粧箱内に引き戻される場合がある。
【0004】
これらの問題点を解決する方法として、フィルム案内板を高粗度とする、あるいはフィルム案内板にラップフィルムが貼り付き得る平滑なコーティングを施すことでフィルムの化粧箱への巻き込みを防止する方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、これらの対策では、フィルム案内板の材質が紙製であるため、耐久性に乏しくラップフィルムを使い切った時点で、ゴミとして処理することになる。また、高粗度、平滑化ではラップフィルムの貼り付きが不十分な場合もある。
【0005】
更に、粘着性のあるフィルム案内板を設けたとき、フィルム案内板が大きな面積を有する場合に、ラップフィルムがフィルム案内板に貼り付き次回のラップフィルムの引出しが困難になるという問題もあった。
【0006】
【特許文献1】特表2003−532545号公報
【特許文献2】特開平9−315426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ラップフィルムの使い勝手の向上を図り、安全で環境への配慮を図った繰り返し使用可能なラップフィルムの格納用化粧箱を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次のものに関する。
1. 巻回されたラップフィルムを回転可能に収容するとともに、その長手方向一側縁にスライドカッターを装着してなるラップフィルムの格納用化粧箱において、少なくとも上記化粧箱本体及びフィルム案内板の材質がプラスチック製であることを特徴とするラップフィルムの格納用化粧箱。
2. 上記ラップフィルム格納用化粧箱のフィルム案内板の表層が粘着性を有し、フィルム案内板のラップフィルム接触面の両端及び/または中央部に切り欠きを有していること、及び前記フィルム案内板の両端に位置する化粧箱側面部にも切り欠きを有していることを特徴とする項1記載のラップフィルムの格納用化粧箱。
3. 化粧箱本体の開閉蓋部に蓋を閉じたときに請求項2記載の化粧箱側面部の切り欠き部を被う側面蓋を有していることを特徴とする項1又は2のいずれかに記載のラップフィルム格納用化粧箱。
4. 巻回されたラップフィルムが巻芯を有しない場合、巻芯に替わる円柱状の治具でラップフィルムを回転可能に軸支することを特徴とする項1〜3のいずれかに記載のラップフィルム格納用化粧箱。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るラップフィルム格納用化粧箱は、化粧箱の材質をプラスチックとすることで、繰り返し使用が可能で廃棄物の低減が図れる。また、フィルム案内板もプラスチック製としその表面に粘着性を与えラップフィルムの化粧箱内への巻き込みを防止し、両端及び/または中央に切り欠きを設け、更に前記フィルム案内板の両端の切り欠き部に位置する化粧箱側面部にも切り欠きを設けることで次回のラップフィルムの取り出しを容易とし、ラップフィルムの使い勝手の向上を図った。さらに、ラップフィルムを巻芯レスにすることにより、従来ラップフィルムを使い終わったときに廃棄物となっていた巻芯がなくなり、環境に対して優位に働くようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ラップフィルムを回転可能に収容するとともに、その長手方向一側縁にスライドカッターを装着してなるラップフィルムの格納用化粧箱において、格納用化粧箱及びフィルム案内板の材質をプラスチック製とし、繰り返し使用を可能にし、廃棄物の低減を図ったラップフィルムの格納用化粧箱に関するものである。
【0011】
また、ラップフィルムの使い勝手を向上させるため、表面に粘着性を持たせたフィルム案内板を設けると、カット後のフィルムを確実に保持し、化粧箱を持ち運んだり化粧箱にショックが与えられたりしても、ラップフィルムが化粧箱内に引き込まれないようにした。さらに、フィルム案内板の両端及び/または中央部に切り欠きを設け、また、フィルム案内板の両端に切り欠きを設けたときには、更に前記フィルム案内板の両端の切り欠き部に位置する化粧箱側面部にも切り欠きを設けると、次回にラップフィルムを引き出すときに容易にラップフィルムを引き出せる構造となる。
【0012】
フィルム案内板の表面に粘着性を持たせる方法としては種々の方法が考えられるが、多層押出しで粘着層と基材層を同時にシートとして押出し、その後シートをフィルム案内板の形状に打ち抜く方法、多層の射出成形で成形する方法、押出し打ち抜きあるいは射出成形で案内板の基板を作製しそれに粘着剤を塗布する方法等が考えられる。この目的が達成されればこれらの方法に限定されるものではなく、これ以外の方法で作製したものでも良い。
【0013】
さらに、紙製のラップフィルム格納用化粧箱では既に行われていることであるが、フィルム案内板の両端にラップフィルムを回転可能に軸支する機構を備えれば、フィルム案内板が軸支する働きを持ち、部品点数を減少させることができる。
【0014】
この軸支部に巻芯に置き換われるパイプ状の筒を通せば、巻芯レスのラップフィルムの使用が可能となり、巻芯が廃棄物として発生しなくなる。また、巻芯の材質としてはプラスチック製でも紙製のボール芯でもよい。即ち、化粧箱本体と異なりラップフィルムを台所等の水周りで使用しても巻芯は化粧箱内に収められているものであるので直接水に濡れる恐れはほとんどない。従って、ある程度の耐久性があるものであれば材質を問わない。
【0015】
これらラップフィルムの格納用化粧箱を作製するためのプラスチック材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等の汎用のポリオレフィン系の樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が使用できる。化粧箱本体と開閉蓋の接続にはヒンジ機構、軸の嵌め込み等の方法がある。ヒンジ機構の場合には、ヒンジ特性に優れたポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂等が好ましい。ただし、これらに限定されるものではないのは言うまでもない。
【0016】
これらラップフィルムの格納用化粧箱を作製する方法としては、射出成形、押出シートの切り出し組み立て等、通常考えられる作製方法による。これも目的が達成されれば、これらの方法に限定されるものではなく、これ以外の方法で作製したものでも良い。
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至図5は本発明に係るラップフィルム格納用化粧箱の第1実施形態を示すものである。図1は化粧箱の開閉蓋3を開放した状態を示す外観図、図2は同化粧箱の構成を示す分解斜視図、図3は同化粧箱における引き出されたラップフィルム5aをスライドカッター7で切っている状態を示す説明図である。図4は両手を使って両端部からラップフィルムを引き出そうとしている状態図、図5は片手で中央部からラップフィルムを引き出そうとしている状態図を示している。
【0018】
まず、本発明の第1実施形態について図1乃至図5を用いて説明する。図1、図2において、本発明に係るラップフィルムの格納用化粧箱1は、所定の内容積を有する化粧箱本体2、ラップフィルム5、ラップフィルムの芯部に嵌め込む円筒状の巻芯4、巻芯を軸支するとともにラップフィルム引出し時にラップフィルムのガイドとなるフィルム案内板6及びラップフィルムを所望の長さにカットするためのスライドカッター7から大略構成されている。スライドカッター7は図7に示すようなものである。
【0019】
更に詳しくは、上記格納用化粧箱は、ポリプロピレン等の材料を用いて射出成形により作製され、巻芯無しのラップフィルムには円筒状の巻芯が嵌め込まれ、これを、両端を折り曲げたフィルム案内板6で支えた形で化粧箱本体内に格納する。更に、スライドカッター7を化粧箱前面の嵌め込み部9に嵌め込む。ラップフィルム端部には引き出し用のテープ10が貼られているので、これを引っ張ることでラップフィルム5を図1に示すように引き出すことができる。
【0020】
図1のように所望の長さに引き出されたラップフィルムは、図3に示すように片側を手で持ち、反対の手8でスライドカッター7の刃の付いたスライドノブ7aをレール7bに沿って動かすことで所望の長さに安全に切断することができる。
【0021】
ラップフィルムの切断が完了すると、スライドカッター7のレール7bの上面及びフィルム案内板6の表面は粘着性を有しているため、これらにフィルムが貼り付いた状態となっている。この状態から次回のラップフィルムを使用するため引き出すには、図4に示すようにフィルム案内板6の両端に切り込まれた切り欠き部6a、6cとその位置に相当する部分が切り込まれた格納用化粧箱側面の切り欠き部6d、6e(図5参照)から両方の手の指を入れ、ラップフィルムを持って所望長さを容易に引き出すことができる。一方、図5に示すように、フィルム案内板6の中央部に設けられた切り欠き部6bを片手でつまめば、片手で容易に次回使用分のラップフィルムを引き出すことができる。
【0022】
このような切り欠きを設けた構造ではその部分が開放した状態となる。ラップフィルムは食品をも包装するものであるので保管時においては可能な限り空気中のゴミ等にさらされない状態が望ましい。このためには開閉蓋3に側面蓋3bを設け、開閉蓋3の差込片3aを差込口2aに差し込み、開閉蓋3を閉じたときに切り欠き部を被うことで目的が達成される。
【0023】
以上のようにラップフィルムを安全に効率よく切って使用することができ、しかも、格納用化粧箱、巻芯、フィルム案内板がプラスチック製で、ラップフィルムを新しいものに交換すればスライドカッターも含め再び使用することができる。ラップフィルムが巻芯ありの場合でも、巻芯は廃棄する必要があるが、それ以外の格納用化粧箱、フィルム案内板、スライドカッターは繰り返し使用することができる。
【0024】
図6には、比較のために、フィルム案内板6の表面が粘着性を有しない場合の状態を示す斜視図が示されている。即ち、ラップフィルムをスライドカッター7でカットした後、スライドカッター7のレール部の表面は粘着性を有しているため、そこでラップフィルムが支えられているが、一般にスライドカッター7のレール部の幅は狭いものであるので、持ち運んだり、ショック等が加わったりした際に、ラップフィルムがレールから外れる可能性が高い。その場合、フィルム案内板6の表面に粘着性があれば、スライドカッター7のレール部に比較してフィルム案内板6の幅は広いのでたとえ、レール部からラップフィルムが外れても、フィルム案内板6でラップフィルムが本体内に入るのを防ぐが、その表面が粘着性を有しない場合は、図6に示すように、本体内に引き出されたラップフィルム5aが戻ってしまい、次回の使用時にラップフィルムの端部を探すのが困難となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るラップフィルム格納用化粧箱の第1実施形態を示す外観図。
【図2】図1に示すラップフィルム格納用化粧箱の構成を示す分解斜視図。
【図3】図1に示すラップフィルム格納用化粧箱におけるラップフィルムのカット状態を示す説明図。
【図4】図3でラップフィルムをカットした後、次回のラップフィルムを取り出すのに両端の切り欠き部から取り出そうとしている状態図。
【図5】図3でラップフィルムをカットした後、次回のラップフィルムを取り出すのに中央の切り欠き部から取り出そうとしている状態図。
【図6】フィルム案内板の表面に粘着性がない場合に、ラップフィルムが本体に入り込んでしまうことを説明する斜視図。
【図7】本発明で使用するスライドカッターの一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1 化粧箱
2 化粧箱本体
2a 差込口
3 開閉蓋
3a 差込片
3b 側面蓋
4 巻芯
5 ラップフィルム
5a 引き出されたラップフィルム
6 フィルム案内板
6a、6b、6c フィルム案内板の切り欠き部
6d、6e 化粧箱側面の切り欠き部
7 スライドカッター
7a スライドノブ
7b レール
8 手
9 スライドカッター嵌め込み部
10 引き出し用テープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回されたラップフィルムを回転可能に収容するとともに、その長手方向一側縁にスライドカッターを装着してなるラップフィルムの格納用化粧箱において、少なくとも上記化粧箱本体及びフィルム案内板の材質がプラスチック製であることを特徴とするラップフィルムの格納用化粧箱。
【請求項2】
上記ラップフィルム格納用化粧箱のフィルム案内板の表層が粘着性を有し、フィルム案内板のラップフィルム接触面の両端及び/または中央部に切り欠きを有していること、及び前記フィルム案内板の両端に位置する化粧箱側面部にも切り欠きを有していることを特徴とする請求項1記載のラップフィルムの格納用化粧箱。
【請求項3】
化粧箱本体の開閉蓋部に蓋を閉じたときに請求項2記載の化粧箱側面部の切り欠き部を被う側面蓋を有していることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のラップフィルム格納用化粧箱。
【請求項4】
巻回されたラップフィルムが巻芯を有しない場合、巻芯に替わる円柱状の治具でラップフィルムを回転可能に軸支することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のラップフィルム格納用化粧箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−206110(P2006−206110A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21211(P2005−21211)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(591204388)日立化成フィルテック株式会社 (5)
【Fターム(参考)】