説明

ラパマイシンヒドロキシエステルを含有する非経口製剤

【課題】より安定な、3−ヒドロキシ−2(ヒドロキシメチル)−2−メチル−プロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)の製剤の提供。
【解決手段】
CCI−779、非経口的に許容される溶媒および抗酸化成分を含むCCI−779補助溶媒濃厚物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)の非経口製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ラパマイシンはストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)によって産生される大環状トリエン抗生物質であり、インビトロおよびインビボの両方において、抗真菌活性、特にカンジダ・アルビカンス(Candida alb cans)に対する抗真菌活性を有することが判明した[非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;特許文献1;および特許文献2]。加えて、ラパマイシン単独(特許文献3)またはピシバニルとの組合せ(特許文献4)が抗腫瘍活性を有することが示された。
【0003】
ラパマイシンの免疫抑制効果は明らかにされている。他の大環状分子であるシクロスポリンAおよびFK−506もまた免疫抑制剤として有効であり、したがって、移植体拒絶の予防に有用であることが示された[非特許文献4;および特許文献5]。非特許文献5には、ラパマイシンが多発性硬化症のモデルである実験的アレルギー性脳脊髄炎モデルにおいて;関節リウマチのモデルであるアジュバント関節炎モデルにおいて有効であり;IgE様抗体の形成を効果的に阻害したことが記載されている。
【0004】
ラパマイシンはまた、全身性エリテマトーデス[特許文献6]、肺炎[特許文献7]、インスリン依存性糖尿病[特許文献8]、乾癬のような皮膚障害[特許文献9]、腸障害[特許文献10]、平滑筋細胞増殖および血管損傷後の内膜肥厚[特許文献11および特許文献12]、成人T細胞白血病/リンパ腫[特許文献13]、眼炎症[特許文献14]、悪性癌腫[特許文献15]、心臓炎症性疾患[特許文献16]、および貧血[特許文献17]の予防または治療にも有用である。
【0005】
3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸とのラパマイシン42−エステル(CCI−779)はインビトロおよびインビボの両方のモデルにおいて腫瘍増殖に対する有意な阻害効果を示したラパマイシンのエステルである。CCI−779を包含するラパマイシンのヒドロキシエステルの製造および使用は米国特許第5,362,718号に記載されている。
【0006】
CCI−779は細胞毒性とは全く異なる細胞分裂停止特性を示し、腫瘍進行時間または腫瘍再発時間を遅延することができる。CCI−779はシロリムスの作用機序と類似の作用機序を有すると考えられる。CCI−779は細胞質タンパク質FKBPと結合して複合体を形成し、酵素mTOR(FKBP12−ラパマイシン会合タンパク質[FRAP]としても知られている、ラパマイシンの哺乳動物標的)を阻害する。mTORのキナーゼ活性の阻害は、サイトカイン刺激性細胞増殖、細胞周期のG1期を調節するいくつかの重要なタンパク質のmRNAの翻訳、およびG1からSへの細胞周期の進行の阻害を導くIL−2誘発性転写を包含する種々のシグナル伝達経路を阻害する。G1−S期ブロックを生じるCCI−779の作用機序は抗癌剤については新規である。
【0007】
インビトロで、CCI−779が多くの組織学的に多様な腫瘍細胞の増殖を阻害することが示された。中枢神経系(CNS)癌、白血病(T細胞)、乳癌、前立腺癌、およびメラノーマ系統がとりわけCCI−779に感受性があった。該化合物は細胞を細胞周期のG1期に留まらせた。
【0008】
ヌードマウスにおけるインビボ研究は、CCI−779が多種多様な組織タイプのヒト腫瘍異種移植片に対して活性を有することが立証された。神経膠腫は特にCCI−779に感受性があり、該化合物はヌードマウスの同所神経膠腫モデルにおいて活性であった。インビトロでのヒト神経膠芽腫細胞系の増殖因子(血小板由来)誘発性刺激はCCI−779によって著しく抑制された。インビボで研究したヌードマウスのいくつかのヒト膵臓腫瘍および2つの乳癌系のうち1つの増殖もまたCCI−779によって阻害された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,929,992号
【特許文献2】米国特許第3,993,749号
【特許文献3】米国特許第4,885,171号
【特許文献4】米国特許第4,401,653号
【特許文献5】米国特許第5,100,899号
【特許文献6】米国特許第5,078,999号
【特許文献7】米国特許第5,080,899号
【特許文献8】米国特許第5,321,009号
【特許文献9】米国特許第5,286,730号
【特許文献10】米国特許第5,286,731号
【特許文献11】米国特許第5,288,711号
【特許文献12】米国特許第5,516,781号
【特許文献13】欧州特許出願公開525,960 A1
【特許文献14】米国特許第5,387,589号
【特許文献15】米国特許第5,206,018号
【特許文献16】米国特許第5,496,832号
【特許文献17】米国特許第5,561,138号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C. Vein et al., J. Antibiot. 28, 721(1975)
【非特許文献2】S.N. Sega et al., J. Antibiot. 28, 727(1975)
【非特許文献3】H. A. Baker et al., J. Antibiot. 31, 539(1978)
【非特許文献4】R. Y. Calne et al., Lancet 1183(1978)
【非特許文献5】R. Martel et al.[Can. J. Physiol. Pharmacol. 55, 48(1977)]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
CCI−779の非経口剤形としての処方に関する主な障害は水溶性に乏しいことであり、1μg/ml未満である。該薬物は非電解質であり、pH調節および塩形成のようなアプローチは水溶性の改善に有用ではない。CCI−779は医薬上許容される植物油に対する溶解性に乏しいが、CCI−779は非経口投与について許容されるある種の水混和性有機溶媒に溶ける。これらとしてはエタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびジメチルアセトアミドが挙げられる。これらの有機溶媒中でのCCI−779の処方に関して2つの課題および制限が存在する。第1に、事実上全ての溶媒において化学的不安定性が注目された。該不安定性はCCI−779の酸化分解またはラクトン結合の開裂によるものであり、その結果、開環したセコ−CCI−779が形成される。第2に、有機溶媒中でのCCI−779の処方は0.9%塩化ナトリウム注射剤もしくは5%デキストロース注射剤のような水性注入液、または血液で希釈すると沈殿する。主としてこれにより、非常に水不溶性の化合物に対してビヒクルとして使用する場合、補助溶媒とも言われる水混和性有機溶媒の使用が制限される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の概要)
本発明は、溶液中に抗酸化剤および/またはキレート化剤を存在させた非経口的に許容される補助溶媒を用いてCCI−779を可溶化することによって上記課題を回避する。該非経口製剤は、加えて、非経口的に許容される界面活性剤を含有する。
【0013】
一の態様において、本発明はCCI−779、アルコール系溶媒、および抗酸化剤を含有するCCI−779補助溶媒濃厚物を提供する。
【0014】
別の態様において、本発明はCCI−779、アルコール系溶媒、抗酸化剤、希釈溶媒、界面活性剤を含有する非経口製剤を提供する。
【0015】
さらに別の態様において、本発明は、CCI−779と非経口的に許容される溶媒および抗酸化剤と混合して補助溶媒濃厚物を得ること;希釈溶媒および界面活性剤を混合して希釈剤を生成すること;および該補助溶媒濃厚物と該希釈剤とを混合してCCI−779非経口製剤を得ることによる非経口CCI−779製剤の調製方法を提供する。
【0016】
本発明の別の態様および利点は下記の発明の詳細な説明から容易に明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
かくして、本発明は、上記した非経口的に許容される溶媒および抗酸化剤を含有するCCI−779補助溶媒濃厚物、ならびにCCI−779、非経口的に許容される補助溶媒、抗酸化剤、希釈溶媒、および界面活性剤を含むCCI−779含有非経口製剤を提供する。
【0018】
本発明のいずれもの所定の製剤は、各クラスの成分の複数の成分を含有することができる。例えば、非経口的に許容される溶媒としては非アルコール系溶媒、アルコール系溶媒、またはその混合物を挙げることができる。適当な非アルコール系溶媒の例としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドもしくはアセトニトリル、またはその混合物が挙げられる。「アルコール系溶媒」は、当該製剤のアルコール系溶媒成分として1種類またはそれ以上のアルコールを含有することができる。本発明の製剤に有用な溶媒の例としては、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、またはその混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの補助溶媒は特に望ましい。なぜならば、これらの補助溶媒では酸化による分解およびラクトン開裂がより低い程度でしか生じないからである。さらに、エタノールおよびプロピレングリコールを組み合わせて難燃性生成物を製造することがあるが、該混合物中の多量のエタノールにより一般に良好な化学的安定性が引き起こされる。該混合物中のエタノールの30〜100%v/vの濃度が好ましい。
【0019】
本発明において、非経口的に許容されるアルコール系補助溶媒中でのCCI−779の安定性は、該製剤に抗酸化剤を添加することにより増強される。許容される抗酸化剤としてはクエン酸、d,l−α−トコフェロール、BHA、BHT、モノチオグリセロール、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、およびその混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に、本発明の製剤は補助溶媒濃厚物の0.001%〜1%w/v、または0.01%〜0.5%w/vの範囲の濃度の抗酸化成分(複数も可)を含有するが、より低い濃度またはより高い濃度が望まれる場合もある。抗酸化剤のうち、d,l−α−トコフェロールが特に望ましく、補助溶媒濃厚物の0.01〜0.1%w/vの濃度で使用され、好ましくは、補助溶媒濃厚物の0.075%w/vの濃度で使用される。
【0020】
ある種の実施態様において、本発明の製剤の抗酸化成分はまたキレート化活性も示す。かかるキレート化剤の例としては、例えば、クエン酸、酢酸およびアスコルビン酸が挙げられる(本発明の製剤において古典的抗酸化剤およびキレート化剤の両方として機能することができる)。他のキレート化剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、その塩、またはグリシンの如きアミノ酸のような、溶液中の金属イオンを結合する能力を有するような物質が挙げられ、これらはCCI−779の安定性を増強する能力を有する。
【0021】
いくつかの実施態様において、キレート化活性を有する成分は唯一の「抗酸化成分」として本発明の製剤に含まれる。典型的には、かかる金属結合成分は、キレート化剤として作用する場合、ここに記載した抗酸化成分の濃度範囲の下端の濃度で使用される。一例として、クエン酸は、0.01%w/v未満の濃度で使用された場合、CCI−779の安定性を増強した。濃度が高いほど溶液の安定性が低くなり、かくして、製品を液体形態で長期貯蔵するのは望ましくなくなる。加えて、かかるキレート化剤は、本発明の抗酸化成分の一部として他の抗酸化剤と組み合わせて使用することができる。例えば、許容される製剤はクエン酸およびd,l−α−トコフェロールの両方を含むことができる。選択された抗酸化剤(複数も可)の最適な濃度は当業者であれば本明細書から得られる情報に基づいて容易に決定することができる。
【0022】
有利には、本発明の製剤において、水性注入液または血液での希釈によるCCI−779の沈殿は該希釈溶液に含まれる界面活性剤の使用により防止することができる。該希釈剤の最も重要な成分は非経口的に許容される界面活性剤である。一の特に望ましい界面活性剤はポリソルベート20またはポリソルベート80である。しかしながら、当業者は胆汁酸の塩(タウロコール酸塩、グリココール酸塩、コール酸塩、デオキシコール酸塩等)の中から他の適当な界面活性剤を容易に選択することができ、所望により、レシチンと組み合わせてもよい。別法として、PEG化ヒマシ油[例えば、販売されているPEG−35ヒマシ油、例えば、BASFからCremophor ELの名称の下に販売されている]のようなエトキシル化植物油、コハク酸ビタミンEトコフェロールプロピレングリコール(Vitamin E TGPS)、およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ならびにポリソルベート20または60のようなポリソルベートファミリーの他のメンバーを界面活性剤として希釈剤中にて使用することができる。該希釈剤の他の成分としては、水、エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、またはこれらのポリエチレングリコールのうち1種類またはそれ以上を含有するブレンド、プロピレングリコールおよび他の非経口的に許容される補助溶媒、または塩化ナトリウム、ラクトース、マンニトールまたは他の非経口的に許容される糖、ポリオールおよび電解質のような溶液モル浸透圧濃度調節剤が挙げられる。界面活性剤は該希釈溶液の2〜100%w/v、該希釈溶液の5〜80%w/v、10〜75%w/v、15〜60%w/v、および、好ましくは、少なくとも5%w/v、または少なくとも10%w/v含まれるであろうと考えられる。
【0023】
非経口製剤は単一溶液として調製することができるか、または、好ましくは、CCI−779、アルコール系溶媒、および抗酸化剤を含有する補助溶媒濃厚物として調製することができ、次いで、希釈溶媒および好適な界面活性剤を含有する希釈剤と組み合わせられる。使用前に、補助溶媒濃厚物を、希釈溶媒および界面活性剤を含む希釈剤と混合する。CCI−779を本発明の補助溶媒濃厚物として調製した場合、該濃厚物はCCI−779を0.05mg/mLから、2.5mg/mLから、5mg/mLから、10mg/mLから、または25mg/mLから、約50mg/mlまでの濃度で含有することができる。該濃厚物と希釈剤とをほぼ濃厚物1部:希釈剤1部まで混合して、CCI−779を1mg/mlから、5mg/mLから、10mg/mLから、20mg/mLから、約25mg/mlまでの濃度で有する非経口製剤を得ることができる。例えば、非経口製剤中のCCI−779の濃度は約2.5〜10mg/mLであり得る。本発明はまた、補助溶媒濃厚物中にCCI−779を低い濃度で有する製剤、および濃厚物1部と1部よりも多い希釈剤とを、例えば、濃厚物:希釈剤の比率約1:1.5、1:2、1:3、1:4、1:5、または1:9v/vなどで混合する製剤、最低検出レベルまで低下した濃度のCCI−779を有するCCI−779非経口製剤を包含する。
【0024】
典型的には、抗酸化剤は製剤の約0.0005〜0.5%w/v含まれ得る。界面活性剤は例えば製剤の約0.5%〜約10%w/v含まれ得る。アルコール系溶媒は例えば製剤の約10%〜約90%w/v含まれ得る。
【0025】
本発明の非経口製剤を使用して、直接注射によるかまたは静脈点滴のための無菌注入液への添加により投与に適した剤形を調製することができる。
【0026】
本発明の製剤の代表例を以下に記載する。CCI−779の製造は米国特許第5,362,718号に記載されており、出典明示により本明細書の記載とする。CCI−779の位置選択的製造は米国特許第6,277,983号に記載されており、出典明示により本明細書の記載とする。
【0027】
薬物を直接注射により投与する場合、希釈製剤は本質的には水性であるのが最も好適である。例えば、実施例3を参照。薬物を無菌注入液に添加することにより投与する場合、希釈製剤は本質的に水性、例えば、水、グルコース溶液、生理食塩水および緩衝生理食塩水など、または非水性のいずれかであり得る。後者の場合、水混和性補助溶媒が希釈剤中の水に取って代わる。実施例4は非水性の製剤であり、静脈点滴による投与の前に、0.9%塩化ナトリウム注射剤、5%デキストロース注射剤、乳酸加リンゲル注射剤、および他の一般に使用される静脈点滴溶液のような無菌注入液に添加することが意図される製剤である。
【実施例】
【0028】
補助溶媒濃厚物
実施例1
CCI−779 25mg
クエン酸、無水物 0.005%w/v
脱水エタノール、USP 適量加えて全量を1.0mlにする
上記製剤を、窒素/空気ヘッドスペースを有するガラスアンプルに入れ、2〜8℃で貯蔵した場合、貯蔵寿命は18〜30ヶ月であった。
【0029】
実施例2
CCI−779 25mg
脱水エタノール、USP 0.395g
クエン酸、無水物、USP 0.025mg[0.0025%w/v]
d,l−α−トコフェロール、USP 0.75mg[0.075%w/v]
プロピレングリコール、USP 適量加えて全量を1.0mLにする
上記製剤を、窒素/空気ヘッドスペースを有するバイアルに入れた。2〜8℃および室温で24ヶ月貯蔵した後の良好な安定性が立証された。5℃で24ヶ月後に有意な分解は見られなかった。実施例1および2にて提供される製剤は共に無菌濾過により滅菌することができる。
【0030】
実施例3は主要なビヒクルとして非アルコール系補助溶媒を含有する処方である:
実施例3
CCI−779 25mg
クエン酸、無水物 0.025mg
D,L−α−トコフェロール、USP 0.75mg
N,N−ジメチルアセトアミド 適量加えて全量を1.0mlにする
短時間の温度ストレスへの暴露は上記処方が安定であることを示した(ストレス温度条件(例えば、70℃)への少なくとも24時間の暴露後、97%を超える効力が保持された)。
【0031】
希釈剤
実施例4
ポリソルベート80、NF 5%w/v
ポリエチレングリコール400 NF 5%w/v
注射用水、USP 適量加えて全量を100%にする
この製剤をバイアルに入れ、密封し、オートクレーブ処理により滅菌することができる。上記製剤は、好ましくは、実施例1または2の補助溶媒濃厚物と9:1(v/v)の比率で合わせて、濃度2.5mg/mlのCCI−779の溶液を生成することができる。得られた混合物を直接注射するか、または0.9%塩化ナトリウム注射剤または5%デキストロース注射剤でさらに希釈して静脈点滴用溶液を得ることができる。かかる混合物は、室温で数時間、物理的におよび化学的に安定である。上記希釈剤は、実施例1および2のCCI−779製剤と合わせて使用した場合、直接静脈注射または静脈点滴によりCCI−779 0.5〜500mgの投薬を送達した。
【0032】
本質的に水性の組成物を有する希釈剤処方のさらなる実施例を以下に記載する:
【0033】
実施例5
Cremophor EL 10w/v%
注射用水 適量加えて全量を100w/v%にする
この実施例において、希釈剤を同容量のCCI−779濃厚物(例えば、上記実施例2)と組み合わせてほとんど水性のビヒクルを調製した。それは室温で数時間、物理的に安定だった。この混合物は直接静脈注射に好適であり得た。
【0034】
実施例6
Vitamin E TPGS NF 10w/v%
注射用水、USP 適量加えて全量を100w/v%にする
上記処方を同容量のCCI−779濃厚物(例えば、上記実施例2)と合わせてほとんど水性のビヒクルを調製した。それは室温で数時間、物理的に安定であった。得られた濃厚物−希釈剤混合物はまた、薬物沈殿の形跡もなく0.9%塩化ナトリウム注射剤で希釈することができた。
実施例6はCCI−779の直接静脈注射(例えば、IVプッシュ)または無菌注入液での希釈後の静脈点滴に好適な希釈剤である。
【0035】
実施例7
ポリソルベート20 10%w/v
注射用水、USP 適量加えて全量を100%w/vにする
実施例7の希釈剤をCCI−779濃厚物(例えば、実施例2)と組み合わせて混合物を製造した。それは室温で数時間、物理的に安定であった。濃厚物−希釈剤混合物を、IVプッシュによるCCI−779の投与に使用することができる。
【0036】
実施例8
ポリソルベート80、NF 40%w/v
脱水エタノール、USP 19.9%w/v
ポリエチレングリコール400、NF 適量加えて全量を100%にする
上記製剤を無菌濾過により滅菌した。上記処方を実施例1または2の補助溶媒濃厚物と、好ましくは、1.5:1の容量比で組み合わせて、10mg/mlのCCI−779を含有する溶液を調製した。これをさらに0.9%塩化ナトリウム注射剤または5%デキストロース注射剤で希釈して、静脈点滴用溶液を提供することができる。これらの混合物は室温で数時間、物理的にまたは化学的に安定である。上記希釈剤は、実施例1および2のCCI−779製剤と組み合わせた場合、静脈点滴による2〜500mgの投薬を送達するのに有用である。
【0037】
実施例9
ポリソルベート20 20%w/v
ポリエチレングリコール400 適量加えて全量を100%w/vにする
上記製剤を同容量のCCI−770濃厚物(例えば、実施例2)と組み合わせて透明な混合物を調製した。この濃厚物−希釈剤混合物を0.9%塩化ナトリウム注射剤で希釈して、室温で数時間、物理的に安定な混合物を調製することができる。実施例9を使用して静脈点滴によりCCI−779を投与することができる。
【0038】
本明細書の実施例は本発明の製剤およびそれらの調製を例示するものであるが、これらを限定するものではない。他の溶媒、抗酸化剤、希釈剤および/または界面活性剤を本発明に使用することができることは容易に理解されるであろう。加えて、実施例に対する多くの変更は特許請求の範囲により包含される。本明細書にて確認された全ての文献は出典明示により本明細書の記載とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCI−779、非経口的に許容される溶媒および抗酸化成分を含むCCI−779補助溶媒濃厚物。
【請求項2】
非経口的に許容される溶媒がジメチルアセトアミドである、請求項1記載の補助溶媒濃厚物。
【請求項3】
非経口的に許容される溶媒がアルコール系溶媒である、請求項1記載の補助溶媒濃厚物。
【請求項4】
アルコール系溶媒がエタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、またはポリエチレングリコール1000を含む、請求項3記載の補助溶媒濃厚物。
【請求項5】
抗酸化成分がクエン酸、グリシン、d,l−α−トコフェロール、BHA、BHT、モノチオグリセロール、アスコルビン酸、または没食子酸プロピルを含む、請求項1〜4いずれか1項記載の補助溶媒濃厚物。
【請求項6】
CCI−779、クエン酸、および脱水エタノールを含むCCI−779補助溶媒濃厚物。
【請求項7】
CCI−779、脱水エタノール、d,l−α−トコフェロール、およびプロピレングリコールを含むCCI−779補助溶媒濃厚物。
【請求項8】
さらにクエン酸を含む、請求項7記載の補助溶媒濃厚物。
【請求項9】
CCI−779を約0.05mg/mL〜約50mg/mL含む、請求項1〜8いずれか1項記載の補助溶媒濃厚物。
【請求項10】
CCI−779を約25mg/mL含む、請求項1〜8いずれか1項記載の補助溶媒濃厚物。
【請求項11】
抗酸化剤を約0.001%〜1.0%w/v含む、請求項1〜10いずれか1項記載の補助溶媒濃厚物。
【請求項12】
CCI−779、アルコール系溶媒、抗酸化剤、希釈溶媒、および界面活性剤を含む非経口製剤。
【請求項13】
アルコール系溶媒がエタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、またはポリエチレングリコール1000である、請求項12記載の製剤。
【請求項14】
抗酸化剤がクエン酸、グリシン、d,l−α−トコフェロール、BHA、BHT、モノチオグリセロール、アスコルビン酸、または没食子酸プロピルである請求項12または13記載の製剤。
【請求項15】
希釈溶媒が水、エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、またはプロピレングリコールである、請求項12〜14いずれか1項記載の製剤。
【請求項16】
界面活性剤がポリソルベート20、ポリソルベート80、胆汁酸、レシチン、エトキシル化植物油、コハク酸ビタミンEトコフェロールプロピレングリコール、またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体である、請求項12〜15いずれか1項記載の製剤。
【請求項17】
CCI−779を約1mg/mL〜約25mg/mL含む、請求項12〜16いずれか1項記載の製剤。
【請求項18】
CCI−779を約2.5mg/mL〜約10mg/mL含む、請求項12〜16いずれか1項記載の製剤。
【請求項19】
抗酸化剤を製剤の約0.0005〜0.5%w/v含む、請求項12〜18いずれか1項記載の製剤。
【請求項20】
界面活性剤を製剤の約0.5%〜約10%w/v含む、請求項12〜18いずれか1項記載の製剤。
【請求項21】
溶媒を製剤の約10%〜約90%w/v含む、請求項12〜18いずれか1項記載の製剤。
【請求項22】
(a)CCI−779と非経口的に許容される溶媒および抗酸化成分とを混合して補助溶媒濃厚物を得ること;
(b)希釈溶媒および界面活性剤を混合して希釈剤を生成すること;および
(c)補助溶媒濃厚物と希釈剤とを混合してCCI−779非経口製剤を得ること
を含む、非経口CCI−779製剤の調製方法。
【請求項23】
溶媒がエタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600またはポリエチレングリコール1000を含むアルコール系溶媒である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
抗酸化成分がクエン酸、d,l−α−トコフェロール、BHA、BHT、モノチオグリセロール、アスコルビン酸、または没食子酸プロピルを含む、請求項22または請求項23記載の方法。
【請求項25】
希釈溶媒が水、エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、またはプロピレングリコールである、請求項22〜24いずれか1項記載の方法。
【請求項26】
界面活性剤がポリソルベート20、ポリソルベート80、胆汁酸、レシチン、エトキシル化植物油、コハク酸ビタミンEトコフェロールプロピレングリコール、またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体である、請求項22〜25いずれか1項記載の方法。
【請求項27】
溶媒が脱水エタノールであり、抗酸化剤がクエン酸であり、希釈溶媒が水およびポリエチレングリコール400であり、界面活性剤がポリソルベート20またはポリソルベート80である、請求項22〜25いずれか1項記載の方法。
【請求項28】
溶媒が脱水エタノールであり、抗酸化剤がクエン酸であり、希釈溶媒が脱水エタノールおよびポリエチレングリコール400であり、界面活性剤がポリソルベート20またはポリソルベート80である、請求項22〜25いずれか1項記載の方法。
【請求項29】
溶媒が脱水エタノールおよびプロピレングリコールであり、抗酸化剤がd,l−α−トコフェロールであり、希釈溶媒が水およびポリエチレングリコール400であり、界面活性剤がポリソルベート20またはポリソルベート80である、請求項22〜25いずれか1項記載の方法。
【請求項30】
溶媒が脱水エタノールおよびプロピレングリコールであり、抗酸化剤がd,l−α−トコフェロールであり、希釈溶媒が脱水エタノールおよびポリエチレングリコール400であり、界面活性剤がポリソルベート20またはポリソルベート80である、請求項22〜25いずれか1項記載の方法。

【公開番号】特開2010−163466(P2010−163466A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106707(P2010−106707)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2004−524806(P2004−524806)の分割
【原出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】