説明

ラミネート方法及び装置

【課題】フイルムのロスを少なくし、作業効率を向上させる。
【解決手段】フイルムロール6には、フイルム3の欠点部位の位置及び範囲等を表す欠点部位情報が記憶された無線ICチップが取り付けられている。ICチップリーダ62は、無線ICチップから欠点部位情報を読み取って、ラミネート装置20全体を制御するラミネート工程制御部に入力する。ラミネート工程制御部は、フイルム3の搬送位置と欠点部位情報とに基づいてフイルム3の欠点部位の搬送位置を特定する。フイルム3の欠点部位が接合区間22に送り込まれる際に、接合区間22への基板2の供給を停止させ、かつ基板2とフイルム3とに接触しない退避位置に接合機構67を移動させ、フイルム3の欠点部位を接合機構67の加圧位置から通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺のフイルムと基板とを接合するラミネート方法及び装置に関し、更に詳しくは、フイルムの欠点部位を自動的に抜き取るようにしたラミネート方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス基板や半導体基板等に感光性を有するフイルム等を接合する液晶製造ラインや半導体製造ライン等では、所定の間隔で連続して供給される基板の一方の面にフイルムを重ね合わせ、一対のラミネートローラ(接合手段)で基板とフイルムとを挟み込んで加圧して接合するラミネート装置が用いられている。
【0003】
フイルムは、ベースフイルムと、このベースフイルムの上に設けられて基板に接合される樹脂層と、この樹脂層の上に重ねられて保護する保護層とを備えている。このフイルムは、保護層が剥離されて樹脂層が基板に接合され、その後にベースフイルムが剥離されることにより、基板上には樹脂層のみが残る。
【0004】
フイルムは、長尺状に形成されて巻芯の外周に巻き付けられ、フイルムロールの形態で供給されている。また、ラミネート装置の作業効率、生産効率を向上させるために、複数本のフイルムの先端及び後端を接合して長尺化し、フイルムロールの交換作業を少なくすることも行われている。
【0005】
上記ラミネート装置では、基板とフイルムの接合後に光学的監視装置で基板の表面状態を監視し、ボイドやフイルムの皺等の接合不良を検出して除去している。また、特許文献1記載のラミネート装置では、フイルム自体が有している欠点を検出して廃棄することにより、フイルム自体の欠点による不良品の発生を防止している。
【特許文献1】特開2005−212488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
接合直前にフイルムの検査を行う場合、ラミネート装置に検査装置を設置しなければならないため、ラミネート装置のコストが上昇するという問題がある。また、品種の切り換え等を行う際に、検査装置を変更しなければならない場合もあり、更にコストアップとなる。また、フイルムの製造ラインでは、製造後にフイルムの検査が行われるのが一般的であり、検査済みのフイルムを再度検査することによる無駄も大きい。更に、フイルムの欠点部位が接合直前に分るため、前もってフイルム全体の使用計画を立てることができず、フイルムのロスが多くなるという問題がある。
【0007】
また、従来のラミネート装置では、フイルムの接合部分が送られてきたときにラミネート装置をいったん停止させ、オペレータが手動でフイルムを送って接合部を通過させてから装置を再スタートしている。しかし、このような手法は作業時間のロスが大きく、接合部分の前後でのフイルムのロスも大きくなる。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するために、フイルムのロスを少なくし、作業効率を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のラミネート方法は、フイルムロールに設けられた情報記憶手段から、フイルムの欠点部位の位置及び範囲等の情報を含む欠点部位情報を読み取るステップと、フイルムの搬送位置を検出するステップと、欠点部位情報とフイルム搬送位置とに基づいて、欠点部位の搬送位置を特定するステップと、欠点部位が接合手段の加圧位置を通過する間、基板の供給を停止させ、かつ接合手段をフイルム及び基板に当接しない位置に退避させるステップを設けたものである。
【0010】
また、別のラミネート方法では、フイルムロールを識別するステップと、フイルムロールの識別情報に基づいて、このフイルムロールに巻かれたフイルムの欠点部位の位置及び範囲等の情報を含む欠点部位情報をオンラインで受信するステップと、フイルムの搬送位置を検出するステップと、欠点部位情報とフイルム搬送位置とに基づいて、欠点部位の搬送位置を特定するステップと、欠点部位が接合手段の加圧位置を通過する間、基板の供給を停止させ、かつ接合手段をフイルム及び基板に当接しない位置に退避させるステップを設けたものである。
【0011】
更に、欠点部位を通過させるステップの後に、欠点部位を廃棄するステップを設けたものである。なお、欠点部位は、フイルムの接合部分を含む。
【0012】
また、フイルムは、少なくともベースフイルムと、このベースフイルム上に塗布された感光性樹脂層とを有する感光性樹脂層積層体であり、基板には感光性樹脂層が接合されるようにしたものである。
【0013】
また、本発明のラミネート装置は、フイルムロールから引き出されたフイルムを搬送するフイルム搬送手段と、フイルムに対面するように所定の間隔で基板を供給する基板供給手段と、フイルムと基板とを加圧して接合する接合手段と、フイルムロールに設けられた情報記憶手段から、フイルムの欠点部位の位置及び範囲等の情報を含む欠点部位情報を読み取る情報読取手段と、フイルムの搬送位置を検出する搬送位置検出手段と、以上の各手段を制御する制御手段とから構成し、この制御手段は、欠点部位情報とフイルム搬送位置と基づいて欠点部位の搬送位置を特定し、この欠点部位が接合手段の加圧位置を通過する間、基板の供給を停止させ、かつ接合手段をフイルム及び基板に当接しない位置に退避させるようにしたものである。
【0014】
また、本発明の別のラミネート装置は、フイルムロールから引き出されたフイルムを搬送するフイルム搬送手段と、フイルムに対面するように所定の間隔で基板を供給する基板供給手段と、フイルムと基板とを加圧して接合する接合手段と、フイルムロールに設けられた識別情報記憶手段からフイルムロールの識別情報を読み取る識別情報読取手段と、フイルムロールの識別情報に基づいて、このフイルムロールに巻かれたフイルムの欠点部位の位置及び範囲等の情報を含む欠点部位情報をオンラインで受信するとともに、前記各手段を制御する制御手段とから構成され、この制御手段は、欠点部位情報とフイルム搬送位置とに基づいて欠点部位の搬送位置を特定し、この欠点部位が接合手段の加圧位置を通過する間、基板の供給を停止させ、かつ接合手段をフイルム及び基板に当接しない位置に退避させるようにしたものである。
【0015】
上記各ラミネート装置に用いられる情報記憶手段、識別情報記憶手段としては、接触式、または非接触式、あるいは光学的に読み取り可能な記憶手段が用いられる。これらの記憶手段としては、例えば、バーコード、2次元コード、ICチップ、ICタグ、磁気カード等が考えられるが、読み取り可能な記憶手段であれば、これらに限定されず種々のものを用いることができる。また、情報記憶手段、識別情報記憶手段は、フイルムまたはフイルムが外周に巻き付けられる巻芯等に取り付けられるようにしたものである。
【0016】
更に、欠点部位情報に基づいて、欠点部位を廃棄する廃棄手段を設けたものである。なお、上記欠点部位は、フイルムの接合部分を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明のラミネート方法及び装置によれば、フイルムの欠点部位を使用せずに接合を行うことができるので、欠点部位に起因する接合不良の発生を防止することができる。また、欠点部位の抜き取りを自動的に行うようにしたので、欠点部位の抜き取りのために作業効率や生産効率が低下することはない。
【0018】
また、フイルムの欠点部位の情報は、フイルムロールに設けられた情報記憶手段から読み取り、またはフイルムロールの製造過程で行われる検査の情報をオンラインで受け取るようにしたので、接合を開始する前にフイルムの欠点部位を把握することができる。これにより、フイルムの使用計画を予め立てることができるので、無駄なくフイルムを使用することができる。更に、欠点部位として、フイルムの接合部も含めるようにしたので、接合部の使用も防止することができる。
【0019】
また、フイルムロールの製造段階で行われる検査結果を流用することができるので、このラミネート方法及び装置が使用される製品の製造効率及びコストを低減させることができる。また、欠点部位にフイルムの接合部分も含めるようにしたので、接合部分の使用も防止することができる。
【0020】
更に、情報記憶手段として、バーコード、2次元コード、ICチップ、ICタグ、磁気カード等、様々な記憶手段を用いることができるので、フイルムの詳細な欠陥情報をローコストに記憶させることができる。更に、非接触で情報の読み書きができる情報記憶手段を使用すれば、フイルムの汚損を防止することもできる。
【0021】
更にオンラインで情報を受け取る場合は、フイルムロールの運搬中に製造段階での情報処理を並行して行うことができるので、製造からの出荷待ち等の時間ロス防止も図ることができる。
【0022】
更に、フイルムの欠点部位を廃棄するようにしたので、欠点部位が誤って使用されることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明のラミネート方法及び装置によりフイルムが接合された基板の外観形状を示す斜視図である。基板2は、例えば、透明なガラスやプラスチックで形成された薄板であって、液晶またはプラズマディスプレイパネル等に用いられるカラーフィルタのベースに用いられる。符号9は、カラーフィルタを構成する感光性樹脂層であり、基板2に貼り付けられるフイルム3(図2参照)の一部を構成する。この感光性樹脂層9は、基板2への貼り付け後、露光、現像、洗浄によって所定のパターンが基板2上に残され、カラーフィルタを構成する。
【0024】
なお、感光性樹脂層9が基板2の側面等に露出して工程内での処理中に発生した塵埃がパターン内に付着するとNG品となるため、感光性樹脂層9の接合面積は基板2よりも小さくされている。これにより、感光性樹脂層9の周囲には、基板2の接合面が額縁状に露呈される。以下、この額縁状の部分を額縁代2aと呼ぶ。
【0025】
図3は、基板2にフイルム3が接合される手順を示す概念図である。同図(A)は、フイルム3の外観形状を示す。フイルム3は、長尺フイルムであって、ロール状に巻かれてなるフイルムロール6としてラミネート装置にセットされる。図2に断面図を示すように、このフイルム3は、複数の層を積層した多層構造を有する感光性樹脂層積層体であり、下からベースフイルム8、感光性を有する感光性樹脂層9、保護フイルム10が積層されている。これらの各層は、可撓性を有しているため、ロール状に巻かれても破損することはない。
【0026】
図4は、フイルムロール6から引き出したフイルム3の展開状態を示す。フイルム3は、フイルムロール6の交換作業を少なくしてラミネート装置の作業効率、生産効率を向上させるために、複数本のフイルム3の先端及び後端を接合して長尺化されている。このフイルム3の接合部5が基板2に接合されると、基板2に転写される感光性樹脂層9が途中で断絶された状態となるため、基板2への接合には使用されない。
【0027】
また、フイルム3には、製造時に厚みムラや変色等の不良7が部分的に発生することがある。そのため、フイルム3の製造時に不良7の位置P及び範囲Sを検出する欠点位置検査が行われている。なお、この欠点位置検査では、上述した接合部5の位置P及び範囲Sも検出される。
【0028】
図5に示すように、フイルムロール6の巻芯4の外周面4aには、情報記憶手段として周知の無線ICチップ11が貼付されている。この無線ICチップ11には、前述の欠点位置検査によって得た欠点部位情報が記憶されている。欠点部位情報は、例えば、フイルム3の先端3cから接合部5及び不良7までの長さと、各接合部5及び不良7の範囲として記憶されている。なお、無線ICチップ11は、巻芯4の外周面4aに埋め込んでもよい。
【0029】
図3(B)に示すように、ラミネート装置にセットされたフイルム3は、フイルムロール6から引き出され、基板2に接合される長さL1と、基板2への接合間隔となるL2の2つの間隔で保護フイルム10がカットされる。これにより、保護フイルム10は略シート状になるが、ベースフイルム8から剥がれることはない。この加工は、ハーフカット加工と呼ばれ、L1とL2の間隔が交互に用いられて連続してフイルム3に実施される。なお、以下では、ハーフカット加工された部分をハーフカット部位3a、L2の間隔でハーフカット加工された領域を残存領域3bと呼ぶ。
【0030】
図3(C)に示すように、ハーフカット加工が施されたシート状の保護フイルム10の上には、残存領域3bをまたぐように、先端側のシート状保護フイルム10aの後端と、後続のシート状保護フイルム10bの先端とに複数枚の接着ラベル13が接着される。この接着ラベル13は、同図(D)に示すように、フイルム3から保護フイルム10だけを剥離する際に、シート状にカットされた保護フイルム10を略ウエブ状にして連続して剥離できるようにする。また、保護フイルム10を剥離する際に、保護フイルム10の残存領域3bをフイルム3に残すため、接着ラベル13は残存領域3bには接着されない。
【0031】
図3(E)に示すように、保護フイルム10が剥がされたフイルム3は反転され、基板2の上面に感光性樹脂層9が接合される。この接合時には、一対のラミネートローラ16a,16bによって基板2とフイルム3とが加圧される。また、ラミネートローラ16aは、モータ17によって回転されることにより、基板2とフイルム3は貼り付けと同時に搬送される。
【0032】
なお、基板2は、感光性樹脂層9との接合のために複数枚が連続して搬送される。貼り付け精度のばらつきを考慮して、例えば、基板2の搬送間隔を20±5mmとし、前述した額縁代2aの搬送方向長さL3を1〜5mmとしたとき、ハーフカット間隔L2は、搬送方向先頭側及び後方側の2枚の基板2の額縁代2aに搬送間隔を加算した長さとなる。
【0033】
図3(F)に示すように、基板2に感光性樹脂層9が接合された後、ベースフイルム8が剥離される。これにより、基板2の上には感光性樹脂層9だけが残り、図1に示す状態となる。なお、ベースフイルム8の剥離は、ベースフイルム8をウエブ状のまま剥離してもよいし(以下、連続式と呼ぶ)、各基板単位でシート状にカットしてから剥離してもよい(以下、枚葉式と呼ぶ)。
【0034】
図6は、本発明を実施したラミネート装置の構成を示す概略図である。ラミネート装置20は、基板2とフイルム3を連続して搬送しながら接合する装置であり、フイルム3を供給するフイルム供給区間21と、基板2とフイルム3とを接合する接合区間22と、基板2を加熱して供給する基板加熱区間23と、接合が完了した基板2を冷却する基板冷却区間24と、フイルム3からベースフイルム8を剥離するベース剥離区間25とから構成されている。
【0035】
ラミネート装置20内は、仕切り壁28を介して第1クリーンルーム29aと第2クリーンルーム29bとに仕切られる。第1クリーンルーム29aには、フイルム供給区間21が収容され、第2クリーンルーム29bには、接合区間22、基板加熱区間23、基板冷却区間24、ベース剥離区間25が収容される。第1クリーンルーム29aと第2クリーンルーム29bとは、貫通部28aを介して連通されている。
【0036】
基板加熱区間23では、基板ストッカー33に収納された基板2をロボット34で取り出して基板搬送機構35に供給し、この基板搬送機構35で加熱された基板2を接合区間22に供給する。基板冷却区間24では、接合区間22によってフイルム3が接合された基板2を冷却機構37で冷却する。ベース剥離区間25では、ベース剥離機構39によってフイルム3からベースフイルム8を剥離し、基板2に感光性樹脂層9のみが貼り付けられている状態とする。また、測定器40によって感光性樹脂層9の貼付け位置を測定し、ロボット41によって処理済み基板ストッカー42に収納する。
【0037】
フイルム供給区間21は、フイルム3をロール状に巻いたフイルムロール6を収容し、このフイルムロール6から前記フイルム3を送り出すフイルム送出し機構57と、送り出されたフイルム3の保護フイルム10に、ハーフカット加工を施す加工機構59と、接着ラベル13を保護フイルム10に接着させるラベル接着機構60と、フイルム3から保護フイルム10を所定の長さ間隔で剥離させる剥離機構61とを備える。
【0038】
フイルム送出し機構57には、巻芯4の無線ICチップ11から欠点部位情報を読み出す情報読取手段として、ICチップリーダ62が設置されている。このICチップリーダ62で読み取られた欠点部位情報は、ラミネート装置20の全体を制御するラミネート工程制御部50(図8参照)に入力される。
【0039】
また、フイルム送出し機構57には、フイルム3が掛けられて従動回転する検出ローラ54と、この検出ローラ54の回転数を検出する回転数検出センサ55とが設けられている。また、接合区間22には、ラミネート装置20の稼働開始時に、フイルムロール6から引き出されたフイルム3の先端を検出する先端検出センサ56が配置されている。回転数検出センサ55と先端検出センサ56の検出信号は、ラミネート工程制御部50に入力され、入力された検出信号に基づいてフイルム3の搬送位置が算出される。これらは、
フイルム3の搬送位置を検出する搬送位置検出手段を構成する。
【0040】
接合区間22は、フイルム3のテンションを制御するテンション制御機構65と、基板2とフイルム3とが送り込まれる搬送路66と、この搬送路66内に配置され、保護フイルム10の剥離により露出した感光性樹脂層9を基板2に貼り付ける接合機構67とを備える。接合機構67における接合位置の上流側には、フイルム停止時や準備作業時などに接合機構67に送り込まれるフイルム3の搬送経路を切り換えてラミネートローラから離し、熱影響を防ぐ接触防止機構68と、フイルム3を予め所定温度に予備加熱する予備加熱部69と、フイルム3のハーフカット部分を検出するカット部検出カメラ70が配設されている。
【0041】
図7(A)は、接合機構67等が設置された搬送路66の構成を示す概略図である。接合機構67は、上下に配設されるとともに、所定温度に加熱されるラミネートローラ75a、75bを備える。ラミネートローラ75a,75bは、金属等で形成された円柱形状の芯材の外周がシリコンゴム等の弾性材料でコーティングされたもので、外周にはバックアップローラ76a、76bがそれぞれ摺接されている。ラミネートローラ75aは、例えば、パルスモータによって回転され、ラミネートローラ75bとの間にフイルム3と基板2とを挟み込んで搬送しながら感光性樹脂層9を基板2に接合する。
【0042】
ラミネートローラ75b及びバックアップローラ76bは、上下方向で移動自在とされており、その移動位置は、基板2とフイルム3とを加圧する加圧位置と、基板2に接触しない退避位置とされている。また、バックアップローラ76bは、シリンダ装置やソレノイド等からなるアクチュエータ80によって昇降され、ラミネートローラ75bは、バックアップローラ76bの昇降に追従して移動する。なお、バックアップローラ76bは、アクチュエータ80を介してローラクランプ部81にも昇降される。このローラクランプ部81は、例えば、モータとカム機構とによって上下方向の移動を行うもので、バックアップローラ76bを介してラミネートローラ75bを基板2に押し付ける。
【0043】
接合機構67の下流側には、ラミネート装置20の起動時にフイルム3のみを搬送する上流側フイルム搬送ローラ85a,85bと、下流側フイルム搬送ローラ86a,86bが配置されている。また、基板2とフイルム3との接合時にこれらを一緒に搬送する上流側基板搬送ローラ87a,87bと、下流側基板搬送ローラ88a,88bと、基板2を載置して従動回転し、基板2の搬送を補助する複数の補助ローラ89とが設けられている。上流側フイルム搬送ローラ85a、下流側フイルム搬送ローラ86a、上流側基板搬送ローラ87a、下流側基板搬送ローラ88aは、図示しないモータによって回転され、その他のローラは基板2及びフイルム3の搬送に従動して回転する。
【0044】
これらのローラは、ローラ移動手段であるアクチュエータ92〜96によって昇降される。フイルム3だけを搬送する際には、上流側フイルム搬送ローラ85b,下流側フイルム搬送ローラ86bがフイルム3の感光性樹脂層9に接触する搬送位置に移動される。また、上流側基板搬送ローラ87a,87b、及び下流側基板搬送ローラ88a、補助ローラ89は、フイルム3に接触しない位置に退避され、感光性樹脂層9に接触して汚損されるのが防止される。
【0045】
また、図7(B)に示すように、基板2とフイルム3とを接合して搬送する際には、上流側基板搬送ローラ87a,87b及び下流側基板搬送ローラ88aと、補助ローラ89とが基板2とフイルム3のベースフイルム8とに接触する搬送位置に移動される。また、上流側フイルム搬送ローラ85b及び下流側フイルム搬送ローラ86bは、基板2に接触しない退避位置に移動される。これにより、フイルム3の搬送時に付着した感光性樹脂層9が基板2を汚損するのが防止される。
【0046】
なお、符号71,72は、運転開始時にフイルム3の先端を切断する先端切断機構と、装置にトラブルが生じたときに基板2の間のフイルム3を切断する基板間切断機構である。また、符号100は、先端切断機構71で切断されたフイルム3を搬送路66から排出する際に、フイルム3をガイドする補助ローラである。この先端切断機構71と補助ローラ100とが、廃棄手段を構成する。
【0047】
図8に示すように、ラミネート装置20は、ラミネート工程制御部50を介して全体制御されており、このラミネート装置20の機能部毎に、例えば、基板加熱制御部51、ラミネート制御部52、ベース剥離制御部53等が設けられ、これらが工程内ネットワークにより繋がってラミネート工程制御部50に制御されている。また、ラミネート工程制御部50は、工場ネットワークによって工場CPU49に接続されており、この工場CPU49からの指示情報(条件設定や生産情報)に基づいて、生産管理や稼動管理等の生産のための情報処理を行う。
【0048】
また、ラミネート工程制御部50は、ICチップリーダ62から入力された欠点部位情報と、回転数検出センサ55及び先端検出センサ56の検出信号から算出したフイルム3の搬送位置とに基づいて、フイルム3の接合部5や不良7等を廃棄する制御手段としても作用する。
【0049】
基板加熱制御部51は、基板加熱区間23を制御し、ベース剥離制御部53は、ベース剥離区間25を制御する。ラミネート制御部52は、フイルム供給区間21及び接合区間22、基板冷却区間24を制御するとともに、工程全体のマスターとして、各機能部の制御を行う。
【0050】
次に、上記実施形態の作用について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。ラミネート装置20の稼働準備として、フイルム送出し機構57にフイルムロール6がセットされる。このときに、無線ICチップ11に記憶されている欠点部位情報がICチップリーダ62によって読み取られ、ラミネート工程制御部50に入力される。
【0051】
次いで、手動でフイルムロール6からフイルム3が引き出され、搬送路66の下流側フイルム搬送ローラ86a,86bの間に先端3cがセットされる。このフイルム3の手動で引き出された部分は、基板2への接合に使用されることなく廃棄される。なお、稼働準備状態のラミネート装置20は、搬送路66の各ローラが退避位置に移動されているので、フイルム3の感光性樹脂層9により各ローラが汚損されることはない。
【0052】
ラミネート装置20の稼働を開始させると、図7(A)に示すように、ラミネート制御部52は、アクチュエータ92,95を制御して、上流側フイルム搬送ローラ85b及び下流側フイルム搬送ローラ86bを上方の搬送位置に移動させ、図示しないモータを回転させてフイルム3を補助ローラ100の下方に搬送する。
【0053】
このフイルム3の初期搬送時に、先端3cが先端検出センサ56により検出され、検出ローラ54の回転数が回転数検出センサ55によって検出される。これらの検出信号及び欠点部位情報は、ラミネート工程制御部50に入力される。ラミネート工程制御部50は、入力された検出信号に基づいてフイルム3の搬送位置を算出し、欠点部位情報と照合して接合部5や不良7の搬送位置を特定する。
【0054】
ラミネート工程制御部50は、フイルム3の手動引き出し部分の搬送後、フイルム3を先端切断機構71で切断して廃棄する。そして、接合部5や不良7が搬送されてこないタイミングで、接合区間22に対する基板2の供給を開始させる。
【0055】
図7(B)に示すように、ラミネート制御部52は、ラミネートローラ75b及びバックアップローラ76bを加圧位置に移動させ、基板2とフイルム3とを接合する。また、アクチュエータ92〜96を制御して、上流側フイルム搬送ローラ85b及び下流側フイルム搬送ローラ86bを退避位置に移動させ、上流側基板搬送ローラ87a,87b、及び下流側基板搬送ローラ88a、補助ローラ89を搬送位置に移動させる。これにより、上流側フイルム搬送ローラ85b及び下流側フイルム搬送ローラ86bに付着した感光性樹脂層9が基板2に付着することなく、基板2とフイルム3とを搬送することができる。
【0056】
また、接合部5や不良7等の欠点部位が接合区間22に到達する際には、ラミネート工程制御部50は、接合区間22に基板2を送り出さないように基板加熱制御部51を制御する。また、図7(A)に示すように、ラミネート制御部52を制御して、ラミネートローラ75bと、上流側基板搬送ローラ87a,87b、及び下流側基板搬送ローラ88a、補助ローラ89を退避位置に移動させる。そして、上流側フイルム搬送ローラ85b及び下流側フイルム搬送ローラ86bを搬送位置に移動させてフイルム3のみを搬送し、欠点部位を接合機構67の加圧位置から通過させる。
【0057】
接合機構67の加圧位置を通過したフイルム3の欠点部位は、先端切断機構71で切断され、補助ローラ100の下方に廃棄される。
【0058】
欠点部分が接合機構67を通過した後、基板2の供給が再開される。また、ラミネートローラ75bが加圧位置に移動され、基板2とフイルム3とが接合される。更に、上流側フイルム搬送ローラ85b及び下流側フイルム搬送ローラ86bが退避位置に、上流側基板搬送ローラ87a,87b、及び下流側基板搬送ローラ88a、補助ローラ89が搬送位置に移動され、接合された基板2とフイルム3とが基板冷却区間24に搬送される。
【0059】
以上により、フイルム3の欠点部位が基板2に接合されることがないため、フイルム3の欠点部位に起因する接合不良の発生を防止することができる。また、欠点部位の抜き取りが自動的に行われるので、作業効率や生産効率が向上する。また、フイルム欠点部位情報は、接合を開始する前に取得することができるので、無駄なくフイルムを使用することができる。更に、フイルム3の欠点部位を切断して廃棄するようにしたので、欠点部位が誤って使用されることはない。
【0060】
なお、上記実形態では、情報記憶手段として巻芯4に貼付された無線ICチップ11を使用したが、バーコードや2次元バーコードが印刷されたラベルや、ICタグを利用してもよい。また、巻芯4の外周面4aに取り付ける以外に、巻芯4の内側や端面、フイルムロール6の先端を封止するラベルに情報記憶手段を取り付けてもよい。取り付け方法としては、貼着、埋め込み等、様々な手法を用いることができる。特に、非接触で読み取る場合には、情報記憶手段が外部に露呈されている必要もない。
【0061】
また、上記実施形態では、情報記憶手段である無線ICチップ11から欠点部位情報を読み取ったが、欠点部位情報をオンラインで受信して利用してもよい。以下、欠点部位情報をオンラインで読み取る実施形態について説明するが、上記実施形態と同じ構成については、同符号を用いて詳しい説明は省略する。
【0062】
図10、11に示すラミネート装置110では、例えば、フイルムロールに取り付けられた無線ICチップに、フイルムロールの識別情報を記憶しておき、この識別情報をICチップリーダ111で読み取ってラミネート工程制御部112に入力する。ラミネート工程制御部112は、工場ネットワークを介して工場CPU113にフイルムロールの識別情報を送信する。
【0063】
工場CPU113は、フイルムロールの製造ラインで実施された欠点位置検査の結果をフイルムロールの識別情報と対照できるように記憶している。そして、ラミネート工程制御部112から入力された識別情報に基づいて該当する欠点部位情報を選択し、工場ネットワークを介してラミネート工程制御部112に送信する。
【0064】
ラミネート工程制御部112は、前述の実施形態と同様に算出したフイルムの搬送位置と、受信した欠点部位情報とに基づいて欠点部位の搬送位置を特定する。そして、上記実施形態と同様に、基板とフイルムの接合を行う。
【0065】
なお、この実形態において、フイルムロールの識別情報を記憶する識別情報記憶手段として無線ICチップを使用したが、バーコードや2次元バーコードが印刷されたラベルや、ICタグを利用してもよい。
【0066】
なお、上記実施形態では、フイルム3を切断しないでベースフイルム8を剥離する連続式を例に説明したが、基板2ごとに切断してからベースフイルム8を剥離する枚葉式にも適用することができる。更に、基板2に対して、1本のフイルム3を接合する1条タイプのラミネート装置を例に説明したが、複数本のフイルムを接合する多条タイプのラミネート装置にも適用することができる。この場合には、各フイルムの欠点部位ごとに自動抜取りを行う。また、カラーフィルタのガラス基板に感光性樹脂層を形成するラミネート装置を例に説明したが、その他の製品に用いられるラミネート装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のラミネート装置によって接合されたフイルムと基板の外観形状を示す斜視図である。
【図2】フイルムの層構成を示す断面図である。
【図3】ラミネート装置による接合手順を示す概念図である。
【図4】フイルムの欠点部位の一例を示す展開図である。
【図5】フイルムロールの側面図である。
【図6】ラミネート装置の構成を示す概略図である。
【図7】接合区間の構成を示す概略図である。
【図8】ラミネート装置の構成を示すブロック図である。
【図9】接合手順を示すフローチャートである。
【図10】別の実施形態のラミネート装置を示すブロック図である。
【図11】別の実施形態のラミネート装置の接合手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
2 基板
3 フイルム
4 巻芯
5 接合部
7 不良
8 無線ICチップ
20 ラミネート装置
21 フイルム供給区間
22 接合区間
23 基板加熱区間
49 工場CPU
50 ラミネート工程制御部
52 ラミネート制御部
54 検出ローラ
55 回転検出センサ
56 先端検出センサ
57 フイルム送出し機構
62 ICチップリーダ
67 接合機構
75a,75b ラミネートローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フイルムロールから引き出したフイルムと、このフイルムに対面するように供給された基板とを接合手段で加圧して接合するラミネート方法において、
前記フイルムロールに設けられた情報記憶手段から、前記フイルムの欠点部位の位置及び範囲等の情報を含む欠点部位情報を読み取るステップと、
前記フイルムの搬送位置を検出するステップと、
前記欠点部位情報とフイルム搬送位置とに基づいて、前記欠点部位の搬送位置を特定するステップと、
前記欠点部位が接合手段の加圧位置を通過する間、前記基板の供給を停止させ、かつ該接合手段をフイルム及び基板に当接しない位置に退避させるステップを含むことを特徴とするラミネート方法。
【請求項2】
フイルムロールから引き出したフイルムと、このフイルムに対面するように供給された基板とを接合手段で加圧して接合するラミネート方法において、
前記フイルムロールを識別するステップと、
前記フイルムロールの識別情報に基づいて、このフイルムロールに巻かれたフイルムの欠点部位の位置及び範囲等の情報を含む欠点部位情報をオンラインで受信するステップと、
前記フイルムの搬送位置を検出するステップと、
前記欠点部位情報とフイルム搬送位置とに基づいて、前記欠点部位の搬送位置を特定するステップと、
前記欠点部位が接合手段の加圧位置を通過する間、前記基板の供給を停止させ、かつ該接合手段をフイルム及び基板に当接しない位置に退避させるステップを含むことを特徴とするラミネート方法。
【請求項3】
前記欠点部位を通過させるステップの後に、該欠点部位を廃棄するステップを含むことを特徴とする請求項1または2記載のラミネート方法。
【請求項4】
前記欠点部位は、フイルムの接合部分を含むことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のラミネート方法。
【請求項5】
前記フイルムは、少なくともベースフイルムと、このベースフイルム上に塗布された感光性樹脂層とを有する感光性樹脂層積層体であり、前記基板には該感光性樹脂層が接合されることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のラミネート方法。
【請求項6】
フイルムロールから引き出されたフイルムを搬送するフイルム搬送手段と、
前記フイルムに対面するように所定の間隔で基板を供給する基板供給手段と、
前記フイルムと基板とを加圧して接合する接合手段と、
前記フイルムロールに設けられた情報記憶手段から、前記フイルムの欠点部位の位置及び範囲等の情報を含む欠点部位情報を読み取る情報読取手段と、
前記フイルムの搬送位置を検出する搬送位置検出手段と、
前記各手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記欠点部位情報とフイルム搬送位置とに基づいて欠点部位の搬送位置を特定し、この欠点部位が接合手段の加圧位置を通過する間、前記基板の供給を停止させ、かつ該接合手段をフイルム及び基板に当接しない位置に退避させることを特徴とするラミネート装置。
【請求項7】
前記情報記憶手段は、接触式、または非接触式、あるいは光学的に読み取り可能な記憶手段であることを特徴とする請求項6記載のラミネート装置。
【請求項8】
フイルムロールから引き出されたフイルムを搬送するフイルム搬送手段と、
前記フイルムに対面するように所定の間隔で基板を供給する基板供給手段と、
前記フイルムと基板とを加圧して接合する接合手段と、
前記フイルムロールに設けられた識別情報記憶手段からフイルムロールの識別情報を読み取る識別情報読取手段と、
前記フイルムロールの識別情報に基づいて、このフイルムロールに巻かれたフイルムの欠点部位の位置及び範囲等の情報を含む欠点部位情報をオンラインで受信するとともに、前記各手段を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記欠点部位情報とフイルム搬送位置とに基づいて欠点部位の搬送位置を特定し、この欠点部位が接合手段の加圧位置を通過する間、前記基板の供給を停止させ、かつ該接合手段をフイルム及び基板に当接しない位置に退避させることを特徴とするラミネート装置。
【請求項9】
前記識別情報記憶手段は、接触式、または非接触式、あるいは光学的に読み取り可能な記憶手段であることを特徴とする請求項8記載のラミネート装置。
【請求項10】
前記欠点部位情報に基づいて、前記欠点部位を廃棄する廃棄手段を設けたことを特徴とする請求項6〜9いずれか記載のラミネート装置。
【請求項11】
前記欠点部位は、フイルムの接合部分を含むことを特徴とする請求項6〜10いずれか記載のラミネート装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−261187(P2007−261187A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91742(P2006−91742)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】