説明

リコンビナントヘリコバクターピロリの経口ワクチン及びその調製方法

本発明は、ヒトのヘリコバクターピロリ感染の免疫学的予防に使用されるリコンビナントタンパク質と、該リコンビナントタンパク質を用いて調製した、分解可能な徐放性ミクロスフィアを用いてカプセル化されている経口ワクチン、及びその調製方法に関する。上記リコンビナントタンパク質は、腸内毒素原性大腸菌のLTのA2サブユニットおよびBサブユニットと、ウレアーゼBサブユニットとからなる。ヒトのヘリコバクターピロリ感染に使用される、本発明の提供するワクチンは、経口摂取するのに安全、効果的、かつ便利である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、生物製剤の分野に関し、特に、ヒトのヘリコバクターピロリ感染の免疫学的予防に使用されるリコンビナントタンパク質、該リコンビナントタンパク質から調製した、分解可能な徐放性のミクロスフィアによってカプセル化されている経口ワクチン製剤、及びその調製方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
ヘリコバクターピロリ(Hp)を発見した2人の科学者に、2005年にノーベル賞が授与された。ヘリコバクターピロリは、ヒトの上部消化管における疾患の重要な病原性細菌であり、慢性的な胃炎、胃潰瘍、及び十二指腸潰瘍の主な病原体である。ヘリコバクターピロリ(Hp)について、世界保健機構(WHO)もまた、胃癌と密接に関係している病原菌であると確認し、これが主要な発癌因子と分類した。Hpは、世界中で最も感染率の高い細菌の一つであり、その感染率は、世界総人口の50%であり、途上国ではそれ以上の数値である。中国では、6億人がHpに感染しており、毎年、20万人が胃癌によって死亡している。従って、Hpはヒトの健康に対する大きな脅威である。臨床的意義が明確であるにも関わらず、今日におけるHp感染の抗菌治療は、依然としていくつかの明らかな欠点を有している。それは、1)毒性および有害な副作用、2)薬剤抵抗性種の発生、3)高コスト、4)長期にわたる治療サイクルおよび患者のコンプライアンスの不徹底、5)不安定な治療効果、などである。一方、ワクチンは、感染症を制御するに、コスト面で最も効果的な手段であると考えられている。ワクチン接種は、体内の特定の免疫応答の誘導を通じて、Hp感染の防止または治療に使用され得る。Hpの大規模な培養は困難であり、粗精製状態の抗原に潜在的な発癌物質が存在するので、全細胞ワクチンの研究を進めることは制限されているが、遺伝子操作されたワクチンを開発することは、安全性に優れ、効果的であり、コストが低く、普及や使用が簡易であるため、研究の主な流れとなってきている。しかし、国内外でさかんに研究が行われているが、Hpワクチンは依然として成功に至っていない。
【0003】
ニッケル依存性の酵素であるウレアーゼは、尿素がアンモニアと炭酸へ加水分解されることを触媒するものであり、ヘリコバクターピロリにおいて細胞内および細胞膜上の両方に発現される、非常に豊富なタンパク質である。その量は、Hp総タンパク質の5%から10%である。ウレアーゼは、尿素を分解してアンモニアを生成し、胃酸を中和して細菌がコロニー形成することを助けるとともに、細菌タンパク質の合成のためにアンモニアを供給する。それゆえ、Hpの宿主組織は、アンモニアによって直接的に傷害される場合や、ウレアーゼ誘導性の炎症反応によって間接的に傷害される場合がある。ウレアーゼ遺伝子の発現をブロックすることにより、宿主においてヘリコバクターピロリのコロニー形成を阻害し得、細菌タンパク質の合成を低減し、そして、ヘリコバクターピロリに関連する炎症反応を弱めることができる。ウレアーゼB抗体は、全てのHp感染患者、特に顕著な症状を有する患者において検出され得、ある程度は、その抗体レベルが、病状の重篤度と関係する。ヘリコバクターピロリウレアーゼまたはリコンビナントウレアーゼBサブユニット(rUreB)の経口注入により、マウスがヘリコバクターピロリに感染することを防ぎ、既に感染している場合はそれを除去することができる(Michetti et al., Gastroenterol.1994)。ウレアーゼ活性のないHpは、動物モデルに感染しないので、ウレアーゼ活性は、Hp感染において重要な役割を果たしているようである。それゆえ、ウレアーゼ活性を中和する抗体は、Hpのコロニー形成に対抗する際に非常に重要な役割を担っている。上記の知見は、ウレアーゼ抗体、特にウレアーゼ活性を中和し得る抗体が、Hp感染に対抗する際に主要な働きをし得るということを示す。
【0004】
粘膜免疫系は、消化器系の粘膜関連リンパ組織及び気管支関連リンパ組織などを主に含む、身体の免疫系における重要な部分であり、体の防御機能に対して特有の作用を発揮する。腸間膜リンパ節と、固有層粘膜および腸上皮に分散された大量のリンパ球とが、免疫誘導部位および免疫効果部位を構成する。抗原の取り込み、プロセッシングおよび抽出を通して、胃腸粘膜などの表面上の様々な免疫細胞は、抗原を保有する細菌またはウイルスベクターが粘膜表面にコロニーを形成することや体内へ侵入することを防ぐためにこれらと特異的に結合する抗原特異的な抗体(主にsIgA)を生成し、そして分泌し、その結果、特定の免疫防御機能が発揮される。
【0005】
しかしながら、粘膜免疫系の最も深刻な欠点は、抗原に対する免疫学的な耐性を発達させやすいということである。抗原レベルを増加させたとしても、身体または粘膜によって生成される抗原特異sIgAのレベルは非常に低いままであり、抗原を保有する微生物の感染に対する免疫防御能力は芳しくない。
【0006】
熱不安定毒素(LT)は、腸内毒素原性大腸菌(ETEC)により生成される、熱に不安定なエンテロトキシンであり、ヒト及び家畜において重い下痢を誘発し得る。LTは、1つのAサブユニット(LTA)と5つのBサブユニット(LTB)から構成される。空間的に完全に同等の5つのLTBが環状の五量体を形成し、この五量体の中央にLTAが存在し、そのC端末が非共有結合を介してLTBと結合している。Aサブユニットは、ジスルフィド結合によって連結された2つのサブユニットA1およびA2から構成されており、A1は毒素の毒性部分であり、A2はBサブユニットと結合する。細胞質に存在するAサブユニット及びBサブユニットの全てが、シグナルペプチドを保有する前駆体の形態で存在し、細胞膜を通過した後に始めてインタクトなLTにアセンブルする。Bサブユニットは、真核生物細胞の表面上のGM1ガングリオシド受容体と特異的に結合して、LT分子の構造的な転位を生じさせる。Aサブユニットは、Bサブユニットから解離し、細胞膜へ侵入し、続いて、ジスルフィド結合の分解およびA1ペプチド鎖の活性化が生じる。そして、GTP非依存性ADPリボシル化トランスフェラーゼの活性を有しているA1サブユニットは、Gタンパク質媒介性のADPリボシル化反応を介して細胞内cAMPの分解とバランスを阻害し、cAMPレベルの上昇の引き金となり、その結果、毒性効果を誘発する。
【0007】
近年、LTは有望な粘膜免疫アジュバントであると考えられている。Rollwagenらの研究は、LTがカンピロバクターに対する粘膜免疫応答を強化し得、消化管内の細菌の除去を促進し得ることを示した。さらに、最初にLTおよび抗原を用いて免疫された動物は、長期にわたる観察の後でさえ、この抗原に対する免疫寛容を発達させなかった。
【0008】
LTを粘膜免疫アジュバントとして使用し得るという観点が、一般的に受け入れられてきた(Lycke N, et al. Immunology, 1986, 59(2):301-308; Clements JD, et al. Vaccine, 1988, 6(3):269-277; Giuliani MM, et al. J. Exp. Med., 1998, 187(7):1123-1132)。LTは腸での非常に強い毒性を有しているので、主にそのBサブユニットまたは無毒もしくは毒性が低いLT変異体構築物がアジュバントとして使用されていた(Yamamoto M, et al. J. Immunol., 1999, 162:7015-7021; Martin M, et al. J.Immunol., 2002, 169(4):1744-1752; Tamura SI, et al. Vaccine, 1994, 12:1238-1240)。しかしながら、LTのAサブユニットは、ADPリボシル化酵素活性に加え、アジュバント活性にも関与している(Giuliani MM, et al. J. Exp. Med., 1998)。LTA鎖が、粘膜関連B細胞のアイソタイプスイッチを刺激する一方で、LTAは、粘膜免疫応答の初期段階に関与し、タイプ固定されたIgA B細胞を生成部位から遠位効果部位まで移動させる(DeHann L, et al. Vaccine, 1996;(4):260-266)。De Haanらは、ADPリボシル化酵素活性を欠失したLT変異体が、依然としてアジュバント活性を有していることを見出した。このことは、LTのアジュバント活性がADP−リボシル化酵素活性を有するA1サブユニットに依存しないが、A2サブユニットがLTのアジュバント活性に貢献しているかもしれないということを示唆している。De Haanの実験はまた、鼻腔粘膜を介してマウスを免疫することによって、毒素活性を有していないLT変異体が、野生型毒素の免疫特性を依然として維持しているということを示した。リコンビナントLTBの単回使用は、毒素活性を有していないLT変異体の単回使用よりも弱い免疫原性を示した(De Haan L, et al. Infect Immun, 1996)。このことは、LTAのADPリボシル化酵素活性が、毒素の免疫に直接的に関与しないことを示唆する。さらに、LTの全毒素が、高レベルな全身性のIgG応答および粘膜のS−IgA応答を生成する一方で、等量のLTBは、低レベルのIgG応答を生成するに過ぎない。LTの免疫原性がLTBの免疫原性よりも強いということは、LTAが毒素の免疫応答において重要な役割を果たしているということを示す。一方で、A1サブユニットが有するGTP依存性ADPリボシルトランスフェラーゼ活性は、毒素効果に関与しており、LTAのアジュバント効果は、主にLTA2サブユニットによって発揮されるということが暗示される。
【0009】
現在、LTBが、免疫学的なアジュバントとして使用されている。例えば、LTBをUreBと融合させてリコンビナントタンパク質LTB−UreBを形成し(Wuchao, Zou quanming etc. Research on fusion and expression of Helicobacter pylori UreB and Escherichia coli LTB genes. Chinese Journal of Microbiology and Immunology, 2002,22(2):175-179)、そして、分子内アジュバントワクチンへと調製することができる。しかしながら、リコンビナントタンパク質の免疫防御率は未だ望ましいレベルに達していない。
【0010】
上述したように、ヘリコバクターピロリの感染に対する増強された強度および完全な防御能を有しており、そして簡便に投与され得るリコンビナントHpサブユニットの分子内アジュバントワクチンが、当該分野において特に望まれている。
【0011】
〔発明の概要〕
本発明の目的の一つは、ヒトのヘリコバクターピロリ感染の免疫学的予防及び治療のために使用されるリコンビナントタンパク質を提供することであり、当該リコンビナントタンパク質は、ヒトのヘリコバクターピロリ感染の免疫学的予防のために使用されるリコンビナントヘリコバクターピロリワクチンに調製され得る。
【0012】
本発明の他の目的は、ヒトのヘリコバクターピロリ感染の免疫学的予防及び治療のために使用されるリコンビナントタンパク質を調製する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、ヒトのヘリコバクターピロリ感染の免疫学的予防及び治療のために使用されるリコンビナントヘリコバクターピロリワクチンを提供することであり、当該ワクチンは、ヒトのヘリコバクターピロリ感染の免疫学的予防及び治療のために使用されるリコンビナントタンパク質を含む。
【0014】
本発明の他の目的は、ヒトのヘリコバクターピロリ感染の免疫学的予防及び治療のために使用されるリコンビナントヘリコバクターピロリワクチンを調製する方法を提供することである。
【0015】
上記目的を実現するために、本発明は、ヒトのヘリコバクターピロリ感染の免疫学的予防及び治療のために使用されるリコンビナントタンパク質を提供する。上記リコンビナントタンパク質(LTA2B−UreB、略してLU)は、腸内毒素原性大腸菌のLTのA2サブユニットおよびBサブユニットと、ヘリコバクターピロリウレアーゼBサブユニットとの融合により得られる。このリコンビナントタンパク質において、LTA2Bが粘膜の免疫学的な分子内アジュバントとして使用され、UreBが免疫原として使用される。LTA2Bは、LT分子のADPリボシル化酵素活性を有するA1部分を欠いているので、LTアジュバントの毒性および有害な副作用を克服することができる。一方、一般的に用いられるアジュバントLTBと比べて、LTA2BはLTのA2部分を初めて加えられたので、そのアジュバント活性及び免疫原性を増強することができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、LTA2B−UreB融合タンパク質が、全長UreBと同様の生物活性、免疫原性および反応原性を有し、粘膜アジュバントの活性を増強する機能を有することを示す。
【0017】
本発明はまた、ヒトのヘリコバクターピロリ感染の免疫学的予防及び治療のために使用される徐放性のミクロスフィアによってカプセル化されている経口製剤であって、ヒトのヘリコバクターピロリ感染の免疫学的予防及び治療のために使用される経口製剤を提供する。
【0018】
本発明は、分解可能な徐放性のミクロスフィア(MS)を用いて、上記リコンビナント融合タンパク質を包み込む。第一に、この徐放性のミクロスフィアは、消化管内において胃酸及び酵素によって抗原が分解されそして破壊されることを効果的に妨げ、抗原全体の安定性及び活性を維持する。第二に、MS粒子の直径サイズが様々な器官におけるインビボでの分布を決定し、MSの調製プロセスを操作することにより、その粒子径を一定の範囲に制御することができる。これにより、粒子を標的の器官に意図的に指向して、免疫学的な有効性を最大にする。抗原を封入してカプセル化する場合、MSの粒子径、および抗原性物質とMSとの間の接着作用は、キャリアと抗原との比率、ならびに生分解性のキャリア材料を変更することにより改変され得る。これにより、抗原の持続性及び徐放性を実現することができる。
【0019】
好ましい実施形態において、カプセル化に用いられる物質としては、アルギン酸、植物油、塩化カルシウムおよびキトサンが挙げられる。好ましい実施形態において、ミクロスフィアを用いてカプセル化されている製剤の粒子径は3.33μmである。
【0020】
好ましい実施形態において、徐放性のミクロスフィアを用いてカプセル化されている製剤は、最終的に、経口免疫のための凍結乾燥製剤にまで展開される。この凍結乾燥製剤の賦形剤は8%マンニトールであり、安定化剤は0.05%EDTA−Na2であり、至適pH値は10.0である。経口投与には以下の利点がある。第一に、ワクチンの抗原成分が胃腸粘膜関連リンパ細胞を直接的に刺激し、腸の抗原および免疫効果器を認識しかつ提示することを介して適切な粘膜免疫応答を生成する。これにより、ヘリコバクターピロリの感染によって発生するであろう関連する疾病を効果的に防止するという目的を達成することができる。第二に、経口免疫は、無痛かつ非侵襲性の治療であり、そして、簡便であり、低コストであり、そして、被験者間でコンプライアンスを容易に遵守し得る。
【0021】
本発明は、上記リコンビナントタンパク質をコードするヌクレオチドを提供する。このヌクレオチドは、腸内毒素原性大腸菌の熱不安定エンテロトキシンのA2サブユニットをコードする遺伝子およびBサブユニットをコードする遺伝子と、ヘリコバクターピロリのウレアーゼBサブユニットをコードする遺伝子との融合により形成されるltA2B−ureB(略してlu)である。
【0022】
本発明はまた、上記のヌクレオチドとプラスミドpET−11cとを連結することにより形成されるリコンビナントプラスミドを提供する。
【0023】
本発明はさらに、上記のリコンビナントタンパク質を調製する方法を提供する。本方法は、
(1)ヘリコバクターピロリのウレアーゼBサブユニットUreBをコードするヌクレオチドと腸内毒素原性大腸菌の熱不安定エンテロトキシンLTA2Bのサブユニットをコードするヌクレオチドとをそれぞれクローン化する、またはこれらサブユニットに対して95%を超える相同性を有し、かつこれらのタンパク質の活性を有しているアミノ酸をコードするヌクレオチドをクローニングする工程と、
(2)工程(1)におけるクローニングによって得られたヌクレオチドを、オーバーラップPCR方法によって連結して、融合遺伝子1tA2B−ureBを形成する工程と、
(3)ベクター上に融合遺伝子1tA2B−ureBを構築し、宿主を形質転換し、そしてリコンビナントタンパク質LTA2B−UreBを発現させる工程と、
(4)工程(3)により得られるリコンビナントタンパク質を分離しかつ精製する工程とを含む。
【0024】
好ましい実施形態において、1tA2B−ureB融合遺伝子は、ベクターpET−11cに構築され、大腸菌BL21(DE3)は形質転換され、操作されたリコンビナント細菌pET−11c−LU/BL21(DE3)が構築される。得られたリコンビナントプラスミドは、LUアミノ酸をコードするヌクレオチド、または、LUアミノ酸に95%以上の相同性を有しかつそのタンパク質の活性を有しているアミノ酸、の少なくとも1つを含む。
【0025】
好ましい実施形態において、リコンビナントタンパク質LTA2B−UreBは、80L発酵槽にて発酵を行うことによって、上記操作されたリコンビナント細菌から発現される。
【0026】
本発明はまた、リコンビナントヘリコバクターピロリ経口ワクチンを調製する方法を提供する。本方法は、
(1)前述した方法によって得られるリコンビナントタンパク質を、アルギン酸ナトリウム、植物油、塩化カルシウムおよびキトサンと配合し、分解可能な徐放性のミクロスフィアを用いてカプセル化されている製剤に調製する工程と、
(2)必要に応じて、徐放性のミクロスフィアを用いてカプセル化されている上記製剤を凍結乾燥製剤に調製する工程とを含む。
【0027】
好ましい実施形態において、得られたリコンビナントタンパク質は、アルギン酸ナトリウム溶液に均一に混合され、その後、植物油を加え、乳化した後に、逆滴定によって塩化カルシウムに液下され、そしてアルギン酸ナトリウムによってカプセル化されているタンパク質ミクロスフィア製剤に調製される。得られたミクロスフィア製剤は、固定化され、続いて、洗浄および遠心分離を行ってペレットを回収し、そして再懸濁される。再度カプセル化するために、再懸濁されたものが、キトサン溶液に添加され、キトサンとアルギン酸ナトリウムとの二重のカプセルによって封入されたタンパク質のミクロスフィアを得る。ミクロスフィア懸濁物を、液面が1cm未満になるようにバイアルにゆっくり注ぎ、その後、冷蔵庫にて-40℃で12時間の予備冷凍を行い、乾燥させるために冷却真空乾燥機に直接配置し、水を迅速に昇華するために温度をゆっくり上昇させ、そして、ガスが生成していないことをガス圧表示器が示すときに、テスト用の凍結乾燥物を取り出す。
【0028】
本発明の一実施形態において、リコンビナントヘリコバクターピロリワクチンの安全性及び免疫原性を調べるために、得られたワクチンの動物実験を行う。
【0029】
本発明の他の実施形態において、リコンビナントヘリコバクターピロリワクチンの免疫学的効果を検証するために、人体における臨床実験を行う。
【0030】
上記のことから、本発明は、腸内毒素原性大腸菌のLTのA2サブユニットおよびBサブユニットと融合したLTA2Bを粘膜免疫の分子内アジュバントとして使用し、ヒトのヘリコバクターピロリの感染の効果的な免疫学的予防に便利かつ安全に使用されるリコンビナントヘリコバクターピロリワクチンを構築するための免疫原として、ウレアーゼBサブユニットを使用する。
【0031】
本発明の目的、特徴および利点をさらに説明するために、以下の実施例が、添付の図面と組み合わせて提供される。
【0032】
〔実施例〕
〔実施例1:融合遺伝子lu(ltA2B−ureB)の構築〕
(1)ヘリコバクターピロリUreBのコード遺伝子及び腸内毒素原性大腸菌LTA2Bのコード遺伝子のクローニング
野生型の腸内毒素原性大腸菌H44815のゲノムDNA(National Institute for the Control of Pharmaceutical and Biological Productsより購入)及びヘリコバクターピロリNCTC11637のゲノムDNA(American Type Culture Collection, TCCより購入)をそれぞれテンプレートとして使用し、P1、P2、P3およびP4を、ureB遺伝子及びltA2遺伝子を増幅するために使用し、慣用的な方法(Yan ziyin, Wang Hailin translated. Short Protocols in Molecular Biology. Science Press, 1998, P39)に従って、細菌ゲノムの抽出を行った。PCR増幅系は以下のように行った。10×マグネシウムイオンフリー増幅バッファ溶液10μL、MgCl2(25mmol/L)10μL、dNTPs(2.5mmol/L)8μL、上流プライマー及び下流プライマー(P1及びP2、またはP3及びP4)をそれぞれ2μL、上記の細菌ゲノム2μL、Ex−Taq DNAポリメラーゼ(3U/μL)1μL、および滅菌水を使用して最終容量を100μLにした。
【0033】
PCR増幅反応は、予備変性を94℃で5分間行い、次いで、94℃で50秒間の変性、60℃で50秒間のアニーリング、および72℃で50秒間の伸長を35サイクル行い、最終伸長工程を72℃で10分間行った。目的の断片を、アガロースゲル電気泳動の後に回収した(下線箇所は対応する酵素の認識配列)。
【0034】
【化1】

慣用的な方法(J.Sambrook, Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989 Polyacrylamide Gel Electrophoresis 1.21-1.32)に従って、TAクローニングしそして形質転換した細菌系統のプラスミドDNAを抽出し、挿入断片の配列決定を、ジデオキシ終結法により行った。
【0035】
(2)融合遺伝子ltA2B−ureBの構築
ureB及びltA2BのPCR産物をそれぞれ回収した。回収したureB遺伝子およびltA2B遺伝子をテンプレートとして使用し、P1およびP4をプライマーとして使用することによって、オーバーラップエクステンションPCRを行った。PCR増幅系は以下のように行った。10×マグネシウムイオンフリー増幅バッファ溶液を5μL、MgCl2(25mmol/L)を4μL、dNTPs(25mmol/L)を4μL、上流プライマー及び下流プライマー(P1及びP4)それぞれを1μL、上記ureB遺伝子及びltA2B遺伝子をそれぞれ2μL、Ex−Taq DNAポリメラーゼ(5U/μl)を0.5μL、そして滅菌水を使用して最終容量を50μLにした。
【0036】
オーバーラップエクステンションPCR増幅反応は以下のように行った。予備変性を94℃で5分間行い、次いで、94℃で60秒間の変性、60℃で60秒間のアニーリング、および72℃で60秒間の伸長を35サイクル繰り返して行い、最終伸長工程を72℃で10分間行った。目的の断片を、アガロースゲル電気泳動の後に回収した。
【0037】
PCR産物のクローニング及び配列決定を、前述と同様に行った。
【0038】
【化2】

反応系を振動して均一に混合し、遠心分離後に20μlの蝋油を加えた。続いて、予備変性を94℃で10分間行い、次いで、94℃で30秒間の変性、58℃で45秒間のアニーリング、および72℃で1分間の伸長を35サイクル繰り返して行い、最終伸長工程を72℃で10分間行った。反応が完了した後に3μlの反応物を取り出した。そして、このPCR増幅産物を、1%アガロースゲル電気泳動によって検出し、目的の遺伝子断片ltA2B−ureBを回収した。ltA2B−ureB融合遺伝子断片を、オーバーラップエクステンションPCR技術を用いて得た。1%アガロースゲル電気泳動分析(図1参照)によれば、パターンに示すような断片のサイズは、予想されていたもの(約2.1kb)と一致し、これが目的の遺伝子断片であると予備的に判断し、ltA2B−ureB(配列番号1によって示される)と称した。図2は、融合遺伝子断片のサイズが、予想されたものと一致したことを示し、これは、融合遺伝子がオーバーラップエクステンションによって得られたことを表す。
【0039】
〔実施例2:操作したリコンビナント細菌pET−11c−LU/BL21(DE3)の構築〕
(1)操作したリコンビナント細菌pET−11c−LU/BL21(DE3)の構築
lu(ltA2B−ureB)融合遺伝子の増幅(PCR)産物を、1.0%アガロース電気泳動、ゲル回収、及び精製に供し、続いてベクターpMD−18T(TaKaRa companyより購入)と連結し、大腸菌DH5αを形質転換し、プラスミドを抽出し、NdeIで消化し、1.0%アガロース電気泳動によって同定した。
【0040】
pMD−18−lu/DH5αポジティブであるリコンビナント細菌からプラスミドDNAを抽出し、NdeI消化を行い、2.0kbのlu DNA断片を回収し、NdeI消化した脱リン酸化pET−11cベクター(America Novagen Co.より購入)と連結し、大腸菌DH5αを形質転換し、アンピシリンを含むLBプレートでスクリーニングし、疑わしいコロニーをプラスミド抽出のために選択し、NdeI消化によってポジティブであるリコンビナントを同定し、そして前方向及び後ろ方向を同定するためにBamHIを用いて消化した。消化物を同定した結果を図2に示す。ポジティブリコンビナントプラスミドDNAは、NdeI消化した後に5.7kbのベクター断片および2.1kbのlu遺伝子(第5レーン)断片の両方を生成した。アンチセンスリコンビナントは、BamHI消化した後に6.4kb+1.0kb+0.3kbの三つの断片(第7レーン)を生成した。そして、センスリコンビナントは、6.0kb+1.0kb+0.7kbの三つの断片(第6レーン)を生成した。
【0041】
該当する特定の操作工程を以下に示す:
1)Omega corporationによって提供されるプラスミド抽出キットを使用して、キットの説明書の記載に従った、製造業者の推奨する方法によってプラスミドDNAを抽出した。
【0042】
2)慣用的なアガロースゲル電気泳動の方法(1.0%アガロースゲル、1×TAEバッファ溶液を使用、120〜150mAにて20〜40分間電気泳動を行った。50×TAE貯蔵溶液を作製した:2.0mol/Lトリス塩基、1.0mol/L NaAc、及び0.1mol/L Na2EDTAを使用した。この溶液のpHを、氷酢酸によって8.3に調整した。)によって、プラスミドDNAを分離した。
【0043】
3)プラスミドDNAの消化物の同定:反応混合物は、以下を含む:1μgのプラスミドDNA;1μlの10×バッファ溶液(Shanghai shenggong Co.の商品説明を参照);1μlの制限酵素Nde I(10u/μl)。二度蒸留した蒸留水を加えて10μlにした。混合後に、37℃で1〜2時間インキュベートした。
【0044】
4)アガロース電気泳動ゲルからの目的のDNAの回収及び精製:
目的のDNA電気泳動バンドを紫外線ランプの下で観察し、アガロースゲルから切り出し、1.5mlのEP管に移した。
【0045】
Omega corporation のゲル回収キットのDNA結合溶液を加え、65℃での湯浴をおこなってゲルを完全に溶解し、溶液のpHを5.0〜6.0の範囲内に維持した。溶解したゲル溶液を分離管に移し、12000gの遠心分離を1分間行い、回収管から液体を廃棄した。
【0046】
対応する洗浄バッファ溶液を加え、そして12000gの遠心分離を1分間行い、回収管から液体を廃棄し、洗浄を一回繰り返した。
【0047】
12000gの遠心分離を1分間行い、続いて分離管を1.5mlの他の無菌のEP管に移し、一定量のTEバッファ溶液を加え、65℃で10分間インキュベートし、12000gの遠心分離を1分間行い、電気泳動のために一定量を取り出し、UVP紫外線スキャナを用いて回収及び精製の効率を調べた。
【0048】
5)連結反応(Shanghai Shenggong Co.の連結キットを用いる)
目的のDNA断片及びベクター断片の濃度を、紫外線分光光度計を用いることにより判定した。そして、ベクターに対する外因性の断片のモル比が一般的に1:(2〜10)であるという原則に従って、連結反応系を以下のように設計した。
【0049】
目的のDNAを1μl; プラスミドベクターを1〜2μl;連結溶液を5μl; ddH2Oを2〜3μl; 最終容量は10μlである。連結反応を、22℃で12〜16時間行った。
【0050】
6)コンピテント細菌の調製(CaCl2法)
無菌の白金耳を用いて−70℃で冷凍保存した細菌保存液をすくい、三系法によりLBプレート上で画線接種を行い、37℃で12〜16時間培養した。単一のコロニーを選択し、2mlのLB培養液に接種し、37℃で12〜16時間振盪培養した。一晩培養したDH5αを、LB培養液に対して1%の比率で移動し接種し、OD600まで37℃で0.2〜0.4時間振盪培養し、8000gの遠心分離を5分間行い、細菌を回収した。再懸濁したペレットに予備冷却した0.1M CaCl2を1ml加え、3時間氷冷した。8000gの遠心分離を4℃で5分間行い、上清を廃棄した。100μlの0.1M CaCl2を加えてペレットを懸濁し、その後の使用のために1時間氷冷した。
【0051】
7)連結生成物を用いた大腸菌宿主細胞の形質転換
コンピテント細菌の懸濁液を100μl取り出し、連結反応物を加えた。60分間氷冷し、42℃で湯浴を行い、熱ショックを100秒間加え、その後直ちに1〜2分間氷冷した。100μl LB培養液を加え、37℃で1時間振盪培養を行った。8000gの遠心分離を10分間行い、100μlの上清を吸引して廃棄し、ペレットを混合し、それぞれ50μlを取り、プレート上に塗りつけ、インキュベータ中にて37℃で一晩培養した。
【0052】
(2)融合タンパク質を強く発現する操作細菌の構築及びスクリーニング
LU融合遺伝子を含むリコンビナント発現プラスミドを用いて、大腸菌BL21を形質転換し、プラスミドを抽出、消化、同定した。図2は、リコンビナント発現プラスミドpET−11c−LU/BL21(DE3)の消化同定のためのアガロースゲル電気泳動パターンであり、レーン5は、リコンビナントプラスミドpET−11c−LU/BL21(DE3)のNdeI消化生成物である。レーン1及び2は、核酸(DNA)の分子量マーカーである。レーン4は、空ベクタープラスミドのNdeI単一酵素消化生成物(5700bp)である。消化断片のサイズは、実験設計と一致し、リコンビナントプラスミドの構築が成功であったことを示す。遺伝子操作大腸菌BL21の形質転換受容性細菌の調製及び形質転換、ならびにリコンビナント細菌のプラスミドの抽出物及び消化物の同定は上記と同じである。
【0053】
正確に同定したリコンビナント細菌を、カナマイシン含有LB培養液3mlに接種し、37℃で一晩振盪した。翌日、一晩培養したリコンビナント細菌を、20mLのカナマイシン含有LB培養液に対して1%の比率で移動し接種し、37℃で2.5時間振盪し、IPTGで5時間誘導した。融合タンパク質の発現パターンおよび発現量を、SPS−PAGEにより検出した。図3に示すように、強く発現された系がスクリーニングされた。
【0054】
本発明はまた、UreB及びLTA2Bの安定性を実証し、実験を通してそれらがウレアーゼBの全長タンパク質と交換可能かどうかを実証した。PCR法を、目的のLTA2BとUreB及びLTA2B断片遺伝子を増幅するために用い、その後、原核生物発現ベクターpET−11c(+)を構築し、宿主細菌大腸菌ML21(DE3)に形質転換し、IPTGで誘導されるLTA2B−UreB融合タンパク質を安定的に発現させた。第一に、ELISA及び免疫ブロット測定法により、リコンビナントLTA2B−UreBが良好な免疫原性と反応原性を有していることを実証した。第二に、精製されたLTA2B−UreBを用いて免疫したウサギにおいて生成された抗体が、インビトロでウレアーゼの活性を中和し、天然HPのUreBに対する同様の生物活性を示した。さらに、BALB/cマウスにおけるリコンビナントLTA2B−UreBの経口免疫は、身体を効果的に刺激し、Th1とTh2のバランスのとれた免疫応答を起こし、それがリコンビナントUreBと一致した(Wuchao, Zou quanming etc. Research on fusion and expression of Helicobacter pylori UreB and Escherichia coli LTB genes. Chinese Journal of Microbiology and Immunology, 2002,22(2):175-179)。最後に、マウスに対するチャレンジ保護試験により、LTA2B−UreBの保護率は91.6%であり、それは全長UreBの保護率68%よりもはるかに高いものであることが示された。GM1−ELISAテストによると、融合されたLTA2B−UreBは、ガングリオシドGM1との結合の生物学的特性を残したまま、ADPリボシル化酵素活性をもたないことが示される。マウスにおけるチャレンジ保護試験はまた、LTA2B−UreBの保護率が、UreB−LTBの保護率74.1%、及びUreBとLTBとが物理的に混合されたものの保護率78.6%よりもはるかに高いことを示す。LTA2B−UreBが全長UreBと同様の生物活性、免疫原性、及び反応原性を有するということ、そして粘膜アジュバントの活性を強化する機能を有するということが初めて証明された。
【0055】
〔実施例3:リコンビナント操作細菌pET−11c−LU/BL21(DE3)の発酵〕
発酵プロセスを以下に示す。Germany B.Bron 80L発酵槽を用いた。発酵プロセスのための種子系統の接種率は10%であった。温度は37℃であり、pHは7.0であった。pH値は、自動的に30%アンモニア水を加えることによって一定に保たれた。回転は当初500rpmに設定され、細菌細胞の増加と酸素消費の上昇に伴って、回転は溶存酸素のカスケードな制御へと変えられ、これはすなわち、PO2コントローラをメインコントローラとして使用し、攪拌コントローラをサーボコントローラとして使用したということである。溶存酸素濃度は、カスケードな制御と陰性酸素バイパス制御によって制御され、最終的な濃度は45%〜50%内に制御された。A600が2時間未満の場合はバッチ材料は供給されず、その後0.5時間ずつバッチ材料を加えることによって、グルコース、トリプトン、8%イースト抽出物の最終的濃度をそれぞれ0.5%、0.2%、0.2%にした。4回目のバッチ材料の添加を行った後、グルコースの濃度が0.1%まで減少したときに、500μmol/L IPTGを加えて4時間誘導し、そして細菌を回収した。そして、バッチ材料のフロー追加は、発酵プロセスの間の溶存酸素のカスケードな制御により制御されるバッチ培養に基づいたものである。
【0056】
発酵プロセスに使用した培地は、M9−CAA培養培地を改変したものであり、これは、M9−CAAをベースとして、0.6%イースト抽出液と、2mg/L ZnCl2・4H2O、2mg/L CoCl2・4H2O、4mg/L FeSO4・16H2O、5mg/L H3BO3、1.6mg/L MnCl2・4H2O、及び4mg/L CuSO4を補充したものである。
【0057】
発酵が終了した後に細菌懸濁液を回収し、8000gの遠心分離を15分間行った。上清を吸い取り廃棄し、細菌を回収し、秤量し、そしてその後の使用のために冷凍にて保存した。
【0058】
結果:これらの結果は、細菌の収率が、全て75g/Lよりも高く、目的のタンパク質の発現量は全て約30%にて安定した。これらのことは、中規模発酵プロセスが促進され、再現性と安定性の両方がより高いレベルであったことを証明している。
【0059】
〔実施例4:リコンビナントタンパク質LU(LTA2B−UreB)の精製〕
(1)封入体の抽出:高度に発現している細菌5000gを、1:10(W/V)の比率でTEバッファ溶液に懸濁し、次いで、4℃で予備冷却を行った後に細胞ホモジナイザーと均一に混合した。高圧ホモジナイザーを用いて、40〜70Mpa(全体として4〜6倍)の加圧条件下で細菌細胞を破壊した。一度終了したら、少量の細菌ブロスを取り、塗りつけ、着色し、細胞が完全に破壊されたことを確認するために顕微鏡で細胞の完全性を観察した。そして、細菌ブロスを500gにて25分間遠心分離し、ペレットを廃棄した後に、15000gにて40分間遠心分離した。そして、上清を廃棄し、ペレットを回収した。続いて、1:10(W/V)の比率にて洗浄液AおよびBを用いて、このような洗浄条件下で2回洗浄した。4℃で20分間攪拌し、15000gにて40分間の遠心分離し、封入体のペレットを回収した。最後に、1:10(W/V)の比率にて封入体を封入体溶解液と混合し、4℃で3時間攪拌し、15000gにて45分間遠心分離し、次の精製工程のための原料として上清を取り出した。
【0060】
封入体抽出に使用したバッファ溶液: 1)TEバッファ溶液: 20mmol/L トリス、5mmol/L EDTA、pH8.0; 2)封入体洗浄液A: 5mmol/L EDTA、20mmol/L トリス、1% トリトンX−100, pH8.0; 3)封入体洗浄液B: 20mmol/L トリス、2mol/L 尿素、pH8.0; 4)封入体溶解液: 1mmol/L EDTA、20mmol/L トリス、8 mol/L 尿素 (pH8.0)。
【0061】
(2)クロマトグラフィー精製: 精製工程を、QセファロースHP陰イオン交換カラム及びセファデックスG−25カラムのクロマトグラフィー精製と決定し、AeKTAエクスプローラ100システム上のXK50/30カラムを用いて、中規模精製を行った。AeKTAエクスプローラ100システムは、正確な自動操作の特徴を有しているので、2セットのAeKTAエクスプローラ100システムを用いて、プログラミングにより連続自動クロマトグラフィー操作を行い、rHpワクチンの各バッチの中規模収率が40gに達し得る。pH8.0の20mmol/L トリスおよび5mmol/L EDTAを用いて目的のタンパク質を精製し、NaCl勾配溶出を用いた。
【0062】
(3)Q Sepharose High Performanceクロマトグラフィーで精製したリコンビナントタンパク質の純度は80%を上回ったが、大量の塩および尿素が残存するので、ゲル濾過クロマトグラフィー法を用いて、慣用的な分子ふるい充填剤であるセファデックスG−25媒体を使用することによって分子量の差に基づき、脱塩および尿素の除去を行った。
【0063】
(4)精製した目的のタンパク質をSDS−PAGEに供し、その純度を判定した。最終的に得られた目的のタンパク質の純度および収率は、それぞれ80%および79%よりも高かった。
【0064】
(5)ローリー法によるタンパク質濃度の判定
ここで、工程1における製造または中規模精製にて使用される高圧細胞破壊技術の細胞破壊率は、98%よりも高く、封入体ペレットを、差示的な遠心分離によって得た。
【0065】
工程2におけるアフィニティクロマトグラフィー精製の充填剤は、キレーティングセファロースファーストフローから選択した。
【0066】
工程3における陰イオン精製の充填剤は、QセファロースHP、QセファロースFFおよびQセファロースXLから選択した。
【0067】
〔実施例5:リコンビナントHP経口ワクチンの調製〕
(1)リコンビナントLUタンパク質ミクロスフィアの調製
実施例4で調製したリコンビナントタンパク質を、室温にて2%アルギン酸ナトリウム溶液と均一に混合し、その後、植物油を加え(植物油とアルギン酸ナトリウムAGS乳濁液との比率は2:8である。)、8000r/minで10分間乳化し、CaCl2溶液に滴下し、800r/minで30分間攪拌してO/W乳濁液を形成し、遠心分離してペレットを回収し、洗浄及び再懸濁を行った。濃度1%のキトサン溶液に懸濁物を加え、800rpmで30分間攪拌して再カプセル化を完了させ、キトサン−ナトリウムアルギンの二重のカプセルに封入されたリコンビナントLUタンパク質のミクロスフィアを得て、遠心分離および洗浄を3回行い、そして回収した。
【0068】
上記ミクロスフィア懸濁液を、液面高さが1cm未満となるようにガラスプレートにゆっくりと注ぎ込み、冷蔵庫にて−40℃で12時間予備凍結し、予備冷却された真空の乾燥機に直接入れ、水を迅速に昇華するために温度をゆっくりと上昇させ、そして、ガスが生成していないことをガス圧表示器が示したときに、テスト用の凍結乾燥物を取り出した。
【0069】
遠心分離および洗浄を行ったMSと、凍結乾燥パウダーと、再溶解した凍結乾燥パウダーとを少量ずつ取り出し、それらをガラススライドに塗りつけ、凍結乾燥の前後のミクロスフィアの形態的な変化を光学顕微鏡の下で観察した。光学顕微鏡にて、遠心分離及び洗浄の後のミクロスフィアのサイズおよび形状は規則的であり、凍結乾燥後のミクロスフィアは、棒状、紡錘状、扁球状などのように、多くの不規則な形を含む不規則な分布を有したが、同量の蒸留水を用いて再溶解されたミクロスフィアの数及び形状は、凍結乾燥前の元々の特徴に実質的に回復した。調製したMSは、膨らんだ表面と、均質な大きさと、3.33μmの平均粒子径を有している。
【0070】
(2)リコンビナントLUタンパク質ミクロスフィア溶液の凍結乾燥
高度に精製されたリコンビナントLUタンパク質を、適度に希釈し、調製し、そして凍結乾燥バイアルに入れて凍結乾燥した。安定でありかつ落ち着いたrHpワクチンの凍結乾燥曲線を、研究を通して得た。生成物の予備凍結温度は−45℃で、予備凍結時間は4時間であった。第1の昇華の温度は20℃で、昇華時間は30時間であった。第2の昇華の温度は30℃であり、昇華時間は8時間であった。全凍結乾燥プロセスの全時間は42時間であった。含水量は全て3%未満であり、《Pharmacopoeia of The People's Republic of China》(2000年版)の第2部に記録されているように、凍結乾燥生成物の含水量に対する検出要件を満たしている。
【0071】
凍結乾燥パイロットプロセスの全身的調査を通して、凍結乾燥rHpワクチン製剤の賦形剤は、8%マンニトールであり、安定化剤は0.05% EDTA−Na2であり、至適pH値は10.0であった。凍結乾燥曲線に示されるような、落ち着いたパラメータを得た。20バッチ以上にわたる繰り返しの検査の結果、凍結乾燥パイロットプロセスは、性能が安定であり、スケール生産の要件を満たすことが明らかとなった。ワクチンタンパク質40グラムを、1個あたりの内容量が15mgと算出された約2600個の凍結乾燥バイアルに分散することができる。採用された5m2の凍結乾燥機は、一度に、直径32mmの凍結乾燥バイアルを約5000個の凍結乾燥し、かつ調製し得る。このことは、大量の生成物の凍結乾燥についての要件を満たす。
【0072】
本発明はさらに、人工胃液がrHpワクチンの安定性に及ぼす影響を明らかにした。rHpワクチンは、経口免疫用の凍結乾燥製剤であるので、消化管を通って標的の器官に到達するプロセスの間、必然的に、胃内の酸性pH環境を通過しなければならない。天然にはタンパク質物質であるrHpワクチンは、酸の働きによって変性されやすい、または酵素によって分解されやすいので、その免疫学的活性は低下してしまう。rHpワクチンタンパク質の抗原反応性が明らかに低下し、pH値が1及び2の人工胃液においてタンパク質分解が顕著であるが、より高い抗原反応性およびタンパク質安定性が、pH3〜7の環境で維持されることが、研究によって見出された。適応工程の間、胃酸を中和する方法を用いて、胃の環境のpH値を適切に上昇させ得、その結果、rHpワクチンタンパク質の生物活性を維持され、これによって好ましい免疫効果を獲得することができるということを、研究結果が示した。リコンビナント経口ワクチンの投薬形態について、胃酸及びペプシンに対する多マイクロカプセル製剤の耐性を得るための高度かつ実用的なプロセスが確立され、胃酸及びペプシンによる破壊を克服した。その結果、ワクチンの有効性及び安定性が向上した。
【0073】
〔実施例6:リコンビナントHP経口ワクチンの動物実験〕
(1)動物における安全性評価
LD50群における試験したマウスのいずれにも、異常反応、毒性症状および死亡が観察されなかったので、LD50を算出しなかったが、経口摂取用のrHpワクチンの最大許容投与量(MTD)は、最大許容投与量テストを介して検出したように、150mg/kgよりも多かった(人体に対して推奨される正常な投与量の600倍に匹敵した。)。rHpワクチンの3バッチ分を腹腔内投与した後の観察期間に、3バッチ分の全てを投与されたモルモットが、異常な毒性反応を起こすことなく生存し、7日目まで体重を正常に増加させた。以下の実験をそれぞれ行い、その結果は、rHpワクチンが良好な安全性プロファイルを有することを示した。
【0074】
(2)免疫原性の研究
rHpワクチンの免疫原性を、ウサギ、BALB/cマウス、及びアカゲザルを用いて観察した。
【0075】
[1]ウサギの免疫化によるrHpワクチンの免疫原性の調査
rHpワクチンを用いてウサギを免疫した後、二重免疫拡散試験及びELISA検出を行い、その結果、ワクチンがUreBに対する高い力価の抗血清を生成するようにウサギを誘導した。このことは、rHpワクチンタンパク質が良好な免疫原性を有することを示している。
【0076】
[2]BALB/cマウスの免疫化によるrHpワクチンの免疫原性の研究
BALB/cマウスの各群に、最終免疫化後の10日目に、調製されたHp細菌懸濁液を同時に摂取させた。全ての実験動物をあらかじめ24時間断食させ、各BALB/cマウスに、108cfu/ml(mL毎のコロニー形成単位)の細菌懸濁液0.3mlを、朝および昼に6時間の間隔にて与え、最後に細菌懸濁液を与えてから2時間後に餌および水を与えた。チャレンジの4週間後に実験動物の全てを屠殺し、そしてサンプルを回収した。屠殺前の24時間断食させた。その後、BALB/cマウスを解剖し、胃を取り出し、胃の大きな方の弯曲にそって分割し、正常な生理食塩水を用いて胃から残留物を洗い出し、胃粘膜組織の半分をHp培地に塗りこみ、三系画線接種を行い、微好気性の培養を行った。免疫後のマウスにおけるHpのコロニー形成を表1に示す。
【0077】
【表1】

“UreB−LTB”及び“LTA2B−UreB”は融合タンパク質を表し、“UreB+LTB”及び“UreB+LTA2B”は、リコンビナントタンパク質2種類の物理的な混合を表す。
【0078】
これらの結果は、LU免疫化群(第6群)におけるマウスの保護率が90%を超えることを示している。
【0079】
結論: マウスに対する融合ワクチン抗原LUの免疫は、非免疫群と比べて、全細胞Hpチャレンジに対する効果的な保護を生成し得る。
【0080】
Hp感染が確認されたBALB/cマウスは、LU融合タンパク質、2つのサブユニットのインビトロでの混合物、およびコントロールの全てが同量のアルミニウムアジュバントと混合され、これらのそれぞれを筋肉内注射することによって免疫された。注射を、1匹のマウスにつき100μg(100uL)の量にて、それぞれ0週目、2週目および4週目に行った。最終免疫の4週間後にマウスを屠殺し、サンプルを回収した。そして、処置後のマウスの細菌保持状態を、異なる実験方法を介して観察した。
【0081】
【表2】

2つの群の統計的分析の結果に示すように、p値は0.001よりも低い。これは、ワクチン抗原LUまたはインビトロで混合した2つのサブユニットを用いた感染マウスに対する免疫療法が、マウスにおける細菌保持数を効果的に減らした、またはマウスの感染を排除したということを示す。融合抗原LUを含む、複数のサブユニットのワクチン抗原は、Hp感染に対して一定の治療効果を有する。
【0082】
(3)アカゲザルにおけるrHpワクチンの経口免疫化の実験
アカゲザルがrHpワクチンの経口免疫化を受けた後に、血清中の抗UreB IgG抗体のレベルと唾液中のsIgA抗体のレベルの両方が著しく上昇し、免疫の15週間後まで維持されることを、本研究において見出した。このことは、本ワクチンがアカゲザルを誘導して、顕著な全身的免疫応答および粘膜免疫応答を生成し得ることを示す。
【0083】
ワクチン投与量と免疫応答レベルとの間の関係を調べるために、異なる3つの投与量を経口免疫化に用いた。その結果は、0.5mg/kgおよび2.0mg/kgの用量を用いた群の両方において誘導された全身性免疫応答及び粘膜免疫応答のレベルが、0.2mg/kgの用量の群よりもはるかに高いことを示した。より高い用量を用いた2つの群の間では目立った差異は見られなかった。このことは、アカゲザルの経口免疫のためのワクチンの最適な用量は、体重1kgにつき0.5mgであることを示す。
【0084】
ウサギ、BALB/cマウス、およびアカゲザルにおける上記動物実験により、rHpワクチンが身体の粘膜免疫応答を効果的に誘発し得、そして好ましい免疫原性を有しているということを確認した。
【0085】
〔実施例7:ヒトにおけるリコンビナントHP経口ワクチンの効果〕
本発明の治療効果を実証するために、本発明において臨床研究を行った。本発明の臨床研究データは以下のとおりである。
【0086】
(1)選択基準:
[1]自発的参加
[2]病歴の診察、理学的検査および臨床検査を介して健康であると判断されること
[3]最近、ヘリコバクターピロリの感染歴がないこと
[4]同様のワクチンの接種歴がないこと
[5]ワクチン接種に対する禁忌がないこと。
【0087】
(2)治療効果および安全性の判断
[1]安全性の判定
被験者がワクチンを経口で摂取した後に、リアルタイムで30分間観察し、全身性(体温)及び局所性(胃腸管)の反応、ならびに他の異常反応(発熱、便の異常な様子および頻度、下痢、嘔吐など)を、ワクチンを経口摂取してから6時間後、24時間後、48時間後、72時間後に、特に観察した。
【0088】
1)全身性(体温)の反応
反応なし: 体温が37℃以下
軽度の反応: 体温が37.1〜37.5℃の範囲
中程度の反応: 体温が37.6〜38.5℃の範囲
重度の反応: 反応が38.6℃以上
2)局所的(胃腸管)の反応
反応なし: 胃腸管の反応なし
軽反応: 通常の処置後に緩和する軽微な胃腸症状
中程度及び重度の反応: 繰返しの処置または入院処置が必要。
【0089】
[2]免疫原性の研究
免疫化の全工程の14日後における抗体の状態に従って免疫原性を評価し、免疫化の全工程の60日後に抗体の増減を観察した。免疫前の血清特異的IgGが1:100未満であるが免疫後の血清特異的IgGが1:100以上である場合を、陽性転換であると規定した。そして、血清特異的総Igと唾液特異的sIgA抗体について、免疫前のこれらの力価比が、免疫後の力価比の4倍以上である場合を、陽性転換であると規定した。
【0090】
(3)研究方法
上記研究を2段階で行った。フェーズIでの臨床研究は、非比較調査であり、30人の健康な子供に、毎回45mgの投与量での免疫化手順に従って、リコンビナントヘリコバクターピロリ経口ワクチンを経口摂取させ、全身性(体温)及び局所性(胃腸管)の反応を、経口投与後に観察した。重い異常反応が見られない場合に、フェーズIIの臨床研究をさらに行った。フェーズIIの臨床研究には、ランダム研究、二重盲式研究、比較研究が含まれる。研究は4つの群に分けられる(表4参照)。免疫化手順: 経口免疫を、二週間に一回の割合で3度、すなわち、0週目、14週目、28週目のそれぞれにて行った。
【0091】
(4)研究対象
リコンビナントヘリコバクターピロリ経口ワクチンのフェーズIの臨床研究についての被験者の基本情報と臨床反応を、表3〜5のように示す。
【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
(5)結果
[1]ワクチンの安全性
フェーズIの臨床研究において、30人の被験者が、1回につき45mgの投与量にてリコンビナントヘリコバクターピロリ経口ワクチンの免疫化を受けた。3回にわたる全免疫化工程の間、即時の反応、全身性または局所性の反応、遅延反応、その他の異常反応、合併症、あるいは臨床的に重大な疾患または発症が、30人の被験者の誰にも見られなかった(表5、6)。これは、1回に45mgのリコンビナントヘリコバクターピロリ経口ワクチンの投与が人体に安全であることを示す。フェーズIの臨床研究の結果に従って、ワクチンに関するフェーズIIの臨床研究を、安全性に対する研究の母集団を拡大し、その免疫化の効果の研究を強調するために行った。
【0095】
【表5】

【0096】
【表6】

【0097】
[2]ワクチンの免疫原性
フェーズIIの臨床研究の結果、リコンビナントヘリコバクターピロリ経口ワクチンの、1回15mg、1回30mgおよび1回45mgの用量の全てが、人体を刺激して、好ましい血清特異的IgG抗体、血清特異的総Ig抗体および唾液特異的sIgA抗体の反応、ならびに、長期にわたって持続しかつ免疫化全工程の2ヶ月後でさえも高レベルに維持される抗体反応(表7〜9)を生成することが示された。
【0098】
【表7】

【0099】
【表8】

【0100】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、オーバーラップエクステンション法によって得られたlu(ltA2B−ureB)融合遺伝子の、アガロースゲル電気泳動パターンを示す。レーン1はureB遺伝子のPCR増幅産物であり、レーン2は核酸(DNA)分子量マーカーであり、レーン3はltA2B融合遺伝子のPCR増幅産物である。
【図2】図2は、リコンビナントプラスミドpET−11c−luの酵素消化識別を示す。レーンM1はPCRマーカーであり、レーン1はltA2B PCR産物(約0.4kb)であり、レーン2はureB PCR産物(1.7kb)であり、レーン3はlu PCR産物(約2.1kb)であり、レーン4はpET−11c NdeI消化物(5.7kb)であり、レーン5はpET−11c−lu NdeI消化物(5.7kb+2.0kb)であり、レーン6はpET−11c−luのセンスリコンビナントのBamHI酵素消化物(6.0kb+1.0kb+0.7kb)であり、レーン7はpET−11c−luのアンチセンスリコンビナントのBamHI酵素消化物(6.4kb+1.0kb+0.3kb)であり、レーンM2はλDNA/HindIIIマーカーである。
【図3】図3は、リコンビナント細菌における融合遺伝子luのPAGE電気泳動パターンを示す。レーン1はタンパク質分子量マーカーであり、レーン2はプラスミドフリーの細菌を1時間誘導した状態であり、レーン3は遺伝子組み換えしたリコンビナント細菌を3時間誘導した状態であり、レーン4は遺伝子組み換えしたリコンビナント細菌を4時間誘導した状態であり、レーン5は遺伝子組み換えしたリコンビナント細菌を3時間誘導した状態であり、レーン6は遺伝子組み換えしたリコンビナント細菌を2時間誘導した状態であり、レーン7は遺伝子組み換えしたリコンビナント細菌を1時間誘導した状態である。その結果から、遺伝子操作した細菌が、誘導後に、目的のタンパク質の分子量と一致する、72KDaの分子量においてさらなるタンパク質の発現バンドを有することが分かる。5時間誘導した後の目的のタンパク質の発現比は、UVP画像スキャニング分析に示すように、約26%である。
【図4】図4は、目的のタンパク質LUの精製効率のPAGE電気泳動パターンを示す。レーン1は封入体を溶解した液体(精製前のサンプル)を示し、レーン2及び3は不純物タンパク質の溶出ピークのサンプルを示し、レーン4は目的のタンパク質の溶出ピークのサンプルを示し、レーン5はタンパク質分子量マーカーを示す。この結果は、目的のタンパク質の純度が、精製工程の後に明らかに改善されており、UVPスキャニングによって分析される、回収後の目的のタンパク質ピークの純度が85%を上回ることを示す。
【図5】図5は、rHp(リコンビナントヘリコバクターピロリワクチン)の凍結乾燥曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸内毒素原性大腸菌の熱不安定エンテロトキシンのA2サブユニットおよびBサブユニットと、ヘリコバクターピロリのBサブユニットとの融合により形成されることを特徴とするリコンビナントタンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のリコンビナントタンパク質を封入していることを特徴とする徐放性のミクロスフィアを用いてカプセル化されている経口製剤。
【請求項3】
カプセル化に用いられる物質が、アルギン酸ナトリウム、植物油、塩化カルシウム、キトサンを含むことを特徴とする請求項2に記載の経口製剤。
【請求項4】
粒子径が3.33μmであることを特徴とする請求項2または3に記載の経口製剤。
【請求項5】
凍結乾燥製剤であることを特徴とする請求項2または3に記載の経口製剤。
【請求項6】
凍結乾燥製剤の賦形剤が8%マンニトールであり、安定剤が0.05%EDTA−Na2であり、至適pH値が10.0であることを特徴とする請求項5に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項7】
請求項1に記載のリコンビナントタンパク質をコードするヌクレオチドであって、
腸内毒素原性大腸菌の熱不安定エンテロトキシンのA2サブユニットをコードする遺伝子とBサブユニットをコードする遺伝子と、ヘリコバクターピロリのウレアーゼBサブユニットをコードする遺伝子が融合されることにより形成された1tA2B−ureBであることを特徴とするヌクレオチド。
【請求項8】
請求項7に記載のヌクレオチドとプラスミドpET−11cの連結により形成されていることを特徴とするリコンビナントプラスミド。
【請求項9】
請求項1に記載のリコンビナントタンパク質を調製する方法であって、
(1)ヘリコバクターピロリのウレアーゼBサブユニットUreBをコードするヌクレオチドおよび腸内毒素原性大腸菌の熱不安定エンテロトキシンLTA2Bのサブユニットをコードするヌクレオチドをそれぞれクローニングする工程、またはこれらサブユニットに対して95%を超える相同性を有し、かつタンパク質活性を有するアミノ酸をコードするヌクレオチドをクローニングする工程と、
(2)工程(1)のクローニングによって得られたヌクレオチドを、オーバーラップPCR方法によって連結して、融合遺伝子1tA2B−ureBを生成する工程と、
(3)ベクター上に融合遺伝子1tA2B−ureBを構築し、宿主を形質転換して、リコンビナントタンパク質LTA2B−UreBを発現させる工程と、
(4)工程(3)により得られるリコンビナントタンパク質を分離し、精製する工程
とを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
リコンビナントヘリコバクターピロリ経口ワクチンを調製する方法であって、
(1)請求項9において得られるリコンビナントタンパク質を、アルギン酸ナトリウム、植物油、塩化カルシウム、およびキトサンと配合して、分解可能な徐放性のミクロスフィアを用いてカプセル化されている製剤に調製する工程と、
(2)必要に応じて、上記製剤を凍結乾燥製剤に調製する工程
とを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−502199(P2010−502199A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526999(P2009−526999)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【国際出願番号】PCT/CN2007/002655
【国際公開番号】WO2008/040155
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509063085)重慶康衛生物科技有限公司 (1)
【氏名又は名称原語表記】CHONGQING KANG WEI BIOTECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Yan Yu Yuan B−7−5,Du Shi Hua Yuan,Gaotanyan Street,Shapingba District,Chongqing 400038,P.R.China
【Fターム(参考)】