説明

リサイクルによる固形化燃料の製造方法

【課題】各種有機系廃棄物にリサイクル材料をバインダーとして使用し、環境負荷が少なく、簡便な製造方法で経済性に優れたリサイクル固形化燃料を提供する。
【解決手段】廃プラスチック、食品系廃棄物、木質系廃棄物及び各種有機系ごみから選ばれる単独又は2種類以上の混合物からなる有機系廃棄物に、乾燥した時に強い凝集力を有して固化する水系エマルジョン又はラテックス系の凝集沈殿汚泥をバインダーとして添加し、混合混練り、成型して固形化燃料を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物のみを使用した燃料であって、固形化のためのバインダーとして有機物である凝集沈殿汚泥を使用することにより、常温で100%リサイクルの固形化燃料を製造する方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リサイクル燃料として廃プラスチックや木質系材料等を使用したRPFや、各種ごみを使用したRDFと称されるリサイクルによる固形化燃料が使用されている。しかしながらこれらの燃料は、プラスチックを溶融することにより固形化するものであることから、ある程度の高温での製造が前提であり、使用できるプラスチックの種類も限定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さらに、現在使用されている固形化燃料を製造するためには、大規模な設備と熱処理等で多大のエネルギー消費を伴う。また、それにより大量の二酸化炭素等が排出される。
【0004】
一方、水系エマルジョン又はラテックス含有水溶液を製造又は使用する工場において発生する凝集沈殿汚泥は、現在すべて産業廃棄物として処理されている。その処理方法は埋め立て、焼却が主である。埋め立ては場所の確保、焼却はエネルギー消費と焼却後の残渣の処理など多くの問題を含んでいる。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決する方法であり、リサイクル材料を有効に使用し、製造段階において環境負荷のできるだけ少ない、且つできるだけ簡便な方法で製造できる非常に経済性に優れたリサイクル固形化燃料の製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち請求項1記載の発明は、各種有機系廃棄物に水系エマルジョン又はラテックス含有水溶液を凝集沈殿処理した時に発生する凝集沈殿汚泥をバインダーとして添加し、混合混練後、常温で成型して固形化することを特徴とするリサイクル固形化燃料の製造方法である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記有機系廃棄物が廃プラスチック、食品系廃棄物、木質系廃棄物及び各種有機系ごみから選ばれる単独又は2種類以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載の固形化燃料の製造方法である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記汚泥が水系エマルジョン又はラテックス含有水溶液を凝集沈殿処理した時に発生するバインダー特性を有する汚泥であり、製造段階での乾燥の問題より脱水処理により含水率20〜80%に調整したものであることを特徴とする請求項1記載の固形化燃料の製造方法である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記有機系廃棄物を全重量中30〜95%含有することを特徴とする請求項1記載の固形化燃料の製造方法である。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記脱水処理された汚泥を全重量中5〜70%含有することを特徴とする請求項1記載の固形化燃料の製造方法である。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5に記載の配合物を混合混練し、成型した後、養生することにより、その使用用途に応じて各種形状の固化成型体とすることを特徴とする固形化燃料の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発端は、水系エマルジョン又はラテックス含有水溶液の凝集沈殿汚泥が、バインダー特性を有すること、及び汚泥単独で自然乾燥したものが非常に強い凝集力を有して固化することを見出したことにある。且つ凝集後の固化物が、水に全く溶解しないことも確認された。さらに、pHが6.0〜8.0と中性領域であり、乾燥後の固化成型体が非常に良好な耐アルカリ、耐酸性を有することも確認した。
本発明は、このようなエマルジョン及びラテックス含有水溶液の凝集沈殿汚泥の持つ特異な性能、及びこれらの凝集沈殿汚泥の成分が大部分熱可塑性樹脂であり、非常に熱量の高い成分であることを利用することにより、常温での固形化燃料を製造することを可能とした。これにより、製造段階での環境負荷の低減及び環境保全の面で多くの貢献が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
まず、本発明におけるポイントである凝集沈殿汚泥について説明する。エマルジョン及びラテックスは様々な分野で使用されている。用途は接着剤、粘着剤、塗料、コーティング剤等である。その種類は非常に多く、酢酸ビニルエマルジョン、酢酸ビニル共重合エマルジョン、アクリルエマルジョン、アクリル共重合エマルジョン、ウレタンエマルジョン、エポキシエマルジョン、SBRラテックス、NBRラテックス、MBRラテックスなどがある。これらのエマルジョンやラテックスの製造並びに使用工程においては、製造並びに使用工程で使用した反応釜、各種保存容器、配管、塗布等の装置を洗浄した排水が発生する。これらの排水は当然そのまま流すことはできない。
【0014】
前記の排水は、必ず工場内の一定の処理槽に集められてから凝集沈殿処理をおこなう。凝集沈殿処理の方法については各種の方法があるが、一例を挙げれば、塩化第二鉄や硫酸バンドなどを適量添加してpHを酸性領域に調製する。次に苛性ソーダ、消石灰などでpH調整(6.0〜8.0)する。必要に応じて各種高分子凝集剤を添加してフロックを形成させる。
【0015】
上澄み液を取り除いた後、上記フロック状沈殿物を真空脱水機等に導入して脱水処理をおこなう。この脱水処理後の成分は、一例を挙げればアクリル樹脂12、アクリル系共重合樹脂5、SBR5、その他2、水分76(重量%)となっている。
【0016】
この汚泥を、含水率20〜80%、より好ましくは40〜60%になるまで脱水調整する。含水率が20%未満の場合、混合する原料との混合が不均一になりやすく、固化強度が低下する。80%を超えるとベトベトで、取り扱いが容易でなくなると同時に固化するまでの時間が長くなる。
【0017】
有機系廃棄物としては、プラスチック系では各種廃プラスチック、合成樹脂クズ、繊維系では合成繊維クズ、天然繊維クズ、木質系では木屑、木粉、食品系ではコーヒーかす、茶殻、紙質系では紙くず、ダンボールクズなどがあり、これらを単独又は併用使用する。
【0018】
以上、本発明の一つの特徴は、使用する材料がすべて産業廃棄物を使用しても可能なことである。
【0019】
次に、原料の配合比率について述べる。バインダーとしての汚泥の配合比率が5重量%未満の場合、混合する原料との混合が不均一になりやすく、且つバインダー効果も低いことから強度が低下する。70重量%を超えると配合品の含水率が高くなり、固化するまでの時間が長くなる。したがって、凝集沈殿汚泥の配合比率は、5〜70重量%が適切な範囲となる。中でも30〜50重量%が乾燥及び強度から最適な範囲である。
【0020】
次に、この発明の混練り工程について説明する。まず、各種有機系廃棄物に、凝集沈殿汚泥を添加して十分攪拌して混練りする。
【0021】
十分に混練りされた混合物は、そのまま型に流し込んで常温で乾燥する方法や常圧で押出機に導入して成型してもよい。また、プレス等で所定の成型体としてもよい。
【0022】
その後、成型体を常温で自然乾燥して固化する。乾燥時間を短縮したい場合は、風を利用して乾燥するか、40〜80℃程度の温度をかけて加温乾燥させてもよい。
【0023】
乾燥後、固化体は固体燃料として使用する。
以下本発明について実施例、比較例を挙げて詳しく説明する。
【実施例1】
【0024】
この実施例は、コーヒーかすに凝集沈殿汚泥をバインダーとして添加し、固形化燃料として使用したものである。
【0025】
コーヒーかす80kgに、接着剤メーカーより排出されたエマルジョンの凝集沈殿汚泥50kgを添加混練りして配合物を得た。この配合物を小型常圧押出し成型機に通して、縦10mm、横20mm、長さ100mmの成型体を得た。この試験体を室温で7日乾燥後、熱量測定を実施した結果は、4588kcal/kgであった。本実施例で使用したエマルジョンの凝集沈殿汚泥の成分を表1で示した。
【0026】
【表1】

【実施例2】
【0027】
この実施例は、木粉に凝集沈殿汚泥をバインダーとして添加し、固形化燃料として使用したものである。
【0028】
粒度2mm以下に調整した木粉60kgに、接着剤メーカーより排出されたエマルジョンの凝集沈殿汚泥40kgを添加混練りして配合物を得た。この配合物を小型常圧押出し成型機に通して、縦10mm、横20mm、長さ100mmの成型体を得た。この試験体を室温で7日乾燥後、熱量測定を実施した結果は、5205kcal/kgであった。なお、本実施例で使用したエマルジョンの凝集沈殿汚泥の成分を表2で示した。
【0029】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系廃棄物に水系エマルジョン又はラテックス含有水溶液の凝集沈殿汚泥をバインダーとして混合混練り後、成型して固化することを特徴とする固形化燃料の製造方法。
【請求項2】
前記有機系廃棄物が廃プラスチック、食品系廃棄物、木質系廃棄物及び各種有機系ごみから選ばれる単独又は2種類以上の混合物であることを特徴とする請求項1記載の固形化燃料の製造方法。
【請求項3】
前記汚泥が水系エマルジョン又はラテックス含有水溶液を凝集沈殿処理した時に発生する汚泥であり、脱水処理により含水率20〜80%に調整したものであることを特徴とする請求項1記載の固形化燃料の製造方法。
【請求項4】
前記有機系廃棄物を全重量中30〜95%含有することを特徴とする請求項1記載の固形化燃料の製造方法。
【請求項5】
前記脱水処理された汚泥を全重量中5〜70%含有することを特徴とする請求項1記載の固形化燃料の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載した配合物を混合、混練後、成型し、養生することにより固化成型体とすることを特徴とする固形化燃料の製造方法。

【公開番号】特開2011−153282(P2011−153282A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31782(P2010−31782)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(501133007)リブラン株式会社 (3)
【出願人】(308003415)
【Fターム(参考)】