説明

リサイクルセメント及び窯業系建材

【課題】窯業系建材の廃材を利用して再度窯業系建材を製造する場合において、必要以上の窯業系建材が製造されないように製造量を抑制することができ、長期的に環境負荷を低減することができるリサイクルセメントを提供する。
【解決手段】窯業系建材の廃材を主原料として製造されるリサイクルセメントに関する。上記廃材を粉砕した後、この粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに分離し、Caリッチ材にCa化合物を添加すると共にこれを焼成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート等の窯業系建材の廃材を利用して製造されるリサイクルセメント及びこのリサイクルセメントを用いて製造される窯業系建材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より広く利用されている窯業系建材は、普通セメント(普通ポルトランドセメント)、シリカ系材料(フライアッシュや珪石粉等)、補強繊維(パルプ等)等を原材料として用い、これらを配合した後、オートクレーブ養生することによって製造されている。窯業系建材において、普通セメントは30〜40重量%を占め、残りの70〜60重量%をシリカ系材料及び補強繊維等が占めている。パルプ等の補強繊維を除き、普通セメントやシリカ系材料は、CaO、SiO、Al、Fe、MgO等を主成分として含み、NaO、KO、TiO等を微量成分として含んでいる。そして、普通セメントのC/S(CaOとSiOのモル比をいう。以下同じ。)はカルシウムリッチであるため3.3程度であるが、窯業系建材を製造する場合にはシリカ系材料が添加されるため、窯業系建材のC/Sは普通セメントのC/Sよりも低くなり0.7〜0.8程度となる。
【0003】
ところで、近年においては、資源の有効活用の観点から、窯業系建材の廃材を主原料とするリサイクルセメントの製造が行われている(例えば、特許文献1参照。)。このリサイクルセメントは、外装材等として使用された後の窯業系建材の廃材を粉砕し、この粉砕物にカルシウム分として石灰石(CaCO)等を添加した後、これを焼成することによって製造されている。そして、このようにして得られたリサイクルセメントを普通セメントの代わりに用いることによって、再度窯業系建材を製造することができるものである。
【特許文献1】特開2003−201156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したリサイクルシステムでは次のような点で問題がある。すなわち、リサイクルセメントに水硬性を付与するためには、リサイクルセメントのC/Sも、普通セメントのC/Sと同様に、3.3程度に調整しておく必要がある。主原料となる窯業系建材の廃材のC/Sはもともと0.7〜0.8程度であることから、リサイクルセメントを製造する場合には、大量のカルシウム分が必要とされる。そうすると、例えば、出発原料である廃材の量を1とした場合には、この廃材から得られるリサイクルセメントの量は質量比で約2となる。さらにこのリサイクルセメントが全て使用されると仮定すると、これから得られる窯業系建材の量は質量比で約5〜6程度に膨れ上がる。そして、このようなリサイクルで得られた窯業系建材の廃材もまたリサイクルセメントの主原料となる。以上のようなリサイクルシステムによれば、需要を上回る量の窯業系建材が供給され続けることとなり、マテリアルバランスが失われるものである。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、窯業系建材の廃材を利用して再度窯業系建材を製造する場合において、必要以上の窯業系建材が製造されないように製造量を抑制することができ、長期的に環境負荷を低減することができるリサイクルセメント及びこのようなリサイクルセメントを用いて製造される窯業系建材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るリサイクルセメントは、窯業系建材の廃材を主原料として製造されるリサイクルセメントであって、上記廃材を粉砕した後、この粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに分離し、Caリッチ材にCa化合物を添加すると共にこれを焼成して成ることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、上記粉砕物を篩い分けによって分離して成ることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1において、上記粉砕物を風力による分級によって分離して成ることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1において、上記粉砕物を遠心力によって分離して成ることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項5に係る窯業系建材は、上記粉砕物から得られたSiリッチ材を請求項1乃至4のいずれかに記載のリサイクルセメントに添加すると共にこれを成形して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係るリサイクルセメントによれば、窯業系建材の廃材を利用して再度窯業系建材を製造する場合において、必要以上の窯業系建材が製造されないように製造量を抑制することができ、長期的に環境負荷を低減することができるものである。
【0012】
請求項2の発明によれば、廃材の粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに容易に分離することができるものである。
【0013】
請求項3の発明によれば、廃材の粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに容易に分離することができるものである。
【0014】
請求項4の発明によれば、廃材の粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに容易に分離することができるものである。
【0015】
本発明の請求項5に係る窯業系建材によれば、原料の大部分をリサイクルセメントやSiリッチ材のようなリサイクル品でまかなっているので、長期的に環境負荷を低減することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
本発明に係るリサイクルセメントは、窯業系建材の廃材を主原料として製造されるものである。
【0018】
廃材となる前の元の窯業系建材は、普通セメント(C/S=3.3±0.3)、シリカ系材料(フライアッシュや珪石粉等)、補強繊維(パルプ等)を原材料として用い、これらを配合した後、オートクレーブ養生することによって製造することができる。ここで、普通セメントは30〜40重量%、シリカ系材料及び補強繊維等は70〜60重量%配合することができる。また、オートクレーブ養生とは高温高圧のもとに養生することをいうが、一般的には、165〜180℃、0.7〜1MPaのもとで4〜10時間養生する。このようにして得られた窯業系建材はシリカ分の割合が比較的多く、C/Sは0.7〜0.8程度となる。
【0019】
上記のようにして得られた窯業系建材は、外装材等として一定期間使用され、そしてその役目を終えた後に廃材となる。本発明では、まず、ボールミルやローラーミル等を用いて、上記廃材を粉砕した後、この粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに分離する。Caリッチ材とは、C/Sが1.0以上(実質上の上限は1.5)であるようなカルシウム分の割合が比較的多い粉粒体をいい、一方、Siリッチ材とは、C/Sが0.1〜0.5であるようなシリカ分の割合が比較的多い粉粒体をいい、このSiリッチ材は窯業系建材よりもさらにシリカ分の割合が多くなっている。
【0020】
ここで、上記廃材の粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに分離するにあたっては、篩い分けによって行うことができる。Siリッチ材に比べてCaリッチ材は柔らかく粉砕されやすいので、Siリッチ材の平均粒径に比べてCaリッチ材の平均粒径は小さくなる。そのため、両者の平均粒径の間の目開きを有する篩いを用い、廃材の粉砕物をこの篩いに掛けることによって篩い分けを行えば、篩いを通過したものがCaリッチ材となり、篩いを通過せずに残ったものがSiリッチ材となる。このように、篩い分けによれば、廃材の粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに容易に分離することができるものである。具体例を挙げて説明すると、内容積500cm、ボール径20mmのボールを入れた有効容積400cmのボールミルを用いて、200rpm、20分間の条件で廃材100gを粉砕した後、この粉砕物を目開き20〜30μm程度の篩いに掛けて篩い分けを行うと、篩いを通過したCaリッチ材54gと、篩いを通過しなかったSiリッチ材46gとに容易に分離することができる。なお、Caリッチ材及びSiリッチ材のC/Sの調整は、篩いの目開き等を変更することによって行うことができる。
【0021】
また、上記廃材の粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに分離するにあたっては、例えば、風力分級機とミルを組み合わせて用いて、風力による分級によって行うこともできる。具体的には、廃材を粉砕するためのミルとしては、微粉化に有効なボールミルやローラーミル等を用い、このようなミルの上方に遠心型の風力分級機を設置する。風力分級機には微粉の出口が設けてあり、所定の分級点に達した微粉はこの出口から回収される。一方、所定の分級点に達しなかった粗粉は下方のミルに戻され、再度粉砕されることとなる。上述したようにSiリッチ材の平均粒径に比べてCaリッチ材の平均粒径は小さく、また、Siリッチ材に比べてCaリッチ材の比重は小さい。そのため、上記のような風力による分級を行えば、いち早く微粉となって回収されるものがCaリッチ材となり、なかなか回収されずに残っている粗粉がSiリッチ材となる。このように、風力による分級によっても、廃材の粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに容易に分離することができるものである。なお、Caリッチ材及びSiリッチ材のC/Sの調整は、分級点等を変更することによって行うことができ、例えば、分級点を20μm以下に設定し、微粉の収率が50%に達したときの回収物をCaリッチ材とする。
【0022】
また、上記廃材の粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに分離するにあたっては、遠心力を利用することによって行うこともできる。具体的には、ボールミル等を用いて、200rpm、60分間の条件で廃材を粉砕した後、この粉砕物を水と一緒に所定の容器に入れる。粉砕物と水の量は、粉砕物:水(質量比)=1:4〜9(濃度10〜20質量%)程度である。上述したようにSiリッチ材に比べてCaリッチ材の比重は小さい。そのため、粉砕物及び水を入れた容器を遠心分離機にセットして、例えば、3000rpm、10分間の条件で遠心力をかければ、比重の小さいCaリッチ材が水中の上層部に多く集まると共に、比重の大きいSiリッチ材が水中の下層部に沈降して多く集まる。遠心力をかけた後は、上澄み液を除去し、上層部と下層部を1:1に分離する。上層部がCaリッチ材であり、下層部がSiリッチ材である。このように、遠心力を利用することによっても、廃材の粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに容易に分離することができるものである。なお、水の代わりにエタノール等のアルコールを用いてもよい。アルコール中であれば、粉砕物における未反応物が反応することはなく、凝集が起こりにくくなるので、さらに分離しやすくなるものである。また、廃材を粉砕する時間を長くしたり、ミルの回転数を高めたりして、廃材をより細かく粉砕しておくと、分離しやすい傾向がある。また、Caリッチ材及びSiリッチ材のC/Sの調整は、遠心分離機の回転数等を変更することによって行うことができる。
【0023】
そして、リサイクルセメントを製造するにあたっては、Siリッチ材は用いずに、Caリッチ材を用いる。リサイクルセメントは、Caリッチ材にカルシウム分として石灰石(CaCO)等のCa化合物を添加し、これを1300〜1500℃で焼成することによって製造することができる。リサイクルセメントのC/Sは3.3±0.3となるように調整し、これによりリサイクルセメントに水硬性が付与される。ここで、リサイクルセメントの主原料として、廃材の粉砕物を分離しないでそのまま使用すると、C/Sが0.7〜0.8程度であるため、Ca化合物を多量に添加する必要があるが、Caリッチ材はC/Sが1.0以上に高められているので、廃材の粉砕物をそのまま使用する場合に比べて、Ca化合物の添加量を少量に抑えることができるものである。Caリッチ材のC/Sは高ければ高いほど良く、例えば、C/Sが3.3程度であれば、もとの普通セメントのC/Sとほぼ同じであり、Ca化合物の添加量を大幅に削減することができ、天然資源の浪費を防止して省資源化を図ることができるものである。なお、Caリッチ材のC/Sが3.3を超えているような場合には、Ca化合物の添加はもはや不要となる。
【0024】
その後、上記のようにして得られたリサイクルセメントを普通セメントの代わりに用い、このリサイクルセメントにシリカ系材料(混和材)及び補強繊維等を添加した後、これを成形すると共に、例えば、40〜100℃、8〜24時間の条件で蒸気養生をしたり、また、165〜180℃、0.7〜1MPa、4〜10時間の条件でオートクレーブ養生したりすることによって、再度窯業系建材を製造することができる。このように、リサイクルセメントを普通セメントの代わりに用いるようにすれば、窯業系建材の廃材を利用して再度窯業系建材を製造する場合において、必要以上の窯業系建材が製造されないように製造量を抑制することができ、長期的に環境負荷を低減することができるものである。
【0025】
ここで、リサイクルセメントに添加するシリカ系材料としては、上述したSiリッチ材を用いるのが好ましい。Siリッチ材は、窯業系建材の廃材の粉砕物から得られたものであるが、なお多くの未反応シリカ分を含んでいる。そのため、リサイクル品ではないフレッシュなシリカ系材料を用いる場合と同様に、Siリッチ材を用いる場合においても、リサイクルセメント中のカルシウム分との反応(ポゾラン反応)が良好に進行し、トベルモライト等の安定した水和物結晶を生成させることができる。その結果、フレッシュなシリカ系材料を用いて製造した窯業系建材と同程度に高強度の窯業系建材を製造することができるものである。このように、フレッシュなシリカ系材料の代わりにSiリッチ材を用いることにより、天然資源の浪費を防止して省資源化を図ることができるものである。そして、上記のようにして得られた窯業系建材にあっては、その原料の大部分をリサイクルセメントやSiリッチ材のようなリサイクル品でまかなっているので、長期的に環境負荷を低減することができるものである。
【0026】
その後、上記のようにして得られた窯業系建材は、外装材等として一定期間使用され、その役目を終えた後に廃材となるが、上述した工程を繰り返すことにより、再度窯業系建材を製造することができ、リサイクルシステムを構築することができるものである。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0028】
リサイクルセメントの主原料となる窯業系建材の廃材(材料2)の化学成分(%)を下記[表1]に示す。なお、石灰石の化学成分(%)も下記[表1]に示す。また、下記[表1]中、「その他」とは、NaO、KO、TiO等の微量成分や強熱減量であり、以下でも同じ意味である。
【0029】
【表1】

【0030】
まず、内容積500cm、ボール径20mmのボールを入れた有効容積400cmのボールミルを用いて、200rpm、20分間の条件で廃材(材料2)を粉砕した後、この粉砕物を目開き20μmの篩いに掛けることによって篩い分けを行った。その結果、54質量%のCaリッチ材(材料1)と、46質量%のSiリッチ材(材料3)とに容易に分離することができた。つまり、質量比で1の廃材から、0.54のCaリッチ材(材料1)と0.46のSiリッチ材(材料3)とが得られたこととなる。これらの化学成分(%)を下記[表2]に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
Caリッチ材(材料1)のC/Sは1.42であり、このC/Sを3.3にするため、質量比で1の廃材から得られた0.54のCaリッチ材(材料1)に対し、質量比で0.53の炭酸カルシウムを添加した。その後、これを1450℃で1時間焼成し、脱炭酸等の重量減少を経た後に、質量比で0.82のリサイクルセメント(材料1−2)が得られた。
【0033】
また、Caリッチ材とSiリッチ材とに分離しない廃材の粉砕物(材料2)のC/Sは0.7であり、このC/Sを3.3にするため、質量比で1の廃材(材料2)に対し、質量比で1.78の炭酸カルシウムを添加した。その後、これを1450℃で1時間焼成し、脱炭酸等の重量減少を経た後に、質量比で1.83の従来のリサイクルセメント(材料2−2)が得られた。
【0034】
ここで、材料2に添加した炭酸カルシウムの量と、材料1に添加した炭酸カルシウムの量とを比較すると、前者は1.78であるのに対し、後者は0.53であることから、廃材の粉砕物を分離しない場合よりも分離する場合の方が、炭酸カルシウムの添加量を約70%も減少できることが確認された。
【0035】
そして、上記のようにして得られた2種のリサイクルセメント又は市販セメント(普通ポルトランドセメント)に、混和材であるシリカ系材料(Siリッチ材(材料3)、フライアッシュ、珪石粉)及び補強繊維(パルプ)を添加し、これを蒸気養生(80℃、24時間)、オートクレーブ養生(180℃、1MPa、10時間)することによって再度窯業系建材を製造した。各原材料の配合割合(質量%)、再度得られた窯業系建材の曲げ強度(蒸気養生後及びオートクレーブ後)を下記[表3]に示す。
【0036】
なお、曲げ強度は、サンプルサイズ150×40×12mm、スパン100mm、試験速度2mm/分で3点曲げ強度を測定し、下記式で求めた。
【0037】
k=3×S×m/(2×h×W
k:曲げ強度(MPa)
S:スパン(mm)
m:曲げ破壊荷重(N)
h:幅(mm)
W:厚み(mm)
【0038】
【表3】

【0039】
上記[表3]にみられるように、市販セメントを用いた比較例1、3及び従来のリサイクルセメント(材料2−2)を用いた比較例2と対比して、実施例1、2の曲げ強度は実用上何ら問題がないことが確認された。
【0040】
また、比較例2、実施例1、2について、出発原料である廃材の量を1とした場合に、窯業系建材を製造するのに必要とされるセメント、混和材、繊維の量を下記[表4]に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
上記[表4]にみられるように、従来のリサイクルセメント(材料2−2)を用いた比較例2では、質量比で1の廃材から最終的に4.58の窯業系建材が得られたのに対し、実施例1、2では、質量比で1の廃材から最終的に2.06の窯業系建材が得られた。このことから、本発明によれば、従来よりも廃材の利用率が高く、必要以上の窯業系建材が製造されないように製造量を抑制することができ、長期的に環境負荷を低減できることが確認された。しかも実施例2では、混和材の一部をSiリッチ材(材料3)でまかなっているので、さらに長期的に環境負荷を低減できるものである。
【0043】
次に、廃材の粉砕物(材料2)を風力による分級によって分離した例と、遠心力によって分離した例とを示す。
【0044】
風力による分級は、風力分級機とミルを組み合わせて用いることによって行い、分級点を20μm以下に設定し、微粉の収率が50%に達したときの回収物をCaリッチ材とした。これにより、質量比で1の廃材から0.50のCaリッチ材(材料4)が得られた。一方、遠心力による分離は、水に廃材の粉砕物を濃度10質量%となるように加えたものに遠心力(3000rpm、10分間)をかけることよって行い、上層部と下層部を1:1に分離した場合の上層部をCaリッチ材とした。これにより、質量比で1の廃材から0.50のCaリッチ材(材料5)が得られた。Caリッチ材(材料4、5)の化学成分(%)を下記[表5]に示す。
【0045】
【表5】

【0046】
Caリッチ材(材料4)のC/Sは1.23であり、このC/Sを3.3にするため、質量比で1の廃材から得られた0.50のCaリッチ材(材料4)に対し、質量比で0.49の炭酸カルシウムを添加した。その後、これを1450℃で1時間焼成し、脱炭酸等の重量減少を経た後に、質量比で0.66のリサイクルセメント(材料4−2)が得られた。
【0047】
また、Caリッチ材(材料5)のC/Sは1.21であり、このC/Sを3.3にするため、質量比で1の廃材から得られた0.50のCaリッチ材(材料5)に対し、質量比で0.55の炭酸カルシウムを添加した。その後、これを1450℃で1時間焼成し、脱炭酸等の重量減少を経た後に、質量比で0.72の従来のリサイクルセメント(材料5−2)が得られた。
【0048】
そして、上記のようにして得られた2種のリサイクルセメントに、混和材であるシリカ系材料(フライアッシュ、珪石粉)及び補強繊維(パルプ)を添加し、これをオートクレーブ養生(180℃、1MPa、10時間)することによって再度窯業系建材を製造した。各原材料の配合割合を下記[表6]に示す。
【0049】
【表6】

【0050】
従来のリサイクルセメント(材料2−2)を用いた比較例2では、質量比で1の廃材から最終的に4.58の窯業系建材が得られたのに対し(上記[表4]参照)、上記[表6]にみられるように、実施例3、4では、質量比で1の廃材から最終的にそれぞれ1.66、1.80の窯業系建材が得られた。このことから、本発明によれば、従来よりも廃材の利用率が高く、必要以上の窯業系建材が製造されないように製造量を抑制することができ、長期的に環境負荷を低減できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窯業系建材の廃材を主原料として製造されるリサイクルセメントであって、上記廃材を粉砕した後、この粉砕物をCaリッチ材とSiリッチ材とに分離し、Caリッチ材にCa化合物を添加すると共にこれを焼成して成ることを特徴とするリサイクルセメント。
【請求項2】
上記粉砕物を篩い分けによって分離して成ることを特徴とする請求項1に記載のリサイクルセメント。
【請求項3】
上記粉砕物を風力による分級によって分離して成ることを特徴とする請求項1に記載のリサイクルセメント。
【請求項4】
上記粉砕物を遠心力によって分離して成ることを特徴とする請求項1に記載のリサイクルセメント。
【請求項5】
上記粉砕物から得られたSiリッチ材を請求項1乃至4のいずれかに記載のリサイクルセメントに添加すると共にこれを成形して成ることを特徴とする窯業系建材。

【公開番号】特開2006−176361(P2006−176361A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371453(P2004−371453)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】