リシール缶、リシール缶の缶本体及びリシール缶への内容物の充填方法
【課題】キャップが天蓋を筒状部材に二重巻締めしてなる場合に、天蓋との二重巻締めに供される筒状部材の上端(シームポイント)と、天蓋との密着に供される缶胴の上端(シールポイント)との位置関係を保って、安定した生産が可能なリシール缶を提供すること。
【解決手段】キャップ6の筒状部材10は、フランジ部60とねじ部64との間に位置規制部66を有する。位置規制部66は、天蓋12が二重巻締めされる前の筒状部材10を缶胴2の口部4にセットした際に、口部4の周壁に係合することで口部4に対する筒状部材10の下方への移動を規制する。
【解決手段】キャップ6の筒状部材10は、フランジ部60とねじ部64との間に位置規制部66を有する。位置規制部66は、天蓋12が二重巻締めされる前の筒状部材10を缶胴2の口部4にセットした際に、口部4の周壁に係合することで口部4に対する筒状部材10の下方への移動を規制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リシール缶(再栓可能な缶)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料用パッケージとして、SOT缶(stay on tub 缶)が広く用いられている。SOT缶は、缶胴に缶蓋又は缶底を二重巻締めしたものであり、リシール性は有していない。
一般に、製缶メーカーは、缶胴と缶蓋等とを別々の部品として製造し、これらを飲料充填工場に提供する。飲料充填工場では、缶胴と缶蓋又は缶底とを別々に搬送するラインがあり、一端を閉じた缶胴に飲料を充填した後、シーマーにて缶胴に缶蓋又は缶底を二重巻締めしている。この二重巻締めによって、SOT缶に飲料が密封されることになる。
【0003】
一方、近年では、PETボトルのようなリシール性を求めるユーザーのニーズを考慮し、ボトル缶に代表されるリシール缶も用いられている。一般的なボトル缶は、ネッキング処理した缶胴の口部にネジを形成し、このネジにキャップを着脱可能に螺合している。
一般に、製缶メーカーは、缶胴とねじ加工前のキャップとを別々の部品として製造し、これらを飲料充填工場に提供する。飲料充填工場では、缶胴とねじ加工前のキャップとを別々に搬送するラインがあり、一端を閉じた缶胴に飲料を充填した後、キャッピング設備にてねじ加工前のキャップの側壁を缶胴の口部のネジ部に押し付けて変形させ、それにより口部にキャップを装着している。この装着(キャッピング)によって、ボトル缶に飲料が密封されることになる。
【0004】
しかし、このようなボトル缶は、SOT缶に比べて、飲料充填工場における充填・密封速度が遅いという問題があった。これは、密封に際して行う部材間の連結にかかる速度の違いに起因する。すなわち、ボトル缶におけるキャッピングの速度が、SOT缶における二重巻締めの速度の約1/3であることに起因する。このため、ボトル缶は、飲料充填後から密封までに多くの時間がかかり、SOT缶のようには高速に生産することができなかった。
【0005】
ところが、高速充填が図れるリシール缶として、キャップを二つのパーツ(天蓋及びねじ付き筒状部材)で構成するものが提案された(例えば、特許文献1参照。)。このリシール缶では、ねじ付き筒状部材を缶胴の口部に螺着したものを製造し、この缶胴に飲料を充填する。その後、ねじ付き筒状部材に天蓋を被せて両者を二重巻締めし、それにより飲料を密封する。したがって、このようなリシール缶によれば、飲料充填工場においてSOT缶の技術を利用できるため、飲料充填後から密封までに要する時間が短くなり、生産性が向上するという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−137451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のリシール缶は、ねじ付き筒状部材を缶胴の口部に螺着したものを製造する際の歩留まりが低く、安定した生産には適さないと想定される。その理由は以下のとおりである。
【0008】
特許文献1では、ねじ付き筒状部材を缶胴の口部に螺着したものを製造する際、まず、ねじ無しの筒状部材を缶胴の口部に被せ、その後、両者の内外からねじ加工用ロールを押し付けて、両者にねじ部を形成し、螺着した状態としている。
【0009】
しかし、特許文献1では、ねじ無しの筒状部材を缶胴の口部に被せるための具体的な構成が検討されていない。単純に被せるだけでは、被せた際に、ねじ無しの筒状部材が缶胴の口部の下方へと位置ずれする。この問題は、その後のねじ成形時や二重巻締め時にも生じ得る。このような位置ずれが生じると、二重巻締めされる筒状部材の長さが変わり、密封性が損なわれてしまう。より詳細には、天蓋との二重巻締めに供される筒状部材の上端(シームポイント)と、天蓋との密着に供される缶胴の上端(シールポイント)との位置関係が規定の位置関係から変わるため、設計上の密封性を保つことができなくなる。それゆえ、特許文献1のリシール缶の歩留まりは低いことが想定される。
【0010】
そこで、本発明は、安定した生産が可能なリシール缶及びリシール缶の缶本体を提供することをその目的とする。また、本発明は、充填後から密封までにかかる時間を短くして生産性を向上することが可能なリシール缶への内容物の充填方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するべく、本発明のリシール缶は、上端開口縁にフランジ部を有し且つ周壁に第1のねじ部を有する筒状部材、及び、当該フランジ部に二重巻締めされて筒状部材の上側開口を閉塞する天蓋を備えたキャップと、口部の上端開口縁にカール部を有し且つ口部の周壁に第2のねじ部を有する缶胴と、を備え、キャップが缶胴の口部に再栓可能に装着された際、筒状部材の第1のねじ部と缶胴の第2のねじ部とが螺合し、且つ、天蓋の内面と缶胴のカール部とが密着してリシール缶内が密封されるものにおいて、筒状部材は、フランジ部と第1のねじ部との間に位置規制部を有する。そして、位置規制部は、天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を缶胴の口部にセットした際に、口部の周壁に係合することで口部に対する筒状部材の下方への移動を規制する。
【0012】
また、上記目的を達成するべく、本発明のリシール缶の缶本体は、上記のリシール缶において天蓋が筒状部材に二重巻締めされる前のものであり、具体的には、二重巻締め前の筒状部材を缶胴の口部にセットし、第1のねじ部と第2のねじ部とが螺合されてなるものである。
【0013】
これら本発明のリシール缶及びその缶本体によれば、二重巻締めされる前の筒状部材を缶胴の口部にセットした際に、筒状部材の位置規制部によって筒状部材が缶胴の口部の下方へと位置ずれするのが規制される。これにより、天蓋との二重巻締めに供される筒状部材のフランジ部(シームポイント)と、天蓋との密着に供される缶胴のカール部(シールポイント)との正確な位置関係が保たれる。したがって、設計上の密封性を確保することができ、リシール缶及びその缶本体を安定して生産することができる。
【0014】
また、本発明では、位置規制部が筒状部材においてフランジ部と第1のねじ部との間にある。このため、位置規制部が第1のねじ部よりも下側にある場合と比べて、二重巻締め後に第1のねじ部を拡がらせない(第2のねじ部から離間させない)ようにし易いなどの利点がある。
【0015】
ここで、キャップの第1のねじ部は、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされる前から筒状部材に形成されていてもよいし、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされた後で形成されてもよい。上述したように、本発明によれば、セットした際に筒状部材の位置ずれが規制されるので、セット後に第1のねじ部を適切な位置に形成することができる。
【0016】
また、缶胴の第2のねじ部についても、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされる前から形成されていてもよいし、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされた後で形成されてもよい。このように、第1のねじ部及び第2のねじ部を形成する段階は限定されるものではない。
【0017】
ただし、既存のねじ成形技術を利用する観点からすれば、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされる前から缶胴に第2のねじ部を形成しておき、このセット後に、筒状部材の周壁を第2のねじ部に押し付けて変形させ、筒状部材に第1のねじ部を形成することが好ましい。
【0018】
好ましい一態様によれば、口部の周壁は、カール部から下方且つ外方に延びた円錐台状の周壁部と、第2のねじ部が形成された略円筒状の周壁部と、を有しており、位置規制部は、円錐台状の周壁部と略円筒状の周壁部とをつなぐ連結部分に上側から載ることで、口部の周壁に係合するとよい。
【0019】
この構成によれば、口部の周壁の構造を有効に利用して、筒状部材が口部の下方へと位置ずれするのを規制することができる。とりわけ、連結部分は、口部の周壁の形状の変化点であるために強度が高いので、位置規制部を載せて受けるのに適している。それゆえ、例えば二重巻締め工程の際に位置規制部から口部の連結部分に外力が印加されたとしても、口部の変形を好適に抑制することができる。
【0020】
好ましい一態様によれば、位置規制部は、円周状のリブで構成されているとよい。
【0021】
この構成によれば、簡易な構造で、位置規制部まわりの強度を上げることができる。これにより、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされた後で、ねじ成形する場合や二重巻締めする場合に、筒状部材が口部の下方へと位置ずれするのをより確実に規制することができる。
【0022】
好ましい一態様によれば、天蓋は、内面にカール部が密着するライナーを有する天壁部と、筒状部材のフランジ部に二重巻締めされるフランジ部と、天壁部とフランジ部とをつなぐカウンターシンク部と、を備え、カウンターシンク部には、ライナー側の部位に段部が形成されているとよい。
【0023】
この構成によれば、安定した二重巻締めを達成することが可能となる。具体的に説明すると、一般に、シール性を確保するために、装置(例えば、プレッシャーブロック兼シーミングチャック)によってカウンターシンク部を押し下げるように絞り加工し、カウンターシンク部のライナー側の部位をライナーに押し付けている。仮に、上記のような段部が無いと、この絞り加工による材料の動きにより、天蓋のフランジ部がカウンターシンク部側に引っ張られ、二重巻締めに支障をきたすおそれがある。これに対し、本発明の好ましい一態様の如く、カウンターシンク部のライナー側の部位に段部を形成することで絞り加工による材料の動きが段部で吸収されるようになる。これにより、天蓋のフランジ部が、カウンターシンク部側に引っ張られることを抑制されるため、安定した二重巻締めを達成することが可能となる。
【0024】
上記目的を達成するべく、本発明のリシール缶への内容物の充填方法は、上記した本発明のリシール缶への内容物の充填方法において、天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を缶胴の口部にセットし、第1のねじ部と第2のねじ部とが螺合された缶本体を製造する製缶工程と、缶本体に内容物を充填する充填工程と、充填後の缶本体の筒状部材に天蓋を二重巻締めし、リシール缶を密封するシーム工程と、を備えたものである。
【0025】
また、上記目的を達成するべく、本発明の別のリシール缶への内容物の充填方法は、上記した本発明のリシール缶の缶本体に内容物を充填する充填工程と、充填後の缶本体の筒状部材に天蓋を二重巻締めし、リシール缶を密封するシーム工程と、を備えたものである。
【0026】
これらの本発明の充填方法によれば、充填後に行う密封のための部材間の連結工程が、比較的速度の速い二重巻締めの工程(シーム工程)となる。したがって、このような連結工程をキャッピング工程により実行する場合と比較して、充填後から密封までに要する時間を短くすることができ、生産性を向上することができる。このことは、充填工場において、従来のボトル缶に用いていたキャッピング設備を不要にできると共に、SOT缶のための既存の充填設備への適応性があることを意味する。なお、充填する内容物は、飲料に限らず、食品とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係るリシール缶の密封状態を示す断面図である。
【図2】図1に示すリシール缶を開封した状態を示す図であり、天蓋が筒状部材に二重巻締めされたキャップと、キャップを取り外した缶胴と、を分解して示す分解断面図である。
【図3】図1に示すリシール缶の二重巻締め前の状態を示す図であり、二重巻締め前の天蓋と、二重巻締め前の筒状部材がセットされた缶胴と、を分解して示す分解断面図である。
【図4】図1に示すリシール缶における缶胴と、二重巻締め前の筒状部材と、二重巻締め前の天蓋と、を分解して示す図であり、(a)は分解正面図であり、(b)は分解断面図である。
【図5】図1に示すリシール缶における二重巻締め後のキャップ及び缶胴の部分拡大図である。
【図6】図1に示すリシール缶への内容物の充填方法を示す図であり、(a)は製缶工程の概念図であり、(b)は充填工程の概要図であり、(c)シーム工程の概要図である。
【図7】比較例に係るリシール缶において、天蓋を絞り加工するときの流れを示す図であり、(a)絞り加工の初期段階、(b)は絞り加工の中期段階、(c)絞り加工の終了後を示す断面図である。
【図8】実施形態の第1の変形例に係るリシール缶において、天蓋を絞り加工するときの流れを示す図であり、(a)絞り加工の初期段階、(b)は絞り加工の中期段階、(c)絞り加工の終了後を示す断面図である。
【図9】実施形態の第2の変形例に係るリシール缶の天蓋を示す図であり、(a)は絞り加工前、(b)絞り加工後を示す断面図である。
【図10】実施形態の第3の変形例に係るリシール缶の天蓋を示す図であり、(a)は絞り加工前、(b)絞り加工後を示す断面図である。
【図11】実施形態のさらに別の変形例に係るリシール缶について、絞り加工前の天蓋を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について、飲料用のリシール缶を例に説明する。以下の説明で使用する上方、下方、内方、外方、水平等の用語は、缶の口を上向きに開口して缶を直立させたときに関するものである。
【0029】
まず、図1〜5を参照して、リシール缶1の構造について説明する。
【0030】
図1及び図2に示すように、リシール缶1は、缶胴2と、缶胴2の口部4に再栓可能に装着されるキャップ6と、を備えている。キャップ6は、筒状部材10に天蓋12を二重巻締めして構成されたものである。飲料を保管する場合には、図1に示すように、キャップ6によって、缶胴2の封口がなされる。一方、飲用に際しては、図2に示すように、キャップ6を回転操作して缶胴2から取り外し、注出口を開放する。また、再栓する場合にはキャップ6を逆方向に回転操作して口部4に螺合させる。
【0031】
図1〜4に示すように、缶胴2は、筒状の側周壁20と、側周壁20の下端開口を閉じる底壁22とからなり、側周壁20の上部がリシール缶1の注出口となる口部4として形成されている。側周壁20と底壁22とは、一体であってもよいし、接合されていてもよい。すなわち、缶胴2は、金属板を多段絞り加工やしごき加工して側周壁20と底壁22とを一体に成形したものであってもよいし、側周壁20とは別部材の底壁22を側周壁20の下端に巻締めて固着したものであってもよい。缶胴2の材料としては、缶用表面処理鋼板、樹脂ラミネート鋼板、アルミニウム合金板など、飲料用金属容器に用いられる公知の材料を用いることができる。なお、側周壁20を、二以上の側周壁パーツを二重巻締め等により連結したもので構成することも可能である。
【0032】
缶胴2の口部4は、その上端開口縁に沿ってカール部30を有し、周壁32にねじ部34を有している。カール部30は、内巻きとすることも可能であるが、ここでは飲料容器上好ましい外巻きで形成されている。周壁32は、カール部30の下側にて下方に向かって外方に延びた円錐台状の周壁部36と、ねじ部34が形成された略円筒状の周壁部38と、を有している。周壁部38には、さらに、ねじ部34の下端に続く環状のビード部40と、ビード部40の下端に続く環状の凹リブ42と、が形成されている。ねじ部34におけるねじの形状は、特に限定されるものではなく、例えば一条ねじ又は二条ねじとすることができる。ビード部40は、ねじ部34よりも僅かに外方に位置する略円筒状の部位であり、その外周面は上方に向かって僅かにすぼむように傾斜している。凹リブ42は、ビード部40よりも縮径した部位であり、缶胴2の側周壁20の傾斜部44に続いている。詳細は後述するが、図5に示すように、周壁部36と周壁部38とをつなぐ連結部分(コーナー部分)46に、キャップ6の位置規制部66が係合する。
【0033】
図1〜5に示すように、キャップ6は、筒状部材10及び天蓋12を備えたものであり、この両者が二重巻締めにより一体化されることで、缶胴2の口部4に対してシール機能とロック機能とを発揮する。筒状部材10及び天蓋12のそれぞれの材料は、缶胴2の材料と同じものを用いることができる。
【0034】
天蓋12は、その周縁に形成されたフランジ部50と、フランジ部50の内側にある凹状のカウンターシンク部52と、カウンターシンク部52の内側で水平方向に延びる天壁部54と、を備えている。フランジ部50は、筒状部材10の上端開口縁に二重巻締めされる部位であり、図3及び図4に示す二重巻締め前の状態では、カウンターシンク部52の外側上端から外方に突出している。カウンターシンク部52は、フランジ部50と天壁部54とをつなぐ環状溝を構成する部位であり、二重巻締めの際にシーマーのプレッシャーブロック兼シーミングチャックが上側から嵌入される。天壁部54は、口部4の開口を覆うために例えば円盤状に形成されており、その内面(下面)にはライナー56(シーリング材)が設けられている。ライナー56は、例えば、ポリオレフィン系ゴムなどの材料からなり、天壁部54の下面に熱溶着又は嵌めこまれるなど、適宜の方法により設けられている。ライナー56の周縁には、下方に突出した環状のリップ部58が形成されている。リップ部58は、キャップ6の閉栓時にカール部30を径方向で挟み込みようにカール部30に上側から接触し、それによりリシール缶1を密封する。
【0035】
筒状部材10は、上下方向に貫通したリングパーツであり、上端開口縁にフランジ部60を有し、周壁62にねじ部64及び位置規制部66を有している。フランジ部60は、天蓋12のフランジ部50に二重巻締めされる部位であり、図3及び図4に示す二重巻締め前の状態では、フランジ部50と同様に、周壁62の上端から外方に突出している。二重巻締め後は、筒状部材10の上側開口が天蓋12により閉塞される。
【0036】
周壁62には、さらに、ねじ部64の下端に続く環状壁68と、環状壁68の下端から下方に向かって内向きに延びるスカート部70と、が形成されている。ねじ部64は、缶胴2のねじ部34に螺合し、キャップ6を缶胴2にロックする。キャップ6の閉栓時に、環状壁68は缶胴2のビード部40に横方向から接面し、スカート部70は缶胴2の凹リブ42の一部に斜め下方から接面する。
【0037】
図5に示すように、位置規制部66は、フランジ部60とねじ部64との間にある部位である。本実施形態では、位置規制部66は、ねじ部64の上端に続く円周状の凸リブで構成されており、断面略半円形状に形成されている。このような円周状の凸リブで位置規制部66を形成することで、位置規制部66まわりの強度を上げることができる。位置規制部66は、外径がねじ部64の最大外径よりも小さく、高さがねじ部64のねじ山のピッチよりも小さいものとなっている。位置規制部66は、キャップ6の閉栓時に、缶胴2の連結部分46に上側から載るように係合する。また、図3に示すように、天蓋12が二重巻締めされる前の筒状部材10を缶胴2の口部4にセットした際も、位置規制部66は、缶胴2の連結部分46に上側から載るように係合する。これによって、二重巻締め前の筒状部材10が缶胴2の口部4の下方へと移動することが規制されるようになっている。
【0038】
ここで、二重巻締め前の筒状部材10を缶胴2の口部4にセットした段階では、筒状部材10には、フランジ部60及び位置規制部66のみが形成されており、ねじ部64などは形成されていない。すなわち、二重巻締め前の筒状部材10を口部4に被せるように装着することで初めてセットした際に、周壁62の中間部をロール(スレッドローラ)で口部4のねじ部34に半径方向に押し付けて変形させることでねじ部64を成形している。また、この際に、周壁62の下部をスカートローラで口部4の凹リブ42に押し付けて変形させることでスカート部70を成形している。
【0039】
次に、図6を参照して、リシール缶1への飲料の充填方法について説明する。
【0040】
充填前の準備段階として、図6(a)に示すように、缶本体80を製缶する。缶本体80は、缶胴2にキャップ6の筒状部材10を組み付けてなるものであり、天蓋12が筒状部材10に二重巻締めされる前のものである。
【0041】
缶本体80を製缶する工程を説明すると、まず、図6(a)に示す形状に成形した缶胴2の口部4に、フランジ部60及び位置規制部66のみが形成された筒状部材10を上側から被せるようにセットする。このとき、位置規制部66が口部4の連結部分46に係合し、口部4に対する筒状部材10の位置が規定される。次に、この状態で、筒状部材10の外部から口部4のねじ部34と螺合するように筒状部材10の周壁62をロール成形し、ねじ部64及びスカート部70を成形する。この結果、筒状部材10の形状が図6(a)に示す形状に成形され、ねじ部34,64同士が螺合した缶本体80が製缶される。
【0042】
この一連の製缶工程の際、位置規制部66によって、セット後の筒所部材10が口部4の下方へと位置ずれするのが規制される。したがって、筒状部材10のフランジ部60(シームポイント)と缶胴2のカール部30(シールポイント)との高さ方向の位置関係が保たれることになる。
【0043】
次に、充填に際しては、図6(b)に示すように、缶本体80をフィラー85(充填機)に搬送し、缶胴2の上部開口から飲料Bを充填する(充填工程)。
【0044】
次いで、図6(c)に示すように、飲料充填後の缶胴80をシーマーに搬送し、シーマーにて、別途搬送してきた天蓋12のフランジ部50を筒状部材10のフランジ部60に二重巻締めし、天蓋12を筒状部材10と一体化してキャップ6を構成する(シーム工程)。これにより、飲料Bを充填した密封状態のリシール缶1が完成する。
【0045】
ここで、二重巻締めに際しては、まず、天蓋12を缶胴2のカール部30及び筒状部材10のフランジ部60の上に載せる。このとき、天蓋12のリップ部58がカール部30に載り、天蓋12のフランジ部50が筒状部材10のフランジ部60に載る。上記のとおり、位置規制部66によってシームポイントとシールポイントとの高さ方向の位置関係が保たれているので、缶胴2及び筒状部材10上の天蓋12の位置は所定の正確な位置となる。
【0046】
この状態で、天蓋12のカウンターシンク部52にシーマーのプレッシャーブロック兼シーミングチャックを上側から嵌入し、天蓋12の天壁部54の周縁をカール部30に向かって押し付ける。これにより、天蓋12のリップ部58がカール部30に押し付けられ、シールされる。
【0047】
次いで、シーマーの巻締めロールでフランジ部50,60同士を折り曲げ、かしめる。これにより、フランジ部50,60同士がシームされる。こうして二重巻締めが完了し、飲料Bを充填した密封状態のリシール缶1が完成する。なお、リシール缶1の最大外径は、缶胴2の外径で構成され、これは巻締め外径(フランジ部50の外径)とも等しくなる。
【0048】
この一連の二重巻締め工程の際においても、位置規制部66によって、セット後の筒所部材10が口部4の所定位置で留まるので、シームポイントとシールポイントとの高さ方向の位置関係が保たれることになる。とりわけ、プレッシャーブロック兼シーミングチャックによって、筒状部材10には天蓋12を介して下方向への負荷がかかるが、このような負荷に対しても、位置規制部66によって、筒所部材10が口部4の下方へと位置ずれするのを抑制することができる。また、筒状部材10に作用するプレッシャーブロック兼シーミングチャックからの負荷は、位置規制部66において図5の矢印90に示すように下方且つ内向きに作用することになるため、ねじ部64を開かせない(ねじ部34から離間させない)ように作用する。これにより、ロック性が損なわれないようにも工夫されている。なお、この作用は、ねじ部64の下側に位置規制部66がある場合と比べて、ねじ部64の上側に位置規制部66がある上記の態様において、より増大されるものである。
【0049】
以上説明した本実施形態によれば、筒状部材10に位置規制部66を形成しているので、缶本体80の製缶時にシームポイントとシールポイントとの位置関係を正確に保つことができると共に、その後の二重巻締め時にも両者の位置関係を正確に保つことができる。リシール缶1の各部材(缶胴2、筒状部材10及び天蓋12)の組立精度が密封性にとって重要であるところ、本実施形態では、リシール缶1への充填を通して各部材(缶胴2、筒状部材10及び天蓋12)の組立精度を確保することができる。したがって、設計上の密封性を確保した缶本体80及びリシール缶1を安定して生産することができる。
【0050】
特に、位置規制部66が係合する口部4の部位を、口部4の周壁形状の変化点である連結部分46としている。このような周壁形状の変化点である連結部分46は強度が高いため、二重巻締め工程の際に位置規制部66から負荷がかかっても、それを好適に受けることができ、口部4の変形を抑制することができる。また、位置規制部66自体も円周状の凸リブとして構成しているため、強度が高められており、ねじ成形時や二重巻締め時に筒状部材10が下方に位置ずれするのをより確実に規制することができる。
【0051】
加えて、飲料充填に際しては、缶本体80と天蓋12とを別々に搬送し、缶本体80への飲料充填後にシーマーにて天蓋12を二重巻締めして、密封することができる。これにより、飲料の充填後に行う密封のための缶本体80と天蓋12との連結工程が二重巻締めの工程となるため、キャッピング工程を行う場合と比較して、飲料充填後から密封までに要する時間が格段に短くなる。したがって、リシール缶1の生産性を大幅に向上することができる。
【0052】
そして、このような飲料充填プロセスであるため、製缶メーカーが缶本体80と天蓋12とを製造し、これらを飲料充填工場に納品するビジネスモデルの場合、特に有利となる。具体的には、飲料充填工場においては、キャッピング設備を保有せずに済む上、SOT缶用の既存の充填設備を利用した充填・二重巻締めを行うことができるので、リシール缶1の高速生産が可能となる。
【0053】
次に、本実施形態の変形例について述べる。
【0054】
<変形例:位置規制部>
位置規制部66は、上述の形状に限定されるものではなく、口部4に対する筒状部材10の位置規制ができる限り、他の形状をとり得る。例えば、円周状に一続きにつながっている上記形状ではなく、筒状部材10の周方向に均等間隔で設けられた複数の部位により、位置規制部66を構成してもよい。
【0055】
<変形例:ねじ部を成形するタイミング>
ねじ部64は、二重巻締め前の筒状部材10が缶胴2の口部4にセットされる前から筒状部材10に成形しておくことも可能である。また、ねじ部34は、二重巻締め前の筒状部材10が缶胴2の口部4にセットされた後で成形することも可能である。しかし、既存のねじ成形技術を利用する観点からすれば、上述の実施形態の成形タイミングを採用することが望ましく、また、上述の実施形態の成形タイミングとした場合に位置規制部66が効果的に機能する。
【0056】
<変形例:カウンターシンク部>
次に、本実施形態の天蓋12に適用することが望ましいカウンターシンク部52の変形例について、複数の変形例を説明する。
【0057】
図7は、比較例に係るリシール缶において、天蓋12´を絞り加工するときの流れを示す図である。なお、上述の実施形態と同様の構成については、符号に´を付けている。
図7(a)及び(b)に示すように、二重巻締め工程の際、プレッシャーブロック兼シーミングチャック100は、カウンターシンク部52´を押し下げるように絞り加工し、天壁部54´の周縁を変形させてカール部30´に押し付ける。しかし、このとき、絞り加工による材料の動きにより、天蓋12´のフランジ部50´がカウンターシンク部52´側に引っ張られてしまう。そうなると、図7(c)に示すように、その後のフランジ部50´の折り曲げ(フック量)が不十分となる。この結果、フランジ部50´,60´同士のシームが良好になされず、二重巻締めに支障をきたすおそれがある。
【0058】
そこで、絞り加工の影響が二重巻締めに影響しないように、絞り加工による材料の移動を吸収する構造を具備させたのが、以下に述べるカウンターシンク部52の変形例である。
【0059】
具体的には、図8(a)に示すように、カウンターシンク部52には、ライナー56側の部位に段部110が形成されている。段部110は、天蓋12の天壁部54の周縁から下方に延びる第1の部分112と、第1の部分112から外方に向けて水平に延びる第2の部分114と、で構成されている。図8(b)に示すように、プレッシャーブロック兼シーミングチャック100が第1の部分112を変形させてカール部30に押し付ける。このとき、絞り加工分、段部110が斜めに倒れるようになり、絞り加工による材料の動きが段部110にて吸収される。これにより、天蓋12のフランジ部50がカウンターシンク部52側に引っ張られることが抑制される。したがって、図8(c)に示すように、フランジ部50,60同士のシームが良好になされ、安定した二重巻締めが達成される。
【0060】
図9及び図10は、それぞれ、カウンターシンク部52の段部110について、別の変形例を示している。図9(a)に示すように、第1の部分112の下部の肉厚を薄くして、第2の部分114を第1の部分112の下端から上方外向きに延在させている。また、図10(a)に示すように、第1の部分112の下部の肉厚を薄くして、第2の部分114を第1の部分112の下端から下方外向きに延在させている。このような段部110の形状であっても、図9(b)及び図10(b)に示すように、絞り加工による材料の動きが段部110にて吸収され、フランジ部50に引っ張り込むような力が伝わるのを抑制することができる。
【0061】
図11は、カウンターシンク部52の段部110について、さらに別の変形例を示している。図11(a)及び(c)に示すように、天壁部54とフランジ部50とつなぐ部分の断面形状が全体としてU字状のカウンターシンク部52において、ライナー56側の側壁部の中間部に段部110を形成することもできる。また、図11(b)及び(d)に示すように、同様にU字状のカウンターシンク部52において、ライナー56側の底部に段部110を形成することもできる。このような段部110の形状であっても、上記同様に、絞り加工による材料の動きが段部110にて吸収され、フランジ部50の変形を抑制することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:リシール缶、 2:缶胴、 4:口部、 6:キャップ、 10:筒状部材、 12:天蓋、 30:カール部、 32:周壁、 34:ねじ部(第2のねじ部)、 36:周壁部、 38:周壁部、 46:連結部分、 50:フランジ部、 52:カウンターシンク部、 54:天壁部、 56:ライナー、 60:フランジ部、 62:周壁、 64:ねじ部(第1のねじ部)、 66:位置規制部、 80:缶本体、 110:段部
【技術分野】
【0001】
本発明は、リシール缶(再栓可能な缶)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料用パッケージとして、SOT缶(stay on tub 缶)が広く用いられている。SOT缶は、缶胴に缶蓋又は缶底を二重巻締めしたものであり、リシール性は有していない。
一般に、製缶メーカーは、缶胴と缶蓋等とを別々の部品として製造し、これらを飲料充填工場に提供する。飲料充填工場では、缶胴と缶蓋又は缶底とを別々に搬送するラインがあり、一端を閉じた缶胴に飲料を充填した後、シーマーにて缶胴に缶蓋又は缶底を二重巻締めしている。この二重巻締めによって、SOT缶に飲料が密封されることになる。
【0003】
一方、近年では、PETボトルのようなリシール性を求めるユーザーのニーズを考慮し、ボトル缶に代表されるリシール缶も用いられている。一般的なボトル缶は、ネッキング処理した缶胴の口部にネジを形成し、このネジにキャップを着脱可能に螺合している。
一般に、製缶メーカーは、缶胴とねじ加工前のキャップとを別々の部品として製造し、これらを飲料充填工場に提供する。飲料充填工場では、缶胴とねじ加工前のキャップとを別々に搬送するラインがあり、一端を閉じた缶胴に飲料を充填した後、キャッピング設備にてねじ加工前のキャップの側壁を缶胴の口部のネジ部に押し付けて変形させ、それにより口部にキャップを装着している。この装着(キャッピング)によって、ボトル缶に飲料が密封されることになる。
【0004】
しかし、このようなボトル缶は、SOT缶に比べて、飲料充填工場における充填・密封速度が遅いという問題があった。これは、密封に際して行う部材間の連結にかかる速度の違いに起因する。すなわち、ボトル缶におけるキャッピングの速度が、SOT缶における二重巻締めの速度の約1/3であることに起因する。このため、ボトル缶は、飲料充填後から密封までに多くの時間がかかり、SOT缶のようには高速に生産することができなかった。
【0005】
ところが、高速充填が図れるリシール缶として、キャップを二つのパーツ(天蓋及びねじ付き筒状部材)で構成するものが提案された(例えば、特許文献1参照。)。このリシール缶では、ねじ付き筒状部材を缶胴の口部に螺着したものを製造し、この缶胴に飲料を充填する。その後、ねじ付き筒状部材に天蓋を被せて両者を二重巻締めし、それにより飲料を密封する。したがって、このようなリシール缶によれば、飲料充填工場においてSOT缶の技術を利用できるため、飲料充填後から密封までに要する時間が短くなり、生産性が向上するという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−137451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のリシール缶は、ねじ付き筒状部材を缶胴の口部に螺着したものを製造する際の歩留まりが低く、安定した生産には適さないと想定される。その理由は以下のとおりである。
【0008】
特許文献1では、ねじ付き筒状部材を缶胴の口部に螺着したものを製造する際、まず、ねじ無しの筒状部材を缶胴の口部に被せ、その後、両者の内外からねじ加工用ロールを押し付けて、両者にねじ部を形成し、螺着した状態としている。
【0009】
しかし、特許文献1では、ねじ無しの筒状部材を缶胴の口部に被せるための具体的な構成が検討されていない。単純に被せるだけでは、被せた際に、ねじ無しの筒状部材が缶胴の口部の下方へと位置ずれする。この問題は、その後のねじ成形時や二重巻締め時にも生じ得る。このような位置ずれが生じると、二重巻締めされる筒状部材の長さが変わり、密封性が損なわれてしまう。より詳細には、天蓋との二重巻締めに供される筒状部材の上端(シームポイント)と、天蓋との密着に供される缶胴の上端(シールポイント)との位置関係が規定の位置関係から変わるため、設計上の密封性を保つことができなくなる。それゆえ、特許文献1のリシール缶の歩留まりは低いことが想定される。
【0010】
そこで、本発明は、安定した生産が可能なリシール缶及びリシール缶の缶本体を提供することをその目的とする。また、本発明は、充填後から密封までにかかる時間を短くして生産性を向上することが可能なリシール缶への内容物の充填方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するべく、本発明のリシール缶は、上端開口縁にフランジ部を有し且つ周壁に第1のねじ部を有する筒状部材、及び、当該フランジ部に二重巻締めされて筒状部材の上側開口を閉塞する天蓋を備えたキャップと、口部の上端開口縁にカール部を有し且つ口部の周壁に第2のねじ部を有する缶胴と、を備え、キャップが缶胴の口部に再栓可能に装着された際、筒状部材の第1のねじ部と缶胴の第2のねじ部とが螺合し、且つ、天蓋の内面と缶胴のカール部とが密着してリシール缶内が密封されるものにおいて、筒状部材は、フランジ部と第1のねじ部との間に位置規制部を有する。そして、位置規制部は、天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を缶胴の口部にセットした際に、口部の周壁に係合することで口部に対する筒状部材の下方への移動を規制する。
【0012】
また、上記目的を達成するべく、本発明のリシール缶の缶本体は、上記のリシール缶において天蓋が筒状部材に二重巻締めされる前のものであり、具体的には、二重巻締め前の筒状部材を缶胴の口部にセットし、第1のねじ部と第2のねじ部とが螺合されてなるものである。
【0013】
これら本発明のリシール缶及びその缶本体によれば、二重巻締めされる前の筒状部材を缶胴の口部にセットした際に、筒状部材の位置規制部によって筒状部材が缶胴の口部の下方へと位置ずれするのが規制される。これにより、天蓋との二重巻締めに供される筒状部材のフランジ部(シームポイント)と、天蓋との密着に供される缶胴のカール部(シールポイント)との正確な位置関係が保たれる。したがって、設計上の密封性を確保することができ、リシール缶及びその缶本体を安定して生産することができる。
【0014】
また、本発明では、位置規制部が筒状部材においてフランジ部と第1のねじ部との間にある。このため、位置規制部が第1のねじ部よりも下側にある場合と比べて、二重巻締め後に第1のねじ部を拡がらせない(第2のねじ部から離間させない)ようにし易いなどの利点がある。
【0015】
ここで、キャップの第1のねじ部は、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされる前から筒状部材に形成されていてもよいし、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされた後で形成されてもよい。上述したように、本発明によれば、セットした際に筒状部材の位置ずれが規制されるので、セット後に第1のねじ部を適切な位置に形成することができる。
【0016】
また、缶胴の第2のねじ部についても、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされる前から形成されていてもよいし、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされた後で形成されてもよい。このように、第1のねじ部及び第2のねじ部を形成する段階は限定されるものではない。
【0017】
ただし、既存のねじ成形技術を利用する観点からすれば、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされる前から缶胴に第2のねじ部を形成しておき、このセット後に、筒状部材の周壁を第2のねじ部に押し付けて変形させ、筒状部材に第1のねじ部を形成することが好ましい。
【0018】
好ましい一態様によれば、口部の周壁は、カール部から下方且つ外方に延びた円錐台状の周壁部と、第2のねじ部が形成された略円筒状の周壁部と、を有しており、位置規制部は、円錐台状の周壁部と略円筒状の周壁部とをつなぐ連結部分に上側から載ることで、口部の周壁に係合するとよい。
【0019】
この構成によれば、口部の周壁の構造を有効に利用して、筒状部材が口部の下方へと位置ずれするのを規制することができる。とりわけ、連結部分は、口部の周壁の形状の変化点であるために強度が高いので、位置規制部を載せて受けるのに適している。それゆえ、例えば二重巻締め工程の際に位置規制部から口部の連結部分に外力が印加されたとしても、口部の変形を好適に抑制することができる。
【0020】
好ましい一態様によれば、位置規制部は、円周状のリブで構成されているとよい。
【0021】
この構成によれば、簡易な構造で、位置規制部まわりの強度を上げることができる。これにより、二重巻締め前の筒状部材が缶胴の口部にセットされた後で、ねじ成形する場合や二重巻締めする場合に、筒状部材が口部の下方へと位置ずれするのをより確実に規制することができる。
【0022】
好ましい一態様によれば、天蓋は、内面にカール部が密着するライナーを有する天壁部と、筒状部材のフランジ部に二重巻締めされるフランジ部と、天壁部とフランジ部とをつなぐカウンターシンク部と、を備え、カウンターシンク部には、ライナー側の部位に段部が形成されているとよい。
【0023】
この構成によれば、安定した二重巻締めを達成することが可能となる。具体的に説明すると、一般に、シール性を確保するために、装置(例えば、プレッシャーブロック兼シーミングチャック)によってカウンターシンク部を押し下げるように絞り加工し、カウンターシンク部のライナー側の部位をライナーに押し付けている。仮に、上記のような段部が無いと、この絞り加工による材料の動きにより、天蓋のフランジ部がカウンターシンク部側に引っ張られ、二重巻締めに支障をきたすおそれがある。これに対し、本発明の好ましい一態様の如く、カウンターシンク部のライナー側の部位に段部を形成することで絞り加工による材料の動きが段部で吸収されるようになる。これにより、天蓋のフランジ部が、カウンターシンク部側に引っ張られることを抑制されるため、安定した二重巻締めを達成することが可能となる。
【0024】
上記目的を達成するべく、本発明のリシール缶への内容物の充填方法は、上記した本発明のリシール缶への内容物の充填方法において、天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を缶胴の口部にセットし、第1のねじ部と第2のねじ部とが螺合された缶本体を製造する製缶工程と、缶本体に内容物を充填する充填工程と、充填後の缶本体の筒状部材に天蓋を二重巻締めし、リシール缶を密封するシーム工程と、を備えたものである。
【0025】
また、上記目的を達成するべく、本発明の別のリシール缶への内容物の充填方法は、上記した本発明のリシール缶の缶本体に内容物を充填する充填工程と、充填後の缶本体の筒状部材に天蓋を二重巻締めし、リシール缶を密封するシーム工程と、を備えたものである。
【0026】
これらの本発明の充填方法によれば、充填後に行う密封のための部材間の連結工程が、比較的速度の速い二重巻締めの工程(シーム工程)となる。したがって、このような連結工程をキャッピング工程により実行する場合と比較して、充填後から密封までに要する時間を短くすることができ、生産性を向上することができる。このことは、充填工場において、従来のボトル缶に用いていたキャッピング設備を不要にできると共に、SOT缶のための既存の充填設備への適応性があることを意味する。なお、充填する内容物は、飲料に限らず、食品とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係るリシール缶の密封状態を示す断面図である。
【図2】図1に示すリシール缶を開封した状態を示す図であり、天蓋が筒状部材に二重巻締めされたキャップと、キャップを取り外した缶胴と、を分解して示す分解断面図である。
【図3】図1に示すリシール缶の二重巻締め前の状態を示す図であり、二重巻締め前の天蓋と、二重巻締め前の筒状部材がセットされた缶胴と、を分解して示す分解断面図である。
【図4】図1に示すリシール缶における缶胴と、二重巻締め前の筒状部材と、二重巻締め前の天蓋と、を分解して示す図であり、(a)は分解正面図であり、(b)は分解断面図である。
【図5】図1に示すリシール缶における二重巻締め後のキャップ及び缶胴の部分拡大図である。
【図6】図1に示すリシール缶への内容物の充填方法を示す図であり、(a)は製缶工程の概念図であり、(b)は充填工程の概要図であり、(c)シーム工程の概要図である。
【図7】比較例に係るリシール缶において、天蓋を絞り加工するときの流れを示す図であり、(a)絞り加工の初期段階、(b)は絞り加工の中期段階、(c)絞り加工の終了後を示す断面図である。
【図8】実施形態の第1の変形例に係るリシール缶において、天蓋を絞り加工するときの流れを示す図であり、(a)絞り加工の初期段階、(b)は絞り加工の中期段階、(c)絞り加工の終了後を示す断面図である。
【図9】実施形態の第2の変形例に係るリシール缶の天蓋を示す図であり、(a)は絞り加工前、(b)絞り加工後を示す断面図である。
【図10】実施形態の第3の変形例に係るリシール缶の天蓋を示す図であり、(a)は絞り加工前、(b)絞り加工後を示す断面図である。
【図11】実施形態のさらに別の変形例に係るリシール缶について、絞り加工前の天蓋を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について、飲料用のリシール缶を例に説明する。以下の説明で使用する上方、下方、内方、外方、水平等の用語は、缶の口を上向きに開口して缶を直立させたときに関するものである。
【0029】
まず、図1〜5を参照して、リシール缶1の構造について説明する。
【0030】
図1及び図2に示すように、リシール缶1は、缶胴2と、缶胴2の口部4に再栓可能に装着されるキャップ6と、を備えている。キャップ6は、筒状部材10に天蓋12を二重巻締めして構成されたものである。飲料を保管する場合には、図1に示すように、キャップ6によって、缶胴2の封口がなされる。一方、飲用に際しては、図2に示すように、キャップ6を回転操作して缶胴2から取り外し、注出口を開放する。また、再栓する場合にはキャップ6を逆方向に回転操作して口部4に螺合させる。
【0031】
図1〜4に示すように、缶胴2は、筒状の側周壁20と、側周壁20の下端開口を閉じる底壁22とからなり、側周壁20の上部がリシール缶1の注出口となる口部4として形成されている。側周壁20と底壁22とは、一体であってもよいし、接合されていてもよい。すなわち、缶胴2は、金属板を多段絞り加工やしごき加工して側周壁20と底壁22とを一体に成形したものであってもよいし、側周壁20とは別部材の底壁22を側周壁20の下端に巻締めて固着したものであってもよい。缶胴2の材料としては、缶用表面処理鋼板、樹脂ラミネート鋼板、アルミニウム合金板など、飲料用金属容器に用いられる公知の材料を用いることができる。なお、側周壁20を、二以上の側周壁パーツを二重巻締め等により連結したもので構成することも可能である。
【0032】
缶胴2の口部4は、その上端開口縁に沿ってカール部30を有し、周壁32にねじ部34を有している。カール部30は、内巻きとすることも可能であるが、ここでは飲料容器上好ましい外巻きで形成されている。周壁32は、カール部30の下側にて下方に向かって外方に延びた円錐台状の周壁部36と、ねじ部34が形成された略円筒状の周壁部38と、を有している。周壁部38には、さらに、ねじ部34の下端に続く環状のビード部40と、ビード部40の下端に続く環状の凹リブ42と、が形成されている。ねじ部34におけるねじの形状は、特に限定されるものではなく、例えば一条ねじ又は二条ねじとすることができる。ビード部40は、ねじ部34よりも僅かに外方に位置する略円筒状の部位であり、その外周面は上方に向かって僅かにすぼむように傾斜している。凹リブ42は、ビード部40よりも縮径した部位であり、缶胴2の側周壁20の傾斜部44に続いている。詳細は後述するが、図5に示すように、周壁部36と周壁部38とをつなぐ連結部分(コーナー部分)46に、キャップ6の位置規制部66が係合する。
【0033】
図1〜5に示すように、キャップ6は、筒状部材10及び天蓋12を備えたものであり、この両者が二重巻締めにより一体化されることで、缶胴2の口部4に対してシール機能とロック機能とを発揮する。筒状部材10及び天蓋12のそれぞれの材料は、缶胴2の材料と同じものを用いることができる。
【0034】
天蓋12は、その周縁に形成されたフランジ部50と、フランジ部50の内側にある凹状のカウンターシンク部52と、カウンターシンク部52の内側で水平方向に延びる天壁部54と、を備えている。フランジ部50は、筒状部材10の上端開口縁に二重巻締めされる部位であり、図3及び図4に示す二重巻締め前の状態では、カウンターシンク部52の外側上端から外方に突出している。カウンターシンク部52は、フランジ部50と天壁部54とをつなぐ環状溝を構成する部位であり、二重巻締めの際にシーマーのプレッシャーブロック兼シーミングチャックが上側から嵌入される。天壁部54は、口部4の開口を覆うために例えば円盤状に形成されており、その内面(下面)にはライナー56(シーリング材)が設けられている。ライナー56は、例えば、ポリオレフィン系ゴムなどの材料からなり、天壁部54の下面に熱溶着又は嵌めこまれるなど、適宜の方法により設けられている。ライナー56の周縁には、下方に突出した環状のリップ部58が形成されている。リップ部58は、キャップ6の閉栓時にカール部30を径方向で挟み込みようにカール部30に上側から接触し、それによりリシール缶1を密封する。
【0035】
筒状部材10は、上下方向に貫通したリングパーツであり、上端開口縁にフランジ部60を有し、周壁62にねじ部64及び位置規制部66を有している。フランジ部60は、天蓋12のフランジ部50に二重巻締めされる部位であり、図3及び図4に示す二重巻締め前の状態では、フランジ部50と同様に、周壁62の上端から外方に突出している。二重巻締め後は、筒状部材10の上側開口が天蓋12により閉塞される。
【0036】
周壁62には、さらに、ねじ部64の下端に続く環状壁68と、環状壁68の下端から下方に向かって内向きに延びるスカート部70と、が形成されている。ねじ部64は、缶胴2のねじ部34に螺合し、キャップ6を缶胴2にロックする。キャップ6の閉栓時に、環状壁68は缶胴2のビード部40に横方向から接面し、スカート部70は缶胴2の凹リブ42の一部に斜め下方から接面する。
【0037】
図5に示すように、位置規制部66は、フランジ部60とねじ部64との間にある部位である。本実施形態では、位置規制部66は、ねじ部64の上端に続く円周状の凸リブで構成されており、断面略半円形状に形成されている。このような円周状の凸リブで位置規制部66を形成することで、位置規制部66まわりの強度を上げることができる。位置規制部66は、外径がねじ部64の最大外径よりも小さく、高さがねじ部64のねじ山のピッチよりも小さいものとなっている。位置規制部66は、キャップ6の閉栓時に、缶胴2の連結部分46に上側から載るように係合する。また、図3に示すように、天蓋12が二重巻締めされる前の筒状部材10を缶胴2の口部4にセットした際も、位置規制部66は、缶胴2の連結部分46に上側から載るように係合する。これによって、二重巻締め前の筒状部材10が缶胴2の口部4の下方へと移動することが規制されるようになっている。
【0038】
ここで、二重巻締め前の筒状部材10を缶胴2の口部4にセットした段階では、筒状部材10には、フランジ部60及び位置規制部66のみが形成されており、ねじ部64などは形成されていない。すなわち、二重巻締め前の筒状部材10を口部4に被せるように装着することで初めてセットした際に、周壁62の中間部をロール(スレッドローラ)で口部4のねじ部34に半径方向に押し付けて変形させることでねじ部64を成形している。また、この際に、周壁62の下部をスカートローラで口部4の凹リブ42に押し付けて変形させることでスカート部70を成形している。
【0039】
次に、図6を参照して、リシール缶1への飲料の充填方法について説明する。
【0040】
充填前の準備段階として、図6(a)に示すように、缶本体80を製缶する。缶本体80は、缶胴2にキャップ6の筒状部材10を組み付けてなるものであり、天蓋12が筒状部材10に二重巻締めされる前のものである。
【0041】
缶本体80を製缶する工程を説明すると、まず、図6(a)に示す形状に成形した缶胴2の口部4に、フランジ部60及び位置規制部66のみが形成された筒状部材10を上側から被せるようにセットする。このとき、位置規制部66が口部4の連結部分46に係合し、口部4に対する筒状部材10の位置が規定される。次に、この状態で、筒状部材10の外部から口部4のねじ部34と螺合するように筒状部材10の周壁62をロール成形し、ねじ部64及びスカート部70を成形する。この結果、筒状部材10の形状が図6(a)に示す形状に成形され、ねじ部34,64同士が螺合した缶本体80が製缶される。
【0042】
この一連の製缶工程の際、位置規制部66によって、セット後の筒所部材10が口部4の下方へと位置ずれするのが規制される。したがって、筒状部材10のフランジ部60(シームポイント)と缶胴2のカール部30(シールポイント)との高さ方向の位置関係が保たれることになる。
【0043】
次に、充填に際しては、図6(b)に示すように、缶本体80をフィラー85(充填機)に搬送し、缶胴2の上部開口から飲料Bを充填する(充填工程)。
【0044】
次いで、図6(c)に示すように、飲料充填後の缶胴80をシーマーに搬送し、シーマーにて、別途搬送してきた天蓋12のフランジ部50を筒状部材10のフランジ部60に二重巻締めし、天蓋12を筒状部材10と一体化してキャップ6を構成する(シーム工程)。これにより、飲料Bを充填した密封状態のリシール缶1が完成する。
【0045】
ここで、二重巻締めに際しては、まず、天蓋12を缶胴2のカール部30及び筒状部材10のフランジ部60の上に載せる。このとき、天蓋12のリップ部58がカール部30に載り、天蓋12のフランジ部50が筒状部材10のフランジ部60に載る。上記のとおり、位置規制部66によってシームポイントとシールポイントとの高さ方向の位置関係が保たれているので、缶胴2及び筒状部材10上の天蓋12の位置は所定の正確な位置となる。
【0046】
この状態で、天蓋12のカウンターシンク部52にシーマーのプレッシャーブロック兼シーミングチャックを上側から嵌入し、天蓋12の天壁部54の周縁をカール部30に向かって押し付ける。これにより、天蓋12のリップ部58がカール部30に押し付けられ、シールされる。
【0047】
次いで、シーマーの巻締めロールでフランジ部50,60同士を折り曲げ、かしめる。これにより、フランジ部50,60同士がシームされる。こうして二重巻締めが完了し、飲料Bを充填した密封状態のリシール缶1が完成する。なお、リシール缶1の最大外径は、缶胴2の外径で構成され、これは巻締め外径(フランジ部50の外径)とも等しくなる。
【0048】
この一連の二重巻締め工程の際においても、位置規制部66によって、セット後の筒所部材10が口部4の所定位置で留まるので、シームポイントとシールポイントとの高さ方向の位置関係が保たれることになる。とりわけ、プレッシャーブロック兼シーミングチャックによって、筒状部材10には天蓋12を介して下方向への負荷がかかるが、このような負荷に対しても、位置規制部66によって、筒所部材10が口部4の下方へと位置ずれするのを抑制することができる。また、筒状部材10に作用するプレッシャーブロック兼シーミングチャックからの負荷は、位置規制部66において図5の矢印90に示すように下方且つ内向きに作用することになるため、ねじ部64を開かせない(ねじ部34から離間させない)ように作用する。これにより、ロック性が損なわれないようにも工夫されている。なお、この作用は、ねじ部64の下側に位置規制部66がある場合と比べて、ねじ部64の上側に位置規制部66がある上記の態様において、より増大されるものである。
【0049】
以上説明した本実施形態によれば、筒状部材10に位置規制部66を形成しているので、缶本体80の製缶時にシームポイントとシールポイントとの位置関係を正確に保つことができると共に、その後の二重巻締め時にも両者の位置関係を正確に保つことができる。リシール缶1の各部材(缶胴2、筒状部材10及び天蓋12)の組立精度が密封性にとって重要であるところ、本実施形態では、リシール缶1への充填を通して各部材(缶胴2、筒状部材10及び天蓋12)の組立精度を確保することができる。したがって、設計上の密封性を確保した缶本体80及びリシール缶1を安定して生産することができる。
【0050】
特に、位置規制部66が係合する口部4の部位を、口部4の周壁形状の変化点である連結部分46としている。このような周壁形状の変化点である連結部分46は強度が高いため、二重巻締め工程の際に位置規制部66から負荷がかかっても、それを好適に受けることができ、口部4の変形を抑制することができる。また、位置規制部66自体も円周状の凸リブとして構成しているため、強度が高められており、ねじ成形時や二重巻締め時に筒状部材10が下方に位置ずれするのをより確実に規制することができる。
【0051】
加えて、飲料充填に際しては、缶本体80と天蓋12とを別々に搬送し、缶本体80への飲料充填後にシーマーにて天蓋12を二重巻締めして、密封することができる。これにより、飲料の充填後に行う密封のための缶本体80と天蓋12との連結工程が二重巻締めの工程となるため、キャッピング工程を行う場合と比較して、飲料充填後から密封までに要する時間が格段に短くなる。したがって、リシール缶1の生産性を大幅に向上することができる。
【0052】
そして、このような飲料充填プロセスであるため、製缶メーカーが缶本体80と天蓋12とを製造し、これらを飲料充填工場に納品するビジネスモデルの場合、特に有利となる。具体的には、飲料充填工場においては、キャッピング設備を保有せずに済む上、SOT缶用の既存の充填設備を利用した充填・二重巻締めを行うことができるので、リシール缶1の高速生産が可能となる。
【0053】
次に、本実施形態の変形例について述べる。
【0054】
<変形例:位置規制部>
位置規制部66は、上述の形状に限定されるものではなく、口部4に対する筒状部材10の位置規制ができる限り、他の形状をとり得る。例えば、円周状に一続きにつながっている上記形状ではなく、筒状部材10の周方向に均等間隔で設けられた複数の部位により、位置規制部66を構成してもよい。
【0055】
<変形例:ねじ部を成形するタイミング>
ねじ部64は、二重巻締め前の筒状部材10が缶胴2の口部4にセットされる前から筒状部材10に成形しておくことも可能である。また、ねじ部34は、二重巻締め前の筒状部材10が缶胴2の口部4にセットされた後で成形することも可能である。しかし、既存のねじ成形技術を利用する観点からすれば、上述の実施形態の成形タイミングを採用することが望ましく、また、上述の実施形態の成形タイミングとした場合に位置規制部66が効果的に機能する。
【0056】
<変形例:カウンターシンク部>
次に、本実施形態の天蓋12に適用することが望ましいカウンターシンク部52の変形例について、複数の変形例を説明する。
【0057】
図7は、比較例に係るリシール缶において、天蓋12´を絞り加工するときの流れを示す図である。なお、上述の実施形態と同様の構成については、符号に´を付けている。
図7(a)及び(b)に示すように、二重巻締め工程の際、プレッシャーブロック兼シーミングチャック100は、カウンターシンク部52´を押し下げるように絞り加工し、天壁部54´の周縁を変形させてカール部30´に押し付ける。しかし、このとき、絞り加工による材料の動きにより、天蓋12´のフランジ部50´がカウンターシンク部52´側に引っ張られてしまう。そうなると、図7(c)に示すように、その後のフランジ部50´の折り曲げ(フック量)が不十分となる。この結果、フランジ部50´,60´同士のシームが良好になされず、二重巻締めに支障をきたすおそれがある。
【0058】
そこで、絞り加工の影響が二重巻締めに影響しないように、絞り加工による材料の移動を吸収する構造を具備させたのが、以下に述べるカウンターシンク部52の変形例である。
【0059】
具体的には、図8(a)に示すように、カウンターシンク部52には、ライナー56側の部位に段部110が形成されている。段部110は、天蓋12の天壁部54の周縁から下方に延びる第1の部分112と、第1の部分112から外方に向けて水平に延びる第2の部分114と、で構成されている。図8(b)に示すように、プレッシャーブロック兼シーミングチャック100が第1の部分112を変形させてカール部30に押し付ける。このとき、絞り加工分、段部110が斜めに倒れるようになり、絞り加工による材料の動きが段部110にて吸収される。これにより、天蓋12のフランジ部50がカウンターシンク部52側に引っ張られることが抑制される。したがって、図8(c)に示すように、フランジ部50,60同士のシームが良好になされ、安定した二重巻締めが達成される。
【0060】
図9及び図10は、それぞれ、カウンターシンク部52の段部110について、別の変形例を示している。図9(a)に示すように、第1の部分112の下部の肉厚を薄くして、第2の部分114を第1の部分112の下端から上方外向きに延在させている。また、図10(a)に示すように、第1の部分112の下部の肉厚を薄くして、第2の部分114を第1の部分112の下端から下方外向きに延在させている。このような段部110の形状であっても、図9(b)及び図10(b)に示すように、絞り加工による材料の動きが段部110にて吸収され、フランジ部50に引っ張り込むような力が伝わるのを抑制することができる。
【0061】
図11は、カウンターシンク部52の段部110について、さらに別の変形例を示している。図11(a)及び(c)に示すように、天壁部54とフランジ部50とつなぐ部分の断面形状が全体としてU字状のカウンターシンク部52において、ライナー56側の側壁部の中間部に段部110を形成することもできる。また、図11(b)及び(d)に示すように、同様にU字状のカウンターシンク部52において、ライナー56側の底部に段部110を形成することもできる。このような段部110の形状であっても、上記同様に、絞り加工による材料の動きが段部110にて吸収され、フランジ部50の変形を抑制することができる。
【符号の説明】
【0062】
1:リシール缶、 2:缶胴、 4:口部、 6:キャップ、 10:筒状部材、 12:天蓋、 30:カール部、 32:周壁、 34:ねじ部(第2のねじ部)、 36:周壁部、 38:周壁部、 46:連結部分、 50:フランジ部、 52:カウンターシンク部、 54:天壁部、 56:ライナー、 60:フランジ部、 62:周壁、 64:ねじ部(第1のねじ部)、 66:位置規制部、 80:缶本体、 110:段部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端開口縁にフランジ部を有し且つ周壁に第1のねじ部を有する筒状部材、及び、前記フランジ部に二重巻締めされて前記筒状部材の上側開口を閉塞する天蓋、を備えたキャップと、
口部の上端開口縁にカール部を有し且つ当該口部の周壁に第2のねじ部を有する缶胴と、
を備えたリシール缶であって、
前記キャップが前記缶胴の口部に再栓可能に装着された際、前記筒状部材の第1のねじ部と前記缶胴の第2のねじ部とが螺合し、且つ、前記天蓋の内面と前記缶胴のカール部とが密着して当該リシール缶内が密封されるリシール缶において、
前記筒状部材は、前記フランジ部と前記第1のねじ部との間に位置規制部を有し、
前記位置規制部は、前記天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を前記缶胴の口部にセットした際に、当該口部の周壁に係合することで当該口部に対する前記筒状部材の下方への移動を規制する、リシール缶。
【請求項2】
前記口部の周壁は、前記カール部から下方且つ外方に延びた円錐台状の周壁部と、前記第2のねじ部が形成された略円筒状の周壁部と、を有しており、
前記位置規制部は、前記円錐台状の周壁部と前記略円筒状の周壁部とをつなぐ連結部分に上側から載ることで、前記口部の周壁に係合する、請求項1に記載のリシール缶。
【請求項3】
前記位置規制部は、円周状のリブで構成されている、請求項1又は2に記載のリシール缶。
【請求項4】
前記天蓋は、内面に前記カール部が密着するライナーを有する天壁部と、前記筒状部材のフランジ部に二重巻締めされるフランジ部と、前記天壁部と前記フランジ部とをつなぐカウンターシンク部と、を備え、
前記カウンターシンク部には、前記ライナー側の部位に段部が形成されている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のリシール缶。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のリシール缶への内容物の充填方法において、
前記天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を前記缶胴の口部にセットし、前記第1のねじ部と前記第2のねじ部とが螺合された缶本体を製造する製缶工程と、
前記缶本体に内容物を充填する充填工程と、
前記充填後の缶本体の筒状部材に前記天蓋を二重巻締めし、当該リシール缶を密封するシーム工程と、を備えた、リシール缶への内容物の充填方法。
【請求項6】
リシール缶の缶本体であって、
前記リシール缶は、
上端開口縁にフランジ部を有し且つ周壁に第1のねじ部を有する筒状部材、及び、前記フランジ部に二重巻締めされて前記筒状部材の上側開口を閉塞する天蓋、を備えたキャップと、
口部の上端開口縁にカール部を有し且つ当該口部の周壁に第2のねじ部を有する缶胴と、
を備え、
前記キャップが前記缶胴の口部に再栓可能に装着された際、前記筒状部材の第1のねじ部と前記缶胴の第2のねじ部とが螺合し、且つ、前記天蓋の内面と前記缶胴のカール部とが密着して当該リシール缶内が密封されるものであり、
当該缶本体は、前記天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を前記缶胴の口部にセットし、前記第1のねじ部と前記第2のねじ部とが螺合されてなるものであり、
前記筒状部材は、前記フランジ部と前記第1のねじ部との間に位置規制部を有し、
前記位置規制部は、前記天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を前記缶胴の口部にセットした際に、当該口部の周壁に係合することで当該口部に対する前記筒状部材の下方への移動を規制する、リシール缶の缶本体。
【請求項7】
前記口部の周壁は、前記カール部から下方且つ外方に延びた円錐台状の周壁部と、前記第2のねじ部が形成された略円筒状の周壁部と、を有しており、
前記位置規制部は、前記円錐台状の周壁部と前記略円筒状の周壁部とをつなぐ連結部分に上側から載ることで、前記口部の周壁に係合する、請求項6に記載のリシール缶の缶本体。
【請求項8】
前記位置規制部は、円周状のリブで構成されている、請求項6又は7に記載のリシール缶の缶本体。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか一項に記載のリシール缶の缶本体に内容物を充填する充填工程と、
前記充填後の缶本体の筒状部材に前記天蓋を二重巻締めし、当該リシール缶を密封するシーム工程と、を備えた、リシール缶への内容物の充填方法。
【請求項1】
上端開口縁にフランジ部を有し且つ周壁に第1のねじ部を有する筒状部材、及び、前記フランジ部に二重巻締めされて前記筒状部材の上側開口を閉塞する天蓋、を備えたキャップと、
口部の上端開口縁にカール部を有し且つ当該口部の周壁に第2のねじ部を有する缶胴と、
を備えたリシール缶であって、
前記キャップが前記缶胴の口部に再栓可能に装着された際、前記筒状部材の第1のねじ部と前記缶胴の第2のねじ部とが螺合し、且つ、前記天蓋の内面と前記缶胴のカール部とが密着して当該リシール缶内が密封されるリシール缶において、
前記筒状部材は、前記フランジ部と前記第1のねじ部との間に位置規制部を有し、
前記位置規制部は、前記天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を前記缶胴の口部にセットした際に、当該口部の周壁に係合することで当該口部に対する前記筒状部材の下方への移動を規制する、リシール缶。
【請求項2】
前記口部の周壁は、前記カール部から下方且つ外方に延びた円錐台状の周壁部と、前記第2のねじ部が形成された略円筒状の周壁部と、を有しており、
前記位置規制部は、前記円錐台状の周壁部と前記略円筒状の周壁部とをつなぐ連結部分に上側から載ることで、前記口部の周壁に係合する、請求項1に記載のリシール缶。
【請求項3】
前記位置規制部は、円周状のリブで構成されている、請求項1又は2に記載のリシール缶。
【請求項4】
前記天蓋は、内面に前記カール部が密着するライナーを有する天壁部と、前記筒状部材のフランジ部に二重巻締めされるフランジ部と、前記天壁部と前記フランジ部とをつなぐカウンターシンク部と、を備え、
前記カウンターシンク部には、前記ライナー側の部位に段部が形成されている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のリシール缶。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のリシール缶への内容物の充填方法において、
前記天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を前記缶胴の口部にセットし、前記第1のねじ部と前記第2のねじ部とが螺合された缶本体を製造する製缶工程と、
前記缶本体に内容物を充填する充填工程と、
前記充填後の缶本体の筒状部材に前記天蓋を二重巻締めし、当該リシール缶を密封するシーム工程と、を備えた、リシール缶への内容物の充填方法。
【請求項6】
リシール缶の缶本体であって、
前記リシール缶は、
上端開口縁にフランジ部を有し且つ周壁に第1のねじ部を有する筒状部材、及び、前記フランジ部に二重巻締めされて前記筒状部材の上側開口を閉塞する天蓋、を備えたキャップと、
口部の上端開口縁にカール部を有し且つ当該口部の周壁に第2のねじ部を有する缶胴と、
を備え、
前記キャップが前記缶胴の口部に再栓可能に装着された際、前記筒状部材の第1のねじ部と前記缶胴の第2のねじ部とが螺合し、且つ、前記天蓋の内面と前記缶胴のカール部とが密着して当該リシール缶内が密封されるものであり、
当該缶本体は、前記天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を前記缶胴の口部にセットし、前記第1のねじ部と前記第2のねじ部とが螺合されてなるものであり、
前記筒状部材は、前記フランジ部と前記第1のねじ部との間に位置規制部を有し、
前記位置規制部は、前記天蓋が二重巻締めされる前の筒状部材を前記缶胴の口部にセットした際に、当該口部の周壁に係合することで当該口部に対する前記筒状部材の下方への移動を規制する、リシール缶の缶本体。
【請求項7】
前記口部の周壁は、前記カール部から下方且つ外方に延びた円錐台状の周壁部と、前記第2のねじ部が形成された略円筒状の周壁部と、を有しており、
前記位置規制部は、前記円錐台状の周壁部と前記略円筒状の周壁部とをつなぐ連結部分に上側から載ることで、前記口部の周壁に係合する、請求項6に記載のリシール缶の缶本体。
【請求項8】
前記位置規制部は、円周状のリブで構成されている、請求項6又は7に記載のリシール缶の缶本体。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか一項に記載のリシール缶の缶本体に内容物を充填する充填工程と、
前記充填後の缶本体の筒状部材に前記天蓋を二重巻締めし、当該リシール缶を密封するシーム工程と、を備えた、リシール缶への内容物の充填方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−91076(P2013−91076A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234288(P2011−234288)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(391026058)ザ コカ・コーラ カンパニー (238)
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(391026058)ザ コカ・コーラ カンパニー (238)
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
【Fターム(参考)】
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