説明

リジェネバーナ設置炉

【課題】 リジェネバーナの最大の特徴である省エネルギー性を損なうことなく、炉内温度分布の均一化を図る。
【解決手段】 炉体1の上部に一対のリジェネバーナ3A,3Bを設置し、下部にエスケープ排ガス通路4A,4Bを設置した炉において、エスケープ排ガス通路4A,4Bを1対のリジェネバーナ3A,3Bのうち吸引側のリジェネバーナ3Aの蓄熱器6Aの高温側に接続して、エスケープ排ガスを蓄熱器6Aに導入するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリジェネバーナを設置した熱処理炉や鉄鋼加熱炉等のリジェネバーナ設置炉に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の鉄鋼加熱炉では、図3に示すように、炉体101内の中央に被加熱物102がウオーキングビーム103により支持されるので、被加熱物102の上下にリジェネバーナ104A,104B、104’A,104’Bを設置することができる。このため、図3において上部の右側のリジェネバーェネバーナ104Bで燃焼し、左側のリジェネバーナ104Aで排ガスを吸引する一方、下部の左側のリジェネバーェネバーナ105Aで燃焼し、右側のリジェネバーナ105Bで排ガスを吸引することで、被加熱物102の周囲に良好な温度分布を確保することができる。
【0003】
これ対し、中小型のバッチ炉では、被加熱物が炉床に直置きされるので、被加熱物の上方にしかバーナを設置することができない。図4に示すように、通常のバーナ105,106の場合、炉床近くに排ガス煙道107,108を設けることで、炉内排ガス流れの適正化が図れ、良好な炉内温度分布を確保することができる。図5に示すように、リジェネバーナ109A,109Bの場合は、炉床近くにエスケープ排ガス煙道110A,110Bを設けて、排ガスの80パーセントを通常排ガスとしてリジェネバーナ109Bで吸引し、残りの20パーセントをエスケープ排ガス煙道110Bからエスケープ排ガスとして大気に放出している。しかし、20パーセントのエスケープ排ガスでは被加熱物102の周囲に均一な温度分布を確保することができない。また、炉のシール性が悪い場合は、排ガスが扉の隙間から漏出し、炉床近くのエスケープ排ガス煙道110Bには流れて行かず、温度分布はさらに悪化する。
【0004】
温度分布を良好にするためには、エスケープ排ガスの割合を増加することが効果的であるが、エスケープ排ガスは大気に放出されるので、リジェネバーナの最大の利点である省エネルギー性が低下するという問題があった。
【0005】
排ガスをエスケープするリジェネレータを設置した熱処理炉や鍛造加熱炉では、均熱時の低燃焼負荷条件において炉内温度分布が均一にならないため、空気比を高めた過剰空気条件で燃焼させて温度分布を確保する場合があった。このため、大量の酸化スケールが発生して生産性が低下するという問題があった。
【特許文献1】特開平08−338625号公報
【特許文献2】特開平09−111334号公報
【特許文献3】特開2001−141232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、リジェネバーナの最大の特徴である省エネルギー性を損なうことなく、炉内温度分布の均一化を図ることができるリジェネレータ設置炉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、第1の発明は、炉体の上部に一対のリジェネバーナを設置し、下部にエスケープ排ガス通路を設置した炉において、前記エスケープ排ガス通路を前記1対のリジェネバーナのうち吸引側のリジェネバーナの蓄熱器の高温側に接続して、エスケープ排ガスを前記蓄熱器に導入するようにしたものである。
【0008】
前記第1の発明では、エスケープ排ガス通路のエスケープ排ガスが蓄熱器に導入されるので、エスケープ排ガスの排熱が回収される。
【0009】
第2の発明は、前記エスケープ排ガス通路にエスケープ排ガスの流量を調整する流調弁を設けたものである。
【0010】
第3の発明は、前記1対のリジェネバーナのうち吸引側のリジェネバーナの蓄熱器の高温側に、前記吸引側リジェネバーナで吸引した通常排ガスの流量を調整する流調弁を設けたものである。
【0011】
第4の発明は、前記吸引側のリジェネレータの蓄熱器の低温側に冷却空気通路を接続し、前記蓄熱器を通過した排ガスを冷却空気で冷却するようにしたものである。
【0012】
第5の手段は、前記エスケープ排ガス通路にアフターバーン空気通路を接続し、前記蓄熱器に導入するエスケープ排ガス又は通常排ガスをアフターバーン空気で燃焼させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、エスケープ排ガス通路を1対のリジェネバーナのうち吸引側のリジェネバーナの蓄熱器の高温側に接続して、エスケープ排ガスを蓄熱器に導入するようにしたので、エスケープ排ガスの排熱が回収され、リジェネバーナの最大の特徴である省エネルギー性を損なうことなく、炉内温度分布の均一化を図ることができる。
【0014】
第2の発明によれば、エスケープ排ガス通路にエスケープ排ガスの流量を調整する流調弁を設けたので、この流調弁を調整することで、エスケープ排ガスの流量を制御することができる。このため、均熱時の低負荷燃焼条件下でも空気比を高めることなく温度分布を均一にすることができ、酸化スケールの発生を減少し、生産性を向上することができるとともに、被加熱物の表面品質を向上することも可能となる。
【0015】
第3の発明によれば、1対のリジェネバーナのうち吸引側のリジェネバーナの蓄熱器の高温側に、吸引側リジェネバーナで吸引した通常排ガスの流量を調整する流調弁を設けたので、蓄熱器に導く通常排ガスとエスケープ排ガスの流量配分を厳密に制御することができる。
【0016】
第4の発明によれば、吸引側のリジェネレータの蓄熱器の低温側に冷却空気通路を接続し、蓄熱器を通過した排ガスを冷却空気で冷却するようにしたので、蓄熱器の低温側に耐熱性のある切替弁を使用する必要がなくなる。
【0017】
第5の発明によれば、エスケープ排ガス通路にアフターバーン空気通路を接続し、蓄熱器に導入するエスケープ排ガス又は通常排ガスをアフターバーン空気で燃焼させるようにしたので、還元燃焼時の排ガス中の未燃分を完全燃焼させ、煤の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0019】
図1は本発明に係るリジェネバーナ設置炉である。炉体1の炉床には被加熱物2が直置きされるようになっている。炉体1の側壁上部には1対のリジェネバーナ3A.3Bが対向して設置され、下部の炉床近傍にはエスケープ排ガス通路4A,4Bが接続されている。エスケープ排ガス通路4A,4Bの流入口は被加熱物2の上面より下方の側壁又は炉床に設けられている。1対のリジェネバーナ3A.3Bとエスケープ排ガス通路4A,4Bは図において対称に配置されているので、以下、左側の構成部材の符号にA、右側の構成部材の符号にBを付して重複説明を省略する。
【0020】
1対のリジェネバーナ3A.3Bは、交互に燃焼と吸引を行わせるもので、燃焼ノズル5A,5Bと、蓄熱体を有する蓄熱器6A,6Bとからなっている。蓄熱器6A,6Bの高温側には通常排気ガス用の流調弁7A.7Bが設けられている。蓄熱器6A,6Bの低温側は切替弁8A,8Bを介して図示しない給気ブロアと排気ブロアに接続されている。また、蓄熱器6A,6Bの低温側は、冷却空気管9A,9Bが接続され、該冷却空気管9A,9Bは開閉弁10A,10Bを介して図示しない給気ブロアに接続されている。冷却空気管9A,9Bは給気ブロアに接続する代わりに大気に開放してもよい。
【0021】
エスケープ排ガス通路4A,4Bは、蓄熱器6A,6Bの高温側で、かつ、前記通常排ガス用の流調弁7A,7Bよりも蓄熱器6A,6B寄りの位置で、リジェネバーナ3A.3Bに接続されている。エスケープ排ガス通路4A,4Bには、エスケープ排ガス用の流調弁11A,11Bが設けられている。また、エスケープ排ガス通路4A,4Bには、アフターバーン空気管12A,12Bが接続され、該アフターバーン空気管12A,12Bは開閉弁13A,13Bを介して前記冷却空気管9A,9Bとともに図示しない給気ブロアに接続されている。
【0022】
次に、右側のリジェネバーナ3Bを燃焼し、左側のリジェネバーナ3Aで排ガスを吸引する場合の、炉の動作を説明する。右側のリジェネバーナ3Bの流調弁7Bを開き、エスケープ排ガス通路4Bの流調弁11Bを閉じ、切替弁8Bを給気ブロア側に切り替えて、リジェネバーナ3Bを燃焼状態とする。一方、左側のリジェネバーナ3Aの流調弁7Aとエスケープ排ガス通路4Aの流調弁11Aを共に開き、切替弁8Aを排気ブロア側に切り替えて、左側のリジェネバーナ3Aを吸引状態とする。
【0023】
右側のリジェネバーナ3Bでは、給気ブロアにより切替弁8Bを介して供給される空気は蓄熱器6Bを通過し、ここで蓄熱状態にある蓄熱体により加熱され、燃料ノズル5Bからの燃料を燃焼させて、拡散火炎を形成する。炉内の約1300℃の燃焼排ガスのうち、約80パーセントは炉内上部を右側から左側に流動して左側のリジェネバーナ3Aに吸引され、残りの約20パーセントは炉内上部から下部に向かって流動して左側のエスケープ排ガス通路4Aに流入する。これにより、被加熱物2に対する良好な温度分布を確保することができ、被加熱物2を均一に加熱することができる。
【0024】
左側のリジェネバーナ3Aに吸引された通常排ガスは、蓄熱器6Aを通過し、ここで蓄熱体に熱を奪われて温度が約200℃に低下し、切替弁8Aを通って排気ブロアにより大気に排気される。左側のエスケープ排ガス通路4Aに流入したエスケープ排ガスは、左側のリジェネバーナ3Aの蓄熱器6Aの高温側に導入され、通常排ガスの流れに合流して、通常排ガスとともに蓄熱体を通過し、大気に排気される。
【0025】
左側のリジェネバーナ3Aの通常排ガス用の流調弁7Aと、エスケープ排ガス用の流調弁11Aを適宜調整して、通常排ガスとエスケープ排ガスの流量配分を厳密に制御することができる。例えば、被加熱物2の大きさや形状によりエスケープ排ガスが少なくても適度な温度分布を確保できるような場合には、通常排ガスの流量を多くし、エスケープ排ガスの流量を少なくすることができる。
【0026】
左側のリジェネバーナ3Aを燃焼し、右側のリジェネバーナ3Bで排ガスを吸引する場合は、前述の動作とは逆の動作を行えばよいので説明を省略する。
【0027】
本発明のリジェネレータ設置炉では、通常排ガスにエスケープ排ガスを含めた排ガス全量を蓄熱器6A,6Bに導入することになるので、通常のリジェネバーナよりも大型の蓄熱器6A,6Bが必要であり、また切替弁8A,8Bの耐熱性も要求される。しかし、左側の開閉弁10Aを開いて給気ブロアにより蓄熱器6Aの低温側に冷却空気を導入することで、排ガス温度を低下することができるので、耐熱性のある切替弁8A,8Bを設ける必要がなくなる。冷却空気は給気ブロアにより供給しなくても、排ガス吸引時の吸引圧力を利用して大気から吸引することもできる。
【0028】
還元燃焼時には、排ガスを吸引している左側のリジェネバーナ3Aの開閉弁13Aを開いて給気ブロアによりエスケープ排ガス通路4Aにアフターバーン空気を導入し、エスケープ排ガス通路4Aを通るエスケープ排ガス中の未燃分を完全燃焼させることができる。また、エスケープ排ガス通路4Aを通るエスケープ排ガス中の未燃分だけでなく、蓄熱器6Aの上流側でエスケープ排ガスが合流する通常排ガス中の未燃分も燃焼させるだけのアフターバーン空気を導入することが好ましい。
【0029】
本発明のリジェネレータ設置炉では、前記実施形態のように、1対のリジェネバーナ3A,3Bの各々に対してエスケープ排ガス通路4A,4Bの流入口を対応させているが、リジェネバーナ設置台数とエスケープ排ガス通路の流入口数は、炉内温度分布をより均一にするために適宜設定することができる。例えば、図2に示すように、2対のリジェネバーナ3A,3B,3’A,3’Bに対してエスケープ排ガス通路4A,4Bの流入口を4カ所に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るリジェネバーナ設置炉の実施形態の概略断面図。
【図2】本発明に係るリジェネバーナ設置炉の他の実施形態の概略平面図。
【図3】従来の大型のリジェネバーナ設置炉の概略断面図。
【図4】従来の中小型バッチ炉の概略断面図。
【図5】従来の中小型のリジェネバーナ設置炉の概略断面図。
【符号の説明】
【0031】
1 炉体
2 被加熱物
3A,3B リジェネバーナ
6A,6B 蓄熱器
7A,7B 流調弁
9A、9B 冷却空気管
11A,11B 流調弁
12A,12B アフターバーン空気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体の上部に一対のリジェネバーナを設置し、下部にエスケープ排ガス通路を設置した炉において、前記エスケープ排ガス通路を前記1対のリジェネバーナのうち吸引側のリジェネバーナの蓄熱器の高温側に接続して、エスケープ排ガスを前記蓄熱器に導入するようにしたことを特徴とするリジェネバーナ設置炉。
【請求項2】
前記エスケープ排ガス通路にエスケープ排ガスの流量を調整する流調弁を設けたことを特徴とする請求項1に記載のリジェネバーナ設置炉。
【請求項3】
前記1対のリジェネバーナのうち吸引側のリジェネバーナの蓄熱器の高温側に、前記吸引側リジェネバーナで吸引した通常排ガスの流量を調整する流調弁を設けたことを特徴とする請求項2に記載のリジェネバーナ設置炉。
【請求項4】
前記吸引側のリジェネレータの蓄熱器の低温側に冷却空気通路を接続し、前記蓄熱器を通過した排ガスを冷却空気で冷却するようにしたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のリジェネバーナ設置炉。
【請求項5】
前記エスケープ排ガス通路にアフターバーン空気通路を接続し、前記蓄熱器に導入するエスケープ排ガス又は通常排ガスをアフターバーン空気で燃焼させるようにしたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のリジェネバーナ設置炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−3036(P2007−3036A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180945(P2005−180945)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【出願人】(000141808)株式会社宮本工業所 (22)
【Fターム(参考)】