説明

リソグラフィー用共重合体の評価方法

【課題】リソグラフィー用共重合体の、リソグラフィー用組成物としたときのリソグラフィー特性を、実際にリソグラフィー用組成物を調製しなくても評価できる方法を提供する。
【解決手段】下記工程を含むリソグラフィー用共重合体の評価方法:
(1)リソグラフィー用共重合体を溶媒に溶解させて試験溶液を調製する工程;
(2)動的光散乱法を用いて、前記試験溶液の粒径分布における散乱強度を測定する工程;
(3)前記試験溶液に貧溶媒を添加し、動的光散乱法を用いて、前記貧溶媒添加後の試験溶液の粒径分布における散乱強度を測定する工程;
(4)前記(2)工程において測定される、粒径分布の任意のピーク(a)の散乱強度を基準とした場合に、貧溶媒の添加により、前記(3)工程において測定される、前記ピーク(a)の散乱強度が、前記基準に対して所定の強度に減少するまでに要する貧溶媒添加量を求める工程;
(5)前記貧溶媒添加量の差異により、前記リソグラフィー用共重合体を含む組成物のリソグラフィー特性を評価する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリソグラフィー用共重合体の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子、液晶素子等の製造工程においては、近年、リソグラフィーによるパターン形成の微細化が急速に進んでいる。微細化の手法としては、照射光の短波長化がある。
最近では、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)リソグラフィー技術が導入され、さらなる短波長化を図ったArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィー技術及びEUVエキシマレーザー(波長:13nm)リソグラフィー技術が研究されている。
また、例えば、照射光の短波長化およびパターンの微細化に好適に対応できるレジスト組成物として、酸の作用により酸脱離性基が脱離してアルカリ可溶性となる重合体と、光酸発生剤とを含有する、いわゆる化学増幅型レジスト組成物が提唱され、その開発および改良が進められている。
【0003】
ArFエキシマレーザーリソグラフィーにおいて用いられる化学増幅型レジスト用重合体としては、波長193nmの光に対して透明なアクリル系重合体が注目されている。
例えば下記特許文献1には、単量体として、(A)ラクトン環を有する脂環式炭化水素基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステル、(B)酸の作用により脱離可能な基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステル、および(C)極性の置換基を有する炭化水素基または酸素原子含有複素環基がエステル結合している(メタ)アクリル酸エステルを用いてなるレジスト用の共重合体が記載されている。
【0004】
ところで、レジスト用の共重合体は、これを含有するレジスト組成物を使用して良好なパターンを形成できるかどうかが重要である。かかるレジスト用共重合体の評価は、実際にレジスト組成物を調製して、該レジスト組成物の各種現像特性等を測定する方法が一般的である。
また下記特許文献2、3には、レジスト用共重合体を含む樹脂をレジスト溶剤に溶解させ、該溶液についての動的光散乱を測定して得られる特定のパラメータから、該樹脂を用いたレジスト組成物における現像欠陥の発生度合い、パターン寸法のばらつき(LER)の度合い、または液中異物発生の度合いを予測する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−145955号公報
【特許文献2】特開2005−091407号公報
【特許文献3】特開2009−037184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2、3のように、実際にレジスト組成物を調製して現像を行わなくても、レジスト用共重合体の、レジスト組成物としたときの性能を評価できる方法は、簡便であるうえ、共重合体以外の成分の影響を排除できるため、共重合体自身の性能を厳密に評価する方法として有用である。
しかしながら、次世代レジスト用共重合体の分子量分布・組成分布は、精密に制御されているところ、かかる方法により得られる僅かな構造の差異や現像特性の差異を有する共重合体同士を評価する場合は、上記特許文献に記載の方法では検出精度に問題があり、各共重合体の差異を検出することができない。よって、次世代に求められる微細パターンに対応した寸法の均一性や現像欠陥の発生頻度を反映する評価方法となっていないのが現状である。
【0007】
また、レジスト用共重合体以外のリソグラフィー用共重合体、例えばリソグラフィー工程において、レジスト膜の上層若しくは下層に形成される反射防止膜、ギャップフィル膜、トップコート膜等の薄膜形成に用いられる共重合体についても同様に、これを含有するリソグラフィー用組成物が、高精度の微細加工を行うための性能(リソグラフィー特性)を備えているかどうかが重要である。そして、実際にリソグラフィー用組成物を調製してリソグラフィー工程を行わなくても、リソグラフィー用共重合体の、リソグラフィー用組成物としたときの性能を評価できる方法が望まれている。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、リソグラフィー用共重合体の、リソグラフィー用組成物としたときのリソグラフィー特性を、実際にリソグラフィー用組成物を調製しなくても評価でき、且つ、樹脂としての解像性や溶解性能の均一性を厳格に評価できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、下記工程を含むリソグラフィー用共重合体の評価方法である。
(1)リソグラフィー用共重合体を溶媒に溶解させて試験溶液を調製する工程;
(2)動的光散乱法を用いて、前記試験溶液の粒径分布における散乱強度を測定する工程;
(3)前記試験溶液に貧溶媒を添加し、動的光散乱法を用いて、前記貧溶媒添加後の試験溶液の粒径分布における散乱強度を測定する工程;
(4)前記(2)工程において測定される、粒径分布の任意のピーク(a)の散乱強度を基準とした場合に、貧溶媒の添加により、前記(3)工程において測定される、前記ピーク(a)の散乱強度が、前記基準に対して所定の強度に減少するまでに要する貧溶媒添加量を求める工程;
(5)前記貧溶媒添加量の差異により、前記リソグラフィー用共重合体を含む組成物のリソグラフィー特性を評価する工程。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、リソグラフィー用共重合体を含むリソグラフィー用組成物の特性を、実際にリソグラフィー用組成物を調整しなくても評価することができる。
また、本発明の方法によれば、貧溶媒の添加によって、溶液に対する共重合体の濃度を相対的に上げることで、各共重合体の微小な差を拡大して検出できるため、従来の方法では測定の精度や誤差と同程度になってしまうような微小な差異を有する共重合体を比較することができ、高精度の評価が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシを意味する。
【0012】
<リソグラフィー用共重合体>
本発明において評価の対象となるリソグラフィー用共重合体は、リソグラフィー工程に用いられる共重合体であれば、特に限定されずに適用することができる。
例えば、レジスト膜の形成に用いられるレジスト用共重合体、レジスト膜の上層に形成される反射防止膜(TARC)、またはレジスト膜の下層に形成される反射防止膜(BARC)の形成に用いられる反射防止膜用共重合体、ギャップフィル膜の形成に用いられるギャップフィル膜用共重合体、トップコート膜の形成に用いられるトップコート膜用共重合体が挙げられる。
【0013】
レジスト用共重合体の例としては、酸脱離性基を有する構成単位の1種以上と、極性基を有する構成単位の1種以上とを含む共重合体が挙げられる。
【0014】
反射防止膜用共重合体の例としては、吸光性基を有する構成単位と、レジスト膜と混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能なアミノ基、アミド基、ヒドロキシル基、エポキシ基等の反応性官能基を有する構成単位とを含む共重合体が挙げられる。
吸光性基とは、レジスト組成物中の感光成分が感度を有する波長領域の光に対して、高い吸収性能を有する基であり、具体例としては、アントラセン環、ナフタレン環、ベンゼン環、キノリン環、キノキサリン環、チアゾール環等の環構造(任意の置換基を有していてもよい。)を有する基が挙げられる。特に、照射光として、KrFレーザ光が用いられる場合には、アントラセン環又は任意の置換基を有するアントラセン環が好ましく、ArFレーザ光が用いられる場合には、ベンゼン環又は任意の置換基を有するベンゼン環が好ましい。
【0015】
上記任意の置換基としては、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、又はアミド基等が挙げられる。
これらのうち、吸光性基として、保護された又は保護されていないフェノール性水酸基を有するものが、良好な現像性・高解像性の観点から好ましい。
上記吸光性基を有する構成単位・単量体として、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
ギャップフィル膜用共重合体の例としては、狭いギャップに流れ込むための適度な粘度を有し、レジスト膜や反射防止膜との混合を避けるため、硬化剤などと反応して硬化可能な反応性官能基を有する構成単位を含む共重合体、具体的にはヒドロキシスチレンと、スチレン、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の単量体との共重合体が挙げられる。
液浸リソグラフィーに用いられるトップコート膜用共重合体の例としては、カルボキシル基を有する構成単位を含む共重合体、水酸基が置換したフッ素含有基を有する構成単位を含む共重合体等が挙げられる。
【0017】
これらのリソグラフィー用共重合体を分子設計通りに共重合反応させることは容易でなく、分子量や単量体の組成比にばらつきが生じる。また分子設計が同じでも、製造方法が違うと、分子量や単量体の組成比におけるばらつきの度合いが異なり、リソグラフィー工程にあってはかかる製造方法の違いだけでも性能に差が生じ得る。本発明の評価方法によれば、そのような製造方法の違いによる性能の差も評価できるため、リソグラフィー用共重合体は本発明における評価対象の共重合体として好ましい。
【0018】
<レジスト用共重合体>
以下、リソグラフィー用共重合体の代表例としてレジスト用共重合体(以下、単に共重合体ということもある。)を挙げて本発明を説明するが、他のリソグラフィー用共重合体も同様に適用できる。
レジスト用共重合体は、レジスト膜の形成に用いられる共重合体であれば、特に限定されずに適用することができる。
【0019】
具体的には、酸脱離性基を有する構成単位の1種以上と、極性基を有する構成単位の1種以上とを含むレジスト用共重合体が好ましい。該レジスト用共重合体は、酸脱離性基を有する単量体の1種以上と、極性基を有する単量体の1種以上とからなる単量体混合物を重合して得られる。
【0020】
[酸脱離性基を有する構成単位・単量体]
「酸脱離性基」とは、酸により開裂する結合を有する基であり、該結合の開裂により酸脱離性基の一部または全部が共重合体の主鎖から脱離する基である。
酸脱離性基を有する構成単位を含む共重合体は、レジスト組成物として用いた場合、酸によってアルカリに可溶となり、レジストパターンの形成を可能とする作用を奏する。
酸脱離性基を有する構成単位の含有量は、感度および解像度の点から、共重合体を構成する全構成単位のうち、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、基板等への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0021】
酸脱離性基を有する単量体は、酸脱離性基、および重合性多重結合を有する化合物であればよく、公知のものを使用できる。重合性多重結合とは重合反応時に開裂して共重合鎖を形成する多重結合であり、エチレン性二重結合が好ましい。
【0022】
酸脱離性基を有する単量体の具体例として、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有し、かつ酸脱離性基を有している(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。該脂環式炭化水素基は、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子と直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して結合していてもよい。
該(メタ)アクリル酸エステルには、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、(メタ)アクリル酸エステルのエステル結合を構成する酸素原子との結合部位に第3級炭素原子を有する(メタ)アクリル酸エステル、または、炭素数6〜20の脂環式炭化水素基を有するとともに、該脂環式炭化水素基に−COOR基(Rは置換基を有していてもよい第3級炭化水素基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、またはオキセパニル基を表す。)が直接または連結基を介して結合している(メタ)アクリル酸エステルが含まれる。
【0023】
特に、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト組成物を製造する場合には、酸脱離性基を有する単量体の好ましい例として、例えば、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−(1’−アダマンチル)−1−メチルエチル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1−メチルシクロペンチル(メタ)アクリレート、1−エチルシクロペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
酸脱離性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
[極性基を有する構成単位・単量体]
「極性基」とは、極性を持つ官能基または極性を持つ原子団を有する基であり、具体例としては、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、フッ素原子を含む基、硫黄原子を含む基、ラクトン骨格を含む基、アセタール構造を含む基、エーテル結合を含む基などが挙げられる。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用共重合体は、極性基を有する構成単位として、ラクトン骨格を有する構成単位を有することが好ましく、さらに後述の親水性基を有する構成単位を有することが好ましい。
【0025】
(ラクトン骨格を有する構成単位・単量体)
ラクトン骨格としては、例えば、4〜20員環程度のラクトン骨格が挙げられる。ラクトン骨格は、ラクトン環のみの単環であってもよく、ラクトン環に脂肪族または芳香族の炭素環または複素環が縮合していてもよい。
共重合体がラクトン骨格を有する構成単位を含む場合、その含有量は、基板等への密着性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、20モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0026】
ラクトン骨格を有する単量体としては、基板等への密着性に優れる点から、置換あるいは無置換のδ−バレロラクトン環を有する(メタ)アクリル酸エステル、置換あるいは無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、無置換のγ−ブチロラクトン環を有する単量体が特に好ましい。
【0027】
ラクトン骨格を有する単量体の具体例としては、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−δ−バレロラクトン、4,4−ジメチル−2−メチレン−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイルオキシ−β−メチル−γ−ブチロラクトン、α−(メタ)アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、2−(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチル−4−ブタノリド、(メタ)アクリル酸パントイルラクトン、5−(メタ)アクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン、8−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン、9−メタクリロキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6 ]デカン−3−オン等が挙げられる。また、類似構造を持つ単量体として、メタクリロイルオキシこはく酸無水物等も挙げられる。
ラクトン骨格を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(親水性基を有する構成単位・単量体)
本明細書における「親水性基」とは、−C(CF−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
これらのうちで、波長250nm以下の光で露光するパターン形成方法に適用されるレジスト用共重合体は、親水性基としてヒドロキシ基、シアノ基を有することが好ましい。
共重合体における親水性基を有する構成単位の含有量は、レジストパターン矩形性の点から、全構成単位(100モル%)のうち、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。
【0029】
親水性基を有する単量体としては、例えば、末端ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリ酸エステル、単量体の親水性基上にアルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等の置換基を有する誘導体、環式炭化水素基を有する単量体((メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1−イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル等。)が置換基としてヒドロキシ基、カルボキシ基等の親水性基を有する単量体が挙げられる。
【0030】
親水性基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。基板等に対する密着性の点から、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル、2−または3−シアノ−5−ノルボルニル(メタ)アクリレート、2−シアノメチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
親水性基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
<リソグラフィー用共重合体の製造方法>
以下、リソグラフィー用共重合体の製造方法の代表例としてレジスト用共重合体の製造方法を挙げて説明するが、他のリソグラフィー用共重合体も同様に適用できる。
レジスト用共重合体は、ラジカル重合法によって得ることができる。重合方法は特に限定されず、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法を適宜用いることができる。
特に、光線透過率を低下させないために、重合反応終了後に残存する単量体を除去する工程を容易に行える点、重合体の分子量を比較的低くしやすい点から、溶液ラジカル重合法が好ましい。そのうちで、製造ロットの違いによる平均分子量、分子量分布等のばらつきが小さく、再現性のある重合体を簡便に得やすい点から、滴下重合法が更に好ましい。
【0032】
滴下重合法においては、重合容器内を所定の重合温度まで加熱した後、単量体及び重合開始剤を、各々独立に、又は任意の組み合わせで、重合容器内に滴下する。単量体は、単量体のみで滴下してもよく、又は単量体を溶媒に溶解させた単量体溶液として滴下してもよい。重合容器に予め溶媒を仕込んでもよく、仕込まなくてもよい。重合容器に予め溶媒を仕込まない場合、単量体または重合開始剤は、溶媒がない状態で重合容器中に滴下される。
【0033】
上記重合開始剤は、単量体に直接に溶解させてもよく、単量体溶液に溶解させてもよく、又は溶媒のみに溶解させてもよい。単量体及び重合開始剤は、同じ貯槽内で混合した後、重合容器中に滴下してもよく、各々独立した貯槽から重合容器中に滴下してもよい。または、各々独立した貯槽から重合容器に供給する直前で混合して、重合容器中に滴下してもよい。上記単量体及び重合開始剤は、一方を先に滴下した後、遅れて他方を滴下してもよく、両方を同じタイミングで滴下してもよい。
なお、滴下速度は、滴下終了まで一定であってもよく、又は単量体や重合開始剤の消費速度に応じて、多段階に変化させてもよい。滴下は、連続的又は間欠的に行ってもよい。
【0034】
上記溶液ラジカル重合による滴下重合法を用いる場合、重合初期に重合開始剤及び/又は単量体の供給速度を上げて高分子量体の生成を抑制する方法を用いることができる。
一般的に、滴下重合法において、単量体と重合開始剤を同一滴下時間、かつ均一速度で滴下する場合、重合初期に高分子量体が生成する傾向がある。そこで、重合初期に重合開始剤の供給速度を上げることにより、重合開始剤の分解を促進させて、ラジカルの生成・失活を定常的に発生させ、該ラジカル中に単量体を滴下することで、重合初期における高分子量体の生成を抑制することができる。具体的には、二種以上の滴下液を調製し、各々の滴下液の供給速度を多段階に変化させる方法や、重合容器内に予め溶剤と重合開始剤の一部量又は全量を仕込み、次いで、各種単量体及び/又は残りの重合開始剤等を含有する滴下液を滴下する方法等が挙げられる。
【0035】
また一般的に、滴下重合法において、反応性の異なる2種以上の単量体と重合開始剤を同一滴下時間、かつ均一速度で滴下する場合、反応性の高い単量体の重合が先に進行し、その結果、特に重合初期に生成する高分子量体の中に、組成が不均一な共重合体が多く含まれる傾向がある。
かかる重合初期における、組成の不均一な高分子量体の生成を抑制する方法として、例えば、重合に用いられる各単量体の反応性比に応じて、反応器内にモノマーを先仕込みして、重合初期から定常状態で重合させることにより、組成の均一なポリマーを製造する方法がある。
【0036】
更に、上記重合初期における高分子量体の生成を抑制する方法と、上記重合初期における、組成の不均一な高分子量体の生成を抑制する方法とを組み合わせると、分子量及び組成が更に均一な共重合体を得ることができるため好ましい。
【0037】
上記製造方法によれば、共重合体における構成単位の組成比や分子量のばらつきが小さくなりやすい。構成単位の組成比や分子量のばらつきが小さいと、溶媒への溶解性が良好であり、かつレジスト組成物に用いたときに高い感度が得られる。
【0038】
<評価方法>
本発明の評価方法は、下記工程を含む:
(1)リソグラフィー用共重合体を溶媒に溶解させて試験溶液を調製する工程;
(2)動的光散乱法を用いて、前記試験溶液の粒径分布における散乱強度を測定する工程;
(3)前記試験溶液に貧溶媒を添加し、動的光散乱法を用いて、前記貧溶媒添加後の試験溶液の粒径分布における散乱強度を測定する工程;
(4)前記(2)工程において測定される、粒径分布の任意のピーク(a)の散乱強度を基準とした場合に、貧溶媒の添加により、前記(3)工程において測定される、前記ピーク(a)の散乱強度が、前記基準に対して所定の強度に減少するまでに要する貧溶媒添加量を求める工程;
(5)前記貧溶媒添加濃度の差異により、前記リソグラフィー用共重合体を含む組成物のリソグラフィー特性を評価する工程。
【0039】
<(1)工程>
上記試験溶液は、レジスト用共重合体を溶媒に溶解させて調製する。上記溶媒は、良溶媒であることが好ましい。試験溶液中におけるレジスト用共重合体の含有量は、15質量%〜25質量%が好ましく、18質量%〜22質量%が更に好ましい。なお、上記レジスト用共重合体は、良溶媒に完全に溶解していることが好ましい。
本評価方法では、貧溶媒の添加によって、溶液に対する共重合体の濃度を相対的に上げ、良好に溶解する濃度から飽和に近づく変化の様子を観察している。15質量%〜25質量%の濃度であれば、飽和状態に解離しすぎず、近すぎもしないため、貧溶媒の添加による、良好に溶解する状態から飽和状態への変化が最も観察しやすい。
また、本評価方法では、貧溶媒の添加による粒子の増大の様子を観察しているが、重合体が溶媒に完全に溶解していない場合、溶解していない粒子を核として、粒子の増大が生じる場合があり、完全に溶解していない溶液は、本評価方法には望ましくない。
【0040】
本明細書における良溶媒とは、常温(25℃)において、レジスト用共重合体を、5質量倍量以下の溶媒量で完全に溶解できる溶媒をいう。特に3質量倍量以下の溶媒量でレジスト用共重合体を完全に溶解できるものを用いることが好ましい。試験溶液に用いる良溶媒は1種単独の溶媒でもよく2種以上の混合物でもよい。混合溶媒の場合は、混合後に上記良溶媒の条件を満たすものであれば、良溶媒として用いることができる。
なお、本明細書において、「完全に溶解」とは、溶液に溶解しているレジスト用共重合体を用いて形成されたレジスト膜が、透明性を示さない波長を用いて測定された透過率が100%である状態を言う。例えばレジスト用共重合体がアクリル系重合体である場合には、測定波長として可視光領域の波長が好ましく、具体的には380nm〜780nmが好適である。
【0041】
一方、貧溶媒とは、常温(25℃)において、レジスト用共重合体に対し、5質量倍量の単独溶媒を加えて撹拌しても全く溶解しない溶媒をいう。特に10質量倍量の単独溶媒を加えても全く溶解しないものを用いることが好ましい。混合溶媒の場合は、混合後に上記貧溶媒の条件を満たすものであれば、貧溶媒として用いることができる。
【0042】
良溶媒としては、レジスト組成物を調製する際に用いられる公知のレジスト溶媒から適宜選択して用いることができる。1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
好ましい良溶媒の具体例としては、テトラヒドロフラン、1,4―ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0043】
貧溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水などを用いることができる。貧溶媒は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、評価対象のレジスト用共重合体がアクリル系共重合体である場合、良溶媒としてPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、乳酸エチル、THF(テトラヒドロフラン)を用い、貧溶媒としてIPE(ジイソプロピルエーテル)、ヘキサン、ヘプタン、メタノールを用いることが好ましい。
【0044】
<(2)工程>
上記試験溶液調整後、動的光散乱法を用いて、前記試験溶液の粒径分布における散乱強度を測定する。なお、一般に粒径分布を測定する方法としては、例えば、レーザー回折法、遠心沈降法、FFF法(Field Flow Fractionation)、電気的検知帯法等が挙げられるが、本発明では、重合体の粒径、溶液状態での測定が可能などの点から、動的光散乱法を用いて評価を行った。
【0045】
粒径分布測定の測定温度は、特に限定されないが、15℃〜35℃が好ましく、より好ましくは、20℃〜30℃である。粒径分布には溶液粘度が関連しており、溶液粘度は温度に敏感であるため、温度が安定しやすい、室温に近い温度で測定を行うことが好ましい。
【0046】
<(3)工程>
次いで、上記試験溶液に、貧溶媒を添加した後に、動的光散乱法を用いて、試験溶液の粒径分布における散乱強度を測定する。
【0047】
上記(2)工程同様に、粒径分布測定の測定温度は、特に限定されないが、15℃〜35℃が好ましく、より好ましくは、20℃〜30℃である。粒径分布には溶液粘度が関連しており、溶液粘度は温度に敏感であるため、温度が安定しやすい、室温に近い温度で測定を行うことが好ましい。
また、貧溶媒については、上述のとおりである。
【0048】
<(4)工程>
次いで、前記(2)工程において測定される、粒径分布の任意のピーク(a)の散乱強度を基準とした場合に、貧溶媒の添加により、前記(3)工程において測定される、前記ピーク(a)の散乱強度が、前記基準に対する所定の強度に減少するまでに要する貧溶媒添加量を求める。
なお、貧溶媒を徐々に添加することにより、上記散乱強度の減少が生じる理由として、貧溶媒の添加により、高分子量体や組成の不均一な重合体が析出しやすくなり、共重合体粒子の凝集等が生じて、粒径分布に変化が生じるためと考えられる。
上記貧溶媒添加量を求める方法は、特に限定されないが、例えば、下記方法により測定することができる。
【0049】
[貧溶媒添加量(M値)を求める方法]
上記(2)工程及び(3)工程で測定される、粒径分布の任意のピーク強度(a)は、特に限定されないが、定量性・再現性の観点から、最大の散乱強度を示す粒径におけるピーク(a)を採用することが好ましい。
また、上記(3)工程において測定される、前記ピーク(a)の散乱強度が、前記基準に対して所定の強度に減少するまでに要する貧溶媒添加量を求める場合の「所定の強度」とは、特に限定されないが、定量性・再現性の観点から、上記基準に対して10%〜90%、好ましくは40%〜60%、更に好ましくは50%の強度とすることが好ましい。
以下、本発明の一実施態様について、貧溶媒無添加時の最大の散乱強度を示す粒径におけるピーク(a)を基準とした場合に貧溶媒の添加により、当該ピーク(a)が、当該基準に対して50%に減少するまでに要する貧溶媒添加量(M値:質量%)と称して説明する。
【0050】
まず、レジスト用共重合体の試験溶液(例えば、共重合体濃度が20質量%)を調製し、粒径分布測定を行う。得られる粒径分布から、最大の散乱強度を示す粒径Rにおける散乱強度(S)を求める。
【0051】
続いて、上記試験溶液に、上記試験溶液に対して、m質量%の貧溶媒を添加し、十分に攪拌を行い、粒径分布測定を行う。得られる粒径分布から、貧溶媒無添加時に最大の散乱強度を示した粒径Rにおける散乱強度Sを求める。さらに、粒径Rにおける散乱強度の、貧溶媒添加による減少を示すS/Sを求める。
【0052】
ここで、貧溶媒の添加量mは、30%<S/S<70%となる範囲で行うのが好ましく、より好ましくは10%<S/S<90%となる範囲で添加するのがよい。また該範囲でmが、好ましくは4点以上、より好ましくは6点以上とれるように、mの添加量を調節するのが好ましい。これらは、測定点を多く、測定範囲を広くすることで、評価の精度を上げるためである。
得られたデータから、上記粒径Rにおける散乱強度が、貧溶媒の添加によって、S/S=50%となる貧溶媒添加量(濃度)を求め、これをM値(質量%)とする。
上記M値は、測定する試験溶液に含まれる共重合体の物性、共重合体の重量平均分子量や組成の相違、溶液の濃度等により値が異なるため、同組成・同分子量で、重合方法の異なる共重合体同士の比較に用いることが好ましい。
【0053】
上記M値は、後述の実施例に示されるように、レジスト用共重合体をレジスト組成物としたときの感度と相関している。すなわち、共重合体の物性、共重合体の重量平均分子量や組成等の相違がない場合には、上記M値が大きいほど感度が良い。したがって、上記M値を用いて感度の評価を行うことができる。
また、感度が良いということは、レジスト組成物の露光後のアルカリ溶解性が良好であることを意味しており、例えば、現像欠陥(ディフェクト)、およびパターン寸法のばらつき(LER)等の現像特性も良いと推測される。すなわち、感度が良いということは、現像特性等のリソグラフィー特性も良いと推測される。
【0054】
なお、後述の実施例に示されるように、貧溶媒の添加により粒径の増大を引き起こしやすい成分は、共重合体のうちでも比較的高分子量の成分であり、かつ構成単位の組成が設計値から比較的大きく外れている成分である。このことから、該成分は共重合体の不均一性を増大させる成分であると考えられる。そして本発明におけるM値が大きいほど、かかる共重合体における均一性が高いことを意味し、均一性が高いために感度等の現像特性が良くなっていると考えられる。
したがって、本発明の評価方法を用いることによって、レジスト用組成物の現像特性の評価だけでなく、リソグラフィー用共重合体の均一性によって変動するリソグラフィー特性の評価が可能である。
【0055】
本発明の評価方法におけるM値が大きいリソグラフィー用共重合体およびこれを含有するリソグラフィー組成物は、共重合体全体における分子量の均一性が高い。したがって、共重合体の分子量の均一性が高いと向上するリソグラフィー特性が良好である。
【0056】
なお、本発明の評価方法は、貧溶媒の添加によって、溶液に対する共重合体の濃度を相対的に上げることで、各共重合体の微小な差を拡大して検出できるため、僅かな構造の差異や現像特性の差異を有する共重合体同士を比較する場合でも、評価方法の精度や誤差による影響を抑えることができ、結果として、高精度な評価を行えると推定される。
【0057】
また、同様の原理により、共重合体の析出点(曇点)を評価に用いることもできる。
例えば、レジスト用共重合体の試験溶液に貧溶媒を添加していき、共重合体の析出を目視等で確認した時の貧溶媒添加量(質量%)も、共重合体の均一性と相関するので、現像特性やリソグラフィー特性を評価することが可能である。より定量的には、レジスト用共重合体の試験溶液に、例えば、波長450nmにおける透過率が85±3%となるまで貧溶媒を添加すると、この時析出する成分は、共重合体のうちでも比較的高分子量の成分であり、かつ構成単位の組成が設計値から比較的大きく外れている成分である。このことから、該成分は共重合体の不均一性を増大させる成分であると考えられる。そして本発明における曇点が大きいほど、かかる共重合体における均一性が高いことを意味する。よってM値と同様に、共重合体の均一性の評価をすることで、レジスト用組成物の現像特性やリソグラフィー特性を評価することが可能である。
なお、特に限定されないが、再現性・定量性等の観点から、上記曇点評価は、室温で行うことで好ましい。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
下記の製造例1〜4では、極性基を有する単量体としてα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(α−GBLMA)、およびメタクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル(HAdMA)を用い、酸脱離性基を有する単量体として1−エチルシクロヘキシルメタクリレート(ECHMA)を用いた。分子設計における構成単位の組成比はα−GBLMA:ECHMA:HAdMA=40:40:20(モル%)とし、重合の手順を変えて、4種の共重合体A〜Dを製造した。溶剤および重合開始剤は同じものを使用した。
【0059】
なお、重合の手順の違いにより、ほぼ同等の組成・分子量の共重合体であっても、共重合体全体における構成単位の組成比の均一性等に差異を有する共重合体を得ることができる。
【0060】
[製造例1]
(工程1A)窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチル72.6部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
(工程2A)α−GBLMA30.6部、ECHMA35.3部、HAdMA21.2部、乳酸エチル130.7部、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V−601(製品名))2.6部を混合した混合溶液を滴下漏斗より一定速度で4時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を3時間保持した。
(工程3A)次いで、得られた反応溶液を約7倍量のメタノールと水との混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)に撹拌しながら滴下し、白色のゲル状物の沈殿を得た。得られた沈殿を濾別し、再び約7倍量のメタノールと水との混合溶媒(メタノール/水=85/15容量比)に投入した。これを濾別、回収し、減圧下60℃で約40時間乾燥し、共重合体Aの粉末を得た。
【0061】
[製造例2]
(工程1A’)製造例1の工程1Aとの違いは滴下漏斗を2個備えたフラスコを用いた点である。
(工程2A)製造例1の工程2Aと同様にして混合溶液を滴下した。
(工程2B)工程2Aにおける混合溶液の滴下開始と同時に、乳酸エチル3.7部、V−601(製品名)1.2部を混合した混合溶液を別の滴下漏斗より0.1時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を6.9時間保持した。
(工程3A)製造例1の工程3Aと同様の操作を行って共重合体Bの粉末を得た。
【0062】
[製造例3]
(工程1C)滴下漏斗を2個備えたフラスコを用い、滴下前にフラスコ内に単量体を仕込んだ。すなわち、窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチル88.8部、α−GBLMA3.1部、ECHMA5.5部、HAdMA2.3部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
(工程2A’)製造例1の工程2Aとは、混合溶液の組成が異なる。すなわちα−GBLMA26.8部、ECHMA30.9部、HAdMA18.6部、乳酸エチル112.5部、V−601(製品名)1.9部を混合した混合溶液を滴下漏斗より一定速度で4時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を3時間保持した。
(工程2B’)製造例2の工程2Bとは、混合溶液の組成が異なる。すなわち、工程2A’における混合溶液の滴下開始と同時に、乳酸エチル1.8部、V−601(製品名)0.7部を混合した混合溶液を別の滴下漏斗より0.1時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を6.9時間保持した。
(工程3A)製造例1の工程3Aと同様の操作を行って共重合体Cの粉末を得た。
【0063】
[製造例4]
(工程1C)製造例3の工程1Cと同様にして、滴下前にフラスコ内に単量体を仕込んだ。
(工程2A”)製造例3の工程2A’とは、乳酸エチルおよびV−601(製品名)の含有量が異なる。すなわち、α−GBLMA26.8部、ECHMA30.9部、HAdMA18.6部、乳酸エチル110.3部、V−601(製品名)0.7部を混合した混合溶液を滴下漏斗より一定速度で4時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を3時間保持した。
(工程2B”)製造例3の工程2B’とは、乳酸エチルおよびV−601(製品名)の含有量が異なる。すなわち、工程2A”の滴下開始と同時に、乳酸エチル4.0部、V−601(製品名)1.4部を混合した混合溶液を別の滴下漏斗より0.1時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を6.9時間保持した。
(工程3A)製造例1の工程3Aと同様の操作を行って共重合体Dの粉末を得た。
【0064】
下記の製造例5、6では、極性基を有する単量体としてα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(α−GBLMA)、およびメタクリル酸3−ヒドロキシアダマンチル(HAdMA)を用い、酸脱離性基を有する単量体として2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(MAdMA)を用いた。分子設計における構成単位の組成比はα−GBLMA:ECHMA:HAdMA=45:35:20(モル%)とし、重合の手順を変えて、2種の共重合体E、Fを製造した。溶剤および重合開始剤は同じものを使用した。なお、共重合体AとE、DとFは同様の工程により製造している。
【0065】
[製造例5]
(工程1A)窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチル76.7部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
(工程2A)α−GBLMA35.6部、MAdMA37.6部、HAdMA18.9部、乳酸エチル138.1部、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V−601(製品名))2.8部を混合した混合溶液を滴下漏斗より一定速度で4時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を3時間保持した。
(工程3A)次いで、得られた反応溶液を約7倍量のメタノールと水との混合溶媒(メタノール/水=80/20容量比)に撹拌しながら滴下し、白色のゲル状物の沈殿を得た。得られた沈殿を濾別し、再び約7倍量のメタノールと水との混合溶媒(メタノール/水=9/1容量比)に投入した。これを濾別、回収し、減圧下60℃で約40時間乾燥し、共重合体Eの粉末を得た。
【0066】
[製造例6]
(工程1C)滴下漏斗を2個備えたフラスコを用い、滴下前にフラスコ内に単量体を仕込んだ。すなわち、窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、乳酸エチル93.9部、α−GBLMA3.4部、MAdMA6.1部、HAdMA2.0部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
(工程2A”)製造例5の工程2Aとは、混合溶液の組成が異なる。すなわち、α−GBLMA31.1部、MAdMA32.9部、HAdMA16.5部、乳酸エチル116.5部、V−601(製品名)0.6部を混合した混合溶液を滴下漏斗より一定速度で4時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を3時間保持した。
(工程2B”)工程2Aにおける混合溶液の滴下開始と同時に、乳酸エチル4.3部、V−601(製品名)1.4部を混合した混合溶液を別の滴下漏斗より0.1時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を6.9時間保持した。
(工程3A)製造例5の工程3Aと同様の操作を行って共重合体Fの粉末を得た。
【0067】
下記の製造例7、8では、吸光性基を有する単量体としてベンジルメタクリレート(BzMA)、反応性官能基を有する単量体として2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、極性基を有する単量体としてα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(α−GBLMA)を用いた。分子設計における構成単位の組成比はBzMA:HEMA:α−GBLMA=25:25:50(モル%)とし、重合の手順を変えて、2種の共重合体G、Hを製造した。溶剤および重合開始剤は同じものを使用した。
【0068】
[製造例7]
(工程1A)窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)61.9部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
(工程2A)BzMA19.8部、HEMA16.2部、α−GBLMA38.3部、PGME111.5部、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート(和光純薬工業社製、V−601(製品名))6.7部を混合した混合溶液を滴下漏斗より一定速度で4時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を3時間保持した。
(工程2G)保持後、反応溶液の50質量%のPGMEをフラスコに投入し、反応溶液を希釈した。
(工程3A)次いで、得られた反応溶液を約4倍量のイソピロピルエーテル(IPE)に撹拌しながら滴下し、白色のゲル状物の沈殿を得た。これを濾別、回収し、減圧下60℃で約40時間乾燥し、共重合体Gの粉末を得た。
【0069】
[製造例8]
(工程1H)窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、滴下漏斗2個及び温度計を備えたフラスコに、窒素雰囲気下で、PGME98.3部を入れ、攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
(工程2A”)製造例7の工程2Aとは、混合溶液の組成が異なる。すなわち、BzMA17.8部、HEMA14.6部、α−GBLMA34.5部、PGME67.8部、V−601(製品名)2.1部を混合した混合溶液を滴下漏斗より一定速度で4時間かけてフラスコ中に滴下し、その後、80℃の温度を3時間保持した。
(工程2H)工程2Aにおける混合溶液の滴下開始と同時に、BzMA2.1部、HEMA1.8部、α−GBLMA2.9部、PGME5.9部、V−601(製品名)2.1部を混合した混合溶液を別の滴下漏斗より0.5時間かけてフラスコ内に滴下し、さらに80℃の温度を6.5時間保持した。
(工程2G)保持後、反応溶液の50質量%のPGMEをフラスコに投入し、反応溶液を希釈した。
(工程3A)製造例7の工程3Aと同様の操作を行って共重合体Hの粉末を得た。
【0070】
(レジスト用共重合体の重量平均分子量)
製造例1〜8で得た共重合体A〜Hについて重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を以下の方法で測定した。
約20mgのサンプルを5mLのTHFに溶解し、0.5μmのメンブランフィルターで濾過して試料溶液を調製し、この試料溶液を東ソー製ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)装置:HCL−8220(製品名)を用いて、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。この測定において、分離カラムは、昭和電工社製、Shodex GPC LF−804L(製品名)を3本直列にしたものを用い、溶剤はTHF(テトラヒドロフラン)、流量1.0mL/min、検出器は示差屈折計、測定温度40℃、注入量0.1mLで、標準ポリマーとしてポリスチレンを使用した。測定結果を表1、表3、表5に示す。
【0071】
(レジスト用共重合体における構成単位の組成比)
レジスト用共重合体における、各単量体に由来する各構成単位の組成比(単位:モル%)を、1H−NMRの測定により求めた。
この測定において、日本電子(株)製、JNM−GX270型 超伝導FT−NMRを用い、約5質量%のサンプル溶液(溶媒は重水素化ジメチルスルホキシド(A〜F)、重水素化クロロホルム(G、H))を直径5mmφのサンプル管に入れ、観測周波数270MHz、シングルパルスモードにて、H 64回の積算を行った。測定温度は測定溶媒が重水素化ジメチルスルホキシドの場合は60℃、重水素化クロロホルムの場合は40℃で行った。測定結果を表1、表3、表5に示す。
【0072】
(粒径分布測定による評価)
製造例1〜6で得た重合体A〜Fに関して、共重合体濃度が20質量%PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)溶液を調整後十分に撹拌を行い、均一な試験溶液を得た。この試験溶液を0.5μmのフィルター(有機溶媒用)で濾過した後、25.0℃において、動的光散乱測定を行った。得られる粒径分布から、最大の散乱強度を示す粒径Rにおける散乱強度(S)を求めた。
続いて、該試験溶液に、該試験溶液に対してm質量%の貧溶媒(ヘプタン)を添加し、十分に撹拌を行い、動的光散乱測定を行った。得られる粒径分布から、貧溶媒無添加時に最大の散乱強度を示した粒径Rにおける散乱強度Sを求めた。さらに、粒径Rにおける散乱強度の、貧溶媒添加による減少を示すS/Sを求めた。
20%<S/S<70%の範囲で、貧溶媒添加量mを8点取って測定を行い、得られたデータから、S/S=50%となる貧溶媒添加量(濃度)を求め、M(質量%)を求めた。
製造例7、8で得た重合体G、Hに関しては、溶媒にTHF(テトラヒドロフラン)、貧溶媒にIPE(イソプロピルエーテル)を用いた。
結果を表2、表4、表6に示す。
【0073】
(曇点評価)
製造例1〜6で得た重合体A〜Fに関して、20質量%PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)溶液を調整後十分に撹拌を行い、均一な試験溶液を得た。この試験溶液を撹拌しながら、(25.0℃において)貧溶媒(ヘプタン)を波長450nmにおける透過率が85±3%となるまで添加し、この時点(曇点)までの貧溶媒添加量(質量%)を求めた。
製造例7、8で得た重合体G、Hに関しては、溶媒にTHF(テトラヒドロフラン)、貧溶媒にIPE(イソプロピルエーテル)を用いた。
結果を表2、表4、表6に示す。
【0074】
(感度評価]
上記レジスト用共重合体A〜Fをそれぞれ用いてリソグラフィー用のレジスト組成物を調製し、これを用いてドライリソグラフィーを行ったときの感度を以下の方法で測定した。
(レジスト組成物の調製)
下記の配合成分を混合してレジスト組成物を得た。
レジスト用共重合体:10部、
光酸発生剤(みどり化学(株)社製、製品名:TPS−105、トリフェニルスルホニウムトリフレート):0.2部、
レベリング剤(日本ユニカー(株)社製、製品名:L−7001):0.2部、
溶媒(PGMEA):90部。
【0075】
(ドライリソグラフィー)
上記で得たレジスト組成物を、6インチシリコンウエハー上に回転塗布し、ホットプレート上で120℃、60秒間プリベーク(PB)して、厚さ300nmの薄膜を形成した。ArFエキシマレーザー露光装置(リソテックジャパン社製、製品名:VUVES−4500)を用い、露光量を変えて18ショットの露光を行った。1ショットは10mm×10mmの矩形領域に対する全面露光である。次いで110℃、60秒間のポストベーク(PEB)を行った後、レジスト現像アナライザー(リソテックジャパン社製、製品名:RDA−790)を用い、23.5℃にて2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で65秒間現像し、現像中のレジスト膜厚の経時変化を測定した。各露光量ごとに、初期膜厚に対する、60秒間現像した時点での残存膜厚の割合(以下、残膜率という。単位:%)を求めた。
【0076】
得られたデータを基に、露光量(mJ/cm )の対数と、初期膜厚に対する60秒間現像した時点での残存膜厚率(以下、残膜率という)(%)をプロットした曲線(以下、露光量残膜率曲線という)を作成し、露光量残膜率曲線が残膜率0%と交わる露光量(mJ/cm)(以下、Ethという)の値を求めた。Ethとは、残膜率0%とするための必要露光量であり、感度を表す。Ethが小さいほど感度が高い。結果を、表2、表4に示す。
【0077】
[溶解性評価]
上記リソグラフィー用共重合体G、Hをそれぞれ用いて溶解性評価用の溶液を調製し、溶液の温度は常温(25℃)とした。紫外可視分光光度計として、島津製作所社製、UV−3100PC(製品名)を用い、光路長10mmの石英製角型セルに測定用溶液を入れ、波長450nmにおける透過率を測定する方法で、溶解性評価を行った。該透過率が高いほど溶解性が良好であり、基材上に塗膜した際の面内におけるリソグラフィー性能のばらつき低減に結びつく。
(溶解性評価用の溶液調製)
下記の配合成分を混合して評価用溶液を得た。
リソグラフィー用共重合体:20部、
溶媒1(THF):80部、
溶媒2(IPE):8部。
【0078】
下記表1に重合体A〜Dの物性を示す。
【0079】
【表1】

【0080】
[実施例1〜4]
重合体A〜Dの粒径分布測定による評価結果(貧溶媒添加量)、曇点評価結果(曇点に到達するまでの貧溶媒添加量)を下記表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
下記表3に重合体E、Fの物性を示す。
【0083】
【表3】

【0084】
[実施例5、6]
重合体E、Fの粒径分布測定による評価結果(M値:貧溶媒添加量)、曇点評価結果(曇点に到達するまでの貧溶媒添加量)を下記表4に示す。
【0085】
【表4】

【0086】
下記表3に重合体E、Fの物性を示す。
【0087】
【表5】

【0088】
[実施例7、8]
重合体G、Hの粒径分布測定による評価結果(M値:貧溶媒添加量)、曇点評価結果(曇点に到達するまでの貧溶媒添加量)を下記表6に示す。
【0089】
【表6】

【0090】
表1に示すとおり、上記共重合体A〜Dは、ほぼ同等の組成・分子量の共重合体であるが、重合方法が異なる共重合体同士である。これらは重合方法の違いにより、共重合体における組成比の均一性等に差異を有する。
同様に、表3に示すとおり、上記共重合体E及びFは、ほぼ同等の組成・分子量共重合体であるが、重合方法が異なる共重合体同士である。これらは重合方法の違いにより、共重合体における組成比の均一性等に差異を有する。
同様に、表5に示すとおり、上記共重合体G及びHは、ほぼ同等の組成・分子量の共重合体であるが、重合方法が異なる共重合体同士である。これらは重合方法の違いにより、共重合体における組成比の均一性等に差異を有する。
なお、上記粒径分布測定による評価や曇点評価では、貧溶媒の添加量が多いほど、共重合体における組成比が均一性等を有することを示す。
上記表2、表4及び表6に示すとおり、上記共重合体同士の比較において、これらの本発明の方法の粒径分布測定による評価結果(貧溶媒添加量)、曇点評価結果(曇点に到達するまでの貧溶媒添加量)は、現像欠陥やLERと関連性のあるEth、または溶解性に関連のある透過率に相関関係が示され、間接的にリソグラフィー特性を評価することができることを確認した。
これらの結果より、本発明の方法は、高精度で、リソグラフィー特性の間接的な評価ができることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含むリソグラフィー用共重合体の評価方法:
(1)リソグラフィー用共重合体を溶媒に溶解させて試験溶液を調製する工程;
(2)動的光散乱法を用いて、前記試験溶液の粒径分布における散乱強度を測定する工程;
(3)前記試験溶液に貧溶媒を添加し、動的光散乱法を用いて、前記貧溶媒添加後の試験溶液の粒径分布における散乱強度を測定する工程;
(4)前記(2)工程において測定される、粒径分布の任意のピーク(a)の散乱強度を基準とした場合に、貧溶媒の添加により、前記(3)工程において測定される、前記ピーク(a)の散乱強度が、前記基準に対して所定の強度に減少するまでに要する貧溶媒添加量を求める工程;
(5)前記貧溶媒添加量の差異により、前記リソグラフィー用共重合体を含む組成物のリソグラフィー特性を評価する工程。

【公開番号】特開2011−48354(P2011−48354A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169285(P2010−169285)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】