説明

リチウムイオン二次電池

【課題】電池抵抗の増加をより抑制すると共に充放電サイクルを繰り返したあとも良好な電池特性を示すリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池10は、集電体11に遷移金属を含む正極活物質12を形成した正極シート13と、負極活物質17を形成した負極シート18と、正極と負極との間を満たす非水系電解液20と、を備える。この電池は、正極表面のX線光電子分光法(XPS)によるリンの光電子スペクトルが133eV以上137eV以下の範囲にあり、正極表面のXPSによるリンの原子数の割合をAp(at%)とし遷移金属元素の原子数の和の割合をAt(at%)としたときにAp/Atが0.1以上1.0以下の範囲にある。この電池では、正極活物質12の表面にリンを含有する化合物が厚さ10nm未満の膜状態又は吸着した状態で形成されていると考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池としては、遷移金属複合酸化物を構成する各粒子の表面部にホウ素、リン又は窒素を含有する層が形成されている正極活物質を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。この特許文献1〜3の電池では、短絡などにより電池温度が上昇した場合でも電解液の分解が起こりにくい。
【特許文献1】特開平7−192720号公報
【特許文献2】特開2005−190996号公報
【特許文献3】特開2006−318815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この特許文献1〜3に記載されたリチウムイオン二次電池では、遷移金属複合酸化物の表面にリンなどを含む層が比較的厚く形成されているため、例えば電池抵抗が高く、電池出力自体に悪影響を与えるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、電池抵抗の増加をより抑制すると共に充放電サイクルを繰り返したあとも良好な電池特性を示すリチウムイオン二次電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、リチウムイオンを吸蔵・放出可能であり遷移金属を含む正極表面のX線光電子分光法によるリンの光電子スペクトルが133eV以上137eV以下の範囲にあり、この正極表面のX線光電子分光法によるリンの原子数の割合をAp(at%)とし遷移金属元素の原子数の和の割合をAt(at%)としたときにAp/Atの値が0.1以上1.0以下の範囲にある正極を用いるものとすると、電池抵抗の増加をより抑制すると共に充放電サイクルを繰り返したあとも良好な電池特性を示すことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明のリチウムイオン二次電池は、
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を有する負極と、
リチウムイオンを吸蔵・放出可能であり遷移金属を含む正極活物質を有し、該正極表面のX線光電子分光法によるリンの光電子スペクトルが133eV以上137eV以下の範囲にあり、該正極表面のX線光電子分光法によるリンの原子数の割合をAp(at%)とし遷移金属元素の原子数の和の割合をAt(at%)としたときにAp/Atが0.1以上1.0以下の範囲にある正極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
このリチウムイオン二次電池では、電池抵抗の増加をより抑制すると共に充放電サイクルを繰り返したあとも良好な電池特性を示す。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。例えば、Ap/Atの値が0.1以上1.0以下の範囲にあり、正極活物質の表面にリンが存在することによって正極の電荷移動反応や脱溶媒和反応など、正極での反応の律速となる素過程を円滑に行うことができることが考えられる。また、リンを含む物質が膜状態又は吸着された状態で正極活物質の表面に存在することにより、充放電の繰り返しにおける正極活物質に含まれる酸素の放出やそれに伴う遷移金属の価数の低下を抑制し、充放電サイクルを繰り返したあとも良好な電池特性を示すものと推察される。このとき、例えば正極活物質中にリンを含む化合物を添加するなどして正極活物質の表面に厚い層状態で形成されてしまうと電池抵抗が増加してしまう。本発明のリチウムイオン二次電池では、リンを含む化合物の層の厚さを好適なものとし、電池抵抗の増加を抑制することができると考えられる。また、X線光電子分光法によるリンの光電子スペクトルが133eV以上137eV以下の範囲にある、即ち、例えばリンと酸素との化合物及びリンと酸素とフッ素との化合物(PO2、PO3、PO22、PO3F、LiPO3F)などの好適な状態でリンが正極活物質の表面に存在することにより、本発明の効果を奏するものと推察される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のリチウムイオン二次電池は、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる正極活物質を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵・放出しうる負極活物質を有する負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えている。
【0009】
本発明のリチウムイオン二次電池の正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、Li(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)、Li(1-x)Mn24などのリチウムマンガン複合酸化物、Li(1-x)CoO2などのリチウムコバルト複合酸化物、Li(1-x)NiO2などのリチウムニッケル複合酸化物、LiV23などのリチウムバナジウム複合酸化物、V25などの遷移金属酸化物などを用いることができる。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiV23などが好ましい。また、Li(1-x)NiO2などのリチウムニッケル複合酸化物にCoやAlやMgを添加したものなども好適である。このうち、正極は、基本組成式がLiaNixCoyMezbで表される化合物を正極活物質とすることがより好ましい。この基本組成式において、MeはMn,Al,Mg,Ti,V,Cu,Zn,Cr,Zr,Sr,Siからなる群より選ばれる1種以上を表し、a,b,x,y,zは0.9≦a≦1.1、1.9≦b≦2.2、0.3≦x≦0.8、0.1≦y≦0.5、0.01≦z≦0.5、x+y+z=1の関係を満たすものである。こうすれば、電池性能をより高めることができる。
【0010】
本発明のリチウムイオン二次電池の正極は、正極表面のX線光電子分光法によるリンの光電子スペクトルが133eV以上137eV以下の範囲にある。これより、正極表面に、リンと酸素との化合物及びリンと酸素とフッ素との化合物(PO2、PO3、PO22、PO3F、LiPO3F)などとしてリンが存在しているものと推察される。なお、後述する電解質のLiPF6では、光電子スペクトルがこの133eV以上137eV以下の範囲よりも高い範囲(例えば137.1eV以上141eV以下の範囲)となる。また、本発明のリチウムイオン二次電池の正極は、正極表面のX線光電子分光法(XPS)によるリンの原子数の割合をAp(at%)とし、同じく正極表面のXPSから得られる遷移金属元素の原子数の和の割合をAt(at%)としたときにAp/Atが0.1以上1.0以下の範囲にある。このAp/Atの値は、0.2以上0.8以下の範囲にあることがより好ましく、0.3以上0.6以下の範囲にあることが一層好ましい。このAp/Atが0.1以上であるとリンが十分に正極活物質の表面上に存在し、1.0以下ではリンが正極活物質の表面上に過剰に存在するのが抑制され、好ましい。
【0011】
本発明のリチウムイオン二次電池の正極は、高周波プラズマ発光分光分析(ICP)により正極中に存在する元素の存在量を測定し、正極活物質の重量をWt(g)、リンの重量をWp(g)としたときに、正極活物質中の遷移金属の重量の和(Wt)に対するリンの重量(Wp)の割合であるWp/Wt×100の値が、0.1重量%以上0.5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上0.4重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以上0.25重量%以下であることが一層好ましい。この正極活物質中の遷移金属の重量の和に対するリンの重量が0.1重量%以上0.5重量%以下の範囲では電池抵抗をより低下させることができ好ましい。本発明のリチウムイオン二次電池の正極は、正極活物質の表面に厚さが10nm未満の膜状態又は吸着した状態でリンを含む化合物の層が形成されていることが好ましい。こうすれば、電池抵抗の増加をより抑制することができる。
【0012】
正極に含まれる導電材は、正極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンマー(EPDM)、スルホン化EPDM、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。正極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどのほか、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものを用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
【0013】
本発明のリチウムイオン二次電池の負極は、例えば負極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。負極活物質としては、リチウム、リチウム合金、スズ化合物などの無機化合物、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素質材料、導電性ポリマーなどが挙げられるが、このうち炭素質材料が安定性の面から見て好ましい。この炭素質材料は、特に限定されるものではないが、コークス類、ガラス状炭素類、グラファイト類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維などが挙げられる。このうち、人造黒鉛、天然黒鉛などのグラファイト類が、金属リチウムに近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電が可能であり電解質塩としてリチウム塩を使用した場合に自己放電を抑え、且つ充電時おける不可逆容量を少なくできるため、好ましい。また、負極に用いられる導電材、結着材、溶剤などは、それぞれ正極で例示したものを用いることができる。負極の集電体には、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状は、正極と同様のものを用いることができる。
【0014】
本発明のリチウムイオン二次電池のイオン伝導媒体としては、電解質を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などを用いることができる。非水電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル−n−ブチルカーボネート、メチル−t−ブチルカーボネート、ジ−i−プロピルカーボネート、t−ブチル−i−プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、
テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3−ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの電池特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、電解液の粘度、得られる電池の電気容量、電池出力などをバランスの取れたものとすることができる。なお、環状カーボネート類は、比誘電率が比較的高く、電解液の導電率を高めていると考えられ、鎖状カーボネート類は、電解液の粘度を抑えていると考えられる。
【0015】
イオン伝導媒体に含まれている電解質は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6及びLiBF4が、好ましい。また、電解質は、上述した群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いてもよい。この電解質塩は、イオン伝導媒体中の濃度が0.1mol/L以上3mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。電解質塩の濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、3mol/L以下では、塩が溶けきらなかったり充放電に伴い塩が析出してしまうのを抑制することができる。
【0016】
本発明のリチウムイオン二次電池の正極において、イオン伝導媒体に一般式(1)で表されるアニオン化合物を含む添加化合物をイオン伝導媒体へ加えて充電することにより、正極活物質表面にリンを存在させることができる。即ち、本発明のリチウムイオン二次電池の正極は、正極表面でのリンのX線光電子分光法による光電子スペクトルが初回充電前にはなく初回充電後に現れるものとしてもよい。一般式(1)において、アニオンの価数bは1〜3であり、このうち1であることが好ましい。価数bが3より大きい場合には、アニオン化合物の塩が混合有機溶媒に溶解しにくくなる傾向があるので好ましくない。また、定数m,nは、配位子の数に関係する値であり、mは1〜4の整数、nは0〜8の整数である。定数qは、0又は1である。qが0の場合には、キレートリングが五員環となる。R1は、炭素数1〜10のアルキレン、炭素数1〜10のハロゲン化アルキレン、炭素数6〜20のアリーレン又は炭素数6〜20のハロゲン化アリーレンを表す。これらのアルキレン及びアリーレンはその構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよい。具体的には、アルキレン及びアリーレン上の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、アルキレン及びアリーレン上の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。またqが1でmが2〜4のときには、m個のR1はそれぞれが結合していてもよい。そのような例としては、エチレンジアミン四酢酸のような配位子を挙げることができる。R2は、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数6〜20のハロゲン化アリール又は−X33(X3,R3については後述)を表す。ここでのアルキル及びアリールも、R1と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよく、またnが2〜8のときにはn個のR2はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。R2としては、電子吸引性の基が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。フッ素原子の場合には、アニオン化合物の塩の溶解度や解離度が向上し、これに伴ってイオン伝導度が向上するからである。また、耐酸化性が向上し、これにより副反応の発生を抑制することができるからである。X1,X2及びX3は、それぞれが独立でO,S又はNR4を表す。つまり、配位子はこれらのヘテロ原子を介してリン(P)に結合することになる。R3及びR4は、それぞれが独立で水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル、炭素数6〜20のアリール、炭素数6〜20のハロゲン化アリールを表す。これらのアルキル及びアリールも、R1と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を持っていてもよい。また、R3又はR4は複数個存在する場合にはそれぞれが結合して環を形成してもよい。
【化1】

【0017】
アニオン化合物と対をなすカチオンとしては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、セシウム、ルビジウム、銀、亜鉛、銅、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、鉛、クロム、バナジウム、ルテニウム、イットリウム、ランタノイド、アクチノイドなどのカチオンが挙げられるほか、テトラアルキルアンモニウム(アルキルはメチル、エチル、ブチルなど)、トリエチルアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウムなどのアンモニウムカチオン、プロトン等が挙げられる。このうち、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン又はカリウムカチオンが好ましい。
【0018】
こうしたアニオン化合物は、リチウムイオン二次電池を少なくとも1回充電することにより、アニオン化合物のすべて又は一部が分解して、正極活物質及び/又は負極活物質の表面に被覆して被膜を形成すると考えられる。この被覆物は、例えばX線光電子分光分析(XPS)などにより検出することができる。こうしたアニオン化合物は、式(2)〜(4)に示す、PTFO,PFO,POの1種以上であること好ましい。その理由は、式(2)〜(4)に示すいずれかのアニオン化合物をイオン伝導媒体に含んだ状態で電池の充電を行うと、正極活物質の表面にリンを含む化合物の被膜若しくは吸着層が形成され、正極活物質を保護すると共に、その膜厚が薄く(例えば10nm未満や5nm未満など)、電池抵抗の増加を抑制することができる。このアニオン化合物のイオン伝導媒体中の濃度は、0.01mol%以上0.5mol%以下であることが好ましく、0.02mol%以上0.1mol%以下であることがより好ましく、0.03mol%以上0.08mol%以下であることが更に好ましい。この濃度が0.01mol%以上では、活物質表面にリンを含む皮膜を十分に形成する又は、リンを含む化合物を十分に吸着することができ、0.5mol%以下では、活物質表面に形成される膜が厚くなりすぎるのを抑制することができる。こうしたアニオン化合物の合成方法としては、例えばPFOの場合には、非水系溶媒中でLiPF6と4倍モルのリチウムアルコキシドとを反応させた後、シュウ酸を添加して、リンに結合しているアルコキシドをシュウ酸で置換する方法等がある。これらの場合には、アニオン化合物のリチウム塩を得ることができる。
【化2】

【0019】
リチウムイオン二次電池は、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、リチウムイオン二次電池の使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
【0020】
リチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、例えば、本発明のリチウムイオン二次電池を複数直列に接続するなどして電気自動車やハイブリッド電気自動車などに用いる大型の電気自動車用電源などとしてもよい。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、携帯端末、携帯電子機器、小型電力貯蔵装置などに用いることができる。図1は、本発明のリチウムイオン二次電池10の一例を示す模式図である。このリチウムイオン二次電池10は、集電体11に正極活物質12を形成した正極シート13と、集電体14の表面に負極活物質17を形成した負極シート18と、正極シート13と負極シート18との間に設けられたセパレータ19と、正極シート13と負極シート18の間を満たす非水系電解液20と、を備えたものである。このリチウムイオン二次電池10では、正極シート13と負極シート18との間にセパレータ19を挟み、これらを捲回して円筒ケース22に挿入し、正極シート13に接続された正極端子24と負極シートに接続された負極端子26とを配設して形成されている。ここでは、正極シート13には正極活物質12としてリチウム含有遷移金属が含まれており、その正極活物質12の表面にリンを含有する化合物が厚さ5nm未満の膜状態又は吸着した状態で形成されている。
【0021】
以上詳述した本実施形態のリチウムイオン二次電池10によれば、X線光電子分光法によるリンの光電子スペクトルが133eV以上137eV以下の範囲にあるため、リンを含む好適な化合物が例えばリンと酸素との化合物及びリンと酸素とフッ素との化合物などとして存在する。また、Ap/Atの値が0.1以上1.0以下の範囲にあるため、正極活物質表面でのリンの存在量が好適である。また、ICPによる正極活物質中の遷移金属の重量の和に対するリンの重量が0.1重量%以上0.5重量%以下であることから、膜状態又は吸着した状態などの好適な厚さ(おそらく10nm未満)でリンを含む化合物の層が正極活物質の表面に形成されているものと推察された。したがって、電池抵抗の増加をより抑制すると共に充放電サイクルを繰り返したあとも良好な電池特性を示すものと考えられる。
【0022】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0023】
以下には、リチウムイオン二次電池を具体的に作製した例を、実施例として説明する。
【0024】
[実施例1]
正極活物質として、LiNi0.8Co0.15Al0.052を用いた。この正極活物質を85重量%、導電材としてカーボンブラックを10重量%、結着材としてポリフッ化ビニリデンを5重量%混合し、分散剤としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加し、分散させてスラリー状の正極合材とした。このスラリー状の正極合材を20μm厚のアルミニウム箔集電体の両面に塗布し、乾燥後、ロールプレスで高密度化し、所定の形状に切り出して正極シートを作製した。また、負極活物質としては、人造黒鉛を用いた。この負極活物質を95重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを5重量%混合し、分散剤としてN−メチル−2−ピロリドンを適量添加し、分散させてスラリー状の負極合材とした。このスラリー状の負極合材を10μm厚の銅箔集電体の両面に塗布し、乾燥後、ロールプレスで高密度化し、所定の形状に切り出して負極シートを作製した。次に、正極シートと負極シートとを25μm厚のポリエチレン製セパレータを挟んで捲回し、ロール状の電極体を作製した。この電極体を18650型円筒ケースに格納し、イオン伝導媒体としての非水電解液に含浸させたあと密閉し、実施例1の円筒型リチウムイオン二次電池を作製した(図1参照)。非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比で3:7となるように混合した溶媒へ1.0mol/Lの濃度となるよう、LiPF6を入れると共に、上記式(1)に示すアニオン化合物(PTFO)を含むリチウム塩を、添加剤として0.05mol/%となるように溶解させたものを用いた。作製したリチウムイオン二次電池の正極活物質やイオン伝導媒体への添加剤、後述するAp/Atの値、正極活物質重量あたりのリンの重量%、内部抵抗値(mΩ)、繰返充放電の容量維持率(%)などをまとめて表1に示す。この表1には、実施例2〜15,比較例1〜4の数値も示した。作製した電池は、0.2C(100mA)の電流で、上限4.1V、下限3.0Vとして充放電を5サイクル実行した。なお、この初期の5回の充放電をコンディショニングと呼ぶものとする。
【0025】
【表1】

【0026】
[実施例2,3]
非水電解液に添加する添加剤を0.05mol/Lの濃度の上記(2)で示すアニオン化合物(PFO)を含むリチウム塩とした以外は実施例1と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例2とした。また、非水電解液に添加する添加剤を0.05mol/Lの濃度の上記(3)で示すアニオン化合物(PO)を含むリチウム塩とした以外は実施例1と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例3とした。
【0027】
[実施例4〜6]
非水電解液に添加する添加剤を0.05mol/Lの濃度の上記(1)で示すアニオン化合物(PTFO)を含むナトリウム塩とした以外は実施例1と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例4とした。また、非水電解液に添加する添加剤を0.05mol/Lの濃度の上記(2)で示すアニオン化合物(PFO)を含むナトリウム塩とした以外は実施例1と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例5とした。また、非水電解液に添加する添加剤を0.05mol/Lの濃度の上記(3)で示すアニオン化合物(PO)を含むナトリウム塩とした以外は実施例1と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例6とした。
【0028】
[実施例7〜9]
非水電解液に添加する添加剤を0.05mol/Lの濃度の上記(1)で示すアニオン化合物(PTFO)を含むカリウム塩とした以外は実施例1と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例7とした。また、非水電解液に添加する添加剤を0.05mol/Lの濃度の上記(2)で示すアニオン化合物(PFO)を含むカリウム塩とした以外は実施例1と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例8とした。また、非水電解液に添加する添加剤を0.05mol/Lの濃度の上記(3)で示すアニオン化合物(PO)を含むカリウム塩とした以外は実施例1と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例9とした。
【0029】
[実施例10〜12]
正極活物質としてLiNi0.75Co0.15Al0.05Mg0.052を用いた以外は実施例1と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例10とした。また、正極活物質としてLiNi0.75Co0.15Al0.05Mg0.052を用いた以外は実施例2と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例11とした。また、正極活物質としてLiNi0.75Co0.15Al0.05Mg0.052を用いた以外は実施例3と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例12とした。
【0030】
[実施例13〜15]
正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/32を用いた以外は実施例1と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例13とした。また、正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/32を用いた以外は、実施例2と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例14とした。また、正極活物質としてLiNi1/3Co1/3Mn1/32を用いた以外は、実施例3と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を実施例15とした。
【0031】
[比較例1〜4]
非水電解液へリンを含む添加剤を入れずに作製した以外は実施例1と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を比較例1とした。また、非水電解液へリンを含む添加剤を入れずに作製した以外は実施例10と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を比較例2とした。また、非水電解液へリンを含む添加剤を入れずに作製した以外は実施例13と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を比較例3とした。また、非水電解液に添加する添加剤を0.5mol/Lの濃度の上記(2)で示すアニオン化合物(PFO)を含むリチウム塩とした以外は実施例2と同様の工程を行い、得られたリチウムイオン二次電池を比較例4とした。
【0032】
[X線光電子分光(XPS)による正極活物質表面分析]
実施例1〜15及び比較例1〜4について、XPSによる正極表面分析を行った。まず、Arフローグローブボックス中で電池を解体し、取り出した電極をジエチルカーボネート(DEC)で十分洗浄した。洗浄したサンプルをグローブボックス内で十分に乾燥させ、XPS試料台に固定して専用のトランスファベッセルを用いて大気被爆することなくXPS測定装置(アルバックファイ製PHI−5500MC)の試料室に導入した。XPS測定は、X線源としてMgKαを用いて行った。光電子取り出し角は、45°とし、分析領域を正極活物質の粒径に対して十分に広くとった。例えば、正極活物質の粒径が10μmであるときに、分析領域は、直径800μmとした。得られた測定データは、C1sスペクトルに現れる、サンプル表面に存在するハイドロカーボン又は導電助剤(カーボン)のピークが285eVとなるように補正を行った。
【0033】
[高周波プラズマ発光分光分析(ICP)による元素分析]
実施例1〜15及び比較例1〜4について、ICPによる元素分析を行った。まず、コンディショニング後の電池を解体して電極を取り出し、取り出した正極をDECで十分に洗浄し、乾燥したあと、電極の中心付近を1cm2角に切り出した。この切り出した試料を粉砕し、塩酸を30mL加えて200℃のヒータ上で11h加熱溶解した。溶液中の各成分をICP分析装置(リガク製CIROS120EOP)を用いて定量した。
【0034】
[内部抵抗測定]
実施例1〜15及び比較例1〜4について、IV抵抗、即ち電池の内部抵抗の測定を行った。内部抵抗の測定は、電池容量の50%(SOC=50%)に調整したあとに0.5A、1A、2A、3A、5Aの電流を流し、10秒後の電池電圧を測定した。流した電流と電圧とを直線近似し、その傾きから内部抵抗を求めた。
【0035】
[高温充放電サイクル測定]
実施例1〜15及び比較例1〜4について、高温(60℃)での充放電サイクル試験を行い、繰り返し充放電における放電容量が維持される程度を表す容量維持率を評価した。充放電サイクル試験は、60℃の温度条件下、電流密度2mA/cm2の定電流で充電上限電圧を4.1Vまで充電し、次に電流密度2mA/cm2の定電流で放電下限電圧を3.0まで放電する充放電を1サイクルとし、この充放電サイクルを500サイクル行うものとした。充放電サイクル試験の1サイクル目の放電容量を初期放電容量CAP1(mAh/g)とし、500回目のサイクルでの放電容量をサイクル後放電容量CAP500(mAh/g)としたとき、容量維持率CAPma(%)=CAP500/CAP1×100の式を用いて算出した。
【0036】
[測定結果]
コンディショニング前の実施例1〜15及び比較例1〜4について、正極のXPS測定を行ったところ、リンに帰属するスペクトルは得られなかった。実施例1〜15の各電池をコンディショニング後に解体してXPS測定したところ、リンの光電子スペクトルが133eV以上137eV以下の範囲にあることがわかった。図2は、実施例2及び比較例1のコンディショニング後のXPSスペクトル(P2pスペクトル)である。このように、実施例では、コンディショニング後にはリンの光電子スペクトルが133eV以上137eV以下の範囲にあることがわかった。一方、添加剤を入れない比較例1〜3では、コンディショニング後であっても、リンに帰属するスペクトルは得られなかった。したがって、正極表面に形成されたリンを含む化合物は、電解質(LiPF6)に起因するものではなく、式(2)〜(4)に示した添加剤に起因していることがわかった。この測定結果を用い、正極表面のXPSによるリンの原子数の割合をAp(at%)とし遷移金属元素の原子数の和の割合をAt(at%)としたときの、Ap/At値を計算した。XPS測定では、試料の表面近傍(例えば5nm程度の範囲)の情報であることから、このAp/At値は、試料表面に存在するリンの状態を反映していると推察される。比較例1〜3では、このAp/At値は略値0であり、正極表面にリンを含む化合物が存在していないことがわかった。また、添加剤を多く入れた比較例4では、Ap/At値が1.9と大きな値を示した。実施例1〜15では、Ap/At値が0.1以上1.0以下の範囲にあることがわかった。内部抵抗測定結果について、同じ電池構成であるものを比較すると、正極活物質上にリンが適度に存在する実施例では、比較例に比して総じて抵抗値が低く、且つ高い容量維持率を示すことがわかった。また、ICPによるリンの重量割合に対する内部抵抗の関係を図3に示す。この結果より、リンの重量が0.1重量%以上0.5重量%以下の範囲であるとき、一層好ましくは0.1重量%以上0.25重量%以下であるときに、内部抵抗が低い値を示す傾向があることがわかった。なお、実施例1〜15について、XPSによるAp/At値が0.1以上1.0以下の範囲にあり、ICPによるリンの重量割合が0.1重量%以上0.5重量%以下の範囲にあることから、リンは5nm未満の厚さで正極表面近傍に存在しているものと推察された。また、光電子スペクトルが133eV以上137eV以下の範囲にあるため、リンは例えばリンと酸素との化合物及びリンと酸素とフッ素との化合物(PO2、PO3、PO22、PO3F、LiPO3F)などの好適な状態で正極活物質上に存在しているものと推察された。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のリチウムイオン二次電池10の一例を示す模式図。
【図2】実施例2及び比較例1のコンディショニング後のXPSスペクトル。
【図3】ICPによるリンの重量割合に対する内部抵抗の関係を表す図。
【符号の説明】
【0038】
10 リチウムイオン二次電池、11 集電体、12 正極活物質、13 正極シート、14 集電体、17 負極活物質、18 負極シート、19 セパレータ、20 非水電解液、22 円筒ケース、24 正極端子、26 負極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質を有する負極と、
リチウムイオンを吸蔵・放出可能であり遷移金属を含む正極活物質を有し、該正極表面のX線光電子分光法によるリンの光電子スペクトルが133eV以上137eV以下の範囲にあり、該正極表面のX線光電子分光法によるリンの原子数の割合をAp(at%)とし遷移金属元素の原子数の和の割合をAt(at%)としたときにAp/Atが0.1以上1.0以下の範囲にある正極と、
前記正極と前記負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたリチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記正極は、基本組成式がLiaNixCoyMezb(MeはMn,Al,Mg,Ti,V,Cu,Zn,Cr,Zr,Sr,Siからなる群より選ばれる1種以上を表す:a,b,x,y,zは、0.9≦a≦1.1、1.9≦b≦2.2、0.3≦x≦0.8、0.1≦y≦0.5、0.01≦z≦0.5、x+y+z=1を満たす)で表される化合物を正極活物質とする、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記正極は、高周波プラズマ発光分光分析により正極中に存在する元素の存在量を測定すると前記正極活物質中の遷移金属の重量の和に対するリンの重量が0.1重量%以上0.5重量%以下である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記正極は、前記正極活物質の表面に厚さが10nm未満の膜状態又は吸着した状態でリンを含む化合物の層が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記正極は、前記正極表面でのリンのX線光電子分光法による光電子スペクトルが初回充電前にはなく初回充電後に現れる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記イオン伝導媒体は、電解質としてLiPF6又はLiBF4のうち少なくとも一方を含んでいる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−118179(P2010−118179A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288910(P2008−288910)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】