説明

リチウムイオン二次電池

【課題】高容量化が可能なセパレータを用い、安定した充放電挙動を示すリチウムイオン二次電池を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池100は、非水溶媒、リチウム塩及び低分子ゲル化剤を含む電解液と、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極120と、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する負極130と、セパレータ110と、を備え、該セパレータの有する全孔数のうち、短径が1.0μm以下の孔の数が20%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子技術の発展や環境技術への関心の高まりに伴い、様々な電気化学デバイスが用いられている。特に、省エネルギー化への要請が多くあり、それに貢献できるものへの期待はますます高くなっている。例えば、発電デバイスとして太陽電池が挙げられ、蓄電デバイスとして、二次電池、キャパシタ及びコンデンサなどが挙げられる。蓄電デバイスの代表例であるリチウムイオン二次電池は、元来、主に携帯機器用充電池として使用されていたが、近年ではハイブリッド自動車及び電気自動車用電池としての使用が期待されている。
【0003】
蓄電デバイスとして代表的なリチウムイオン二次電池は一般に、リチウムを吸蔵、放出可能な活物質を主体として構成された正極と負極とがセパレータを介して配された構成を有する。リチウムイオン二次電池では、正極は、正極活物質としてのLiCoO2、LiNiO2、LiMn24等と、導電剤としてのカーボンブラックや黒鉛等と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンやラテックス、ゴム等とが混合された正極合剤が、アルミニウム等からなる正極集電体上に被覆されて形成される。負極は、負極活物質としてのコークスや黒鉛等と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンやラテックス、ゴム等とが混合された負極合剤が、銅等からなる負極集電体上に被覆されて形成される。セパレータは、多孔性ポリオレフィン等にて形成され、その厚みは数μmから数百μmと非常に薄い。正極、負極及びセパレータは、電池内で電解液に含浸されている。電解液としては、例えば、LiPF6、LiBF4のようなリチウム塩を、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートのような非プロトン性溶媒やポリエチレンオキシドのようなポリマーに溶解させた電解液が挙げられる。
【0004】
リチウムイオン二次電池は、現在、携帯機器の充電池として主に用いられている(例えば特許文献1参照)が、近年ではハイブリッド自動車や電気自動車などの自動車用途の電池としても広い展開が期待されている。リチウムイオン二次電池の用途拡大に向け、電池の小型化や高性能化を図る必要があり、そのアプローチとしてセパレータの改良がある。携帯機器用のリチウムイオン二次電池のセパレータとして現在主に用いられているものは合成樹脂製微多孔膜である。合成樹脂製微多孔膜は非常に信頼性が高い膜ではあるが、車載向けのセパレータとして用いるためには、例えば、容量、電流密度、耐熱性、コストなどの点で改良が求められている。これらの性能を向上させる試みとして不織布や紙などのセパレータを用いた例がある(例えば特許文献2、3参照)。不織布や紙は、安価なプロセスコストで多孔な膜(電池の高容量化が可能となる膜)を作製できること、耐熱性の高い素材で製膜できることから有望である。また、合成樹脂製セパレータを多孔化したり、低密度化したりした例もある。あるいは、合成樹脂製セパレータの製造コスト低減を目指したプロセスを検討している例もある。
さらには、電解液をゲル化させたゲル電解質と不織布性のセパレータとを組み合わせた研究例がある(例えば特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−087648号公報
【特許文献2】特開2005−159283号公報
【特許文献3】特開2005−293891号公報
【特許文献4】特開2009−070605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2及び3に記載のような高容量化可能なセパレータを用いると、短絡が発生したり、デンドライト成長が見られたり、様々な不安定な充放電挙動が見られるため、セパレータ性能としての信頼性や安全性に課題がある。
また、特許文献4に記載のような、ゲル化剤としてポリマーを用いたゲル電解質では、短絡やデンドライト成長は低減できるが、電池性能が液体の電解液と比較して低下するため、不織布の長所を充分に発揮させることは困難である。
【0007】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、不織布などの電池の高容量化が可能なセパレータを用いても、安定した充放電挙動を示し、サイクル特性や安全性にも優れたリチウムイオン二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成すべく、様々なセパレータと電解液とを検討した結果、特定の孔構造を有する材料をセパレータに用い、また、低分子ゲル化剤を含有する電解液をあわせて用いることにより、得られるリチウムイオン二次電池が安定した充放電挙動を示し、サイクル特性及び安全性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
非水溶媒、リチウム塩及び低分子ゲル化剤を含む電解液と、
正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極と、
負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する負極と、
セパレータと、
を備え、
該セパレータの有する全孔数のうち、短径が1.0μm以下の孔の数の割合が20%以下である、リチウムイオン二次電池。
[2]
非水溶媒、リチウム塩及び低分子ゲル化剤を含む電解液と、
正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極と、
負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する負極と、
セパレータと、
を備え、
該セパレータの透気度が50s/100cc以下である、[1]に記載のリチウムイオン二次電池。
[3]
前記セパレータの有する全孔数のうち、短径が200μm以上の孔の数の割合が5%以下である、[1]又は[2]に記載のリチウムイオン二次電池。
[4]
前記セパレータの最表面に存在する孔のうち、短径が1.0μm以下の孔の数の割合が5%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
[5]
前記セパレータが有する全孔数のうち、一方の表面から他方の表面に連続した貫通孔の長径が150μm以上の孔の数の割合が5%以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
[6]
前記セパレータの膜厚が20μm以上60μm以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
[7]
前記セパレータが不織布である、[1]〜[6]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
[8]
前記低分子ゲル化剤が下記一般式(1)、(2)及び(3)からなる群より選択される一種以上の化合物を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
Rf1−R1−X1−L1−R2 (1)
Rf1−R1−X1−L1−R3―L2―X2―R4―Rf2 (2)
5−O−Ar−X3−C (3)
(式(1)及び(2)中、
Rf1及びRf2はそれぞれ独立に、炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基を示し、
1及びR4はそれぞれ独立に、単結合若しくは炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を示し、
1及びX2はそれぞれ独立に、下記式(1a)〜(1g)からなる群より選ばれる2価の官能基を示し、
1及びL2はそれぞれ独立に、単結合、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいオキシアルキレン基、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいオキシシクロアルキレン基、又は、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい2価のオキシ芳香族基を示し、
2は、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよいフルオロアルキル基、アリール基若しくはフルオロアリール基、又は、これらの基のうちの1種以上とこれらの基に対応する2価の基のうちの1種以上とが結合した1価の基を示し、
3は主鎖に酸素及び/又は硫黄原子1つ以上を有してもよく、かつ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数1〜18の2価の飽和炭化水素基を示す。
【化1】

また、式(3)中、
5は主鎖の炭素数1〜20の置換又は無置換の炭化水素基を示し、
Arは置換若しくは無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、
3は、下記式(3a)〜(3g)のいずれかの2価の基、又は下記式(3a)〜(3g)のいずれか複数の基が結合した2価の基を示し、
Cは下記式(3z)で表されるクマリン部位を示し、下記式(3z)中、Raは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。
【化2】

【化3】

[9]
前記X1及びX2が、それぞれ独立に、前記式(1a)又は前記式(1d)で表される2価の官能基である、[8]に記載のリチウムイオン二次電池。
[10]
前記X1及びX2が、前記式(1d)で表される2価の官能基である、[8]又は[9]に記載のリチウムイオン二次電池。
[11]
前記電解液が、低温状態でゲル、高温状態でゾルとなる相転移型のゲル電解質溶液であり、
前記ゲルと前記ゾルとの相転移温度が50〜150℃の範囲にある、[1]〜[10]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
[12]
25℃における充放電サイクル試験を100サイクル行ったときの時の放電容量維持率が80%以上である、[1]〜[11]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
[13]
前記電解液が、前記セパレータに含浸され、前記低分子ゲル化剤の一部が前記セパレータの孔の中に存在している、[1]〜[12]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
[14]
前記正極が、前記正極活物質として、リチウム含有化合物を含む、[1]〜[13]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
[15]
前記負極が、前記負極活物質として、金属リチウム、炭素材料、リチウムと合金形成が可能な元素を含む材料、及び、リチウム含有化合物からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する、[1]〜[14]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、不織布などの電池の高容量化が可能なセパレータを用いても、安定した充放電挙動を示し、サイクル特性や安全性にも優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態のリチウムイオン二次電池の一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、特定の孔構造を有するセパレータと、非水溶媒、リチウム塩及び低分子ゲル化剤を含む電解液と、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極と、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する負極と、を備えるものである。
【0013】
<セパレータ>
本実施形態のリチウムイオン二次電池では、正負極の短絡防止、シャットダウン等の安全性付与の観点から、正極と負極との間にセパレータを備える。セパレータとしては、イオン透過性が大きく、機械的強度に優れる絶縁性の薄膜が好ましい。
本実施形態に用いるセパレータは、特定の孔構造を有することが必要である。具体的には、セパレータの有する全孔数のうち、短径が1.0μm以下の孔の数の割合が20%以下である。また、セパレータの透気度が50s/100cc以下であることが好ましい。このような特定の孔構造を有するセパレータと、低分子ゲル化剤を含有する電解液とを組み合わせて用いることにより、リチウムイオン二次電池における電流密度が電極の一部に局所的に集中することによるデンドライト成長を抑制すること及び微小短絡による充電電気容量の過剰を改善できる。
本実施形態に用いるセパレータにおいて、短径が1.0μm以下の孔の数の割合は、10%以下であることが好ましい。短径が1.0μm以下の孔の数の割合の下限は、0.5%以上であることが好ましい。また、短径が200μm以上の孔の数の割合が5%以下であることがさらに好ましい。さらにより好ましくは短径が150μm以上の孔の数の割合が5%以下である。
また、前記セパレータの最表面に存在する孔のうち、短径が1.0μm以下の孔の数の割合が5%以下であることが好ましい。さらに、本実施形態に用いるセパレータが有する全孔数のうち、一方の表面から他方の表面に連続した貫通孔の長径が150μm以上の孔の数の割合が5%以下であるとさらに好ましい。前記セパレータの最表面に存在する孔のうち短径が1.0μm以下の孔の数の割合、及び、貫通孔の長径が150μm以上の孔の割合が5%以下であることにより、短絡が発生するなど不安定な充放電挙動を更に抑制することができる。
本実施形態に用いるセパレータの透気度は50s/100cc以下であることが好ましく、より好ましくは20s/100cc以下である。
本実施形態に用いるセパレータの膜厚は20μm以上60μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以上50μm以下である。セパレータの膜厚は、機械的強度の観点、及び、正負極を隔離し短絡を抑制するという観点から、20μm以上が好ましい。また、電池としての出力密度を高め、エネルギー密度の低下を抑制する観点から、セパレータの膜厚は60μm以下が好ましい。
このような特定の孔構造を有するセパレータと、低分子ゲル化剤を含有する電解液とを組み合わせて用いることにより、得られるリチウムイオン二次電池が安定した充放電挙動を示すことができる。
本実施形態において、セパレータの有する全孔数のうち、短径が1.0μm以下の孔の数の割合は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。また、短径が200μm以上の孔の数の割合は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。さらに、短径が150μm以上の孔の数の割合は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。さらにまた、セパレータの最表面に存在する孔のうち、短径が1.0μm以下の孔の数の割合や、セパレータが有する全孔数のうち、一方の表面から他方の表面に連続した貫通孔の長径が150μm以上の孔の数の割合も後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
セパレータの透気度は100ccの空気が透過するのに要する時間である。セパレータの透気度測定には透気度試験機を用いる。本実施形態において、セパレータの透気度は、JIS P−8117準拠のガーレー式の透気度計にて測定した値である。
本実施形態に用いるセパレータとしては、例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜、抄紙などが挙げられ、上記の構造をとることができればどれであっても構わない。上記孔構造の形成しやすさ、コストの点から織布、不織布、抄紙が好ましく、不織布、抄紙がさらに好ましく、不織布が最も好ましい。また、これらのセパレータは一般的製法でつくることができ、製法は問わない。本実施形態に用いるセパレータは、不織布の場合、例えばスパンボンド法、メルトブローン法などでつくることができる。また、本実施形態に用いるセパレータは、単層であっても複数のものが積層したものであっても構わない。
本実施形態に用いるセパレータの材質は、例えば、セラミック製、ポリオレフィン製、ポリエステル製、ポリアミド製、液晶ポリエステル、アラミドなどの耐熱樹脂製、セルロース製などが挙げられる。ハンドリング性と耐熱性の観点から、ポリエステル製、ポリアミド製、液晶ポリエステル製、アラミド製、セルロース製が好ましい。これらの樹脂等は単一の樹脂等を用いてもよく、共重合樹脂を用いてもよく、また、複数の樹脂等を混合したものを用いてもよい。また、複数の材質の膜を積層したものであってもよい。積層体の場合には各層の材質が同じであっても違うものであってもよい。積層体を作る場合には各層ごと順に積層することもできるし別に作製した複数の膜を張り合わせることで積層体にすることもできる。
【0014】
<電解液>
本実施形態に用いる電解液は、(I)非水溶媒と、(II)リチウム塩と、(III)低分子ゲル化剤とを含有する。
(I)非水溶媒としては、様々なものを用いることができるが、例えば非プロトン性溶媒が挙げられる。リチウムイオン二次電池の電解液として用いる場合、その充放電に寄与する電解質であるリチウム塩の電離度を高めるために、非プロトン性極性溶媒が好ましい。その具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロエチレンカーボネートに代表される環状カーボネート;γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンに代表されるラクトン;スルホランに代表される環状スルホン;テトラヒドロフラン及びジオキサンに代表される環状エーテル;メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート及びメチルトリフルオロエチルカーボネートに代表される鎖状カーボネート;アセトニトリルに代表されるニトリル;ジメチルエーテルに代表される鎖状エーテル;プロピオン酸メチルに代表される鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタンに代表される鎖状エーテルカーボネート化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0015】
(I)非水溶媒は、リチウム塩の電離度を高めるために環状の非プロトン性極性溶媒を1種類以上含むことが好ましい。同様の観点から、(I)非水溶媒は、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートに代表される環状カーボネートを1種類以上含むことがより好ましい。環状の化合物は誘電率が高く、リチウム塩の電離を助けると共にゲル化能を高める。
【0016】
(I)非水溶媒として、イオン液体を用いることもできる。イオン液体とは、有機カチオンとアニオンとを組み合わせたイオンからなる液体である。
有機カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウムカチオン、トリアルキルイミダゾリウムカチオン等のイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ジアルキルピロリジニウムイオン、ジアルキルピペリジニウムイオンが挙げられる。
【0017】
これらの有機カチオンのカウンターとなるアニオンとしては、例えば、PF6アニオン、PF3(C253アニオン、PF3(CF33アニオン、BF4アニオン、BF2(CF32アニオン、BF3(CF3)アニオン、ビスオキサラトホウ酸アニオン、Tf(トリフルオロメタンスルフォニル)アニオン、Nf(ノナフルオロブタンスルホニル)アニオン、ビス(フルオロスルフォニル)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミドアニオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルフォニル)イミドアニオン、ジシアノアミンアニオンを用いることができる。
【0018】
(II)電解質として使用されるリチウム塩の具体例としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、Li2SiF6、LiOSO2k2k+1〔kは1〜8の整数〕、LiN(SO2k2k+12〔kは1〜8の整数〕、LiPFn(Ck2k+16-n〔nは1〜5の整数、kは1〜8の整数〕、LiBFn((Ck2k+14-n〔nは1〜3の整数、kは1〜8の整数〕、LiB(C222で表されるリチウムビスオキサリルボレート、LiBF2(C22)で表されるリチウムジフルオロオキサリルボレート、LiPF3(C22)で表されるリチウムトリフルオロオキサリルフォスフェートが挙げられる。
【0019】
また、下記一般式(a)、(b)又は(c)で表されるリチウム塩を電解質として用いることもできる。
LiC(SO211)(SO212)(SO213) (a)
LiN(SO2OR14)(SO2OR15) (b)
LiN(SO216)(SO2OR17) (c)
ここで、式中、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、互いに同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。
【0020】
これらの電解質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの電解質のうち、電池特性や安定性に加え、ゲル化能を高める観点から、LiPF6、LiBF4及びLiN(SO2k2k+12〔kは1〜8の整数〕が好ましい。
【0021】
電解質の濃度は任意であり特に限定されないが、電解質は、電解液中に好ましくは0.1〜3モル/リットル、より好ましくは0.5〜2モル/リットルの濃度で含有される。
【0022】
(III)低分子ゲル化剤とは、可逆的な物理相互作用で、ゾル−ゲルの転移が可能な非ポリマー型のゲル化剤のことである。低分子ゲル化剤としては様々なものが知られており、そのいずれを用いても構わない。例えば特開平10−175901号公報に記載のフルオロ型のゲル化剤、特開2007−506833号公報、特開2009−155592号公報に記載のアミド基含有ゲル化剤などを挙げることができる。
【0023】
本実施形態に用いる低分子ゲル化剤としては、電気化学的安定性と電解液に対するゲル化能の点から下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される化合物からなる群より選択される一種以上を含むことが好ましい。
Rf1−R1−X1−L1−R2 (1)
Rf1−R1−X1−L1−R3―L2―X2―R4―Rf2 (2)
5−O−Ar−X3−C (3)
【0024】
上記一般式(1)及び(2)において、Rf1及びRf2はそれぞれ独立に、炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基を示す。当該炭素数が2〜20であれば、原料入手と合成が容易である。上記一般式(1)及び(2)で表される化合物(以下「パーフルオロ化合物」とも記す。)の電解液への混合性、電解液の電気化学的特性、及びゲル化能の観点から、前記炭素数は2〜12であると好ましい。パーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロエチル基、パーフルオロn−プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロn−ブチル基、パーフルオロt−ブチル基、パーフルオロn−ヘキシル基、パーフルオロn−オクチル基、パーフルオロn−デシル基及びパーフルオロn−ドデシル基が挙げられる。
【0025】
上記一般式(1)及び(2)において、R1及びR4はそれぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を示し、当該炭素数は2〜5であると好ましい。前記2価の飽和炭化水素基の炭素数が3以上である場合、分岐があってもなくてもよい。このような2価の飽和炭化水素基としては、例えば、メチリデン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基及びn−ブテン基が挙げられる。
【0026】
また、X1及びX2はそれぞれ独立に、下記式(1a)〜(1g)からなる群より選ばれる2価の官能基を示す。これらの中では電気化学的見地より、下記式(1a)、下記式(1b)及び下記式(1d)で表される2価の基からなる群より選ばれる2価の官能基が好ましく、下記式(1a)又は下記式(1d)で表される2価の官能基であるとより好ましく、下記式(1d)で表される2価の官能基であると更に好ましい。
【化4】

【0027】
1及びL2はそれぞれ独立に、単結合、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい(すなわち置換されていなくてもよい)オキシアルキレン基、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい(すなわち置換されていなくてもよい)オキシシクロアルキレン基、又は、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい(すなわち置換されていなくてもよい)2価のオキシ芳香族基(−OAr−;Arは2価の芳香族基)を示す。オキシアルキレン基としては、例えば、炭素数2〜10のオキシアルキレン基、より具体的には、オキシエチレン基(−C24O−)及びオキシプロピレン基(−C36O−)が挙げられる。オキシシクロアルキレン基としては、例えば、炭素数5〜12のオキシシクロアルキレン基、より具体的には、オキシシクロペンチレン基、オキシシクロヘキシレン基、オキシジシクロヘキシレン基が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、ゲル化能及び電解液の安全性向上の観点から、2価のオキシ芳香族基が好ましい。アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい2価のオキシ芳香族基における2価の芳香族基は、いわゆる「芳香族性」を示す環式の2価の基である。この2価の芳香族基は、炭素環式の基であっても複素環式の基であってもよい。炭素環式の基は、その核原子数が6〜30であり、上述のとおりアルキル基若しくはハロゲン原子により置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。その具体例としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基、フェナンスリレン基、ピレニレン基、クリセニレン基、フルオランテニレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。
【0029】
複素環式の基は、その核原子数が5〜30であり、例えば、ピローレン基、フラニレン基、チオフェニレン基、トリアゾーレン基、オキサジアゾーレン基、ピリジレン基及びピリミジレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。これらの中でも、2価の芳香族基として、フェニレン基、ビフェニレン基又はナフチレン基が好ましい。また、置換基である上記アルキル基としては、例えばメチル基及びエチル基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられる。
オキシシクロアルキレン基及びオキシ芳香族基には複数の環が接続されたものも含まれ、このような基として、例えば、オキシビフェニレン基、オキシターフェニレン基、オキシシクロアルキルフェニレン基が挙げられる。
【0030】
上記一般式(1)中のR2は、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよいフルオロアルキル基、アリール基若しくはフルオロアリール基、又は、これらの基のうちの1種以上とこれらの基に対応する2価の基のうちの1種以上とが結合した1価の基を示す。R2として、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基に代表される炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。このアルキル基は、更にアルキル基又はハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0031】
フルオロアルキル基としては、炭素数1〜12のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)若しくは炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基が好ましい。炭素数1〜12のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)及び炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基として、具体的には、トリフルオロメチル基、1,1,1,2,2−ペンタフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、1,1,1,2,2,3,3−ヘプタフルオロn−ブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロn―ヘキシル基及び1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロn−デシル基が挙げられる。フルオロアルキル基は、更にアルキル基又はハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていても、置換されていなくてもよい。
【0032】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基に代表される核原子数が6〜12のアリール基、フルオロアリール基としては、例えば、モノフルオロフェニル基、ジフルオロフェニル基、テトラフルオロフェニル基に代表される核原子数が6〜12のフルオロアリール基が挙げられる。
また、R2は、上述のアルキル基、フルオロアルキル基、アリール基及びフルオロアリール基のうちの1種以上と、それらの基に対応する2価の基、すなわち、アルキレン基、フルオロアルキレン基、アリーレン基及びフルオロアリーレン基、のうちの1種以上とが結合した1価の基であってもよい。そのような基としては、例えば、アルキレン基とパーフルオロアルキル基とが結合した基(ただし、この基はフルオロアルキル基の1種でもある。)、アルキレン基とアリール基とが結合した基、フルオロアルキル基とフルオロアリーレン基とが結合した基が挙げられる。
【0033】
2は、本実施形態における効果をより有効且つ確実に奏する観点から、アルキル基又はフルオロアルキル基であると好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)又は炭素数1〜12のパーフルオロアルキル基であるとより好ましく、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜10のフルオロアルキル基(ただし、パーフルオロアルキル基を除く。)であると更に好ましい。
【0034】
上記一般式(2)中のR3は、主鎖に酸素及び/又は硫黄原子1つ以上を有しても有しなくてもよく、かつ、アルキル基で置換されていてもいなくてもよい炭素数1〜18の2価の飽和炭化水素基を示す。当該炭素数は、1〜16であると好ましく、2〜14であるとより好ましい。R3の炭素数によってもゲル化能を制御することができる。また、合成及び原料入手の観点から、当該範囲の炭素数が好ましい。
【0035】
パーフルオロ基を有するゲル化剤としては、例えば、Rf1−R1−O−R2、Rf1−R1−S−R2、Rf1−R1−SO2−R2、Rf1−R1−OCO−R2、Rf1−R1−O−Ar−O−R2(ここで、Arは2価の芳香族基を示す。以下同様。)、Rf1−R1−SO2−Ar−O−R2、Rf1−R1−SO2−Ar−O−Rf4、Rf1−R1−SO2−Ar−O−Rf3−Rf4(ここで、Rf3はフルオロアルキレン基、Rf4はフルオロアルキル基を示す。)、Rf1−R1−SO−Ar−O−R2、Rf1−R1−S−Ar−O−R2、Rf1−R1−O−R5−O−R2(ここで、R5は、アルキレン基を示す。)、Rf1−R1−CONH−R2、Rf1−R1―SO2―Ar1−O−R3−O−Ar2−SO2−R4−Rf2(ここで、Ar1及びAr2はそれぞれ独立に、2価の芳香族基を示す。以下同様。)、Rf1−R1−O−Ar1−O−R3−O−Ar2―O―R4―Rf2、Rf1−R1−SO2−Ar1−O−R6−O−R7−O−Ar2−O−R4−Rf2(ここで、R6及びR7はそれぞれ独立に、アルキレン基を示す。以下同様。)の一般式で表される化合物が挙げられる。より具体的には、Rf1及びRf2がそれぞれ独立に、炭素数2〜10のパーフルオロアルキル基、R1が炭素数2〜4のアルキレン基、Arが(又はAr1及びAr2がそれぞれ独立に)p−フェニレン基又はp−ビフェニレン基、R2が炭素数4〜8のアルキル基である上記各一般式で表される化合物、並びに、その二量体構造、例えば、Rf1−R1−O−Ar−O−R2、Rf1−R1−SO2−Ar−O−R2、Rf1−R1−O−Ar1−O−R3−O−Ar2―O―R4―Rf2、Rf1−R1−SO2−Ar1−O−R6−O−R7−O−Ar2−O−R4−Rf2の一般式で表される化合物が挙げられる。
【0036】
上記一般式(3)において、Arは置換又は無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。2価の芳香族炭化水素基は、いわゆる「芳香族性」を示す環式の2価の基である。この2価の芳香族炭化水素基は、炭素環式の基であっても複素環式の基であってもよい。これらの2価の芳香族炭化水素基は、置換基により置換されていてもよく、置換されていない無置換のものであってもよい。2価の芳香族炭化水素基の置換基は、合成、あるいは原料入手の容易性という観点から選ぶこともできる。あるいは、2価の芳香族炭化水素基の置換基は、ゲル化剤の溶解温度及びゲル化能の観点から選ぶこともできる。
【0037】
炭素環式の基は、その核原子数が6〜30であり、置換基により置換されていてもよく、置換されていない無置換のものであってもよい。その具体例としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基、フェナンスリレン基、ピレニレン基、クリセニレン基及びフルオランテニレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。
複素環式の基は、その核原子数が5〜30であり、例えば、ピローレン基、フラニレン基、チオフェニレン基、トリアゾーレン基、オキサジアゾーレン基、ピリジレン基及びピリミジレン基に代表される核を有する2価の基が挙げられる。
Arは、原料入手容易性及び合成容易性の観点並びに電解液におけるゲル化能の観点から、置換又は無置換の核原子数6〜20の2価の芳香族炭化水素基であると好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ターフェニレン基及びアントラニレン基からなる群より選ばれる基であるとより好ましい。
また、上記置換基としては、メチル基及びエチル基に代表されるアルキル基、並びにハロゲン原子が挙げられる。
【0038】
脂環式炭化水素基は、その各原子数が5〜30であり、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。
【0039】
芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基は、その各原子数が当該範囲内であれば複数の基が連結したり、炭素環と複素環との両者を有したり、芳香族基と脂環式基との両者を有することもできる。
【0040】
上記一般式(3)において、R5は主鎖の炭素数1〜20の置換若しくは無置換の1価の炭化水素基を示し、飽和であっても不飽和であってもよい。R5は脂肪族炭化水素基であってもよく、更に芳香族炭化水素基を有していてもよい。この炭化水素基の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。この炭化水素基が1価の脂肪族炭化水素基である場合、分岐していてもよく分岐していなくてもよく、分岐鎖の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい。また、この炭化水素基鎖中に酸素原子及び/又は硫黄原子を含んでいてもよい。さらに、1価の炭化水素基が芳香族炭化水素基を有する場合、この芳香族炭化水素基が更に置換基を有していてもよく有していなくてもよい。ただし、この1価の炭化水素基は、上記一般式(3)で表される化合物(以下「化合物(3)」とも記す。)が非水溶媒に溶解して、その非水溶媒を含む電解液をゲル化させるために、ベンジル基に代表されるアリールアルキル基等の、化合物(3)を非水溶媒に溶解可能にする炭化水素基である必要がある。その1価の炭化水素基の炭素数が21以上であると、原料の入手が困難となる。R5で示される1価の炭化水素基は、本実施形態における上記効果をより有効かつ確実に奏する観点から、炭素数4〜18のアルキル基であると好ましく、炭素数4〜14のアルキル基であるとさらに好ましい。また、R5は、ゲル化能とハンドリング性との観点から、直鎖のアルキル基であると好ましい。
【0041】
上記一般式(3)において、X3は下記式(3a)〜(3g)のいずれかの2価の基、又は下記式(3a)〜(3g)のいずれか複数の基が結合した2価の基を示す。下記式(3a)、(3e)、(3g)のいずれかの2価の基であると好ましい。
【化5】

上記一般式(3)において、X3は化合物(3)をリチウムイオン二次電池に用いた際、長期にわたって安定である点とゲル化能とから選択する必要がある。X3が上記式(3a)で表される基である場合には非常に安定性が高いゲルができる傾向にある。また、X3が上記式(3e)で表される基である場合にはゲル−ゾルの転移を温度だけではなく光照射でも誘起できる点で用途拡大に繋がる。
【0042】
上記一般式(3)において、Cはクマリン部位を示し、下記式(3z)中、Raは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。
【化6】

【0043】
上述した低分子ゲル化剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0044】
本実施形態に用いる電解液における低分子ゲル化剤の含有量は任意であるが、非水溶媒との含有比として、質量基準で、低分子ゲル化剤:非水溶媒が0.1:99.9〜10:90であると好ましく、0.3:99.7〜5:95であるとより好ましい。これらの成分の含有比が当該範囲内にあることにより、上記電解液を用いたリチウムイオン二次電池は、特に高い電池特性を示す。また、低分子ゲル化剤がゲル化剤として作用する場合、上記成分の含有比が当該範囲内にあることにより、ゲル化能とハンドリング性とを共に良好にすることができる。なお、ゲル化剤の電解液への含有量が多いほど、電解液は相転移点が高く強固なゲルとなり、ゲル化剤の含有量が少ないほど、電解液の粘度が低く取り扱いやすくなる。
【0045】
本実施形態に用いるゲル化剤のうち、パーフルオロ基を有するゲル化剤は、例えば、国際公開第2007/083843号、特開2007−191626号公報、特開2007−191627号公報及び特開委2007−191661号公報に記載の方法を参照して製造することができる。
【0046】
また、本実施形態に用いるパーフルオロ基を有するゲル化剤は、例えば、次のスキームによって合成することができる。
すなわち、まず、市販品を入手可能な下記式(I)で表される化合物より下記式(II)で表される化合物を下記のとおり合成する。
【化7】

【0047】
上記式(I)で表される化合物(4−ヒドロキシ−4’−メルカプトフェニル)は、4−ヒドロキシ−4’−メルカプトビフェニルに代えてもよいが、以下の説明では、4−ヒドロキシ−4’−メルカプトフェニルを用いた例を示す。次いで、上記式(II)で表される化合物を下記のとおり2量化して、式(III)で表される化合物を得る。
【化8】

【0048】
この場合、式(II)で表される化合物について、パーフルオロアルキル基の炭素数が互いに異なるものを用い(例えば、一方のnを異なる数値であるmに代え)てもよく、また、R1を、それとは異なる2価の炭化水素基であるR3に変更してもよい。ただし、確率的に両者が1対1のモル比で反応するとは限らないため、安定的に所望の化合物を得る観点から、式(II)で表される化合物として同一の化合物を用いることが好ましい。
ここで、式(III)で表される化合物はゲル化能を有するが、更に下記反応式に示すように、チオエーテル部分を酸化し、スルホニル化又はスルホキシド化することにより、下記式(IV)で表されるパーフルオロ基を有するゲル化剤を得る。
【化9】

【0049】
なお、上記一般式(IV)で表されるパーフルオロ基を有するゲル化剤の製造スキームにおける限り、nは2〜18の整数を示し、R1及びR3はそれぞれ独立に、単結合又は主鎖の炭素数1〜6の置換若しくは無置換の2価の炭化水素基を示し、R2はエーテル基又はチオエーテル基を有していてもよい主鎖の炭素数3〜18の置換又は無置換の2価の炭化水素基を示し、Xはそれぞれ独立にSO基又はSO2基を示す。
【0050】
さらに、本実施形態に用いるパ
ーフルオロ基を有するゲル化剤は、例えば、次のスキームによって合成することができる。まず、下記一般式(11a)で表されるチオール化合物を、乾燥THFなどの溶媒中、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、下記一般式(11b)で表される化合物でスルフィド化して、下記一般式(11c)で表される化合物を得る。
HS−Ar−OH (11a)
m2m+1p2p1 (11b)
m2m+1p2p−S−Ar−OH (11c)
【0051】
次いで、上記一般式(11c)で表される化合物を3−ペンタノンなどの溶媒中、K2CO3などのアルカリ金属化合物の存在下、下記一般式(11d)で表される化合物でエーテル化して、下記一般式(11e)で表される化合物を得る。
12 (11d)
m2m+1p2p−S−Ar−O−R1 (11e)
【0052】
そして、上記一般式(11e)で表される化合物を、酢酸などの触媒の存在下で、過酸化水素などの酸化剤により酸化することで、下記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物が得られる。
m2m+1p2p−SO2−Ar−O−R1 (11j)
ここで、上記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物の製造スキームにおける限り、Arは置換又は無置換の核原子数8〜30の2価の芳香族基を示し、R1は飽和又は不飽和の炭素数1〜20の1価の炭化水素基を示し、mは2〜16の自然数を示し、pは0〜6の整数を示す。また、X1は、例えばヨウ素原子などのハロゲン原子を示し、X2は、例えば臭素原子などのハロゲン原子を示す。
【0053】
かかる合成法としては、例えば国際公開第2009/78268に記載の合成法を参照することができる。
【0054】
また、Arがビフェニレン基やターフェニレン基などの複数の芳香環を単結合により結合した基である場合は、例えば下記合成法により、上記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物を得ることができる。まず、下記一般式(11f)で表されるチオール化合物を、乾燥THFなどの溶媒中、トリエチルアミンなどの塩基の存在下、上記一般式(11b)で表される化合物でスルフィド化して、下記一般式(11g)で表される化合物を得る。ここで、式(11f)及び(11g)中、m及びpは式(11j)におけるものと同義であり、X3は、例えば臭素原子などのハロゲン原子を示し、Ar2は、上記式(11j)におけるArを構成する2価の芳香族炭化水素基の一部を示す。
HS−Ar2−X3 (11f)
m2m+1p2p−S−Ar2−X3 (11g)
【0055】
次いで、上記一般式(11g)で表される化合物を、酢酸などの触媒の存在下で、過酸化水素などの酸化剤により酸化することで、下記化合物(11h)が得られる。ここで、式(11h)中、Ar2、X3、m及びpは、式(11g)におけるものと同義である。
m2m+1p2p−SO2−Ar2−X3 (11h)
【0056】
そして、上記一般式(11h)で表される化合物と下記一般式(11i)で表される化合物とから、K2CO3などの塩基水溶液中、パラジウム触媒の存在下で、鈴木・宮浦カップリングにより、上記一般式(11j)で表されるパーフルオロ化合物を得る。ここで、式(11i)中、R1は、上記式(11j)におけるものと同義であり、Ar3は、上記式(11j)におけるArを構成する2価の芳香族炭化水素基のAr2とは別の一部を示し、Ar2とAr3が単結合により結合したものがArとなる。
1−O−Ar3−B(OH)2 (11i)
【0057】
また、本実施形態に用いるパーフルオロ基を有するゲル化剤は、例えば、次のスキームによって合成することができる。すなわち、下記一般式(Ia)で表される化合物と下記一般式(IIa)で表される化合物とから、光延反応などの脱水縮合により、パーフルオロ基を有するゲル化剤の一種である下記一般式(IIIa)で表される化合物を合成することができる。ここで、式中、Y1及びY2はそれぞれ独立に、S原子又はO原子である。
Rf1−R1−Y1−Z−Y2H (Ia)
Rf22OH (IIa)
Rf1−R1−Y1−Z−Y2−R2−Rf2 (IIIa)
【0058】
また、上記一般式(IIIa)で表される化合物において、Y1及び/又はY2がS原子である場合に、そのS原子を更にスルホニル化又はスルホキシド化することにより、パーフルオロ基を有するゲル化剤の別の一種である下記一般式(IVa)で表される化合物を合成することができる。ここで、Y3及びY4の少なくとも一方は、SO基又はSO2基であり、Y3及びY4の一方がSO基又はSO2基である場合の他方はS原子又はO原子である。
Rf1−R1−Y3−Z−Y4−R2−Rf2 (IVa)
【0059】
上記一般式(Ia)で表される化合物は、例えば、下記式(Va)で表される化合物の活性水素(チオール基又は水酸基の水素原子)を、アルカリ条件下で、パーフルオロアルカンハロゲン化物(例えばヨウ化物)のパーフルオロアルキル基で置換することにより合成することができる。
HY1−Z−Y2H (Va)
また、上記式(IIa)で表される化合物は、パーフルオロアルカンハロゲン化物(例えばヨウ化物)のアルケノールへの付加反応により得られるアルカノールのハロゲン化物を、更に還元することにより合成することができる。
【0060】
ここで、上記一般式(IIIa)又は(IVa)で表されるパーフルオロ化合物の製造スキームにおける限り、Rf1及びRf2はそれぞれ独立に、主鎖の炭素数2〜18の置換又は無置換のパーフルオロアルキル基を示し、R1及びR2はそれぞれ独立に、単結合又は主鎖の炭素数1〜8の置換若しくは無置換の2価の炭化水素基を示し、Zは置換又は無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示す。
【0061】
ただし、本実施形態に用いるパーフルオロ基を有するゲル化剤の合成方法は上記の方法に限定されない。
【0062】
また、本実施形態に用いるクマリン型ゲル化剤(化合物(3))は、例えば液晶討論会講演予稿集p44(2007)に記載の化合物を用いることができる。
【0063】
また、アゾ基を有する化合物(3)は、例えば、下記のような反応経路で合成することができる。
【化10】

このように合成されるアゾ基を有する化合物(3)としては、例えば、下記式(3I)で表される化合物(以下「化合物(3I)」とも記す。)及び下記式(3II)で表される化合物(以下「化合物(3II)」とも記す。)が挙げられる。
【化11】

以下、化合物(3I)及び(3II)の合成方法について詳細に説明する。
〔化合物(3I)の合成方法〕
工程1:化合物(a)の合成
【化12】

ナスフラスコに濃硝酸及び濃硫酸の混合溶液を加える。当該ナスフラスコを氷浴で冷却しながら、クマリンを、混合溶液の温度が20℃を超えないように徐々に加える。クマリンを全量加え終えたら氷浴を外し、室温で1時間攪拌して反応させる。当該反応液を水中に注ぎ、析出した固体を濾取する。濾取した固体を、トルエンで再結晶を行い、淡黄色の固体の化合物(a)を得る。
工程2:化合物(b)の合成
【化13】

ナスフラスコにおいて、化合物(a)をエタノール及びトルエンの混合溶液に溶かして、Pd/Cの存在下、水素添加反応を行う。水素添加反応後、Pd/Cを濾取し、濾液をエバポレーターで濃縮する。析出した固体をトルエンで再結晶を行い、黄色固体の化合物(b)を得る。
工程3:化合物(c)の合成
【化14】

ナスフラスコにおいて、5℃氷冷下、12Nの塩酸及び水の水溶液を調製する。当該水溶液中に、化合物(b)及び亜硝酸ナトリウム(NaNO2)を加えて、20分間攪拌する。さらに、フェノール、水酸化ナトリウム及び水の混合溶液を加えて攪拌する。析出した固体をトルエンで再結晶を行い、化合物(c)を得る。
工程4:化合物(3I)の合成
【化15】

ナスフラスコにおいて、化合物(c)を3−ペンタノンに溶解する。得られた溶液中に、1−ブロモオクタン及び炭酸カリウムを加えて15時間還流を行う。得られた固体をトルエンで再結晶を行い、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物(3I)を得る。なお、前記カラムクロマトグラフィーにおいて、充填剤としてシリカゲルを用い、展開溶媒としてクロロホルムを用いる。
〔化合物(3II)の合成方法〕
【化16】

ナスフラスコにおいて、化合物(c)を3−ペンタノンに溶解する。得られた溶液中に、1−ブロモヘキサン及び炭酸カリウムを加えて15時間還流を行う。得られた固体をトルエンで再結晶を行い、カラムクロマトグラフィーで精製して化合物(3II)を得る。なお、前記カラムクロマトグラフィーにおいて、充填剤としてシリカゲルを用い、展開溶媒としてクロロホルムを用いる。
【0064】
ただし、化合物(3)の製造方法は、上記方法に限定されるものではない。
本実施形態に用いる電解液は、低温状態でゲル、高温状態でゾルとなる相転移型のゲル電解質溶液であると好ましい。本実施形態のリチウムイオン二次電池において、電解液がゲル電解質溶液であると、注液等のハンドリング性に優れると共に漏液低減などの安全性が高いレベルで確保できる傾向にある。その中でも前記ゲルと前記ゾルとの相転移温度が50〜150℃の範囲にあるとより好ましい。
【0065】
本実施形態に用いる電解液は、セパレータに充分に含浸され、電解液中の低分子ゲル化剤の一部がセパレータの孔の中に存在していることが好ましい。低分子ゲル化剤はセパレータ表面に付着したり、電極に含浸されるが、セパレータの孔の中にも存在することが好ましい。
例えば、不織布の孔全体またはその一部に低分子ゲル化剤会合体が充填されることにより、不織布特有の孔径の大きさ、および孔径分布の不均一性を改善することができる。つまり、充放電に伴う正極および負極の膨張収縮に起因した電極間の内部ショートや、電流密度の不均一性により生成したリチウムデンドライトによる内部ショートを防止することができる。そのため、ある一定の孔構造を有する不織布と低分子ゲル化剤とを複合したものを備えるリチウムイオン二次電池は安定した充放電特性を示す。
【0066】
非水溶媒とリチウム塩と低分子ゲル化剤との混合比は目的に応じて選択できるが、電解質の濃度、低分子ゲル化剤の含有量の全てが上述の好ましい範囲、さらにはより好ましい範囲にあると望ましい。このような組成で電解液を作製することで、電池特性、取扱い性を更に良好なものとすることができる。
【0067】
本実施形態に用いる電解液の調製方法は上記各成分を混合する方法であれば特に限定されず、電解質と非水溶媒と低分子ゲル化剤との混合順は問わない。例えば、所定量の電解質と非水溶媒とを混合して予備電解液を調製した後、低分子ゲル化剤とをその予備電解液に混合して本実施形態に用いる電解液を得ることができる。あるいは、全ての成分を所定量で同時に混合して本実施形態に用いる電解液を得ることも可能である。低分子ゲル化剤を含む電解液を一度加熱して、混合物中の各成分が均一になった状態で室温に冷却すると好ましい。
なお、本実施形態に用いる電解液は、リチウムイオン二次電池で求められる安全性と電池の特性とを満足することに特に優れ、リチウムイオン二次電池で好適に使用される。
【0068】
<正極>
本実施形態のリチウムイオン二次電池において、正極は、正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する材料を用いる。そのような材料としては、例えば、下記一般式(6a)及び(6b)で表される複合酸化物、トンネル構造及び層状構造の金属カルコゲン化物及び金属酸化物、オリビン型リン酸化合物が挙げられる。
LixMO2 (6a)
Liy24 (6b)
ここで、式中、Mは遷移金属から選ばれる1種以上の金属を示し、xは0〜1の数、yは0〜2の数を示す。
【0069】
より具体的には、例えば、LiCoO2に代表されるリチウムコバルト酸化物;LiMnO2、LiMn24、Li2Mn24に代表されるリチウムマンガン酸化物;LiNiO2に代表されるリチウムニッケル酸化物;LizMO2(MはNi、Mn、Co、Al及びMgからなる群より選ばれる2種以上の元素を示し、zは0.9超1.2未満の数を示す)で表されるリチウム含有複合金属酸化物;LiFePO4で表されるリン酸鉄オリビンが挙げられる。また、正極活物質として、例えば、S、MnO2、FeO2、FeS2、V25、V613、TiO2、TiS2、MoS2及びNbSe2に代表されるリチウム以外の金属の酸化物も例示される。さらには、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリピロールに代表される導電性高分子も正極活物質として例示される。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極が、正極活物質として、リチウム含有化合物を含むことが好ましい。
【0070】
また、正極活物質としてリチウム含有化合物を用いると、高電圧及び高エネルギー密度を得ることができる傾向にあるので好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、リチウムを含有するものであればよく、例えば、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物及びリチウムと遷移金属元素とを含むケイ酸金属化合物(例えばLituSiO4、Mは上記式(6a)と同義であり、tは0〜1の数、uは0〜2の数を示す。)が挙げられる。より高い電圧を得る観点から、特に、リチウムと、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、バナジウム(V)及びチタン(Ti)からなる群より選ばれる1種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物並びにリン酸化合物が好ましい。
【0071】
より具体的には、かかるリチウム含有化合物としてリチウムを有する金属酸化物、リチウムを有する金属カルコゲン化物及びリチウムを有するリン酸金属化合物が好ましく、例えば、それぞれ下記一般式(7a)、(7b)で表される化合物が挙げられる。
LivI2 (7a)
LiwIIPO4 (7b)
ここで、式中、MI及びMIIはそれぞれ1種以上の遷移金属元素を示し、v及びwの値は電池の充放電状態によって異なるが、通常vは0.05〜1.10、wは0.05〜1.10の数を示す。
【0072】
上記一般式(7a)で表される化合物は一般に層状構造を有し、上記一般式(7b)で表される化合物は一般にオリビン構造を有する。これらの化合物において、構造を安定化させる等の目的から、遷移金属元素の一部をAl、Mg、その他の遷移金属元素で置換したり結晶粒界に含ませたりしたもの、酸素原子の一部をフッ素原子等で置換したものも挙げられる。更に、正極活物質表面の少なくとも一部に他の正極活物質を被覆したものも挙げられる。
【0073】
正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0074】
正極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.05μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。正極活物質の数平均粒子径は湿式の粒子径測定装置(例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布計、動的光散乱式粒度分布計)により測定することができる。あるいは、透過型電子顕微鏡にて観察した粒子100個をランダムに抽出し、画像解析ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフト、商品名「A像くん」)で解析し、その相加平均を算出することでも得られる。この場合、同じ試料に対して、測定方法間で数平均粒子径が異なる場合は、標準試料を対象として作成した検量線を用いてもよい。
【0075】
正極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、まず、上記正極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した正極合剤を溶剤に分散させて正極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この正極合剤含有ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、正極が作製される。
ここで、正極合剤含有ペースト中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
正極集電体は、例えば、アルミニウム箔、又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
【0076】
<負極>
本実施形態のリチウムイオン二次電池において、負極は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を用いる。本実施形態のリチウムイオン二次電池において、負極は、負極活物質として、金属リチウム、炭素材料、リチウムと合金形成が可能な元素を含む材料、及び、リチウム含有化合物からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有すると好ましい。そのような材料としては、金属リチウムの他、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛、熱分解炭素、コークス、ガラス状炭素、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭、グラファイト、炭素コロイド、カーボンブラックに代表される炭素材料が挙げられる。これらのうち、コークスとしては、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークスが挙げられる。また、有機高分子化合物の焼成体は、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものである。なお、本実施形態においては、負極活物質に金属リチウムを採用した電池もリチウムイオン二次電池に含めるものとする。
【0077】
更に、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料としては、リチウムと合金を形成可能な元素を含む材料も挙げられる。この材料は金属又は半金属の単体であっても合金であっても化合物であってもよく、またこれらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものであってもよい。
【0078】
なお、本明細書において、「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含める。また、合金が、その全体として金属の性質を有するものであれば非金属元素を有していてもよい。その合金の組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物又はこれらのうちの2種以上が共存する。
【0079】
このような金属元素及び半金属元素としては、例えば、チタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)及びイットリウム(Y)が挙げられる。
【0080】
これらの中でも、長周期型周期表における4族又は14族の金属元素及び半金属元素が好ましく、特に好ましいのはチタン、ケイ素及びスズである。
【0081】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、マグネシウム(Mg)、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン(Ti)、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロム(Cr)からなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
【0082】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、マグネシウム、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン及びクロムからなる群より選ばれる1種以上の元素を有するものが挙げられる。
【0083】
チタンの化合物、スズの化合物及びケイ素の化合物としては、例えば酸素(O)又は炭素(C)を有するものが挙げられ、チタン、スズ又はケイ素に加えて、上述の第2の構成元素を有していてもよい。
また、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料としてリチウム含有化合物も挙げられる。リチウム含有化合物としては、正極材料として例示したものと同じものを用いることができる。
【0084】
負極活物質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0085】
負極活物質の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmである。負極活物質の数平均粒子径は、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。
【0086】
負極は、例えば、下記のようにして得られる。すなわち、まず、上記負極活物質に対して、必要に応じて、導電助剤やバインダー等を加えて混合した負極合剤を溶剤に分散させて負極合剤含有ペーストを調製する。次いで、この負極合剤含有ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、それを必要に応じて加圧し厚みを調整することによって、負極が作製される。
ここで、負極合剤含有ペースト中の固形分濃度は、好ましくは30〜80質量%であり、より好ましくは40〜70質量%である。
負極集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
【0087】
正極及び負極の作製にあたって、必要に応じて用いられる導電助剤としては、例えば、グラファイト、アセチレンブラック及びケッチェンブラックに代表されるカーボンブラック、並びに炭素繊維が挙げられる。導電助剤の数平均粒子径(一次粒子径)は、好ましくは0.1μm〜100μm、より好ましくは1μm〜10μmであり、正極活物質の数平均粒子径と同様にして測定される。また、バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンを含有する共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸、スチレンブタジエンゴム及びフッ素ゴムが挙げられる。
【0088】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、例えば、図1に概略的に断面図を示すリチウムイオン二次電池である。図1に示されるリチウムイオン二次電池100は、セパレータ110と、そのセパレータ110を両側から挟む正極120と負極130と、さらにそれらの積層体を挟む正極集電体140(正極の外側に配置)と、負極集電体150(負極の外側に配置)と、それらを収容する電池外装160とを備える。正極120とセパレータ110と負極130とを積層した積層体は、上述した電解液に含浸されている。これらの各部材としては、電解液及びセパレータを上述したような組み合わせとすれば、その他の部材は、従来のリチウムイオン二次電池に備えられるものを用いることができ、例えば上述のものであってもよい。
【0089】
<電池の作製方法>
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上述の特定セパレータ及び電解液と、正極と、負極とを用いて、公知の方法により作製される。例えば、正極と負極とを、その間にセパレータを介在させた積層状態で巻回して巻回構造の積層体に成形したり、それらを折り曲げや複数層の積層などによって、交互に積層した複数の正極と負極との間にセパレータが介在する積層体に成形したりする。次いで、電池ケース(外装)内にその積層体を収容して、本実施形態に用いる電解液をケース内部に注液し、上記積層体を電解液に浸漬して封印することによって、本実施形態のリチウムイオン二次電池を作製することができる。あるいは、ゲル化させた電解液を含む電解質膜を予め作製しておき、正極、負極、電解質膜及び必要に応じてセパレータを、上述のように折り曲げや積層によって積層体を形成した後、電池ケース内に収容してリチウムイオン二次電池を作製することもできる。本実施形態のリチウムイオン二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、楕円形、角筒型、ボタン形、コイン形、扁平形及びラミネート形などが好適に採用される。
【0090】
本実施形態に用いる電解液は、高い伝導度と高い安全性(例えば、難燃性、保液性)を実現し得るので、当該電解液と上述した特定のセパレータとを備えるリチウムイオン二次電池は、高い電池特性(例えば、充放電特性、低温作動性、高温耐久性等)を有すると同時に高い安全性をも実現する。具体的には、電解液がその性質に対して影響の小さいゲル化剤を含むため、上述した特定の電解液及びセパレータを備えるリチウムイオン二次電池は、特に、従来のポリマー電池に見られたような伝導性や電池特性の大幅な低下を抑制することができる。また、電解液がゲル化剤としての機能と共に燃焼抑制作用を有する添加剤を含有することにより、電解液の電池外部への漏洩を防止できるのはもちろんのこと、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、リチウムデンドライトによる危険性や燃焼の危険性も更に低減することができる。これら両添加剤を併用することで添加剤に由来する充放電サイクル特性の低下を抑制できると共に、単独の添加剤では成し得ない高い安全性を達成できる。
【0091】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、25℃における充放電サイクル試験を100サイクル行ったときの時の放電容量維持率が80%以上であると好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。本実施形態において、充放電サイクル試験とは、作製した電池の充放電を共に1C条件で実施する場合を示す。なお、電池の充電と放電とを各1回ずつ実施すると1サイクルと数え、放電容量維持率は2サイクル目の放電容量を100%として計算する。
【0092】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例】
【0093】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、リチウムイオン二次電池の各種特性は下記のようにして測定、評価された。
【0094】
(i)セパレータの孔径測定
評価に用いたセパレータの孔径をデジタルマイクロスコープにて測定した。デジタルマイクロスコープにはキーエンス製のVHX−500Fを用い、300倍の視野で電池評価に使用するセパレータ全範囲を観察し、任意の1000個の孔のうち、短径が1.0μm以下である孔の数を測定した。当該孔の数から、1000個の孔のうち、短径が1.0μm以下の孔の数の割合を求めた。当該割合を、セパレータの有する全孔数のうち、短径が1.0μm以下の孔の数の割合とした。
短径が200μm以上の孔の数の割合も同様にして、任意の1000個の孔のうち、短径が200μm以上である孔の数を測定することにより求めた。
短径が150μm以上の孔の数の割合も同様にして、任意の1000個の孔のうち、短径が150μm以上である孔の数を測定することにより求めた。
また、セパレータの最表面に存在する孔のうち、短径が1.0μm以下の孔の数の割合、及びセパレータが有する全孔数のうち、一方の表面から他方の表面に連続した貫通孔の長径が150μm以上の孔の割合も同様にして、任意の1000個の孔のうち、短径が1.0μm以下である孔の数、及び貫通孔の長径が150μm以上である孔の数を測定することにより求めた。
また、セパレータである不織布の孔の短径及び長径は下記の通り定義した。不織布の孔が三角形の場合、長径はニ辺の中点を結んだ線分のうち最も長い線分の長さとし、短径はニ辺の中点を結んだ線分のうち最も短い線分の長さと定義した。不織布の孔が四角形の場合、対辺の中点を結んだ線分のうち最も長い線分の長さを長径とし、最も短い線分を短径と定義した。不織布の孔が多角形の場合、長径は最も長い頂点間距離とし、短径は最も短い頂点間距離と定義した。
【0095】
(ii)セパレータの透気度測定
JIS P−8117準拠のガーレー式の透気度計にて測定した。
(iii)セパレータの膜厚
評価に用いたセパレータの膜厚は膜厚計を用いて測定した。膜厚計にはMitutoyo製のデジマチックインジケーターを用い、セパレータ中の任意の3点の膜厚を測定し、その平均値をセパレータの膜厚とした。
【0096】
(iv)リチウムイオン二次電池の充電及び放電容量測定
特定の充電電流及び放電電流における充電容量及び放電容量を以下のとおり測定してリチウムイオン二次電池の充放電特性を評価した。
測定用のリチウムイオン二次電池として、1C=3mAとなる小型電池を作製して用いた。リチウムイオン二次電池の充電及び放電容量の測定は、アスカ電子(株)製充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。
(測定1)1mAの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で、合計8時間充電を行った。その後10分間の休止を経て、1mAで3.0Vまで放電したときの放電容量を測定した。
(測定2)続いて、3mAの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で、合計3時間充電を行った。その後10分間の休止を経て、3mAで3.0Vまで放電したときの放電容量を測定した。
このときの電池周囲温度は25℃に設定した。
(iv−ア)充放電効率測定
上記(iv)リチウムイオン二次電池の充電及び放電容量測定に記載の充放電測定1を1回行い、その後、測定2の充放電を4回行った。4回目の充放電効率を下記式により算出した。なお、この充放電効率の値が大きいほど電池特性は優れる。
充放電効率(%) = 放電時の容量/充電時の容量×100
(iv−イ)電圧変化
上記4回目の充電後、4回目の放電までの10分間の休止中の電圧変化をモニターした。電圧変化が小さいほど性能が安定した電池である。
【0097】
(v)ラミネート型リチウムイオン二次電池の充電挙動の評価
下記のようにして、ラミネート型リチウムイオン二次電池の初期充放電特性を評価した。測定用のリチウムイオン二次電池として、1C=48.0mAとなる単層ラミネート型電池を作製して用いた。測定は、アスカ電子(株)製充放電装置ACD−01(商品名)を用いて行った。15.0mAの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧になるよう電流値を変化させながら、合計8時間充電を行った。このときの電池周囲温度は25℃に設定した。当該充電条件で初回の充電が安定して行えた電池を○と評価し、充電の途中で電圧が降下したり、安定して充電が行えなかった電池を×と評価した。なお、電圧が4.2Vに到達せずに定電圧での充電を行えなかった場合、4.2Vに到達したにも関わらず、電流値が収束せずに4.2Vの定電圧での充電を行えなかった場合、及び、見かけ上、定格の電池容量以上に充電された場合は、安定して充電が行えなかったと判断した。
【0098】
(vi)リチウムイオン二次電池の容量維持率測定(サイクル試験)
容量維持率の測定は、アスカ電子(株)製充放電装置ACD−01(商品名)及び二葉科学社製恒温槽PLM−63S(商品名)を用いて行った。測定用のリチウムイオン二次電池として、(iv)リチウムイオン二次電池の充電及び放電容量測定と同様にして作製した電池を用いた。充放電サイクル試験では、まず1サイクル目として、3mAの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で、合計3時間充電を行った。その後10分間の休止を経て、1mAの定電流で放電し、3.0Vに到達した時点で再び10分間の休止を経た。続いて2サイクル目以降は、3mAの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で、合計3時間充電を行った。その後10分間の休止を経て、3mAの定電流で放電し、3.0Vに到達した時点で再び10分間の休止を経た。充電と放電とを各々1回ずつ行うのを1サイクルとし、100サイクルの充放電を行った。2サイクル目の放電容量を100%としたときの100サイクル目の放電容量の比率を容量維持率とした。電池の周囲温度は25℃に設定した。
【0099】
(vii)リチウムイオン二次電池の高温耐久性試験
電池の周囲温度を50℃に設定したこと以外は、「(vi)リチウムイオン二次電池の容量維持率測定(サイクル試験)」と同様にして充放電サイクル試験を100サイクルまで行い、高温時の容量維持率を測定した。
【0100】
(viii)単層ラミネート型リチウムイオン二次電池の過充電試験
過充電試験は1C=45.0mAとなる単層ラミネート型リチウムイオン二次電池を作製して用いた。測定は、アスカ電子(株)製充放電装置ACD−01(商品名)を用いて行った。充電率100%まで充電させた電池に対し、45.0mAの定電流でさらに充電を行い、電圧降下が認められる充電率を求めた。電圧降下が認められるということは、短絡が発生したことを意味する。
【0101】
(合成例1)
ゲル化剤として下記構造式(イ)で表される化合物(以下「化合物(イ)」とも記す。以下同様。)を以下のとおり合成した。
【化17】

まず、下記のスキームのようにして化合物(a)を得た。具体的には、200mLのナスフラスコ中で2−(ペルフルオロヘキシル)エチルアイオダイド29.89g(63mmol)と、p−ブロモチオフェノール11.34g((60mmol)とのdryテトラヒドロフラン(dryTHF)100mL溶液に、トリエチルアミン9.09g(90mmol)を加えて、84℃のオイルバスで10時間還流した。それを室温に戻した後、溶液中に固体が確認されたため、吸引濾過により固体を除去した。
濾液を300mLの分液漏斗に移した後、シクロペンチルメチルエーテルを加え、有機層を水で2回洗浄し、有機層に無水硫酸マグネシウムを加え、乾燥した。ひだ折り濾過で無水硫酸マグネシウムを除いた。得られた濾液を減圧下で濃縮し、残渣をエタノールで再結晶した。その結果、化合物(a)31.87gが得られた(収率99.3%)。
【化18】

次に、下記のスキームのようにして化合物(b)を得た。具体的には、300mLのナスフラスコ中で上記化合物(a)32.82g(61.3mmol)の氷酢酸100mL溶液に35%過酸化水素水13mL(151mmol)を加えて、70℃のオイルバスで2時間撹拌を行った。室温に戻した後、20%亜硫酸水素ナトリウム水溶液5mLを加えて、未反応の過酸化水素を還元した。このとき、既に溶液中に固体が析出していたが、水90mLを加えると、さらに固体が析出した。吸引濾過を行った後、固体を水で洗った。その結果、化合物(b)26.34gが得られた(収率75%)。
【化19】

そして、下記のスキームのようにして化合物(イ)を得た。具体的には、100mLのナスフラスコの中に、4−ヘキソキシフェニルボロン酸1.39g(6.58mmol)、化合物(b)3.7g(6.58mmol)、2Mの炭酸ナトリウム水溶液30mL、ジオキサン60mL(固体が溶けるまで加えた量)を加えた。これにパラジウムアセテート0.295g(1.31mmol)、トリフェニルホスフィン1.18g(4.5mmol)を加えた後、ナスフラスコにジムロート管を取り付け、N2雰囲気下、95℃で2.5時間激しく撹拌した。室温まで冷却した後、水50mLを加えて室温で2.5時間撹拌した。300mLの分液漏斗に移した後、有機溶媒として酢酸エチル80mLを加え、水層を除いた。この水層を酢酸エチル50mLで2回抽出した。これらの有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液120mLで1回、飽和食塩水で2回洗った。有機層を200mLの三角フラスコに移した後、活性炭0.2gを加えて室温で30分撹拌した。さらに硫酸ナトリウムを加えて室温で1時間撹拌した。
ヌッチェの中に深さ1cmまでセライトを敷き詰めて、それを用いて吸引濾過により固体を除去した。ろ液を200mLのナスフラスコに移した後、減圧下で濃縮し、固体(c)が得られた。固体(c)に石油エーテル20mL、メタノール30mLを加えたが、完全には溶けなかったため、吸引濾過し、濾液と固体(d)とした。上記の濾液を減圧下で濃縮して、固体(e)とした。固体(d)及び(e)の1H−NMRスペクトルを測定した結果、固体(d)の主成分が目的物であることが分かった。固体(d)をクロロホルムに溶かした際、溶液中に黒色の微結晶が確認されため、シリンダフィルタ(孔径0.45μm、直径13mm)に通して微結晶を取り除いた。フィルタに通した溶液を減圧下で濃縮して、クロロホルムで再結晶を行った。収率を上げるため、再結晶後の濾液を減圧下で濃縮して、クロロホルムとエタノールで再結晶を2回行った。計3回の再結晶の結果、化合物(イ)2.38gが得られた(収率54%)。
【化20】

ゲル化剤として、下記化合物(ロ)、化合物(ハ)、化合物(ニ)も同様にして合成した。
【化21】

【0102】
(製造例1)
<電解液の調製>
エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを体積比で1:2になるように混合し、混合液を得た。この混合液に、LiPF6を1モル/Lになるよう添加してゲル化されていない電解液(A)を作製した(以下、ゲル化剤添加前の電解液を「母電解液」という。)。この母電解液(A)に対して、ゲル化剤として上記で合成した化合物(イ)を添加し、90℃に加熱して均一に混合した後、25℃に降温して、化合物(イ)を1質量%含む電解液(a)を得た。
【0103】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムのニッケル、マンガン及びコバルト混合酸化物と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、混合酸化物:グラファイト炭素粉末:アセチレンブラック粉末:PVDF=100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合した。得られた混合物にN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて正極(α)を得た。
【0104】
<負極の作製>
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末I及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末IIと、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、グラファイト炭素粉末I:グラファイト炭素粉末II:カルボキシメチルセルロース溶液:ジエン系ゴム=90:10:1.44:1.76の固形分質量比で全体の固形分濃度が45質量%になるように混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ10μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを直径16mmの円盤状に打ち抜いて負極(β)を得た。
【0105】
<セパレータの準備>
セパレータとしてポリエチレンテレフタレートとアラミドからなる不織布(膜厚54μm、目付け21g/m2)を選択し、直径24mmの円盤状に打ち抜いてセパレータ(γ)を得た。得られたセパレータの孔径と透気度とを上記のとおり測定した。結果を表1に示す。
【0106】
<電池組み立て>
上述のようにして作製した正極(α)と負極(β)とをセパレータ(γ)の両側に重ね合わせた積層体を、SUS製の円盤型電池ケースに挿入した。次いで、この電池ケース内に90℃に加熱した電解液(a)を0.5mL注入し、積層体を電解液(a)に浸漬した。その後、前記電池ケースを密閉してリチウムイオン二次電池(小型電池)を作製した。このリチウムイオン二次電池を80℃で1時間保持した後、25℃まで降温してリチウムイオン二次電池(1)を得た。
【0107】
(実施例2)
セパレータをポリエチレンテレフタレートからなる不織布(δ)(膜厚24μm、目付け17g/m)に変更した以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池(2)を得た。
【0108】
(実施例3)
セパレータをポリエチレンテレフタレートからなる不織布(ε)(膜厚32μm、目付け19g/m)に変更した以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池(3)を得た。
【0109】
実施例1〜3で作製したリチウムイオン二次電池(1)〜(3)について「(iv)リチウムイオン二次電池の充電及び放電容量測定」に記載の評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
(比較例1)
電解液(a)の代わりに、母電解液(A)をそのまま電解液として用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池(4)を得た。
【0111】
(比較例2)
電解液(a)の代わりに、母電解液(A)をそのまま電解液として用いたこと以外は実施例2と同様にして、リチウムイオン二次電池(5)を得た。
【0112】
(比較例3)
電解液(a)の代わりに、母電解液(A)をそのまま電解液として用いたこと以外は実施例3と同様にして、リチウムイオン二次電池(6)を得た。
【0113】
(比較例4)
セパレータをポリオレフィンからなる不織布(ζ)(膜厚40μm、目付け6.0g/m)に変更し、電解液(a)の代わりに、母電解液(A)をそのまま電解液として用いたこと以外は実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池(7)を得た。
【0114】
比較例1〜4で作製したリチウムイオン二次電池(4)〜(7)について「(iv)リチウムイオン二次電池の充電及び放電容量測定」に記載の評価を行った。結果を表1に示す。
【表1】

【0115】
表1から分かるように本実施形態の特定の孔構造を示す材料をセパレータに用い、また、特定の低分子ゲル化剤を含有する電解液を用いたリチウムイオン二次電池(1)〜(3)は、特定の孔構造を有するセパレータ及び低分子ゲル化剤を使用しないリチウムイオン二次電池(4)〜(7)と比較して、短絡することなく、安定した充放電挙動を示すことが分かった。
【0116】
(実施例4)
<正極の作製>
正極活物質として数平均粒子径11μmのリチウムのニッケル、マンガン及びコバルト混合酸化物と、導電助剤として数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末及び数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、100:4.2:1.8:4.6の質量比で混合した。得られた混合物にN−メチル−2−ピロリドンを固形分68質量%となるように投入して更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを縦50mm×横30mmの矩形状に打ち抜いて正極(η)を得た。
【0117】
<負極の作製>
負極活物質として数平均粒子径12.7μmのグラファイト炭素粉末及び数平均粒子径6.5μmのグラファイト炭素粉末と、バインダーとしてカルボキシメチルセルロース溶液(固形分濃度1.83質量%)と、ジエン系ゴム(ガラス転移温度:−5℃、乾燥時の数平均粒子径:120nm、分散媒:水、固形分濃度40質量%)とを、90:10:1.44:1.76の固形分質量比で全体の固形分濃度が45質量%になるように混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ18μmの銅箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。圧延後のものを縦52mm×横32mmの矩形状に打ち抜いて負極(θ)を得た。
【0118】
<電池組み立て>
カップ成形済み包材(矩形外端の寸法:68mm×48mm)2枚を、開口側が互いに向き合うように重ねて、その周縁の三辺をシールしてラミネートセル外装を作製した。続いて、セパレータ(ε)を用意し、上述のようにして作製した正極(η)と負極(θ)とをセパレータ(ε)を介して交互に重ね合わせて得られる積層体を、ラミネートセル外装内に配置した。次いで、そのセル外装内に、ゲル化剤として上記のようにして合成した化合物(イ)を母電解液(A)に添加して得られたゲル電解液(b)(ゲル化剤含有量:3質量%)を投入後、減圧下でラミネートセル外装の残りの一辺をシールしてリチウムイオン二次電池を得た。得られたリチウムイオン二次電池を減圧下、95℃で4時間保持した後、25℃まで降温させた。その後、減圧下にて本シールを行うことで、ラミネート型リチウムイオン二次電池(8−1)〜(8−3)を得た。
【0119】
上記のようにして得たラミネート型リチウムイオン二次電池(8−1)〜(8−3)について上記「(v)ラミネート型リチウムイオン二次電池の充電挙動の評価」に記載の評価を行った。結果を表2に示す。
【0120】
(比較例5)
電解液(b)に代えて、母電解液(A)を用いた以外は実施例4と同様にして、ラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、母電解液(A)の注入は、大気圧と100mmHgの減圧とを気泡発生がなくなるまで繰り返しながら行った。こうして、単層ラミネート型リチウムイオン二次電池(9−1)〜(9−3)を得た。
【0121】
上記のようにして得たラミネート型リチウムイオン二次電池(9−1)〜(9−3)について上記「(v)ラミネート型リチウムイオン二次電池の充電挙動の評価」に記載の評価を行った。結果を表2に示す。
【表2】

【0122】
表2から分かるように、本実施形態の特定の孔構造を示す材料をセパレータに用い、また、特定の低分子ゲル化剤を含有する電解液を用いたラミネート型リチウムイオン二次電池(8−1)〜(8−3)は、特定の低分子ゲル化剤を用いないラミネート型リチウムイオン二次電池(9−1)及び(9−2)と比較して、短絡することなく、安定した充放電挙動を示すこと分かった。
【0123】
(実施例5〜実施例16、比較例6〜比較例17)
母電解液(A)に対して、上記化合物(イ)、化合物(ロ)、化合物(ハ)、化合物(ニ)で表されるゲル化剤のいずれかを、表3に示す含有量(電解液の総量を基準として)になるよう添加した以外は実施例1と同様にして、電解液(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、及び(h)をそれぞれ調製した。上記電解液(a)〜(h)及びセパレータとしてセパレータ(ε)、及びセパレータの有する全孔数のうち、短径が1.0μm以下の孔の数が100%であるセパレータ(ι)(ポリエチレン製微多孔膜、膜厚:25μm)のいずれかを用いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池(10)〜(33)を作製した。リチウムイオン二次電池(10)〜(25)については、上記「(vi)リチウムイオン二次電池の容量維持率測定(サイクル試験))」に記載の測定を行った。また、リチウムイオン二次電池(26)〜(33)に関しては、上記「(vii)リチウムイオン二次電池の高温耐久性試験」を行った。結果を表3に示す。
【表3】

【0124】
表3に示すように、本実施形態の特定の孔構造を示す不織布をセパレータとして用い、また、特定の低分子ゲル化剤を含有する電解液を用いたリチウムイオン二次電池(10)〜(17)及び(26)〜(29)は、特定構造を有する不織布を用いないリチウムイオン二次電池(18)〜(25)及び(30)〜(33)と比較して、サイクル特性に優れることが分かった。
【0125】
(実施例17)
<正極の作製>
正極活物質として数平均粒子径10.8μmのリチウムコバルト酸(LiCoO)と、導電助剤として数平均粒子径42nmのアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、89.5:6.5:6.0の質量比で混合した。得られた混合物にN−メチル−2−ピロリドンを更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した、更に圧延後のものに対して150℃で10時間真空乾燥を行い、50mm×30mmの矩形状に打ち抜いて正極(κ)を得た。なお、得られた電極における真空乾燥後の合材について、片面あたりの目付量が24.8g/cm±3%、片面での厚さが82.6μm±3%、密度が3.0g/cm±3%、塗工幅がアルミニウム箔の幅200mmに対して150mmになるように溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)量を調整しながら、上記スラリー状の溶液を調製した。
【0126】
<負極の作製>
負極活物質としてグラファイト炭素粉末(商品名「MCMB25−28」、大阪ガスケミカル(株)製)と、導電助剤として数平均粒子径42nmのアセチレンブラック粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを、93.0:2.0:5.0の質量比で混合した。得られた混合物にN−メチル−2−ピロリドンを更に混合して、スラリー状の溶液を調製した。このスラリー状の溶液を厚さ14μm、幅200mmの銅箔に塗布し、溶剤を乾燥除去した後、ロールプレスで圧延した。更に圧延後のものに対して150℃で10時間真空乾燥を行い、52mm×32mmの矩形状に打ち抜いて負極(λ)を得た。なお、得られた電極における真空乾燥後の合材について、片面あたりの目付量が11.8g/cm±3%、片面での厚さが84.6μm±3%、密度が1.4g/cm±3%、塗工幅が銅箔の幅200mmに対して150mmになるように溶剤量(N−メチル−2−ピロリドン)を調整しながら、上記スラリー状の溶液を調製した。
【0127】
<電解液の作成>
母電解液(A)に対して、ゲル化剤として上記のようにして合成した化合物(イ)とフルオロエチレンカーボネートとを添加し、90℃に加熱して均一に混合した後、25℃に降温して電解液(h)(化合物(イ):3質量%、フルオロエチレンカーボネート:3質量%)を得た。
【0128】
<電池組み立て>
アルミニウム層と樹脂層とを積層した矩形のラミネートフィルム(絞り加工なし、厚さ120μm、68mm×48mm)2枚を、アルミニウム層側を外側にして重ねて、その周縁の三辺をシールしてラミネートセル外装を作製した。続いて、実施例3と同様にして作製したセパレータ(ε)を用意し、上述のようにして作製した正極(κ)と負極(λ)とをセパレータを介して交互に複数重ね合わせた積層体を、ラミネートセル外装内に配置した。次いで、そのセル外装内に電解液(h)を投入し、ラミネートセルの残りの一辺を仮シールした。次いで、セル全体に対して90℃で2時間加熱を行うことで、電極とセパレータとの積層体に電解液を含浸させた。徐冷後、ラミネートセルの仮シールした一辺を本シールしてラミネート型リチウムイオン二次電池(34)を得た。この電池(34)について、上記「(viii)ラミネート型単層リチウムイオン二次電池の過充電試験」に記載の測定を行った。結果を表4に示す。
【0129】
(比較例18)
電解液(h)に代えて、母電解液(A)にフルオロエチレンカーボネートを添加した母電解液(B)(フルオロエチレンカーボネート:3質量%)を用いた以外は実施例17と同様にして、ラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、母電解液(B)の注入は、大気圧と100mmHgの減圧とを気泡発生がなくなるまで繰り返しながら行った。こうして、単層ラミネート型リチウムイオン二次電池(35)を得た。この電池(35)について、上記「(viii)ラミネート型単層リチウムイオン二次電池の過充電試験」に記載の測定を行った。結果を表4に示す。
【表4】

【0130】
表4に示すように、本実施形態の特定の孔構造を示す不織布をセパレータとして用い、また、特定の低分子ゲル化剤を含有する電解液を用いたリチウムイオン二次電池(34)は、過充電の異常時においても短絡が遅れ、より安全な電池になることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明のリチウムイオン二次電池は、例えば携帯電話、携帯オーディオ、パソコンなどの携帯機器に加え、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車などの自動車用充電池としての利用も期待される。
【符号の説明】
【0132】
100…リチウムイオン二次電池、110…セパレータ、120…正極、130…負極、140…正極集電体、150…負極集電体、160…電池外装。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒、リチウム塩及び低分子ゲル化剤を含む電解液と、
正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極と、
負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する負極と、
セパレータと、
を備え、
該セパレータの有する全孔数のうち、短径が1.0μm以下の孔の数の割合が20%以下である、リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
非水溶媒、リチウム塩及び低分子ゲル化剤を含む電解液と、
正極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する正極と、
負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料及び金属リチウムからなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する負極と、
セパレータと、
を備え、
該セパレータの透気度が50s/100cc以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記セパレータの有する全孔数のうち、短径が200μm以上の孔の数の割合が5%以下である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記セパレータの最表面に存在する孔のうち、短径が1.0μm以下の孔の数の割合が5%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記セパレータが有する全孔数のうち、一方の表面から他方の表面に連続した貫通孔の長径が150μm以上の孔の数の割合が5%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記セパレータの膜厚が20μm以上60μm以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
前記セパレータが不織布である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
前記低分子ゲル化剤が下記一般式(1)、(2)及び(3)からなる群より選択される一種以上の化合物を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
Rf1−R1−X1−L1−R2 (1)
Rf1−R1−X1−L1−R3―L2―X2―R4―Rf2 (2)
5−O−Ar−X3−C (3)
(式(1)及び(2)中、
Rf1及びRf2はそれぞれ独立に、炭素数2〜20のパーフルオロアルキル基を示し、
1及びR4はそれぞれ独立に、単結合若しくは炭素数1〜6の2価の飽和炭化水素基を示し、
1及びX2はそれぞれ独立に、下記式(1a)〜(1g)からなる群より選ばれる2価の官能基を示し、
1及びL2はそれぞれ独立に、単結合、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいオキシアルキレン基、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよいオキシシクロアルキレン基、又は、アルキル基若しくはハロゲン原子で置換されていてもよい2価のオキシ芳香族基を示し、
2は、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよい炭素数1〜20のアルキル基、アルキル基若しくはハロゲン原子(ただし、フッ素原子を除く。)で置換されていてもよいフルオロアルキル基、アリール基若しくはフルオロアリール基、又は、これらの基のうちの1種以上とこれらの基に対応する2価の基のうちの1種以上とが結合した1価の基を示し、
3は主鎖に酸素及び/又は硫黄原子1つ以上を有してもよく、かつ、アルキル基で置換されていてもよい炭素数1〜18の2価の飽和炭化水素基を示す。
【化1】

また、式(3)中、
5は主鎖の炭素数1〜20の置換又は無置換の炭化水素基を示し、
Arは置換若しくは無置換の核原子数5〜30の2価の芳香族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を示し、
3は、下記式(3a)〜(3g)のいずれかの2価の基、又は下記式(3a)〜(3g)のいずれか複数の基が結合した2価の基を示し、
Cは下記式(3z)で表されるクマリン部位を示し、下記式(3z)中、Raは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を示す。
【化2】

【化3】

【請求項9】
前記X1及びX2が、それぞれ独立に、前記式(1a)又は前記式(1d)で表される2価の官能基である、請求項8に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項10】
前記X1及びX2が、前記式(1d)で表される2価の官能基である、請求項8又は9に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項11】
前記電解液が、低温状態でゲル、高温状態でゾルとなる相転移型のゲル電解質溶液であり、
前記ゲルと前記ゾルとの相転移温度が50〜150℃の範囲にある、請求項1〜10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項12】
25℃における充放電サイクル試験を100サイクル行ったときの時の放電容量維持率が80%以上である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項13】
前記電解液が、前記セパレータに含浸され、前記低分子ゲル化剤の一部が前記セパレータの孔の中に存在している、請求項1〜12のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項14】
前記正極が、前記正極活物質として、リチウム含有化合物を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項15】
前記負極が、前記負極活物質として、金属リチウム、炭素材料、リチウムと合金形成が可能な元素を含む材料、及び、リチウム含有化合物からなる群より選ばれる1種以上の材料を含有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−64569(P2012−64569A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178584(P2011−178584)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】