リチウム二次電池用電極及びその電極を用いたリチウム二次電池
【課題】電解液を極板内へ十分に含浸させることによりイオン導電性の向上を図り、これによって負荷特性等の電池特性を飛躍的に向上させることができるリチウム二次電池用電極及びその電極を用いたリチウム二次電池を提供することを目的としている。
【解決手段】アルミニウム繊維5の不織布から成るシート状の正極集電体1と、この正極集電体1に担持された活物質層とを備えたリチウム二次電池用電極において、電極の厚み方向に上記正極集電体1と上記活物質層とを挿通する貫通孔10が形成されていることを特徴とする。
【解決手段】アルミニウム繊維5の不織布から成るシート状の正極集電体1と、この正極集電体1に担持された活物質層とを備えたリチウム二次電池用電極において、電極の厚み方向に上記正極集電体1と上記活物質層とを挿通する貫通孔10が形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池等に関し、特に、当該電池に用いられる集電体の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その駆動電源としての電池にはさらなる高容量化が要求されている。充放電に伴い、リチウムイオンが正、負極間を移動することにより充放電を行うリチウム二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。更に、上記移動情報端末の小型化に伴い、より高エネルギー密度の二次電池が要望されている。
【0003】
このような高エネルギー密度化に際して、正負両極のうち少なくとも一方の電極に、箔状の集電体を貫通する穴を開ける構造の電池が提案されている(特許文献1参照)。このような構成であれば、電解液含浸能力が向上して、負荷特性に優れる電池を提供できる旨、記載されている。しかしながら、該提案では、箔状の集電体に貫通孔が形成されているため、貫通孔の分だけ集電体の抵抗が高くなって、電極全体の集電性が低下する。特に、活物質の厚みが大きい電極では、集電性の低下が著しくなって、逆に負荷特性が低下する可能性がある。加えて、貫通孔の存在により集電体の強度が低下するため、簡単に電極が破損するおそれがある。
そこで、下記(1)〜(3)に示すように、金属不織布を集電体に用いた電池が提案されている。
【0004】
(1)アルミニウム繊維の多孔体シートを、正極の芯材に使用する提案(特許文献2参照)。
(2)アルミニウムを主成分とする金属繊維が溶融紡糸されて、三次元の網目構造を有するように形成されたアルミニウム不織布を集電体として用いる提案(特許文献3参照)。
(3)純アルミニウムまたはアルミニウム合金の繊維からなり、繊維径が50〜100μmで、目付け量が300〜600g/m2で、空孔率が50〜96%のアルミ不織布からなる正極集電体を用いる提案(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−326628号公報
【特許文献2】特開平6−196170号公報
【特許文献3】特開2001−155739号公報
【特許文献4】特開2010−33891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記(1)〜(3)に示す提案は、金属不織布に活物質を担持させる構成となっている。このように集電体が3次元の電子導電ネットワークを有する金属不織布から構成されていれば、電極全体での集電性が確保される。また、集電体の金属繊維が3次元に絡み合っているため、電極強度の低下も抑制することができる。一方、このような集電体を用いた場合には、集電体内に空洞が存在するため、箔状の集電体に貫通孔を形成した場合と同様、電極内部にまで容易に電解液を含浸させることができるものと考えられていた。しかしながら、実際には、電極内部まで電解液を十分に含浸させるのは困難である。このため、リチウムイオン導電性が低下して、負荷特性の飛躍的な向上を図ることができない、ということを本発明者らが見出した。特に、電池の高容量化、高出力化のため、極板厚みを大きくしたり、活物質の充填密度の向上を図った極板において、このような問題が顕著に生じる。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を考慮したものであって、電極内へ電解液を十分に含浸させることによってイオン導電性の向上を図り、これによって負荷特性等の電池特性を飛躍的に向上させることができるリチウム二次電池用電極及びその電極を用いたリチウム二次電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、金属繊維の不織布から成るシート状の集電体と、この集電体に担持された活物質層とを備えたリチウム二次電池用電極において、電極の厚み方向に集電体と活物質層とを挿通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
集電体と活物質層とを挿通する貫通孔が、電極の厚み方向に形成されていれば、該電極を用いて電池を作製した際、電解液が貫通孔内に容易に浸入し、これに伴い、貫通孔を形成する内壁面から電極内に電解液が浸透する。したがって、極板内へ電解液を十分に含浸させることができので、極板内におけるイオン導電性が著しく向上し、これにより、負荷特性等の電池特性が飛躍的に向上する。特に、電池の高容量化、高出力化のため、極板厚みを大きくしたり、活物質の充填密度の向上を図った極板において、本発明は効果的である。
尚、集電体の金属繊維が3次元に絡み合う金属繊維の不織布で構成されているため、集電体は3次元の電子導電ネットワークを構成しており、貫通孔を形成した場合にも電極全体での集電性が確保され、かつ電極強度の低下を抑制することができる。
【0009】
貫通孔を形成した領域の電極体積に対する、貫通孔により形成された空孔の体積の割合(以下、単に、空孔率と称することがある)が、2.0%以上25.0%以下であることが望ましい。
空孔率が2.0%未満では、空孔が不足して、貫通孔の形成効果が十分に発揮されないことがある。一方、空孔率が25.0%を超えると、3次元の電子導電ネットワークが十分に形成されず、集電性が低下することがある。
【0010】
集電体の表面には溝が形成されており、この溝に対応する部位における集電体の金属繊維の密度は、溝以外の部位における集電体の金属繊維の密度より高くなっていることが望ましい。
溝に対応する部位における集電体の金属繊維の密度が、溝以外の部位における集電体の金属繊維の密度より高くなっていれば、溝に対応する部位は、溝以外の部位よりも電子導電性が高くなる。このように、集電体の一部に電子導電性が高くなる部位が設けられていれば、電子のハイウェイパスが形成されるので、集電体全体での電子導電性が向上する。この結果、電極反応が均一化して、サイクル特性等の電池特性が向上する。
また、溝に対応する部位における集電体の金属繊維の密度を高くすれば、当該部位では金属繊維のほつれや毛羽立ちが抑制されるので、ほつれ等を起点として電極が破損したり、電池内部で短絡が生じるのを抑制できる。
【0011】
溝が形成されている部位を除く部位に上記貫通孔が形成されていることが望ましい。
電子ハイウェイパスの形成が阻害されるのを抑制するためである。
【0012】
集電体に活物質層を担持させた後に、パンチング法により貫通孔を形成する場合、貫通孔の開口径を電極厚みの3倍以下に規制することが望ましい。
貫通孔の開口径が電極厚みの3倍を超えると、極板強度が低下する。このため、電極に大きな応力が加わるパンチング法によって貫通孔を形成すると、貫通孔の形成時等に、電極にひび割れが生じたり、電極が破損する場合がある。尚、集電体に活物質層を担持させた後に貫通孔を形成する場合であっても、貫通孔を形成する際に電極に大きな応力が加わらない場合(レーザー法、エッチング法、空孔形成剤を用いる方法により貫通孔を形成する場合)には、このように規制する必要はない。また、パンチング法により貫通孔を形成する場合であっても、集電体に活物質層を担持させる前に集電体に貫通孔を形成し、その後集電体に活物質層を担持させるのであれば、このような規制は必要ではない。
【0013】
正極と負極と非水電解液とを備えたリチウム二次電池において、上述のリチウム二次電池用電極が、正負両極のうち少なくとも一方の極に用いられていることを特徴とする。
上述のリチウム二次電池用電極が正極として用いられるのが望ましい。
また、金属繊維がアルミニウムから成ることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電極内へ電解液を十分に含浸させることによりイオン導電性の向上を図り、これによって、負荷特性等の電池特性を飛躍的に向上させることができるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のリチウム二次電池を示す平面図である。
【図2】本発明に用いる正極集電体を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線矢視断面図である。
【図4】本発明に用いる正極集電体を示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明の正極の断面図
【図6】貫通孔形成領域を示す平面図である。
【図7】貫通孔形成領域の変形例を示す平面図である。
【図8】貫通孔形成領域の他の変形例を示す平面図である。
【図9】貫通孔の変形例を示す断面図である。
【図10】貫通孔の他の変形例を示す断面図である。
【図11】貫通孔の他の変形例を示す断面図である。
【図12】本発明の正極集電体における溝形状の変形例を示す平面図である。
【図13】本発明の正極集電体における溝形状の他の変形例を示す平面図である。
【図14】本発明の正極集電体における溝形状の他の変形例を示す平面図である。
【図15】本発明の正極集電体における溝形状の他の変形例を示す平面図である。
【図16】本発明の正極集電体における溝形状の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を下記形態に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0017】
(正極の作製)
直径100μmのアルミニウム繊維5からなる不織布シートに、プレス法を用いて、図2及び図3に示す十字状の溝2と枠状の薄肉部7とを形成することにより、正極集電体1を得た。該正極集電体1では、溝2に対応する部位以外の集電体の厚みL1は1.0mm、溝2に対応する部位の正極集電体1の厚みL2は0.4mm、溝2の幅L3は1.5mm、薄肉部7における正極集電体1の厚みL4は0.4mm、薄肉部7の幅L5は0.75mmとなっている。即ち、溝2に対応する部位と薄肉部7とにおいては、正極集電体1の厚みが小さくなっており、これによって、該部位における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度は、これらの部位以外における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度より高くなるように構成されている。
【0018】
次に、正極集電体1を正極スラリーが満たされた容器内に完全に浸漬した後、正極集電体1を容器から引き上げた。次いで、正極スラリーを乾燥させることにより、正極集電体1に正極活物質を担持させた後、これを圧延することにより、極板の厚みを1mmに調整した。上記正極スラリーは、コバルト酸リチウムと炭素導電剤とPVdFとが、質量比で94:3:3の比率からなる合剤をNMPに溶かすことにより調製した。また、得られた極板において、溝2内には正極活物質が余り存在しない構造となっていた。これにより、溝2内には空間3が形成されることになる。
【0019】
この後、図2に示すように、反応部における幅L6が50mm、高さL7が50mm、それに付随する集電部(図1の正極端子)8の幅L8が20mm、高さL9が20mmとなるように切断した。しかる後、図2に示すように、溝2と薄肉部7とに囲まれる貫通孔形成領域(溝2と薄肉部7とを除いた領域であって、本形態では4つの領域が存在する)Bに、図5及び図6に示すように、円筒状を成し格子状に配置された貫通孔10を、パンチング法により形成して、正極を作製した。この貫通孔の開口部の直径(以下、貫通孔の開口径と称することがある)L10は0.5mmであり、正極厚み(1mm)に対する貫通孔の開口径L10の割合は0.5となっている。また、下記(a)式に示す空孔率は1.5%となっている。
空孔率=(貫通孔により形成される空孔の体積/貫通孔形成領域Bに対応する部位の電極体積)×100・・・(a)
【0020】
ここで、溝2内に空間3が形成されるのは、図4に示すように、溝2に対応する部位の正極集電体1aはプレスされているため、アルミニウム繊維5の密度が高くなるのに対して、溝2に対応する部位以外の正極集電体1bはプレスされていないため、アルミニウム繊維5の密度が低くなる。したがって、溝2の底面2aでは、通常の表面4に比べてスラリーに対するアンカー効果が小さくなる。加えて、溝2内は空間となっている(アルミニウム繊維5が存在しない)ので、アルミニウム繊維5が存在する場合に比べて、スラリーの流動性が高くなる。これらのことから、正極集電体1を正極スラリーに浸漬したときに溝2内に正極スラリーが配置され難く、且つ、溝2内に正極スラリーが配置された場合であっても、正極集電体1を容器から引き上げる際に、自重により正極スラリーが滑落するからである。
【0021】
このように、溝2内に空間3が形成されていれば、電解液は溝2内の空間3を通って、電極全体に容易に行き渡る(即ち、電極中央部にも電解液が十分に供給され易くなる)。また、電解液が電極に浸透する際、電極の表面から浸透する他、溝2の側面からも浸透する。このように、電極全体に電解液を含浸させることが可能となって、電極内でのリチウムイオン導電性が一層向上する。
【0022】
また、上記薄肉部7を形成するのは、以下に示す理由による。正極集電体1は、大きなアルミニウム繊維5をシート状に成型したもの(不織布)を切断することにより作製するが、この場合、切断部は切断部以外の部位と比較して、アルミニウム繊維のほつれや毛羽立ちが多くなる。そこで、正極集電体1の外周部(切断部)におけるアルミニウム繊維5の密度を高くすれば、当該部位におけるアルミニウム繊維5のほつれや毛羽立ちを抑制できるので、電極が破損したり、電池内部で短絡が生じるのを一層抑えることができるからである。
【0023】
(負極の作製)
先ず、負極活物質としての黒鉛粉末と、結着剤としてのゴムバインダーと、分散剤としてのCMCとを、質量比で98:1:1となるように秤量し、これらを溶剤としての水溶液中で混合することにより負極スラリーを調製した。次に、この負極スラリーを負極集電体としての銅箔の両面に塗布、乾燥した後、厚みが0.9mmとなるように圧延した。最後に、上記正極の場合と同様に、反応部における幅と高さとが各54mm、それに付随する集電部(図1の負極端子9)の幅と高さとが各20mmとなるように切断することにより、負極を作製した。
【0024】
(電池の作製)
上記正極と上記負極との間にセパレータを配置して積層電極体を作製した後、この積層電極体をラミネートフィルムから成る外装体内に配置した。最後に、上記外装体内に電解液を注入し、更に、外装体の開口部を熱溶着することにより、図1に示す電池11を作製した。尚、上記電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とが体積比で3:7の割合で混合された混合溶媒に、LiPF6が1M(モル/リットル)の割合で溶解したものを用いた。
【実施例】
【0025】
〔第1実施例〕
(実施例1)
実施例1の正極及び電池は、発明を実施するための形態で説明した方法と同様の方法で作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a1、電池A1と称する。
【0026】
(実施例2)
貫通孔形成領域Bにおける空孔率を2.6%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a2、電池A2と称する。
【0027】
(実施例3)
貫通孔形成領域Bにおける空孔率を10.4%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a3、電池A3と称する。
【0028】
(実施例4)
貫通孔の開口径を1.0mmとし、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を16.2%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a4、電池A4と称する。
【0029】
(実施例5)
貫通孔の開口径を1.0mmとし、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を19.6%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a5、電池A5と称する。
【0030】
(実施例6)
貫通孔の開口径を1.0mmとし、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を27.4%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a6、電池A6と称する。
【0031】
(実施例7)
貫通孔の開口径を3.0mmとし、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を23.4%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a7、電池A7と称する。
【0032】
(比較例1)
貫通孔を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Z1と称する。
【0033】
(比較例2)
貫通孔の開口径を5.0mmとし、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を16.2%としたこと以外は、実施例1と同様にして電極を作製した。
このようにして作製した電極を、以下、正極z2と称する。
【0034】
(実験1)
正極a1〜a7、正極z2における作製時に、ひび割れ発生の有無を目視で確認したので、その結果を表1に示す。
【0035】
(実験2)
電池A1〜A7、Z1を下記条件で充放電し、下記(b)式を用いて負荷特性(放電容量比)を算出したので、その結果を表1に示す。
・充放電条件
10mA(1/50It)の電流で4.2V(vs.Li/Li+)まで充電した後、10mAの電流で2.75V(vs.Li/Li+)まで放電して、電流10mAでの放電容量を調べた。次に、10mAの電流で4.2V(vs.Li/Li+)まで充電した後、30mAの電流で2.75V(vs.Li/Li+)まで放電して、電流30mAでの放電容量を調べた。
【0036】
負荷特性(放電容量比)=(電流30mAでの放電容量/電流10mAでの放電容量)×100・・・(b)
【0037】
(実験3)
電池A1〜A7、Z1の内部抵抗を調べたので、その結果を表1に示す。
測定には、HIOKI3560抵抗計を用いた。
【0038】
【表1】
【0039】
上記表1から明らかなように、正極a1〜a7、正極z2のひび割れの有無について比較すると、正極厚みに対する貫通孔の開口径の割合(以下、単に、貫通孔の開口径の割合と称することがある)が5.0の正極z2では、貫通孔の形成時に正極でひび割れが生じているのに対して、貫通孔の開口径の割合が3.0以下の正極a1〜a7では、貫通孔の形成時に正極でひび割れが生じていないことが認められる。したがって、正極集電体に活物質層を担持された後に、パンチング法にて貫通孔を形成する場合には、貫通孔の開口径の割合を3.0以下に規制する必要があることがわかる。なお、正極z2には、ひび割れが生じたため、正極z2を用いた電池を作製することはできなかった。
【0040】
また、貫通孔が形成された電池A1〜A7と、貫通孔が形成されていない電池Z1とを比較すると、電池A1〜A7では負荷特性が56〜71%であるのに対して、電池Z1では負荷特性が53%であり、電池A1〜A7の方が高くなっていることが認められる。したがって、電極に貫通孔を形成することにより、負荷特性の向上を図ることができる。
【0041】
更に、電池A1〜A7における負荷特性を比較すると、空孔率が2.0%以上25.0%以下の電池A2〜A5、A7では負荷特性が60%以上であるのに対して、空孔率が2.0%未満の電池A1では負荷特性が56%であり、空孔率が25.0%よりも高い電池A6では負荷特性が57%であることが認められる。したがって、空孔率は2.0%以上25.0%以下であることが望ましい。
【0042】
加えて、貫通孔の開口径の割合が全て1.0であるが、空孔率が異なる電池A4〜A6を比較すると、空孔率が25.0%以下の電池A4、A5では負荷特性が70%以上であるのに対して、空孔率が25.0%を超える電池A6では負荷特性が57%であることが認められる。これは、空孔率が余りに高いと、電池の内部抵抗が大きく上昇する(例えば、電池A4、A5では15Ω以下であるのに対して、電池A6では20Ω以上)ことに起因するものと考えられる。したがって、空孔率は25.0%以下であることが望ましい。
【0043】
〔第2実施例〕
(実施例)
溝と薄肉部とを形成せず、正極全体に貫通孔を形成し、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を2.0%とした以外は、上記第1実施例の実施例1と同様にして電池を作製した。尚、本実施例の場合、溝や薄肉部は形成されていないので、前記(a)式に示した空孔率算出式における貫通孔形成領域Bとは、正極における全ての反応部領域をいう。
このようにして作製した電池を、以下、電池Bと称する。
【0044】
(比較例)
貫通孔を形成しない以外は、上記実施例と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Yと称する。
【0045】
(実験)
上記電池B、Yにおけるひび割れの有無、負荷特性、及び内部抵抗について調べたので、それらの結果を表2に示す。尚、各実験は、上記第1実施例の実験1〜3と同様にして行った。
【0046】
【表2】
【0047】
表2から明らかなように、貫通孔が形成された電池Bと、貫通孔が形成されていない電池Yとを比較すると、電池Bでは負荷特性が50%であるのに対して、電池Yでは負荷特性が44%であり、電池Bの方が電池Yより高くなっていることが認められる。したがって、電極に貫通孔を形成することにより、負荷特性の向上を図ることができる。
【0048】
尚、電池Bは前記電池A1、A2と貫通孔の開口径の割合が同じで、しかも空孔率が略同等であるにも関わらず、電池A1、A2に比べて負荷特性が低下していることが認められる。これは、溝を形成することにより、電解液が電極全体に浸透しやすくなり、内部抵抗を抑制できるためと考えられる。したがって、負荷特性の飛躍的な向上を図るためには、貫通孔の他に溝を正極集電体に形成するのが望ましい。
【0049】
(その他の事項)
(1)貫通孔10の配置は、上述のような四角格子状の配置に限定するものではなく、図7に示すような千鳥格子状の配置等であっても良く、更には、図8に示すようなランダムに配置しても良い。但し、電極における反応を均一にするためには格子状(四角格子状や千鳥格子状)に配置するのが好ましい。
【0050】
(2)貫通孔10の断面形状としては、上記形態に示した形状に限定されるものではなく、図9に示すような湾曲形状や、図10に示すような斜め直線形状、或いは、図11に示すような表面から内部にむけて径が小さくなる2つの円錐がつながったような形状であっても良い。但し、貫通孔10内に電解液が進入し易くすることによって、負荷特性を飛躍的に向上させるには、図5、図10及び図11に示すように、一方の電極表面15から他方の電極表面16まで、貫通孔10の中心線17が直線であることが好ましく、特に、図5に示すように、中心線17が電極表面15、16に対して垂直で、且つ、貫通孔10の孔径が一定であることが好ましい。
【0051】
(3)貫通孔10の断面形状は特に限定するものではなく、三角、四角、六角、八角形状等多角形であっても良いが、加工容易性等を考慮すると、上記形態で示したように円形状であることが好ましい。
【0052】
(4)貫通孔10の形成手段は、上記パンチング法に限定するものではなく、レーザー法、エッチング法(ドライエッチング法、ウエットエッチング法)、空孔形成剤を用いる方法等であっても良い。また、貫通孔10の形成は、正極集電体1に正極活物質を担持させた後に限定するものではなく、正極集電体1に貫通孔10を形成し、その後に正極集電体1に正極活物質を担持させるような方法であっても良い。
【0053】
(5)貫通孔10の開口径は特に限定されるものではないが、0.01〜10mmが好ましい。開口径が0.01mm未満では、電解液が貫通孔10内に浸透しにくくなり、効果が小さくなる。さらに貫通孔形成後に正極活物質を担持させる場合は、開口径がこのように小さいと貫通孔10が正極活物質で埋まりやすく、効果が発揮されないことがある。一方、開口径が10mmを超えると、活物質を担持させる体積が著しく低下し、容量が小さくなる。
尚、正極活物質を担持させた後にパンチング法で貫通孔10を形成する場合には、電極の強度面を考慮して、電極厚みに対する貫通孔10の開口径の割合を3.0以下に規制する必要がある。したがって、貫通孔10の開口径が0.01〜10mmの範囲内であっても、該開口径をより小さく規制するのが好ましい。一方、パンチング法によって正極集電体1に貫通孔10を形成した後に、正極集電体1に正極活物質を担持させる場合や、レーザー法、エッチング法(ドライエッチング法、ウエットエッチング法)、空孔形成剤を用いる方法によって貫通孔10を形成する場合には、電極の強度面で、電極厚みに対する貫通孔10の開口径の割合を規制する必要性に乏しい。したがって、貫通孔10の開口径は0.01〜10mmの範囲内であれば良い。
【0054】
(6)溝2の形状としては、図2に示すように、各々の溝が直交する正方格子形状に限定するものではなく、各々の溝2により構成される形状が、例えば、三角格子形状(図12参照)や平行四辺形格子形状(図13参照)でもよい。更に、各々の溝2が交わる必要はなく、図14に示すように、平行に溝2を形成しても良く、更に、図15に示すように、渦巻き状に溝2を形成しても良い。但し、図14に示す溝形状の正極集電体1や図15に示す溝形状の正極集電体1では、図2に示す溝形状の正極集電体1に比べて、集電機能が劣ることがある。このことから、溝2は格子状に形成するのが望ましい。更に、集電機能をより発揮するには、溝2が均一な間隔で設けられていることが望ましい。尚、この場合にも、溝2以外の部位に貫通孔10を形成するのが好ましい。
【0055】
(7)格子状の溝2をプレス法で形成する場合、図3に示したように、片面のみのプレス(一方向のみのプレス)に限定するものではなく、図16に示すように、両面プレス(双方向のプレス)でも良い。尚、この場合、溝2が対向していない場合には、プレスをする際に正極集電体1が波打ち形状となることがあるため、両面に形成された溝2は、対向するように配置するのが好ましい。
【0056】
(8)溝2の幅は限定するものではないが、1mm以上10mm以下となっていることが望ましい。溝2の幅が1mm未満では、溝2の幅が小さ過ぎるため、正極集電体1に活物質が担持された状態で溝2内に空間を設けるのが困難になる場合がある。また、溝2の作製は金属繊維をシート状に成型したものをプレスすることにより行うことができるが、溝2の幅が小さ過ぎると、プレス圧が大きくなって、プレス時に正極集電体1が破断する可能性がある。一方、溝2の幅が10mmを超えると、正極集電体1に担持される正極活物質量が少なくなって、電極容量が低下することがある。これは、溝2に対応する部位における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度は、溝2以外の部位における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度より高くなっているので、溝2に対応する部位では、余り正極活物質を担持することができない。このため、溝2の幅が余り大きくなると、正極集電体1中に占める溝2の割合が多くなって、正極集電体1に担持される活物質量が少なくなるからである。
【0057】
(9)上記溝2以外の部位における正極集電体1の厚みに対する、上記溝2に対応する部位における正極集電体1の厚みの割合は限定するものではないが、10%以上90%以下となっていることが望ましい。上記割合が10%を下回ると、プレス法により溝2を作製した場合に、プレス圧が大きくなって、溝2に対応する部位で正極集電体1が破断することがある。一方、上記割合が90%を越えると、溝2に対応する部位における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度が、溝2以外の部位における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度と余り変わらない。このため、イオン導電性や電子導電性の向上による電池特性の向上効果や、金属繊維のほつれや毛羽立ちの抑制による電池内部での短絡抑制による電池の信頼性の向上効果を十分に発揮できないことがある。
【0058】
(10)上記形態では、正極を例にとって説明したが、本発明は負極にも適用することができる。但し、貫通孔の形成は正極に対し行うのが好ましい。負極に貫通孔を形成すると、集電体の金属繊維が露出しやすい。そのような露出部位では、例えば充電時等に、リチウム金属が析出する可能性が高まり、電池特性が低下するおそれがあるという理由による。尚、負極に適用する場合には、金属繊維として銅繊維やニッケル繊維等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の駆動電源や、HEVや電動工具といった高出力向けの駆動電源に展開が期待できる。
【符号の説明】
【0060】
1:正極集電体
2:溝
3:空間
5:アルミニウム繊維
7:薄肉部
10:貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池等に関し、特に、当該電池に用いられる集電体の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その駆動電源としての電池にはさらなる高容量化が要求されている。充放電に伴い、リチウムイオンが正、負極間を移動することにより充放電を行うリチウム二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。更に、上記移動情報端末の小型化に伴い、より高エネルギー密度の二次電池が要望されている。
【0003】
このような高エネルギー密度化に際して、正負両極のうち少なくとも一方の電極に、箔状の集電体を貫通する穴を開ける構造の電池が提案されている(特許文献1参照)。このような構成であれば、電解液含浸能力が向上して、負荷特性に優れる電池を提供できる旨、記載されている。しかしながら、該提案では、箔状の集電体に貫通孔が形成されているため、貫通孔の分だけ集電体の抵抗が高くなって、電極全体の集電性が低下する。特に、活物質の厚みが大きい電極では、集電性の低下が著しくなって、逆に負荷特性が低下する可能性がある。加えて、貫通孔の存在により集電体の強度が低下するため、簡単に電極が破損するおそれがある。
そこで、下記(1)〜(3)に示すように、金属不織布を集電体に用いた電池が提案されている。
【0004】
(1)アルミニウム繊維の多孔体シートを、正極の芯材に使用する提案(特許文献2参照)。
(2)アルミニウムを主成分とする金属繊維が溶融紡糸されて、三次元の網目構造を有するように形成されたアルミニウム不織布を集電体として用いる提案(特許文献3参照)。
(3)純アルミニウムまたはアルミニウム合金の繊維からなり、繊維径が50〜100μmで、目付け量が300〜600g/m2で、空孔率が50〜96%のアルミ不織布からなる正極集電体を用いる提案(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−326628号公報
【特許文献2】特開平6−196170号公報
【特許文献3】特開2001−155739号公報
【特許文献4】特開2010−33891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記(1)〜(3)に示す提案は、金属不織布に活物質を担持させる構成となっている。このように集電体が3次元の電子導電ネットワークを有する金属不織布から構成されていれば、電極全体での集電性が確保される。また、集電体の金属繊維が3次元に絡み合っているため、電極強度の低下も抑制することができる。一方、このような集電体を用いた場合には、集電体内に空洞が存在するため、箔状の集電体に貫通孔を形成した場合と同様、電極内部にまで容易に電解液を含浸させることができるものと考えられていた。しかしながら、実際には、電極内部まで電解液を十分に含浸させるのは困難である。このため、リチウムイオン導電性が低下して、負荷特性の飛躍的な向上を図ることができない、ということを本発明者らが見出した。特に、電池の高容量化、高出力化のため、極板厚みを大きくしたり、活物質の充填密度の向上を図った極板において、このような問題が顕著に生じる。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を考慮したものであって、電極内へ電解液を十分に含浸させることによってイオン導電性の向上を図り、これによって負荷特性等の電池特性を飛躍的に向上させることができるリチウム二次電池用電極及びその電極を用いたリチウム二次電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、金属繊維の不織布から成るシート状の集電体と、この集電体に担持された活物質層とを備えたリチウム二次電池用電極において、電極の厚み方向に集電体と活物質層とを挿通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
集電体と活物質層とを挿通する貫通孔が、電極の厚み方向に形成されていれば、該電極を用いて電池を作製した際、電解液が貫通孔内に容易に浸入し、これに伴い、貫通孔を形成する内壁面から電極内に電解液が浸透する。したがって、極板内へ電解液を十分に含浸させることができので、極板内におけるイオン導電性が著しく向上し、これにより、負荷特性等の電池特性が飛躍的に向上する。特に、電池の高容量化、高出力化のため、極板厚みを大きくしたり、活物質の充填密度の向上を図った極板において、本発明は効果的である。
尚、集電体の金属繊維が3次元に絡み合う金属繊維の不織布で構成されているため、集電体は3次元の電子導電ネットワークを構成しており、貫通孔を形成した場合にも電極全体での集電性が確保され、かつ電極強度の低下を抑制することができる。
【0009】
貫通孔を形成した領域の電極体積に対する、貫通孔により形成された空孔の体積の割合(以下、単に、空孔率と称することがある)が、2.0%以上25.0%以下であることが望ましい。
空孔率が2.0%未満では、空孔が不足して、貫通孔の形成効果が十分に発揮されないことがある。一方、空孔率が25.0%を超えると、3次元の電子導電ネットワークが十分に形成されず、集電性が低下することがある。
【0010】
集電体の表面には溝が形成されており、この溝に対応する部位における集電体の金属繊維の密度は、溝以外の部位における集電体の金属繊維の密度より高くなっていることが望ましい。
溝に対応する部位における集電体の金属繊維の密度が、溝以外の部位における集電体の金属繊維の密度より高くなっていれば、溝に対応する部位は、溝以外の部位よりも電子導電性が高くなる。このように、集電体の一部に電子導電性が高くなる部位が設けられていれば、電子のハイウェイパスが形成されるので、集電体全体での電子導電性が向上する。この結果、電極反応が均一化して、サイクル特性等の電池特性が向上する。
また、溝に対応する部位における集電体の金属繊維の密度を高くすれば、当該部位では金属繊維のほつれや毛羽立ちが抑制されるので、ほつれ等を起点として電極が破損したり、電池内部で短絡が生じるのを抑制できる。
【0011】
溝が形成されている部位を除く部位に上記貫通孔が形成されていることが望ましい。
電子ハイウェイパスの形成が阻害されるのを抑制するためである。
【0012】
集電体に活物質層を担持させた後に、パンチング法により貫通孔を形成する場合、貫通孔の開口径を電極厚みの3倍以下に規制することが望ましい。
貫通孔の開口径が電極厚みの3倍を超えると、極板強度が低下する。このため、電極に大きな応力が加わるパンチング法によって貫通孔を形成すると、貫通孔の形成時等に、電極にひび割れが生じたり、電極が破損する場合がある。尚、集電体に活物質層を担持させた後に貫通孔を形成する場合であっても、貫通孔を形成する際に電極に大きな応力が加わらない場合(レーザー法、エッチング法、空孔形成剤を用いる方法により貫通孔を形成する場合)には、このように規制する必要はない。また、パンチング法により貫通孔を形成する場合であっても、集電体に活物質層を担持させる前に集電体に貫通孔を形成し、その後集電体に活物質層を担持させるのであれば、このような規制は必要ではない。
【0013】
正極と負極と非水電解液とを備えたリチウム二次電池において、上述のリチウム二次電池用電極が、正負両極のうち少なくとも一方の極に用いられていることを特徴とする。
上述のリチウム二次電池用電極が正極として用いられるのが望ましい。
また、金属繊維がアルミニウムから成ることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電極内へ電解液を十分に含浸させることによりイオン導電性の向上を図り、これによって、負荷特性等の電池特性を飛躍的に向上させることができるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のリチウム二次電池を示す平面図である。
【図2】本発明に用いる正極集電体を示す平面図である。
【図3】図2のA−A線矢視断面図である。
【図4】本発明に用いる正極集電体を示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明の正極の断面図
【図6】貫通孔形成領域を示す平面図である。
【図7】貫通孔形成領域の変形例を示す平面図である。
【図8】貫通孔形成領域の他の変形例を示す平面図である。
【図9】貫通孔の変形例を示す断面図である。
【図10】貫通孔の他の変形例を示す断面図である。
【図11】貫通孔の他の変形例を示す断面図である。
【図12】本発明の正極集電体における溝形状の変形例を示す平面図である。
【図13】本発明の正極集電体における溝形状の他の変形例を示す平面図である。
【図14】本発明の正極集電体における溝形状の他の変形例を示す平面図である。
【図15】本発明の正極集電体における溝形状の他の変形例を示す平面図である。
【図16】本発明の正極集電体における溝形状の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を下記形態に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0017】
(正極の作製)
直径100μmのアルミニウム繊維5からなる不織布シートに、プレス法を用いて、図2及び図3に示す十字状の溝2と枠状の薄肉部7とを形成することにより、正極集電体1を得た。該正極集電体1では、溝2に対応する部位以外の集電体の厚みL1は1.0mm、溝2に対応する部位の正極集電体1の厚みL2は0.4mm、溝2の幅L3は1.5mm、薄肉部7における正極集電体1の厚みL4は0.4mm、薄肉部7の幅L5は0.75mmとなっている。即ち、溝2に対応する部位と薄肉部7とにおいては、正極集電体1の厚みが小さくなっており、これによって、該部位における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度は、これらの部位以外における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度より高くなるように構成されている。
【0018】
次に、正極集電体1を正極スラリーが満たされた容器内に完全に浸漬した後、正極集電体1を容器から引き上げた。次いで、正極スラリーを乾燥させることにより、正極集電体1に正極活物質を担持させた後、これを圧延することにより、極板の厚みを1mmに調整した。上記正極スラリーは、コバルト酸リチウムと炭素導電剤とPVdFとが、質量比で94:3:3の比率からなる合剤をNMPに溶かすことにより調製した。また、得られた極板において、溝2内には正極活物質が余り存在しない構造となっていた。これにより、溝2内には空間3が形成されることになる。
【0019】
この後、図2に示すように、反応部における幅L6が50mm、高さL7が50mm、それに付随する集電部(図1の正極端子)8の幅L8が20mm、高さL9が20mmとなるように切断した。しかる後、図2に示すように、溝2と薄肉部7とに囲まれる貫通孔形成領域(溝2と薄肉部7とを除いた領域であって、本形態では4つの領域が存在する)Bに、図5及び図6に示すように、円筒状を成し格子状に配置された貫通孔10を、パンチング法により形成して、正極を作製した。この貫通孔の開口部の直径(以下、貫通孔の開口径と称することがある)L10は0.5mmであり、正極厚み(1mm)に対する貫通孔の開口径L10の割合は0.5となっている。また、下記(a)式に示す空孔率は1.5%となっている。
空孔率=(貫通孔により形成される空孔の体積/貫通孔形成領域Bに対応する部位の電極体積)×100・・・(a)
【0020】
ここで、溝2内に空間3が形成されるのは、図4に示すように、溝2に対応する部位の正極集電体1aはプレスされているため、アルミニウム繊維5の密度が高くなるのに対して、溝2に対応する部位以外の正極集電体1bはプレスされていないため、アルミニウム繊維5の密度が低くなる。したがって、溝2の底面2aでは、通常の表面4に比べてスラリーに対するアンカー効果が小さくなる。加えて、溝2内は空間となっている(アルミニウム繊維5が存在しない)ので、アルミニウム繊維5が存在する場合に比べて、スラリーの流動性が高くなる。これらのことから、正極集電体1を正極スラリーに浸漬したときに溝2内に正極スラリーが配置され難く、且つ、溝2内に正極スラリーが配置された場合であっても、正極集電体1を容器から引き上げる際に、自重により正極スラリーが滑落するからである。
【0021】
このように、溝2内に空間3が形成されていれば、電解液は溝2内の空間3を通って、電極全体に容易に行き渡る(即ち、電極中央部にも電解液が十分に供給され易くなる)。また、電解液が電極に浸透する際、電極の表面から浸透する他、溝2の側面からも浸透する。このように、電極全体に電解液を含浸させることが可能となって、電極内でのリチウムイオン導電性が一層向上する。
【0022】
また、上記薄肉部7を形成するのは、以下に示す理由による。正極集電体1は、大きなアルミニウム繊維5をシート状に成型したもの(不織布)を切断することにより作製するが、この場合、切断部は切断部以外の部位と比較して、アルミニウム繊維のほつれや毛羽立ちが多くなる。そこで、正極集電体1の外周部(切断部)におけるアルミニウム繊維5の密度を高くすれば、当該部位におけるアルミニウム繊維5のほつれや毛羽立ちを抑制できるので、電極が破損したり、電池内部で短絡が生じるのを一層抑えることができるからである。
【0023】
(負極の作製)
先ず、負極活物質としての黒鉛粉末と、結着剤としてのゴムバインダーと、分散剤としてのCMCとを、質量比で98:1:1となるように秤量し、これらを溶剤としての水溶液中で混合することにより負極スラリーを調製した。次に、この負極スラリーを負極集電体としての銅箔の両面に塗布、乾燥した後、厚みが0.9mmとなるように圧延した。最後に、上記正極の場合と同様に、反応部における幅と高さとが各54mm、それに付随する集電部(図1の負極端子9)の幅と高さとが各20mmとなるように切断することにより、負極を作製した。
【0024】
(電池の作製)
上記正極と上記負極との間にセパレータを配置して積層電極体を作製した後、この積層電極体をラミネートフィルムから成る外装体内に配置した。最後に、上記外装体内に電解液を注入し、更に、外装体の開口部を熱溶着することにより、図1に示す電池11を作製した。尚、上記電解液としては、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とが体積比で3:7の割合で混合された混合溶媒に、LiPF6が1M(モル/リットル)の割合で溶解したものを用いた。
【実施例】
【0025】
〔第1実施例〕
(実施例1)
実施例1の正極及び電池は、発明を実施するための形態で説明した方法と同様の方法で作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a1、電池A1と称する。
【0026】
(実施例2)
貫通孔形成領域Bにおける空孔率を2.6%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a2、電池A2と称する。
【0027】
(実施例3)
貫通孔形成領域Bにおける空孔率を10.4%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a3、電池A3と称する。
【0028】
(実施例4)
貫通孔の開口径を1.0mmとし、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を16.2%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a4、電池A4と称する。
【0029】
(実施例5)
貫通孔の開口径を1.0mmとし、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を19.6%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a5、電池A5と称する。
【0030】
(実施例6)
貫通孔の開口径を1.0mmとし、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を27.4%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a6、電池A6と称する。
【0031】
(実施例7)
貫通孔の開口径を3.0mmとし、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を23.4%としたこと以外は、実施例1と同様にして正極及び電池を作製した。
このようにして作製した正極及び電池を、以下それぞれ、正極a7、電池A7と称する。
【0032】
(比較例1)
貫通孔を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Z1と称する。
【0033】
(比較例2)
貫通孔の開口径を5.0mmとし、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を16.2%としたこと以外は、実施例1と同様にして電極を作製した。
このようにして作製した電極を、以下、正極z2と称する。
【0034】
(実験1)
正極a1〜a7、正極z2における作製時に、ひび割れ発生の有無を目視で確認したので、その結果を表1に示す。
【0035】
(実験2)
電池A1〜A7、Z1を下記条件で充放電し、下記(b)式を用いて負荷特性(放電容量比)を算出したので、その結果を表1に示す。
・充放電条件
10mA(1/50It)の電流で4.2V(vs.Li/Li+)まで充電した後、10mAの電流で2.75V(vs.Li/Li+)まで放電して、電流10mAでの放電容量を調べた。次に、10mAの電流で4.2V(vs.Li/Li+)まで充電した後、30mAの電流で2.75V(vs.Li/Li+)まで放電して、電流30mAでの放電容量を調べた。
【0036】
負荷特性(放電容量比)=(電流30mAでの放電容量/電流10mAでの放電容量)×100・・・(b)
【0037】
(実験3)
電池A1〜A7、Z1の内部抵抗を調べたので、その結果を表1に示す。
測定には、HIOKI3560抵抗計を用いた。
【0038】
【表1】
【0039】
上記表1から明らかなように、正極a1〜a7、正極z2のひび割れの有無について比較すると、正極厚みに対する貫通孔の開口径の割合(以下、単に、貫通孔の開口径の割合と称することがある)が5.0の正極z2では、貫通孔の形成時に正極でひび割れが生じているのに対して、貫通孔の開口径の割合が3.0以下の正極a1〜a7では、貫通孔の形成時に正極でひび割れが生じていないことが認められる。したがって、正極集電体に活物質層を担持された後に、パンチング法にて貫通孔を形成する場合には、貫通孔の開口径の割合を3.0以下に規制する必要があることがわかる。なお、正極z2には、ひび割れが生じたため、正極z2を用いた電池を作製することはできなかった。
【0040】
また、貫通孔が形成された電池A1〜A7と、貫通孔が形成されていない電池Z1とを比較すると、電池A1〜A7では負荷特性が56〜71%であるのに対して、電池Z1では負荷特性が53%であり、電池A1〜A7の方が高くなっていることが認められる。したがって、電極に貫通孔を形成することにより、負荷特性の向上を図ることができる。
【0041】
更に、電池A1〜A7における負荷特性を比較すると、空孔率が2.0%以上25.0%以下の電池A2〜A5、A7では負荷特性が60%以上であるのに対して、空孔率が2.0%未満の電池A1では負荷特性が56%であり、空孔率が25.0%よりも高い電池A6では負荷特性が57%であることが認められる。したがって、空孔率は2.0%以上25.0%以下であることが望ましい。
【0042】
加えて、貫通孔の開口径の割合が全て1.0であるが、空孔率が異なる電池A4〜A6を比較すると、空孔率が25.0%以下の電池A4、A5では負荷特性が70%以上であるのに対して、空孔率が25.0%を超える電池A6では負荷特性が57%であることが認められる。これは、空孔率が余りに高いと、電池の内部抵抗が大きく上昇する(例えば、電池A4、A5では15Ω以下であるのに対して、電池A6では20Ω以上)ことに起因するものと考えられる。したがって、空孔率は25.0%以下であることが望ましい。
【0043】
〔第2実施例〕
(実施例)
溝と薄肉部とを形成せず、正極全体に貫通孔を形成し、且つ、貫通孔形成領域Bにおける空孔率を2.0%とした以外は、上記第1実施例の実施例1と同様にして電池を作製した。尚、本実施例の場合、溝や薄肉部は形成されていないので、前記(a)式に示した空孔率算出式における貫通孔形成領域Bとは、正極における全ての反応部領域をいう。
このようにして作製した電池を、以下、電池Bと称する。
【0044】
(比較例)
貫通孔を形成しない以外は、上記実施例と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Yと称する。
【0045】
(実験)
上記電池B、Yにおけるひび割れの有無、負荷特性、及び内部抵抗について調べたので、それらの結果を表2に示す。尚、各実験は、上記第1実施例の実験1〜3と同様にして行った。
【0046】
【表2】
【0047】
表2から明らかなように、貫通孔が形成された電池Bと、貫通孔が形成されていない電池Yとを比較すると、電池Bでは負荷特性が50%であるのに対して、電池Yでは負荷特性が44%であり、電池Bの方が電池Yより高くなっていることが認められる。したがって、電極に貫通孔を形成することにより、負荷特性の向上を図ることができる。
【0048】
尚、電池Bは前記電池A1、A2と貫通孔の開口径の割合が同じで、しかも空孔率が略同等であるにも関わらず、電池A1、A2に比べて負荷特性が低下していることが認められる。これは、溝を形成することにより、電解液が電極全体に浸透しやすくなり、内部抵抗を抑制できるためと考えられる。したがって、負荷特性の飛躍的な向上を図るためには、貫通孔の他に溝を正極集電体に形成するのが望ましい。
【0049】
(その他の事項)
(1)貫通孔10の配置は、上述のような四角格子状の配置に限定するものではなく、図7に示すような千鳥格子状の配置等であっても良く、更には、図8に示すようなランダムに配置しても良い。但し、電極における反応を均一にするためには格子状(四角格子状や千鳥格子状)に配置するのが好ましい。
【0050】
(2)貫通孔10の断面形状としては、上記形態に示した形状に限定されるものではなく、図9に示すような湾曲形状や、図10に示すような斜め直線形状、或いは、図11に示すような表面から内部にむけて径が小さくなる2つの円錐がつながったような形状であっても良い。但し、貫通孔10内に電解液が進入し易くすることによって、負荷特性を飛躍的に向上させるには、図5、図10及び図11に示すように、一方の電極表面15から他方の電極表面16まで、貫通孔10の中心線17が直線であることが好ましく、特に、図5に示すように、中心線17が電極表面15、16に対して垂直で、且つ、貫通孔10の孔径が一定であることが好ましい。
【0051】
(3)貫通孔10の断面形状は特に限定するものではなく、三角、四角、六角、八角形状等多角形であっても良いが、加工容易性等を考慮すると、上記形態で示したように円形状であることが好ましい。
【0052】
(4)貫通孔10の形成手段は、上記パンチング法に限定するものではなく、レーザー法、エッチング法(ドライエッチング法、ウエットエッチング法)、空孔形成剤を用いる方法等であっても良い。また、貫通孔10の形成は、正極集電体1に正極活物質を担持させた後に限定するものではなく、正極集電体1に貫通孔10を形成し、その後に正極集電体1に正極活物質を担持させるような方法であっても良い。
【0053】
(5)貫通孔10の開口径は特に限定されるものではないが、0.01〜10mmが好ましい。開口径が0.01mm未満では、電解液が貫通孔10内に浸透しにくくなり、効果が小さくなる。さらに貫通孔形成後に正極活物質を担持させる場合は、開口径がこのように小さいと貫通孔10が正極活物質で埋まりやすく、効果が発揮されないことがある。一方、開口径が10mmを超えると、活物質を担持させる体積が著しく低下し、容量が小さくなる。
尚、正極活物質を担持させた後にパンチング法で貫通孔10を形成する場合には、電極の強度面を考慮して、電極厚みに対する貫通孔10の開口径の割合を3.0以下に規制する必要がある。したがって、貫通孔10の開口径が0.01〜10mmの範囲内であっても、該開口径をより小さく規制するのが好ましい。一方、パンチング法によって正極集電体1に貫通孔10を形成した後に、正極集電体1に正極活物質を担持させる場合や、レーザー法、エッチング法(ドライエッチング法、ウエットエッチング法)、空孔形成剤を用いる方法によって貫通孔10を形成する場合には、電極の強度面で、電極厚みに対する貫通孔10の開口径の割合を規制する必要性に乏しい。したがって、貫通孔10の開口径は0.01〜10mmの範囲内であれば良い。
【0054】
(6)溝2の形状としては、図2に示すように、各々の溝が直交する正方格子形状に限定するものではなく、各々の溝2により構成される形状が、例えば、三角格子形状(図12参照)や平行四辺形格子形状(図13参照)でもよい。更に、各々の溝2が交わる必要はなく、図14に示すように、平行に溝2を形成しても良く、更に、図15に示すように、渦巻き状に溝2を形成しても良い。但し、図14に示す溝形状の正極集電体1や図15に示す溝形状の正極集電体1では、図2に示す溝形状の正極集電体1に比べて、集電機能が劣ることがある。このことから、溝2は格子状に形成するのが望ましい。更に、集電機能をより発揮するには、溝2が均一な間隔で設けられていることが望ましい。尚、この場合にも、溝2以外の部位に貫通孔10を形成するのが好ましい。
【0055】
(7)格子状の溝2をプレス法で形成する場合、図3に示したように、片面のみのプレス(一方向のみのプレス)に限定するものではなく、図16に示すように、両面プレス(双方向のプレス)でも良い。尚、この場合、溝2が対向していない場合には、プレスをする際に正極集電体1が波打ち形状となることがあるため、両面に形成された溝2は、対向するように配置するのが好ましい。
【0056】
(8)溝2の幅は限定するものではないが、1mm以上10mm以下となっていることが望ましい。溝2の幅が1mm未満では、溝2の幅が小さ過ぎるため、正極集電体1に活物質が担持された状態で溝2内に空間を設けるのが困難になる場合がある。また、溝2の作製は金属繊維をシート状に成型したものをプレスすることにより行うことができるが、溝2の幅が小さ過ぎると、プレス圧が大きくなって、プレス時に正極集電体1が破断する可能性がある。一方、溝2の幅が10mmを超えると、正極集電体1に担持される正極活物質量が少なくなって、電極容量が低下することがある。これは、溝2に対応する部位における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度は、溝2以外の部位における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度より高くなっているので、溝2に対応する部位では、余り正極活物質を担持することができない。このため、溝2の幅が余り大きくなると、正極集電体1中に占める溝2の割合が多くなって、正極集電体1に担持される活物質量が少なくなるからである。
【0057】
(9)上記溝2以外の部位における正極集電体1の厚みに対する、上記溝2に対応する部位における正極集電体1の厚みの割合は限定するものではないが、10%以上90%以下となっていることが望ましい。上記割合が10%を下回ると、プレス法により溝2を作製した場合に、プレス圧が大きくなって、溝2に対応する部位で正極集電体1が破断することがある。一方、上記割合が90%を越えると、溝2に対応する部位における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度が、溝2以外の部位における正極集電体1のアルミニウム繊維5の密度と余り変わらない。このため、イオン導電性や電子導電性の向上による電池特性の向上効果や、金属繊維のほつれや毛羽立ちの抑制による電池内部での短絡抑制による電池の信頼性の向上効果を十分に発揮できないことがある。
【0058】
(10)上記形態では、正極を例にとって説明したが、本発明は負極にも適用することができる。但し、貫通孔の形成は正極に対し行うのが好ましい。負極に貫通孔を形成すると、集電体の金属繊維が露出しやすい。そのような露出部位では、例えば充電時等に、リチウム金属が析出する可能性が高まり、電池特性が低下するおそれがあるという理由による。尚、負極に適用する場合には、金属繊維として銅繊維やニッケル繊維等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、例えば携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の駆動電源や、HEVや電動工具といった高出力向けの駆動電源に展開が期待できる。
【符号の説明】
【0060】
1:正極集電体
2:溝
3:空間
5:アルミニウム繊維
7:薄肉部
10:貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属繊維の不織布から成るシート状の集電体と、この集電体に担持された活物質層とを備えたリチウム二次電池用電極において、
電極の厚み方向に上記集電体と上記活物質層とを挿通する貫通孔が形成されていることを特徴とするリチウム二次電池用電極。
【請求項2】
上記貫通孔を形成した領域の電極体積に対する、貫通孔により形成された空孔の体積の割合が、2.0%以上25.0%以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項3】
上記集電体の表面には溝が形成されており、この溝に対応する部位における集電体の金属繊維の密度は、上記溝以外の部位における集電体の金属繊維の密度より高くなっている、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項4】
上記溝が形成されている部位を除く部位に上記貫通孔が形成されている、請求項3に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項5】
上記集電体に上記活物質層を担持させた後に、パンチング法により上記貫通孔を形成する場合、貫通孔の開口径を電極厚みの3倍以下に規制する、請求項1〜4の何れか1項に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項6】
正極と負極と非水電解液とを備えたリチウム二次電池において、請求項1〜5の何れか1項に記載のリチウム二次電池用電極が、正負両極のうち少なくとも一方の極に用いられていることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載のリチウム二次電池用電極が正極として用いられる、請求項6に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
上記金属繊維がアルミニウムから成る、請求項7に記載のリチウム二次電池。
【請求項1】
金属繊維の不織布から成るシート状の集電体と、この集電体に担持された活物質層とを備えたリチウム二次電池用電極において、
電極の厚み方向に上記集電体と上記活物質層とを挿通する貫通孔が形成されていることを特徴とするリチウム二次電池用電極。
【請求項2】
上記貫通孔を形成した領域の電極体積に対する、貫通孔により形成された空孔の体積の割合が、2.0%以上25.0%以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項3】
上記集電体の表面には溝が形成されており、この溝に対応する部位における集電体の金属繊維の密度は、上記溝以外の部位における集電体の金属繊維の密度より高くなっている、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項4】
上記溝が形成されている部位を除く部位に上記貫通孔が形成されている、請求項3に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項5】
上記集電体に上記活物質層を担持させた後に、パンチング法により上記貫通孔を形成する場合、貫通孔の開口径を電極厚みの3倍以下に規制する、請求項1〜4の何れか1項に記載のリチウム二次電池用電極。
【請求項6】
正極と負極と非水電解液とを備えたリチウム二次電池において、請求項1〜5の何れか1項に記載のリチウム二次電池用電極が、正負両極のうち少なくとも一方の極に用いられていることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載のリチウム二次電池用電極が正極として用いられる、請求項6に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
上記金属繊維がアルミニウムから成る、請求項7に記載のリチウム二次電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−195182(P2012−195182A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58727(P2011−58727)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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