説明

リッド部のシール構造

【課題】 開口部の面積を広げても、水の浸入を確実に阻止する。
【解決手段】 テールゲート5が閉じられた際に、周囲部13の湾曲面部がウエザストリップ11のリップ部11bに密着してリップ部11bを変形させ、広い面積で周囲部13をウエザストリップ11のリップ部11bに密着させ、また、ウエザストリップ11の位置にばらつきがあっても、湾曲面部でウエザストリップ11のリップ部11bに密着させ、ウエザストリップ11による所望の密着状態を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の開口部を開閉するリッド部のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の開口部であるトランクルームの開口部やドアの開口部は、トランクリッドやドア等のリッド部材により開閉されるようになっている。リッド部材を有するリッド部は、水などの浸入を防ぐために、リッド部材と開口部との合わせ面にシール材としてのウエザストリップが介在して設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来から知られているリッド部のシール構造は、ウエザストリップが介在しているので、リッド部材と開口部との合わせ面からの水の浸入がウエザストリップにより阻止されている。このため、ウエザストリップの開口部やリッド部に対する密着状態により水の浸入が左右されることになるので、ウエザストリップの外側における開口部周りの車体の形状で水が浸入しにくい経路を構築する等の構造が採用されていた。
【0004】
車体の形状で水が浸入しにくい経路を構築するためには、リッド部を閉じた際における開口部との隙間(開口部の周縁部)から浸入する水が、ウエザストリップに直接向かわない状態で経路を構築する必要がある。このため、開口部の周縁部から内側に離れた部位にウエザストリップを介在させることになり、開口部の開口面積に制約が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−234345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、シール材の密着力が安定して得られ、車体の開口部の周縁の近傍にシール材を設けても水の浸入を確実に阻止することができるリッド部のシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明のリッド部のシール構造は、車体の外側に向けて前記車体の開口部の周縁部に取り付けられるシール材と、前記開口部を開閉すると共に、閉じられた際に内側面の周囲部が前記シール材に密着して前記シール材を変形させるリッド部材と、前記リッド部材の内側面の周囲部に形成され、凹状に湾曲する湾曲面部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、リッド部材が閉じられた際に、内側面の湾曲面部がシール材に密着してシール材を変形させ、広い面積でリッド部材がシール材に密着する。また、シール材の位置にばらつきがあっても、湾曲面部でリッド部材の内側面がシール材に密着し、シール材による所望の密着状態が維持される。
【0009】
このため、シール材の密着力が安定して得られ、車体の開口部の周縁の近傍にシール材を設けても水の浸入を確実に阻止することが可能になる。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明のリッド部のシール構造は、請求項1に記載のリッド部のシール構造において、前記湾曲面部は、前記シール材に対応して前記リッド部材の内側面の全周に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明では、リッド部材の内側面の全周に湾曲面部が形成されているので、湾曲面部を凹状の長尺溝にすることができ、加工性を低下させることなく容易に湾曲面部を形成することができる。また、湾曲面部がリッド部材の全周に亘って形成されるので、リッド部材の剛性を向上させることができる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明のリッド部のシール構造は、請求項1もしくは請求項2に記載のリッド部のシール構造において、前記開口部の外周部位には前記車体の外側部材が配され、前記リッド部材及び前記外側部材との隙間と、前記湾曲面部の縁とを結ぶ直線の延長線は、前記シール材の高さ方向における前記開口部の周縁部側に向けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、外側部材(例えば、ランプレンズ)とリッド部材の隙間から水が浸入した場合、開口部の周縁部側よりも内側の位置におけるシール材に水が接触し、シール材とリッド部材の合わせ面に水が直接浸入することがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明のリッド部のシール構造は、シール材の密着力が安定して得られ、車体の開口部の周縁の近傍にシール材を設けても水の浸入を確実に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態例に係るリッド部のシール構造が適用された車両の後方外観図である。
【図2】テールゲートを開けた状態の車両の後方図である。
【図3】テールゲートの内側面の外観図である。
【図4】図1中のIV−IV線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1にはリッド部として車両の荷室の開口部を開閉するテールゲートのシール構造が適用された車両を後方から見た外観斜視状態、図2にはテールゲートを開けた状態の車両を後方側から見た正面視状態、図3にはテールゲートを内側面から見た(荷室の中側から見た)正面視状態、図4には図1中のIV−IV線矢印方向から見たテールゲートと荷室の開口部の周縁部との合わせ面の状態を示してある。
【0017】
図1、図2に示すように、車両1のリヤシート2の後ろ側には荷室3のスペースが確保され、車両1の後面には荷室3の開口部4が形成されている。開口部4の上側の車体にはテールゲート5が上下方向に回動自在に備えられ、テールゲート5を下側に回動させることにより開口部4が閉じられるようになっている。
【0018】
図1に示すように、テールゲート5が閉じられた状態で、テールゲート5と、開口部4の周縁の車体パネル6(外側部材)、及び、テールランプのランプレンズ7(外側部材)との間には、隙間8が形成される。特に、テールゲート5の側部の下側と、ランプレンズ7及びその下側の車体パネル6との間には、テールゲート5の面と同じ面内に隙間8が形成されている。
【0019】
図2に示すように、荷室3の開口部4の周縁部にはゴム製のウエザストリップ11(シール材)が取り付けられ、ウエザストリップ11は開口部4の全周に亘り取り付けられている。テールゲート5が閉じられた際に、テールゲート5の内側面12の周囲部13がウエザストリップ11に密着してウエザストリップ11が変形される。
【0020】
テールゲート5と開口部4との合わせ面にウエザストリップ11が介在して設けられ、テールゲート5が閉じられた際に、テールゲート5の周囲部13がウエザストリップ11に密着して変形するので、テールゲート5と開口部4との合わせ面から荷室3の内部への水の浸入が阻止される。
【0021】
図2から図4に示すように、テールゲート5の内側面12の周囲部13は、凹状に湾曲する湾曲面部とされ、湾曲面部はテールゲート5の周囲部13の全周に形成されて周囲部13が凹状の長尺溝となっている。このため、テールゲート5の周囲部13を樋形状に加工することで湾曲面部とすることができ、加工性を低下させることなく容易に湾曲面部を形成することができる。また、テールゲート5の周囲部13の全周に湾曲面部が形成されているので、テールゲート5の剛性、特に、テールゲート5の周囲部分の剛性が向上し、開閉支持機構、ロック機構等の取付けや、デザインに対する自由度を高くすることができる。
【0022】
図4に基づいてテールゲート5とテールランプのランプレンズ7が備えられている部位の開口部4との合わせ面を具体的に説明する。図4には、テールゲート5が開いている状態のウエザストリップ11を点線で示してある。
【0023】
図4に示すように、車体パネル6を構成するフランジ部15(周縁部)にはウエザストリップ11の保持部11aが嵌合し、保持部11aの車体の外側の方向(図中下側)にはリップ部11bが連続して一体に設けられている。リップ部11bの先端部は、開口部4の外側(図中左側)への変位部が設けられている。
【0024】
テールゲート5はアウタパネル17及びインナーパネル18により構成され、テールゲート5が閉じられた際に、アウタパネル17のラインが、車体パネル6やテールランプのランプレンズ7のライン等と一連となって車両の外観意匠となっている。
【0025】
テールゲート5が閉じられると、ウエザストリップ11のリップ部11bが周囲部13の湾曲面部に密着して潰される。リップ部11bは湾曲面部に密着するため、密着する面積を広くすることができる。
【0026】
テールゲート5のアウタパネル17及びテールランプのランプレンズ7の間の隙間8と、凹状に湾曲する湾曲面部である周囲部13の縁13aとを結ぶ空間部での直線Sの延長線は、ウエザストリップ11のリップ部11bの保持部11a側に寄った部位に向けられている。
【0027】
つまり、隙間から浸入した水は、直線Sよりもウエザストリップ11の保持部11a側に向かい、水の浸入を阻止する段部等を設けなくても、リップ部11bの周囲部13への密着面に水が直接浸入することがない。このため、洗車等で高圧水が隙間から浸入しても、ウエザストリップ11のリップ部11bの密着面から荷室3の内部に水が入ることがない。
【0028】
そして、ウエザストリップ11の外側に、水の浸入を阻止するための段部等を設ける必要がないので、開口部4の外周の外側近傍にウエザストリップ11を配置して開口部4の面積を広げることが可能になる。
【0029】
上述した実施例のリッド部のシール構造は、テールゲート5が閉じられた際に、周囲部13の湾曲面部がウエザストリップ11のリップ部11bに密着してリップ部11bを変形させるので、広い面積でテールゲート5の周囲部13をウエザストリップ11のリップ部11bに密着させることができる。また、ウエザストリップ11の位置にばらつきがあっても、テールゲート5の周囲部13が湾曲面部でウエザストリップ11のリップ部11bに密着するので、ウエザストリップ11による所望の密着状態が維持される。
【0030】
このため、ウエザストリップ11の密着力が安定して得られ、車両1の開口部4の周縁の近傍にウエザストリップ11を設けて開口部4の面積を広げても、水の浸入を確実に阻止することが可能になる。
【0031】
上述した実施例は、リッド部として車両1の荷室3の開口部4を開閉するテールゲート5のシール構造が適用された例を挙げて説明したが、トランクリッドやドアにより開閉される開口部に対するシール構造として適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車両の開口部を開閉するリッド部のシール構造の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 車両
2 リヤシート
3 荷室
4 開口部
5 テールゲート
6 車体パネル
7 ランプレンズ
8 隙間
11 ウエザストリップ
12 内側面
13 周囲部
15 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の外側に向けて前記車体の開口部の周縁部に取り付けられるシール材と、
前記開口部を開閉すると共に、閉じられた際に内側面の周囲部が前記シール材に密着して前記シール材を変形させるリッド部材と、
前記リッド部材の内側面の周囲部に形成され、凹状に湾曲する湾曲面部とを備えた
ことを特徴とするリッド部のシール構造。
【請求項2】
請求項1に記載のリッド部のシール構造において、
前記湾曲面部は、前記シール材に対応して前記リッド部材の内側面の全周に形成されている
ことを特徴とするリッド部のシール構造。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載のリッド部のシール構造において、
前記開口部の外周の部位には前記車体の外側部材が配され、
前記リッド部材及び前記外側部材との隙間と、前記湾曲面部の縁とを結ぶ直線の延長線は、前記シール材の高さ方向における前記開口部の周縁部側に向けられている
ことを特徴とするリッド部のシール構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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