説明

リップグロス製品

【課題】唇上での延びが良く、細部に至るまで均一に塗ることができるとともに、2度付け、3度付けしてもダマにならずに重ね塗りができるリップグロス製品の提供。
【解決手段】塗布具を備えたキャップ部と、粘性組成物が充填された有底筒状の容器本体とから構成されるリップグロス製品であって、前記粘性組成物は、(A)水添ポリイソブテン、(B)水酸基を有するエステル油、(C)N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルおよび(D)室温で固形の油剤を含有し、粘度が200〜600Pa・sであり、前記塗布具の塗布部は、硬度がHDA50〜90である樹脂からなる、少なくとも2つの塗布面を有し、該塗布面には植毛が施されていないことを特徴とするリップグロス製品とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リップグロス製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、唇に光沢感や潤い感を付与するために、リップグロスが用いられている。これらリップグロスは、中味組成物と、該中味組成物を充填してなる容器とからなり、指先で中味組成物を塗布する形態又は樹脂性の塗布具を用いて中味組成物を塗布する形態で用いられている。中でも、指先が汚れることなく塗布できることから、塗布具を用いて塗布する形態のリップグロスが汎用されている。また、リップグロスにおける中味組成物は、光沢感や潤い感を大いに発揮させるため、一般的に油性剤型で調製される。しかしながら、主に油剤が用いられるため、塗布時の延びに劣り、均一に塗ることができないといった問題がある。
【0003】
これまで、塗布時の使用感を高める試みとして、例えば、キャンデリラワックス、液状油、並びに、固形油および/又は油性ゲル化剤を含有する口唇用化粧料であることを特徴とする油性化粧料(例えば、特許文献1を参照)、フッ素ポリエーテル共変性シリコーン、リンゴ酸ジイソステアリルを含有する口唇化粧料(例えば、特許文献2を参照)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、これら試みによって、ある程度、中味組成物自体の延びを高めることはできるものの、塗布具を用いて唇へ塗布する場合には、塗布具の硬さ、塗布具の形状などの種々要因により、中味組成物を細部に至るまで均一に塗ることができず、また、2度付け、3度付けによりダマになり重ね塗りができないといった問題がある。
【0005】
一方、従来から、リップグロスなどの中味組成物を塗布するための種々の容器が開発されている(例えば、特許文献3〜8を参照)。しかしながら、これら容器は、塗布に最適な塗布具の形状などの改良が図られたものであって、中味組成物の特徴を最大限に引き出す検討は一切なされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−306856号公報
【特許文献2】特開2005−330254号公報
【特許文献3】特開2001−128731号公報
【特許文献4】特開2001−161434号公報
【特許文献5】特開2006−94892号公報
【特許文献6】特開2006−346469号公報
【特許文献7】特開2007−21230号公報
【特許文献8】特開2008−12177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、唇上での延びが良く、細部に至るまで均一に塗ることができるとともに、2度付け、3度付けしてもダマにならずに重ね塗りができるリップグロス製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、
〔1〕塗布具を備えたキャップ部と、粘性組成物が充填された有底筒状の容器本体とから構成されるリップグロス製品であって、
前記粘性組成物は、(A)水添ポリイソブテン、(B)水酸基を有するエステル油、(C)N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルおよび(D)室温で固形の油剤を含有し、粘度が200〜600Pa・sであり、
前記塗布具の塗布部は、硬度がHDA50〜90である樹脂からなる、少なくとも2つの塗布面を有し、該塗布面には植毛が施されていない
ことを特徴とするリップグロス製品、
〔2〕(B)成分が、リンゴ酸ジイソステアリルである前記〔1〕に記載のリップグロス製品、
〔3〕(C)成分が、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)および/又はN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)である前記〔1〕又は〔2〕に記載のリップグロス製品、
〔4〕塗布面の一方の面が面平行側視で凹状、且つ、他方の面が面平行側視で凸状の形状に成型されていることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕の何れかに記載のリップグロス製品、並びに
〔5〕塗布面の厚みが先端部に向かって徐々に薄くなる形状に成型されていることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載のリップグロス製品
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリップグロス製品は、粘度が200〜600Pa・sである粘性組成物と、該組成物を唇に塗布する最適な硬度を有する樹脂性からなる、少なくとも2つの塗布面を備えることから、唇上での延びが良く、細部に至るまで均一に塗ることができるとともに、2度付け、3度付けしてもダマにならずに重ね塗りができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の容器本体からキャップ部を取り外した状態を示す側視図である。
【図2】容器本体の半断面側視図である。
【図3】キャップ部の半断面側視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のリップグロス製品に充填される粘性組成物は、(A)水添ポリイソブテン、(B)水酸基を有するエステル油、(C)N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルおよび(D)室温で固形の油剤を含有する。
【0012】
(A)成分の水添ポリイソブテンは、イソブテンとn−ブテンを共重合した後、水素添加して得られる側鎖を有する炭化水素の混合物で、合成の液状油である。(A)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、唇への密着性の観点から、組成物中、5重量%以上が好ましく、より好ましくは10重量%以上である。また、軽い使用感とする観点から、50重量%以下が好ましく、より好ましくは40重量%以下である。これらの観点から、(A)成分の含有量は、5〜50重量%が好ましく、より好ましくは10〜40重量%である。
【0013】
(B)成分の水酸基を有するエステル油としては、例えば、乳酸イソステアリル、乳酸オクチルドデシル、乳酸オレイル、乳酸ステアリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリルなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(B)成分としては、延びの観点から、リンゴ酸ジイソステアリルを用いることが好ましい。
【0014】
尚、(B)成分は、市販品をそのまま使用することができる。リンゴ酸ジイソステアリルの市販品としては、例えば、コスモール222(商品名,日清オイリオ社製)などを例示することができる。
【0015】
(B)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、延びの観点から、組成物中、5重量%以上が好ましく、より好ましくは10重量%以上である。また、艶の観点から、50重量%以下が好ましく、より好ましくは40重量%以下である。これらの観点から、(B)成分の含有量は、5〜50重量%が好ましく、より好ましくは10〜40重量%である。
【0016】
(C)成分のN−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルを構成するアシル基としては、炭素数8〜30の飽和、或いは不飽和の直鎖、或いは分岐鎖の脂肪族アシル基が挙げられる。具体的には、例えば、などを例示することができる。2−エチルヘキサノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、オレオイル基、イソステアロイル基、リノレノイル基などを例示することができる。これらアシル基の中でも、ラウロイル基を好適に用いることができる。また、ジアルキルエステルを構成するアルキル基としては、直鎖、分岐鎖、環状構造を有するものであれば特に限定されないが、例えば、オクチル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基、イソステアリル基、ベヘニル基、オクチルドデシル基、フィトステリル基、コレステリル基などを例示することができる。これらの中でも、炭素数16〜36のアルキル基を好適に用いることができる。
【0017】
具体的な(C)成分としては、例えば、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)などを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(C)成分としては、延びの観点および着色剤などの顔料の分散性を高める観点から、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)を用いることが好ましい。
【0018】
尚、(C)成分は、市販品をそのまま使用することができる。N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)の市販品としては、例えば、エルデュウCL−202(商品名,味の素社製)などを例示することができる。また、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)の市販品としては、例えば、エルデュウPS203(商品名,味の素社製)などを例示することができる。
【0019】
(C)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、延びの観点から、組成物中、1重量%以上が好ましく、より好ましくは3重量%以上である。また、軽い使用感とする観点から、15重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下である。これらの観点から、(C)成分の含有量は、1〜15重量%が好ましく、より好ましくは3〜10重量%である。
【0020】
(D)成分の室温で固形の油剤の具体例としては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ラノリンなどのロウ類;セレシン、パラフィン、ポリエチレン末などの炭化水素油;ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの高級アルコール;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの高級脂肪酸;牛脂、硬化油などの油脂;(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。好適な(D)成分としては、唇への密着感を高める観点、並びに、重ね塗りの観点から、ロウ類、(ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリルを用いることが好ましい。尚、本発明における室温とは、1〜30℃の温度範囲を表す。
【0021】
(D)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、密着感を高め、重ね塗りを可能にする観点から、組成物中、0.01重量%以上が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上である。また、軽い使用感とするの観点から、5重量%以下が好ましく、より好ましくは3重量%以下である。これらの観点から、(D)成分の含有量は、0.01〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%である。
【0022】
本発明のリップグロス製品に充填される組成物の粘度は、200〜600Pa・sの範囲で調製されることが好ましく、300〜500Pa・sの範囲で調製されることがより好ましい。粘度が200Pa・s未満の場合、唇からの垂落ちが生じ均一に塗ることが困難となり、また、600Pa・sよりも高い場合、延びに劣り均一に塗ることができないばかりか、重ね塗りによるダマ(塊り)が発生し易くなるために何れも好ましくない。尚、粘度(Pa・s)は、TVB型回転粘度計(TVB−22L,東機産業社製)を用いて、測定温度:25℃、ローター:No.4、回転速度:0.6rpm、測定時間:1分で測定した値であるが、これら測定条件のみに限定されるものでない。
【0023】
本発明のリップグロス製品に充填される粘性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば、無機顔料、有機顔料、パール顔料などの着色剤;油脂、炭化水素油などの上記(A)成分および(B)成分以外の室温で液状の油剤;シリコーン類、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、保湿剤、清涼剤、ビタミン類、植物抽出物などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0024】
具体的な着色剤としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸、硫酸バリウム、ベンガラ、酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、酸化コバルト、亜鉛華、カーボンブラック、アルミナなどの無機顔料;青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、黄色4号、黄色5号、黄色203号、黄色403号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色401号、緑色3号、緑色201号などの有機顔料;パール粉末、オキシ塩化ビスマス、雲母、金属酸化物被覆雲母(例えば、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、黒酸化鉄被覆雲母、黒酸化鉄被覆雲母チタン、黄酸化鉄被覆雲母、酸化鉄・黒酸化鉄被覆雲母チタン、コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタンなど)、金属酸化物被覆アルミナフレーク、金属酸化物被覆シリカフレーク、多層コートパール顔料(例えば、TiO−SiO−TiO−Micaなど)などのパール顔料などを例示することができる。
【0025】
室温で液状の油剤としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、アボカド油などの油脂;流動パラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワランなどの炭化水素油などを例示することができる。
【0026】
シリコーン類としては、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどを例示することができる。
【0027】
酸化防止剤としては、例えば、α−トコフェロールおよびその誘導体、アスコルビン酸およびその誘導体、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類、亜硫酸、重亜硫酸、チオ硫酸、チオ乳酸、チオグリコール酸、L−システイン、N−アセチル−L−システインなどを例示することができる。
【0028】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステルなどの安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸メチル、ホモメンチル−N−アセチルアントラニレートなどのアントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸メチルなどのサリチル酸系紫外線吸収剤;パラメトキシケイ皮酸オクチル、エチル−4−イソプロピルシンナメートなどのケイ皮酸系紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ベンジルサリシレートなどのサリチル酸系紫外線吸収剤;ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルなどのウロカニン酸系紫外線吸収剤などを例示することができる。
【0029】
次に、本発明のリップグロス製品に用いられる塗布具を備えたキャップ部と、有底筒状の容器本体について図面に基づいて具体的に説明する。
【0030】
図1は、本発明の容器本体からキャップ部を取り外した状態を示す側視図である。図2は、容器本体の半断面側視図である。図3は、キャップ部の半断面側視図である。図中、(1)は容器本体、(2)はキャップ部、(3)は軸部、(4)は塗布具、(5)はシゴキ部材、(6)は粘性組成物を夫々示している。
尚、本発明は、これら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0031】
図1に示すように、本実施態様の容器は、シゴキ部材(5)を備えた容器本体(1)と、軸部(3)を備えたキャップ部(2)から構成され、軸部(3)の先端側には、唇へ塗布するための塗布具(4)が設けられている。図1は、容器本体(1)からキャップ部(2)を取り外した状態、即ち、使用時の状態を示している。
【0032】
容器本体(1)には、図2に示すように、内部に粘性組成物(6)が貯留されている。容器本体(1)の成型に用いられる材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルクロライド、ポリプロピレンなどを例示することができる。成型される形状は、内部に粘性組成物(6)を貯留することができる有底筒状の形状であれば特に限定されないが、例えば、円筒状、くびれのある円筒状、樽状、四角柱、三角柱、多面柱、ティアドロップ形状などを例示することができる。また、容器本体(1)の色彩は、特に限定されないが、内容物の色味を判別し易いように透明であっても良く、意匠性を考慮して白色、黒色等で着色されていても良い。
【0033】
キャップ部(2)は、キャップ部(2)内に密嵌、固定する固定部(31)を形成してなる軸部(3)を備えており、軸部(3)の先端側には、唇へ塗布するための塗布具(4)が設けられている。図3に示すように、キャップ部(2)の内面には、雌螺子部(21)が設けられている。該雌螺子部(21)と、図2に示す容器本体(1)の口部の外側面に形成された雄螺子部(11)とを螺合することにより、キャップ部(2)と容器本体(1)とを固定することができる。キャップ部(2)の成型に用いられる材質は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを例示することができる。成型される形状は、持ち易さを考慮して容器本体(1)の形状に併せて適宜成型すれば特に限定されない。また、軸部(3)の成型に用いられる材質は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール樹脂、ナイロンなどを例示することができる。尚、軸部(3)の軸幅は、容器形状により適宜設定されれば特に限定されない。
【0034】
軸部(3)の先端側には、少なくとも2つの塗布面(41、42)を有し、該塗布面に植毛が施されていない、硬度がHDA50〜90である樹脂性の塗布具(4)を備えている。本発明においては、該塗布面に植毛が施されていない、硬度がHDA50〜90である樹脂性の塗布具(4)を用いることにより、唇に均一に塗ることができるとともに、2度付け、3度付けしてもダマにならずに重ね塗りができるようになる。尚、硬度は、JIS K 7215(デュロメータ硬さ)に準拠して測定したときの値である。
【0035】
図3に示すように、塗布面(41、42)の面平行側視における断面形状でみると、塗布面(41)側と塗布面(42)側とは、非対称な形状を有していることが好ましい。具体的には、塗布面(41)は断面形状で凹状、塗布面(42)は断面形状で凸状を形成する塗布具であることが好ましい。このように一方の塗布面を凹状とすることにより、従来の対称な平面構造からなる塗布具と比較して、容器本体(1)から粘性組成物(6)の適量を容易に取り出すことができるようになる。更には、凹状とすることで、唇面に沿って粘性組成物(6)を塗布することができることから、唇に均一に塗ることができるとともに、2度付け、3度付けしてもダマにならずに重ね塗りができるようになる。
【0036】
また、図3に示すように、塗布面(41、42)の厚みが先端部に向かって徐々に薄くなる形状で成型されることが好ましい。これにより、唇に負荷をかけずに塗布することができる。塗布面(41、42)の厚み幅は、先端部に向かって徐々に薄くなる形状で成型されれば特に限定されないが、最厚幅3〜7mm、最薄幅0.3〜1mmの範囲内で成型されることが好ましい。
【0037】
加えて、図1に示すように、塗布具(4)の塗布面の両端部(43、44)の幅は、一定幅で平行に成型され、且つ、先端部で丸みを帯びた形状で成型されることが好ましい。塗布面の両端部(43、44)の幅は、特に限定されないが、3〜7mmの範囲内で成型されることが好ましい。上記した形状で成型された塗布面(4)を用いることにより、唇の細部に至るまで均一に塗ることができるようになる。
【0038】
塗布具(4)に用いられる材質は、樹脂性のものであれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。これら樹脂の中でも、エラストマー系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などを好適に用いることができる。塗布具(4)の色彩は、特に限定されないが、取り出した内容物が一目で分かるように透明、半透明であることが好ましいが、意匠性を考慮して白色、黒色、赤色等で着色されていても良い。
【0039】
また、図2に示すように、容器本体(1)の口部の内側面には、シゴキ部材(5)が内装着されており、該シゴキ部材(5)の内側面には、上記した塗布具(4)による粘性組成物(6)の過剰な取り出しを防止する観点から、塗布具(4)の塗布面の両端部(43、44)の幅よりも小さい直径で設計された突縁部(51)が設けられている。該突縁部(51)を設けることにより、取り出し時に塗布具(4)が突縁部(51)に接触することで、過剰に付着した粘性組成物(6)を削ぎ落とすことができる。したがって、過剰な取り出しを防止することができることから、塗布具(4)からの粘性組成物(6)の垂れ落ちがなく、衣服などへの付着を抑えることができるとともに、適量を唇に均一に塗ることができるようになる。シゴキ部材(5)に用いられる材質は、樹脂性のものであれば特に限定されないが、例えば、二トリルブタジエンゴム、ポリエチレン、シリコーンゴムなどを例示することができる。
【0040】
本発明のリップグロス製品は、上記した(A)水添ポリイソブテン、(B)水酸基を有するエステル油、(C)N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルおよび(D)ロウ類を含有した粘度が200〜600Pa・sである粘性組成物と、該粘性組成物の塗布に最適な少なくとも2つの塗布面を有し、該塗布面に植毛が施されていない、硬度がHDA50〜90である樹脂性の塗布具を備えた容器とからなることから、従来のリップグロス製品と対比して、唇上での延びが良く、細部に至るまで均一に塗ることができるとともに、2度付け、3度付けしてもダマにならずに重ね塗りができるという格段に優れた効果を奏するものである。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「重量%」を表す。
【0042】
(試料の調製1)
表1に記した組成に従い、実施例1〜3および比較例1〜3の各粘性組成物を常法に準じて調製し、本発明の容器に充填し下記評価に供した。結果を表1に記する。尚、容器は、塗布具;熱可塑性エラストマー樹脂、硬度;HDA70からなる容器(以下、容器(X)と略す)を用いた。
【0043】
(試験例1:粘度測定)
実施例および比較例で得られた各試料を、50mL容のスクリュー管に充填し、TVB型回転粘度計(TVB−22L,東機産業社製)を用いて、ローター:No.4、回転速度:0.6rpm、測定時間:1分、温度:25℃の測定条件下で粘度500(Pa・s)を測定した。
【0044】
(試験例2:塗布時の延展性・均一性の評価)
女性評価パネル20名により、実施例および比較例の各試料を、実際に唇に塗布してもらい、延展性および均一性について下記評価基準に従って官能評価した。
【0045】
<延展性の評価基準>
◎:20名中16名以上が唇上での延展性が良いと回答
○:20名中11〜15名が唇上での延展性が良いと回答
△:20名中6〜10名が唇上での延展性が良いと回答
×:20名中5名以下が唇上での延展性が良いと回答
【0046】
<均一性の評価基準>
◎:20名中16名以上が均一に塗ることができると回答
○:20名中11〜15名が均一に塗ることができると回答
△:20名中6〜10名が均一に塗ることができると回答
×:20名中5名以下が均一に塗ることができると回答
【0047】
(試験例3:重ね塗りの評価)
試験例2の評価後、同パネルにより、2度付け、3度付けしてもらい、3度塗りした後の重ね塗りについて下記評価基準に従って官能評価した。
【0048】
<重ね塗りの評価基準>
◎:20名中16名以上が重ね塗りしてもダマにならないと回答
○:20名中11〜15名が重ね塗りしてもダマにならないと回答
△:20名中6〜10名が重ね塗りしてもダマにならないと回答
×:20名中5名以下が重ね塗りしてもダマにならないと回答
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示された結果から、各実施例のリップグロス製品は、各比較例のものと対比して、唇上での延びが良く、均一に塗れていることが分かる。また、延展性に優れることから、2度付け、3度付けしてもダマにならずに重ね塗りできることが分かる。
【0051】
(試料の調製2)
表2に記した組成に従い、同一組成の粘性組成物を常法に準じて調製し、本発明の容器(X)に充填したリップグロス製品を実施例4、下記容器(Y)又は容器(Z)に充填したリップグロス製品を比較例4又は比較例5とし、上記試験例2および試験例3と同様の評価に供した。結果を表2に記する。
【0052】
容器(Y):塗布具;ポリウレタン樹脂、硬度;HDA40からなる容器
容器(Z):塗布具;ポリエチレン樹脂、硬度;HDA100からなり、塗布面に植毛が施されている容器
【0053】
【表2】

【0054】
表2に示された結果から、各実施例のリップグロス製品は、各比較例のものと対比して、唇上での延びが良く、均一に塗れていることが分かる。また、延展性に優れることから、2度付け、3度付けしてもダマにならずに重ね塗りできることが分かる。
【符号の説明】
【0055】
1 容器本体
11 雄ネジ部
2 キャップ部
21 雌ネジ部
3 支持軸部
4 塗布具
41 塗布面
42 塗布面
5 中栓
51 シゴキ部
6 粘性組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布具を備えたキャップ部と、粘性組成物が充填された有底筒状の容器本体とから構成されるリップグロス製品であって、
前記粘性組成物は、(A)水添ポリイソブテン、(B)水酸基を有するエステル油、(C)N−アシルグルタミン酸ジアルキルエステルおよび(D)室温で固形の油剤を含有し、粘度が200〜600Pa・sであり、
前記塗布具の塗布部は、硬度がHDA50〜90である樹脂からなる、少なくとも2つの塗布面を有し、該塗布面には植毛が施されていない
ことを特徴とするリップグロス製品。
【請求項2】
(B)成分が、リンゴ酸ジイソステアリルである請求項1に記載のリップグロス製品。
【請求項3】
(C)成分が、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)および/又はN−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)である請求項1又は2に記載のリップグロス製品。
【請求項4】
塗布面の一方の面が面平行側視で凹状、且つ、他方の面が面平行側視で凸状の形状に成型されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のリップグロス製品。
【請求項5】
塗布面の厚みが先端部に向かって徐々に薄くなる形状に成型されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のリップグロス製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−1303(P2011−1303A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146098(P2009−146098)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】