説明

リテーナディスク上に追加ディスクを有するアキシアルピストン装置、対応のリテーナディスク及び対応の追加ディスク

本発明は、内部に回転斜板(13)及びシリンダ胴(4)を軸方向に互いに隣接して配置するとともに、互いに対して回転可能であるように取り付けたハウジング(2)と、回転斜板(24)及びシリンダ胴(4)間に配置されたリテーナディスク(24)によって回転斜板(13)から取り外されないように保持された幾つかのピストン(10)と、リテーナディスク(24)の、回転斜板(13)と軸方向反対の自由側(24b)の中央傾斜領域の背後に軸方向運動遊び(a)を伴って係合する少なくとも1つの支持部分(58a)とを備えるアキシアルピストン装置(1)である。支持機能を改善するために、環状の追加ディスク(61)が、リテーナディスク(24)の自由側(24b)の縁部領域に載って、リテーナディスク(24)に締結される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ請求項1、2及び5の前文に従ったアキシアルピストン装置又はリテーナディスク又は追加ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
アキシアルピストン装置の場合、ピストンが誘導ストロークを実行するとき、軸方向力がピストンに作用して、ピストンを、例えば対応のスライドブロックとともに、回転斜板から持ち上げようとする。これは、ピストンヘッド又はスライドブロック用のリテーナディスクを有するリテーナ装置によって防止される。上記軸方向力は相当に大きいものである得るので、リテーナ装置を過負荷及び破損から保護するために、負荷ピークの場合に支持装置によってリテーナ装置の背後に係合してそれを支持するやり方が、すでに既知である。
【0003】
特許文献1に記載されているアキシアルピストン装置の場合、そのような支持装置が、ピボットプレートの形の回転斜板の内側溝に着座してリテーナ装置の背後でリテーナディスクに係合する固定リングによって構成される。この既知の構造の場合、保持力及び支持力は、リテーナディスクによって吸収されて、アキシアルピストン装置のシリンダ胴の、いわゆるスイベルサドルを介して伝達される。
【0004】
特許文献2には、リテーナ装置を支持する支持装置が、ハウジング内の半径方向ガイド穴内で半径方向に変位可能であるように取り付けられてばねによって半径方向内向きに押し付けられている支持タペットによって構成されているアキシアルピストン装置が記載されている。支持タペットは、その内側端部に、対応のリテーナディスクの平面に対して傾斜している傾斜面を有し、支持タペットは、これらの傾斜面により、リテーナディスクの外縁部の背後に係合する。傾斜面により、この従来より既知の支持装置には以下の欠点がある。基本的に、リテーナディスク及び保持タペット間の接触のために、摩擦、摩耗及びその結果の発熱が生じるという欠点がある。傾斜面の傾斜が大きすぎる場合、ピストンの軸方向引張り力のために、リテーナディスクが支持タペットを外向きに押す危険がさらにあり、その結果として、支持タペットは、それらの有効性を失って、リテーナディスクに支持力を加えることができないか、減少した支持力を加えることができるだけである。加えて、この既知の構造の場合、特に回動可能な回転斜板が存在するとき、リテーナディスク及び支持タペット間に応力が発生し、これは、回転斜板の回動時にリテーナディスクの傾斜位置が変更されることによって引き起こされる。
【0005】
特許文献3から既知のリテーナディスクは、スライドブロック用に円周上に配置された収容開口を有するとともに、中央開口を有し、それにより、リテーナディスクがスラスト軸受け上に載る。回動可能な回転斜板の場合、スラスト軸受けは、サドル形の部分的に球形の担持面を有することができ、その上で回転斜板が回動可能である。スライドブロック用の保持力は、リテーナディスクの、回転斜板の方に向いた保持側であって、その上にスライドブロックが載る、保持側によって加えられる。スライドブロックの円筒部分が、リテーナディスクの収容開口を貫通し、これらの収容開口は、回動可能な回転斜板の場合、半径方向に長円の形状である。リテーナディスクの、保持側と軸方向に反対の自由側で、収容開口は、自由側から突出する環状カラーによって延長される。これらの環状カラーの目的は、スライドブロックの、それらを通って突出する部分用に十分に大きいガイド面を与えることである。 加えて、環状カラーは、リテーナディスクの安定化の助けになる。環状カラーを備えたリテーナディスクは、好ましくは金型打ち抜きから単一部品として加圧成形され、環状カラーは、また好ましくは球形中央担持リングも、プレス加工によって単一部品として打ち抜かれる。特に環状カラーによって増加させたリテーナディスクの安定性のため、リテーナリングは、リングカラーを支持するディスク本体の厚さを比較的薄くして実現されることができ、その結果、比較的軽量のリテーナディスクが得られる。アキシアルピストン装置の回転動作中にリテーナディスクの遠心力によって発生する曲げモーメントをできる限り小さいままに保持するために、これが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第3901064A1号明細書
【特許文献2】米国特許第2,101,213号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第19751994A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アキシアルピストン装置の場合、又はアキシアルピストン装置用のリテーナディスクの場合、又はリテーナディスク又はアキシアルピストン装置用の追加ディスクの場合、支持機能を改善する目的に基づく。この改善は、複数の局面で行われることができ、例えば、空間利用及びリテーナディスクの互換性の改善、材料の選択の改善又は容易化、及び適当な材料による摩耗の減少又は耐用寿命の延長がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本目的は、請求項1、2及び5の特徴によって達成される。本発明の有利な発展が、それぞれの関連の従属請求項に記載されている。
【0009】
請求項1又は2に従った本発明による構造の場合、それぞれの場合、リテーナディスクの自由側で、支持部分と軸方向に反対の縁部領域内に、少なくとも自由側に載って1つ又は複数の締結要素によってリテーナディスクに締結される環状の追加ディスクが配置される。
【0010】
独立請求項5に従った本発明による構造の場合、追加ディスクは、その軸方向側に、半径方向担持面と、1つ又は複数の締結要素とを有し、締結要素の各々は、追加ディスクをリテーナディスクに締結する締結装置の一部分である。
【0011】
本発明によるすべての構造に追加ディスクが共通しており、これは、リテーナディスクの自由側又は自由面上に載ってそれに締結される、又は締結可能であるか、リテーナディスクの自由側又は自由面上に載ってそれに締結されるように実現される。この場合、追加ディスクは、リテーナディスクに離脱可能又は離脱不可に締結されることができるか、締結可能である。
【0012】
すべての場合、追加ディスクは、例えば接着剤付着、重ね成形、重ね一体成形又はロック係合によって本生産の前に製造されてリテーナディスクに締結される追加部品であるか、あるいは、アキシアルピストン装置の最終組み立て中に、追加ディスクを、例えばロック係合によって装填して締結することもできる。離脱可能な締結装置の場合、追加ディスクの代わりに、例えば異なった厚さの追加ディスクを用いることができる。
【0013】
いずれの場合も、組み立て状態において、追加ディスクは、支持部分及びリテーナディスク間に位置してさまざまな要件を満たすことができる構成部品である。異なったアキシアルピストン装置構造用に少なくとも1つの支持部分及び/又はリテーナディスクを使用することができ、リテーナディスク用に一定の合計厚さが事前に規定されている場合、追加ディスクの取り付けによってリテーナディスクを所望の厚さ要件に適応させることができる。
【0014】
しかしながら、追加ディスクは、他の要件も満たす、例えば、好ましくは追加ディスクが弾性材料又はプラスチックなどの硬質弾性材料で構成されるとき、耐摩耗性又は有効寿命、又は特に追加ディスクが支持部分に衝突する際の減衰機能を改善することができる。
【0015】
本発明による追加ディスクはまた、支持部分との接触に利用可能な支持面の拡大を生じる。支持面のこの拡大は、特にスライドブロック用のリテーナディスク内の2つの収容穴の間の縁部領域内に得られる。追加ディスクの拡幅部分は、少なくとも部分的にこれらの隙間内へ延出し、それにより、支持面の求められる拡大を行うことができる。
【0016】
収容穴を延長する環状カラーを自由側に有するリテーナディスクの場合で、追加ディスクがそれぞれの場合にテーパ状壁部分を有する環状カラーの外側領域に重なる場合、支持面の拡大は、収容穴とリテーナディスクの外周との間の領域内でも達成されることができる。環状カラーの外側重なり部分を収容するために、追加ディスクはその担持側に、例えば適当なリセスを有することができ、環状カラーの重なり部分がそれに収容される。
【0017】
追加ディスクの上記拡幅部分の少なくとも1つは、少なくとも1つの環状カラー上、又は円周方向に互いに隣接した2つの環状カラー間で追加ディスクの確実に有効な位置決めを生じることもできる、すなわち、円周方向に互いに隣接した2つの拡幅部分が、環状カラーの両側に載る、又は少なくとも1つの拡幅部分が、円周方向に互いに隣接した2つの環状カラー上に載る。
【0018】
リテーナディスクの保持側の円周又は縁部領域は、ロック係合に特にうまく適し、対応のロック係合縁部も、保持側の円周上又は縁部上に配置されることができる。ロック係合ラグを有する対応のロック係合アームが、リテーナディスクの円周上で追加ディスクからリテーナディスクの保持側まで延出して、その背後に係合することができる。
【0019】
本発明は、さまざまなタイプの、例えば回転斜板構造、斜軸構造又はウォッブル板構造のアキシアルピストン装置に適する。回転斜板構造及び斜軸構造であって、回転斜板がシャフトの長手軸回りではなく、横軸回りに回動可能であり得る場合、支持装置の支持部分は任意選択で、ドイツ特許出願公開第DE19800631A1号に示されているように、ハウジングに締結されるか、回転斜板に締結されることができる。他方、ウォッブル板の場合、支持部分は、ウォッブル板に締結されなければならない。
【0020】
さらなる発展は、少なくとも1つの追加ディスク用の簡単な構造を生じ、この構造は有利に組み込まれることができ、省スペースであり、低コストで製造されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるアキシアルピストン装置の軸方向断面図
【図2】アキシアルピストン装置の追加ディスクを締結したリテーナディスクの図1のII−IIに沿った部分断面の拡大図
【図3】図2に従ったリテーナディスクの底面図
【図4】変更構造の追加ディスクを備えるリテーナディスクの図2に対応する断面図
【図5】図4に従った追加ディスクを備えるリテーナディスクの底面図
【図6】図2に従った追加ディスクを単一部品として示す図
【図7】図6に従った追加ディスクの底面図
【図8】図4に従った追加ディスクを単一部品として示す図
【図9】図8に従った追加ディスクの底面図
【0022】
好適な例示的な実施形態及び図面を参照しながら、本発明の有利な構造を以下により十分に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、アキシアルピストン装置1を示し、これは、ハウジング2内に回転可能に取り付けられたシャフト3であって、その上にシリンダ胴が配置されている、シャフト3を有し、シリンダ胴4及びシャフト3は、互いに回り止め状態に連結されている。シャフト3は、シリンダ胴4を貫通して、シリンダ胴4の両側でそれぞれの転がり軸受け5及び6内に取り付けられており、転がり軸受け6の外側軸受けリング7が、ハウジングカバー8の対応のリセス(溝)内に挿入されている。シリンダ胴4内には、円周全体に分散させた複数のシリンダボア9が実現されており、シリンダボア9の中心軸は、例えばシャフト3の中心軸に対して平行に延在している。シリンダボア9内には軸方向に変位可能なピストン10が挿入されており、これらのピストンは、ハウジングカバー8から遠い方に面する側に、球形ヘッド11を有し、このヘッドは、スライドブロック12の対応のリセスと協働して関節継手を形成している。スライドブロック12により、ピストン10は、回転斜板13上に載る。したがって、シリンダ胴4の回転時に、ピストン10は、シリンダボア9内でストローク運動を行う。この場合のストロークの高さは、回転斜板13の位置によって定められ、例示的な実施形態の回転斜板13の位置は、位置決め装置14によって調節可能である。
【0024】
シリンダ胴4は、中央開口15を有し、その内部には、第1ばね受け17及び第2ばね受け18間に拘束された圧縮ばね16が配置されている。この場合の第1ばね受け17は、シャフト3によって軸方向の所定位置に固定されている一方、図示の例示的な実施形態では、第2ばね受け18は、シリンダ胴4の溝内に挿入されたスナップリングによって構成されている。したがって、シリンダ胴4は、圧縮ばね16の力によって軸方向に、その端面19によってそれが制御プレート20に密封状に載る程度まで変位させられ、制御プレート20内には、それぞれ高圧接続部26a及び低圧接続部26bに接続される制御開口22及び23が配置されている。シリンダボア9は、開口21を介してシリンダ胴4の端面19の方に開放している。制御プレート20は、ドエルピン31によってハウジング2に回転しないように取り付けられている。
【0025】
圧力ストローク中、スライドブロック12は、スライド面25により、アキシアルピストン装置1の動作中にシリンダボア9内に優勢である圧力によって回転斜板13上に担持接触状態に保持される。しかしながら、シリンダ胴4の回転の後半の間、シリンダボア9内に負圧が発生し、これは、特に開放回路でのアキシアルピストン装置1の動作の場合、スライドブロック12のそれぞれの片側半分を回転斜板13から離れるように持ち上げようとする。これを防止するために、リテーナディスク24が設けられており、これは、スライドブロック12に保持力を加え、それにより、スライドブロックを回転斜板13のスライド面28上に保持する。
【0026】
図2〜図4を参照しながら以下により詳細に説明するリテーナディスク24は、中央貫通開口32を有し、それにより、それはスラスト軸受け29上に載る。図示の例示的な実施形態では、スラスト軸受け29はシャフト3に固定され、それにより、それはハウジングカバー8の方向へ軸方向に変位することができない。スラスト軸受け29は、球状の外形を有し、それは、中央貫通開口32を画定する表面に対応して、シャフト3に対するリテーナディスク24の傾斜角を変更できるようにする。リテーナディスク24及びスライドブロック12間で保持力を伝達できるようにするために、それぞれスライドブロック12上に肩表面33が実現されており、これは、リテーナディスク24の、回転斜板13の方に面する保持側24a上の平坦な保持面34aと接触している。スライドブロック12はまた、リテーナディスク24内に設けられたそれぞれのスライドブロック収容開口36を貫通するガイド部分35を有する。それぞれの場合、スライドブロック収容開口36の半径方向広がりは、スライドブロック12のガイド部分35より大きく、この領域では該ガイド部分は円筒形である。
【0027】
回転斜板13の傾斜に従ってスライドブロック12がピストン10に対して傾斜できるようにするために、スライドブロック12にはガイド部分35の領域内にリセス37が設けられており、このリセスの幾何学的形状は、ピストン10の球形ヘッド11に対応する。この場合の球形リセス37は、スライドブロック12及びそれぞれのピストン10間で引張り力も伝達できるような程度に、球形ヘッド11の周囲で閉じられている。接触面には、シリンダボア9からピストン10内の潤滑剤ボアを介して潤滑剤が与えられる。
【0028】
図2の軸方向断面図には、リテーナディスク24が示されており、ガイドカラー38が、収容開口36の、保持側24a及び保持面34aと反対の自由側24bの縁部に形成されており、また、中央貫通開口32のカラー39が、保持側24aに形成されており、該ガイドカラー38及び該カラー39は、厚さdのディスク形基本体から形成される。この場合、ガイドカラー38は自由面34bから突出し、この自由面は、好ましくは平坦であって、リテーナディスク24の基本ディスクの厚さdを決定し、また、回転斜板13から遠い方に面し、したがって、平坦な保持面34aと軸方向反対側にある。本例のカラー39は、中央貫通開口32を画定する内面41上に、概略的に示された球形幾何学的形状42に対応するとともにスラスト軸受け29の外形に対応する球形幾何学的形状が実現されるように形成される。カラー39は、保持面34から軸方向に突出する保持ディスク24の基本体からそのように形成される。
【0029】
収容開口36の長さがガイドカラー38によって延長されて、リテーナディスク24を安定させる。平坦な円形ディスクとして実現される基本ディスクの成形は好ましくは、中央貫通開口32及び収容開口36の打ち抜き加工と同時に単一の処理ステップで、いわゆる加圧成形又はプレス加工によって行われる。カラー39及びガイドカラー38を形成するために、中央貫通開口32及び収容開口36を画定する基本体の縁部が加圧成形又はプレス加工されることにより、リテーナディスク24の材料の硬化が付加的に達成される。したがって、アキシアルピストン装置1の動作において疲労強度の問題を招くことなく、基本体の材料の厚さdをさらにまた減少させることができる。
【0030】
したがって、リテーナディスク24は、穴32及び36の打ち抜き及びそれにすぐに引き続いたプレス加工によって1つの処理ステップで、又は2つの処理ステップ、すなわち打ち抜き加工及びプレス加工によって、単一部品として作製されることができる。
【0031】
保持面34aを正確に平坦にするために、この表面を機械加工し、それにより、プレス加工に続いて材料を除去することができ、その機械加工は、材料を除去するための機械加工の前の保持面34aを示す一点鎖線34cによって図2及び図4に示されている。
【0032】
図2及び図4は、仕上げ形状にあるリテーナディスク24を示す。保持面34aは、加圧成形又はプレス加工により、又はそれに続いて材料を除去するための機械加工によって形成されることができる。加圧成形された初期面を34cで示す。ガイドカラー38の成形高さhは好ましくは、基本体の厚さdの50%〜75%である。成形高さhは、全高Hに対するそれの比が約40%であるように選択されることが特に好ましい。
【0033】
収容開口36は、リテーナディスク24の外形50に対して同様に同心配置された円部分51上に配置されている。図示の例示的な実施形態では、9個の収容開口36が、円部分51上に均一分布で配置されており、該収容開口は、リテーナディスク24の外形からわずかに数mm、例えば約1〜2mmのわずかな半径方向距離にある。
【0034】
加えて、ガイドカラー38の各々は、自由面34bの表面部分である外面部分52によって包囲されている。
【0035】
アキシアルピストン装置1が機能動作中にあるとき、ピストン10は、それぞれ誘導ストロークを実行して、リテーナディスク24に引張り力を加え、この引張り力は、これらのピストン10がそれらの誘導ストローク中に油圧作動油を引き込むことから生じる。結果的に生じる誘導引張り力は、図2の右側半分の矢印55によって表されており、これは、誘導ストローク範囲を図示する。この誘導引張り力55に対して、リテーナディスク24がその強度及びその抵抗モーメントで逆らって、リテーナディスクは、誘導引張り力と反対の、誘導引張り力55と少なくとも同じ大きさの保持力56を加える。
【0036】
しかしながら、ピーク負荷の場合、リテーナディスク24は、結果的に生じた誘導引張り力55によって、それぞれの片側半分でそれの弾性限界を超える負荷を回転斜板13によって掛けられて曲がり、リテーナディスク24が超過ストレスを受けて破損するか、曲がるほどの大きさの担持応力を受ける可能性がある。それと比べて、リテーナディスク24の弾性範囲内にある前述の負荷は、損傷を引き起こさない。
【0037】
前述したような過負荷を防止するために、アキシアルピストン装置1は、全体を58で示す支持装置を有し、これは、リテーナディスク24の、片側半分に存在するその誘導ストローク範囲の中央領域の背後に軸方向運動遊びaを伴って係合し、そのため、図2の右側半分に示すように、外縁領域に係合する支持部分58aを有する。
【0038】
この場合、本発明によれば、リテーナディスク24は、回転斜板13から遠い方に面する自由側24bに、環状の追加ディスク61を有し、これは、自由面34bの縁部領域に着座するとともに、追加ディスク61をリテーナディスク24に離脱不可に、又は離脱可能に締結する締結装置62の一部分である1つ又は複数の締結要素62aを有する。
【0039】
追加ディスク61の軸方向厚さcは、支持要素58aからの軸方向距離aが確保されるような大きさであるように寸法が定められる。距離aは、結果的に生じる誘導引張り力55による軸方向負荷の場合、リテーナディスク24が支持部分58aに衝突して、リテーナディスク24の弾性限界に達する前に、支持されるような大きさであるように寸法が定められる。それにより、距離aは、一方では、通常の機能範囲において支持部分58a及び追加ディスク61間に摩擦又は摩耗が全く発生しないように、また他方では、負荷ピークの場合にリテーナディスク24が軸方向に支持され、それにより、弾性限界を超える過負荷が防止されるようにすることができる。
【0040】
追加ディスク61は、丸い環状ディスクであって、その半径方向寸法eは好ましくは、その軸方向厚さcより大きい。
【0041】
リテーナディスク24が突出ガイドカラー38をまったく有していない場合、追加ディスク61は、その円周50aから収容開口36まで半径方向に延出し、やはり収容開口36間でさらに半径方向内向きに延出することができる。
【0042】
本発明の範囲内において、本生産の前に追加ディスク61をリテーナディスク24に離脱可能に、又は離脱不可に締結すること、又はアキシアルピストン装置1の組み立て中に装着して、リテーナディスク24に締結することが可能である。
【0043】
締結装置62は、好ましくはロック係合装置であって、これは、迅速且つ容易に取り扱い可能な締結を可能にするとともに、離脱可能又は離脱不可であることができる。
【0044】
しかしながら、例えば、追加ディスク61をリテーナディスク24に接着剤で付着させる、又は一体成形するために、離脱不可の締結を行うこともできる。例えば、既知の成形装置で実行されることができる重ね鋳込み又は重ね射出成形によって、追加ディスク61をプラスチックから本生産の前に製造するために、重ね一体成形を行うことができる。この場合、追加ディスク61の好ましくは平坦な担持面61aが、その締結要素を構成する。
【0045】
しかしながら、追加ディスク61は、少なくとも1つの締結要素62aを含む別個の射出成形部品として簡単且つ低コストで製造されることができるので、追加ディスク61用の材料プラスチックは、他の理由でも有益である。しかしながら、材料プラスチックは、その弾性のために、追加ディスク61が支持部分58aに衝突したとき、減衰効果を与えることもできる。
【0046】
締結装置62は、円周上に分散した1つ又は複数のロック係合装置によって構成されることができる。図8に従った例示的な実施形態の場合、例えば、円周全体にわたって延在して、追加ディスク61から軸方向に突出するとともに担持面61aの上方に突出する環状又は円周方向壁64によって構成されるロック係合装置が設けられており、該環状又は円周方向壁は、リテーナディスク24又はその基本ディスクの上に重なり、また、円周方向に連続したロック係合ラグ65、又は円弧形に配置されたロック係合ラグにより、追加ディスク24が円周方向壁64によって追加ディスク61上に挟み留めされることができ、好ましくはそれから留めが解除されることもできるように、保持面34aの縁部の背後に弾性的に係合する。この場合の円周方向壁は、保持面34aの上方へ突出することができる。
【0047】
円周方向壁64の存在により、半径方向幅eは、円周方向壁64の厚さだけすでに大きくなっている。
【0048】
図6及び図7に従った例示的な実施形態の場合、円弧形ロック係合アーム66が、円周上に分散して配置されており、該ロック係合アームは、追加ディスク61からほぼ軸方向に平行に延出して、内側に配置されたロック係合ラグ65により、保持面34aの縁部の背後に係合するような長さであるような寸法に定められている。この構造の場合も同様に、追加ディスク61をリテーナディスク24上に挟み留めることができ、また好ましくは、それから留めを解除することもでき、ロック係合アーム66のロック係合ラグ65は、リテーナディスク24の円周上に挟み留められているとき、飛び出し、また逆に、留めが解除されるとき、跳ね戻る。
【0049】
ロック係合アーム66は、例えば円周方向壁64内の半径方向スロット67によって構成されることができ、スロット67は、円周方向壁64の軸方向全長にわたって、又は軸方向長さの一部分だけに延在することができる。ここでも同様に、追加ディスク61は、ロック係合アーム66の厚さだけ、リテーナディスク24の上方へ半径方向外向きに突出する。
【0050】
追加ディスク61は、自由側24bで突出するガイドカラー38を有するリテーナディスク24と特に有利なやり方で組み合わせるのに適する。そのようなガイドカラーが存在する場合、それぞれ収容穴36の外側に配置された自由面34bの表面領域52が、対応のガイドカラー38の半径方向寸法だけ減少する。その結果、支持部分58aは、リテーナディスク24上にわずかな支持面を得ることができるだけである。したがって、追加ディスク61の半径方向幅eをガイドカラー38から半径方向外側の表面部分52の半径方向寸法fより大きくするとともに、追加ディスク61の厚さcをガイドカラー38の高さh以上にすることが有利である。加えて、追加ディスク61は、半径方向内側に、ガイドカラー38用の開放リセス68を有し、リセス68は好ましくは、ガイドカラー38の寸法だけでなく、それらの形状、すなわち丸みにも一致する。したがって、追加ディスク61は、半径方向内向きに延出する拡幅ディスク部分61bを有し、これは、互いに隣接するガイドカラー38間に延出するとともに、好ましくは円周方向において、ガイドカラー38まで延在する。したがって、追加ディスク61は、少なくともディスク部分61bの領域において、担持面部分52の領域より大きい半径方向寸法を有する。したがって、追加ディスク61をディスク部分61bの領域で支持部分58aの上に支持するために、より大きい支持面を利用することができ、この支持面の結果として、表面単位圧力が減少する。
【0051】
同一又は相当する部分に同一の参照番号を付けた図8及び図9に従った例示的な実施形態の場合、追加ディスク61の厚さcは、ガイドカラー38の高さhより大きい。また、追加ディスク61は、対応の壁部分61cでガイドカラー38に重なり、この壁部分は、対応のリセス68の段差形軸方向境界を構成し、またその半径方向寸法iは、対応のガイドカラー38の半径方向寸法以下である。追加ディスク61の半径方向幅eが、リテーナディスク24の円周から収容開口36までの半径方向距離gより大きい場合、壁部分61c内に、収容穴36の断面を軸方向に自由にするリセス69も実現される。追加ディスク61上で、それは、支持面の半径方向拡張を実現するディスク部分61bだけでなく、幅kが、追加ディスク61の、したがって支持部分58a用の半径方向支持面の半径方向寸法を拡大する円周方向壁64でもある。
【0052】
支持部分58aは、支持アングル材の横方向アームによって構成されることができ、その底部アーム58bは、リテーナディスク24、追加ディスク61又はその円周方向壁64、あるいはロック係合アーム66の円周から半径方向に離した位置で回転斜板13から延出して、一点鎖線で示すように、それに締結、例えばねじ留めされる。例えば、交番ポンプ/モータ動作又は交互回転方向の場合のように、一方側から他方側へ切り換わる誘導ストローク範囲を備えるアキシアルピストン装置の場合、他方側半分にも支持装置62が設けられ、これは、簡略化のために、図2だけに示されている。
【0053】
本発明は、図示して説明した例示的な実施形態に制限されることはない。本発明によるリテーナディスク24を、回転斜板構造のアキシアルピストン装置1に使用する代わりに、ウォッブル板構造又は斜軸構造のアキシアルピストン装置にそれを使用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 アキシアルピストン装置
2 ハウジング
3 シャフト
4 シリンダ胴
5,6 転がり軸受け
7 リング
8 ハウジングカバー
9 シリンダボア
10 ピストン
11 球状ヘッド
12 スライドブロック
13 回転斜板
14 位置決め装置
24 リテーナディスク
58a 支持部分
61 追加ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に回転斜板(13)及びシリンダ胴(4)を軸方向に互いに隣接して配置するとともに、互いに対して回転可能であるように取り付けたハウジング(2)と、
複数のピストン(10)であって、シリンダ胴(4)内にほぼ軸方向に延在するシリンダボア(9)内を移動可能に案内されるとともに、間接的又は直接的に回転斜板(13)と支持接触状態にある、複数のピストン(10)と
を備え、ピストン(10)は、回転斜板(24)及びシリンダ胴(4)間に配置されたリテーナディスク(24)によって、回転斜板(13)から取り外されないように保持されるとともに、間接的又は直接的に収容開口(36)を通ってリテーナディスク(24)内へ延出して、例えばスライドブロック(12)によってリテーナディスク(24)の背後に係合し、さらに、
リテーナディスク(24)の、回転斜板(13)と軸方向反対の自由側(24b)の中央傾斜領域の背後に軸方向運動遊び(a)を伴って係合する少なくとも1つの支持部分(58a)を備えるアキシアルピストン装置(1)であって、
環状の追加ディスク(61)が、リテーナディスク(24)の自由側(24b)の縁部領域上に載って、リテーナディスク(24)に締結されることを特徴とするアキシアルピストン装置。
【請求項2】
内部に回転斜板(13)及びシリンダ胴(4)を軸方向に互いに隣接して配置するとともに、互いに対して回転可能であるように取り付けたハウジング(2)と、
複数のピストン(10)であって、シリンダ胴(4)内にほぼ軸方向に延在するシリンダボア(9)内を移動可能に案内されるとともに、間接的又は直接的に回転斜板(13)と支持接触状態にある、複数のピストン(10)と
を備え、ピストン(10)は、回転斜板(24)及びシリンダ胴(4)間に配置されたリテーナディスク(24)によって、回転斜板(13)から取り外されないように保持されるとともに、間接的又は直接的に収容開口(36)を通ってリテーナディスク(24)内へ延出して、例えばスライドブロック(12)によってリテーナディスク(24)の背後に係合し、さらに、
リテーナディスク(24)の、回転斜板(13)と軸方向反対の自由側(24b)の中央傾斜領域の背後に軸方向運動遊び(a)を伴って係合する少なくとも1つの支持部分(58a)を備えるアキシアルピストン装置(1)用のリテーナディスク(24)であって、
環状の追加ディスク(61)が、リテーナディスク(24)の自由側(24b)の縁部領域上に載って、リテーナディスク(24)に締結されることを特徴とするリテーナディスク。
【請求項3】
追加ディスク(61)は、リテーナディスク(24)上に接着剤で付着されるか、一体成形されるか、射出成形されることを特徴とする請求項1に記載のアキシアルピストン装置又は請求項2に記載のリテーナディスク。
【請求項4】
追加ディスク(61)は、リテーナディスク(24)に離脱可能に締結されることを特徴とする請求項1に記載のアキシアルピストン装置又は請求項2に記載のリテーナディスク。
【請求項5】
内部に回転斜板(13)及びシリンダ胴(4)を軸方向に互いに隣接して配置するとともに、互いに対して回転可能であるように取り付けたハウジング(2)と、
複数のピストン(10)であって、シリンダ胴(4)内にほぼ軸方向に延在するシリンダボア(9)内を移動可能に案内されるとともに、間接的又は直接的に回転斜板(13)と支持接触状態にある、複数のピストン(10)と
を備え、ピストン(10)は、回転斜板(24)及びシリンダ胴(4)間に配置されたリテーナディスク(24)によって、回転斜板(13)から取り外されないように保持されるとともに、間接的又は直接的に収容開口(36)を通ってリテーナディスク(24)内へ延出して、例えばスライドブロック(12)によってリテーナディスク(24)の背後に係合し、さらに、
リテーナディスク(24)の、回転斜板(13)と軸方向反対の自由側(24b)の中央傾斜領域の背後に軸方向運動遊び(a)を伴って係合する少なくとも1つの支持部分(58a)を備えるアキシアルピストン装置(1)用の環状の追加ディスク(61)であって、
環状の追加ディスク(61)は、その軸方向一方側に、半径方向担持面(61a)及び1つ又は複数の締結要素(62a)を有し、該締結要素(複数可)は、それぞれの場合、追加ディスク(62)をリテーナディスク(24)の、回転斜板(13)から遠い方に面する側に締結する締結装置(62)の一部であることを特徴とする環状の追加ディスク。
【請求項6】
締結要素(複数可)(62a)は、それぞれの場合、リテーナディスク(24)上に係合することによって追加ディスク(61)をロックするロック係合装置の一部分であるロック係合要素によって構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク又は請求項5に記載の追加ディスク。
【請求項7】
1つのロック係合要素は、環状壁(64)によって構成され、該環状壁は、追加ディスク(61)から軸方向に突出するとともに担持面(61a)の上方に突出し、また、該環状壁は、担持面(61a)から軸方向に離れた位置に、環状ロック係合ラグ(65)を、又は円周方向に連続して配置された複数のロック係合ラグ(65)を有することを特徴とする請求項6に記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク又は追加ディスク。
【請求項8】
複数のロック係合要素は、ロック係合アーム(66)によって構成され、ロック係合アーム(66)は、互いに向き合わせて配置されて、追加ディスク(61a)から軸方向に突出するとともに、担持面(61a)の上方に突出し、また、担持面(61a)から軸方向に離れた位置にロック係合ラグ(65)を有することを特徴とする請求項6に記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク又は追加ディスク。
【請求項9】
ロック係合ラグ(65)は、環状壁(64)の内側に、又はロック係合アーム(66)の内側に配置されることを特徴とする請求項7又は8に記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク又は追加ディスク。
【請求項10】
環状壁(64)又はロック係合アーム(66)は、リテーナディスク(24)に重なり、ロック係合ラグ(65)又は複数のロック係合ラグ(65)は、リテーナディスク(24)上に係合することによってロックされ、好ましくはリテーナディスク(24)の背後に係合することを特徴とする請求項9に記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク。
【請求項11】
リテーナディスク(24)は、その自由側(24b)に、収容開口(36)を延長する環状カラー(38)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク。
【請求項12】
追加ディスク(61)は、その円周上に分散して配置されるとともにその内縁部から半径方向内向きに突出する複数のディスク部分(61b)を有することを特徴とする、請求項11に記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク又は請求項5〜11のいずれか1項に記載の追加ディスク。
【請求項13】
ディスク部分(61b)は、円周方向において環状カラー(38)を密に区切ることを特徴とする請求項12に記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク又は追加ディスク。
【請求項14】
追加ディスク(61)は、ディスク部分(61b)間にリセス(68)を有し、該リセスは、追加ディスク(61)の、担持面(61a)から遠い方に面する側が、追加ディスク(61)の内縁部上の円弧形壁部分(61c)によって軸方向の境界が定められることを特徴とする請求項12又は13のいずれかに記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク又は追加ディスク。
【請求項15】
追加ディスク(61)は、プラスチックからなり、好ましくは、単一部品として射出成形されたプラスチック射出成形部品であることを特徴とする請求項1〜4、10又は11のいずれか1項に記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク又は請求項5〜9又は12〜14のいずれか1項に記載の追加ディスク。
【請求項16】
追加ディスク(61)の、リテーナディスク(24)の支持部分(58a)の方に面する面は、流体力学的軸受けに適するように構成された構造の表面を有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク又は追加ディスク。
【請求項17】
表面は、潤滑剤ポケット及び/又は潤滑剤溝を有することを特徴とする、請求項16に記載のアキシアルピストン装置又はリテーナディスク又は追加ディスク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−542966(P2009−542966A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518763(P2009−518763)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005979
【国際公開番号】WO2008/006508
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】