説明

リニアアクチュエータ

【課題】リニアアクチュエータにおいて、スライドテーブルを簡便且つ高精度に形成して搬送物を安定的に搬送すると同時に、製造コストの低減を図る。
【解決手段】リニアアクチュエータ10を構成するスライドテーブル14は、テーブル本体56と、該テーブル本体56の他端部に連結されるエンドプレート58とを有し、このテーブル本体56を構成するベース部60には、4個のワーク保持用孔部68a〜68dが形成されると共に、前記ワーク保持用孔部68a〜68dを中心とした半径外側に取付座70a〜70dがそれぞれ設けられる。この取付座70a〜70dは、テーブル本体56をプレス成形する際に、同時に成形によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体出入ポートから圧力流体を導入することにより、シリンダ本体の軸線方向に沿ってスライドテーブルを往復動作させるリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、圧力流体の供給されるシリンダ室を備えたシリンダ本体と、該シリンダ室に沿って変位自在に設けられるピストンと、前記ピストンに連結され、前記シリンダ本体に沿って変位するスライドテーブルとを含むリニアアクチュエータを提案している(特許文献1参照)。このようなリニアアクチュエータでは、例えば、スライドテーブルの上部に搬送物であるワークを載置し、シリンダ室に供給された圧力流体によってピストンを押圧することにより、前記ピストンに連結されたスライドテーブルと共にワークをシリンダ本体に沿って変位させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−61611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記の提案に関連してなされたものであり、スライドテーブルを簡便且つ高精度に形成して搬送物を安定的に搬送しつつ、製造コストの低減を図ることが可能なリニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の目的を達成するために、本発明は、流体出入ポートから圧力流体を導入することにより、シリンダ本体の軸線方向に沿ってスライドテーブルを往復動作させるリニアアクチュエータにおいて、
前記流体出入ポートと連通し、前記圧力流体の導入されるシリンダ室を有したシリンダ本体と、
前記シリンダ本体と略平行に設けられるベース部と、該ベース部に対して突出して搬送物の載置される載置部とを有し、前記シリンダ本体の軸線方向に沿って往復動作するスライドテーブルと、
前記シリンダ室に沿って摺動自在に配設されるピストンを有し、前記ピストンの変位作用下に前記スライドテーブルを往復動作させるシリンダ機構と、
を備え、
前記スライドテーブルがプレス成形によって形成されることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、スライドテーブルをプレス成形で簡便に形成することができ、該プレス成形で形成する際、シリンダ本体と略平行なベース部に対して突出した載置部を同時に形成することができるため、前記スライドテーブルを含むリニアアクチュエータを製造する際の製造コストを低減させることができると共に、前記ベース部に対して突出した載置部をスライドテーブルに設けることによって、該載置部を設けることなく前記ベース部の全体に搬送物を載置する場合と比較し、前記搬送物を安定的且つ高精度に保持して搬送することができる。
【0007】
また、スライドテーブルを、炭素含有量0.55〜0.65%のマルテンサイト系ステンレスで形成するとよい。これにより、例えば、スライドテーブルに焼入れを行う際の硬度を確保しつつ、プレス成形時における曲げ加工を円滑に行うことが可能となる。
【0008】
さらに、スライドテーブルを、焼き入れのなされた焼入れ材とし、その硬度を、ロックウェル硬度のC−スケールでの数値(HRC)で58〜62の範囲内となるように形成するとよい。これにより、スライドテーブルの強度を向上させて変形を抑制し、且つ、耐久性の向上を図ることができる。
【0009】
さらに、スライドテーブルには、搬送物に装着される位置決め部材の挿入される位置決め孔を有し、前記位置決め孔には、前記位置決め部材の脱落を防止するための脱落防止手段を設けるとよい。
【0010】
さらにまた、脱落防止手段を、位置決め孔の内周面において半径内方向に突出した突起部とすることにより、位置決め部材が前記突起部によって係止されて脱落することが防止される。
【0011】
またさらに、ピストンロッドを介して前記シリンダ室に変位自在に設けられたピストンと連結されるエンドプレートを備え、前記エンドプレートが前記スライドテーブルに対して締結部材で連結され、該スライドテーブルに、前記締結部材の挿通され収容される孔部を形成するとよい。すなわち、スライドテーブルをプレス成形によって形成する際に、孔部を同時に成形によって形成することが可能となるため、製造工程の短縮を図ることができる。
【0012】
また、スライドテーブルには、シリンダ本体に取り付けられ、複数のボールの転動作用下に循環する第1循環通路が形成されたガイド機構に臨む側面に、前記ボールの転動する第2循環通路を形成するとよい。すなわち、スライドテーブルをプレス成形によって形成する際に、第2循環通路を同時に成形によって形成することが可能となるため、製造工程の短縮を図ることができる。
【0013】
さらに、第2循環通路を、ボールが当接する断面円弧状に窪んで形成することにより、スライドテーブルをプレス成形で形成する際に、前記第2循環通路を好適に形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0015】
すなわち、スライドテーブルをプレス成形によって形成する際、シリンダ本体と略平行なベース部に対して突出した載置部を同時に形成することができるため、前記スライドテーブルを含むリニアアクチュエータを製造する際の製造コストを低減させることができると共に、前記ベース部に対して突出した載置部をスライドテーブルに設けることによって、該載置部を設けることなく前記ベース部の全体に搬送物を載置する場合と比較し、前記搬送物を安定的且つ高精度に保持して搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るリニアアクチュエータの外観斜視図である。
【図2】図1のリニアアクチュエータからスライドテーブルを上方へと離脱させた状態を示す分解斜視図である。
【図3】図2のスライドテーブルからエンドプレートを離脱させた状態を示す分解斜視図である。
【図4】図2のスライドテーブルを上方から見た平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図1のリニアアクチュエータを下方側から見た分解斜視図である。
【図7】図1のリニアアクチュエータの全体縦断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図7のIX−IX線に沿った断面図である。
【図10】図7のX−X線に沿った断面図である。
【図11】変形例に係るスライドテーブルからエンドプレートを離脱させた状態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るリニアアクチュエータについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0018】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係るリニアアクチュエータを示す。
【0019】
このリニアアクチュエータ10は、図1〜図10に示されるように、シリンダ本体12と、該シリンダ本体12の上部に設けられ、長手方向(矢印A、B方向)に沿って直線状に往復動作するスライドテーブル14と、前記シリンダ本体12とスライドテーブル14との間に介装され、前記スライドテーブル14を長手方向(矢印A、B方向)に沿って案内するガイド機構16と、前記スライドテーブル14の変位量を調整自在なストッパ機構18とを含む。
【0020】
シリンダ本体12は、例えば、アルミニウム等の金属製材料から断面長方形状で長手方向(矢印A、B方向)に沿って所定長さで形成される。そして、シリンダ本体12の上面には、略中央部に断面略円弧状に窪んだ凹部20が形成され、長手方向(矢印A、B方向)に沿って延在している。この凹部20には、シリンダ本体12とガイド機構16とを連結する連結ボルト22の挿通される一組のボルト孔24が貫通している。
【0021】
また、シリンダ本体12の一側面には、図8に示されるように、圧力流体の供給・排出される第1及び第2ポート26、28が該シリンダ本体12の長手方向と直交するように形成され、後述する一対の貫通孔30a、30bと連通している。さらに、シリンダ本体12の他側面には、長手方向(矢印A、B方向)に沿って二条のセンサ取付溝32がそれぞれ形成され(図10参照)、図示しないセンサが装着される。
【0022】
シリンダ本体12の下面には、軸線上となる幅方向の中央部に一組のボルト孔24が形成され、下方より連結ボルト22が挿通される。そして、連結ボルト22は、その先端部が前記シリンダ本体12の上面より突出し、ガイド機構16のガイドブロック34に螺合されることによって互いに連結される。
【0023】
一方、シリンダ本体12の内部には、長手方向(矢印A、B方向)に沿って貫通した一対の貫通孔30a、30bが断面円形状に形成され、一方の貫通孔30aと他方の貫通孔30bとは、所定間隔離間して略平行に並設されている。
【0024】
貫通孔30a、30bの内部には、外周面にシールリング36及びマグネット38が外周面に装着されたピストン40と、前記ピストン40に連結されたピストンロッド42とを含むシリンダ機構44がそれぞれ設けられる。このシリンダ機構44は、一対のピストン40及びピストンロッド42が一対の貫通孔30a、30bにそれぞれ内装されることによって構成される。
【0025】
貫通孔30a、30bの一端部は、プレート状に形成された一対のキャップ46によって閉塞され、ピストン40とキャップ46との間にそれぞれシリンダ室48が形成される。また、貫通孔30a、30bの他端部は、止め輪50を介して保持されるロッドホルダ52によって気密に閉塞される。なお、ロッドホルダ52の外周面には、環状溝を介してOリング54が装着され、貫通孔30a、30bとの間を通じた圧力流体の漏れを防止している。
【0026】
このキャップ46は、例えば、金属製材料からなるプレート体をプレス成形することによって形成され、その折曲された部位が、開口した貫通孔30a、30bの一端部側(矢印A方向)に向かうように配設される。
【0027】
また、一方の貫通孔30aは、第1及び第2ポート26、28とそれぞれ連通し、他方の貫通孔30bは、一方の貫通孔30aとの間に形成された一組の接続通路55を介して互いに連通している。すなわち、第1及び第2ポート26、28に供給された圧力流体は、一方の貫通孔30aへと導入された後、接続通路55を通じて他方に貫通孔30bにも導入される。
【0028】
スライドテーブル14は、図2〜図4に示されるように、テーブル本体56と、該テーブル本体56の一端部に連結されるストッパ機構18と、前記テーブル本体56の他端部に連結されるエンドプレート58とを備え、前記エンドプレート58は、前記テーブル本体56に対して直交するように連結される。
【0029】
テーブル本体56は、例えば、金属製材料からなるプレート材をプレス成形することによって形成される。詳細には、テーブル本体56は、炭素含有率が0.55〜0.65%であるマルテンサイト系ステンレス鋼から形成され、プレス成形が行われて所望の形状に成形される。そして、プレス成形されたテーブル本体56は、所定温度に加熱された後に窒素ガスによって冷却される焼入れが行われる。これにより、テーブル本体56の硬度が、例えば、ロックウェル硬度のC−スケールでの数値(HRC)で58〜62の範囲内となり、該テーブル本体56の変形が抑制されることとなる。
【0030】
なお、テーブル本体56の素材となるマルテンサイト系ステンレス鋼には、冷間圧延で製造されたものが用いられる。すなわち、熱間圧延で製造された素材と比較し、その厚さ寸法のばらつきが少なく、テーブル本体56を成形した際に高精度に寸法が管理可能なためである。
【0031】
このテーブル本体56は、長手方向(矢印A、B方向)に沿って延在するベース部60と、該ベース部60の両側部から直交するように下方へと延在した一対のガイド壁62a、62bとからなり、前記ガイド壁62a、62bの内面には、後述するガイド機構16のボール64が案内される第1ボール案内溝(第2循環通路)66が形成される。この第1ボール案内溝66は、断面半円状に形成され、テーブル本体56をプレス成形によって形成する際に同時に形成される。なお、第1ボール案内溝66の断面形状は、半円状のように円弧状とした場合にプレス成形で最も形成しやすく好適である。
【0032】
また、ベース部60には、その一端部と他端部との間に4個のワーク保持用孔部68a〜68dが形成されると共に、前記ワーク保持用孔部68a〜68dを中心とした半径外側に取付座(載置部)70a〜70dがそれぞれ設けられる。換言すれば、取付座70a〜70dは、ワーク保持用孔部68a〜68dを中心とした環状に形成される。
【0033】
取付座70a〜70dは、テーブル本体56をプレス成形によって形成する際、ベース部60の上面に対して所定高さだけ突出するように形成され、その上部にワーク(搬送物)W(図7及び図10参照)が載置される。そして、取付座70a〜70dの上面は、例えば、テーブル本体56の焼入れが完了した後に、研削加工等によってベース部60と平行な平面状に形成され、複数の取付座70a〜70dの間における平面度が確保される。
【0034】
換言すれば、プレス成形によって形成された複数の取付座70a〜70dが、研削加工等によって略同一の平面度を有するように加工されることにより、前記取付座70a〜70dに載置されるワークWを安定的に搬送することができる。
【0035】
また、図4に示されるように、ベース部60の幅方向に所定間隔離間したワーク保持用孔部68cと68dの間、前記ワーク保持用孔部68aと68bの間には、第1及び第2ピン孔72、74がそれぞれ形成される。この2つの第1及び第2ピン孔72、74は、テーブル本体56をプレス成形する際に同時に形成され、ベース部60の長手方向(矢印A、B方向)に沿って所定間隔離間して設けられて該ベース部60を厚さ方向に貫通するように形成される。そして、エンドプレート58側に設けられた第1ピン孔72は、断面円形状に形成され、ストッパ機構18側に設けられた第2ピン孔74は、ベース部60の長手方向に沿って長尺な断面長孔状に形成される。
【0036】
一方、第1及び第2ピン孔72、74には、ベース部60の下面側に臨む内周面に半径内方向に突出した一対の突起部76がそれぞれ設けられる。この突起部76は、例えば、ベース部60の幅方向に沿って対向するように設けられ、且つ、半径内方向に向かって徐々に先細となる断面三角形状に形成される。
【0037】
そして、第1及び第2ピン孔72、74には、スライドテーブル14の上面に載置されるワークWの位置決めを行うための位置決めピンP1、P2(図7及び図10参照)がそれぞれ挿入される。その際、スライドテーブル14の上面側から挿入された位置決めピンP1、P2は、突起部76によって係止されるため下方へと落下することが防止される。
【0038】
すなわち、突起部76は、第1及び第2ピン孔72、74における位置決めピンP1、P2の脱落を防止可能な脱落防止手段として機能する。
【0039】
一方、テーブル本体56を構成するベース部60の一端部には、後述するストッパ機構18のホルダ部98を固定するためのボルト78aが挿通される一対の第1ボルト孔80が形成されると共に、他端部には、エンドプレート58を固定するためのボルト78bが挿通される一対の第2ボルト孔(孔部)82が形成される。
【0040】
この第1及び第2ボルト孔80、82は、いずれもテーブル本体56の長手方向と直交する厚さ方向に貫通し、前記テーブル本体56の上面側から下面側に向かって徐々に縮径する断面テーパ状の円錐部84と、前記円錐部84の下部に形成される一定径の孔部86とからなる。第1及び第2ボルト孔80、82は、テーブル本体56をプレス成形する際に同時に形成される(図5参照)。
【0041】
一方、ボルト78a、78bは、円錐状に形成された頭部88と、該頭部88の端部から延在する軸状のねじ部90とを有した皿ボルトであり、第1及び第2ボルト孔80、82に挿通された際、その頭部88が円錐部84に収容されると共に、孔部86にねじ部90が挿通されて下方へと突出する。そして、後述するエンドプレート58及びストッパ機構18におけるホルダ部98のねじ孔91にそれぞれねじ部90が螺合されることにより、前記テーブル本体56に対してそれぞれ連結される。
【0042】
エンドプレート58は、テーブル本体56の他端部に固定され、シリンダ本体12の端面に臨むように設けられると共に、一組のロッド孔92a、92bに挿通されたピストンロッド42の端部がそれぞれ固定される。これにより、エンドプレート58を含むスライドテーブル14が、ピストンロッド42と共にシリンダ本体12の長手方向(矢印A、B方向)に沿って変位することとなる。
【0043】
また、エンドプレート58には、一方のロッド孔92aと他方のロッド孔92bとの間となる位置に、ダンパ94の装着されるダンパ装着孔96が開口している。例えば、ゴム等の弾性材料からなるダンパ94が、シリンダ本体12側となるエンドプレート58の他側面側からダンパ装着孔96に装着された際、その端部が拡径すると共に前記他側面から突出する。
【0044】
ストッパ機構18は、テーブル本体56における一端部の下面に設けられるホルダ部98と、前記ホルダ部98に対して螺合されるストッパボルト100と、前記ストッパボルト100の進退動作を規制するロックナット102とを有し、シリンダ本体12に設けられたガイド機構16の端面に臨むように設けられる。
【0045】
ホルダ部98は、ブロック状に形成され、スライドテーブル14を構成するテーブル本体56のベース部60に対してボルト78bで上方から固定される。ホルダ部98の略中央部には、ストッパボルト100が軸線方向に沿って進退自在に螺合されている。ストッパボルト100は、例えば、外周面にねじの刻設された軸状のスタッドボルトからなり、そのホルダ部98の端面から突出した部位にロックナット102が螺合される。
【0046】
そして、ストッパボルト100をホルダ部98に対して螺回させることにより、該ストッパボルト100が軸線方向(矢印A、B方向)に沿って変位し、ガイド機構16に接近・離間する。例えば、ストッパボルト100を螺回させ所定長さだけガイド機構16側(矢印A方向)へと突出させた後、ロックナット102を螺回することにより移動させ前記ホルダ部98の側面に当接させることにより、前記ストッパボルト100の進退動作が規制される。
【0047】
ガイド機構16は、図6、図7〜図10に示されるように、幅広扁平状のガイドブロック34と、該ガイドブロック34に設けられ、ボール64を循環させる一対のボール循環部材104a、104bと、前記ガイドブロック34の長手方向に沿った両端部にそれぞれ装着される一組のカバー106と、前記カバー106の表面をそれぞれ覆う一組のカバープレート108とを含む。なお、カバー106は、ガイドブロック34の両端面を覆うように装着される。
【0048】
ガイドブロック34の両側面には、長手方向に沿って第2ボール案内溝(第1循環通路)110が形成され、前記第2ボール案内溝110に近接する部位には、ボール循環部材104a、104bの挿入される一対の装着溝112a、112bが長手方向に沿って貫通している。第2ボール案内溝110は、断面半円状に形成され、ガイド機構16の上部にスライドテーブル14が配置された際、第1ボール案内溝66と対向する位置に形成される。
【0049】
装着溝112a、112bは、ガイドブロック34の下面に形成され、その内部にボール循環部材104a、104bが設けられる。このボール循環部材104a、104bの内部には、ボール64の循環するボール循環孔114が貫通すると共に、その両端部には、前記ボール64の循環方向を反転させる一組の反転部116a、116bがそれぞれ設けられる。これにより、ボール循環部材104a、104bのボール循環孔114、スライドテーブル14の第1ボール案内溝66及びガイドブロック34の第2ボール案内溝110によって環状で連続するボール循環通路が形成され、複数のボール64が前記ボール循環通路に沿って転動することにより、スライドテーブル14をガイド機構16に沿って円滑に往復動作させる。
【0050】
本発明の実施の形態に係るリニアアクチュエータ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0051】
先ず、図示しない圧力流体供給源から圧力流体を第1ポート26へと導入する。この場合、第2ポート28は、図示しない切換弁の操作下に大気開放状態としておく。
【0052】
この第1ポート26に供給された圧力流体は、一方の貫通孔30aへ供給されると共に、接続通路55を通じて他方の貫通孔30bへと供給され、ピストン40をロッドホルダ52側(矢印A方向)に向かって押圧する。これにより、ピストン40に連結されたピストンロッド42と共に、スライドテーブル14がシリンダ本体12から離間する方向へと変位する。
【0053】
この際、ガイド機構16を構成するボール64が、スライドテーブル14の変位に伴ってボール循環通路に沿って転動することにより、前記スライドテーブル14が前記ガイド機構16によって軸線方向に沿って案内される。
【0054】
そして、スライドテーブル14の一端部に設けられたストッパボルト100の端部が、ガイド機構16を構成するガイドブロック34の端面に当接することにより、前記スライドテーブル14の変位が停止した変位終端位置となる。
【0055】
このストッパ機構18は、ロックナット102を緩め、ストッパボルト100の進退動作を可能とした後、該ストッパボルト100を螺回させてホルダ部98の端面からの突出量を調整することにより、スライドテーブル14の変位量を調整することが可能である。
【0056】
一方、上述した変位終端位置からスライドテーブル14を前記とは反対方向に変位させる場合には、第1ポート26に供給されていた圧力流体を第2ポート28に対して供給すると共に、前記第1ポート26を大気開放状態とする。これにより、第2ポート28から一対の貫通孔30a、30bへと供給された圧力流体によってピストン40がロッドホルダ52から離間する方向(矢印B方向)へと変位し、該ピストン40と共にピストンロッド42を介してスライドテーブル14がシリンダ本体12に接近する方向へと変位する。そして、スライドテーブル14を構成するエンドプレート58に設けられたダンパ94が、シリンダ本体12の端面に当接することにより初期位置へと復帰する。
【0057】
以上のように、本実施の形態では、リニアアクチュエータ10において、スライドテーブル14を構成するテーブル本体56を、例えば、金属製材料からなるプレート材からプレス成形して形成する際に、ワークWを載置可能な複数の取付座70a〜70dを凸状に形成することが可能となる。その結果、テーブル本体56を形成する際に、同時に複数の取付座70a〜70dを形成することができ、スライドテーブル14を含むリニアアクチュエータ10における製造コストの低減を図ることができる。
【0058】
また、テーブル本体56のベース部60に対して突出した取付座70a〜70dを設け、その上面を加工することによって平面度を確保することにより、前記取付座70a〜70dを設けることなく前記ベース部60の全体に加工を行って平面度を確保する場合と比較し、前記平面度を高精度に維持することができる。その結果、このように形成された複数の取付座70a〜70dに対して研削等の加工を施すことにより確実且つ容易に平面度を確保することができるため、それに伴って、スライドテーブル14の上面にワークWを安定的に載置して搬送することができる。
【0059】
さらに、テーブル本体56を、例えば、炭素含有率が0.55〜0.65%であるマルテンサイト系ステンレス鋼から形成し、且つ、プレス成形が行われた後に加熱して窒素ガスで冷却する焼入れ処理を行うことにより、前記テーブル本体56の硬度を、ロックウェル硬度のC−スケールでの数値(HRC)で58〜62の範囲内とすることができ、それに伴って、該テーブル本体56を高剛性に維持することができる。その結果、テーブル本体56を含むスライドテーブル14の強度を向上させて変形を抑制することができる。
【0060】
詳細には、マルテンサイト系ステンレス鋼を用いることにより、焼入れ時において窒素ガスにより冷却が可能となり、しかも、焼入れを行った際の変形を抑制することができる。また、上述したマルテンサイト系ステンレス鋼の炭素含有率が0.55%以下である場合、焼入れ時における硬度が不足し、一方、前記炭素含有率が0.65%以上である場合には、プレス成形を行う際の曲げ加工が困難となってしまう。さらに、テーブル本体56の硬度を、HRC58以下とした場合には、ボール64が転動する第1ボール案内溝66の摩耗が多くなり、前記テーブル本体56の耐久性が低下してしまうことが懸念される。すなわち、テーブル本体56の硬度は、ボール64の転動する第1ボール案内溝66に必要とされる強度に基づいて設定されている。
【0061】
さらにまた、テーブル本体56は、その素材となるマルテンサイト系ステンレス鋼を、冷間圧延で製造されたものが用いられる。熱間圧延で製造された素材と比較し、その厚さ寸法のばらつきが少なく、テーブル本体56を成形した際に高精度に寸法管理することができる。
【0062】
またさらに、スライドテーブル14を構成するテーブル本体56とエンドプレート58とを連結するために、皿ボルトを用いることにより、該皿ボルトの頭部88が収容されるボルト穴を前記テーブル本体56に対してプレス成形で容易に形成することができる。そのため、薄板状に形成され、座グリ加工の困難なテーブル本体56に対して容易にボルト穴を形成することができて好適である。
【0063】
また、第1及び第2ピン孔72、74の内周面に突起部76をそれぞれ形成しているため、スライドテーブル14に載置されるワークWを位置決めするための位置決めピンP1、P2を上方から挿入した際、該位置決めピンP1、P2が前記突起部76に係止されて脱落することが阻止される。そのため、第1及び第2ピン孔72、74を介してワークWをスライドテーブル14に確実且つ高精度に位置決めすることが可能となる。
【0064】
さらに、テーブル本体56をプレス成形する際、取付座70a〜70d、第1及び第2ボルト孔80、82、第1及び第2ピン孔72、74、第1ボール案内溝66を同時に形成することができるため、それぞれを加工によって別個に形成する場合と比較し、前記テーブル本体56を含むスライドテーブル14の製造工程を短縮することが可能となる。この場合、第1ボール案内溝66の断面形状を、例えば、半円状とすることによってプレス成形時に形成しやすく好適である。
【0065】
なお、上述した本実施の形態に係るリニアアクチュエータ10のスライドテーブル14では、ワーク保持用孔部68a〜68dを中心として互いに所定間隔離間した4つの取付座70a〜70dが設けられる構成について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図11に示されるように、スライドテーブル120の長手方向(矢印A、B方向)に沿った2つのワーク保持用孔部68aと68c、68bと68dを繋ぐように長尺な取付座(載置部)122a、122bを設けるようにしてもよい。なお、この場合、取付座122a、122bは、スライドテーブル120の長手方向(矢印A、B方向)に沿って平行に2本設けられる。
【0066】
このような構成とすることにより、スライドテーブル120において取付座122a、122bの表面積を大きく確保することができ、それに伴って、ワークと前記取付座122a、122bとの接触面積を大きくすることが可能となる。その結果、取付座122a、122bに載置されるワークをより一層安定して搬送することが可能となる。
【0067】
すなわち、取付座70a〜70d、122a、122bは、スライドテーブル14、120をプレス成形する際、同時に形成することができるため、例えば、搬送するワークの形状、大きさ及び重量等に応じて所望の形状、数量等で取付座を形成すればよい。
【0068】
また、上述した本実施の形態に係るリニアアクチュエータ10は、スライドテーブル14、120の第1ボール案内溝66と、ガイド機構16を構成するガイドブロック34の第2ボール案内溝110及びボール循環部材104a、104bを介してボール64を循環させながら前記スライドテーブル14、120を変位させる無限循環タイプのものについて説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、前記スライドテーブル14、120を備えるリニアアクチュエータは、ボール64が、該スライドテーブル14、120とガイドブロック34との間に形成された溝部に沿って直線的に配置された有限タイプのものであってもよい。このリニアアクチュエータの場合、ボール64が、溝部に沿って直線的に移動するのみで循環することがない構成となっている。
【0069】
なお、本発明に係るリニアアクチュエータは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0070】
10…リニアアクチュエータ 12…シリンダ本体
14、120…スライドテーブル 16…ガイド機構
18…ストッパ機構 30a、30b…貫通孔
34…ガイドブロック 40…ピストン
44…シリンダ機構 48…シリンダ室
56…テーブル本体 58…エンドプレート
60…ベース部 62a、62b…ガイド壁
64…ボール 66…第1ボール案内溝
68a〜68d…ワーク保持用孔部
70a〜70d、122a、122b…取付座
72…第1ピン孔 74…第2ピン孔
76…突起部 78a、78b…ボルト
80…第1ボルト孔 82…第2ボルト孔
98…ホルダ部 100…ストッパボルト
102…ロックナット 104a、104b…ボール循環部材
110…第2ボール案内溝 114…ボール循環孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体出入ポートから圧力流体を導入することにより、シリンダ本体の軸線方向に沿ってスライドテーブルを往復動作させるリニアアクチュエータにおいて、
前記流体出入ポートと連通し、前記圧力流体の導入されるシリンダ室を有したシリンダ本体と、
前記シリンダ本体と略平行に設けられるベース部と、該ベース部に対して突出して搬送物の載置される載置部とを有し、前記シリンダ本体の軸線方向に沿って往復動作するスライドテーブルと、
前記シリンダ室に沿って摺動自在に配設されるピストンを有し、前記ピストンの変位作用下に前記スライドテーブルを往復動作させるシリンダ機構と、
を備え、
前記スライドテーブルがプレス成形によって形成されることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記スライドテーブルは、炭素含有量0.55〜0.65%のマルテンサイト系ステンレスで形成されることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記スライドテーブルは、焼き入れのなされた焼入れ材からなり、その硬度が、ロックウェル硬度のC−スケールでの数値(HRC)で58〜62の範囲内となるように形成されることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記スライドテーブルには、搬送物に装着される位置決め部材の挿入される位置決め孔を有し、前記位置決め孔には、前記位置決め部材の脱落を防止するための脱落防止手段が設けられることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記脱落防止手段は、前記位置決め孔の内周面において半径内方向に突出した突起部であることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のリニアアクチュエータにおいて、
ピストンロッドを介して前記シリンダ室に変位自在に設けられたピストンと連結されるエンドプレートを備え、前記エンドプレートが前記スライドテーブルに対して締結部材で連結され、該スライドテーブルには、前記締結部材の挿通され収容される孔部が形成されることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記スライドテーブルには、前記シリンダ本体に取り付けられ、複数のボールの転動作用下に循環する第1循環通路が形成されたガイド機構に臨む側面に、前記ボールの転動する第2循環通路が形成されることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項8】
請求項7記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記第2循環通路は、前記ボールが当接する断面円弧状に窪んで形成されることを特徴とするリニアアクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−220403(P2011−220403A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88546(P2010−88546)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】