説明

リニアアクチュエータ

【課題】ガイドレールとガイドブロックとの間のガタが解消され、可動体の高い位置精度を得ることが可能であり、その上簡単な構成によって小型かつ安価に実現できるリニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】左右の分割ブロック37,38の傾斜面37a,38aをガイドレール6の左右の傾斜面6c、6dに当接させる。少なくとも一方または双方の分割ブロック37,38の可動体側対向面37b,38bをガイドレール6の端面6bに当接させて分割ブロック37,38をガイドレール6に組み合わせる。左右の分割ブロック37,38どうしの間隔を調整することにより、ガイドレール6の摺動面6b,6c、6dと分割ブロック37,38の摺動面37b,38b,37a,38aとの隙間を調整する。各分割ブロック37,38を可動体5にねじ式固定具40,41により固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ本体内にピストン等の駆動体を往復移動可能に収容し、アクチュエータ本体にガイドレールを設け、駆動体に連結されたテーブル等の可動体をガイドレールに沿って移動可能に取付けたリニアアクチュエータに係わり、特にガイドレールと可動体との間の隙間調整構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアアクチュエータには、空気等の流体圧によりピストンを往復動作させる流体圧シリンダや、電磁力を利用して駆動体としてのマグネットを往復移動させる電磁式アクチュエータや、モータを利用した電動式アクチュエータがある。
【0003】
特許文献1、2には、このリニアアクチュエータに類するものとして、空気圧を利用してワーク等を取付けたり移動させたりするテーブルを往復移動させるテーブルシリンダが開示されている。このテーブルシリンダは、シリンダ本体内に設けたピストン室内にピストンを収容し、このピストンに連結したピストンロッドに、ワーク等を取付けるためのテーブルを固定して構成される。
【0004】
この特許文献1,2に記載のテーブルシリンダは、テーブルを案内するため、シリンダ本体にガイドレールを固定し、このガイドレールに摺動自在に嵌める溝を有するガイドブロックをテーブルに取付けている。
【0005】
従来の他のテーブルシリンダとして、テーブルに設けるガイドブロックに、ガイドレールに転動可能に接触する球体を有する球軸受を取付けたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−22808号公報
【特許文献2】特開平10−61614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載のように、シリンダ本体にガイドレールを設け、このガイドレールに摺動可能に嵌めるガイドブロックをテーブルに設けた従来構成によれば、ガイドレールとガイドブロックとの間にガタが発生し易く、可動体であるテーブルの高い位置精度を得ることが難しい。また、ガタを減少させるためには、摺動面を研磨により加工する必要があり、製造コストを上昇させてしまう。
【0008】
一方、可動体であるテーブルに設けるガイドブロックに球軸受を用いたものは、球軸受が多数の部品を組み合わせたものであるため、部品点数が多くなり、コストがかかる。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、ガイドレールとガイドブロックとの間のガタが解消され、可動体の高い位置精度を得ることが可能であり、その上簡単な構成によって小型かつ安価に実現できるリニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のリニアアクチュエータは、アクチュエータ本体に駆動体を収容し、前記駆動体に可動体を連結し、前記アクチュエータ本体にガイドレールを設け、前記可動体に、前記ガイドレールに摺動可能に嵌合するガイドブロックを設けたリニアアクチュエータにおいて、
前記ガイドレールの前記ガイドブロックに対向するガイド面を、前記可動体側の端面と、この端面とアクチュエータ本体との間の左右の面とにより形成すると共に、前記左右の面はアクチュエータ本体から離れるほど左右の面間の間隔が拡大される傾斜面に形成し、
前記ガイドブロックを左右の分割ブロックにより構成し、
前記左右の分割ブロックに、それぞれ対向する左側または右側の前記傾斜面に当接する傾斜面を設けると共に、少なくとも一方の分割ブロックに前記端面に対向する可動体側対向面を設け、
前記左右の分割ブロックの傾斜面を前記ガイドレールの左右の傾斜面に当接させると共に、少なくとも一方の分割ブロックの前記可動体側対向面を前記ガイドレールの前記端面に当接させて前記分割ブロックを前記ガイドレールに組み合わせ、前記左右の分割ブロックどうしの間隔を調整することにより、前記ガイドレールと前記分割ブロックとの隙間を調整して前記各分割ブロックを前記可動体にねじ式固定具により固定する構造を有することを特徴とする。
【0011】
また本発明のリニアアクチュエータは、前記リニアアクチュエータにおいて、
前記左右の分割ブロックは左右対称形をなし、前記左右の分割ブロックを、それぞれ別個のねじ式固定具により前記可動体に固定する構造を有することを特徴とする。
【0012】
また本発明のリニアアクチュエータは、前記リニアアクチュエータにおいて、
前記左右の分割ブロックのうちの一方の分割ブロックは、前記ガイドレールの端面に当接する可動体側対向面を形成した板状部を有し、
他方の分割ブロックは、前記一方の分割ブロックの板状部に重ねる板状部を有し、
前記一方の分割ブロックの前記板状部に前記他方の分割ブロックを重ね、この重ねた板状部を前記端面と前記可動体との間に介在させて共通のねじ式固定具によりこれらの分割ブロックを前記可動体に固定する構造を有することを特徴とする。
【0013】
また本発明のリニアアクチュエータは、アクチュエータ本体に駆動体を収容し、前記駆動体に可動体を連結し、前記アクチュエータ本体にガイドレールを設け、前記可動体に、前記ガイドレールに摺動可能に嵌合するガイドブロックを設けたリニアアクチュエータにおいて、
前記ガイドレールの前記ガイドブロックに対向するガイド面を、前記可動体側の端面と、この端面とアクチュエータ本体との間の左右の面とにより形成すると共に、前記左右の面はアクチュエータ本体から離れるほど左右の面間の間隔が拡大される傾斜面に形成し、
前記ガイドブロックを左右の分割ブロックにより構成し、
前記左右の分割ブロックに、前記ガイドレールの左側または右側の前記傾斜面にそれぞれ対向する傾斜面を設けると共に、少なくとも一方の分割ブロックに前記端面に対向する可動体側対向面を設け、
前記ガイドレールの前記傾斜面および前記端面にガイドレールの軸線方向に長い凸部または凹部を設け、前記分割ブロックに前記凸部または凹部に摺動可能に嵌まる凹部または凸部を設けたことを特徴とする。
【0014】
また本発明のリニアアクチュエータは、前記駆動体がピストンであって、前記ピストンに連結されるピストンロッドを有し、前記可動体が前記ピストンロッドに連結されるL字形のテーブルでなるテーブルシリンダであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、左右の分割ブロック間の間隔を調整することにより、ガイドレールの摺動面と分割ブロックの摺動面との隙間の調整が可能となる。このため、ガイドレールとガイドブロックとの間のガタが解消され、可動体の高い位置精度を得ることが可能となる。また、本発明は、ガイドブロックを分割し、分割ブロック間の位置調整によってガイドブロックの摺動面とガイドレールとの隙間の調整が可能となるので、ガイドブロックとして玉軸受を設ける場合に比較して部品点数が少なくなり、小型化が可能となる。また、玉軸受を使用する場合に比較して部品点数が少ない上、隙間調整のための摺動面の研磨も必要としないため、リニアアクチュエータを安価に提供できる。
【0016】
本発明において、左右の分割ブロックを左右対称形とし、それぞれ別個の固定具により前記可動体に固定される構造とすれば、左右の分割ブロックとして共通の形状のものを用いることができ、製造価格の低下に寄与する。また、左右の分割ブロックを対称形に形成すれば、一方の分割ブロックを可動体に固定した後、他方の分割ブロックを可動体に固定することによってリニアアクチュエータを構成することができ、組立が容易となる。
【0017】
本発明において、一方の分割ブロックの前記板状部に前記他方の分割ブロックの板状部を重ね、この互いに重ねた板状部を前記端面と前記可動体との間に介在させて共通のねじ式固定具によりこれらの分割ブロックを前記可動体に固定する構造とすれば、ねじ式固定具を取付けるためのスペースが狭くてすむため、リニアアクチュエータのさらなる小型化に寄与することができる。
【0018】
本発明において、ガイドレールにガイドレールの軸線方向に長い凸部または凹部を設け、分割ブロックに前記凸部または凹部に嵌まる凹部または凸部を設けた構造とすれば、ガイドレールと分割ブロックとの接触面積が狭くなり、ガイドレールに対する分割ブロックの摺動抵抗が小さくなるので、可動体のより円滑な移動が可能となる。
【0019】
本発明は、リニアアクチュエータがテーブルシリンダである場合により好適に適用できる。すなわち、テーブルシリンダは、シリンダ本体からピストンロッドが突出し、駆動体であるピストンからガイドブロックに至る距離が長くなり、テーブルの移動に伴う位置ずれが発生しやすくなる。しかし本発明による分割ブロックとガイドレールとの位置調整機構を採用することにより、この位置ずれを良好に抑制することができ、テーブルの位置精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のリニアアクチュエータの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態のリニアアクチュエータを図1の反対側から見た斜視図である。
【図3】本実施の形態のリニアアクチュエータの側面図である。
【図4】図3のE−E断面図である。
【図5】本実施の形態のリニアアクチュエータの底面図である。
【図6】図3の一部拡大図である。
【図7】本発明のリニアアクチュエータの他の実施の形態を示す側面図である。
【図8】本発明のリニアアクチュエータの他の実施の形態をさらに示す側面図である。
【図9】本発明のリニアアクチュエータの他の実施の形態をさらに示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明のリニアアクチュエータの一実施の形態を示す斜視図、図2はこのリニアアクチュエータを図1の反対側から見た斜視図である。また、図3は本実施の形態のリニアアクチュエータの側面図、図4は図3のE−E断面図、図5このリニアアクチュエータの底面図、図6は図3の一部拡大図である。この実施の形態においては、リニアアクチュエータがテーブルシリンダである場合について示している。
【0022】
このテーブルシリンダは、図1〜図4に示すようにリニアアクチュエータ本体として構成されたシリンダ本体1と、図4に示すようにこのシリンダ本体1内に設けたシリンダ室2と、このシリンダ室2に摺動可能に収容した駆動体としてのピストン3と、このピストン3に連結し、シリンダ本体1の片面から突出したピストンロッド4と、このピストンロッド4に取付けられた可動体としてのテーブル5と、シリンダ本体1に固定されたガイドレール6と、テーブル5に固定されると共に、ガイドレール6に摺動可能に嵌合されたガイドブロック7とからなる。
【0023】
シリンダ本体1には、このシリンダを用いる装置(図示せず)に取付けるために貫通して設けた取付け孔8を有する。このシリンダは、この取付け孔8と装置に設けた取付け孔にボルトを貫通してそのボルトにナットを螺合し締結することにより、装置に取付けられる。この取付け孔8は内部に雌ねじ溝を設けたものとして、その雌ねじ溝に螺合するねじ式固定具(ボルトまたはねじ)により装置に取付ける構造としてもよい。
【0024】
図1、図3、図4に示すように、シリンダ本体1のピストンロッド4が突出する側の反対側の面にも、このシリンダを取付ける装置にこのシリンダをねじ式固定具によって取付けるためのねじ孔9を有する。また、図4、図5に示すように、シリンダ本体1の底面(なお、本明細書においては、説明の容易化のため、ガイドレール6の取付け側を上とし、その反対側を下として説明するが、これはこのシリンダを取付ける際の上下関係を意味するものではない。)にも、装置にこのシリンダをねじ式固定具によって取付けるためのねじ孔10を有する。このように3面に取付け孔8やねじ孔9,10を設ける理由は、このシリンダの使用箇所の機器の配置に応じて好適な状態でこのシリンダを取付けるためである。
【0025】
シリンダ本体1の正面および背面には、ピストン3の位置検出用の位置センサ(図示せず)を取付けるための取付け溝11をそれぞれの面に2箇所ずつ形成している。このように取付け溝11を正面、背面にそれぞれ2箇所ずつ形成している理由は、このシリンダの使用箇所の機器配置に応じて好適な状態で位置センサや信号線の配線を行なうためである。
【0026】
図4に示すように、ピストン3は、環状のピストン素体3aと円筒状のピストン素体3bとを組み合わせ、これらの素体3a,3bに挿通する頭付きねじロッド13をピストンロッド4の端部に設けたねじ孔(図示せず)に螺合してピストンロッド4に結合される。14は円筒状のピストン素体3bの外周に設けた磁石であり、この磁石14は、前記取付け溝11に設ける位置センサによりピストン3の位置を検出するために設けたものである。またこのピストン素体3bの外周には、シリンダ室2をピストン3により画成するヘッド室2aとロッド室2bとの間の気密性を保持するためのゴム製のパッキング15を設ける。ピストン素体3aには後述のロッドカバー19にピストン3が当接した際の衝撃を緩和するためのゴムや合成樹脂製のダンパ16が固着されている。17はシリンダ室2を塞いでヘッド室2aを形成するためにシリンダ室2の端部に固定したヘッドカバーである。
【0027】
19はシリンダ室2内におけるヘッドカバー17側端部の反対側端部に取付けられた円筒状のロッドカバーである。20はこのロッドカバー19の抜け止めのため、シリンダ室2の内壁に設けた溝21に周囲を嵌着して設けた止めリングである。22はピストンロッド4とロッドカバー19の内周との間の気密性を保持するためのゴム製パッキング、23はロッドカバー19の外周とピストン室2の内壁との間の気密性を保持するためのOリングである。
【0028】
図1、図3、図4に示すように、シリンダ本体1のピストンロッド4の突出側と反対側の面には、ピストン3とヘッドカバー17との間のヘッド室2aに連通する圧縮空気出入口ポート24と、ピストン3とロッドカバー19との間のロッド室2bに連通する圧縮空気出入口ポート25とが設けられている。また、図4、図5に示すように、シリンダ本体1の底面にも、ヘッド室2a、ロッド室2bにそれぞれ連通する圧縮空気出入口ポート26,27が設けられている。なお、側面側の圧縮空気出入口ポート24,25に圧縮空気供給用ホース(図示せず)を接続する場合には底面側のポート26,27は栓(図示せず)により閉塞する。また、底面側の圧縮空気出入口ポート26,27に圧縮空気供給用ホース(図示せず)を接続する場合には側面側のポート24,25は栓(図示せず)により閉塞する。
【0029】
なおこのようにポート24〜27をシリンダ本体1の側面と底面に設けている理由は、このシリンダの使用箇所の機器配置に応じて好適な状態でホースの接続を行なうためである。また、このようなポートはシリンダ本体1の正面や背面に設ける構成としてもよい。
【0030】
図4に示すように、ピストンロッド4の先端にはテーブル5を取付けるためのねじ溝4aが加工されている。一方、テーブル5は、ピストンロッド4に対して垂直をなす垂直部5aと、この垂直部5aに対して直角をなす水平部5bとからなり、全体としてL字形をなす。このテーブル5の垂直部5aに取付け孔28を設け、この取付け孔28にピストンロッド4の先端のねじ溝4aの形成部を挿通し、ねじ溝4aの形成部に螺合するナット29,30によりこの垂直部5aを挟持し締結することにより、テーブル5がピストンロッド4に固定される。
【0031】
本実施の形態のガイドレール6は、図3、図6に示すように、下部の取付け部6aの左右の面を垂直面に形成し、テーブル5側のガイド面である端面6bを平面に形成し、左右のガイド面をテーブル5側が拡大された傾斜面6c,6dに形成している。また、端面6bの左右幅方向の中央部には、このガイドレール6をシリンダ本体1に固定するためのねじ式固定具33の頭部33aを収容するための溝6eをガイドレール6の全長にわたって形成している。なお、この頭部33aを収容するため、溝6eの代わりに頭部33aの直径および厚みよりそれぞれ内径および深さがやや大きな凹部を設けてもよい。
【0032】
また、ガイドレール6には、この溝6eからガイドレール6の底面にわたって貫通した複数の取付け孔6fを設ける。一方、シリンダ本体1の上面にはガイドレール6の取付け溝34を形成し、この取付け溝34には、ねじ式固定具33を螺合するねじ孔35を取付け孔6fと同じピッチで複数設ける。このガイドレール6は、その軸線方向に対して垂直をなす方向の断面形状が左右対称形をなす。
【0033】
このガイドレール6は、その下部の取付け部6aをシリンダ本体1の取付け溝34に入れ、ねじ式固定具33をガイドレール6に設けた取付け孔6fに挿通すると共に、ねじ式固定具33の頭部33aを溝6eに収容し、シリンダ本体1に設けたねじ孔35にこの固定具33を螺合し締結することにより、シリンダ本体1に固定される。
【0034】
図1、図3、図6に示すように、ガイドブロック7は左右に分割された分割ブロック37,38により構成される。これらの分割ブロック37,38は、それぞれ前記ガイドレール6の傾斜面6c,6dに当接する傾斜面37a,38aと、ガイドレール6の端面6bに当接する可動体側対向面37b,38bとを有する。この実施の形態の分割ブロック37,38は互いに左右対称形をなす。これらの分割ブロック37,38には、テーブル5の水平部5bに固定するためのねじ孔37c,38cを有する。37d,38dは傾斜面6c,6dの一部を凹ませて形成したグリス溜めである。
【0035】
40,41は分割ブロック37,38をテーブル5の水平部5bに取付けるためのねじ式固定具である。これらのねじ式固定具40,41を設けるため、テーブル5の水平部5bには、固定具挿通孔42,43を設け、これらの固定具挿通孔42,43の上部は、ねじ式固定具40の頭部40a,41aを収容するための拡大された凹部42a,43aを形成している。水平部5bに設ける固定具挿通孔42,43の内径は、ねじ式固定具42,43の直径よりやや大きく形成されている。
【0036】
このテーブルシリンダにおいては、ピストンロッド4にテーブル5を取付けた後、図3に示すように、左右の分割ブロック37,38をシリンダ本体1のガイドレール6の左右両側からシリンダ本体1とガイドレール5の水平部5bとの間に入れる。そして、ねじ式固定具40,41を水平部5bに設けた固定具挿通孔42,43に挿通してそれぞれ分割ブロック37,38のねじ孔37c、38cに螺合し締結することにより、ガイドレール6に分割ブロック37,38の左右に摺動可能に嵌合する。
【0037】
ここで、固定具挿通孔42,43の内径を、ねじ式固定具40,41の直径より大きくしているので、分割ブロック37,38の左右の取付け位置が調整可能である。また、ピストンロッド4やテーブル5の持つ弾性や結合部に存在する多少のガタにより、テーブル5の水平部5bの多少の変位は可能である。このため、分割ブロック37,38の左右位置を調整してこれらの傾斜面37a,38aをガイドレール6の傾斜面6c,6dに当接させ、分割ブロック37,38をガイドレール6に押し付けると、分割ブロック37,38の傾斜面37a,38aがガイドレール6の傾斜面6c、6dの下に潜り込む。そして分割ブロック37,38の可動体側対向面37b,38bがガイドレール6の端面6bにも近接する。
【0038】
このようにガイドレール6の傾斜面6c、6dと分割ブロック37,38の傾斜面37a,38aが対向し、ガイドレール6の端面6bと分割ブロック37,38の可動体側対向面37b、38bが対向する構造とすることにより、例えばこの分割ブロック37,38の可動体側対向面37b,38bとガイドレール6の端面6bとの隙間、および分割ブロック37,38の傾斜面37a,38aとガイドレール6の傾斜面6c、6dとの隙間が好適な値、例えば0.01mm前後となるように調整した状態でねじ式固定具40,41によって分割ブロック37,38をテーブル5の水平部5bに固定することができる。なお、分割ブロック37,38の可動体側対向面37b,38bとガイドレール6の端面6bとの隙間、および分割ブロック37,38の傾斜面37a,38aとガイドレール6の傾斜面6c、6dとの隙間は、分割ブロック37,38を固定するねじ式固定具40,41の直径と固定具挿通孔42,43の内径との相違よりはるかに小さい値であるから、前記隙間の調整が可能となる。
【0039】
このように、分割ブロック37,38の間隔を調整することにより、可動体側対向面37b,38bをガイドレール6の端面6bに近接させる度合、および分割ブロック37,38の傾斜面37a,38aをガイドレール6の傾斜面6c、6dに近接させる度合を調整することにより、分割ブロック37,38とガイドレール6との隙間の調整を行なうことができ、微小隙間が形成できる。このため、ガイドレール6とガイドブロック7との間のガタが解消され、テーブル5の高い位置精度を得ることが可能となる。
【0040】
また、ガイドブロック7を分割ブロック37,38に分割し、分割ブロック37,38間の位置調整によって分割ブロック37,38の摺動面37a,38aおよび37b,38bとガイドレール6の摺動面6c,6d,6bとの隙間の調整が可能となる構成としたので、玉軸受に比較して部品点数が少なくなり、小型化が可能となる。また、玉軸受を使用する場合に比較して部品点数が少ない上、摺動面の研磨も必要としないため、テーブルシリンダを安価に提供することができる。
【0041】
また、本実施の形態においては、左右の分割ブロック37,38を左右対称形とし、それぞれ別個のねじ式固定具40,41によりテーブル5に固定される構造としたので、左右の分割ブロック40,41として共通の形状のものを用いることができ、製造価格の低下に寄与する。また、左右の分割ブロック40,41を対称形に形成すれば、一方の分割ブロック40または41をテーブル5に固定した後、他方の分割ブロック41または40をテーブル5に固定することによってテーブルシリンダを構成することができ、組立が容易となる。
【0042】
図7は本発明の他の実施の形態を示す側面図である。図7において、図6と同じ符号は同様の機能を発揮する部品、部分を示す。図7の実施の形態においては、ガイドレール6の両側面に、両側面の間隔がテーブル5側ほど次第に拡大された傾斜面6c,6dを形成すると共に、テーブル5側端面にも、テーブル5側の左右両側面の間隔が縮小された傾斜面6g,6hを形成したものである。また、分割ブロック37,38の可動体側対向面にも、傾斜面6g,6hに当接する傾斜面37e,38eを形成している。この実施の形態によっても前記実施の形態と同様の効果をあげることができる。
【0043】
図8は本発明の他の実施の形態を示す側面図である。この実施の形態において、左右の分割ブロック44,45においても、前記実施の形態と同様にガイドレール6の両側面の傾斜面6c,6dに当接させる傾斜面44a,45aを設けている。しかし前記実施の形態と異なるところは、これらの左右の分割ブロック44,45のうちの一方の分割ブロック44にのみ、ガイドレール6の端面6bに摺動可能に当接する可動体側対向面44bを設けている。そして、他方の分割ブロック45には、一方の分割ブロック44の板状部44cに重ねる板状部45bを設ける。そして一方の分割ブロック44の板状部44cには、ねじ式固定具46を螺合するねじ孔44dを有する。また、他方の分割ブロック45の板状部45bには、ねじ式固定具46の直径より大きな固定具挿通孔45cを設ける。また、テーブル5の水平部5bには、ねじ式固定具46の直径より大きな固定具挿通孔47を設け、この固定具挿通孔47の外端部に、ねじ式固定具46の頭部46aを収容する凹部47aを設ける。44e,45dはそれぞれ分割ブロック44,45のガイドレール6との摺動面に設けたグリス溜めである。
【0044】
この実施の形態においては、分割ブロック44,45の傾斜面44a,45aをそれぞれガイドレール6の傾斜面6c,6dに当接させると共に、一方の分割ブロック44の可動体側対向面44bのみをガイドレール6の端面6bに当接させる。また、一方の分割ブロック44の板状部44cに他方の分割ブロック45の板状部45bを重ね、この重ねた板状部44c,45bをガイドレール6の端面6bとテーブル5の水平部5bとの間に介在させる。そして共通のねじ式固定具46をテーブル5の固定具挿通孔47、分割ブロック45の固定具挿通孔45cに挿通して分割ブロック44のねじ孔44dに螺合し締結することより、これらの分割ブロック44,45をテーブル5に固定する。この時、ねじ式固定具46の頭部46aはテーブル5の水平部5bに設けた凹部47a内に収容される。
【0045】
この実施の形態においては、分割ブロック45の固定具挿通孔45cはねじ式固定具46より大きく形成されているので、分割ブロック44に対する分割ブロック45の近接度合を調整し、分割ブロック44,45のガイドレール6に対する近接度合すなわち隙間を調整することが可能である。
【0046】
図8の実施の形態によれば、図6、図7の実施の形態のようにねじ式固定具を2列に設ける必要がなく、ねじ式固定具46を1列のみ設ければよいため、ねじ式固定具46を取付けるためのスペースが狭くてすむ。このため、テーブルシリンダのさらなる小型化に寄与することができる。
【0047】
図9は本発明の他の実施の形態を示す側面図である。この実施の形態においては、図6に示した実施の形態において、ガイドレール6の傾斜面6c,6dにガイドレール6の軸線方向に長い凸部6i,6jを設け、分割ブロック37,38にはこれらの凸部6i,6jに摺動可能に嵌合される凹部37f,38fを設けている。また、ガイドレール6の端面6bにもガイドレール6の軸線方向に長い凸部6k,6mを設け、分割ブロック37,38にはこれらの凸部6k,6mに摺動可能に嵌合される凹部37g,38gを設けている。この実施の形態においては、ガイドレール6の傾斜面6c,6dは分割ブロック37,38の傾斜面37a,38aに接触せず、ガイドレール6の端面6bも分割ブロック37,38の可動体側対向面37b,38bに当接しない。
【0048】
このように、ガイドレール6の凸部6i,6j,6k,6mと分割ブロック37,38の凹部37f,38f,37g,38gを摺動可能に嵌合する構造とすれば、ガイドレール6と分割ブロック37,38との接触面積が狭くなり、ガイドレール6に対する分割ブロック37,38の摺動抵抗が小さくなるので、テーブル5のより円滑な移動が可能となる。
【0049】
なお、図9の構成において、ガイドレール6側に凸部を設けるのではなく、凹部を設け、分割ブロック37,38側に凸部を設けてもよい。また、ガイドレール6側に凸部と凹部を設け、分割ブロック37,38にこれらに嵌合する凹部と凸部を設けてもよい。さらにこのような凹凸嵌合構造は、図7や図8の実施の形態においても採用することができる。
【0050】
本発明は、テーブルシリンダ以外に他の流体圧シリンダや、電磁力を利用して駆動体としてのマグネットを往復動作させる電磁式アクチュエータや、モータを利用した電動式アクチュエータに適用することが可能である。特に、テーブルシリンダは、シリンダ本体1からピストンロッド4が突出し、駆動体であるピストン3からガイドブロック7に至る距離が長くなり、テーブル5の移動に伴う位置ずれが発生しやすくなる構成である。このため、本発明による分割ブロック37,38あるいは44,45とガイドレール6との前述した位置調整機構を採用することにより、この位置ずれを良好に抑制することができ、テーブルの位置精度を高めることができる。
【0051】
本発明は、上記実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:シリンダ本体、2:シリンダ室、3:ピストン、4:ピストンロッド、5:テーブル、5a:垂直部、5b:水平部、6:ガイドレール、6a:取付け部、6b:端面、6c,6d:傾斜面、6e:溝、6f:取付け孔、6g,6h:傾斜した端面、6i,6j,6k,6m:凸部、7:ガイドブロック、8:取付け孔、9,10:ねじ孔、11:取付け溝、13:頭付きねじロッド、14:磁石、15:パッキング、5d:凹部、16:ダンパ、17:ヘッドカバー、19:ロッドカバー、20:止めリング、21:溝、22:パッキング、23:Oリング、24〜27:圧縮空気出入口ポート、28:取付け孔、29,30:ナット、31,32:ワーク等取付け用ねじ孔、33:ねじ式固定具、34:取付け溝、35:ねじ孔、37,38:分割ブロック、37a,38a:傾斜面、37b,38b:可動体側対向面、37f,37g,38f,38g:凹部、37c,38c:ねじ孔、37d,38d:グリス溜め、40,41:ねじ式固定具、42,43:固定具挿通孔、44,45:分割ブロック、44a,45a:傾斜面、44b:可動体側対向面、44c,45b:板状部、44d:ねじ孔、44e,45d:グリス溜め、45c:固定具挿通孔、46:ねじ式固定具、47:固定具挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ本体に駆動体を収容し、前記駆動体に可動体を連結し、前記アクチュエータ本体にガイドレールを設け、前記可動体に、前記ガイドレールに摺動可能に嵌合するガイドブロックを設けたリニアアクチュエータにおいて、
前記ガイドレールの前記ガイドブロックに対向するガイド面を、前記可動体側の端面と、この端面とアクチュエータ本体との間の左右の面とにより形成すると共に、前記左右の面はアクチュエータ本体から離れるほど左右の面間の間隔が拡大される傾斜面に形成し、
前記ガイドブロックを左右の分割ブロックにより構成し、
前記左右の分割ブロックに、それぞれ対向する左側または右側の前記傾斜面に当接する傾斜面を設けると共に、少なくとも一方の分割ブロックに前記端面に対向する可動体側対向面を設け、
前記左右の分割ブロックの傾斜面を前記ガイドレールの左右の傾斜面に当接させると共に、少なくとも一方の分割ブロックの前記可動体側対向面を前記ガイドレールの前記端面に当接させて前記分割ブロックを前記ガイドレールに組み合わせ、前記左右の分割ブロックどうしの間隔を調整することにより、前記ガイドレールと前記分割ブロックとの隙間を調整して前記各分割ブロックを前記可動体にねじ式固定具により固定する構造を有することを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記左右の分割ブロックは左右対称形をなし、前記左右の分割ブロックを、それぞれ別個のねじ式固定具により前記可動体に固定する構造を有することを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記左右の分割ブロックのうちの一方の分割ブロックは、前記ガイドレールの端面に当接する可動体側対向面を形成した板状部を有し、
他方の分割ブロックは、前記一方の分割ブロックの板状部に重ねる板状部を有し、
前記一方の分割ブロックの前記板状部に前記他方の分割ブロックを重ね、この重ねた板状部を前記端面と前記可動体との間に介在させて共通のねじ式固定具によりこれらの分割ブロックを前記可動体に固定する構造を有することを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項4】
アクチュエータ本体に駆動体を収容し、前記駆動体に可動体を連結し、前記アクチュエータ本体にガイドレールを設け、前記可動体に、前記ガイドレールに摺動可能に嵌合するガイドブロックを設けたリニアアクチュエータにおいて、
前記ガイドレールの前記ガイドブロックに対向するガイド面を、前記可動体側の端面と、この端面とアクチュエータ本体との間の左右の面とにより形成すると共に、前記左右の面はアクチュエータ本体から離れるほど左右の面間の間隔が拡大される傾斜面に形成し、
前記ガイドブロックを左右の分割ブロックにより構成し、
前記左右の分割ブロックに、前記ガイドレールの左側または右側の前記傾斜面にそれぞれ対向する傾斜面を設けると共に、少なくとも一方の分割ブロックに前記端面に対向する可動体側対向面を設け、
前記ガイドレールの前記傾斜面および前記端面にガイドレールの軸線方向に長い凸部または凹部を設け、前記分割ブロックに前記凸部または凹部に摺動可能に嵌まる凹部または凸部を設けたことを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のリニアアクチュエータにおいて、
前記駆動体がピストンであって、前記ピストンに連結されるピストンロッドを有し、前記可動体が前記ピストンロッドに連結されるL字形のテーブルでなるテーブルシリンダであることを特徴とするリニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−241866(P2011−241866A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112706(P2010−112706)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】