説明

リニアアクチュエータ

【課題】 製造コストを低減することができるリニアアクチュエータモータを提供する。
【解決手段】 回転型モータ部1のロータが固定されるロータ固定部19と、スラストラジアルベアリング9が外周に嵌合され且つネジナット7が固定されるベアリング嵌合部21とを少なくとも組み合わせて中空状回転軸3を構成する。ロータ固定部19とベアリング嵌合部21とを、中空状回転軸3の一端3A側から中空状回転軸3の内部に挿入して、ベアリング嵌合部21及びロータ固定部19内を軸線方向に延びる1以上のネジ部材23により締結する。スラストラジアルベアリング9の内輪9Aの一端側の端面9Cと当接するベアリング嵌合部21の当接部21Cに、ネジナット7のフランジ部7Cを固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空状回転軸と一緒に回転するネジナットの回転運動を、ネジナットに螺合して中空状回転軸内を移動する出力用ネジ軸の直線運動に変換するリニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2002−372117号公報(特許文献1)、特開2002−372118号公報(特許文献2)、特開2011−141027号公報(特許文献3)及び特開2011−142802号公報(特許文献4)には、中空状回転軸203を有するモータ部201と、中空状回転軸203を同軸状に貫通する出力用ネジ軸205と、中空状回転軸203内に位置して出力用ネジ軸205と螺合して中空状回転軸203の一端203A側から径方向外側に突出するフランジ部207Aを備えたネジナット207と、中空状回転軸203が回転可能に中空状回転軸203の一端203A側を支持するスラストラジアルベアリング209と、中空状回転軸203の一端203A側の外周面に螺合されてスラストラジアルベアリング209を固定するロックナット210と、ネジナット207のフランジ部207Cをロックナット210に固定する図示しないボルトとを備えるリニアアクチュエータの構造が開示されている(図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−372117号公報
【特許文献2】特開2002−372118号公報
【特許文献3】特開2011−141027号公報
【特許文献4】特開2011−142802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のリニアアクチュエータでは、中空状回転軸の一端側の外周面とロックナットとによってスラストラジアルベアリングを確実に固定できる利点があるものの、ロックナットを中空状回転軸の一端側の外周面に螺合させる構造上、ロックナットの締め付け作業性、ロックナットの緩み、中空状回転軸と出力用ネジ軸との間の軸ずれ等を考慮する必要がある。そのため、ロックナットを用いる従来のリニアアクチュエータでは、中空状回転軸とロックナットとの間で高い組み立て精度が要求され、製造コストが高くなるという欠点がある。したがって、ロックナットを用いることなくスラストラジアルベアリングを固定することができるリニアアクチュエータが望ましい。
【0005】
本発明の目的は、ロックナットを用いる必要のないリニアアクチュエータを提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、ロックナットを用いずにスラストラジアルベアリングを固定する場合でも、組み立てが容易なリニアアクチュエータを提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、中空状回転軸と出力用ネジ軸との軸ズレが生じ難いリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が改良の対象とするリニアアクチュエータは、中空状回転軸を有する回転型モータ部と、中空状回転軸と同軸的に配置されてこの中空状回転軸内を移動する出力用ネジ軸と、中空状回転軸内に位置して出力用ネジ軸と螺合するネジ部とこのネジ部と一体に設けられて中空状回転軸の軸線方向の一端側から径外方向に突出するフランジ部とを備えたネジナットと、中空状回転軸を一端側において回転自在に支持するスラストラジアルベアリングとを備えている。なお、モータ部には、ステッピングモータ、サーボモータ等の公知のモータを用いることができる。
【0009】
本発明のリニアアチュエータでは、回転型モータ部のロータが固定されるロータ固定部と、スラストラジアルベアリングが外周に嵌合され且つネジナットが固定されるベアリング嵌合部とが少なくとも組み合わされて中空状回転軸が構成されている。また、ロータ固定部とベアリング嵌合部とは、中空状回転軸の一端側から中空状回転軸の内部に挿入されてベアリング嵌合部及びロータ固定部内を軸線方向に延びる1以上のネジ部材により締結されている。ベアリング嵌合部は、スラストラジアルベアリングの内輪の一端側の端面と当接する当接部を一体に有するように構成されている。そして、ネジナットのフランジ部は当接部に固定されている。
【0010】
本発明のように、ロータ固定部とベアリング嵌合部とを組み合わせて中空状回転軸を構成すると、ロックナットを用いることなく、中空状回転軸の軸線方向の一端側にスラストラジアルベアリングを固定することができる。そのため、リニアアクチュエータの製造コストを大幅に低減することができる。また、ロックナットを用いない構造を採用するため、従来のリニアアクチュエータで生じていた諸問題(ロックナットの締め付け作業性、ロックナットの緩み、中空状回転軸と出力用ネジ軸との間の軸ずれ等)を考慮する必要がない。さらに、ロックナットを用いなくても、ベアリング嵌合部の当接部がスラストラジアルベアリングの内輪の一端側の端面と当接することにより、中空状回転軸とネジナットとの間にスラストラジアルベアリングを確実に固定することができる。
【0011】
ロータ固定部は、スラストラジアルベアリングの内輪の一端側の端面とは反対側の端面と当接する当接部を一体に有する構成にするのが好ましい。このような構成にすると、スラストラジアルベアリングの内輪の一端側の端面がベアリング嵌合部の当接部に支持された状態で、スラストラジアルベアリングの内輪の反対側の端面がロータ固定部の当接部に支持されるため、ロータ固定部とベアリング嵌合部とを組み合わせた場合におけるスラストラジアルベアリングの移動を阻止することができる。
【0012】
また、ロータ固定部とベアリング嵌合部との間に継ぎ手部材を配置してもよい。この場合は、継ぎ手部材を、ロータ固定部の一端側の端部が嵌合される第1の嵌合用凹部と、ベアリング嵌合部の一端側とは反対側の端部が嵌合される第2の嵌合用凹部と、第1の嵌合用凹部に嵌合されたロータ固定部と第2の嵌合用凹部に嵌合されたベアリング嵌合部との間に位置する隔壁部とを備えた構造にする。そして、ベアリング嵌合部、継ぎ手部材の隔壁部及びロータ固定部内を軸線方向に延びる1以上のネジ部材により、ベアリング嵌合部、継ぎ手部材及びロータ固定部を締結する。このような継ぎ手部材を用いると、ロータ固定部とベアリング嵌合部との位置決めが容易になる。また、継ぎ手部材を介してロータ固定部とベアリング嵌合部とを確実に組み立てることができるので、組み立てる順番のバリエーションを増やすことができる。
【0013】
継ぎ手部材は、スラストラジアルベアリングの内輪の一端側の端面とは反対側の端面と当接する当接部を一体に有する構成にするのが好ましい。このような構成にすると、スラストラジアルベアリングの内輪の一端側の端面がベアリング嵌合部の当接部に支持された状態で、スラストラジアルベアリングの内輪の反対側の端面が継ぎ手部材の当接部に支持されるため、継ぎ手部材を用いてロータ固定部とベアリング嵌合部とを組み合わせた場合でも、スラストラジアルベアリングの移動を阻止することができる。
【0014】
本発明のリニアアクチュエータでは、回転型モータ部が、ステータコア及びステータコアに装着された巻線部からなるステータ部と、ロータ固定部に固定されたロータ部とを備えている。このような回転型モータ部を備える構成では、ステータコアの一端側とは反対側に位置する他端側の端部に嵌合される第1のエンドブラケットと、ステータコアの一端側の端部に嵌合されてスラストラジアルベアリングの外輪が嵌合される中間ブラケットと、中間ブラケットの一端側の端部に嵌合され出力用ネジ軸が貫通する第2のエンドブラケットとを備える構成にするのが好ましい。そして、中間ブラケットの内部には、さらにスラストラジアルベアリングの外輪の他端側の端部と当接する第1の当接部と、スラストラジアルベアリングの外輪の一端側の端部と当接するベアリング押さえ板と当接する第2の当接部とを設けるのが好ましい。このような構成にすると、スラストラジアルベアリングの内輪側がベアリング嵌合部とロータ固定部または継ぎ手部材とにより支持された状態で、さらにスラストラジアルベアリングの外輪側が中間ブラケットとベアリング押さえ板とにより支持されるため、スラストラジアルベアリングの移動を確実に防ぐことができる。また、本発明のようにロックナットを用いない構成を採用した場合でも、上述のようにスラストラジアルベアリングを確実に固定しながら、第1のエンドブラケット、ステータコア、中間ブラケット及び第2のエンドブラケットによってリニアアクチュエータのケーシングを構成することができる。
【0015】
なお、ステータコアの一端側の端部と中間ブラケットとが嵌合する部分の形状は任意である。例えば、ステータコアの径方向外側の外周面の一端側の端部に段差を設けて、中間ブラケットの一端側とは反対側に位置する他端側の端部をこの段差に嵌合することができる。しかしながら、ステータコアの外壁面側でステータコアと中間ブラケットとを嵌合する嵌合構造では、中空状回転軸の軸芯から径方向に最も離れた場所でステータコアと中間ブラケットとの位置決めがなされるため、中空状回転軸と出力用ネジ軸との間で軸ずれが生じ易くなる。そこで、本発明では、中間ブラケットの他端側の端部に、ステータコアの内周面と接触する基準面を備えた被嵌合部を一体に設けるのが好ましい。この基準面は、中間ブラケットの被嵌合部がステータコア内の磁極部(極歯)に接触しない程度にステータコアの内周面に接触する寸法に定められている。このようなステータコアの内周面側でステータコアと中間ブラケットとを嵌合する嵌合構造を採用すると、中空状回転軸の軸芯から径方向に最も近い場所でステータコアと中間ブラケットとの位置決めをすることができるため、中空状回転軸と出力用ネジ軸との間で軸ずれが生じにくい構造にすることができる。また、ステータコアと中間ブラケットとの接触面を大きくすることができるため、モータの剛性を大きくすることができ、振動及び騒音を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るリニアアクチュエータの一例を示す半部断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るリニアアクチュエータの他の一例を示す半部断面図である。
【図3】従来のリニアアクチュエータの構造を示す半部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るリニアアクチュエータの実施の形態について詳細に説明する。図1は、リニアアクチュエータの一例として駆動源として回転型のステッピングモータを用いた実施の形態の半部断面図である。図1に示すように、リニアアクチュエータの主要部は、ステッピングモータからなる回転型モータ部1、中空状回転軸3、出力用ネジ軸5、ネジナット7、及びスラストラジアルベアリング9から構成されている。
【0018】
回転型モータ部1は、ステータ部11とロータ部13とによって構成されている。ステータ部11は、さらにステータコア15と、このステータコア15に装着された巻線部17とから構成されている。ステータコア15は、ヨーク15Aの内周面に等間隔に配置された図示しない複数の磁極部を備えている。複数の磁極部の磁極面には、図示しない複数の小歯が形成されている。巻線部17は、インシュレータ18を介してステータコア15の各磁極部に実装されている。複数の磁極部の磁極面には、図示しない複数の小歯が形成されている。また、ロータ部13は、図示しない複数の小歯が外周に所定の角度のピッチでそれぞれ形成された2つのロータスタック13A及び13Bと、ロータスタック13A及び13Bの間に配置されて、それぞれの複数の小歯に異なる極性の磁極が現れるように厚み方向に着磁された永久磁石13Cとから構成されている。
【0019】
中空状回転軸3は、両端(一端3A及び他端3B)が開口する開口部3C及び3Dを備える中空の円筒形状を有する。中空状回転軸3は、後述の出力用ネジ軸5が軸線に沿って内部を往復移動できる内径寸法を有している。また、中空状回転軸3の外周部3Eには、ロータ部13を固定するための小径部3Fと、小径部3Fの径寸法よりも大きい径寸法を有しかつ後述のネジナット7のナット本体7Aが嵌合される大径部3Gとを備えている。中空状回転軸3の小径部3Fには、ロータ部13の2つのロータスタック13A及び13Bが固定されている。中空状回転軸3は、小径部3Fがロータ部13の内周面13Dに嵌合されて、回転型モータ部1に取り付けられている。さらに、中空状回転軸3の他端3Bには、中空状回転軸3の他端3Bを回転可能に支持するボールベアリング4を嵌合するための段部3Hが形成されている。
【0020】
出力用ネジ軸5は、中空状回転軸3と同軸的に配置されて、リニアアクチュエータの出力軸としてこの中空状回転軸3内を移動する。具体的には、出力用ネジ軸5は、ネジナット7に螺合され、中空状回転軸3の回転により軸線方向に往復直線運動する。
【0021】
ネジナット7は、中空状回転軸3の開口部3C内に嵌合されるナット本体7Aと、中空状回転軸3内に位置して出力用ネジ軸5と螺合するネジ部7Bと、このネジ部7Bと一体に設けられて中空状回転軸3の軸線方向の一端5A側から径外方向に突出するフランジ部7Cとを備えている。
【0022】
スラストラジアルベアリング9は、環状に構成された内輪9A及び外輪9Bと、内輪9A及び外輪9Bの間に配置された複数の転動体を備えている。スラストラジアルベアリング9は、中空状回転軸3が軸線方向(スラスト方向)に移動しないようにする構造を介して、中空状回転軸3の一端3A側を回転自在に支持する。具体的には、スラストラジアルベアリング9の内輪9Aが、中空状回転軸3の一端3A側の大径部3Gに固定され、外輪9Bが中間ブラケット27に固定されている。
【0023】
本例のリニアアクチュエータでは、ロータ固定部19とベアリング嵌合部21とが組み合わされて中空状回転軸3が構成されている。ロータ固定部19には、回転型モータ部1のロータ部13が固定されている。ロータ固定部19は、さらに、スラストラジアルベアリング9の内輪9Aの一端側の端面9Cとは反対側の端面9Dと当接する当接部19Aを一体に有する構成を備えている。一方、ベアリング嵌合部21には、外周部21Aにスラストラジアルベアリング9が嵌合され、内周部21Bにネジナット7が固定されている。そして、ロータ固定部19とベアリング嵌合部21とが、中空状回転軸3の一端3A側から中空状回転軸3の内部に挿入された状態で、ベアリング嵌合部21及びロータ固定部19内を軸線方向に延び且つ周方向に所定の間隔を開けて配置された複数本のネジ部材23により締結されている。なおネジ部材23は、少なくとも1本あればよい。ベアリング嵌合部21は、スラストラジアルベアリング9の内輪9Aの一端側の端面9Cと当接する当接部21Cを一体に有するように構成されている。また、ネジナット7のフランジ部7Cは、ベアリング嵌合部21の当接部21Cに固定されている。
【0024】
このようにロータ固定部19とベアリング嵌合部21とを組み合わせて中空状回転軸3を構成すると、ロックナットを用いることなく、中空状回転軸3の軸線方向の一端3A側にスラストラジアルベアリング9を固定することができる。そのため、図1に示すリニアアクチュエータを用いることにより、製造コストを大幅に低減することができる。また、図1のリニアアクチュエータでは、ロックナットを用いない構造を採用するため、従来のリニアアクチュエータで問題となっていたロックナットの締め付け作業性等を考慮する必要がない。さらに、本例では、ベアリング嵌合部21の当接部21Cがスラストラジアルベアリング9の内輪9Aの一端側の端面9Cと当接するため、ロックナットを用いなくても、中空状回転軸3とネジナット7との間にスラストラジアルベアリングを確実に固定することができる。特に、本例では、ベアリング嵌合部21の当接部21Cがスラストラジアルベアリング9の内輪9Aの一端側の端面9Cを支持し、ロータ固定部19の当接部19Aがスラストラジアルベアリング9の内輪9Aの反対側の端面9Dを支持するため、ロータ固定部19とベアリング嵌合部21とを組み合わせた状態でスラストラジアルベアリング9が移動するのを阻止することができる。
【0025】
図1の例では、さらに、第1のエンドブラケット25、中間ブラケット27及び第2のエンドブラケット29が設けられている。第1のエンドブラケット25は、ボールベアリング4を固定するように、ステータコア15の一端側とは反対側に位置する他端側の端部15Cに嵌合されている。具体的には、第1のエンドブラケット25の内壁部25Aに一体に形成された円筒部25Bと中空状回転軸3の段部3Hとの間に、ボールベアリング4が嵌合されている。なお、第1のエンドブラケット25の側壁部25Cには、回転型モータ部1に接続して回転型モータ部1に電力を供給するリード線1Aを外部に引き出すための貫通孔25Dが形成されている。
【0026】
中間ブラケット27は、ステータコア15の一端側の端部15Bに嵌合され、かつスラストラジアルベアリング9の外輪9Bに嵌合されている。図1の構成では、ステータコア15の径方向外側の外周面の一端側の端部15Dに段差15Eが設けられており、この段差15Eに中間ブラケット27の一端側とは反対側に位置する他端側の端部27Bが嵌合されている。また、中間ブラケット27の内部には、さらにスラストラジアルベアリング9の外輪9Bの他端側の端部9Fと当接する第1の当接部27Cと、スラストラジアルベアリング9の外輪9Bの一端側の端部9Eと当接する金属製のベアリング押さえ板31と当接する第2の当接部27Dが形成されている。
【0027】
第2のエンドブラケット29は、ネジナット7及び出力用ネジ軸5の一部を覆うように、出力用ネジ軸5が貫通する貫通孔29Aを備えて、中間ブラケット27の一端側の端部27Aに嵌合されている。第2のエンドブラケット29は、中間ブラケット27の四隅に図示しない4本のネジを用いて固定されている。
【0028】
このような構成により、スラストラジアルベアリング9は、ロータ固定部19、ベアリング嵌合部21、中間ブラケット27及びベアリング押さえ板31によって支持される。すなわち、スラストラジアルベアリング9の内輪9A側がロータ固定部19とベアリング嵌合部21とにより支持された状態で、さらにスラストラジアルベアリング9の外輪9B側が中間ブラケット27とベアリング押さえ板31とにより支持されるため、スラストラジアルベアリング9の移動を確実に防ぐことができる。また、本例のようにロックナットを用いない構成を採用した場合でも、スラストラジアルベアリング9を確実に固定しながら、第1のエンドブラケット25、ステータコア15、中間ブラケット27及び第2のエンドブラケット29によってリニアアクチュエータ(ステッピングモータ)のケーシングを構成することができる。
【0029】
図2は、本発明のリニアアクチュエータの他の実施の形態の構成を示す半部断面図である。なお図2では、図1のリニアアクチュエータの構成と共通する部分については、図1に付された符号の数に100の数を加えた数を付して説明を省略する。この図2の構成では、ロータ固定部119とベアリング嵌合部121との間に継ぎ手部材133が配置されている。継ぎ手部材133は、ロータ固定部119の一端側の端部119Bが嵌合される第1の嵌合用凹部133Aと、ベアリング嵌合部121の一端側とは反対側(端部121Cが形成された側と外周部121Aを挟んで反対側)の端部121Dが嵌合される第2の嵌合用凹部133Bと、第1の嵌合用凹部133Aに嵌合されたロータ固定部119(一端側の端部119B)と第2の嵌合用凹部133Bに嵌合されたベアリング嵌合部121(一端側とは反対側の端部121D)との間に位置する隔壁部133Cとを備えている。 ベアリング嵌合部121、継ぎ手部材133及びロータ固定部119は、ベアリング嵌合部121、継ぎ手部材133の隔壁部133C及びロータ固定部119内を軸線方向に延び且つ周方向に所定の間隔を開けて配置された複数本のネジ部材123により締結されている。このネジ部材123も少なくとも1本あればよい。この例のように、継ぎ手部材133を用いると、ロータ固定部119とベアリング嵌合部121との位置決めが容易になる。また、継ぎ手部材133を介してロータ固定部119とベアリング嵌合部121とを確実に組み立てることができるため、リニアアクチュエータを組み立てる順番のバリエーションを増やすことができる。
【0030】
また、図2の構成では、継ぎ手部材133が、スラストラジアルベアリング109の内輪109Aの一端側の端面109Cとは反対側の端面109Dと当接する当接部133Dを一体に有するように構成されている。継ぎ手部材133にこのような当接部133Dを設けることにより、スラストラジアルベアリング109の内輪109Aの一端側の端面109Cがベアリング嵌合部121の当接部121Cに支持され、スラストラジアルベアリング109の内輪109Aの反対側の端面109Dが継ぎ手部材133の当接部133Dに支持される。そのため、この他の一例のように継ぎ手部材133を用いた場合でも、ロータ固定部119とベアリング嵌合部121とを組み合わせた状態でスラストラジアルベアリング109が移動するのを阻止することができる。
【0031】
図2の構成では、さらに、中間ブラケット127の他端側の端部127Bに、ステータコア115の内周面と接触する基準面127Eを備えた被嵌合部127Fが一体に設けられている。この基準面127Eは、中間ブラケット127の被嵌合部127Fがステータコア115内の図示しない磁極部(極歯)に接触しない程度にステータコア115の内周面115Fに接触する寸法に定められている。図2の構成のように、ステータコア115の内周面115F側でステータコア115と中間ブラケット127とを嵌合する嵌合構造を採用すると、中空状回転軸103の軸芯から径方向に最も近い場所でステータコア115と中間ブラケット127との位置決めをすることが可能になる。すなわち、図2の構成を用いることにより、図1に示した構成(中空状回転軸3の軸芯から径方向に最も離れた場所でステータコア15と中間ブラケット27との位置決めがなされる場合)に比べて、中空状回転軸103と出力用ネジ軸105との間で軸ずれを生じ難くすることができる。また、図2の構成を用いると、ステータコア115と中間ブラケット127との接触面を大きくすることができる。その結果、回転型モータ部101のモータ剛性を大きくすることができるため、振動及び騒音が小さくすることができる。
【0032】
ここで、図2に示すリニアアクチュエータ(ステッピングモータ)を組み立てる方法の一例について順番に説明する。
【0033】
(A)ベアリング嵌合部121にスラストラジアルベアリング109を嵌合する。
【0034】
(B)ベアリング嵌合部121及びスラストラジアルベアリング109に継ぎ手部材133を嵌合する。
【0035】
(C)スラストラジアルベアリング109及び継ぎ手部材133に中間ブラケット127を嵌合する。
【0036】
(D)ベアリング嵌合部121と中間ブラケット127との間にベアリング押さえ板131を嵌合する。
【0037】
(E)ロータ固定部119にロータ部113を嵌合する。
【0038】
(F)ロータ固定部119にロータ部113を固定した状態でさらにボールベアリング104を嵌合する。
【0039】
(G)ネジ部材123によりベアリング嵌合部121、継ぎ手部材133及びロータ固定部119を締結する。
【0040】
(H)第1のエンドブラケット125をステータ部111に嵌合して、図示しないネジ部材により固定する。
【0041】
(I)出力用ネジ軸105をネジナット107に螺合した構造物を中空状回転軸103内に嵌合する。
【0042】
(J)第2のエンドブラケット129を中間ブラケット127に固定する。
【0043】
従来のリニアアクチュエータでは、リニアアクチュエータの主要部(回転モータ部、中空状回転軸、出力用ネジ軸、ネジナット、及びスラストラジアルベアリング)が組み合わされた完成品に近い段階でしか、ロックナットによるスラストラジアルベアリングの固定ができなかったため、リニアアクチュエータを組み立てる順番のバリエーションが限られていた。これに対して、図2のリニアアクチュエータを製造する場合は、回転型モータ部101を実装する時期に拘わらず(回転型モータ部101を実装する前でも後でも)、スラストラジアルベアリング109を固定することができるので、リニアアクチュエータ(ステッピングモータ)を組み立てる順番のバリエーションを増やすことができる。この効果は、図2の構成のように継ぎ手部材133を採用することによってはじめて実現することができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、ロータ固定部とベアリング嵌合部とを組み合わせて中空状回転軸を構成するため、ロックナットを用いることなく、中空状回転軸の軸線方向の一端側にスラストラジアルベアリングを固定することができる。そのため、リニアアクチュエータの製造コストを大幅に低減することができる。また、ロックナットを用いない構造を採用するので、従来のリニアアクチュエータで生じていたロックナットの締め付け作業性等の問題を考慮する必要がなくなる。さらに、ロックナットを用いなくても、ベアリング嵌合部の当接部がスラストラジアルベアリングの内輪の一端側の端面と当接することにより、中空状回転軸とネジナットとの間にスラストラジアルベアリングを確実に固定することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 回転型モータ部
3 中空状回転軸
5 出力用ネジ軸
7 ネジナット
9 スラストラジアルベアリング
11 ステータ部
13 ロータ部
15 ステータコア
17 巻線部
19 ロータ固定部
21 ベアリング嵌合部
23 ネジ部材
25 第1のエンドブラケット
27 中間ブラケット
29 第2のエンドブラケット
31 ベアリング押さえ板
133 継ぎ手部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状回転軸を有する回転型モータ部と、
前記中空状回転軸と同軸的に配置されて該中空状回転軸内を移動する出力用ネジ軸と、
前記中空状回転軸内に位置して前記出力用ネジ軸と螺合するネジ部と該ネジ部と一体に設けられて前記中空状回転軸の軸線方向の一端側から径外方向に突出するフランジ部とを備えたネジナットと、
前記中空状回転軸を前記一端側において回転自在に支持するスラストラジアルベアリングとを備えてなるリニアアクチュエータであって、
前記中空状回転軸は、前記回転型モータ部のロータが固定されるロータ固定部と、前記スラストラジアルベアリングが外周に嵌合され且つ前記ネジナットが固定されるベアリング嵌合部とが少なくとも組み合わされて構成されており、
前記ロータ固定部と前記ベアリング嵌合部とは、前記中空状回転軸の前記一端側から前記中空状回転軸の内部に挿入されて前記ベアリング嵌合部及び前記ロータ固定部内を軸線方向に延びる1以上のネジ部材により締結されており、
前記ベアリング嵌合部は、前記スラストラジアルベアリングの内輪の前記一端側の端面と当接する当接部を一体に有しており、
前記ネジナットの前記フランジ部が前記当接部に固定されていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記ロータ固定部は前記スラストラジアルベアリングの内輪の前記一端側の端面とは反対側の端面と当接する当接部を一体に有している請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記ロータ固定部と前記ベアリング嵌合部との間に継ぎ手部材が配置されており、
前記継ぎ手部材は、前記ロータ固定部の前記一端側の端部が嵌合される第1の嵌合用凹部と、前記ベアリング嵌合部の前記一端側とは反対側の端部が嵌合される第2の嵌合用凹部と、前記第1の嵌合用凹部に嵌合された前記ロータ固定部と前記第2の嵌合用凹部に嵌合された前記ベアリング嵌合部との間に位置する隔壁部とを備えており、
前記1以上のネジ部材が、前記ベアリング嵌合部、前記継ぎ手部材の前記隔壁部及び前記ロータ固定部内を軸線方向に延びて、前記ベアリング嵌合部、前記継ぎ手部材及び前記ロータ固定部が前記1以上のネジ部材により締結されている請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記継ぎ手部材は、前記スラストラジアルベアリングの内輪の前記一端側の端面とは反対側の端面と当接する当接部を一体に有している請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
前記回転型モータ部は、ステータコア及び前記ステータコアに装着された巻線部からなるステータ部と、前記ロータ固定部に固定されたロータ部とからなり、
前記ステータコアの前記一端側とは反対側に位置する他端側の端部に嵌合される第1のエンドブラケットと、
前記ステータコアの前記一端側の端部に嵌合されて前記スラストラジアルベアリングの外輪が嵌合される中間ブラケットと、
前記中間ブラケットの前記一端側の端部に嵌合され前記出力用ネジ軸が貫通する第2のエンドブラケットとを備え、
前記中間ブラケットの内部には前記スラストラジアルベアリングの外輪の前記他端側の端部と当接する第1の当接部と、前記スラストラジアルベアリングの外輪の前記一端側の端部と当接するベアリング押さえ板と当接する第2の当接部とが設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記中間ブラケットの前記他端側の端部には、前記ステータコアの内周面と接触する基準面を備えた被嵌合部が一体に設けられている請求項5に記載のリニアアクチュエータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−96441(P2013−96441A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237201(P2011−237201)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000180025)山洋電気株式会社 (170)
【Fターム(参考)】