説明

リニアスケールの製造装置

【課題】複数のトラックのスケールパターンの加工を高速に行うことができるリニアスケールの製造装置を得る。
【解決手段】被加工材料7を長手方向に移動させるステージ8を移動制御装置9によって移動制御する。ガルバノミラー4は、レーザ光線11の被加工材料7への照射スポットの位置を被加工材料7の移動方向に対して垂直な方向に偏向する。調整手段10は、レーザ制御装置2によるレーザ光線11のオン/オフ制御と、移動制御装置9によるステージ8の移動制御と、ガルバノミラー4による偏向位置制御を、複数のトラックに任意のスケールパターンを形成するよう調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ加工によりリニアエンコーダ用のスケールを製造するリニアスケールの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直線上の位置を検出するための光学式リニアエンコーダは、目盛りが刻まれたリニアスケールとリニアスケールから目盛りを読み取るための光学式読み取り器から構成されている。この種の光学式リニアエンコーダには、インクリメント方式とアブソリュート方式とが知られている。インクリメント方式の場合には、リニアスケールの目盛りは一つのトラックに等間隔に刻まれる。これに対し、アブソリュート方式の場合には、リニアスケールの目盛りは、目盛り間隔の異なる複数のトラックから構成される。
【0003】
従来、リニアスケール上に目盛りを刻む技術として、リソグラフィ技術を利用したフォトエッチングや金型によるエンボス加工等が知られている。しかしながら,従来のフォトエッチングによる製造方法では、レジストの塗布、露光、現像等複雑な工程を必要とし、製造に必要とされる装置は高価であり、また、エンボス加工にあっては、金型の設計製作に多大な費用と時間がかかる問題が指摘されている。
【0004】
このような問題に対処するために基板上の膜をレーザによって加工し、直接パターンを形成する方法が知られている。このような加工方法として、例えば、特許文献1に示すように、形成すべきスケールパターンのスリット幅相当のビームを偏向制御装置によってスケール幅方向に走査し膜を加工してラインスリットを、あるいは、ライン状のスポットで膜を加工してラインスリットを形成するようにしたものがあった。
また、特許文献2に示すように、レーザの光軸は偏向制御装置等によって走査せず固定で、ターゲット側のステージをx方向、y方向に移動させることでリニアスケールの目盛りを形成するようにしたものがあった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−332360号公報
【特許文献2】特開2004−301826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示されたような従来のリニアスケールの製造装置では、スリット幅相当の径の円形ビームをスキャンして1本のラインを加工形成するので、多大な時間を要するという問題点があった。
また、特許文献2に示されたような従来のリニアスケールの製造装置では、進行方向と同時にスケールの幅方向へ高速に移動するのが困難なため、多大な時間を要するという問題点があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、複数のトラックのスケールパターンの加工を高速に行うことができるリニアスケールの製造装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るリニアスケールの製造装置は、レーザ光線の出力をオン/オフ制御するレーザ制御手段と、レーザ光線の照射の有無によりスケールパターンを形成するためのスケール基材を、スケール基材長手方向に移動させる移動制御手段と、レーザ光線のスケール基材への照射スポットの位置をスケール基材の移動方向に対して垂直な方向に偏向する偏向手段と、偏向手段の偏向位置を制御する偏向制御手段と、レーザ制御手段によるオン/オフ制御と、移動制御手段によるスケール基材の移動制御と、偏向制御手段による偏向位置制御を、複数のトラックに任意のスケールパターンを形成するよう調整する調整手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明のリニアスケールの製造装置は、レーザ光線のスケール基材への照射スポットの位置をスケール基材の移動方向に対して垂直な方向に偏向する偏向手段を設け、この偏向手段の偏向位置制御によって複数のトラックのスケールパターンを形成するようにしたので、複数のトラックのスケールパターンの加工を高速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるリニアスケールの製造装置を示す構成図である。
図において、リニアスケールの製造装置は、レーザ装置1、レーザ制御装置2、転写マスク3、ガルバノミラー4、偏向制御装置5、レンズ群6、被加工材料7、ステージ8、移動制御装置9、調整手段10を備えている。
【0011】
レーザ装置1は、スケール基材である被加工材料7を加工するための元となるレーザ光線11を出射する装置であり、このレーザ光線11は転写マスク3を照射するよう構成されている。また、レーザ制御装置2は、レーザ装置1から出射されるレーザ光線11のオン/オフを制御するレーザ制御手段である。転写マスク3は、矩形のマスクが形成され、レンズ群6と共に、レーザ光線11を矩形形状とする光束変換手段を構成している。ガルバノミラー4は、偏向制御装置5によって矢印の回転4aで示すようにx軸方向に制御されるよう構成され、レーザ光線のスケール基材への照射スポットの位置をスケール基材の移動方向に対して垂直な方向に偏向する偏向手段を構成している。偏向制御装置5は、ガルバノミラー4を回転制御する偏向制御手段である。
【0012】
レンズ群6はガルバノミラー4で偏向されたレーザ光線11をステージ8上の被加工材料7に対して集光させるための集光レンズである。被加工材料7は、リニアスケールを作成するためのスケール基材であり、ステージ8上に固定される。ステージ8は、移動制御装置9によって矢印8aに示すように、y軸方向に移動制御されるよう構成されている。移動制御装置9は、ステージ8を矢印8a方向に移動制御する移動制御手段である。調整手段10は、レーザ制御装置2によるレーザ装置1のオン/オフ制御と、偏向制御装置5によるガルバノミラー4の回転制御と、移動制御装置9によるステージ8の移動制御とを調整し、被加工材料7上に複数のトラックのスケールパターンを作成するための調整を行う手段である。
【0013】
次に、実施の形態1のリニアスケールの製造装置の動作について説明する。
この装置は、レーザ装置1から出射されるレーザ光線11が転写マスク3を照射し、その転写マスク3によって矩形のレーザ光線11に変換され、ガルバノミラー4を介してレンズ群6によって被加工材料7上に投影され、矩形スリット71が加工される。例えば、転写マスク3には、0.16mm×15mmの長方形マスクを使用し、レンズ群6には1/10の縮小レンズを使用することで、16μm×1.5mmの矩形スリットを加工することができる。
【0014】
被加工材料7は、y方向、即ち、スケールの長手方向に移動可能なステージ8上に固定され、レーザ装置1から出射されるレーザ光線のオン/オフは、レーザ制御装置2によって制御される。また、移動制御装置9によってステージ8を移動させ、ガルバノミラー4のx軸方向の回転4aによって、複数のトラックに連続的な目盛りを刻む。ここで、デューティ比50%の場合、ステージ8の移動速度は、x軸方向、即ち、スケール幅方向にガルバノミラー4によって走査し、開始のトラックに戻ってきた際に、最小スケールピッチΛの1/2n(nは1以上の整数)以内に収まるよう一定速度で制御され、ステージが最小スケールピッチΛのちょうど1/2n移動した時にレーザ光線をオン/オフするように制御されるようになっている。これにより最小スケールピッチΛの整数倍のピッチを有する複数のトラックの書き込みが可能となる。
【0015】
例えば、図2に示すように、x軸方向、即ち、スケール幅方向にガルバノミラー4によって走査し、開始のトラックに戻ってきた際に、n=1、つまり、最小スケールピッチΛの1/2だけ移動するようにステージ8の速度v1は一定に保たれ、ステージ8が最小スケールピッチΛのちょうど1/2移動した時にレーザ光線のオン/オフが制御されるようになっている。これによって、短時間で最小スケールピッチΛの目盛りを刻むことが可能となる。また、図2では2本のトラックでの具体例を示したが、3本以上のトラックに対しても適用可能である。
【0016】
2本以上のトラックにより、リニアエンコーダの方式の一つであるアブソリュート方式の検出が可能となる。アブソリュート方式では、それぞれのトラックで正弦波、余弦波を出力し、これらの逆正接演算結果を内挿することで位置を特定することができる。例えば、図3に示すように、周期の長い上位トラックの逆正接演算結果12の1周期を上位トラックよりも短い周期を有する中間トラックの逆正接演算結果13で分割することでおおまかな位置を特定する。更に中間トラックの逆正接演算結果13の1周期を中間トラックよりも短い周期を有する下位トラックの逆正接演算結果14で分割することで細かい位置を特定することができる。このため、アブソリュート方式では、ある基準点からの移動量をカウントして現在位置を特定するインクリメント方式とは異なり、原点復帰動作を必要とせず、電源投入時点からの絶対位置を検出することができる。例えば、最下位トラックに、32μmピッチの、その隣のトラックに最下位トラックのピッチの8倍となる256μmピッチの、更にその隣には最下位トラックのピッチの128倍となる4096μmピッチのトラックを配置し、内挿分割することで4096μmの範囲での絶対位置を検出することが可能である。また、4096μm毎の絶対番地を指定することができるトラックを配置することで、数m程度の範囲について絶対値を検出することができる。
【0017】
また、上記具体例は、反射型の具体例であり、ハッチング部分が反射部、ハッチング部分内の白抜き部分が非反射部を表している。被加工材料としては、例えば、図4に示すように平面状の基材15に光吸収性の下地層16および光反射性の膜17が積層されたものであり、レーザ光によって光反射性の膜17を除去することで、反射部と非反射部を形成する。また、非反射部の反射率を減少させるために反射防止膜を施すことも効果的である。被加工材料7については、反射部と非反射部を形成できるものであれば特に限定されない。
また、上記具体例では反射型としたが、レーザ光によって透過部と非透過部を形成した透過型の場合にも本発明は有効である。被加工材料としては、例えば、図5に示すように透過性の平面状の基材18に光反射性の膜19が積層されたものであり、レーザ光によって光反射性の膜19を除去することで、透過部と非透過部を形成する。また、透過部の反射率を減少させるために反射防止膜を施すことも効果的である。被加工材料7については、透過部と非透過部を形成できるものであれば特に限定されない。
【0018】
尚、上記実施の形態では、デューティ比が50%の場合を説明したが、このデューティ比に限定されるものではない。デューティ比に特に制限を設けない場合、調整手段10は、任意のトラックにおいて、最小スケール周期の1/n(n=1以上の整数)以内でレーザ光線をオン/オフするよう調整を行えばよい。
【0019】
また、上記実施の形態では、複数のトラックで異なる周期のスケールパターンを形成する場合を説明したが、複数のトラックで同一周期のスケールパターンを形成する場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0020】
以上のように、実施の形態1のリニアスケールの製造装置によれば、レーザ光線を出射するレーザ装置と、レーザ光線を矩形形状にするための光束変換手段と、レーザ光線の出力をオン/オフ制御するレーザ制御手段と、レーザ光線の照射の有無によりスケールパターンを形成するためのスケール基材を、スケール基材長手方向に移動させる移動制御手段と、レーザ光線のスケール基材への照射スポットの位置をスケール基材の移動方向に対して垂直な方向に偏向する偏向手段と、偏向手段の偏向位置を制御する偏向制御手段と、レーザ制御手段によるオン/オフ制御と、移動制御手段によるスケール基材の移動制御と、偏向制御手段による偏向位置制御を、複数のトラックに任意のスケールパターンを形成するよう調整する調整手段とを備えたので、複数のトラックのスケールパターンの形成を高速に行うことができる。
【0021】
また、実施の形態1のリニアスケールの製造装置によれば、調整手段は、複数のトラックで周期の異なるスケールパターンを形成するよう調整を行うので、周期の異なる複数のトラックを同時に書き込むことができ、リニアスケールを高速に形成することができる。
【0022】
また、実施の形態1のリニアスケールの製造装置によれば、調整手段は、任意のトラックにおいて、最小スケール周期の1/n(nは1以上の整数)以内でレーザ光線のオン/オフさせるよう調整を行うので、短時間で最小スケール周期のスケールパターンの加工を行うことができる。
【0023】
また、実施の形態1のリニアスケールの製造装置によれば、移動制御手段は、スケール基材の移動を一定速度で行うようにしたので、複数のトラックのスケールパターンを高速に加工することができる。
【0024】
実施の形態2.
実施の形態2は、n=2以上とし、矩形スリット71を重ね打ちするようにしたものである。図面上の構成は実施の形態1と同様であるため、図1を援用して説明する。実施の形態2の調整手段10は、移動制御装置9の制御をn=2以上として行うよう構成されている。これにより、被加工材料7上の矩形スリット71はレーザ光線11の重ね打ちで形成される。
【0025】
即ち、実施の形態1で説明したステージ速度v1が最小スケール周期Λの1/2(n=1)の場合、スケールピッチがΛ以上のトラックに関しては、図6に示すように、ガルバノミラー4のステージ移動方向(y方向)への微小なずれにより、加工した目盛り内にわずかな隙間が生じる可能性がある。この場合、n=1以外、例えば、図7に示すように、スケール幅方向にガルバノミラー4によって走査し、開始のトラックに戻ってきた際に、n=2、つまり、最小スケールピッチΛの1/4だけ移動するようにステージ8の速度v2を一定に保持することで、ステージ8が最小スケールピッチΛのちょうど1/4移動した時にレーザ光線のオン/オフが制御され、重ね打ちすることで隙間を無くすことができる。これにより、目盛り内の隙間が無く、短時間で最小スケールピッチΛの目盛りを刻むことが可能となる。また、図7では2本のトラックでの実施例を示したが、3本以上のトラックに対しても適用可能である。
【0026】
以上のように、実施の形態2のリニアスケールの製造装置によれば、最小スケール周期の1/2n以内でステージの移動速度を制御する場合、n=2以上として矩形スリットを重ね打ちするようにしたので、ガルバノミラーのステージ移動方向への微小なずれが発生した場合でも、正確な目盛りを高速に形成することができる。
【0027】
実施の形態3.
上記実施の形態1,2において、ステージ8は一定速度としたが、ステージはステップ駆動で移動するようにしても良く、実施の形態3では、ステージ8の移動をステップ駆動するようにしたものである。図面上の構成は実施の形態1と同様であるため、図1を援用して説明する。
【0028】
実施の形態3の移動制御装置9は、ステージ8の移動をステップ駆動制御するよう構成されている。即ち、実施の形態3の移動制御手段である移動制御装置9は、ステージ8上の被加工材料7の移動を、複数のトラックのレーザ光線の照射スポット位置に対応させたステップ送りで行うよう構成されている。これ以外の構成は、実施の形態1または2と同様である。
【0029】
実施の形態3では、移動制御装置9は、調整手段10からの指示に基づいて、複数のトラックをガルバノミラー4でx軸方向、即ち、スケールの幅方向に走査している間は、ステージ8は止めておき、全てのトラックへの書き込みが終わったら、最小スケールピッチΛの1/2nだけ移動するように、ステージ8をステップ駆動する。そして、レーザ制御装置2によって、ステージ8が最小スケールピッチΛの1/2n移動した時にレーザ光線をオン/オフするよう制御する。
【0030】
これにより、最小スケールピッチΛの整数倍のピッチを有する複数のトラックの書き込みが可能となる。例えば、図8に示すように、ガルバノミラー4でx軸方向、即ち、被加工材料7の幅方向に走査している間は、ステージ8は止めておき、全てのトラックへの書き込みが終わったら、n=1、つまり、最小スケールピッチΛの1/2だけ移動するようにステージ8を速度v3でステップ駆動する。これによって短時間で最小スケールピッチΛの目盛りを刻むことが可能となる。また、図8では2本のトラックでの具体例を示したが、3本以上のトラックに対しても適用可能である。
【0031】
以上のように、実施の形態3のリニアスケールの製造装置によれば、移動制御手段は、スケール基材の移動を、複数のトラックのレーザ光線の照射スポット位置に対応させたステップ送りで行うようにしたので、レーザ光線の照射時はスケール基材が停止した状態であるため、精確な形状の矩形スリットを形成することができる。
【0032】
実施の形態4.
実施の形態4は、実施の形態3の構成において、n=2以上とし、矩形スリット71を重ね打ちするようにしたものである。図面上の構成は実施の形態1と同様であるため、図1を援用して説明する。実施の形態4の調整手段10は、移動制御装置9の制御をn=2以上として行うよう構成されている。これにより、被加工材料7上の矩形スリット71はレーザ光線11の重ね打ちで形成される。
【0033】
即ち、ステージ8の速度v3が、最小スケール周期Λの1/2(n=1)の場合、スケールピッチがΛ以上のトラックに関しては、図9のようにガルバノミラー4のステージ移動方向(y方向)への微小なずれにより、加工した目盛り内にわずかな隙間が生じる可能性がある。この場合、図10に示すように、n=1以外、例えば、n=2、つまり、最小スケールピッチΛの1/4だけ移動するようにステージ8を速度v4でステップ駆動し、ステージ8が最小スケールピッチΛのちょうど1/4移動した時にレーザ光線がオン/オフするように制御し、重ね打ちすることで隙間を無くすことができる。これにより、目盛り内の隙間が無く、最小スケールピッチΛの整数倍のピッチを有する複数のトラックを書き込むことが可能となる。また図10では2本のトラックでの具体例を示したが、3本以上のトラックに対しても適用可能である。
【0034】
以上のように、実施の形態4のリニアスケールの製造装置によれば、スケール基材の移動をステップ送りで行う構成において、最小スケール周期の1/2n以内でステージの移動速度を制御する場合、n=2以上として矩形スリットを重ね打ちするようにしたので、ガルバノミラーのステージ移動方向への微小なずれが発生した場合でも、正確な目盛りを高速に形成することができる。
【0035】
実施の形態5.
図11は、実施の形態5のリニアスケールの製造装置を示す構成図である。
図において、第1のレンズ群6aおよび第2のレンズ群6bは、偏向手段であるガルバノミラー4で偏向される光束が被加工材料7の移動方向(y軸方向)に対してのみ集光されるよう設定された光束変換手段を構成するためのレンズ群である。第1のレンズ群6aは、ガルバノミラー4の転写マスク3側、即ち、光路上流側に設けられ、第2のレンズ群6bは、ガルバノミラー4の被加工材料7側、即ち、光路下流側に設けられている。その他の構成は、図1と同様であるため、対応する部分に同一符号を付してその説明を省略する。
【0036】
このような構成により、被加工材料7の長手方向におけるガルバノミラー4の微小な回転によって発生する加工位置のずれを低減させることができる。以下、図12を用いてその原理を説明する。
図12(a)に示すように、レーザ光線20をミラー21で反射させ、集光レンズ22で像面23に結像させる時、ミラー21が回転方向21aの向きに回転した場合、結像する位置は回転前と後で異なる。一方、図12(b)のように、第1の集光レンズ22aによってミラー21の中心に集光させた時、第2の集光レンズ22bを挟んで、ミラー21上の集光点と像面23上の結像点は共役な関係にあるため、ミラー21が回転方向21aの向きに回転した場合でも、結像する位置は回転前と後で同じである。この効果を利用しているため、図11の構成においても、ガルバノミラー4のスケール長手方向の微小な回転によって発生する加工位置のずれを抑制することが可能である。
【0037】
本実施の形態では、レーザ装置1から出射されるレーザ光線11が転写マスク3を照射し、その転写マスク3によって矩形のレーザ光線11に変換され、第1のレンズ群6aとガルバノミラー4を介して第2のレンズ群6bによって被加工材料7上に投影され、矩形スリット71が加工される。被加工材料7は、y方向、即ち、スケールの長手方向に移動可能なステージ8上に固定され、レーザ装置1から出射されるレーザ光線のオン/オフは、レーザ制御装置2によって制御され、また、移動制御装置9によってステージ8を移動させ、ガルバノミラー4のx軸方向の回転4aによって複数のトラックに連続的な目盛りを刻むことが可能である。例えば、第1のレンズ群6aは、x方向、y方向でパワーの異なるトロイダルレンズ、あるいは、シリンドリカルレンズが含まれるレンズ群で構成できる。このとき、ステージの移動速度は、x軸方向、即ち、スケール幅方向にガルバノミラー4によって走査し、開始のトラックに戻ってきた際に、最小スケールピッチΛの1/2n以内に収まるよう一定速度で制御され、ステージ8が最小スケールピッチΛのちょうど1/2n移動した時にレーザ光線をオン/オフするように制御されるようになっている。これにより最小スケールピッチΛの整数倍のピッチを有する複数のトラックの書き込みが可能となる。
【0038】
例えば、図2に示すように、x軸方向、即ち、スケール幅方向にガルバノミラーによって走査し、開始のトラックに戻ってきた際に、n=1、つまり、最小スケールピッチΛの1/2だけ移動するようにステージ8の速度v1は一定に保たれ、ステージ8が最小スケールピッチΛのちょうど1/2移動した時にレーザ光線のオン/オフが制御されるようになっている。これにより、短時間で最小スケールピッチΛの目盛りを刻むことが可能となる。また、本実施の形態でも2本のトラックでの具体例を示したが、3本以上のトラックに対しても適用可能である。また、上述のステージ速度の場合、スケールピッチがΛ以上のトラックに関しては、図6で示したように、ガルバノミラー4のステージ移動方向への微小なずれにより、加工した目盛り内にわずかな隙間が生じる可能性がある。この場合には、実施の形態2の適用が可能である。更に、上述のステージは一定速度としたが、ステージはステップ駆動で送られても良い。この場合、実施の形態3及び4の適用が可能である。
【0039】
以上のように、実施の形態5のリニアスケールの製造装置によれば、光束変換手段は、偏向手段の光路上流側に位置する第1のレンズ群と、偏向手段の下流側に位置する第2のレンズ群とを含み、偏向手段で偏向される光束がスケール移動方向にのみ集光されるよう設定したので、ステージの移動方向における偏向手段の微小な回転によって発生する加工位置のずれを低減させることができる。
【0040】
実施の形態6.
実施の形態6は、ガルバノミラー4を、x方向、即ちスケールの幅方向と、y方向、即ちスケールの長手方向の2軸方向に走査可能な構成としたものである。図面上の構成は、実施の形態1の図1と同様であるため、図1を援用して説明する。
【0041】
実施の形態6のガルバノミラー4及び偏向制御装置5は、x方向およびy方向に駆動可能に構成されている。また、調整手段10は、偏向制御装置5に対してガルバノミラー4のx方向と共にy方向の制御信号も出力するよう構成されている。これ以外は、実施の形態1と同様である。
【0042】
次に、実施の形態6のリニアスケールの製造装置の動作について説明する。
レーザ装置1から出射されるレーザ光線11が転写マスク3を照射し、その転写マスク3によって矩形のレーザ光線11に変換され、ガルバノミラー4を介してレンズ群6によって被加工材料7上に投影され、矩形スリット71が加工される。被加工材料7は、y方向、即ちスケールの長手方向に移動可能なステージ8上に固定され、レーザ装置1から出射されるレーザ光線のオン/オフは、レーザ制御装置2によって制御される。また、移動制御装置9によってステージ8を移動させ、ガルバノミラー4のx軸方向の回転4aによって複数のトラックに連続的な目盛りを刻むことが可能であり、更に、ガルバノミラー4のy軸方向、即ち、スケール移動方向の回転により、スケール移動方向の加工位置を微調整することが可能となる。
【0043】
例えば、図13に示すように、同一トラック内で、反射型ではピッチと反射部の、透過型ではピッチと透過部の比率であるデューティー比は一定で、ピッチ(P1,P2,P3,…)が異なる目盛りを刻むことができる。より具体的には、2本のトラックにおいて、一方のトラック24aは20μmの一定ピッチで書き込み、他方のトラック24bは、ピッチが5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、20μm、15μm、10μm、5μmと変化させて書き込むことが可能である。
【0044】
また、例えば、図14のように、ピッチ(P4)は一定で、同一トラック内で、反射型ではピッチと反射部の、透過型ではピッチと透過部の比率であるデューティー比を変化させることも可能である。より具体的には、2本のトラックにおいて、一方のトラック25aは20μmの一定ピッチ、デューティー比50%の一定で書き込み、他方のトラック25bは、ピッチは100μm一定で書き込み、デューティー比を10%、30%、50%、70%、90%、70%、50%、30%、10%と変化させて書き込むことが可能である。
【0045】
ピッチを変調、あるいは、デューティー比を変調した場合、基本波のみを有する信号を取得することが可能となり、対ノイズに有利となる。更に、本実施の形態では、各トラック間の位相を合わせることも可能であり、位相が異なる場合に必要となる特別な信号処理回路が不要となる。図13、図14では、2本のトラックでの具体例を示したが、3本以上のトラックに対しても適用可能である。
【0046】
以上のように、実施の形態6のリニアスケールの製造装置によれば、偏向手段は、スケール基材の移動方向と平行な方向に偏向を行い、調整手段は、偏向制御手段に対して偏向方向への制御を行うようにしたので、スケール移動方向への加工位置を微調整することができ、ピッチ変調やデューティ比の変調といった加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の実施の形態1によるリニアスケールの製造装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1によるリニアスケールの製造装置の動作例の説明図である。
【図3】この発明の実施の形態1によるリニアスケールの製造装置のアブソリュート方式の説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1によるリニアスケールの製造装置の被加工材料の一例を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態1によるリニアスケールの製造装置の被加工材料の他の例を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態2によるリニアスケールの製造装置が解決しようとする問題点の説明図である。
【図7】この発明の実施の形態2によるリニアスケールの製造装置の動作例を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態3によるリニアスケールの製造装置の動作例を示す説明図である。
【図9】この発明の実施の形態4によるリニアスケールの製造装置が解決しようとする問題点の説明図である。
【図10】この発明の実施の形態4によるリニアスケールの製造装置の動作例を示す説明図である。
【図11】この発明の実施の形態5によるリニアスケールの製造装置の構成図である。
【図12】この発明の実施の形態5によるリニアスケールの製造装置の原理を示す説明図である。
【図13】この発明の実施の形態6によるリニアスケールの製造装置の動作例を示す説明図である。
【図14】この発明の実施の形態6によるリニアスケールの製造装置の他の動作例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 レーザ装置、2 レーザ制御装置、3 転写マスク、4 ガルバノミラー、5 偏向制御装置、6 レンズ群、6a 第1のレンズ群、6b 第2のレンズ群、7 被加工材料、8 ステージ、9 移動制御装置、10 調整手段、11 レーザ光線、71 矩形スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光線を出射するレーザ装置と、
前記レーザ光線を矩形形状にするための光束変換手段と、
前記レーザ光線の出力をオン/オフ制御するレーザ制御手段と、
前記レーザ光線の照射の有無によりスケールパターンを形成するためのスケール基材を、当該スケール基材長手方向に移動させる移動制御手段と、
前記レーザ光線の前記スケール基材への照射スポットの位置を当該スケール基材の移動方向に対して垂直な方向に偏向する偏向手段と、
前記偏向手段の偏向位置を制御する偏向制御手段と、
前記レーザ制御手段によるオン/オフ制御と、前記移動制御手段による前記スケール基材の移動制御と、前記偏向制御手段による偏向位置制御を、複数のトラックに任意のスケールパターンを形成するよう調整する調整手段とを備えたリニアスケールの製造装置。
【請求項2】
調整手段は、複数のトラックで周期の異なるスケールパターンを形成するよう調整を行うことを特徴とする請求項1記載のリニアスケールの製造装置。
【請求項3】
調整手段は、任意のトラックにおいて、最小スケール周期の1/n(nは1以上の整数)以内でレーザ光線のオン/オフさせるよう調整を行うことを特徴とする請求項1または請求項2記載のリニアスケールの製造装置。
【請求項4】
移動制御手段は、スケール基材の移動を一定速度で行うことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のリニアスケールの製造装置。
【請求項5】
移動制御手段は、スケール基材の移動を、複数のトラックのレーザ光線の照射スポット位置に対応させたステップ送りで行うことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のリニアスケールの製造装置。
【請求項6】
光束変換手段は、偏向手段の光路上流側に位置する第1のレンズ群と、前記偏向手段の下流側に位置する第2のレンズ群とを含み、前記偏向手段で偏向される光束がスケール移動方向にのみ集光されるよう設定されていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のリニアスケールの製造装置。
【請求項7】
偏向手段は、スケール基材の移動方向と平行な方向に偏向を行い、調整手段は、偏向制御手段に対して前記偏向方向への制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載のリニアスケールの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−31095(P2009−31095A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194564(P2007−194564)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】