リニアモータ、リニアモータ用コイル及びリニアモータ用コイルの製造方法
【課題】適応性の高いリニアモータ用コイルを提供する。
【解決手段】リニアモータ1の複数のコイル19は、1対の平行部19a及び1対の連結部19bが同一平面上に位置する平コイル19Aと、1対の連結部19bが1対の平行部19aに対してコイル軸方向(z方向)の一方側に位置する曲げコイル19Bと、を含む。曲げコイル19Bは、平行部19aを平コイル19Aのコイル開口19hに位置させるとともに連結部19bを平コイル19Aの連結部19bとz方向において重複させている。平コイル19A及び曲げコイル19Bそれぞれは、断面矩形の線材25が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている。
【解決手段】リニアモータ1の複数のコイル19は、1対の平行部19a及び1対の連結部19bが同一平面上に位置する平コイル19Aと、1対の連結部19bが1対の平行部19aに対してコイル軸方向(z方向)の一方側に位置する曲げコイル19Bと、を含む。曲げコイル19Bは、平行部19aを平コイル19Aのコイル開口19hに位置させるとともに連結部19bを平コイル19Aの連結部19bとz方向において重複させている。平コイル19A及び曲げコイル19Bそれぞれは、断面矩形の線材25が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータ、リニアモータ用コイル及びリニアモータ用コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
扁平な複数のコイルを可動方向に沿って互いに一部を重複させながら配列したリニアモータが知られている。特許文献1では、コイルの開口方向に見て概ね長方形の扁平コイルの長手方向の端部をコイルの開口方向の一方側へ曲げたコイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−234235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニアモータ用コイルは、加工容易性、耐熱性、高い占積率等が要求されるとともに、磁石との関係において、好適な寸法や配列等が要求される。従って、このような種々の要望を満たすことが可能な適応性の高いリニアモータ用コイル、当該リニアモータ用コイルを含むリニアモータ及びリニアモータ用コイルの製造方法が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るリニアモータは、可動方向に直交する交差方向に磁極を向けるとともに磁極の向きを交互に逆転させながら前記可動方向に配列された複数の磁石と、前記交差方向において前記複数の磁石に対してコイル開口を対向させて前記可動方向に配列され、前記複数の磁石に対して前記可動方向に移動可能な複数のコイルと、を有し、前記複数のコイルそれぞれは、コイル開口を挟んで互いに平行に延びる1対の平行部と、前記1対の平行部の端部同士を連結する1対の連結部と、を有し、前記可動方向及び前記交差方向に直交する方向に前記平行部の延びる方向を一致させて配置され、前記複数のコイルは、前記1対の平行部及び前記1対の連結部が同一平面上に位置する平コイルと、前記1対の連結部が前記1対の平行部に対してコイル軸方向の一方側に位置する曲げコイルと、を含み、前記曲げコイルは、前記平行部を前記平コイルのコイル開口内に位置させるとともに前記連結部を前記平コイルの前記連結部と前記交差方向において重複させており、前記平コイル及び前記曲げコイルそれぞれは、断面矩形の線材が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている。
【0006】
好適には、前記曲げコイルにおいて、前記連結部は、前記平行部に対して前記線材のコイル軸方向の径に相当する大きさでコイル軸方向の一方側へ位置している。
【0007】
好適には、前記複数の磁石からなる磁石列が、前記交差方向において前記複数のコイルを挟んで互いに異なる磁極を対向させるように2列設けられており、前記複数のコイルは、前記平コイル及び前記曲げコイルが前記可動方向において対称に配列された第1コイルユニット2つが、前記交差方向において前記平コイル側同士を重ね合わせるように組み合わせられた第2コイルユニットを構成している。
【0008】
好適には、前記複数のコイルは、前記平コイル及び前記曲げコイルが前記可動方向において配列された第3コイルユニット及び第4コイルユニットを構成し、前記第4コイルユニットは、前記平行部の延びる方向において前記第3コイルユニットの前記曲げコイルの前記平行部よりも小さく、前記平コイル側を前記第3コイルユニットの前記曲げコイル側に重ねて、前記平行部の延びる方向において前記第3コイルユニットの前記曲げコイルの前記1対の連結部間に収まっている。
【0009】
好適には、前記複数の磁石は、前記平行部の延びる方向において、前記複数のコイルよりも長い。
【0010】
本発明の一態様に係るリニアモータ用コイルは、コイル開口を挟んで互いに平行に延びる1対の平行部と、前記1対の平行部の端部同士を連結し、前記1対の平行部に対してコイル軸方向の一方側に位置する1対の連結部と、を有し、断面矩形の線材が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている。
【0011】
本発明の一態様に係るリニアモータ用コイルの製造方法は、軸部と、当該軸部の軸方向において当該軸部を挟んで対向する1対の鍔部とを有する巻き型の前記軸部に線材を巻き付けるリニアモータ用コイルの製造方法であって、前記1対の鍔部の互いに対向する面は、前記線材の前記軸方向における径の1倍以上2倍未満の距離で対向しているとともに、外周側の一部が内周側に対して前記軸方向の一方側に位置しており、前記線材は、断面矩形であり、矩形の2辺を前記軸部の軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺を前記軸部の径方向に平行にして巻かれる。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成若しくは手順によれば、リニアモータ用コイルの適応性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリニアモータの外観を示す斜視図。
【図2】図1のリニアモータの一部を取り外して示す斜視図。
【図3】図1のリニアモータの固定子を示す図1のIII−III線に対応する断面図。
【図4】図1のリニアモータの可動子を示す斜視図。
【図5】図4の可動子のコイルユニットを示す斜視図。
【図6】図5のコイルユニットの曲げコイルを示す斜視図。
【図7】図7(a)〜図7(c)は図6の曲げコイルの平面図、正面図及び側面図。
【図8】図7(a)のVIII−VIII線における断面図。
【図9】図3の領域IXに対応する領域において固定子及び可動子の断面を示す図。
【図10】図10(a)及び図10(b)は図6の曲げコイルの製造方法を説明する図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るコイルユニットを示す斜視図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るコイルユニットを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリニアモータ装置51の外観を示す斜視図である。図2は、リニアモータ装置51の一部を取り外して示す斜視図である。
【0015】
リニアモータ装置51は、リニアモータ1と、リニアモータ1に電力を供給する電源装置53とを有している。
【0016】
リニアモータ1は、x方向に駆動力を発揮するリニアモータである。すなわち、リニアモータ1は、固定子3(図1)と、固定子3に対してx方向へ駆動される可動子5とを有している。なお、可動子5は、不図示の支持機構及び/又は不図示の駆動対象によって、固定子3に対してx方向に移動可能に支持されるとともに、y方向においても移動可能に支持されている。
【0017】
固定子3は、基体7(図1)と、基体7に取り付けられた磁石列8(図2)とを有している。可動子5は、コイルユニット11(図2)と、コイルユニット11に固定された連結部材13とを有している。なお、図2では、コイルユニット11は模式的に示されている。
【0018】
リニアモータ1は、コイルユニット11に通電がなされることにより、コイルユニット11と磁石列8との間において駆動力が生じ、コイルユニット11が移動する。すなわち、リニアモータ1は、いわゆる可動コイル型のリニアモータとして構成されている。そして、リニアモータ1は、基体7に連結された不図示の部材と、連結部材13の基体7からの延出部分に連結された不図示の部材とをx方向に相対移動させる。
【0019】
基体7は、1対のヨーク15と、当該1対のヨーク15を互いに連結する側壁部17とを有している。
【0020】
ヨーク15は、例えば、概ね矩形の平板状に形成されており、可動子5を挟んでz方向において互いに対向している。ヨーク15は、例えば、鉄等の磁性体により形成されている。ヨーク15の寸法及び1対のヨーク15の対向する距離は、リニアモータ1に要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよい。
【0021】
側壁部17は、例えば、可動子5の移動方向の側方において1対のヨーク15間に介在してスペーサとして機能している。側壁部17は、ネジ若しくは接着剤等の適宜な方法によりヨーク15に対して固定されている。側壁部17は、樹脂等の非磁性体により構成されていてもよいし、鉄等の磁性体により構成されていてもよい。
【0022】
磁石列8は、各ヨーク15に設けられており、合計1対設けられている。各磁石列8は、複数の磁石9によって構成されている。
【0023】
複数の磁石9は、互いに同一の構成とされている。各磁石9は、例えば、z方向を厚み方向とし、y方向に長い矩形の平板状(直方体状)に形成されている。そして、複数の磁石9は、1対のヨーク15の対向面においてx方向に一定間隔で配列されている。なお、複数の磁石9は、ネジ若しくは接着剤等の適宜な方法によりヨーク15に対して固定されている。
【0024】
図3は、固定子3を示す図1のIII−III線に対応する断面図である。ただし、磁極の向き及び磁気経路を示すために、断面のハッチングは省略している。
【0025】
各磁石列8において、複数の磁石9は、磁極をz方向に向けるとともに、磁極を交互に逆転させながらx方向に配列されている。また、1対の磁石列8は、互いに異なる磁極をz方向において対向させている。
【0026】
従って、矢印y1で示すように、可動子5側に向くN極から出た磁束は、当該N極にz方向において対向するS極に入る。また、矢印y2で示すように、ヨーク15側に向くN極から出た磁束は、ヨーク15を介して、x方向において隣接する磁石9のS極に入る。ただし、矢印y3で示すように、可動子5側に向くN極から出た磁束の一部(漏洩磁束)は、x方向において隣接する磁石9のS極に入る。
【0027】
図4は、可動子5を示す斜視図であり、図5は、コイルユニット11を示す斜視図である。
【0028】
コイルユニット11は、2つの平コイル19Aと、1つの曲げコイル19Bとを有している(なお、以下では、単に「コイル19」といい、両者を区別しないことがある。)。
【0029】
コイル19は、概ね扁平で、平面視における形状がy方向(駆動方向に直交する方向)に長い長方形(若しくは長円形)に形成されている。すなわち、コイル19は、コイル開口19hを挟んで互いに平行にy方向に延びる1対の平行部19aと、1対の平行部19aの端部同士を連結する1対の連結部19bとを有している。
【0030】
平コイル19Aは、平面状に形成されている。すなわち、平コイル19Aにおいては、1対の平行部19a及び1対の連結部19bは、同一平面上に位置している。
【0031】
一方、曲げコイル19Bにおいては、1対の連結部19bは、1対の平行部19aに対してコイル軸方向の一方側(z方向の正側)に位置している。より具体的には、例えば、連結部19bは、内周縁と外周縁とがコイル軸方向に対して直交する同一平面上に位置するように、段差19cを介して平行部19aと接続されている。平行部19aと連結部19bとのz方向の位置の差は、例えば、曲げコイル19Bの厚み(z方向)と同等である。
【0032】
平コイル19A及び曲げコイル19Bは、曲げコイル19Bを平らに変形させたと仮定したときに、各種寸法が概ね互いに同一となるように寸法が設定されている。また、コイル開口19hの短径は、コイル19の幅(平行部19a等の内周縁から外周縁までの大きさ)の概ね2倍となるように設定されている。
【0033】
コイルユニット11においては、平コイル19Aはx方向において互いに隣接して配列される。そして、曲げコイル19Bは、各平コイル19Aのコイル開口19h内に一の平行部19aを配置するように平コイル19Aに重ねられる。従って、3つのコイル19の平行部19aは、同一平面上においてx方向に配列される。より具体的には、2つの平コイル19Aの2つの平行部19aが曲げコイル19Bのコイル開口19hに概ね嵌合し、4本の平行部19aがx方向に隣接して配列されるとともに、そのx方向の両側に平行部19aの1本分の幅で離れて各1本の平行部19aが配列される。
【0034】
このとき、曲げコイル19Bでは、連結部19bは、平行部19aに対してコイル軸方向の一方側に位置していることから、曲げコイル19Bの連結部19bは、曲げコイル19Bの平行部19aを平コイル19Aのコイル開口19h内に配置する妨げとならない。なお、3つのコイル19の平行部19aを同一平面上に位置させたときに、曲げコイル19Bの連結部19bは、平コイル19Aの連結部19bに当接してもよいし、当接しなくてもよく、好適には当接する。
【0035】
平コイル19A及び曲げコイル19Bは、x方向において交互に且つz方向の上下関係が一定とされて配列されれば、適宜な数で配列されてよい。本実施形態では、3つのコイル19が配列されていることから、平コイル19A及び曲げコイル19Bはx方向において対称(線対称)に配列されている。換言すれば、コイルユニット11は、全体としてx方向及びy方向に対称な形状となっている。
【0036】
なお、複数のコイル19は、接着剤等の適宜な方法によって互いに固定されていてもよいし、連結部材13によって互いに固定されていてもよい。
【0037】
連結部材13は、コイルユニット11の平行部19aにより構成された平面状部分を挟み込む1対の板状部材21と、1対の板状部材21間に介在する介在部材23とを有している。
【0038】
板状部材21は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により形成され、介在部材23は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)により形成されている。これらは、ネジ若しくは接着剤等の適宜な方法により互いに固定されている。また、板状部材21とコイルユニット11との間には、例えば、GFRP等からなる不図示の絶縁シートが介在している。
【0039】
このような連結部材13の構造及び材料により、強度を確保しつつ可動子5の厚みを極力薄くして、z方向において対向する磁石9間の距離を短くし、コイルユニット11を通過する磁束密度を向上させることができる。
【0040】
図6は、曲げコイル19Bを示す斜視図である。図7(a)〜図7(c)は、曲げコイル19Bの平面図、正面図及び側面図である。
【0041】
曲げコイル19Bは、1本の線材25が内周側から外周側へ巻かれて行くことにより形成されている。より具体的には、線材25は、コイル軸方向(z方向)において1列に且つコイル径方向(コイル軸方向に直交する放射方向)において多層に巻かれている。従って、曲げコイル19Bの厚みは、線材25のコイル軸方向の径と同等である。また、曲げコイル19Bの幅は、線材25のコイル径方向の径×巻き数である。連結部19bの平行部19aに対するずれ(段差19c)の大きさは、線材25のコイル軸方向の径と同等である。
【0042】
図8は、図7(a)のVIII−VIII線における断面図である。
【0043】
線材25は、断面形状が矩形のいわゆる平角線により構成されている。そして、矩形の2辺がコイルの軸方向(z方向)に平行に且つ他の2辺がコイルの径方向に平行になるように巻かれている。平角線の断面形状は、正方形であってもよいし、長方形であってもよい。断面形状が長方形である場合、線材25は、好適には、長辺がコイルの軸方向に平行になるように巻かれる。
【0044】
線材25の断面形状の寸法は、要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよいが、一例として、0.5mm×1.0mmである。また、線材25の巻き数も、要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよいが、一例として、15回であり、曲げコイル19Bの幅は、一例として、0.5×15=7.5mmである。
【0045】
線材25は、特に図示しないが、例えば、導電性材料からなる線材が絶縁性材料により被覆されて構成されている。導電性材料は、例えば、銅であり、絶縁性材料は、例えば、樹脂である。線材25のコイル径方向において互いに隣接する部分同士は、絶縁性材料が直接若しくは接着剤を介して間接に互いに接合されることにより固定されている。
【0046】
図6〜図8では、曲げコイル19Bについて説明したが、平コイル19Aも、平行部19aと連結部19bとが同一平面上に位置していることを除いて、曲げコイル19Bと同様の構成である。すなわち、平コイル19Aも、断面矩形の線材25が一列且つ多層に巻かれることによって構成されている。
【0047】
図9は、図3の領域IXに対応する領域において固定子3及び可動子5の断面を示す図である。
【0048】
平行部19aのピッチP2は、磁石9のピッチP1の1/3となっている。なお、ピッチP1は、一の磁石9のx方向の幅と、x方向に隣接する磁石9間の一の間隔との合計である。また、ピッチP2は、平行部19aの1本分の幅と、互いに隣接する平行部19a(コイルユニット11のx方向中央側の4本の平行部19a)における一の間隔との合計である。なお、コイルユニット11の両側の平行部19aも、全てのコイル開口19hに2本の平行部19aが位置していると仮定すると、ピッチP2で配置されている。
【0049】
図1に示した電源装置53は、3つのコイル19に対して、3相交流電力を供給する。3相交流電力は、2π/3ずつ位相がずれた、U相、V相及びW相の交流電力からなるものである。例えば、交流電流が正弦関数で表わされるものであるとすると、U相、V相及びW相の交流電流は、sin(ωt)、sin(ωt−2π/3)、sin(ωt−4π/3)と表わされる。
【0050】
より具体的には、コイルユニット11のx方向中央側において互いに隣接して配列された平行部19aには、その並び順に、U相、−W相、V相の交流電力が供給される。なお、本願では、平行部19aに着目しているときは、U相、V相及びW相の正負は、コイル19毎ではなく、平行部19a毎に定義されるものとする。例えば、図9の例では、曲げコイル19BにはW相の交流電力が供給されているが、1対の平行部19a間においては電流の向きがy方向において逆になるから、一方の平行部19aについてはW相、他方の平行部19aについては−W相と表わされている。なお、電流の向きの正負とy方向の正負との相対関係は、U相、V相及びW相間において統一されていれば、適宜に設定されてよい。
【0051】
また、電力の初期位相は任意に設定可能であるから、x方向に隣接して配列された平行部19aに対して、その並び順にU相、−W相及びV相の交流電力を供給するという場合には、3つの平行部19aに対して、その並び順に、「−W相、V相及びU相」、「V相、U相及び−W相」、「−U相、W相及び−V相」、「W相、−V相及び−U相」又は「−V相、−U相及びW相」の交流電力を供給する場合が含まれる。
【0052】
また、コイル19は、電力が供給されていない状態においても(電源装置53が接続されていないリニアモータ1単体でも)、いずれの相の電力が供給されるか特定可能である。例えば、官公庁、規格団体若しくは企業等の各種団体においては、各配線に割り当てられる交流電力の相を各配線の被膜の色により識別するために、相と色との相対関係を仕様書若しくは規格により規定している。従って、リニアモータ1から延出している不図示の配線の被膜の色から、コイル19に供給される交流電力の相を特定可能である。
【0053】
平行部19aに電流が流れると、図3において矢印y1で示したz方向の磁束中を、y方向に電流が流れることになるから、フレミングの左手の法則に従って、x方向の駆動力が生じる。そして、コイルユニット11は、交流電力の半周期において複数の磁石9のピッチP1を移動する。図9の例では、コイルユニット11は、x方向の正側へ移動する。
【0054】
なお、リニアモータ1は、x方向の双方向に駆動可能であり、コイルユニット11がx方向の負側に移動するときには、図9の例とは逆に、x方向の正側から負側へ、U相、−W相、V相の交流電力が供給される。換言すれば、本願においてピッチP1で配列された複数の平行部19aに対して、その並び順にU相、−W相及びV相の電力が供給されるというときの並び順は、x方向のいずれ側からの並び順であってもよい。
【0055】
図10(a)は、曲げコイル19Bの製造に係る巻き型71の斜視図であり、図10(b)は、図10(a)のXb−Xb線における断面図である。
【0056】
巻き型71は、軸部73(図10(b))と、当該軸部73の軸方向(回転軸CA方向)において軸部73を挟んで対向する1対の鍔部75とを有している。
【0057】
軸部73の、回転軸CAに直交する断面形状は、曲げコイル19Bのコイル開口19hと同一の形状である。鍔部75の、軸部73から外側へ広がるフランジの形状は、例えば、曲げコイル19Bの形状と概ね同様である。すなわち、平面視において概ね長方形に形成されるとともに、長手方向の端部(外周側の一部)は、中央側に対して回転軸CAの一方側へ位置している。ただし、フランジの外縁位置は、曲げコイル19Bの外縁位置よりも外側である。また、1対の鍔部75の互いに対向する面間の距離tは、線材25のコイル軸方向(z方向)の径の1倍以上2倍未満(好ましくは1.1〜1.3倍程度)に設定されている。
【0058】
そして、不図示のボビンから引き出された線材25の一端を軸部73に固定し、巻き型71を回転軸CA回りに回転させ、線材25を軸部73に巻きつけていく。このとき、線材25は、断面の矩形の2辺が軸部73の軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺が軸部73の径方向に平行になるように巻かれて行く。
【0059】
また、線材25は、液状の接着剤が外周面に供給された状態で巻かれて行く。すなわち、線材25は、ウエット巻きされる。接着剤は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂である。そして、接着剤は、線材25が巻かれているときに及び/又は巻き終わった後に、室温により若しくは加熱により硬化し、線材25の多層に重なった部分同士を固定し、線材25を巻かれた状態に維持する。なお、線材25は、当該接着剤を含んで定義されてもよい。
【0060】
線材25は、回転軸CA方向の位置が鍔部75に規制されていることから、軸部73の長手方向の両端側を周回するときは、他の部分を周回するときよりも回転軸CA方向の一方側に位置する。これにより、連結部19bは、平行部19aよりもコイル軸方向の一方側へ位置する。
【0061】
線材25が所定の回数巻かれ且つ接着剤が硬化すると、一の鍔部75が軸部73から取り外されるなどし、曲げコイル19Bは軸部73から抜き取られる。
【0062】
なお、曲げコイル19Bについて説明したが、平コイル19Aも同様にして形成される。ただし、平コイル19A用の巻き型は、鍔部75が平坦に形成されている。
【0063】
以上の実施形態では、リニアモータ1は、可動方向(x方向)に直交する交差方向(z方向)に磁極を向けるとともに磁極の向きを交互に逆転させながらx方向に配列された複数の磁石9と、z方向において複数の磁石9に対してコイル開口19hを対向させてx方向に配列され、複数の磁石9に対してx方向に移動可能な複数のコイル19とを有している。複数のコイル19それぞれは、コイル開口19hを挟んで互いに平行に延びる1対の平行部19aと、1対の平行部19aの端部同士を連結する1対の連結部19bと、を有し、x方向及びz方向に直交するy方向に1対の平行部19aの延びる方向を一致させて配置されている。複数のコイル19は、1対の平行部19a及び1対の連結部19bが同一平面上に位置する平コイル19Aと、1対の連結部19bが1対の平行部19aに対してコイル軸方向(z方向)の一方側に位置する曲げコイル19Bと、を含む。曲げコイル19Bは、平行部19aを平コイル19Aのコイル開口19hに位置させるとともに連結部19bを平コイル19Aの連結部19bとz方向において重複させている。平コイル19A及び曲げコイル19Bそれぞれは、断面矩形の線材25が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている。
【0064】
従って、コイル19は、種々の要望に対する適応性が高い。例えば、コイル19は、線材25が1列に巻かれて構成されていることから、コイルユニット11を薄型に構成する要望に応じることができる。コイルユニット11が薄型に構成された場合には、例えば、z方向において互いに対向する磁石9の隙間を小さくし、磁束密度を向上させて効率的に駆動力を得ることができる。なお、後述する他の実施形態に示されるように、コイル19は、適宜な厚さを有するコイルユニットの形成にも有用である。
【0065】
また、例えば、曲げコイル19Bは、連結部19bの平行部19aに対する位置ずれが線材25の径と同等であり、小さい。従って、例えば、本実施形態のように、複数の磁石9が、平行部19aの延びる方向において、複数のコイル19よりも長い場合(連結部19bが磁石9にz方向において重なる場合)においても、磁石9と平行部19aとの距離を短かくし、平行部19aを通過する磁束を多くすることができる。
【0066】
また、例えば、コイル19は、種々の製造方法に対する適応性も高い。例えば、本実施形態とは異なり、コイルの軸方向(z方向)において2列以上で線材25を巻く場合においては、1対の鍔部75によって線材25の位置を規定することはできない。すなわち、図10を参照して説明した製造方法のように、線材25を巻く段階において、連結部19bを平行部19aに対してコイル開口19hの開口方向にずらすことは不可能である。しかし、コイル19は、一列で巻かれていることから、図10を参照して説明した製造方法が可能である。
【0067】
その結果、例えば、曲げコイルのウエット巻きが実現可能になる。ウエット巻きでは、例えば、融着電線を用いてコイルを形成する方法に比較して耐熱性の高い接着剤を用いることができる。その結果、リニアモータの耐熱性を向上させることができる。なお、融着電線は、予め接着剤が塗布された線材であり、巻き型に巻かれた後にコイルが通電されることなどにより、接着剤が加熱、溶融されて、接着されるものである。
【0068】
また、曲げコイル19Bは、平コイル19Aをプレスによって屈曲させて曲げコイル19Bを製造する製造方法も好適に利用可能である。平コイルをプレスして曲げコイルを形成する場合においては、その曲げる過程において、平コイルの形状を維持している樹脂(接着剤)が破損するおそれがある。しかし、コイル19は、線材25が一列で巻かれており、段差19cの大きさは、線材25の径と同等の大きさでよいから、プレスによる変形が少なく、ひいては、樹脂の破損が抑制される。
【0069】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係るコイルユニット111を示す斜視図である。
【0070】
コイルユニット111は、第1の実施形態のコイルユニット11をz方向において互いに逆向きにして、平コイル19A側同士を重ねたものとなっている。その結果、コイルユニット111においては、平コイル19A及び曲げコイル19Bは、x方向及びy方向だけでなく、z方向においても対称(線対称)に配置されている。換言すれば、コイルユニット111の全体としての形状は、x方向及びy方向だけでなく、z方向においても対称となっている。そして、コイルユニット111は、第1の実施形態と同様に、連結部材13に固定されて可動子を構成し、固定子3と組み合わされてリニアモータを構成する(ただし、連結部材13や固定子3の具体的な寸法は第1の実施形態と異なる。)。
【0071】
このような構成によれば、図3において矢印y3で示した漏洩磁束の影響を低減できる。具体的には、以下のとおりである。漏洩磁束は駆動方向(x方向)に直交する方向(z方向)の力を生じる。一方、漏洩磁束は、一方の磁石列8と他方の磁石列8とで磁束の向きが逆向きになっている。従って、1対の磁石列8間に配置されるコイルとして平コイルのみを用いた場合においては、当該コイルはz方向において対称であるから、コイルを1対の磁石列間の中央に配置することによって漏洩磁束による力は相殺される。しかし、曲げコイルを用いた場合においては、z方向の対称性が失われ、漏洩磁束による力が相殺されない。本実施形態では、コイルユニット111全体としてz方向の対称性が維持されるようにコイル19を組み合わせるから、平コイルのみを用いた場合と同様に、漏洩磁束による力が相殺される。その結果、例えば、リニアモータ1の推力変動が抑制される。
【0072】
なお、一般には、曲げコイルは、平行部が磁石よりも長く形成され、連結部が1対の磁石列間の外側(y方向)に位置するように配置される。従って、上述したようなz方向の非対称性に起因する課題は生じない。本実施形態では、図1を参照して説明したように、連結部19bも1対の磁石列8間に位置していることから、上述した課題が生じる。なお、連結部19bが1対の磁石列8間に位置していることにより、例えば、x方向だけでなくy方向においても移動可能な可動子5を小型化することができる。
【0073】
なお、第2の実施形態において、コイルユニット11は本発明の第1コイルユニットの一例であり、コイルユニット111は本発明の第2コイルユニットの一例である。
【0074】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態のコイルユニット211を示す斜視図である。
【0075】
コイルユニット211は、第2の実施形態のコイルユニット111(ただし、具体的な寸法は異なっていてもよい。)の曲げコイル19B側(z方向の両側)に、第1の実施形態のコイルユニット11と同様のコイルユニット210(コイルユニット11と寸法が異なるだけであるが、便宜的に異なる符号を付す。)を重ねた構成となっている。コイルユニット210は、平コイル19A側をコイルユニット111(11)の曲げコイル19B側に重ねている。
【0076】
コイルユニット210は、平行部19aの延びる方向(y方向)においてコイルユニット111(11)の曲げコイル19Bの平行部19aよりも小さい。そして、コイルユニット210は、y方向においてコイルユニット111の曲げコイル19Bの1対の連結部19b間に収まるように配置されている。
【0077】
なお、別の観点では、コイルユニット211は、コイルユニット11にコイルユニット210を重ねて構成されたコイルユニット212を、コイルユニット11側同士を重ねて構成されている。
【0078】
そして、コイルユニット211は、第1の実施形態と同様に、連結部材13に固定されて可動子を構成し、固定子3と組み合わされてリニアモータを構成する(ただし、連結部材13や固定子3の具体的な寸法は第1の実施形態と異なる。)。
【0079】
このような構成によれば、コイルユニット211は、平コイル19A及び曲げコイル19Bがz方向において対称に配置されていることから、第2の実施形態と同様に、漏洩磁束の影響を低減できる。
【0080】
また、コイルユニット210が、コイルユニット11の曲げコイル19Bの1対の連結部19b間に収まるようにコイルユニット11に重ねられていることから、コイル19の数に対してコイルユニットの厚さを小さくすることができる。例えば、第2の実施形態では、z方向の負側から順に、曲げコイル19B、平コイル19A、平コイル19A、曲げコイル19Bが4重に重ねられることにより、連結部19bの位置の厚みはコイル19の4つ分の厚みとなっている。これに対して、本実施形態のコイルユニット212(211の半分)では、コイル19が4重に重ねられているが、コイルユニット210の平コイル19Aと、コイルユニット11の曲げコイル19Bの連結部19bとが厚み方向において並列に位置してることから、その厚みはコイル19の3つ分の厚みである。
【0081】
なお、第3の実施形態において、コイルユニット11は第3コイルユニットの一例であり、コイルユニット210は第4コイルユニットの一例である。
【0082】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0083】
コイル及び磁石は、いずれが固定子、可動子であってもよい。
【0084】
コイルユニットは、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、コイル3つからなるコイルユニットは、順に、平コイル、曲げコイル及び平コイルが配列されたものに限定されず、順に、曲げコイル、平コイル及び曲げコイルが配列されたものであってもよい。また、コイルの駆動方向における配列数は3つに限定されず、4以上であってもよい。すなわち、コイルユニットは、平コイルと曲げコイルとが交互に合計で4以上配列されて構成されてもよい。駆動方向に配列された3以上のコイルが第2及び第3の実施形態のように駆動方向に直交する方向に積層される場合において、その積層数も適宜に設定されてよい。
【0085】
平コイルと曲げコイルとは、連結部が平行部と同一平面上にあるか否か以外は、互いに同一の構成であることが好ましい。ただし、適宜に寸法等を互いに異ならせていてもよい。
【0086】
曲げコイルは、1対の連結部が互いに同一平面上になくてもよい。例えば、連結部は、外周縁が内周縁よりも開口方向の一方側に位置する形状であってもよい。
【0087】
コイルを構成する線材は、各部同士が接着されている必要はない。例えば、線材自体の剛性により、束ねられた状態が維持され、ひいては、コイル形状が維持されていてもよい。
【0088】
磁石列は、2つ設けられなくてもよく、1つであってもよい。また、2つの磁石列は、コイルユニットの構成によっては、互いに同一の磁極を対向させるように配置されてもよい。
【0089】
コイルの平行部のピッチは、磁石のピッチの1/3に限定されない。例えば、コイルの平行部のピッチは、磁石のピッチの2/3であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…リニアモータ、9…磁石、19A…平コイル、19B…曲げコイル、19a…平行部、19b…連結部、19h…コイル開口、25…線材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータ、リニアモータ用コイル及びリニアモータ用コイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
扁平な複数のコイルを可動方向に沿って互いに一部を重複させながら配列したリニアモータが知られている。特許文献1では、コイルの開口方向に見て概ね長方形の扁平コイルの長手方向の端部をコイルの開口方向の一方側へ曲げたコイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−234235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニアモータ用コイルは、加工容易性、耐熱性、高い占積率等が要求されるとともに、磁石との関係において、好適な寸法や配列等が要求される。従って、このような種々の要望を満たすことが可能な適応性の高いリニアモータ用コイル、当該リニアモータ用コイルを含むリニアモータ及びリニアモータ用コイルの製造方法が提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係るリニアモータは、可動方向に直交する交差方向に磁極を向けるとともに磁極の向きを交互に逆転させながら前記可動方向に配列された複数の磁石と、前記交差方向において前記複数の磁石に対してコイル開口を対向させて前記可動方向に配列され、前記複数の磁石に対して前記可動方向に移動可能な複数のコイルと、を有し、前記複数のコイルそれぞれは、コイル開口を挟んで互いに平行に延びる1対の平行部と、前記1対の平行部の端部同士を連結する1対の連結部と、を有し、前記可動方向及び前記交差方向に直交する方向に前記平行部の延びる方向を一致させて配置され、前記複数のコイルは、前記1対の平行部及び前記1対の連結部が同一平面上に位置する平コイルと、前記1対の連結部が前記1対の平行部に対してコイル軸方向の一方側に位置する曲げコイルと、を含み、前記曲げコイルは、前記平行部を前記平コイルのコイル開口内に位置させるとともに前記連結部を前記平コイルの前記連結部と前記交差方向において重複させており、前記平コイル及び前記曲げコイルそれぞれは、断面矩形の線材が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている。
【0006】
好適には、前記曲げコイルにおいて、前記連結部は、前記平行部に対して前記線材のコイル軸方向の径に相当する大きさでコイル軸方向の一方側へ位置している。
【0007】
好適には、前記複数の磁石からなる磁石列が、前記交差方向において前記複数のコイルを挟んで互いに異なる磁極を対向させるように2列設けられており、前記複数のコイルは、前記平コイル及び前記曲げコイルが前記可動方向において対称に配列された第1コイルユニット2つが、前記交差方向において前記平コイル側同士を重ね合わせるように組み合わせられた第2コイルユニットを構成している。
【0008】
好適には、前記複数のコイルは、前記平コイル及び前記曲げコイルが前記可動方向において配列された第3コイルユニット及び第4コイルユニットを構成し、前記第4コイルユニットは、前記平行部の延びる方向において前記第3コイルユニットの前記曲げコイルの前記平行部よりも小さく、前記平コイル側を前記第3コイルユニットの前記曲げコイル側に重ねて、前記平行部の延びる方向において前記第3コイルユニットの前記曲げコイルの前記1対の連結部間に収まっている。
【0009】
好適には、前記複数の磁石は、前記平行部の延びる方向において、前記複数のコイルよりも長い。
【0010】
本発明の一態様に係るリニアモータ用コイルは、コイル開口を挟んで互いに平行に延びる1対の平行部と、前記1対の平行部の端部同士を連結し、前記1対の平行部に対してコイル軸方向の一方側に位置する1対の連結部と、を有し、断面矩形の線材が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている。
【0011】
本発明の一態様に係るリニアモータ用コイルの製造方法は、軸部と、当該軸部の軸方向において当該軸部を挟んで対向する1対の鍔部とを有する巻き型の前記軸部に線材を巻き付けるリニアモータ用コイルの製造方法であって、前記1対の鍔部の互いに対向する面は、前記線材の前記軸方向における径の1倍以上2倍未満の距離で対向しているとともに、外周側の一部が内周側に対して前記軸方向の一方側に位置しており、前記線材は、断面矩形であり、矩形の2辺を前記軸部の軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺を前記軸部の径方向に平行にして巻かれる。
【発明の効果】
【0012】
上記の構成若しくは手順によれば、リニアモータ用コイルの適応性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るリニアモータの外観を示す斜視図。
【図2】図1のリニアモータの一部を取り外して示す斜視図。
【図3】図1のリニアモータの固定子を示す図1のIII−III線に対応する断面図。
【図4】図1のリニアモータの可動子を示す斜視図。
【図5】図4の可動子のコイルユニットを示す斜視図。
【図6】図5のコイルユニットの曲げコイルを示す斜視図。
【図7】図7(a)〜図7(c)は図6の曲げコイルの平面図、正面図及び側面図。
【図8】図7(a)のVIII−VIII線における断面図。
【図9】図3の領域IXに対応する領域において固定子及び可動子の断面を示す図。
【図10】図10(a)及び図10(b)は図6の曲げコイルの製造方法を説明する図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るコイルユニットを示す斜視図。
【図12】本発明の第3の実施形態に係るコイルユニットを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るリニアモータ装置51の外観を示す斜視図である。図2は、リニアモータ装置51の一部を取り外して示す斜視図である。
【0015】
リニアモータ装置51は、リニアモータ1と、リニアモータ1に電力を供給する電源装置53とを有している。
【0016】
リニアモータ1は、x方向に駆動力を発揮するリニアモータである。すなわち、リニアモータ1は、固定子3(図1)と、固定子3に対してx方向へ駆動される可動子5とを有している。なお、可動子5は、不図示の支持機構及び/又は不図示の駆動対象によって、固定子3に対してx方向に移動可能に支持されるとともに、y方向においても移動可能に支持されている。
【0017】
固定子3は、基体7(図1)と、基体7に取り付けられた磁石列8(図2)とを有している。可動子5は、コイルユニット11(図2)と、コイルユニット11に固定された連結部材13とを有している。なお、図2では、コイルユニット11は模式的に示されている。
【0018】
リニアモータ1は、コイルユニット11に通電がなされることにより、コイルユニット11と磁石列8との間において駆動力が生じ、コイルユニット11が移動する。すなわち、リニアモータ1は、いわゆる可動コイル型のリニアモータとして構成されている。そして、リニアモータ1は、基体7に連結された不図示の部材と、連結部材13の基体7からの延出部分に連結された不図示の部材とをx方向に相対移動させる。
【0019】
基体7は、1対のヨーク15と、当該1対のヨーク15を互いに連結する側壁部17とを有している。
【0020】
ヨーク15は、例えば、概ね矩形の平板状に形成されており、可動子5を挟んでz方向において互いに対向している。ヨーク15は、例えば、鉄等の磁性体により形成されている。ヨーク15の寸法及び1対のヨーク15の対向する距離は、リニアモータ1に要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよい。
【0021】
側壁部17は、例えば、可動子5の移動方向の側方において1対のヨーク15間に介在してスペーサとして機能している。側壁部17は、ネジ若しくは接着剤等の適宜な方法によりヨーク15に対して固定されている。側壁部17は、樹脂等の非磁性体により構成されていてもよいし、鉄等の磁性体により構成されていてもよい。
【0022】
磁石列8は、各ヨーク15に設けられており、合計1対設けられている。各磁石列8は、複数の磁石9によって構成されている。
【0023】
複数の磁石9は、互いに同一の構成とされている。各磁石9は、例えば、z方向を厚み方向とし、y方向に長い矩形の平板状(直方体状)に形成されている。そして、複数の磁石9は、1対のヨーク15の対向面においてx方向に一定間隔で配列されている。なお、複数の磁石9は、ネジ若しくは接着剤等の適宜な方法によりヨーク15に対して固定されている。
【0024】
図3は、固定子3を示す図1のIII−III線に対応する断面図である。ただし、磁極の向き及び磁気経路を示すために、断面のハッチングは省略している。
【0025】
各磁石列8において、複数の磁石9は、磁極をz方向に向けるとともに、磁極を交互に逆転させながらx方向に配列されている。また、1対の磁石列8は、互いに異なる磁極をz方向において対向させている。
【0026】
従って、矢印y1で示すように、可動子5側に向くN極から出た磁束は、当該N極にz方向において対向するS極に入る。また、矢印y2で示すように、ヨーク15側に向くN極から出た磁束は、ヨーク15を介して、x方向において隣接する磁石9のS極に入る。ただし、矢印y3で示すように、可動子5側に向くN極から出た磁束の一部(漏洩磁束)は、x方向において隣接する磁石9のS極に入る。
【0027】
図4は、可動子5を示す斜視図であり、図5は、コイルユニット11を示す斜視図である。
【0028】
コイルユニット11は、2つの平コイル19Aと、1つの曲げコイル19Bとを有している(なお、以下では、単に「コイル19」といい、両者を区別しないことがある。)。
【0029】
コイル19は、概ね扁平で、平面視における形状がy方向(駆動方向に直交する方向)に長い長方形(若しくは長円形)に形成されている。すなわち、コイル19は、コイル開口19hを挟んで互いに平行にy方向に延びる1対の平行部19aと、1対の平行部19aの端部同士を連結する1対の連結部19bとを有している。
【0030】
平コイル19Aは、平面状に形成されている。すなわち、平コイル19Aにおいては、1対の平行部19a及び1対の連結部19bは、同一平面上に位置している。
【0031】
一方、曲げコイル19Bにおいては、1対の連結部19bは、1対の平行部19aに対してコイル軸方向の一方側(z方向の正側)に位置している。より具体的には、例えば、連結部19bは、内周縁と外周縁とがコイル軸方向に対して直交する同一平面上に位置するように、段差19cを介して平行部19aと接続されている。平行部19aと連結部19bとのz方向の位置の差は、例えば、曲げコイル19Bの厚み(z方向)と同等である。
【0032】
平コイル19A及び曲げコイル19Bは、曲げコイル19Bを平らに変形させたと仮定したときに、各種寸法が概ね互いに同一となるように寸法が設定されている。また、コイル開口19hの短径は、コイル19の幅(平行部19a等の内周縁から外周縁までの大きさ)の概ね2倍となるように設定されている。
【0033】
コイルユニット11においては、平コイル19Aはx方向において互いに隣接して配列される。そして、曲げコイル19Bは、各平コイル19Aのコイル開口19h内に一の平行部19aを配置するように平コイル19Aに重ねられる。従って、3つのコイル19の平行部19aは、同一平面上においてx方向に配列される。より具体的には、2つの平コイル19Aの2つの平行部19aが曲げコイル19Bのコイル開口19hに概ね嵌合し、4本の平行部19aがx方向に隣接して配列されるとともに、そのx方向の両側に平行部19aの1本分の幅で離れて各1本の平行部19aが配列される。
【0034】
このとき、曲げコイル19Bでは、連結部19bは、平行部19aに対してコイル軸方向の一方側に位置していることから、曲げコイル19Bの連結部19bは、曲げコイル19Bの平行部19aを平コイル19Aのコイル開口19h内に配置する妨げとならない。なお、3つのコイル19の平行部19aを同一平面上に位置させたときに、曲げコイル19Bの連結部19bは、平コイル19Aの連結部19bに当接してもよいし、当接しなくてもよく、好適には当接する。
【0035】
平コイル19A及び曲げコイル19Bは、x方向において交互に且つz方向の上下関係が一定とされて配列されれば、適宜な数で配列されてよい。本実施形態では、3つのコイル19が配列されていることから、平コイル19A及び曲げコイル19Bはx方向において対称(線対称)に配列されている。換言すれば、コイルユニット11は、全体としてx方向及びy方向に対称な形状となっている。
【0036】
なお、複数のコイル19は、接着剤等の適宜な方法によって互いに固定されていてもよいし、連結部材13によって互いに固定されていてもよい。
【0037】
連結部材13は、コイルユニット11の平行部19aにより構成された平面状部分を挟み込む1対の板状部材21と、1対の板状部材21間に介在する介在部材23とを有している。
【0038】
板状部材21は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により形成され、介在部材23は、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)により形成されている。これらは、ネジ若しくは接着剤等の適宜な方法により互いに固定されている。また、板状部材21とコイルユニット11との間には、例えば、GFRP等からなる不図示の絶縁シートが介在している。
【0039】
このような連結部材13の構造及び材料により、強度を確保しつつ可動子5の厚みを極力薄くして、z方向において対向する磁石9間の距離を短くし、コイルユニット11を通過する磁束密度を向上させることができる。
【0040】
図6は、曲げコイル19Bを示す斜視図である。図7(a)〜図7(c)は、曲げコイル19Bの平面図、正面図及び側面図である。
【0041】
曲げコイル19Bは、1本の線材25が内周側から外周側へ巻かれて行くことにより形成されている。より具体的には、線材25は、コイル軸方向(z方向)において1列に且つコイル径方向(コイル軸方向に直交する放射方向)において多層に巻かれている。従って、曲げコイル19Bの厚みは、線材25のコイル軸方向の径と同等である。また、曲げコイル19Bの幅は、線材25のコイル径方向の径×巻き数である。連結部19bの平行部19aに対するずれ(段差19c)の大きさは、線材25のコイル軸方向の径と同等である。
【0042】
図8は、図7(a)のVIII−VIII線における断面図である。
【0043】
線材25は、断面形状が矩形のいわゆる平角線により構成されている。そして、矩形の2辺がコイルの軸方向(z方向)に平行に且つ他の2辺がコイルの径方向に平行になるように巻かれている。平角線の断面形状は、正方形であってもよいし、長方形であってもよい。断面形状が長方形である場合、線材25は、好適には、長辺がコイルの軸方向に平行になるように巻かれる。
【0044】
線材25の断面形状の寸法は、要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよいが、一例として、0.5mm×1.0mmである。また、線材25の巻き数も、要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよいが、一例として、15回であり、曲げコイル19Bの幅は、一例として、0.5×15=7.5mmである。
【0045】
線材25は、特に図示しないが、例えば、導電性材料からなる線材が絶縁性材料により被覆されて構成されている。導電性材料は、例えば、銅であり、絶縁性材料は、例えば、樹脂である。線材25のコイル径方向において互いに隣接する部分同士は、絶縁性材料が直接若しくは接着剤を介して間接に互いに接合されることにより固定されている。
【0046】
図6〜図8では、曲げコイル19Bについて説明したが、平コイル19Aも、平行部19aと連結部19bとが同一平面上に位置していることを除いて、曲げコイル19Bと同様の構成である。すなわち、平コイル19Aも、断面矩形の線材25が一列且つ多層に巻かれることによって構成されている。
【0047】
図9は、図3の領域IXに対応する領域において固定子3及び可動子5の断面を示す図である。
【0048】
平行部19aのピッチP2は、磁石9のピッチP1の1/3となっている。なお、ピッチP1は、一の磁石9のx方向の幅と、x方向に隣接する磁石9間の一の間隔との合計である。また、ピッチP2は、平行部19aの1本分の幅と、互いに隣接する平行部19a(コイルユニット11のx方向中央側の4本の平行部19a)における一の間隔との合計である。なお、コイルユニット11の両側の平行部19aも、全てのコイル開口19hに2本の平行部19aが位置していると仮定すると、ピッチP2で配置されている。
【0049】
図1に示した電源装置53は、3つのコイル19に対して、3相交流電力を供給する。3相交流電力は、2π/3ずつ位相がずれた、U相、V相及びW相の交流電力からなるものである。例えば、交流電流が正弦関数で表わされるものであるとすると、U相、V相及びW相の交流電流は、sin(ωt)、sin(ωt−2π/3)、sin(ωt−4π/3)と表わされる。
【0050】
より具体的には、コイルユニット11のx方向中央側において互いに隣接して配列された平行部19aには、その並び順に、U相、−W相、V相の交流電力が供給される。なお、本願では、平行部19aに着目しているときは、U相、V相及びW相の正負は、コイル19毎ではなく、平行部19a毎に定義されるものとする。例えば、図9の例では、曲げコイル19BにはW相の交流電力が供給されているが、1対の平行部19a間においては電流の向きがy方向において逆になるから、一方の平行部19aについてはW相、他方の平行部19aについては−W相と表わされている。なお、電流の向きの正負とy方向の正負との相対関係は、U相、V相及びW相間において統一されていれば、適宜に設定されてよい。
【0051】
また、電力の初期位相は任意に設定可能であるから、x方向に隣接して配列された平行部19aに対して、その並び順にU相、−W相及びV相の交流電力を供給するという場合には、3つの平行部19aに対して、その並び順に、「−W相、V相及びU相」、「V相、U相及び−W相」、「−U相、W相及び−V相」、「W相、−V相及び−U相」又は「−V相、−U相及びW相」の交流電力を供給する場合が含まれる。
【0052】
また、コイル19は、電力が供給されていない状態においても(電源装置53が接続されていないリニアモータ1単体でも)、いずれの相の電力が供給されるか特定可能である。例えば、官公庁、規格団体若しくは企業等の各種団体においては、各配線に割り当てられる交流電力の相を各配線の被膜の色により識別するために、相と色との相対関係を仕様書若しくは規格により規定している。従って、リニアモータ1から延出している不図示の配線の被膜の色から、コイル19に供給される交流電力の相を特定可能である。
【0053】
平行部19aに電流が流れると、図3において矢印y1で示したz方向の磁束中を、y方向に電流が流れることになるから、フレミングの左手の法則に従って、x方向の駆動力が生じる。そして、コイルユニット11は、交流電力の半周期において複数の磁石9のピッチP1を移動する。図9の例では、コイルユニット11は、x方向の正側へ移動する。
【0054】
なお、リニアモータ1は、x方向の双方向に駆動可能であり、コイルユニット11がx方向の負側に移動するときには、図9の例とは逆に、x方向の正側から負側へ、U相、−W相、V相の交流電力が供給される。換言すれば、本願においてピッチP1で配列された複数の平行部19aに対して、その並び順にU相、−W相及びV相の電力が供給されるというときの並び順は、x方向のいずれ側からの並び順であってもよい。
【0055】
図10(a)は、曲げコイル19Bの製造に係る巻き型71の斜視図であり、図10(b)は、図10(a)のXb−Xb線における断面図である。
【0056】
巻き型71は、軸部73(図10(b))と、当該軸部73の軸方向(回転軸CA方向)において軸部73を挟んで対向する1対の鍔部75とを有している。
【0057】
軸部73の、回転軸CAに直交する断面形状は、曲げコイル19Bのコイル開口19hと同一の形状である。鍔部75の、軸部73から外側へ広がるフランジの形状は、例えば、曲げコイル19Bの形状と概ね同様である。すなわち、平面視において概ね長方形に形成されるとともに、長手方向の端部(外周側の一部)は、中央側に対して回転軸CAの一方側へ位置している。ただし、フランジの外縁位置は、曲げコイル19Bの外縁位置よりも外側である。また、1対の鍔部75の互いに対向する面間の距離tは、線材25のコイル軸方向(z方向)の径の1倍以上2倍未満(好ましくは1.1〜1.3倍程度)に設定されている。
【0058】
そして、不図示のボビンから引き出された線材25の一端を軸部73に固定し、巻き型71を回転軸CA回りに回転させ、線材25を軸部73に巻きつけていく。このとき、線材25は、断面の矩形の2辺が軸部73の軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺が軸部73の径方向に平行になるように巻かれて行く。
【0059】
また、線材25は、液状の接着剤が外周面に供給された状態で巻かれて行く。すなわち、線材25は、ウエット巻きされる。接着剤は、例えば、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂である。そして、接着剤は、線材25が巻かれているときに及び/又は巻き終わった後に、室温により若しくは加熱により硬化し、線材25の多層に重なった部分同士を固定し、線材25を巻かれた状態に維持する。なお、線材25は、当該接着剤を含んで定義されてもよい。
【0060】
線材25は、回転軸CA方向の位置が鍔部75に規制されていることから、軸部73の長手方向の両端側を周回するときは、他の部分を周回するときよりも回転軸CA方向の一方側に位置する。これにより、連結部19bは、平行部19aよりもコイル軸方向の一方側へ位置する。
【0061】
線材25が所定の回数巻かれ且つ接着剤が硬化すると、一の鍔部75が軸部73から取り外されるなどし、曲げコイル19Bは軸部73から抜き取られる。
【0062】
なお、曲げコイル19Bについて説明したが、平コイル19Aも同様にして形成される。ただし、平コイル19A用の巻き型は、鍔部75が平坦に形成されている。
【0063】
以上の実施形態では、リニアモータ1は、可動方向(x方向)に直交する交差方向(z方向)に磁極を向けるとともに磁極の向きを交互に逆転させながらx方向に配列された複数の磁石9と、z方向において複数の磁石9に対してコイル開口19hを対向させてx方向に配列され、複数の磁石9に対してx方向に移動可能な複数のコイル19とを有している。複数のコイル19それぞれは、コイル開口19hを挟んで互いに平行に延びる1対の平行部19aと、1対の平行部19aの端部同士を連結する1対の連結部19bと、を有し、x方向及びz方向に直交するy方向に1対の平行部19aの延びる方向を一致させて配置されている。複数のコイル19は、1対の平行部19a及び1対の連結部19bが同一平面上に位置する平コイル19Aと、1対の連結部19bが1対の平行部19aに対してコイル軸方向(z方向)の一方側に位置する曲げコイル19Bと、を含む。曲げコイル19Bは、平行部19aを平コイル19Aのコイル開口19hに位置させるとともに連結部19bを平コイル19Aの連結部19bとz方向において重複させている。平コイル19A及び曲げコイル19Bそれぞれは、断面矩形の線材25が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている。
【0064】
従って、コイル19は、種々の要望に対する適応性が高い。例えば、コイル19は、線材25が1列に巻かれて構成されていることから、コイルユニット11を薄型に構成する要望に応じることができる。コイルユニット11が薄型に構成された場合には、例えば、z方向において互いに対向する磁石9の隙間を小さくし、磁束密度を向上させて効率的に駆動力を得ることができる。なお、後述する他の実施形態に示されるように、コイル19は、適宜な厚さを有するコイルユニットの形成にも有用である。
【0065】
また、例えば、曲げコイル19Bは、連結部19bの平行部19aに対する位置ずれが線材25の径と同等であり、小さい。従って、例えば、本実施形態のように、複数の磁石9が、平行部19aの延びる方向において、複数のコイル19よりも長い場合(連結部19bが磁石9にz方向において重なる場合)においても、磁石9と平行部19aとの距離を短かくし、平行部19aを通過する磁束を多くすることができる。
【0066】
また、例えば、コイル19は、種々の製造方法に対する適応性も高い。例えば、本実施形態とは異なり、コイルの軸方向(z方向)において2列以上で線材25を巻く場合においては、1対の鍔部75によって線材25の位置を規定することはできない。すなわち、図10を参照して説明した製造方法のように、線材25を巻く段階において、連結部19bを平行部19aに対してコイル開口19hの開口方向にずらすことは不可能である。しかし、コイル19は、一列で巻かれていることから、図10を参照して説明した製造方法が可能である。
【0067】
その結果、例えば、曲げコイルのウエット巻きが実現可能になる。ウエット巻きでは、例えば、融着電線を用いてコイルを形成する方法に比較して耐熱性の高い接着剤を用いることができる。その結果、リニアモータの耐熱性を向上させることができる。なお、融着電線は、予め接着剤が塗布された線材であり、巻き型に巻かれた後にコイルが通電されることなどにより、接着剤が加熱、溶融されて、接着されるものである。
【0068】
また、曲げコイル19Bは、平コイル19Aをプレスによって屈曲させて曲げコイル19Bを製造する製造方法も好適に利用可能である。平コイルをプレスして曲げコイルを形成する場合においては、その曲げる過程において、平コイルの形状を維持している樹脂(接着剤)が破損するおそれがある。しかし、コイル19は、線材25が一列で巻かれており、段差19cの大きさは、線材25の径と同等の大きさでよいから、プレスによる変形が少なく、ひいては、樹脂の破損が抑制される。
【0069】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係るコイルユニット111を示す斜視図である。
【0070】
コイルユニット111は、第1の実施形態のコイルユニット11をz方向において互いに逆向きにして、平コイル19A側同士を重ねたものとなっている。その結果、コイルユニット111においては、平コイル19A及び曲げコイル19Bは、x方向及びy方向だけでなく、z方向においても対称(線対称)に配置されている。換言すれば、コイルユニット111の全体としての形状は、x方向及びy方向だけでなく、z方向においても対称となっている。そして、コイルユニット111は、第1の実施形態と同様に、連結部材13に固定されて可動子を構成し、固定子3と組み合わされてリニアモータを構成する(ただし、連結部材13や固定子3の具体的な寸法は第1の実施形態と異なる。)。
【0071】
このような構成によれば、図3において矢印y3で示した漏洩磁束の影響を低減できる。具体的には、以下のとおりである。漏洩磁束は駆動方向(x方向)に直交する方向(z方向)の力を生じる。一方、漏洩磁束は、一方の磁石列8と他方の磁石列8とで磁束の向きが逆向きになっている。従って、1対の磁石列8間に配置されるコイルとして平コイルのみを用いた場合においては、当該コイルはz方向において対称であるから、コイルを1対の磁石列間の中央に配置することによって漏洩磁束による力は相殺される。しかし、曲げコイルを用いた場合においては、z方向の対称性が失われ、漏洩磁束による力が相殺されない。本実施形態では、コイルユニット111全体としてz方向の対称性が維持されるようにコイル19を組み合わせるから、平コイルのみを用いた場合と同様に、漏洩磁束による力が相殺される。その結果、例えば、リニアモータ1の推力変動が抑制される。
【0072】
なお、一般には、曲げコイルは、平行部が磁石よりも長く形成され、連結部が1対の磁石列間の外側(y方向)に位置するように配置される。従って、上述したようなz方向の非対称性に起因する課題は生じない。本実施形態では、図1を参照して説明したように、連結部19bも1対の磁石列8間に位置していることから、上述した課題が生じる。なお、連結部19bが1対の磁石列8間に位置していることにより、例えば、x方向だけでなくy方向においても移動可能な可動子5を小型化することができる。
【0073】
なお、第2の実施形態において、コイルユニット11は本発明の第1コイルユニットの一例であり、コイルユニット111は本発明の第2コイルユニットの一例である。
【0074】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態のコイルユニット211を示す斜視図である。
【0075】
コイルユニット211は、第2の実施形態のコイルユニット111(ただし、具体的な寸法は異なっていてもよい。)の曲げコイル19B側(z方向の両側)に、第1の実施形態のコイルユニット11と同様のコイルユニット210(コイルユニット11と寸法が異なるだけであるが、便宜的に異なる符号を付す。)を重ねた構成となっている。コイルユニット210は、平コイル19A側をコイルユニット111(11)の曲げコイル19B側に重ねている。
【0076】
コイルユニット210は、平行部19aの延びる方向(y方向)においてコイルユニット111(11)の曲げコイル19Bの平行部19aよりも小さい。そして、コイルユニット210は、y方向においてコイルユニット111の曲げコイル19Bの1対の連結部19b間に収まるように配置されている。
【0077】
なお、別の観点では、コイルユニット211は、コイルユニット11にコイルユニット210を重ねて構成されたコイルユニット212を、コイルユニット11側同士を重ねて構成されている。
【0078】
そして、コイルユニット211は、第1の実施形態と同様に、連結部材13に固定されて可動子を構成し、固定子3と組み合わされてリニアモータを構成する(ただし、連結部材13や固定子3の具体的な寸法は第1の実施形態と異なる。)。
【0079】
このような構成によれば、コイルユニット211は、平コイル19A及び曲げコイル19Bがz方向において対称に配置されていることから、第2の実施形態と同様に、漏洩磁束の影響を低減できる。
【0080】
また、コイルユニット210が、コイルユニット11の曲げコイル19Bの1対の連結部19b間に収まるようにコイルユニット11に重ねられていることから、コイル19の数に対してコイルユニットの厚さを小さくすることができる。例えば、第2の実施形態では、z方向の負側から順に、曲げコイル19B、平コイル19A、平コイル19A、曲げコイル19Bが4重に重ねられることにより、連結部19bの位置の厚みはコイル19の4つ分の厚みとなっている。これに対して、本実施形態のコイルユニット212(211の半分)では、コイル19が4重に重ねられているが、コイルユニット210の平コイル19Aと、コイルユニット11の曲げコイル19Bの連結部19bとが厚み方向において並列に位置してることから、その厚みはコイル19の3つ分の厚みである。
【0081】
なお、第3の実施形態において、コイルユニット11は第3コイルユニットの一例であり、コイルユニット210は第4コイルユニットの一例である。
【0082】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0083】
コイル及び磁石は、いずれが固定子、可動子であってもよい。
【0084】
コイルユニットは、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、コイル3つからなるコイルユニットは、順に、平コイル、曲げコイル及び平コイルが配列されたものに限定されず、順に、曲げコイル、平コイル及び曲げコイルが配列されたものであってもよい。また、コイルの駆動方向における配列数は3つに限定されず、4以上であってもよい。すなわち、コイルユニットは、平コイルと曲げコイルとが交互に合計で4以上配列されて構成されてもよい。駆動方向に配列された3以上のコイルが第2及び第3の実施形態のように駆動方向に直交する方向に積層される場合において、その積層数も適宜に設定されてよい。
【0085】
平コイルと曲げコイルとは、連結部が平行部と同一平面上にあるか否か以外は、互いに同一の構成であることが好ましい。ただし、適宜に寸法等を互いに異ならせていてもよい。
【0086】
曲げコイルは、1対の連結部が互いに同一平面上になくてもよい。例えば、連結部は、外周縁が内周縁よりも開口方向の一方側に位置する形状であってもよい。
【0087】
コイルを構成する線材は、各部同士が接着されている必要はない。例えば、線材自体の剛性により、束ねられた状態が維持され、ひいては、コイル形状が維持されていてもよい。
【0088】
磁石列は、2つ設けられなくてもよく、1つであってもよい。また、2つの磁石列は、コイルユニットの構成によっては、互いに同一の磁極を対向させるように配置されてもよい。
【0089】
コイルの平行部のピッチは、磁石のピッチの1/3に限定されない。例えば、コイルの平行部のピッチは、磁石のピッチの2/3であってもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…リニアモータ、9…磁石、19A…平コイル、19B…曲げコイル、19a…平行部、19b…連結部、19h…コイル開口、25…線材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動方向に直交する交差方向に磁極を向けるとともに磁極の向きを交互に逆転させながら前記可動方向に配列された複数の磁石と、
前記交差方向において前記複数の磁石に対してコイル開口を対向させて前記可動方向に配列され、前記複数の磁石に対して前記可動方向に移動可能な複数のコイルと、
を有し、
前記複数のコイルそれぞれは、
コイル開口を挟んで互いに平行に延びる1対の平行部と、
前記1対の平行部の端部同士を連結する1対の連結部と、
を有し、
前記可動方向及び前記交差方向に直交する方向に前記平行部の延びる方向を一致させて配置され、
前記複数のコイルは、
前記1対の平行部及び前記1対の連結部が同一平面上に位置する平コイルと、
前記1対の連結部が前記1対の平行部に対してコイル軸方向の一方側に位置する曲げコイルと、
を含み、
前記曲げコイルは、前記平行部を前記平コイルのコイル開口内に位置させるとともに前記連結部を前記平コイルの前記連結部と前記交差方向において重複させており、
前記平コイル及び前記曲げコイルそれぞれは、断面矩形の線材が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている
リニアモータ。
【請求項2】
前記曲げコイルにおいて、前記連結部は、前記平行部に対して前記線材のコイル軸方向の径に相当する大きさでコイル軸方向の一方側へ位置している
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記複数の磁石からなる磁石列が、前記交差方向において前記複数のコイルを挟んで互いに異なる磁極を対向させるように2列設けられており、
前記複数のコイルは、前記平コイル及び前記曲げコイルが前記可動方向において対称に配列された第1コイルユニット2つが、前記交差方向において前記平コイル側同士を重ね合わせるように組み合わせられた第2コイルユニットを構成している
請求項1又は2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記複数のコイルは、前記平コイル及び前記曲げコイルが前記可動方向において配列された第3コイルユニット及び第4コイルユニットを構成し、
前記第4コイルユニットは、前記平行部の延びる方向において前記第3コイルユニットの前記曲げコイルの前記平行部よりも小さく、前記平コイル側を前記第3コイルユニットの前記曲げコイル側に重ねて、前記平行部の延びる方向において前記第3コイルユニットの前記曲げコイルの前記1対の連結部間に収まっている
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記複数の磁石は、前記平行部の延びる方向において、前記複数のコイルよりも長い
請求項1〜4のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項6】
リニアモータ用コイルであって、
コイル開口を挟んで互いに平行に延びる1対の平行部と、
前記1対の平行部の端部同士を連結し、前記1対の平行部に対してコイル軸方向の一方側に位置する1対の連結部と、
を有し、
断面矩形の線材が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている
リニアモータ用コイル。
【請求項7】
軸部と、当該軸部の軸方向において当該軸部を挟んで対向する1対の鍔部とを有する巻き型の前記軸部に線材を巻き付けるリニアモータ用コイルの製造方法であって、
前記1対の鍔部の互いに対向する面は、前記線材の前記軸方向における径の1倍以上2倍未満の距離で対向しているとともに、外周側の一部が内周側に対して前記軸方向の一方側に位置しており、
前記線材は、断面矩形であり、矩形の2辺を前記軸部の軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺を前記軸部の径方向に平行にして巻かれる
リニアモータ用コイルの製造方法。
【請求項1】
可動方向に直交する交差方向に磁極を向けるとともに磁極の向きを交互に逆転させながら前記可動方向に配列された複数の磁石と、
前記交差方向において前記複数の磁石に対してコイル開口を対向させて前記可動方向に配列され、前記複数の磁石に対して前記可動方向に移動可能な複数のコイルと、
を有し、
前記複数のコイルそれぞれは、
コイル開口を挟んで互いに平行に延びる1対の平行部と、
前記1対の平行部の端部同士を連結する1対の連結部と、
を有し、
前記可動方向及び前記交差方向に直交する方向に前記平行部の延びる方向を一致させて配置され、
前記複数のコイルは、
前記1対の平行部及び前記1対の連結部が同一平面上に位置する平コイルと、
前記1対の連結部が前記1対の平行部に対してコイル軸方向の一方側に位置する曲げコイルと、
を含み、
前記曲げコイルは、前記平行部を前記平コイルのコイル開口内に位置させるとともに前記連結部を前記平コイルの前記連結部と前記交差方向において重複させており、
前記平コイル及び前記曲げコイルそれぞれは、断面矩形の線材が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている
リニアモータ。
【請求項2】
前記曲げコイルにおいて、前記連結部は、前記平行部に対して前記線材のコイル軸方向の径に相当する大きさでコイル軸方向の一方側へ位置している
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記複数の磁石からなる磁石列が、前記交差方向において前記複数のコイルを挟んで互いに異なる磁極を対向させるように2列設けられており、
前記複数のコイルは、前記平コイル及び前記曲げコイルが前記可動方向において対称に配列された第1コイルユニット2つが、前記交差方向において前記平コイル側同士を重ね合わせるように組み合わせられた第2コイルユニットを構成している
請求項1又は2に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記複数のコイルは、前記平コイル及び前記曲げコイルが前記可動方向において配列された第3コイルユニット及び第4コイルユニットを構成し、
前記第4コイルユニットは、前記平行部の延びる方向において前記第3コイルユニットの前記曲げコイルの前記平行部よりも小さく、前記平コイル側を前記第3コイルユニットの前記曲げコイル側に重ねて、前記平行部の延びる方向において前記第3コイルユニットの前記曲げコイルの前記1対の連結部間に収まっている
請求項1〜3のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記複数の磁石は、前記平行部の延びる方向において、前記複数のコイルよりも長い
請求項1〜4のいずれか1項に記載のリニアモータ。
【請求項6】
リニアモータ用コイルであって、
コイル開口を挟んで互いに平行に延びる1対の平行部と、
前記1対の平行部の端部同士を連結し、前記1対の平行部に対してコイル軸方向の一方側に位置する1対の連結部と、
を有し、
断面矩形の線材が、矩形の2辺がコイル軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺がコイル径方向に平行になるように、コイル軸方向において一列に且つコイル径方向において多層に巻かれることによって構成されている
リニアモータ用コイル。
【請求項7】
軸部と、当該軸部の軸方向において当該軸部を挟んで対向する1対の鍔部とを有する巻き型の前記軸部に線材を巻き付けるリニアモータ用コイルの製造方法であって、
前記1対の鍔部の互いに対向する面は、前記線材の前記軸方向における径の1倍以上2倍未満の距離で対向しているとともに、外周側の一部が内周側に対して前記軸方向の一方側に位置しており、
前記線材は、断面矩形であり、矩形の2辺を前記軸部の軸方向に平行に且つ矩形の他の2辺を前記軸部の径方向に平行にして巻かれる
リニアモータ用コイルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−46500(P2013−46500A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182944(P2011−182944)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
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