説明

リニアモータ制御装置

【課題】電力変換器の切替え時の出力電圧振幅制限に伴う推力リプルを低減させることができるリニアモータ制御装置を提供する。
【解決手段】固定子巻線が界磁可動子の移動方向に複数区分されたリニアモータを、位置センサが検出する界磁可動子位置に基づいて区分毎に備えられた電力変換器を切替えて、界磁可動子を移動させるように固定子巻線に電力を供給するリニアモータ制御装置であって、電力変換器を切替える際、電力変換器の出力電圧制限または出力電流応答遅れを防止するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定子巻線が界磁可動子の移動方向に複数区分されたリニアモータを、区分毎に備えられた電力変換器を切替えて界磁可動子を移動させるように制御するリニアモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の従来のリニアモータ制御装置は、走行路は移動子の移動方向に区分された各区間に夫々独立に周波数制御されるインバータにより駆動される固定子巻線を配置してなり、各インバータは、移動子が隣接区間の境界を通過する際に、その後段区間の固定子巻線の電圧位相及び周波数が前段区間のそれと同一になるように制御され、固定子巻線を配置してなる走行路を移動中の永久磁石製の移動子が、異なる速度区間内に突入したときに受けるショックを緩和する、ことが記載されている(例えば、特許文献1参照)。
また、第2の従来のリニアモータ制御装置は、センサレス制御を行なうために、位置速度推定器が誘起電圧推定を行なう、ことが記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−229092号公報(第2−3頁、図1)
【特許文献2】特開2006−087178号公報(第4−5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リニアモータは、一般的に、長さ方向(界磁可動子移動方向)に両端の存在、または有限長さに起因する端効果という特異な現象が発生する。この端効果により、界磁可動子が移動する際、界磁可動子端部の相間電圧不平衡に起因する推力リプルが発生し(特に、誘起電圧の影響が大きくなる高速運転時に大きく発生)、一定速制御等の高精度を追求することができないという問題があった。
第1の従来のリニアモータ制御装置は、界磁可動子が移動する際の切替えショックを緩和する手段のみが記載されており、依然、端効果による界磁可動子端部の相間電圧不平衡に起因する推力リプルが発生するという問題があった。
また、第2の従来のリニアモータ制御装置は、記載された誘起電圧推定方法が、通電に伴う固定子巻線の温度変化やセンサ測定誤差を考慮していないため、例えばリニアモータのモデルと真値に誤差が生じた場合に誘起電圧推定精度が大きく劣化する恐れがあるという問題があった。
更に、仮に、第1の従来のリニアモータ制御装置に記載の技術に、第2の従来のリニアモータ制御装置の記載の技術を適用したとしても、誘起電圧を正確に推定できないために、端効果による界磁可動子端部の相間電圧不平衡を十分に補償することができず、結果として推力リプルの発生は解決できないという問題もあった。
【0005】
また更に、第1および第2の従来のリニアモータ制御装置は、電力変換器の出力可能な電圧範囲について考慮していないためおらず、例えば高推力指令時または高速移動時における電力変換器の切替え時に生じる推力リプルを防ぐことができない恐れがあるといった問題もあった。すなわち、電力変換器の出力可能な電圧は、電力変換器の直流母線電圧(例えば、入力される3相交流電源を整流して得られる直流電圧)に依存して有限であるため、入力される電流指令の急激な変化に対して、電力変換器の出力電圧振幅が制限されると、電力変換器の出力する電流の応答が、電流指令に対して通常よりも大きく遅れてしまう可能性がある。通電する電力変換器を切替える際に、このような電圧制限に起因して各電力変換器の出力電流の応答に不揃いが生じると、切替えの前後で本来一定となるべき出力電流の和が一定にならず、推力リプルが生じる恐れがある。特に、電流指令の急激な変化が生じる高推力指令時、または誘起電圧外乱によって大きな電圧出力を必要とする高速移動時では、このような電圧制限が発生しやすいため、推力リプルが生じる可能性も高い。このような推力リプルが生じると、リニアモータ制御装置における切替えを含む界磁可動子の動作パターンにおいて、一定速制御等の高精度化を追及できない恐れがある。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、固定子巻線が界磁可動子の移動方向に複数区分されたリニアモータを、区分毎に備えられた電力変換器を切替えて界磁可動子を移動させるように制御するリニアモータ制御装置であって、切替え時の出力電圧振幅制限に伴う推力リプルを低減させることができるリニアモータ制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願における代表的な発明は、固定子巻線が界磁可動子の移動方向に複数区分されたリニアモータを、位置センサが検出する界磁可動子位置に基づいて区分毎に備えられた電力変換器を切替えて、界磁可動子を移動させるように固定子巻線に電力を供給するリニアモータ制御装置であって、通電する電力変換器を切替える際、前記電力変換器の出力する電圧指令および電流の予測演算と、切替時の積分制御器の初期値操作によって、切替える電力変換器の出力電圧制限が発生せず、かつそれらの出力する電流の総和が一定に保たれるように構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本願における代表的な発明によれば、通電する電力変換器を切替える際の推力リプルを補償することができる。また、補償によって不用意に電流応答を遅延させることがなく、切替を速やかに完了できる。また更に、予測演算を用いることによって、電力変換器間、または上位制御器と電力変換器間の高速な通信を必要としない簡単な構成によって実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態におけるリニアモータおよびリニアモータ制御装置の構成を示す概略図
【図2】本発明の第1実施例に係るリニアモータ制御装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の第1実施例に係る電力変換器内の電流制御部の構成を示すブロック図
【図4】固定子巻線103の誘起電圧の時間変化
【図5】固定子巻線104の誘起電圧の時間変化
【図6】固定子巻線105の誘起電圧の時間変化
【図7】固定子巻線106の誘起電圧の時間変化
【図8】固定子巻線107の誘起電圧の時間変化
【図9】固定子巻線108の誘起電圧の時間変化
【図10】本発明の第1実施例に係る誘起電圧補償前の界磁可動子推力を示す図
【図11】本発明の第1実施例に係る誘起電圧補償後の界磁可動子推力を示す図
【図12】本発明の第2実施例に係るリニアモータ制御装置の構成を示すブロック図
【図13】本発明の第2実施例に係る電力変換器内の電流制御部の構成を示すブロック図
【図14】本発明の第2実施例に係るq軸電流制御器およびリニアモータモデルの構成を示すブロック図
【図15】電圧補償後の固定子巻線104と固定子巻線108に流れる電流の時間変化
【図16】電圧補償後の固定子巻線104と固定子巻線108に流れる電流の和の時間変化
【図17】電圧補償前の固定子巻線104と固定子巻線108に流れる電流の時間変化
【図18】電圧補償前の固定子巻線104と固定子巻線108に流れる電流の和の時間変化
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の第1の実施形態について、以下説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるリニアモータおよびリニアモータ制御装置の構成を示す概略図である。図において、リニアモータ101は、界磁可動子102と、界磁可動子102の移動方向に複数区分配置された固定子巻線103〜108とを備える。また、本実施形態におけるリニアモータ制御装置は、複数の固定子巻線103〜108に対応した複数の電力変換器109〜114と、電力変換器109〜114に対してそれぞれに電流指令等を出力する制御部115とを備える。
【0012】
本実施形態におけるリニアモータ制御装置は、複数に分割して連続に配置された6つの固定子巻線103〜108に対し、1つの界磁可動子102が移動するリニアモータ101を制御するものである。また、界磁可動子102の現在位置に応じて、6つの固定子巻線103〜108に対して6つの電力変換器109〜114から駆動電力が供給される。
なお、簡単のために、本実施形態では、常に4つの固定子巻線に駆動電力を供給して推力を発生させるように、制御部115が電力変換器を切替えるものとし、例えば、界磁可動子102が、固定子巻線103〜106の位置に対向する場合は固定子巻線103〜106、固定子巻線104〜107の位置に対向する場合は固定子巻線104〜107、固定子巻線105〜108の位置に対向する場合は固定子巻線105〜108、に駆動電力を供給するものとする。
【0013】
図2は、リニアモータ制御装置の構成を示すブロック図である。図において、リニアモータ制御装置における制御部115が、図示しない上位装置からの速度指令w*および界磁可動子102の現在位置を検出する位置センサ201からの界磁可動子位置x、ならびに各電力変換器109〜114からの電流検出値idn,iqnに基づいて、誘起電圧補償量Δedn,Δeqn、q軸電流指令値iqnを制御演算して各電力変換器109〜114に分配出力する。なお、添え字nは、複数備える各電力変換器の台数に対応するものであり、本実施形態では、n=1,2,3,4,5,6となる。また、添え字*は指令値を表すものである。
なお図示はしていないが、制御部115はd軸電流指令値idnを制御演算し、d軸電流指令値idnを各電力変換器109〜114に分配出力する機能も備える。
【0014】
速度演算器202は、位置センサ201からの界磁可動子位置xを入力して界磁可動子速度wを、例えば、界磁可動子位置xを時間差分して演算する。速度制御器203は、図示しない上位装置からの速度指令w*と界磁可動子速度wとの偏差を入力して推力指令Fを、例えば、比例積分制御演算して演算する。
推力分配器210は、推力指令Fと界磁可動子位置xとを入力してq軸電流指令値iqnを、例えば、ベクトル制御演算して各電力変換器109〜114に分配出力する。ここで、推力指令Fの分配は、分配の前後で推力指令の総和が変化しないものとし、例えば4つの固定子巻線に対して推力指令Fの1/4ずつを分配出力する。
誘起電圧補償器211は、界磁可動子位置xと各電力変換器109〜114からの電流検出値idn,iqnとを入力して、後述する演算方法により誘起電圧補償量Δedn,Δeqnを演算して、各電力変換器109〜114に出力する。
【0015】
図3は、電力変換器内の電流制御部の構成を示すブロック図である。図において、各電力変換器109〜114内における電流制御部は、d軸電流制御器302、q軸電流制御器303、2相3相変換器304、3相2相変換器305、PWM変調器306、その他加減算器を備える。この電流制御部では、制御部115からの各信号に基づいて、所謂ベクトル制御演算を行ない、リニアモータの各固定子巻線に電力を供給する。
【0016】
以下、本実施形態の誘起電圧補償器211における誘起電圧補償量Δedn,Δeqnの演算方法を説明する。なお、本実施形態において、制御対象とするリニアモータはベクトル制御によって制御されている場合とするが、3相交流制御によって制御されている場合もその効果は同じである。
【0017】
まず、界磁可動子102が移動する状態において、界磁可動子102が跨る全ての固定子巻線の誘起電圧を推定する(誘起電圧推定値edn,eqn)。dq座標系において状態を取り扱うとすれば、リニアモータの電圧方程式は式(1)で表される。
【0018】
【数1】

【0019】
ここで、vκn,iκn^,Lκ(添え字κ=d,q、添え字^は推定値)は、N番目の電力変換器のd軸またはq軸の電圧指令値、N番目の電力変換器のd軸またはq軸の推定電流値、固定子巻線インダクタンス値である。Raは固定子巻線抵抗値、ωは界磁可動子速度、Kは誘起電圧定数、pは微分演算子である。
なお、モータパラメータである固定子巻線インダクタンス値Lκ、固定子巻線抵抗値Ra、誘起電圧定数Kは、予め知ることができる既知の値である。
【0020】
推定電流iκn^を演算するため、まず式(1)を推定電流iκn^に関する微分方程式に変換する。式(1)に対して式(2)〜式(4)の変形を行い、得られる微分方程式を式(5)に示す。
【数2】

【0021】
また、nをサンプル数、Tをサンプル周期とし、検出電流値を離散化すれば式(6)で表される。
【0022】
【数3】

【0023】
式(6)を式(5)に適用し、更に式(7)の変形を経て、指令電流に関する差分方程式(8)に変換する。数式モデルに用いているN番目の電力変換器のd軸およびq軸の電圧指令値vκn,固定子巻線インダクタンス値Lκ,固定子巻線抵抗値Ra、界磁可動子速度ωは実際の値と等しいと考えたとき、d軸またはq軸に流れる推定電流値iκn^は式(8)により理論的に求められる。
【0024】
【数4】

【0025】
この推定電流値iκn^と実際に流れる電流検出値iκnの差分値が、誘起電圧推定値の推定誤差に相当する。そこで、前述の電流値の差分値Δiκnに誘起電圧推定ゲインKeκを比例係数として乗じ、誘起電圧推定値edn,eqnにフィードバックする。つまり、前述した電流値の差分値Δiκnを式(9)、誘起電圧推定値edn,eqnを式(10)で演算して得る。
式(10)の誘起電圧推定式は、式(9)で得た電流差分値Δiκnに対する比例演算を含有するため、前述の電流差分値Δiκnを0にするように、誘起電圧推定値edn,eqnを調整する機能を有している。電流差分値Δiκnが0となったときの誘起電圧推定値edn,eqnは真値に等しいと考えられるから、式(10)によって誘起電圧推定値edn,eqnは自動的に真値に収束する。
【0026】
なお、誘起電圧推定ゲインKeκは発振しない程度に大きく選び、早く真値に収束するように設定することが望ましい。
ここで、端効果の影響を強く受けた界磁可動子端を担う電力変換器と、端効果の影響を受けない界磁可動子中央の電力変換器とを比較した場合、リニアモータのモデル化誤差、センサ測定誤差、推力外乱などは共通である。したがって、式(10)によって得られる各電力変換器の誘起電圧推定値edn,eqnの違いは、界磁可動子端を担う電力変換器の端効果のみに依存していると考えることができる。
【0027】
【数5】

【0028】
次に、各電力変換器の誘起電圧推定値eqn,ednに基づき、端効果の影響のある界磁可動子端部の電力変換器への誘起電圧補償量Δedn,Δeqnを求める。
位置センサ201からの界磁可動子位置xを用いて、各電力変換器と界磁可動子の位置関係を得る。界磁可動子中央を担い、鎖交磁束の安定している固定子巻線に対して電力供給を行う電力変換器をA番目(添え字n=Aとなり、例えば、図1においては電力変換器111または電力変換器112に相当する)とし、各d,q軸の誘起電圧推定値をedA(n),eqA(n)とする。
また、界磁可動子端を担い、鎖交磁束の不安定な電力変換器をB番目(添え字n=Bとなり、例えば、図1においては電力変換器110と電力変換器113に相当する)として、各d,q軸の誘起電圧推定値をedB(n),eqB(n)とする。
【0029】
電力変換器Aで発生している誘起電圧推定値edA(n),eqA(n)は、そのときの運転状況における固定子巻線の温度変化に伴うリニアモータのモデル化誤差、センサ測定誤差、推力外乱などを含んだ状態での規範的な誘起電圧のモデルとして取り扱うことができる。
界磁可動子へ推力を発生させる全ての電力変換器の誘起電圧推定値が、界磁可動子中央を担う電力変換器と同じ状態になるように制御できれば、端効果を補償した最適な運転状況と考えることができる。
【0030】
誘起電圧補償器211内で式(11)の演算を行い、界磁可動子端を担う固定子巻線に電力を供給するB番目の電力変換器に対する誘起電圧補償量ΔedB(n),ΔeqB(n)を決定する。
【0031】
【数6】

【0032】
誘起電圧補償器211が、界磁可動子位置xと電流検出値idn,iqnとに基づいて、前述した一連の演算を行い、界磁可動子が移動時に誘起電圧補償量ΔedB(n),ΔeqB(n)を随時演算して逐次更新することによって、界磁可動子端を担う固定子巻線に電力を供給する電力変換器に対する誘起電圧補償が実施される。
言い換えれば、電力変換器Aで発生している誘起電圧推定値edA(n),eqA(n)を規範的な誘起電圧のモデルとして取り扱い、この誘起電圧推定値edA(n),eqA(n)と電力変換器Bで発生している誘起電圧推定値edB(n),eqB(n)との差分を、電力変換器Bに対する誘起電圧補償量とするため、誘起電圧推定において固定子巻線の温度変化に伴うリニアモータのモデル化誤差やセンサ測定誤差の影響を抑制し、相間電圧の不平衡に起因する推力リプルを低減させることができる。
【0033】
最後に、電力変換器内では、式(12)で表される通り、誘起電圧補償器211で演算された誘起電圧補償量ΔedB(n),ΔeqB(n)をN番目の電力変換器への誘起電圧補償量Δedn,Δeqnとして、界磁可動子端を担う電力変換器の電圧指令値vdn,vqnに加え、新たな電圧指令値vdn´,vqn´を得る。
なお、誘起電圧補償器211が、位置センサ202からの界磁可動子位置xに基づいて、界磁可動子が固定子巻線に掛かっていないと判断した電力変換器に関しては、誘起電圧補償量Δeκnは0である。この場合、新たな電圧指令値vdn´,vqnは式(13)で表される。
【0034】
【数7】

【0035】
このように、この新たな電圧指令値vdn´,vqn´を用いてリニアモータを制御することにより、相間電圧の不平衡に起因した推力リプルを低減することができる。
また、本実施形態に示す誘起電圧推定手法は、フィルタなどの遅れ要素を含まないため、特に、電流検出周期が十分に短い場合、界磁可動子が高速移動時でも問題なく補償の効果が発揮される。
更に、リニアモータの端効果の影響が許容されない、特に高精度仕様である半導体製造装置などの超精密機器、長距離搬送のためのリニアモータにおいては、電力変換器を切替える方式に本発明を適用することで、リニアモータもしくはリニアモータ制御装置の発熱量、消費電力量および電流分解能の観点から最も効果的である。
【0036】
ここで、本実施形態における誘起電圧補償量を用いてリニアモータを制御した場合の実験結果を以下に示す。なお、各実験結果は、図1におけるリニアモータの構成において、界磁可動子102が固定子巻線103の左端から固定子巻線108の右端までの区間を、一定推力指令を与えて移動した場合を示すものである。
【0037】
図4は固定子巻線103の誘起電圧の時間変化、図5は固定子巻線104の誘起電圧の時間変化、図6は固定子巻線105の誘起電圧の時間変化、図7は固定子巻線106の誘起電圧の時間変化、図8は固定子巻線107の誘起電圧の時間変化、図9は固定子巻線108の誘起電圧の時間変化、を示すものである。各図において、縦軸は誘起電圧振幅軸、横軸は時間軸であり、いずれの図も本実施形態における誘起電圧補償量を用いていない場合のものである。また、各図において、誘起電圧振幅が0である時間は、固定子巻線上に界磁可動子102が存在しないことを意味するものである。更に、界磁可動子102が一定速度での移動の場合、3相リニアモータにおける各相の誘起電圧はその振幅がほぼ一定となり、3相平衡状態となる。
【0038】
界磁可動子102が、固定子巻線103の左端から固定子巻線108の右端まで移動する場合である、図4から図9を順に見れば、固定子巻線103から固定子巻線108に順々に誘起電圧の不平衡が発生することが分かる。
例えば、固定子巻線103(図4)では、界磁可動子102が移動開始したときから界磁可動子102の端部を担うことになるため、時間軸の早い段階から3相不平衡状態の誘起電圧が発生する。固定子巻線104(図5)や固定子巻線105(図6)では、界磁可動子102が移動開始したときから界磁可動子102の中央部を担うことになるため、時間軸の早い段階では3相平衡状態の誘起電圧が発生し、時間軸が遅い段階になるにつれて(時間が進むにつれて)、界磁可動子102が各固定子巻線上を通過することになり界磁可動子102の端部を担うことになるため、3相不平衡状態の誘起電圧が発生する。固定子巻線106(図7)や固定子巻線107(図8)、固定子巻線108(図9)では、時間軸の早い段階では固定子巻線上に界磁可動子が存在しないため、誘起電圧振幅が0であるが、界磁可動子102が各固定子巻線上を通過するにつれ(界磁可動子102の端部を担う時間帯から界磁可動子102の中央部を担う時間帯に変化するにつれ)、3相不平衡状態の誘起電圧の発生から3相平衡状態の誘起電圧の発生に変化していく。
【0039】
図10は誘起電圧補償前の界磁可動子推力を示す図、図11は本実施形態の誘起電圧補償後の界磁可動子推力を示す図である。各図において、縦軸は推力振幅軸、横軸は時間軸である。
図10をみれば、界磁可動子102が、固定子巻線103の左端から固定子巻線108の右端まで移動する場合、図4から図9における順に発生する3相不平衡状態の誘起電圧に起因して、推力リプルが発生していることが分かる。一方、図11を見れば、本実施形態の誘起電圧補償により、推力リプルが低減していることが分かる。
【実施例2】
【0040】
本発明の第2の実施形態について、以下説明する。本発明の第1の実施形態では、リニアモータにおける端効果に伴う、界磁可動子端部の相間電圧不平衡に起因する推力リプルを低減させる技術について説明した。本発明の第2の実施形態では、電力変換器の直流母線電圧に依存する出力電圧制限に伴う、電力変換器の出力電流応答遅れに起因する推力リプルを低減させる技術について説明する。
【0041】
図12は、本発明の第2実施例に係るリニアモータ制御装置の構成を示すブロック図である。図において、リニアモータ制御装置における制御部115が、図示しない上位装置からの速度指令w*および界磁可動子102の現在位置を検出する位置センサ201からの界磁可動子位置xに基づいて、切替補償選択信号S、予測電圧指令E、およびq軸電流指令値iqnを制御演算して各電力変換器109〜114に分配出力する。なお、添え字nは、複数備える各電力変換器に対応するものであり、第1の実施形態と同様に、n=1,2,3,4,5,6となる。また、添え字*は指令値を表すものである。なお、第1の実施形態に用いた図面と同一の符号を付した構成は、その作用効果は第1の実施形態と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0042】
切替補償セレクタ401は、界磁可動子位置xを入力として後述する演算方法に基づいて切替補償選択信号Sを演算して、各電力変換器109〜114に出力する。推力変動抑制器402は、推力分配器210からのq軸電流指令値iqnを入力として、後述する演算方法により予測電圧指令Eを演算し、各電力変換器109〜114に出力する。
【0043】
図13は、各電力変換器109〜114内の電流制御部の構成を示すブロック図である。図において、q軸電流制御器309は、第1の実施形態(図3)におけるq軸電流制御器303に対し、制御部115からの切替補償選択信号Sおよび予測電圧指令Eが追加入力される。
【0044】
図14は、各電力変換器内のq軸電流制御器およびリニアモータモデルの構成を示すブロック図である。図において、電流制御器309は、モータモデル501に対して比例積分制御を行うための比例制御器502、積分制御器503に加えて、予測補償器504,その他加減算器を備える。予測補償器504は、制御115からのq軸電流指令値iqn、切替補償選択信号Sおよび予測電圧指令Eに基づいて電圧補償値ΔEqnを演算する。
【0045】
ここで、本実施形態における、推力リプルを抑制する原理について、式(14)〜式(29)を用いて説明する。
ここで、電力変換器の切替えに際して、電力の供給を開始するように切替えられる電力変換器をA番目(添え字はn=A)とし、電力供給を止めるように切替えられる電力変換器をB番目(添え字はn=B)とする。例えば、図1において、電力変換器110〜113から固定子巻線104〜107の4つに電力が供給され、界磁可動子102を右方向に向かって駆動し、界磁可動子位置に基づいて電力変換器の切替えを実施し、電力変換器111〜114から固定子巻線105〜108の4つに電力供給を切替えた場合、電力の供給を開始するように切替えられるA番目の電力変換器は電力変換器108、電力供給を止めるように切替えられるB番目の電力変換器は電力変換器104に相当する。
【0046】
図14において、予測補償器504を除く電流制御器309の伝達関数Gcは式(14)、モータモデル501の伝達関数Gmは式(15)、それらを組み合わせたq軸電流の伝達関数Giは式(16)で表される。ここで、Kpは比例制御ゲイン、Tiは積分時定数、Raは固定子巻線抵抗、Lqはq軸の固定子巻線インダクタンスである。また、固定子巻線抵抗値Raおよび固定子巻線インダクタンスLqを用いて、比例ゲインKp=2π×Kp’×L、積分時定数Ti=L/Rとし、q軸電流の伝達関数Giをカットオフ周波数Kp’[Hz]の1次遅れ系とみなす。
【0047】
【数8】

【0048】
A番目およびB番目の電力変換器において、電力変換器の直流母線電圧に依存する出力電圧制限が発生しない場合、切替える2つの電力変換器(A番目およびB番目)から出力される電流の和iqA+iqBは一定値iqAとなるため、切替え時の推力リプルは発生しない。
一方、q軸電流指令値iqnが大きい状態、また高速走行によって大きな誘起電圧外乱が生じている状態のような出力電圧制限が発生する場合には、電圧指令Vqnが出力電圧の最大値±Vmaxで制限される。その結果、出力電圧が制限された電力変換器の電流応答が遅れ、切替える2つの電力変換器(A番目およびB番目)から出力される電流の和iqA+iqBが一定に保たれないために推力リプルが生じることになる。
【0049】
通常、固定子巻線に流れる電流値iqnは、式(16)から任意のq軸電流指令値iqnによって一意に定まるが、電流制御器309は積分制御器503を含むため、切替えの瞬間の積分出力を任意の値に設定すると(以後、積分制御器の初期値設定とよぶ)、切替へ後の電流過渡応答に自然と変化が生じる。
そこで、通電する電力変換器を切替える際、2つの電力変換器(A番目およびB番目)の電圧指令および出力電流について予測演算し、積分制御器の初期値設定を施すことによって、出力電圧制限が発生せず、かつ切替える2つの電力変換器(A番目およびB番目)電流の総和が変動しないように補償することが可能となる。
【0050】
電圧指令Vqn、電流値iqnに対する積分制御器の出力値の影響を考えるため、図14のモータモデル501と電流制御器309を状態空間表現に改めて、式(17)および式(18)で表す。なお、誘起電圧などの電圧外乱VLnは、電流制御器309における電流制御周期に対して一定とみなせると仮定する。
【0051】
【数9】

【0052】
ここで、入力uはq軸電流指令値iqn、状態変数x1nはq軸電流値iqn、状態変数x2nは積分制御器出力Viqn、出力y1nはq軸電流値iqn、y2nはq軸電圧指令値Vqnである。
電力変換器を切替える時刻をt=0とし、 それ以前では出力電流は電流指令に対して十分追従していたものと考えれば、A番目およびB番目の電力変換器の入力uおよび状態変数x1n、x2nの初期値は、式(19)で表される。ここで、ΔEqnは電圧補償値、 Tsは電流制御器309のサンプリング時間である。
【0053】
【数10】

【0054】
式(17)および式(18)の状態方程式を、式(19)の条件のもとに変形すれば、q軸電流応答に関する式(20)を得る。
【0055】
【数11】

【0056】
切替える2つの電力変換器(A番目およびB番目)が出力する電流の和iqA+iqBを、常にq軸電流指令値iqAの一定値とするため、式(21)を定義する。さらに、式(19)および式(20)を用いて式(21)を解けば、式(22)を得る。
【0057】
【数12】

【0058】
積分制御器の初期値設定の際に加える電圧補償値ΔEqnが式(22)を満たしていれば、切替える2つの電力変換器(A番目およびB番目)が出力する電流の和iqA+iqBが、q軸電流指令値iqAの一定値に保たれる。ここに、電圧指令Vqnが出力電圧の最大値±Vmaxを超えないという条件を付与すれば、電力変換器を切替える際の推力リプルを抑えることができる。この電圧補償を行うことによって電圧指令Vqnの最大値を任意の予測電圧指令Eとすることを考え、電圧補償値ΔEqnを設定する。
まず式(15)より、y2n(q軸電圧指令値Vqn)の最大値y2nMAXを得て、式(23)、式(24)とする。
【0059】
【数13】

【0060】
式(22)を満たし、かつ電圧指令の最大値y2nMAXを任意の予測電圧指令Eとするために、電圧補償値ΔEqnを式(25)のように定義する。ここで、VLMは演算で用いる出力電圧モデルであり、電圧外乱と巻線抵抗による電圧損失を意味する。この出力電圧モデルVLMは式(26)を満たす必要がある。
【0061】
【数14】

【0062】
式(25)で定義した電圧補償値ΔEqnを、電力変換器の切替えの瞬間に1度だけ積分制御器503の出力に足しこみ、積分制御器の初期値設定を施すことで、電圧指令の最大値y2nMAXを任意の予測電圧指令Eに抑えることができ、かつ切替える2つの電力変換器(A番目およびB番目)が出力する電流の和 iqA+iqBを 、q軸電流指令値iqAの一定値に保つことができる。つまり、電力変換器を切替える際の推力リプルを抑えることができる。
【0063】
次に、任意の予測電圧指令Eを設定する。予測電圧指令Eは、電力変換器の出力電圧最大値±Vmax以下であれば良いが、常に予測電圧指令Eを最大値±Vmaxに設定すると、電力変換器の切替え実行時に出力電流iqnの応答に大きなオーバーシュートやアンダーシュートを生じる場合がある。したがって、q軸電流指令値iqnに応じて予測電圧指令Eを変動させ、出力電流応答を改善する必要がある。
電力変換器の直流母線電圧に依存する出力電圧制限が発生しない場合の出力電流応答を改善することを考え、出力電流応答の収束を早め、オーバーシュートやアンダーシュートしないように予測電圧指令Eを設定する。例えば、電流制御器309におけるq軸電流の伝達関数Giが式(16)のように設定されている場合、比例係数αを用いて、予測電圧指令Eの関数を式(27)のように定義する。
【0064】
【数15】

そして、q軸電流応答に関する式(20)から、A番目およびB番目の出力電流応答が任意の極配置になるように比例係数αを定める。α=Kpとすれば、極配置が通常制御時と同等であり、オーバーシュートやアンダーシュートしない、式(28)および式(29)の電流応答式が得られる。つまり、電流応答を悪化させない、推力リプルを抑制するが可能となる。
【0065】
【数16】

【0066】
このように、本実施形態における、推力リプルを抑制する原理について、式(14)〜式(29)を用いて説明した。
次に、図12における切替補償セレクタ401が出力する切替補償選択信号S、推力変動抑制器402が出力する予測電圧指令E、図14における予測補償器504が出力する電圧補償量ΔEqnの演算および実施手順について説明する。
【0067】
まず、切替補償セレクタ401において切替補償選択信号Sを定める。切替補償選択信号Sは、各電力変換器に対して切替補償を行うかどうかを定める信号であり、切替えるA番目およびB番目の電力変換器に対しては1を、その他の電力変換器に対しては0を与えるように設定する。また、切替補償選択信号Sは、電力変換器の切替えの瞬間に1パルスだけ出力される信号であり、切替えを行わないときは常に0である。
【0068】
例えば、前述と同様に、図1における電力変換器104〜107から電力変換器105〜108へと切替える場合には、電力の供給を開始するように切替えられるA番目の電力変換器は電力変換器108、電力供給を止めるように切替えられるB番目の電力変換器は電力変換器104に相当するので、切替補償選択信号Sは式(30)となる。なお、式(30)の右辺は、左から順に電力変換器103への切替補償選択信号S、電力変換器104への切替補償選択信号S、電力変換器105への切替補償選択信号S、電力変換器106への切替補償選択信号S、電力変換器107への切替補償選択信号S、電力変換器108への切替補償選択信号S、である。この切替補償選択信号Sは、界磁可動子102の移動に基づく界磁可動子位置xに応じて、その状態(1か0)が切替わる。
【0069】
【数17】

【0070】
次に、推力変動抑制器402において予測電圧指令Eを定める。出力電圧モデルVLM、A番目の電力変換器へのq軸電流指令値iqA、比例係数α=Kpを用いて、式(27)によって定める。この際、出力電圧モデルVLMは式(26)を満たすように定めるが、式(26)中の電圧外乱値VLnは、誘起電圧推定演算や電圧外乱オブザーバなどによって定めても良いし、各電流制御器の積分制御器の出力値から巻線抵抗による電圧損失分を差し引いたものを用いてもよい。また、出力電圧モデルVLMが式(26)を満たしているならば、演算に用いる電圧外乱値VLnは多少誤差が生じていても良く、実際の値よりも電圧外乱を多く見積もった場合は、制限値に対してより余裕を持った予測電圧指令が作成されることになる。
【0071】
次に、予測補償器504において電圧補償量ΔEqnの演算を行う。電力の供給を開始するように切替えられるA番目の電力変換器においては式(31)、電力供給を止めるように切替えられるB番目の電力変換器においては式(32)を用いて演算する。式(31)、式(32)において、切替補償選択信号Sを乗じるから、A番目およびB番目以外の電力変換器では切替補償選択信号Sが0であるため電圧補償量ΔEqnは0である。また、A番目およびB番目の電力変換器においても、電力変換器の切替えの瞬間以外の電圧補償量ΔEqnは0となる。得られたΔEqnを、積分制御器503の出力に足しこむことで、本実施形態における推力リプル補償が達成される。
【0072】
【数18】

【0073】
なお、本実施形態における推力リプル補償は、第1の実施形態と組み合わせることも可能である。その場合は、第1の実施形態における誘起電圧補償量Δeqnを考慮して、事前に出力電圧最大値Vmaxを小さく見積もり、式(27)を式(33)として演算すればよい(誘起電圧補償量Δeqnが複数ある場合には、その中で最大のものを選んで適用する)。
【0074】
【数19】

【0075】
本発明の第2の実施形態における電圧補償量ΔEqnを用いた場合の実験結果を示す。なお、図15〜図18の各実験結果は、図1におけるリニアモータおよびリニアモータ制御装置の構成において、電力変換器110〜113から固定子巻線104〜107への電力供給から、電力変換器111から114から固定子巻線105〜108への電力供給へ切替えた場合を示すものである。
図15は電圧補償後の固定子巻線104と固定子巻線108に流れる電流の時間変化、図16は電圧補償後の固定子巻線104と固定子巻線108に流れる電流の和の時間変化、図17は電圧補償前の固定子巻線104と固定子巻線108に流れる電流の時間変化、図18は電圧補償前の固定子巻線104と固定子巻線108に流れる電流の和の時間変化を示している。図15および図17については、固定子巻線108に流れる電流を実線で、固定子巻線104に流れる電流を破線で示している。なお、いずれの図においても、縦軸は電流振幅、横軸は時間軸である。
【0076】
電圧補償前は、電力変換器の切替えの際(時間軸0.1s付近)、切替えられる2つの電力変換器110,114が出力する電流の和にリプルが生じている(図18参照)。一方、電圧補償後は、前述の電流の和にリプルが生じていない(図16参照)。したがって、本実施形態の電圧補償によって推力リップルが低減していることが分かる。また、図17(電圧補償前)と図15(電圧補償後)とを対比してみれば、電力変換器110,114が出力する電流応答にも大きな遅れは生じず、出力電圧制限に応じた速やかな電力変換器の切替えを実現できていることが分かる。
【符号の説明】
【0077】
101 リニアモータ
102 界磁可動子
103〜108 固定子巻線109〜114 電力変換器
115 制御部
201 位置センサ
202 速度演算器
203 速度制御器
210 推力分配器
211 誘起電圧補償器
302 d軸電流制御器
303、309 q軸電流制御器
304 2相3相変換器
305 3相2相変換器
306 PWM変調器
307、308 加算器
401 切替補償セレクタ
402 推力変動抑制器
501 モータモデル
502 比例制御器
503 積分制御器
504 予測補償器
505、506 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子巻線が界磁可動子の移動方向に複数区分されたリニアモータを、位置センサが検出する界磁可動子位置に基づいて区分毎に備えられた電力変換器を切替えて、前記界磁可動子を移動させるように前記固定子巻線に電力を供給するリニアモータ制御装置であって、
上位からの指令に応じた電流指令を制御演算して前記電力変換器それぞれに出力する制御部と、
前記界磁可動子位置に基づいて、切替える前記電力変換器を判別して切替補償選択信号を前記電力変換器に出力する切替補償セレクタと、
前記電流指令に基づいて、前記電力変換器の出力電圧制限または出力電流応答遅れを防止する予測電圧指令を演算して前記電力変換器に出力する推力変動抑制器と、
前記電流指令、前記切替補償選択信号、前記予測電圧指令に基づいて、前記リニアモータに供給する電圧および電流を制御演算する前記電力変換器と、
を備えることを特徴とするリニアモータ制御装置。
【請求項2】
前記電力変換器が、前記電流指令および検出電流値に基づいて電流制御演算するものであって、前記電流指令、前記切替補償選択信号、前記予測電圧指令に基づいて、電圧補償値を演算して出力する予測補償器を有し、
前記電流制御演算の出力である電圧指令値に、前記電圧補償値を加算して新たな電圧指令値を演算し、前記リニアモータに供給する電流を検出して前記検出電流値を演算することを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ制御装置。
【請求項3】
前記推力変動抑制器は、前記予測電圧指令を、前記電力変換器の出力電圧の最大値である第1の値、または、前記電流指令に比例係数を乗算した値から電圧外乱および巻線抵抗による電圧損失に応じた電圧値を減算した第2の値に設定し、
前記電力変換器は、前記電流指令および検出電流値に基づいて電流制御演算するものであって、前記切替補償選択信号が切替補償を行うことを示す場合、前記電流指令を所定の比例ゲインで乗算した値と前記電流指令を所定の積分時定数で積分した値とを加算した値を前記予測電圧指令から減算し、当該減算結果に対して前記電圧損失に応じた電圧値を加算した値またはその正負を逆転した値を前記電圧補償値とし、前記電流制御演算の出力である電圧指令値に、前記電圧補償値を加算して新たな電圧指令値を演算することを特徴とする請求項2に記載のリニアモータ制御装置。
【請求項4】
前記制御部および前記電力変換器が、ベクトル制御もしくは3相交流制御を行なうものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のリニアモータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−254020(P2012−254020A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−212506(P2012−212506)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【分割の表示】特願2010−205593(P2010−205593)の分割
【原出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】