説明

リニアレゾルバ

【課題】検出精度が高く、かつ信号線における金属疲労による断線発生を防止可能なリニアレゾルバを提供すること。
【解決手段】リニアレゾルバ10は可動部1と固定部6とからなり、可動部1にはトランスコイル部2とレゾルバコイル部3が設けられ、固定部6にはこれに対応してトランスコイル部7とレゾルバコイル部8が設けられており、可動部1から引き出される信号線がないことを、特徴的な構成とする。トランスコイル部2、7によってトランス機能が構成され、またレゾルバコイル部3、8によってレゾルバ機能が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリニアレゾルバに係り、特に、検出精度が高く、信号線の断線発生を防止することのできるリニアレゾルバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレゾルバは回転型(ロータリー型)であり、回転方向の変位である角度を検出するセンサである。回転型のレゾルバは、構造的に下記のように大別、分類できる。
(a)ロータに巻線(コイル)があり、巻線(コイル)に接続された信号線が引き出されているタイプ。ロータの回転範囲は、有限角である。
(b)ロータに巻線(コイル)があり、ブラシ付きのタイプ。ロータへの信号伝達はブラシによる接触式である。ロータの回転範囲に制限はない。
(c)ロータに巻線(コイル)があり、ブラシレスのタイプ。回転トランスによってロータへ信号を伝達する、非接触式である。ロータの回転範囲に制限はない。
(d)ロータに巻線(コイル)がない、VR(Variable Reluctance)タイプ。非接触式である。ロータの回転範囲に制限はない。
【0003】
一方、直線方向の変位を検出するためのセンサとして、リニアレゾルバがある(特許文献1、2)。これらのリニアレゾルバは、直線方向に構成された固定部と、その上に配置され作動する可動部とからなり、上述の回転型レゾルバにおける分類に従えば、(d)VRタイプである。つまり、可動部に巻線(コイル)が設けられていない。
【0004】
また、同種のセンサであるリニア巻線型検出器も、従来公知である(特許文献3)。これは、上記分類に従えば、(a)回転範囲が有限である有限タイプ、または(d)VRタイプである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−221870号公報「リニアレゾルバ」
【特許文献2】特開平6−300583号公報「リニアレゾルバ」
【特許文献3】特開平10−25339号公報「リニア巻線型検出器」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、従来の回転型レゾルバには、下記の問題点がある。
(a)有限タイプは回転範囲に制限がある。また、回転に伴い信号線が揺すられるため、信号線に金属疲労が発生し、断線の危険性がある。
(d)VRタイプは、他のタイプと比べて検出精度が劣る。
これらの問題は、リニアレゾルバやリニア巻線型検出器でも同様である。すなわち、従来のリニアレゾルバは検出精度が劣る。またリニア巻線型検出器は、VRタイプである場合は検出精度が劣り、有限タイプである場合は動作に伴い信号線が揺すられるために金属疲労が発生し、断線の危険性がある。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、検出精度が高いリニアレゾルバを提供することである。また本発明が解決しようとする課題は、信号線における金属疲労による断線発生が防止され、故障しにくく製品寿命の長いリニアレゾルバを提供することである。本発明は、これら2つの課題を同時に解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した結果、可動部に巻線(コイル)を設けるとともにトランスコイルも設ける構成とすること、上述回転型レゾルバの分類に従えば(c)ブラシレスタイプのリニアレゾルバとすることによって課題を解決できることに想到し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
(1) 直線方向の変位を検出するためのセンサである可動部と固定部とからなるリニアレゾルバにおいて、該可動部にはトランスコイルとレゾルバコイルが設けられ、これに対応して該固定部にはトランスコイルとレゾルバコイルが設けられ、該可動部から引き出される信号線がない、リニアレゾルバ。
(2) 信号形式が1相励磁2相出力または2相励磁1相出力であることを特徴とする、(1)に記載のリニアレゾルバ。
(3) 前記可動部および前記固定部にはそれぞれ、コイル保持用溝が設けられ、該コイル保持用溝に各トランスコイルまたはレゾルバコイルが保持されていることを特徴とする、(1)または(2)に記載のリニアレゾルバ。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリニアレゾルバは上述のように構成されるため、これによれば、従来のリニアレゾルバと比較して高い検出精度を得ることができる。また、可動部から信号線が引き出されることがないために、金属疲労による信号線の断線が全く発生せず、安定的に使用することができる。したがって本発明のリニアレゾルバは、故障しにくく製品寿命も長いため、安心して継続使用でき、修理点検コストも低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のリニアレゾルバの基本構成を示すブロック図である。
【図2】本発明のリニアレゾルバの構成例を示す平面図および側面図である。
【図3】図2に示すリニアレゾルバの配線図である。
【図4】本発明のリニアレゾルバの別の構成例の配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のリニアレゾルバの基本構成を示すブロック図である。図示するように本発明リニアレゾルバ10は可動部1と固定部6とからなるセンサであって、可動部1にはトランスコイル部2とレゾルバコイル部3が設けられ、固定部6にはこれに対応してトランスコイル部7とレゾルバコイル部8が設けられており、可動部1から引き出される信号線がないことを、主たる構成とする。
【0013】
かかる構成により本リニアレゾルバ10は、可動部1のトランスコイル部2および固定部6のトランスコイル部7により形成されるトランス部、いわばリニア型トランスによって、固定部6から可動部1に対し入力信号が伝達される、つまり可動部1は励磁される。そして、可動部1のレゾルバコイル部3と固定部6のレゾルバコイル部8により形成されるレゾルバ部によって、検出された直線方向の変位に係る検出信号が、可動部1から固定部6へと伝達され、出力される。
【0014】
このように本リニアレゾルバ10は、非接触のブラシレス方式によって固定部6−可動部1間における信号の伝達がなされるため、可動部1から引き出される信号線のない構成である。したがって、リニアレゾルバ10の動作により信号線が揺すられるという問題がそもそも発生せず、それによる断線の危険性も全く存在しない。また、VRタイプのリニアレゾルバと異なり、可動部1においても巻線によるレゾルバコイル部3が設けられるため、高い検出精度を得ることができる。
【0015】
図2は、本発明のリニアレゾルバの構成例を示す平面図および側面図である。また、
図3は図2に示すリニアレゾルバの配線図である。これらに図示するように本リニアレゾルバ210は、可動部基体215にトランスコイル22とレゾルバコイル23が設けられて可動部21となっており、これに対応して固定部基体265にトランスコイル27とレゾルバコイル28Cおよび28Sが設けられて固定部26となっている構成であり、可動部21から引き出される信号線がない。なお、レゾルバコイル28CはCOS側、28SはSIN側を示す。
【0016】
したがって、リニアレゾルバ210の動作により信号線が揺すられるという問題が発生せず、それによる断線の危険性も全く存在しない。また、VRタイプのリニアレゾルバと異なり、可動部21においても巻線によるレゾルバコイル23が設けられるため、高い検出精度を得ることができる。なお、本例の信号処理形式は1相励磁2相出力である。また、図2に示すコイル22等の設けられる平面形状のパターンは一例であり、本発明はかかる例に限定されない。
【0017】
本リニアレゾルバ210においては、可動部21を構成する可動部基体にはコイル保持用溝が設けられ、および固定部26を構成する固定部基体にもコイル保持用溝が設けられている構成とすることができる。ここで、可動部基体上のコイル保持用溝としては、レゾルバコイル用とトランスコイル用が設けられる。また、固定部基体上のコイル保持用溝としても、レゾルバコイル用、トランスコイル用が設けられる。なお、各コイル保持用溝の形状は適宜に設計される。
【0018】
かかる構成により、本リニアレゾルバにおいては、各コイル保持用溝それぞれに、対応するコイルが嵌装され保持される。各コイル保持用溝に各コイルが保持された状態が、前掲の図2である。
【0019】
図4は、本発明のリニアレゾルバの別の構成例の配線図である。図示するように本リニアレゾルバの信号形式は、2相励磁1相出力としてもよい。このように、信号形式が1相励磁2相出力または2相励磁1相出力の場合は、面積の小さい可動部31においても無理なく所定のコイルを設けることができる。したがってリニアレゾルバの信号形式は、相励磁2相出力、または2相励磁1相出力のいずれかとすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のリニアレゾルバによれば、従来のリニアレゾルバと比較して高い検出精度を得られるともに、信号線断線の危険性を解消でき、故障を少なくし、性能を向上させることができる。したがって、センサ製造・利用の全分野において産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0021】
1、21、31…可動部
2…トランスコイル部(可動部)
3…レゾルバコイル部(可動部)
6、26、36…固定部
7…トランスコイル部(固定部)
8…レゾルバコイル部(固定部)
10、210…リニアレゾルバ
22、32…トランスコイル(可動部)
23、33…レゾルバコイル(可動部)
24S1、24S2、24S3、24S4、24R1、24R2、34S1、34S2、34S3、34S4、34R1、34R2…信号線
27、37…トランスコイル(固定部)
28C、38C…レゾルバコイル(固定部)
28S、38S…レゾルバコイル(固定部)






【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線方向の変位を検出するためのセンサである可動部と固定部とからなるリニアレゾルバにおいて、該可動部にはトランスコイルとレゾルバコイルが設けられ、これに対応して該固定部にはトランスコイルとレゾルバコイルが設けられ、該可動部から引き出される信号線がない、リニアレゾルバ。
【請求項2】
信号形式が1相励磁2相出力または2相励磁1相出力であることを特徴とする、請求項1に記載のリニアレゾルバ。
【請求項3】
前記可動部および前記固定部にはそれぞれ、コイル保持用溝が設けられ、該コイル保持用溝に各トランスコイルまたはレゾルバコイルが保持されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のリニアレゾルバ。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220362(P2012−220362A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87301(P2011−87301)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000203634)多摩川精機株式会社 (669)
【Fターム(参考)】