説明

リニア駆動装置

【課題】駆動源と伝達部材との間の伝達機構の簡素化を図った場合でも、出力部材に加わった力を受け止めることのできるリニア駆動装置を提供すること。
【解決手段】リニア駆動装置100では、回動部材7の回動が直接、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bに伝達するという簡素な伝達機構を採用しているが、回動部材7の下面側にスライドピン710a、710b(伝達部)を設け、上面側に回動部材用支持機構94a、94bを設けたため、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bが受けた外力を回動部材7を介してケース3によって受けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力部材がケースから突出する方向の前進動作とケース内に引っ込む後退動作とを直線的に行なうリニア駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出力部材がケースから突出する方向の前進動作とケース内に引っ込む後退動作とを直線的に行なうリニア駆動装置としては、例えば、グレモン電気錠において、出力部材としての係止ロッドに対して、回動部材としてのセクタギアの作動アームを介してモータの駆動力を伝達して、直線的に移動を行なわせる構成が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
かかるリニア駆動装置において、2本の係止ロッドにはスライダが連結されており、一方のスライダが直線移動した際、かかる動作は、ラック−ピニオン機構を介して他方のスライダに伝達されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−197721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなリニア駆動装置では、係止ロッドが扉に係合して扉の開動作を阻止する。このため、施錠した状態で扉を手動で開けようとすると、出力部材としての係止ロッドに大きな負荷が加わる。但し、特許文献1に開示の構成では、2つのスライダが各々、ラック板に支持されているため、係止ロッドに加わった大きな負荷はラック板で受けることができるので、作動アームに伝達されることはない。
【0006】
しかしながら、かかる支持構造は、出力部材の係止ロッドと、回動部材としてのセクタギアとの間にラック板などの他の部材が介在する場合には、実現可能であるが、回動部材の回動を出力部材に直接、伝達して伝達機構の簡素化を図った場合には採用できないという問題点がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、駆動源と伝達部材との間の伝達機構の簡素化を図った場合でも、出力部材に加わった力を受け止めることのできるリニア駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、駆動源と、該駆動源の駆動力によって回動する回動部材と、該回動部材を収容するケースと、前記回動部材に従動して前記ケースから突出する方向の前進動作と前記ケース内に引っ込む方向の後退動作とを直線的に行なう出力部材と、を有するリニア駆動装置において、前記回動部材は、該回動部材の回転中心軸線方向における一方面側に前記出力部材の被伝達部に重なって前記駆動源の駆動力を伝達する伝達部を備え、当該回動部材の他方面側と前記ケースとの間には、少なくとも前記出力部材を前進させた際に当該回動部材の他方面側と前記ケースとが当接する回動部材用支持機構が構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、駆動源の駆動力が回動部材に伝達されると、回動部材の回動は、回動部材伝達部および出力部材の被伝達部を介して出力部材に伝達される。このため、回動部材が一方方向に回動すると、出力部材はケースから突出する方向の前進動作を行い、回動部材が他方方向に回動すると、出力部材は、ケース内に引っ込む方向の後退動作を直線的に行なう。ここで、回動部材の伝達部は、回動部材の一方面側に形成されている。このため、出力部材が前進してケースから突出している状態で出力部材に外力が加わると、回動部材の一方面側は出力部材から外力を受け、回動部材は他方面側に変位しようとする。しかるに本発明では、回動部材の他方面側とケースとの間には、回動部材の他方面側とケースとが当接する回動部材用支持機構が構成されているため、回動部材の他方面側への変位は、ケースによって阻止される。従って、出力部材は、外力を受けても大きく変位することがない。すなわち、本発明は、回動部材の回動が直接、出力部材に伝達するという簡素な伝達機構を採用しているが、回動部材の一方面側に伝達部を設け、他方面側には回動部材用支持機構を設けたため、出力部材が受けた外力を回動部材を介してケースによって受けることができる。また、回動部材の両面を伝達用および支持用に有効活用したため、出力部材および回動部材の周辺については設計上の自由度が大きい。それ故、出力部材に対するガイド機構や出力部材に対する支持機構を容易に設けることができる。
【0010】
本発明においては、例えば、前記回動部材の前記伝達部および前記出力部材の前記被伝達部のうちの一方は、前記出力部材の進退方向および回動軸線方向に対して交差する方向に延在する開口部であり、他方は当該開口部に嵌って当該開口部内でスライドするスライトピンである構成を採用することができる。
【0011】
本発明において、前記出力部材の前記回転中心軸線方向における一方面側および他方面側のうちの少なくとも一方と前記ケースとの間には、当該出力部材と前記ケースとが前記回転中心軸線方向で当接し合う出力部材用支持機構が構成されていることが好ましい。かかる構成を採用すると、出力部材に加わった外力を直接、受けることもできるので、回動部材には過大な強度が求められない。それ故、肉厚な回動部材や大型の回動部材を用いる必要がないという利点がある。
【0012】
本発明において、前記出力部材と前記ケースとの間には、前記進退方向および前記回転中心軸線方向の双方に対して交差する方向で前記出力部材が前記ケースに当接して前記出力部材を前記進退方向にガイドするガイド機構が構成され、前記出力部材において前記ガイド機構を構成する部分は、前記出力部材の前記被伝達部の近傍に形成されているとともに、前記ケースに対して前記回転中心軸線方向で当接して前記出力部材用支持機構を構成していることが好ましい。かかる構成によれば、ガイド機構を利用して出力部材用支持機構を構成しているので、ケースや出力部材の構成の簡素化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、回動部材の回動が直接、出力部材に伝達するという簡素な伝達機構を採用しているが、回動部材の一方面側に伝達部を設け、他方面側には回動部材用支持機構を設けたため、出力部材が受けた外力を回動部材を介してケースによって受けることができる。また、回動部材の両面を伝達用および支持用に有効活用したため、出力部材および回動部材の周辺については設計上の自由度が大きい。それ故、出力部材に対するガイド機構や出力部材に対する支持機構を容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用したリニア駆動装置の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明を適用したリニア駆動装置から上カバーを外して駆動力伝達用の輪列を斜め上方からみたときの斜視図である。
【図3】本発明を適用したリニア駆動装置から上ケースを外して回動部材や出力部材を斜め上方からみたときの斜視図である。
【図4】本発明を適用したリニア駆動装置から下ケースを外して回動部材や出力部材を斜め下方からみたときの斜視図である。
【図5】本発明を適用したリニア駆動装置の要部を、回動部材のアーム部が通る位置で切断したとき断面図である。
【図6】本発明を適用したリニア駆動装置における出力部材の動作を下方からみたときの説明図である。
【図7】本発明を適用した別のリニア駆動装置から下ケースを外して回動部材や、第1出力部材、および第2出力部材を斜め下方からみたときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明を適用したリニア駆動装置を説明する。かかるリニア駆動装置は、前記したグレモン電気錠において、扉の施錠などに用いることができるとともに、出力部材によって他の部材を押圧するのに用いることができる。なお、以下の説明においては、互いに直交する3軸をX軸、Y軸、Z軸とし、説明の便宜上、出力部材の進退方向をX軸方向、回動部材の回転中心軸線方向をZ軸方向(上下方向)として説明する。
【0016】
[全体構成]
図1は、本発明を適用したリニア駆動装置の外観を示す斜視図である。図2、図3、および図4は各々、本発明を適用したリニア駆動装置から上カバーを外して駆動力伝達用の輪列を斜め上方からみたときの斜視図、上ケースを外して回動部材や出力部材を斜め上方からみたときの斜視図、および下ケースを外して回動部材や出力部材を斜め下方からみたときの斜視図である。図5は、本発明を適用したリニア駆動装置の要部を、回動部材のアーム部が通る位置で切断したとき断面図である。図6は、本発明を適用したリニア駆動装置における出力部材の動作を下方からみたときの説明図である。
【0017】
図1に示すリニア駆動装置100は、下ケース31および上ケース32からなるケース3の上方に、下カバー21および上カバー22からなるカバー2を重ねて固定したハウジング20を備えている。ケース3において下ケース31と上ケース32とはネジなどにより連結され、カバー2において下カバー21と上カバー22とは側板部同士がフック27などにより連結されている。また、上ケース32と下カバー21とはネジなどにより連結されている。
【0018】
図2に示すように、カバー2の内側には、ステッピングモータなどからなる駆動源10と、この駆動源10の回動出力を伝達する輪列15とが配置されている。かかる輪列15は、モータピニオン11に噛合する大径歯車を備えた第1車12、第1車12の小径歯車に噛合する大径歯車を備えた第2車13、および第2車13の小径歯車に噛合する大径歯車を備えた第3車14などを備えた減速歯車列であり、第3車14に対しては減速用の遊星歯車機構(図示せず)などが構成されている。なお、下カバー21の端部にはコネクタ部26が構成されている。
【0019】
図3、図4、図5および図6に示すように、上ケース32の上板部321には貫通穴320が形成されており、かかる貫通穴320からは、カバー2内に配置された輪列15の最終段に嵌合する回転伝達軸6が突出している。回転伝達軸6は、中心部分から互いに反対側に第1アーム部71aおよび第2アーム部71bが延在した回動部材7が連結されており、回動部材7は回転伝達軸6と一体に回転伝達軸6の中心軸線(回転中心軸線L/Z軸方向)周りに所定の角度範囲で回動する。回動部材7において、第1アーム部71aおよび第2アーム部71bは先端側にいく程、幅寸法が狭くなっている。
【0020】
第1アーム部71aおよび第2アーム部71bのうち、第1アーム部71aの先端側には、図3および図5における第1アーム部71aの先端部に対して回転中心軸線L方向(Z軸方向)の下側に重なるように、軸状の第1出力部材5aの基端部が配置されている。第1出力部材5aは、回転中心軸線Lと直交するX軸方向に延在しており、ケース3の開口部から先端側が突出している。第2アーム部71bの先端側には、図3および図5における第2アーム部71bの先端部に対して回転中心軸線L方向の下側に重なるように軸状の第2出力部材5bの基端部が配置されている。第2出力部材5bも、第1出力部材5aと同様、回転中心軸線Lと直交するX軸方向に延在しており、ケース3の開口部から先端側が突出している。第1出力部材5aと第2出力部材5bは、回転中心軸線Lを中心とする点対称に配置されており、第1出力部材5aと第2出力部材5bは、反対方向に延在している。
【0021】
(回動−直動変換機構)
このように構成したリニア駆動装置100においては、以下に説明する回動−直動変換機構によって、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bを回動部材7に従動してケース3から突出する方向の前進動作とケース3内に引っ込む方向の後退動作とを直線的に行なわせる。
【0022】
かかる回動−直動変換機構を構成するにあたって、本形態では、まず、第1出力部材5aの基端部には、回転中心軸線L方向に矩形の開口部52a(被伝達部)を向ける筒部51aが形成され、かかる筒部51aにおいて、開口部52aは、第1出力部材5aの軸線方向(延在方向/進退方向)、および回転中心軸線Lに対して交差する方向に延在している。また、回動部材7の第1アーム部71aの先端部の下面側(一方面側)には、開口部52aに嵌る丸棒状のスライドピン710a(伝達部)が形成されている。かかるスライドピン710aの外径寸法は、開口部52aのサイズに比して小さく、開口部52aの内側で移動可能である。さらに、下ケース31の底板部311の上面には、第1出力部材5aの筒部51aの両側で、第1出力部材5aの軸線方向(延在方向/進退方向)に延在する一対の下側リブ状突起315a、316aが形成されている。ここで、第1出力部材5aの筒部51aの両側には、その下面側に、一対の下側リブ状突起315a、316aの上面、および内側面に対して当接可能な二箇所の段部53a、53aが形成されており、かかる段部53a、53aは、下側リブ状突起315a、316aの内側面に僅かな隙間を介して対向している。このため、段部53a、53aは、第1出力部材5aの進退に伴って下側リブ状突起315a、316aの内側面に当接し、第1出力部材5aをその進退方向にガイドするガイド機構91a(図5参照)を構成している。
【0023】
また、本形態では、第2出力部材5bにおいても、基端部には、回転中心軸線L方向に矩形の開口部52b(被伝達部)を向ける筒部51bが形成され、かかる筒部51bにおいて、開口部52bは、第2出力部材5bの軸線方向(延在方向/進退方向)、および回転中心軸線Lに対して交差する方向に延在している。また、回動部材7の第2アーム部71bの先端部の下面側(一方面側)には、開口部52bに嵌る丸棒状のスライドピン710b(伝達部)が形成されている。かかるスライドピン710bの外径寸法は、開口部52bのサイズに比して小さく、開口部52bの内側で移動可能である。さらに、下ケース31の底板部311の上面には、第2出力部材5bの筒部51bの両側で、第2出力部材5bの軸線方向(延在方向/進退方向)に延在する一対の下側リブ状突起315b、316bが形成されている。ここで、第2出力部材5bの筒部51bの両側には、その下面側に、一対の下側リブ状突起315b、316bの上面、および内側面に対して当接可能な二箇所の段部53b、53bが形成されており、かかる段部53b、53bは、下側リブ状突起315b、316bの内側面に若干の隙間を介して対向している。このため、段部53b、53bは、第2出力部材5bの進退に伴って下側リブ状突起315b、316bの内側面に当接し、第2出力部材5bをその進退方向にガイドするガイド機構91b(図5参照)を構成している。
【0024】
従って、図6に示すように、駆動源10の駆動力が回動部材7に伝達されると、回動部材7の回動は、回動部材7のスライドピン710a(伝達部)、および第1出力部材5aの開口部52a(被伝達部)を介して第1出力部材5aに伝達される。このため、回動部材7が一方方向に回動すると、図6(a)に示すように、第1出力部材5aはケース3から突出する方向の前進動作を行い、回動部材7が他方方向に回動すると、第1出力部材5aは、図6(b)に示すように、ケース3内に引っ込む方向の後退動作を直線的に行なう。
【0025】
また、回動部材7の回動は、回動部材7のスライドピン710b(伝達部)、および第2出力部材5bの開口部52b(被伝達部)を介して第2出力部材5bに伝達される。このため、回動部材7が一方方向に回動すると、図6(a)に示すように、第2出力部材5bはケース3から突出する方向の前進動作を行い、回動部材7が他方方向に回動すると、図6(b)に示すように、第2出力部材5bは、ケース3内に引っ込む方向の後退動作を直線的に行なう。
【0026】
(出力部材用支持機構)
このような構成のリニア駆動装置100において、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bに対して、回転軸中心軸線L方向の外力が加わると、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bが傾いてしまう。このような傾きが、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bが前進した状態にあるときに加わると、グレモン電気錠では、扉側の係合穴と、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bとの係合が外れて扉が不用意に開いてしまう。
【0027】
そこで、本形態では、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bに対しては、図3および図4を参照して以下に説明する出力部材用支持機構が構成されている。
【0028】
まず、第1出力部材5aにおいて、回転中心軸線Lの方向では、段部53aが下側リブ状突起315a、316aの上面に当接可能に形成されており、第1出力部材5aの筒部51aとケース3の下側リブ状突起315a、316aとが当接することによって、第1出力部材5aを回転中心軸線L方向の下側で支持する下側の出力部材用支持機構92a(図5参照)が構成されている。第2出力部材5bでも、第1出力部材5aと同様、回転中心軸線Lの方向では、段部53bが下側リブ状突起315b、316bの上面に当接可能に形成されており、第2出力部材5bの筒部51bとケース3の下側リブ状突起315b、316bとが当接することによって、第2出力部材5bを回転中心軸線L方向の下側で支持する下側の出力部材用支持機構92bが構成されている。
【0029】
また、図4、図5および図6に示すように、上ケース32の上板部321の下面には、第1出力部材5aの筒部51aの外側端部と回転中心軸線L方向の下側で重なる部分に、第1出力部材5aの軸線方向(延在方向/進退方向)に延在する1本の上側リブ状突起325aが形成されており、第1出力部材5aの筒部51a上面の外側端部は、上側リブ状突起325aの下面に当接することによって、第1出力部材5aを回転中心軸線L方向の上側で支持する上側の出力部材用支持機構93a(図5参照)を構成している。また、上ケース32の上板部321の下面には、第2出力部材5bの筒部51bの外側端部と回転中心軸線L方向の下側で重なる部分に、第2出力部材5bの軸線方向(延在方向/進退方向)に延在する1本の上側リブ状突起325bが形成されており、第2出力部材5bの筒部51b上面の外側端部は、上側リブ状突起325bの下面に当接することによって、第2出力部材5bを回転中心軸線L方向の上側で支持する上側の出力部材用支持機構93b(図5参照)を構成している。
【0030】
ここで、下側および上側の出力部材用支持機構92a、93aの少なくとも一方では、第1出力部材5aとケース3との間に僅かな隙間が空いている。すなわち、第1出力部材5aの筒部51aの下面と下側リブ状突起315a、316aの上面との間、および第1出力部材5aの筒部51aの上面と上側リブ状突起325aの下面との間のうちの少なくとも一方には僅かな隙間が空いており、第1出力部材5aの回転中心軸線L方向の両面に対してケース3が同時に当接するような軽圧入状態にはなっていない。そのため、第1出力部材5aはその進退方向にスムーズに動作することができる。また、下側および上側の出力部材用支持機構92b、93bの少なくとも一方では、第2出力部材5bとケース3との間に僅かな隙間が空いている。すなわち、第2出力部材5bの筒部51bの下面と下側リブ状突起315b、316bの上面との間、および第2出力部材5bの筒部51bの上面と上側リブ状突起325bの下面との間のうちの少なくとも一方には僅かな隙間が空いており、第2出力部材5bの回転中心軸線L方向の両面に対してケース3が同時に当接するような軽圧入状態にはなっていない。そのため、第2出力部材5bはその進退方向にスムーズに動作することができる。
【0031】
(回動部材用支持機構)
本形態のリニア駆動装置100においては、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bが前進した状態にあるときに外力が加わっても、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bが回転中心軸線Lの上側に傾かないように、図4〜図6を参照して以下に説明する回動部材用支持機構が構成されている。
【0032】
まず、図4、図5および図6に示すように、上ケース32の上板部321の下面には、回動部材7の第1アーム部71aの上面と回転中心軸線L方向の下側で重なる部分に、第1出力部材5aの軸線方向(延在方向/進退方向)に直線的に延在する1本のリブ状突起327aが形成されており、第1アーム部71aの上面側は、リブ状突起327aの下面に当接することによって、回動部材7を回転中心軸線L方向の上側で支持する回動部材用支持機構94a(図5参照)を構成している。また、上ケース32の上板部321の下面には、回動部材7の第2アーム部71bの上面と回転中心軸線L方向の下側で重なる部分に、第2出力部材5bの軸線方向(延在方向/進退方向)に直線的に延在する1本のリブ状突起327bが形成されており、第2アーム部71bの上面側は、リブ状突起327bの下面に当接することによって、回動部材7を回転中心軸線L方向の上側で支持する回動部材用支持機構94b(図5参照)を構成している。
【0033】
本形態では、リブ状突起327a、327bは、回動部材7を支持する回動部材用支持機構94a、94bを構成するとともに、上側の出力部材用支持機構93a、93bの一部として機能している。すなわち、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bに外力が加わった場合、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bの筒部51a、51bの外側端部が上側リブ状突起325a、325bの下面に当接して支持されるとともに、筒部51a、51bの内側端部が回動部材7を介してリブ状突起327a、327bの下面によって支持されるようになっている。このように、本形態では、回動部材用支持機構94a、94bを構成する上側リブ状突起325a、325bを上側の出力部材用支持機構93a、93bの一部として利用しているため、筒部51a、51bの内側端部に当接する部分を別途別の場所に形成する必要がない。それ故、上側の出力部材用支持機構93a、93bを小型化させることができるので、リニア駆動装置100の小型化を実現することができる。
【0034】
ここで、第1出力部材5aの筒部51aの下面とケース3の下側リブ状突起315aの上面との間、第1出力部材5aの筒部51aの上面と第1アーム部71aの下面との間、および第1アーム部71aの上面とリブ状突起327aの下面との間のいずれかの間には、僅かな隙間が空いており、第1アーム部71aの回転中心軸線L方向の両面が同時に押圧されるような軽圧入状態にはなっていない。また、第2出力部材5bの筒部51bの下面とケース3の下側リブ状突起315bの上面との間、第2出力部材5bの筒部51bの上面と第2アーム部71bの下面との間、および第2アーム部71bの上面とリブ状突起327bの下面との間のいずれかの間には、僅かな隙間が空いており、第2アーム部71bの回転中心軸線L方向の両面が同時に押圧されるような軽圧入状態にはなっていない。このため、回動部材7は、スムーズに回動することができる。
【0035】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のリニア駆動装置100では、回動部材7の第1アーム部71aおよび第2アーム部71bにおいて第1出力部材5aおよび第2出力部材5bに対する伝達部として機能するスライドピン710a、710bは、第1アーム部71aおよび第2アーム部71bの下面側に形成され、第1アーム部71aおよび第2アーム部71bの下面側は第1出力部材5aおよび第2出力部材5bの筒部51a、51bに回転中心軸線Lの上側で重なっている。このため、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bが前進してケース3から突出している状態で第1出力部材5aおよび第2出力部材5bに外力が加わると、回動部材7の下面側は第1出力部材5aおよび第2出力部材5bから外力を受け、回動部材7は上面側に変位しようとする。しかるに本形態では、回動部材7の上面側とケース3との間には、リブ状突起327a、327bによって、回動部材7の上面側とケース3とが当接する回動部材用支持機構94a、94bが構成されているため、回動部材7の上面側への変位は、ケース3によって阻止される。従って、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bは、外力を受けても大きく変位することがない。
【0036】
すなわち、本形態において、回動部材7の回動が直接、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bに伝達するという簡素な伝達機構を採用しているが、回動部材7の下面側にスライドピン710a、710b(伝達部)を設け、上面側に回動部材用支持機構94a、94bを設けたため、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bが受けた外力を回動部材7を介してケース3(上ケース32)によって受けることができる。
【0037】
また、回動部材7の両面を伝達用および支持用に有効活用したため、第1出力部材5a、第2出力部材5bおよび回動部材7の周辺については設計上の自由度が大きい。それ故、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bに対するガイド機構や、出力部材用支持機構を容易に設けることができる。
【0038】
また、本形態において、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bの上面側とケース3(上ケース32)との間には、上側リブ状突起325a、325bの下面を利用して、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bの上面側がケース3に対して回転中心軸線L方向で当接する上側の出力部材用支持機構93a、93bが構成されているため、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bに加わった外力を直接、受けることもできる。また、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bの下面側とケース3(下ケース31)との間には、下側リブ状突起315a、315b、316a、316bの上面を利用して、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bの下面側がケース3に対して回転中心軸線L方向で当接する下側の出力部材用支持機構92a、92bが構成されているため、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bに加わった外力を直接、受けることもできる。従って、回動部材7には過大な強度が求められないので、肉厚な回動部材7や大型の回動部材7を用いる必要がないという利点がある。
【0039】
しかも、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bにおいて、下側の出力部材用支持機構92a、92b、およびガイド機構91a、91bを構成する段部53a、53bは、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bにおいて被伝達部として用いられる筒部51a、51bの開口部52a、52bの近傍に形成されている。このように、本形態では、ガイド機構91a、91bを利用して下側の出力部材用支持機構92a、92bを構成しているので、ケース3や出力部材5a、5bの構成の簡素化を図ることができる。
【0040】
(別の実施の形態)
図7は、本発明を適用した別のリニア駆動装置100から下ケース31を外して回動部材7や、第1出力部材5a、および第2出力部材5bを斜め下方からみたときの斜視図である。上記実施の形態では、回動部材用支持機構94a、94bを構成するリブ状突起327a、327bが上ケース32の上板部321の下面で第1出力部材5aおよび第2出力部材5bの進退方向に直線的に延在している構成であったが、図7に示すように、リブ状突起327a、327bが上ケース32の上板部321の下面で湾曲しながら第1出力部材5aおよび第2出力部材5bの進退方向に延在している構成を採用してもよい。ここで、リブ状突起327a、327bは、回転中心軸線Lを中心とする円弧状あるいは略円弧状に形成されている。リブ状突起327a、327bが直線状に形成されている場合、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bが図3や図4の位置にあるときには、第1アーム部71aおよび第2アーム部71bにおいて幅寸法が広い部分がリブ状突起327a、327bの下面に当接するが、図6(a)(b)の位置にあるときには、第1アーム部71aおよび第2アーム部71bにおいて幅寸法が狭い部分がリブ状突起327a、327bの下面に当接するため、この位置において、第1アーム部71aおよび第2アーム部71bが損傷するリスクが高まる。本形態では、第1アーム部71aおよび第2アーム部71bにおいて幅寸法が広い部分が常にリブ状突起327a、327bの下面に当接するため、第1アーム部71aおよび第2アーム部71bが損傷することがない。
【0041】
また、図4および図7に示すいずれの形態でも、回動部材用支持機構94a、94bを構成するリブ状突起327a、327bが、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bの進退範囲の全域に形成されている。但し、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bが前進してケース3から突出している状態で第1出力部材5aおよび第2出力部材5が傾くことを防止するという観点からすれば、第1出力部材5aおよび第2出力部材5bが前進してケース3から突出しているときに第1アーム部71aおよび第2アーム部71bと回転中心軸線L方向の下側で重なる位置のみに、回動部材用支持機構94a、94bのリブ状突起327a、327bを形成してもよい。
【0042】
また、上記実施の形態では、回動部材7の伝達部として回動部材7にスライドピン710a、710bを設け、出力部材の被伝達部として開口部52a、52bを第1出力部材5aおよび第2出力部材5bに設けたが、回動部材の伝達部として回動部材7に開口部を設け、出力部材の被伝達部としてスライドピンを出力部材(第1出力部材5aおよび第2出力部材5b)に設けてもよい。
【符号の説明】
【0043】
3 ケース
5a 第1出力部材
5b 第2出力部材
6 回転伝達軸
7 回動部材
10 駆動源
15 輪列
51a、51b 筒部
52a、52b 開口部(被伝達部)
710a、710b スライドピン
91a、91b ガイド機構
92a、92b 下側の出力部材用支持機構
93a、93b 上側の出力部材用支持機構
94a、94b 回動部材用支持機構
100 リニア駆動装置
315a、315b、316a、316b 下側リブ状突起
325a、325b 上側リブ状突起
327a、327b リブ状突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源と、該駆動源の駆動力によって回動する回動部材と、該回動部材を収容するケースと、前記回動部材に従動して前記ケースから突出する方向の前進動作と前記ケース内に引っ込む方向の後退動作とを直線的に行なう出力部材と、を有するリニア駆動装置において、
前記回動部材は、該回動部材の回転中心軸線方向における一方面側に前記出力部材の被伝達部に重なって前記駆動源の駆動力を伝達する伝達部を備え、
当該回動部材の他方面側と前記ケースとの間には、少なくとも前記出力部材を前進させた際に当該回動部材の他方面側と前記ケースとが当接する回動部材用支持機構が構成されていることを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項2】
前記回動部材の前記伝達部および前記出力部材の前記被伝達部のうちの一方は、前記出力部材の進退方向および回動軸線方向に対して交差する方向に延在する開口部であり、他方は当該開口部に嵌って当該開口部内でスライドするスライトピンであることを特徴とする請求項1に記載のリニア駆動装置。
【請求項3】
前記出力部材の前記回転中心軸線方向における一方面側および他方面側のうちの少なくとも一方と前記ケースとの間には、当該出力部材と前記ケースとが前記回転中心軸線方向で当接し合う出力部材用支持機構が構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリニア駆動装置。
【請求項4】
前記出力部材と前記ケースとの間には、前記進退方向および前記回転中心軸線方向の双方に対して交差する方向で前記出力部材が前記ケースに当接して前記出力部材を前記進退方向にガイドするガイド機構が構成され、
前記出力部材において前記ガイド機構を構成する部分は、前記出力部材の前記被伝達部の近傍に形成されているとともに、前記ケースに対して前記回転中心軸線方向で当接して前記出力部材用支持機構を構成していることを特徴とする請求項3に記載のリニア駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−196807(P2010−196807A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42595(P2009−42595)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】