説明

リバース・スプロケット・トランスファー・ケース

回転自在な入力部材と、回転自在な出力部材と、入力部材と出力部材の間に作動的に係合された回転自在な遊星ギア部と、遊星ギア部に選択的に係合可能な可動カム部材を備え、これにより、カム部材が遊星ギアに係合するときに遊星ギア部の回転が止まり、カム部材が遊星ギア部に係合していないときに出力部材の回転方向が入力部材と同じ方向であり、カム部材が遊星ギア部に係合しているときに出力部材の回転方向が入力部材の回転方向と反対であるトランスファーケース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星ギア部に選択的に係合可能な可動カム部材を有するリバース・スプロケット・トランスファー・ケースに関し、これにより、カム部材が遊星ギア部に係合する時遊星ギア部の回転が止められ、それによって出力部材の回転方向を逆にする。
【背景技術】
【0002】
全地形型車両(ATV’S)はすでに公知である。それらは車両に悪路を走行させるために用いられるエンジンと変速機を備える。エンジンは一般的に、取り付けられた変速機とともに、2ストローク又は4ストロークの構成を備える。特にエンジンは通常オートバイから導入されるので、変速機は一般にオートバイで用いられるものと似ている。
【0003】
ATV’Sのひとつの欠点は、必要が生じたときに、車両を後退させる能力である。変速機はこの機能においては有用であるが、これらはコストがかかり、大きく複雑である。構成要素の欠陥はしばしば作動部品の数に関係するので、複雑さは悪いことに性能と信頼性に影響を与える。リバーシング変速機の大きさは、車両のデザインにおいても制限的な要素となっている。車両の全質量が400から500ポンドの範囲であるとき、大きく重い変速機は望ましくはない。
【0004】
米国特許6,742,618号明細書(2004)は遊星ギアを有する減速駆動システムを開示する。他の実施形態において、リバーシングユニットが示されている。
【0005】
要求されるものは、遊星ギア部に選択的に係合可能な可動カム部材を有し、これによってカム部材が遊星ギア部に係合するときに遊星ギア部の回転が止まる、リバース・スプロケット・トランスファー・ケースである。本発明はこの要求を満たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主要な特徴は、遊星ギア部に選択的に係合可能な可動カム部材であり、これによりカム部材が遊星ギア部と係合するときに遊星ギア部の回転がとまる、リバース・スプロケット・トランスファー・ケースを提供することである。
【0007】
本発明の他の特徴は、本発明の以下の記載と添付図面により開示されそして明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は回転自在な入力部材と、回転自在な出力部材と、入力部材と出力部材の間で作動的に係合された回転自在な遊星ギア部と、遊星ギア部と選択的に係合可能な可動カム部を備え、これにより、カム部材が遊星ギア部に係合したときに遊星ギア部の回転が止まり、カム部材が遊星ギア部に係合していないときに出力部材の回転方向が入力部材と同じ方向であり、カム部材が遊星ギア部に係合しているときに出力部材の回転方向が入力部材の回転方向と反対となるトランスファーケースである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
明細書の一部に組込まれ、明細書の一部を形成する添付図面は、本発明の好適な実施形態を示し、明細書の記載とともに発明の原理を説明する。
【図1】後方から見た分解斜視図である。
【図2】前方から見た分解斜視図である。
【図3】側面図である。
【図4】正面図である。
【図5】図4における断面A−Aである。
【図6】図3における断面B−Bである。
【図7】図3における断面C−Cである。
【図8】背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は後方から見た分解斜視図である。本発明のトランスファーケース100はスプロケット1を備える。ハブ4は、ニードルベアリング5によりスプロケット1に回転自在に係合される。ハブ4はボールベアリング16により遊星ケージ2に回転自在に係合される。図2参照。スプロケット表面10は歯付ベルト(不図示)に係合させるため歯形を有する。歯付ベルトは本技術分野において公知である。スプロケット1は典型的には入力部材であるが、それはまた、出力部材としても機能することができる。ハブ4は典型的には出力部材であるが、それはまた、入力部材としても機能することができる。
【0011】
遊星ギア8は遊星ケージ2に回転自在に係合され、遊星ケージ2の周りに環状に配置されている。各遊星ギア8は相対的に大きな第1の径81と相対的に小さな第2の径82を有するギアを備える。5つの遊星ギアが本実施形態において用いられている。ギア82はハブ4のギア41に係合する。ギア81はスプロケット1の内面においてリングギア110に係合する。
【0012】
遊星ケージ2及びギア8は遊星ギア部を備える。遊星ケージ2はベアリング11によりスプロケット1に回転自在に係合される。
【0013】
シフタースプリング21はハブ4とシフトリング13の間に配置される。スプリング21はシフトリング13が可動カム20と接触するように付勢する。シフタースプリング21はコイルスプリングである。
【0014】
アウターディスク12はボルト10を使うことによりスプロケット1に固着される。シフトリングギア130はアウターディスク12上のギア120に協働的に係合する。
【0015】
カム20はラチェット部201を備える。またカム20はボーデンケーブルのような作動ケーブル(不図示)に係合するレバー200を備える。
【0016】
カム20はベアリングプレート19に摺動自在かつ回転自在に係合する。カム部材202はカム体190に協働的に係合する。
【0017】
図2は前方から見た分解斜視図である。ラチェット部201は遊星ケージ2のラチェット部42に協働的に係合する。ハブ4はベアリング16により遊星ケージ2に係合する。
【0018】
リングギア210は遊星ケージ2の内面に固定して配置されている。
【0019】
図3は側面図である。カム体190はカム部材202に摺動自在に係合する。カム20は、レバー200に力を与えることにより、ベアリングプレート19に関して約25度の範囲内で回転する。図3は完全に後退した状態のカム20を示す。操作時において、カム20は図1に示されるような回転軸A−Aの周りにDの方向に回転移動する。
【0020】
図4は正面図である。歯付表面10は歯付ベルト(不図示)に係合する。
【0021】
図5は図4における断面A−Aである。リベットすなわちボルト14が、車両のエンジン(不図示)のような取付け面にベアリングプレート19を接続するために使われてもよい。ボルト10はアウターディスク12をスプロケット1に連結する。ハブ4は出力ドライブシャフト(不図示)に連結する。ドライブシャフトは車両の駆動車軸に連結されてもよい。
【0022】
図6は図3における断面B−Bである。ギア82はハブギア41に係合する。
【0023】
図7は図3における断面C−Cである。ギア81はスプロケットリングギア110に係合する。
【0024】
図8は背面図である。作動係合部204はケーブル(不図示)によってアクチュエータに連結される。レバー200は、各作動位置すなわち前方及び後方の間を約25度の円弧に沿って動く。
【0025】
ノーマルモード−フォワード(ノンリバース)
ノーマルモード操作時において、ドライブシャフト(不図示)はハブ4に接続されている。ベルト(不図示)は入力部材スプロケット1に接続されており、そしてそのベルトはトルクをスプロケット1に伝達して回転させる。
【0026】
このモードにおいて、カム20は後退している。すなわち、カム部材202及びカム体190は図3に示された相対的な位置にある。カム20が後退した位置にあることにより、スプリング21がカム20に向かってシフトリング13を付勢し、これによりギア130がアウターディスク12のギア120に係合する。シフトリング13のギア130は、また同時に、リングギア210にも係合している。この係合により、遊星ゲージ2がアウターディスク12とスプロケット1にロックされた関係で回転する。すなわちこのモードにおいて、遊星ケージ2とスプロケット1の間には相対的な回転がないので、スプロケット1、アウターディスク12、シフトリング13、そして遊星ゲージ2は、単一のユニットとして構成し、駆動される。遊星ケージ2は、スプロケット1と同期して回転するため、ギア8はリングギア110に対して相対的に回転しない。従って、ギア8はギア41を駆動し、それにより、ハブ4をスプロケット1と同じ回転速度で駆動する。それにより、ノーマルモードにおいては、遊星ケージ2はスプロケット1と同期して回転し、それにより、出力部材ハブ4は入力部材スプロケット1と同じ速度で回転する。
【0027】
このノーマルモードにおいて、駆動比は1:1である。
【0028】
リバースモード
リバースモードにおいて、カム20が駆動され、これにより、カム20がベアリングプレート19に関して少し回転する。部分的回転により、カム体190とカム部材202が互いに相対的に動く。そのような動きにより、カム20がベアリングプレート19から軸方向に動く。そしてそれは次に、ギア130をギア120から解放させる。これは遊星ゲージ2(ギア210)とスプロケット1(ギア120)の間における機械的駆動結合を切断する。またこれにより、ラチェット歯201がラチェット歯42に接触する。カム20は作動中において約25度の範囲内で部分的に回転するだけなので、このことは遊星ゲージ2の回転が止まることの全体的な効果を有する。しかしながら、ギア130とギア120が解放されているため、スプロケット1はまだ回転している。カム20が遊星ケージ2に係合するとき、遊星ギア部の遊星ケース2の回転は止まる。
【0029】
遊星ケージ2が回転を停止すると、ギア81とギア110の係合によりギア8が回転する。ギア8の回転によりギア82が回転し、次にハブギア41を駆動させる。しかしながら、ハブ4はギア8の固定位置により、スプロケット1の回転方向と反対の方向に回転する。静止している遊星ケージ2内におけるハブ4の回転は、ベアリング5とベアリング16によって可能となる。
【0030】
リバースモードにおいて、入力部材(スプロケット1)と出力部材(ハブ4)の間における駆動比は、約1.28:1である。これは、もし例えばギア8が1個のギアのみを備えるなら、その時ハブ4はリバースの状態において速さが上昇するためである。速さの増分は、スプロケットギア110の歯数とハブギア41の歯数の間の比に等しい。そしてそれは、例えばこの場合においては、75:35(2.14:1)である。単一ギア遊星ギア8は、トルク伝達反転媒体にすぎない。結果として、歯数は、この比においてどんな役割も果たさない。しかしながら、ギア8は大径ギア81と小径ギア82を有し、そして、各々はそれぞれギア110とギア41に係合するので、これは、(ギア81の歯数):(ギア82の歯数)のギア比により伝達速度を遅くする。この場合において例えば、15:25=0.6である。
【0031】
結果として、リバースモードにおける入力スプロケット1と出力ハブ4の間の全速度の変化/増加は次のようになる。
2.14×0.6=1.28
【0032】
これはリバースモードにおける全駆動比が1.28:1であることを意味する。この発明装置はリバースにおいて、フォワードにおける出力速度に比べ、出力速度の大きな変化なしにリバースオペレーションを達成する。これは、より大きな比を有する他の変速機を使用している小さなスロットル入力により引き起こされる可能性のある速度の急変を最小限にする。
【0033】
この駆動比はギア81と82の相対的な径により調整可能である。
【0034】
入力部材と出力部材は置換してもよく、この場合、入力部材がハブ4であり、出力部材がスプロケット1であり、等しい作用効果を有す。
【0035】
本発明の形態がここに記載されているが、ここに記載された発明の趣旨及び範囲から外れることなく部品及び方法の構造と関係に変化を施すことは本技術分野における当業者にとっては明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在な入力部材と、
回転自在な出力部材と、
前記入力部材と前記出力部材の間に機械的に係合された回転自在な遊星ギア部と、
前記遊星ギア部に選択的に係合可能であり、これにより前記カム部材が前記遊星ギア部に係合されたとき前記遊星ギア部の回転が停止される可動カム部を備え、
前記出力部材の回転方向が、前記カム部材が前記遊星ギア部に係合しないときに前記入力部材と同じ方向であり、
前記出力部材の回転方向が、前記カム部材が前記遊星ギア部に係合したときに前記入力部材の回転方向と反対である
トランスファーケース。
【請求項2】
カム部材ラチェット部が前記遊星ギア部のラチェット部に係合する請求項1に記載のトランスファーケース。
【請求項3】
前記遊星ギア部を前記出力部材に選択的に係合させるギアをさらに備え、これにより、前記遊星ギア部と前記出力部材がロックされた関係で回転する請求項1に記載のトランスファーケース。
【請求項4】
前記入力部材及び前記出力部材の間における出力駆動比がフォワードモードとリバースモードのいずれにおいてもほぼ同じである請求項1に記載のトランスファーケース。
【請求項5】
前記遊星ギア部の回転が、前記カム部材が遊星ギア部に係合する場合に止まる請求項1に記載のトランスファーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−535319(P2010−535319A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519185(P2010−519185)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/007814
【国際公開番号】WO2009/017551
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】