説明

リフロー半田付け方法及び装置

【課題】リフロー半田付けを高い処理速度及び均熱性を有して小さなスペースで実施可能なリフロー半田付け方法及びリフロー半田付け装置を提供すること。
【解決手段】リフロー半田付け装置が、液状熱媒体(23)を貯留した第1貯槽(5)及び第2貯槽(6)を具備し、第1貯槽内の上部に設けられた予熱/リフロー領域(26)に投入されたワーク(14)が、予熱工程において、第1貯槽の液状熱媒体(23)から蒸発した蒸気と、第2貯槽の液状熱媒体(23)から比較的少量の予熱用蒸発量で蒸発して予熱/リフロー領域(26)に流入した蒸気とによって加熱され、半田リフロー工程において、第1貯槽の液状熱媒体(23)から蒸発した蒸気と、第2貯槽の液状熱媒体(23)から比較的多量のリフロー用蒸発量で蒸発して予熱/リフロー領域(26)に流入した蒸気とによって加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒体の蒸気を用いてプリント基板のリフロー半田付けを行う方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高機能な半導体の開発要求から半導体チップを搭載するプリント基板も高集積化が進み、半田バンプ数も数百から数千まで増大すると共に微細化及び高密度化の要求からプリント基板の製造工程もクリンルーム内で製造することが強く望まれている。図2に示す、VPS(ベーパーフェイズソルダリング)装置100は、液状熱媒体110を加熱ヒータ120で加熱して発生した蒸気130によってプリント基板140のリフロー半田付けを行うものであり、例えば窒素リフロー装置に比較すると小型で床費の高価なクリンルームに設置するのに適していると共に、半田加熱温度の管理を正確且つ容易に実施できるという利点がある。しかし一方で、この種の装置は、プリント基板140の予熱手段にヒータ150を使用してヒータ150の輻射熱によってプリント基板を予熱している。このため、比較的長い冷却領域が必要であるとともに、輻射熱を利用することからプリント基板を複数枚重ねて予熱することができないという制約があって、小型化への限界と共に処理速度の高速化への限界があった。さらに、従来のVPS装置の場合、熱媒体の蒸気はプリント基板の下方からのみ供給されるので、プリント基板を例えば鉛直に立てて配置した場合等のワークの高さが高い場合にはワークの上部と下部との間の昇温性に差が生じるので、上部の遅い昇温性に合わせてリフロー工程の時間を設定しなければならない、あるいはワークが高さの低い例えば1枚の水平配置のプリント基板に限られる等の問題があった。なお、図2のVPS装置100に同様のその他の装置としては、例えば特許文献1及び特許文献2に記載の装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−111755公報
【特許文献2】特開平6−320260公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題点に鑑み、本発明は、リフロー半田付けを高い処理速度及び均熱性を有して小さなスペースで実施可能なリフロー半田付け方法及びリフロー半田付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0006】
請求項1に記載のリフロー半田付け方法は、リフロー半田付けをすべきワークを熱媒体の蒸気によって予熱する工程及び半田リフローをする工程を含み、
使用する半田の融点より高い沸点を有する液状熱媒体(23)を貯留し、前記熱媒体の蒸気を発生するように構成された第1貯槽(5)にして、該第1貯槽の液状熱媒体(23)より上方の空間に予熱/リフロー領域(26)が形成された第1貯槽(5)と、液状熱媒体(23)を貯留し、液状熱媒体(23)から蒸気を少なくとも二つの水準の比較的少量の予熱用蒸発量と比較的多量のリフロー用蒸発量とで発生するように構成された第2貯槽(6)とを備えたリフロー半田付け装置にして、第2貯槽(6)で発生した熱媒体の蒸気が、予熱/リフロー領域(26)の上側部分から該領域に流入するように、第2貯槽(6)が予熱/リフロー領域(26)の上側部分に連通しているリフロー半田付け装置を用いるものであり、
ワーク(14)を予熱する工程において、予熱/リフロー領域(26)に投入されたワーク(14)の表面温度が半田融点より低温の所定の予熱温度で維持されるように、第1貯槽の液状熱媒体(23)から蒸発した蒸気と、第2貯槽の液状熱媒体(23)から比較的少量の予熱用蒸発量で蒸発して予熱/リフロー領域(26)に流入した蒸気とによってワーク(14)が加熱され、
半田リフローをする工程において、予熱/リフロー領域(26)に留められたワーク(14)の表面温度が半田融点より高温の所定のリフロー温度に達するように、第1貯槽の液状熱媒体(23)から蒸発した蒸気と、第2貯槽の液状熱媒体(23)から比較的多量のリフロー用蒸発量で蒸発して予熱/リフロー領域(26)に流入した蒸気とによってワーク(14)が加熱されることを特徴としている。
【0007】
この方法では、予熱とリフローの両方の工程において、ワークの加熱は熱媒体の蒸気によってなされるので、複数のワークを並列に配置することができ、その結果ワーク一つあたりの処理速度が高まる。また予熱とリフローの両方の工程が一つの予熱/リフロー領域で行われるので必要なスペースは小さい。さらに、ワークはその上部に隣接して第2貯槽からの蒸気流入口が設けられ、ワークの下部に隣接して第1貯槽の加熱された液状熱媒体が貯留されているので、ワークの上下方向の温度変化が小さく均熱性の高い加熱が実現される。
【0008】
請求項2に記載のリフロー半田付け装置は、リフロー半田付けをすべきワークを熱媒体の蒸気によって予熱しかつリフロー半田付けをするものであって、
処理槽(2)を具備し、
処理槽(2)が、該処理槽(2)内の上方領域に冷却手段(16)を具備することにより冷却領域(17)を形成し、該処理層内の下方領域に、ワーク(14)の通過が可能なように上面側が開放した第1貯槽(5)にして、使用する半田の融点より高い沸点を有する液状熱媒体(23)を貯留し、貯留した液状熱媒体(23)から蒸気を発生させるための第1加熱ヒータ(21)を備えた第1貯槽(5)を具備し、
処理槽(2)が、液状熱媒体(23)と同一種類の液状熱媒体(23)を貯留する第2貯槽(6)にして、貯留した液状熱媒体(23)から蒸気を少なくとも二つの水準の比較的少量の予熱用蒸発量と比較的多量のリフロー用蒸発量とで発生するために発熱量を変化させることが可能な第2加熱ヒータ(22)を備えた第2貯槽(6)を更に具備し、
第1貯槽(5)が、熱媒体の蒸気によってワーク(14)の予熱と半田リフローの両方を行うための予熱/リフロー領域(26)を該第1貯槽の液状熱媒体(23)より上の空間に形成し、
第2貯槽(6)で発生した熱媒体の蒸気が、予熱/リフロー領域(26)の上側部分から該領域に流入するように、第2貯槽(6)が予熱/リフロー領域(26)の上側部分に連通し、
ワーク(14)を予熱するときに、第1貯槽の液状熱媒体(23)から蒸発した蒸気と、第2貯槽の液状熱媒体(23)から比較的少量の予熱用蒸発量で蒸発して予熱/リフロー領域(26)に流入した蒸気とによって、ワーク(14)の表面温度が半田融点より低温の所定の予熱温度で維持されるように、及び、
ワーク(14)上の半田を溶融するときに、第1貯槽の液状熱媒体(23)から蒸発した蒸気と、第2貯槽の液状熱媒体(23)から比較的多量のリフロー用蒸発量で蒸発して予熱/リフロー領域(26)に流入した蒸気とによって、ワーク(14)の表面温度が半田融点より高温の所定のリフロー温度に達するように、第2加熱ヒータ(22)の出力が制御されることを特徴としている。
【0009】
このリフロー半田付け装置は、ワークの加熱は熱媒体の蒸気によってなされるので、複数のワークを並列に配置することができ、その結果ワーク一つあたりの処理速度を高めることができる。また予熱とリフローが一つの予熱/リフロー領域で行われるので装置をコンパクトにできる。さらに、ワークはその上部に隣接して第2貯槽からの蒸気流入口が設けられ、ワークの下部に隣接して第1貯槽の加熱された液状熱媒体が貯留されているので、ワークの上下方向の温度変化が小さくその結果均熱性の高い加熱が実現される。
【0010】
請求項3に記載のリフロー半田付け装置は、第2貯槽(6)が第1貯槽(5)に隣接しかつ第1貯槽(5)を取囲むように配置されると共に、第2貯槽(6)と第1貯槽(5)とが周回する仕切側壁(27)によって区画され、第2貯槽(6)の上面が上面板(24)によって閉じられ、第2貯槽(6)から発生した熱媒体の蒸気が仕切側壁(27)の上端と上面板(24)の内面との間に形成された開口(28)を通して第1貯槽の予熱/リフロー領域(26)に流入することを特徴としている。
【0011】
このリフロー半田付け装置では、第2貯槽から第1貯槽の予熱/リフロー領域に流入する蒸気が、予熱/リフロー領域を周回する開口から流入するので、予熱/リフロー領域における水平方位方向での均熱性が高まる。
【0012】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
添付の図面を参照しながら、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。図1は、本発明によるリフロー半田付け装置1の実施例を示したもので、図示実施例の装置1は、主要部として処理槽2を具備している。処理槽2はその上下の中間部分に水平に延在する支持プレート3を具備しており、前記支持プレート3の上に冷却部4が形成されている。また、前記支持プレート3の中心部を貫通して第1貯槽5及び該第1貯槽を取囲む第2貯槽6が支持プレート3に結合され、その結果第1及び第2貯槽の一部が支持プレート3の上側の冷却部4側に突出しているが、第1及び第2貯槽は全体としては冷却部4の下方に配置されている。処理槽2はステンレス鋼の溶接構造であり、その冷却部4及び第1及び第2貯槽の横断面形状(不図示)は共に矩形であって、本実施例の場合冷却部4は第2貯槽6よりも大きな矩形の断面積を有している。前記支持プレート3は、装置1の4本の柱7で支えられ、前記4本の柱7はその下部を装置1の連結プレート8で連結されると共に下端部にフット9を有している。また処理槽2の上面部には、リフロー半田付けをすべきワークを出し入れするための開口部10が設けられているが、前記開口部10はヒンジ11によって開閉可能なハッチ12によって通常は閉じられている。また第2貯槽6の外面には断熱材13が取り付けられている。なお、本実施例では、ワークはプリント基板14である。
【0014】
処理槽2の上方の前記冷却部4の側壁15内側には側壁15上を巻回する水冷パイプからなる冷却手段16が設けられている。この結果、処理槽2の冷却部4に、プリント基板14を冷却する冷却領域17が形成される。また前記冷却手段16は後述する熱媒体の蒸気を凝縮して液体に戻す。冷却手段16の水冷パイプは、外部の冷却水供給装置(不図示)から約20℃の冷却水の供給を受けて、処理槽内の熱を吸熱して温められた冷却水を前記冷却水供給装置に戻すように配管接続されている。冷却水供給装置に戻された冷却水はそこで熱交換されて約20℃に冷却される。また水冷パイプによって凝縮されて生じた熱媒体の液体を第2貯槽6に戻すための戻しパイプ18の第1の端部18aが、支持プレート3の側壁15の近くに開口し、途中で分岐した第2の端部18bが第2貯槽6の底面板19に開口している。なお、前記戻しパイプ18は、弁20によって閉じられた第3の端部18cを前記第2の端部18bより下位に有している。
【0015】
第1貯槽5及び第2貯槽6は、それぞれの底部に第1加熱ヒータ21及び第2加熱ヒータ22を備えると共に、本実施例では沸点240℃のフッ素系不活性液体である液状熱媒体23を貯留している。前記各加熱ヒータは、本実施例では、パイプの内部に電熱線が収容された液体加熱用のパイプヒータである。
【0016】
第2貯槽6の上面は上面板24によって閉じられているが、第1貯槽5の上面は、プリント基板14が通過することができる開口25が開けられている。そして第1貯槽5の底部に貯留された液状熱媒体23の上部の空間が、プリント基板14の予熱とリフロー半田付けの両方を行うための空間として利用され、この空間が予熱/リフロー領域26と呼称される。また、第1貯槽の第1加熱ヒータ21は第1貯槽5に貯留された液状熱媒体23をその沸点である240℃で維持するのに必要な最小限の熱を発する固定出力のものである。
【0017】
第2貯槽の第2加熱ヒータ22は、コントローラ(不図示)によってその出力が制御されることによって、第2貯槽6に貯留された液状熱媒体23から発生する蒸気の蒸発量を変化させることができるものである。第2加熱ヒータは、最大出力時には液状熱媒体をその沸点240℃で維持するのに必要な熱量の約1.5倍の熱量を発生して、比較的多量のリフロー用蒸発量で熱媒体の蒸気を発生させると共に、例えば40%出力時に比較的少量の予熱用蒸発量で蒸気を発生させることができる。なお、本実施例のコントローラは、第2加熱ヒータ22の出力とその出力の継続時間とを望ましい任意の値に、例えば予熱工程では40%出力で120秒通電し、次いで半田リフロー工程では100%出力で60秒通電し、次いで冷却工程では0%出力を120秒継続する、というようにあらかじめプログラムをすることができ、また同時に、後述する昇降装置の制御、並びに第1加熱ヒータ21及び冷却水供給装置の始動等が可能なものであるが、公知の技術で容易に構成可能なものであるので詳細は省略する。
【0018】
本実施例では、第1貯槽5の側壁と第2貯槽6の内側の側壁は共通の一枚の仕切側壁27から構成されているが、この仕切側壁27の上端と第2貯槽6の上面板24との間には周回する帯状開口28が形成されている。このようになっているので、第2貯槽6で熱媒体の蒸気が発生したときは、その蒸気は第1貯槽5の予熱/リフロー領域26に流入することが可能である。また、第1貯槽と第2貯槽の液面レベルを等しくするために前記仕切側壁27の下端の近くに穴29が1個あけられている。
【0019】
リフロー半田付けをすべきワークは、前述のとおりプリント基板であり、その表面には、図示していないが、半田粉末及びフラックス等を含んだペースト状のクリーム半田が印刷されてクリーム半田のバンプが形成されている。半田は、本実施例のプリント基板14では融点220℃の鉛フリー半田である。なお、本実施例におけるプリント基板14は、電子部品を搭載したものではなく、プリント基板14に印刷されたクリーム半田のバンプを溶融固化することを目的にリフロー半田付けされるものである。
【0020】
本リフロー半田付け装置1は、プリント基板14を搭載して移動するためのホルダ30を付属品として具備しており、ホルダ30は、5枚のプリント基板14を垂直に所定の間隔で並べて保持できる構造を有する。またホルダ30は、熱媒体の蒸気が抵抗なくホルダ30を上下方向に通過できるように多数の穴(不図示)が開けられている。さらに、プリント基板14が予熱/リフロー領域26に投入された際の前記仕切側壁27からの輻射熱を遮るために、配列されたプリント基板14の表面と平行の方向で、ホルダ30の両側端に耐熱性を有する例えばPTFE樹脂性の遮熱板31が取り付けられている。なお、本実施例では、プリント基板は垂直に配置されるが、プリント基板を水平に配置することも、水平配置用のホルダを準備することにより容易に可能になり、その場合前記側方の遮熱板31は取り除かれ、ホルダの底面側に必要に応じて遮熱板を設けてよい。
【0021】
さらに、処理槽2内には、ホルダ30及びプリント基板14を昇降させるための昇降装置(不図示)が設けられている。この昇降装置は、ホルダ30の両側端部を載せることができる2本の支持腕32を備えており、前記支持腕32がホルダ30を載せた状態で、冷却領域17と予熱/リフロー領域26との間を昇降するように構成されている。
【0022】
次に、以上のように構成されたリフロー半田付け装置1がどのように作動してリフロー半田付け工程を実施するかを以下に説明する。なお、図中の実線の矢印Aは、昇降装置によって移動されるホルダ30の経路を示し、破線の矢印Aは、人又は装置1に含まれない搬送ロボット等(不図示)によって移動されるホルダ30の経路を示すものである。
【0023】
まず、クリーム半田によって半田バンプが形成された5枚のプリント基板14をホルダ30に垂直に並べて準備しておく。コントローラを介してリフロー半田付け装置1を始動すると、装置1の始動により、冷却水供給装置が作動して冷却手段が稼働し、第1加熱ヒータが一定の出力で稼働し、第2加熱ヒータが本実施例では40%出力で稼働する。第1貯槽5の液状熱媒体23の液温は、ある時間が経過するとほぼ沸点の240℃に達するが、第1加熱ヒータ21の発熱量は沸点を維持するのに必要な最小限の熱量であるので蒸発量は比較的少量である。第2貯槽6の液状熱媒体23は40%出力状態の第2加熱ヒータ22によって比較的少量の予熱用蒸発量で蒸気を発生している。この状態で所定の時間が経過すると、予熱/リフロー領域26及の温度が所定の準備温度に達したリフロー半田付け装置1が準備される。
【0024】
次いで、処理槽のハッチ12が開けられて、冷却領域17に上昇している昇降装置の支持腕32にホルダ30を載せると予熱工程が始まる。直ちにハッチ12が閉じられると共に、ホルダ30及びプリント基板14は第1貯槽内の予熱/リフロー領域26まで昇降装置によって下ろされる。この予熱工程では、予熱/リフロー領域26は、第1貯槽の液状熱媒体23から蒸発した蒸気と、第2貯槽の液状熱媒体23から比較的少量の蒸発量で蒸発して予熱/リフロー領域26の側方上部に開口している帯状開口28を通して予熱/リフロー領域26に流入した蒸気とによって満たされる。その結果、プリント基板14の表面に接した蒸気は凝縮してプリント基板14に熱を伝え、当初室温とほぼ同じ温度であったプリント基板14の温度を上昇させる。またこのように流入した熱量と、冷却領域17へ流出する熱量とによってプリント基板14の表面温度を所定の予熱温度と時間で、例えば約170℃で100秒間維持することが可能になる。なお、第1貯槽の液状熱媒体23と仕切側壁27からの輻射熱も考慮する必要があるが、ホルダ30の両側には耐熱樹脂製の遮熱板31が備えられていることにより仕切側壁27からの輻射は遮断され、またプリント基板14が垂直に配置されていることから第1貯槽の液状熱媒体23からの輻射はほとんど無視することができ、従ってプリント基板14は、熱媒体の蒸気を主要構成要素とした周囲の雰囲気流体からの熱伝達によって加熱される。
【0025】
このとき、プリント基板14の上部は冷却領域17に隣接するが、第2貯槽6から予熱/リフロー領域26の上部に流れ込んだ蒸気によって包まれていること、及びプリント基板14の下方にもほぼ240℃の液体が貯留されていることから、プリント基板14の上部と下部の温度差は小さく均熱性の高い加熱が実現される。
【0026】
所定の予熱時間が経過して予熱工程が終わると、リフロー工程が始まる。リフロー工程では第2加熱ヒータ22の出力が100%出力まで増大されて第2貯槽の液状熱媒体23が沸騰して比較的多量のリフロー用蒸発量で蒸気を発生し、予熱/リフロー領域26に流れ込む蒸気の量及び温度が前工程の予熱工程のときより増大する。所定のリフロー時間、本実施例では60秒経過する間にプリント基板14のどの部位の表面温度も半田の融点である220℃を超えて半田が溶融される。
【0027】
リフロー工程において、プリント基板14は第2貯槽6から予熱/リフロー領域26の上部に流れ込んで下方へ流れる蒸気により主に加熱されるが、プリント基板14の下方にもほぼ240℃の液体が貯留されているので、プリント基板14の上部と下部の温度差は小さく均熱性の高い加熱が実現される。
【0028】
所定のリフロー時間が経過して、リフロー工程が終わると、第2加熱ヒータ22の出力は0%に落とされると共に、プリント基板14及びホルダ30は昇降装置によって処理槽の上方の冷却領域17へ引き上げられて所定の冷却時間をそこで留められて冷却された後、ハッチ12が開けられて人又は前記搬送ロボット(不図示)によって処理槽2の外に引き出され、ハッチ12が閉じられる。これでリフロー半田付け工程の1サイクルが終了して、凝固した半田バンプが形成された5枚のプリント基板が完成する。
【0029】
上述の実施例では、第1貯槽の液状熱媒体の液温はほぼ240℃一定であったが、予熱工程におけるプリント基板の温度を下げる必要がある場合には第1加熱ヒータを変更して前記液温を例えば200℃一定に設定してもよく、また予熱工程における第2加熱ヒータの出力40%とその継続時間100秒の設定を変更してもよい。さらに、第2加熱ヒータの予熱工程の出力を、前述の実施例のように40%一定ではなく、予熱工程開始直後は100%にし中間の時間帯で40%にし予熱工程終了前に80%の時間帯を設けるようにしてもよい。このように予熱工程の加熱条件及びリフロー工程の加熱条件は、各加熱ヒータの絶対出力、冷却手段の冷却能力、処理槽の断熱性、処理槽各部の寸法・容積、熱媒体の特性及び容量、並びにワークの熱容量等に応じて変更してよい。
【0030】
また、実施例のリフロー半田付け装置では、第2貯槽は第1貯槽を取囲むように配置されているが、本発明のリフロー半田付け装置は、この配置に限定されるものではなく、例えば第2貯槽が、第1貯槽からやや離れて配設され、第2貯槽から第1貯槽への蒸気の供給が管路を通して行われるように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるリフロー半田付け装置の内部を示す正面断面図である。
【図2】従来のリフロー半田付け装置の内部を示す正面断面図である。
【符号の説明】
【0032】
2 処理槽
5 第1貯槽
6 第2貯槽
14 プリント基板
17 冷却領域
21 第1加熱ヒータ
22 第2加熱ヒータ
23 液状熱媒体
26 予熱/リフロー領域
28 帯状開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフロー半田付けをすべきワークを熱媒体の蒸気によって予熱する工程及び半田リフローをする工程を含むリフロー半田付け方法であって、
使用する半田の融点より高い沸点を有する液状熱媒体(23)を貯留し、前記熱媒体の蒸気を発生するように構成された第1貯槽(5)にして、該第1貯槽の液状熱媒体(23)より上方の空間に予熱/リフロー領域(26)が形成された第1貯槽(5)と、前記液状熱媒体(23)を貯留し、前記液状熱媒体(23)から蒸気を少なくとも二つの水準の比較的少量の予熱用蒸発量と比較的多量のリフロー用蒸発量とで発生するように構成された第2貯槽(6)とを備えたリフロー半田付け装置にして、前記第2貯槽(6)で発生した熱媒体の蒸気が、前記予熱/リフロー領域(26)の上側部分から該領域に流入するように、前記第2貯槽(6)が前記予熱/リフロー領域(26)の前記上側部分に連通しているリフロー半田付け装置を用いたリフロー半田付け方法において、
前記ワーク(14)を予熱する工程において、前記予熱/リフロー領域(26)に投入されたワーク(14)の表面温度が半田融点より低温の所定の予熱温度で維持されるように、前記第1貯槽の液状熱媒体(23)から蒸発した蒸気と、前記第2貯槽の液状熱媒体(23)から前記比較的少量の予熱用蒸発量で蒸発して予熱/リフロー領域(26)に流入した蒸気とによってワーク(14)が加熱され、
前記半田リフローをする工程において、前記予熱/リフロー領域(26)に留められたワーク(14)の表面温度が半田融点より高温の所定のリフロー温度に達するように、第1貯槽の液状熱媒体(23)から蒸発した蒸気と、前記第2貯槽の液状熱媒体(23)から比較的多量のリフロー用蒸発量で蒸発して予熱/リフロー領域(26)に流入した蒸気とによってワーク(14)が加熱されることを特徴とするリフロー半田付け方法。
【請求項2】
リフロー半田付けをすべきワークを熱媒体の蒸気によって予熱しかつリフロー半田付けをするリフロー半田付け装置であって、
処理槽(2)を具備し、
前記処理槽(2)が、該処理槽(2)内の上方領域に冷却手段(16)を具備することにより冷却領域(17)を形成し、該処理層内の下方領域に、ワーク(14)の通過が可能なように上面側が開放した第1貯槽(5)にして、使用する半田の融点より高い沸点を有する液状熱媒体(23)を貯留し、貯留した液状熱媒体(23)から蒸気を発生させるための第1加熱ヒータ(21)を備えた第1貯槽(5)を具備し、
前記処理槽(2)が、前記液状熱媒体(23)と同一種類の液状熱媒体(23)を貯留する第2貯槽(6)にして、貯留した液状熱媒体(23)から蒸気を少なくとも二つの水準の比較的少量の予熱用蒸発量と比較的多量のリフロー用蒸発量とで発生するために発熱量を変化させることが可能な第2加熱ヒータ(22)を備えた第2貯槽(6)を更に具備する、リフロー半田付け装置において、
前記第1貯槽(5)が、前記熱媒体の蒸気によってワーク(14)の予熱と半田リフローの両方を行うための予熱/リフロー領域(26)を該第1貯槽の液状熱媒体(23)より上の空間に形成し、
前記第2貯槽(6)で発生した熱媒体の蒸気が、前記予熱/リフロー領域(26)の上側部分から該領域に流入するように、前記第2貯槽(6)が前記予熱/リフロー領域(26)の前記上側部分に連通し、
ワーク(14)を予熱するときに、第1貯槽の液状熱媒体(23)から蒸発した蒸気と、前記第2貯槽の液状熱媒体(23)から前記比較的少量の予熱用蒸発量で蒸発して予熱/リフロー領域(26)に流入した蒸気とによって、ワーク(14)の表面温度が半田融点より低温の所定の予熱温度で維持されるように、及び、
ワーク(14)上の半田を溶融するときに、第1貯槽の液状熱媒体(23)から蒸発した蒸気と、前記第2貯槽の液状熱媒体(23)から比較的多量のリフロー用蒸発量で蒸発して予熱/リフロー領域(26)に流入した蒸気とによって、ワーク(14)の表面温度が半田融点より高温の所定のリフロー温度に達するように、前記第2加熱ヒータ(22)の出力が制御されることを特徴とするリフロー半田付け装置。
【請求項3】
前記第2貯槽(6)が前記第1貯槽(5)に隣接しかつ第1貯槽(5)を取囲むように配置されると共に、第2貯槽(6)と第1貯槽(5)とが周回する仕切側壁(27)によって区画された請求項2に記載のリフロー半田付け装置であって、前記第2貯槽(6)の上面が上面板(24)によって閉じられ、前記第2貯槽(6)から発生した熱媒体の蒸気が前記仕切側壁(27)の上端と前記上面板(24)の内面との間に形成された開口(28)を通して前記第1貯槽の予熱/リフロー領域(26)に流入することを特徴とする、請求項2に記載のリフロー半田付け装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−227741(P2007−227741A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48336(P2006−48336)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】