説明

リポキシゲナーゼ完全欠失大豆とキラヤ抽出物とユッカ抽出物とを含む組成物とその利用

【解決手段】脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆と、キラヤ抽出物と、ユッカ抽出物とを含む組成物の提供。
【効果】脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆に、キラヤ抽出物とユッカ抽出物を混合することにより、コレステロール低下作用が顕著に高まる。さらには大豆の青臭みの原因物質であるリポキシゲナーゼを含まない大豆を配合することにより長期間に渡って摂取することができる。すなわちこの組成物は高いコレステロール低下作用を持ち、医薬品、飲料、食品として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆とキラヤ抽出物とユッカ抽出物とを含む組成物に関する。また本発明は、当該組成物を含む医薬組成物(特にコレステロール低下剤)、飲料および食品にも関する。
【背景技術】
【0002】
大豆は、健康を増進する機能を有することが古くから知られており、近年の健康ブームの影響で一段と注目されるようになっている食品である。これまでにも、大豆に含まれる様々な成分に備わる機能について活発な研究がなされてきた。その結果、例えば大豆に含まれる大豆タンパク質には血圧上昇抑制効果や心臓病リスク軽減効果があることが明らかにされ、大豆に含まれる食物繊維には便秘解消効果や大腸ガン予防効果があることが明らかにされている。また、大豆に含まれるオリゴ糖にはビフィズス菌増殖促進による整腸作用効果があることが明らかにされ、大豆に含まれるイソフラボンには更年期障害緩和効果や骨粗鬆症予防効果がることが明らかにされている。
【0003】
しかし、このような種々の機能を備えた大豆を摂取しようとしても、大豆独特の青臭さが障害となって食が進まなくなるという問題があった。例えば、大豆をすりつぶして豆乳等の飲料を作製すると、青臭さが強くなって食味を損なってしまうという問題があった。このため、大豆独特の青臭みを取り除くために種々研究が進められてきた。
【0004】
近年になって、大豆の青臭みの原因が大豆中に存在する酵素の一つであるリポキシナーゼであることが判明したため、その知見に基づいてリポキシナーゼを取り除いた大豆が開発されている。リポキシナーゼを取り除いた大豆としては、リポキシゲナーゼL−1、L−2およびL−3の全てを欠失するリポキシゲナーゼ完全欠失大豆や、リポキシゲナーゼL−1、L−2およびL−3のうちいくつかを欠失するリポキシゲナーゼ部分欠失大豆が知られている(非特許文献1および2参照)。特にリポキシゲナーゼ完全欠失大豆は、青臭さが少なくて味も良いことから、食材としての幅広い応用が期待されるが、その機能についてはあまり研究されていない。
【0005】
一方、キラヤ抽出物やユッカ抽出物は、古くから発泡剤、乳化剤、香料として、化粧品、飲料、食品に添加されていた。キラヤ抽出物やユッカ抽出物はサポニンを多く含むことから、近年ではその生理活性が研究されるようになっている。その結果、コレステロール含量が低い家禽卵を産卵させたり、糞尿の悪臭を抑えたり、飼料効率を上げたりすることを目的として、キラヤ抽出物とユッカ抽出物を含む飼料添加剤を用いることが提案されている(特許文献1〜3参照)。また、人への投与を目的としたものとして、キラヤ抽出物とユッカ抽出物を含む血中コレステロール低下剤や心血関係疾患予防治療剤が提案されている(特許文献4参照)。さらに、キラヤ抽出物とユッカ抽出物を含む固形食品も提案されている(特許文献5参照)。しかしながら、キラヤ抽出物とユッカ抽出物に、さらに大豆を組み合わせることについては、これまでまったく検討がなされていない。
【非特許文献1】「リポキシゲナーゼ完全欠失大豆の機能性と新規加工食品創出」須田郁夫著、豆類時報,14(3),32〜38頁(1998年)
【非特許文献2】Japan J. Breed., 羽鹿ら,第41巻、507頁(1991年)
【特許文献1】特開平5−7462号公報
【特許文献2】特開平7−222555号公報
【特許文献3】特開2006−61092号公報
【特許文献4】国際公開第2002/067963号パンフレット
【特許文献5】特開2005−143506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、大豆には様々な機能があることが知られているが、その効果は必ずしも大きいとは言えない。このため、十分な効果を得るためには、長期間にわたって大豆を大量に摂取することが求められるが、嗜好が多様化している現代において多くの人に大量摂取を求めることは事実上不可能である。このため、大豆に備わっている機能を高め、摂取量が少なくても効率よく効果を得ることができるようにすることが望ましい。しかしながら、従来はこのような観点から十分に大豆が研究されているとは言い難かった。
【0007】
そこで本発明者らは、自然界に存在する材料を利用して、安全に大豆の機能を高めることを本発明の目的として設定した。具体的には、コレステロール低下作用が高い安全な組成物を提供し、当該組成物を含む医薬品、飲料、食品を提供することを目的として設定した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆に、キラヤ抽出物とユッカ抽出物を混合することにより、コレステロール低下作用が顕著に高まることを見出し、従来技術の課題を解決して本発明の目的を達成しうることを見出した。すなわち、課題を解決する手段として、以下の本発明を提供するに至った。
【0009】
[1] 脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆と、キラヤ抽出物と、ユッカ抽出物とを含むことを特徴とする組成物。
[2] さらにカゼインを含むことを特徴とする[1]の組成物。
[3] 前記リポキシゲナーゼ完全欠失大豆が脱脂処理を経ていないことを特徴とする[1]または[2]の組成物。
[4] [1]〜[3]のいずれかの組成物を含むことを特徴とする医薬組成物。
[5] 脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆を含むことを特徴とするコレステロール低下剤。
[6] [1]〜[3]のいずれかの組成物を含むことを特徴とするコレステロール低下剤。
[7] [1]〜[3]のいずれかの組成物を含むことを特徴とする飲料および食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物は、その成分であるリポキシゲナーゼ完全欠失大豆のコレステロール低下作用や、キラヤ抽出物とユッカ抽出物の混合物のコレステロール低下作用よりも、かなり高いコレステロール低下作用を示す。また、本発明の組成物は安全であることから、医薬品、飲料、食品として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下において、本発明の組成物とその利用について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本発明の組成物は、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆と、キラヤ抽出物と、ユッカ抽出物とを含むことを特徴とする。そこでまず、これらの成分について順に説明する。
【0013】
(リポキシゲナーゼ完全欠失大豆)
本発明において「リポキシゲナーゼ完全欠失大豆」とは、リポキシゲナーゼL−1、L−2およびL−3の全てを欠失する大豆を意味する。大豆中のリポキシゲナーゼは、電気泳動法、色素退色法等で調べることができる。具体的には、「Simple and rapid method for the selective detection of individual lipoxygenase isozymes in soybean seeds」Suda I, Hajika M, Nishiba Y, Furuta S and Igita K, J. Agric. Food Chem., 43(3), 742〜747頁(1995年)や、「大豆リポキシゲナーゼアイソザイムの簡易検出法の開発」流通利用研究室著、吸収農業試験場における最近の主要研究成果(第3章),10頁(1996年)に記載されている方法を用いて調べることができる。これらの方法のいずれかにおいて、リポキシゲナーゼL−1、L−2およびL−3の全てを欠失していると判定されたものは、本発明の「リポキシゲナーゼ完全欠失大豆」に含まれる。
【0014】
本発明に用いられるリポキシゲナーゼ完全欠失大豆は、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆である。本発明に用いられるリポキシゲナーゼ完全欠失大豆の脂質含有量は、好ましくは21質量%以上、より好ましくは22質量%以上である。
【0015】
脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全失欠大豆としては、市販されているものを用いることができる。本発明では、例えばエルスターやいちひめといった商品名で市販されている大豆を用いることができ、特にエルスター大豆を用いることが好ましい。エルスター大豆は、播種時期にもよるが通常は22〜23質量%の脂質を含んでいる。このように、通常用いられるリポキシゲナーゼ完全欠失大豆は、脂質を20質量%以上含んでおり、本発明ではこのようなリポキシゲナーゼ完全欠失大豆を脱脂処理を施すことなく使用することができる。脱脂処理を施さないことで、脱脂大豆を用いるときよりも製造を簡略化し、コストを下げることができるという利点がある。
【0016】
本発明の組成物中における、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全失欠大豆の含有量は、本発明の組成物の総量に対して5〜40質量%が好ましく、10〜45質量%が更に好ましく、15〜30質量%が特に好ましい。
【0017】
(キラヤ抽出物およびユッカ抽出物)
次に、本発明の組成物に用いられるキラヤ抽出物とユッカ抽出物について説明する。
本発明におけるキラヤ抽出物とは、キラヤ(キラヤ・サポナリア)の樹皮から抽出される成分である。キラヤは、南米チリの乾燥地域等に生息するバラ科の植物である。キラヤ抽出物は、例えば、サポニンを多く含む樹皮部や木質部を煮沸して抽出した成分を濃縮することで得ることができる。本発明では、得られた濃縮物をさらにアルコール抽出して得られた成分をキラヤ抽出物として使用することもできる。ここでいうアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどを挙げることができ、ブタノールを使用することが好ましい。
【0018】
また、本発明におけるユッカ抽出物とは、ユッカ属に属するユッカから抽出される成分である。ユッカは、メキシコや米国南西部の乾燥地域等で自生するユリ科の植物であり、具体的にはユッカ・シジゲラ(Yucca Schidigera)、ユッカ・アラボレセンス、ユッカ・モヘーブ、ユッカ・ジョショア、イトラン(ベアグラス)などが挙げられる。ユッカ抽出物は、例えば、ユッカの幹や木質部を機械的に圧縮して得られた成分を濃縮することで得ることができる。本発明では、得られた濃縮物をさらにアルコール抽出して得られた成分をユッカ抽出物として使用することもできる。ここでいうアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどを挙げることができ、ブタノールを使用することが好ましい。
【0019】
キラヤ抽出物およびユッカ抽出物については、例えば、本明細書の一部としてここに引用する国際公開第2002/067963号パンフレット(特に3頁11行〜5頁1行)や特開2005−143506号公報(特に[0002]〜[0003])に記載のものを適宜用いることができる。また、キラヤ抽出物とユッカ抽出物との混合物としては、セルテック社より販売されているYQ2(商品名)を用いることができる。
【0020】
本発明の組成物中におけるキラヤ抽出物の含有量は、本発明の組成物の総量に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.2〜3質量%がさらに好ましい。また、本発明の組成物中におけるユッカ抽出物の含有量は、本発明の組成物の総量に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.2〜3質量%がさらに好ましい。
【0021】
本発明の組成物におけるキラヤ抽出物とユッカ抽出物の含有比は特に限定されるものではないが、質量比(キラヤ:ユッカ)で、10:90〜90:10が好ましく、30:70〜70:30が更に好ましく、40:60〜60:40が特に好ましい。
【0022】
また、本発明におけるキラヤ抽出物およびユッカ抽出物の総量と、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全失欠大豆との含有比は特に限定されるものではないが、質量比(キラヤ・ユッカ抽出物:脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全失欠大豆)で、1:5〜1:100が好ましく、1:10〜1:50がより好ましく、1:15〜1:30がさらに好ましい。
【0023】
(他の成分)
本発明の組成物には、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆、キラヤ抽出物、ユッカ抽出物以外の成分を、本発明の所期の効果を過度に損なわない範囲内で添加することができる。
【0024】
例えば、本発明の組成物は、必要に応じてさらにカゼインを含んでいてもよい。本発明におけるカゼインの含有量は、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全失欠大豆に対して10〜50質量%が好ましく、15〜45質量%がより好ましく、20〜40質量%がさらに好ましい。また本発明の組成物は、脂質含有量が20質量%未満であるリポキシゲナーゼ完全失欠大豆や、脱脂または非脱脂のリポキシゲナーゼ部分失欠大豆や、脱脂または非脱脂のリポキシゲナーゼ含有大豆を含んでいてもよい。さらに本発明の組成物は、その他、目的に応じてラード、コーン油、ラクトース、セルロース、各種ビタミン、各種ミネラル、コール酸、塩化コリン、スクロース、スターチ等を含んでいてもよい。
【0025】
(本発明の組成物の作用)
脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆とキラヤ抽出物とユッカ抽出物とを含むことを特徴とする本発明の組成物は、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆のみを含む組成物や、キラヤ抽出とユッカ抽出物の混合物に比べて、コレステロールの低下作用が大きいという特徴を有する。脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆単独でもコレステロール低下作用(特に血清総コレステロール低下作用)があることが本発明者らにより初めて確認されているが、これにさらにキラヤ抽出物とユッカ抽出物を組み合わせることにより、コレステロールの低下作用を相乗的に高めることができる。特に、これらの成分を組み合わせることによって、肝臓コレステロールの低下作用を顕著に高め、それによってコレステロールプール(血清総コレステロールおよび肝臓総コレステロールの総量)の低下作用も大幅に改善している。
【0026】
また、本発明の組成物は、血清HDLコレステロールよりも、血清LDL+VLDLコレステロールをより多く低下させる作用を示す。このため、本発明の組成物は動脈硬化抑制指数(血清HDLコレステロール/血清総コレステロール)が高いという特徴も有する。この効果は、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆を単独で用いた場合にも認められるが、本発明の組成物の方がより効果が大きい。
【0027】
(本発明の組成物の応用)
本発明の組成物は、コレステロールを低下させることを目的とする医薬として用いることができる。また、本発明の組成物は、コレステロールが基準値以上に高まることを抑制または遅延するための医薬として用いることもできる。さらに、本発明の組成物は、これらの作用を目的とした機能性飲料や機能性食品として使用することもできる。
【0028】
本発明の組成物の形態は特に制限されず、医薬として用いる場合には経口的または非経口的に投与することが可能である。例えば、直腸投与、鼻内投与、頬側投与、舌下投与、膣内投与、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与を行なうことが可能である。中でも、本発明の組成物は、経口投与するのが好ましい。
【0029】
経口投与に適した製剤として、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤などを挙げることができ、非経口投与に適した製剤として、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、貼付剤などを挙げることができる。注射剤は、静脈注射、筋肉注射、皮下注射、点滴などのいずれに用いるものであってもよい。本発明の組成物は、特に経口用製剤であるのが好ましい。
【0030】
本発明の組成物には、必要に応じて薬理学的および製剤学的に許容しうる添加物を添加することができる。例えば、乳糖、D−マンニトール、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤または崩壊補助剤;ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤;タルク、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;ポリエチレングリコール等の基剤;白糖、酸化チタン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のコーティング剤;食塩、ブドウ糖、グリセリン等の等張化剤;色素;希釈剤;溶解剤または溶解補助剤;pH調節剤;安定化剤;噴射剤;粘着剤;湿潤剤などを使用することができる。
【0031】
これらの添加剤を適宜組み合わせて使用することによって、本発明の組成物にさまざまな付加的機能を持たせることができる。例えば、必要に応じて活性成分が徐放されるように設計することができる。また、体内の必要な個所において活性成分が集中的に放出されるように設計することもできる。このような徐放性製剤やドラッグデリバリーシステムは、周知の方法にしたがって設計のうえ製造することができる。
【0032】
本発明の組成物の投与量は、治療または予防の目的、患者の性別、体重、年齢、疾患の種類や程度、剤型、投与経路、投与回数などの種々の条件に応じて適宜決定する。例えば、経口投与する場合には、活性成分を0.01〜10,000mg/kg体重/日で、一日一回から数回に分けて投与することができるが、この範囲に限定されるものではない。
【0033】
本発明の組成物は、各種飲料や各種食品に含ませて機能性飲料や機能性食品にすることもできる。本発明の組成物を含ませる飲料や食品の種類は特に制限されない。例えば、清涼飲料水、ジュース、紅茶、ココア、牛乳、醗酵乳、あめ、ゼリー、ポタージュ、アイスクリーム、バター、ヨーグルト、マヨネーズ、ケチャップ、ドレッシング、パンや餅などの澱粉質食品、ハンバーグやミートボールなどの肉加工食品などに活性成分(脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆とキラヤ抽出物とユッカ抽出物)を約0.1〜99重量%の範囲内で含有させてコレステロール低下作用を有する機能性飲料や機能性食品にすることができる。
【0034】
本発明の組成物を飲料や食品に混合するに際しては、あらかじめ水などの溶液にしておいてから混合してもよいし、粉末状のものを直接混合してもよい。また、必要に応じて加熱や攪拌を行うことができる。さらに、本発明の組成物を粉末状または溶液状にして携帯し、必要に応じて飲料や食品に添加して即席で本発明の飲料や食品を調製してもよい。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0036】
ラット(5週齢、Wister雄、初体重90〜110g)を6匹ずつ4群に分け、各群に14日間にわたってそれぞれ表1に記載される食餌を与えた。
【0037】
【表1】

【0038】
試験に用いたキラヤ・ユッカ抽出物(商品名「YQ2」、セルテック社製)の純度は88.0質量%であり、キラヤとユッカとの含有量はそれぞれ、キラヤ抽出物が48.0質量%、ユッカ抽出物が40.0質量%である。
また、試験に用いたリポキシゲナーゼ完全欠失大豆(商品名「エルスター」)の組成は、タンパク質(39.1質量%)、脂質(23.7質量%)、炭水化物(24.8質量%)、水分(5.8質量%)、ミネラル(4.8質量%)、繊維(質量1.8%)である。カゼインの組成は、タンパク質(86.0質量%)、炭水化物(1.5質量%)、水分(11質量%)、ミネラル(1.5質量%)である。
【0039】
14日間にわたって食餌を与えた後、24時間絶食させて解剖することにより、肝臓重量、血清総コレステロール、血清HDLコレステロール、血清LDL+VLDLコレステロール、肝臓総コレステロールを測定した。結果を以下の表2および表3に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
表3の結果が示しているように、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆を含む組成物を与えた実験群Mは、当該大豆を含まない組成物を与えた実験群Cよりも、血清総コレステロール、肝臓総コレステロール、コレステロールプールの低下作用が大きいことが確認された。特に、血清総コレステロールの低下作用が顕著に大きかった。
【0043】
また、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆とキラヤ抽出物とユッカ抽出物とを含む組成物を与えた実験群Mixは、血清総コレステロール、肝臓総コレステロール、コレステロールプールの低下作用が実験群の中で最大であることが確認された。すなわち、実験群Mixのコレステロール低下作用は、リポキシゲナーゼ完全欠失大豆を含む組成物を与えた実験群Mや、キラヤ抽出物とユッカ抽出物とを含む組成物を与えた実験群Yよりも大きく、これらの成分を組み合わせることにより相乗的にコレステロール低下作用が高まることが判明した。
【0044】
また、表2の結果が示しているように、脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆を含む組成物を与えた実験群Mと、さらにキラヤ抽出物とユッカ抽出物をも含む組成物を与えた実験群Mixは、血清HDLコレステロールよりも、血清LDL+VLDLコレステロールをより多く低下させる作用を示す。このため、これらの実験群では動脈硬化抑制指数(血清HDLコレステロール/血清総コレステロール)が高く、動脈硬化予防および治療効果が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の組成物は、安全で高いコレステロール低下作用を示す。本発明の組成物の構成成分は、広く食されている大豆と、市販もされているキラヤ抽出物とユッカ抽出物であることから、製造が極めて容易である。また、本発明の組成物は、通常の医薬品に比べて原価が安くて安全性も高いことから、医薬品はもちろん飲料や食品として幅広く利用されうるものである。したがって、本発明の産業上の利用可能性は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆と、キラヤ抽出物と、ユッカ抽出物とを含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
さらにカゼインを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リポキシゲナーゼ完全欠失大豆が脱脂処理を経ていないことを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
脂質を20質量%以上含むリポキシゲナーゼ完全欠失大豆を含むことを特徴とするコレステロール低下剤。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とするコレステロール低下剤。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とする飲料および食品。

【公開番号】特開2009−256220(P2009−256220A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104887(P2008−104887)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(390038944)
【Fターム(参考)】