説明

リリーフバルブの製造方法

【課題】ボディとストッパとを超音波溶着によって溶着する際に、圧縮ばねのばね荷重がストッパ部を押圧することを回避して、ストッパ部が損傷を受けることを阻止することができるリリーフバルブの製造方法を提供する。
【解決手段】ボディ32とストッパ33とを超音波溶着によって溶着する際には、ボディ32とストッパ33とを組付けた状態で、ストッパ33に形成された放出口45からストッパ33内にばね押圧治具46の押圧部47を挿入する。そして、押圧部47によって圧縮ばね44を弁体40に向けて押圧して圧縮ばね44を圧縮させた状態でボディ32とストッパ33とを超音波溶着によって溶着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
気体の流入口が形成された合成樹脂製のボディと、気体の放出口が形成された合成樹脂製のストッパとが超音波溶着によって溶着されてなるケーシングを備えたリリーフバルブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両空調装置の冷凍回路に用いられる冷媒圧縮機の運転時には、冷媒圧縮機内に設けられている吐出室が高圧状態となるが、吐出室の圧力が所定値を越えて異常に高くなった場合には、吐出室の圧力を低減させ、冷媒圧縮機の破壊を防ぐ必要がある。このため、冷媒圧縮機には、吐出室の冷媒ガスを外部に放出するためのリリーフバルブが装備されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のリリーフバルブは、合成樹脂からなるカップ状のボディを備え、該ボディの中央底部には圧力導入口が形成され、該圧力導入口の内周縁には弁座が形成されている。ボディ内には弁体が収納され、該弁体の弁体ガイド部の内側には圧縮コイルばねが収納されている。ボディの上部開口には、中央に通口を備えた合成樹脂からなるプレートが固定されている。前記圧縮コイルばねは、一端が弁体に当接し、他端がプレートに当接して、弁体を前記圧力導入口を閉じる方向に付勢している。
【特許文献1】特開2001−12628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のリリーフバルブは、合成樹脂製のボディの内部に弁体及び圧縮コイルばねを収納し、該ボディの上部にプレートを超音波溶着によって固定して製造されている。しかし、この超音波溶着の際、超音波振動により圧縮コイルばねのばね荷重がプレートを押圧し、プレートが損傷を受ける虞があった。
【0005】
本発明の目的は、ボディとストッパとを超音波溶着によって溶着する際に、圧縮ばねのばね荷重がストッパ部を押圧することを回避して、ストッパ部が損傷を受けることを防止することができるリリーフバルブの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、気体の流入口が形成された合成樹脂製のボディと、気体の放出口が形成された合成樹脂製のストッパとが超音波溶着によって溶着されてなるケーシングを備え、該ケーシングの軸方向一端に前記流入口が位置するとともに軸方向他端に前記放出口が位置し、ケーシングの内部に前記流入口を開閉する弁体が収容されるとともに、前記流入口を閉鎖する方向に前記弁体を付勢する圧縮ばねを支持するストッパ部が前記ストッパにおける前記放出口の近傍に形成されたリリーフバルブの製造方法であって、前記ボディ内に弁体を収容するとともに前記ストッパ内に圧縮ばねを収容し、ボディとストッパとを組付けた状態で、前記放出口からストッパ内にばね押圧治具を挿入し、該ばね押圧治具によって前記圧縮ばねを前記弁体に向けて押圧して圧縮ばねを圧縮させた状態でボディとストッパとを超音波溶着によって溶着するものである。
【0007】
この発明によれば、ボディとストッパとを超音波溶着する際、ばね押圧治具により圧縮ばねを弁体側に向けて圧縮して、該圧縮ばねをストッパ部から離間させることができる。このため、超音波溶着の際に圧縮ばねのばね荷重がストッパ部を押圧することを回避して、圧縮ばねのばね荷重によってストッパ部が損傷を受けることを防止することができる。
【0008】
また、前記超音波溶着の際に発生する超音波振動を減衰する減衰材を備えたばね押圧治具を使用してもよい。
この構成によれば、ばね押圧治具で圧縮ばねを押圧する際に、超音波振動を減衰材によって減衰させることができる。よって、圧縮ばねが接触する弁体に伝わる超音波振動を抑え、超音波振動に起因した弁体の劣化を抑えることができる。
【0009】
また、前記ばね押圧治具は、矩形状をなすとともに長辺方向への長さが前記圧縮ばねの内径より長く形成された押圧面を備えるとともに、前記放出口は前記押圧面を通過可能とするスリット状に形成され、前記放出口からストッパ内に挿入された前記押圧面によって圧縮ばねを直接押圧してもよい。
【0010】
この構成によれば、ばね押圧治具の押圧面によって圧縮ばねを確実に押圧して、圧縮ばねをストッパ部から確実に離間させることができる。また、圧縮ばねを押圧面によって押圧可能とするために、押圧面は圧縮ばねの内径より大きく形成されている。このため、押圧面が挿入される放出口は圧縮ばねの内径より長く形成する必要がある。しかし、押圧面を矩形状に形成するとともに放出口をスリット状に形成することで、押圧面を通過可能としつつも放出口の近傍にストッパ部を設けることができる。
【0011】
また、前記ストッパ部と圧縮ばねとの間に押圧部材を介装し、該押圧部材をばね押圧治具で押圧して前記圧縮ばねを間接的に押圧してもよい。この構成であっても、ばね押圧治具によって圧縮ばねを押圧して、圧縮ばねをストッパ部から確実に離間させることができる。
【0012】
また、前記ボディと前記ストッパの溶着部となる位置の近傍に、前記ボディと前記ストッパによって囲み形成されるとともに前記超音波溶着の際に発生する溶融樹脂を収容する収容部をリリーフバルブの全周に亘って設けられていてもよい。
【0013】
この構成によれば、超音波溶着の際に発生する溶融樹脂を収容部に収容することができ、溶融樹脂がケーシングの内周面や外周面に露出することを防止することができる。よって、溶融樹脂が硬化してなるバリがケーシングの内周面や外周面に突出することを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ボディとストッパとを超音波溶着によって溶着する際に、圧縮ばねのばね荷重がストッパ部を押圧することを回避して、ストッパ部が損傷を受けることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明のリリーフバルブの製造方法を、車両空調装置の冷凍回路に用いられるリリーフバルブの製造方法に具体化した第1実施形態について図1〜図5を用いて説明する。
【0016】
まず、車両空調装置の冷凍回路について説明する。
図1に示すように、冷凍回路10は、気体としての冷媒ガスを圧縮する冷媒圧縮機11、冷媒圧縮機11からの高圧の冷媒ガスを冷却する凝縮器C、凝縮器Cからの冷媒を絞る膨張弁V、及び該膨張弁Vからの冷媒が蒸発される蒸発器Eを備えている。冷媒圧縮機11には、冷媒圧縮機11内に設けられた吐出室Daが異常な高圧となった時に、吐出室Daの圧力を低減させる目的で吐出室Daの冷媒ガスを大気へと逃がすリリーフバルブ30が装備されている。
【0017】
冷媒圧縮機11のハウジングは、シリンダブロック12と、シリンダブロック12のフロント側に接合されたフロントハウジング13と、シリンダブロック12のリヤ側に接合されたリヤハウジング14とから構成されている。リヤハウジング14には、吐出室Daと吸入室Saが形成されている。
【0018】
リヤハウジング14には吸入通路16が形成され、吸入通路16は一端が吸入室Saに連通し、他端に冷凍回路10における蒸発器Eが接続されている。また、リヤハウジング14には吐出通路17が形成され、吐出通路17は一端が吐出室Daに連通し、他端に冷凍回路10における凝縮器Cが接続されている。そして、冷媒圧縮機11は、吸入室Saから吸入された冷媒ガスを圧縮室(図示せず)で圧縮し、圧縮した高圧の冷媒ガスを吐出室Daに吐出する。吐出室Daに吐出された冷媒ガスは、吐出通路17から凝縮器Cへ流入するようになっている。さらに、膨張弁V及び蒸発器Eを経由した冷媒は、吸入通路16から吸入室Saへ流入するようになっている。
【0019】
リヤハウジング14には装着孔15が形成され、装着孔15は一端が吐出室Daに連通し、他端が冷媒圧縮機11の外部たる大気に開放されている。図2に示すように、装着孔15の吐出室Da側は大径部15aとなっており、大径部15aより大気側は大径部15aより小径の小径部15bとなっている。さらに、小径部15bにおける大気側の端縁には、当接部15eが小径部15bの内側に向かって延設されている。また、装着孔15の周面には、大径部15aと小径部15bとの間に係止段差15cが装着孔15の全周に亘って形成されるとともに、吐出室Da側には係合凹部15dが装着孔15の全周に亘って凹設されている。そして、この装着孔15にはリリーフバルブ30が装着されている。
【0020】
次に、リリーフバルブ30の構成について説明する。
リリーフバルブ30の外郭は略円筒状をなすケーシング31によって形成されている。このケーシング31は、略円筒状をなすボディ32と、略円筒状をなすストッパ33とを超音波溶着によって溶着して一体化することにより形成されている。なお、ケーシング31の中心軸Lの延びる方向をケーシング31の軸方向とする。
【0021】
ボディ32及びストッパ33について説明する。ボディ32及びストッパ33は合成樹脂たる熱可塑性樹脂(例えば、ポリエーテルイミド樹脂)よりなる。ボディ32とストッパ33によってケーシング31を形成した状態において、ボディ32におけるストッパ33側の端部には、円筒状をなす第1筒部321が設けられている。また、ボディ32の中央部には、外径が第1筒部321より大径をなす円筒状の第2筒部322が第1筒部321に連続して設けられている。さらに、ボディ32において、第1筒部321と反対側の端部には、外径が第2筒部322より大径をなす円筒状の第3筒部323が第2筒部322に連続して設けられている。
【0022】
上記構成のボディ32には、第2筒部322における第1筒部321側の端面によってボディ側段部322aが形成されている。ボディ32とストッパ33が溶着される前には、ボディ側段部322aに溶着用リブ325(エネルギーダイレクター)が設けられている(図5参照)。また、ボディ32における第3筒部323の端縁には、係合鍔部34がケーシング31の全周に亘って形成され、係合鍔部34は装着孔15の係合凹部15dに係合可能になっている。
【0023】
一方、ボディ32とストッパ33によってケーシング31を形成した状態において、ストッパ33におけるボディ32側の端部には、円筒状をなす第1筒部331が設けられている。また、ストッパ33のほぼ中央部には、内径が第1筒部331より小径をなす円筒状の第2筒部332が第1筒部331に連続して設けられている。さらに、ストッパ33には、内径が第2筒部332より小径をなす円筒状の第3筒部333が第2筒部332に連続して設けられている。上記構成のストッパ33には、第2筒部332の第1筒部331側の端面によってストッパ側段部332aが形成されている。さらに、ストッパ33の外周面には、係止段部36が形成されている。
【0024】
そして、ボディ32とストッパ33とを組付けた状態では、ボディ32の第1筒部321の外周側にストッパ33の第2筒部332が位置し、ボディ32の第2筒部322の外周側にストッパ33の第1筒部331が位置するようになっている。この組付け状態では、ボディ32における第1筒部321の外周面と、ストッパ33における第2筒部332の内周面との間には、ケーシング31の全周に亘って隙間が形成されている。そして、この隙間は、超音波溶着の際に発生する溶融樹脂を収容する収容部51を形成している。また、ボディ32とストッパ33の組付け状態では、ボディ32の第2筒部322の外周面と、ストッパ33の第1筒部331の内周面との間には僅かなクリアランス(図示せず)が形成されるようになっている。
【0025】
そして、上記組付け状態で超音波溶着が行われ、溶着用リブ325が溶融し、ボディ側段部322aとストッパ側段部332aとが溶着して溶着部50が形成されるとともにケーシング31が形成されている。本実施形態において、ボディ32とストッパ33とはステップジョイントタイプによる超音波溶着によって溶着されるようになっている。また、ボディ32とストッパ33の組付け状態(超音波溶着の前の状態)では、溶着部50となる位置の近傍に収容部51がケーシング31の全周に亘って形成されている。
【0026】
上記構成のボディ32とストッパ33とを超音波溶着してなるケーシング31を備えたリリーフバルブ30は、ストッパ33側が、大径部15a側から装着孔15内に挿入されている。そして、係止段部36が係止段差15cに係止するまでリリーフバルブ30を装着孔15に挿入すると、係合鍔部34が係合凹部15dに係合するようになっている。係合鍔部34と係合凹部15dとの係合により、リリーフバルブ30は装着孔15の軸方向への移動が阻止された状態で装着されている。よって、リリーフバルブ30は、ボディ32側が吐出室Da側に位置し、ストッパ33側が大気側に位置するように装着孔15に装着されている。
【0027】
上記リリーフバルブ30において、ケーシング31内には弁室37が形成されている。ケーシング31の軸方向一端であって、ボディ32の吐出室Da側の端面(一端面)には冷媒ガスの流入口38が形成され、流入口38は前記吐出室Daと弁室37とを連通可能している。また、ケーシング31において、流入口38の周囲には円筒状をなす弁座39が弁室37の内部に向けて立設されている。
【0028】
ケーシング31の軸方向他端であって、ストッパ33の大気側の端面(他端面)には冷媒ガスの放出口45が形成され、放出口45は弁室37と大気とを連通している。図4に示すように、放出口45は細長に延びるスリット状に形成されている。また、ケーシング31において、放出口45の近傍は、弁室37内に収容されたコイルスプリングよりなる圧縮ばね44の他端が当接し、圧縮ばね44を支持するストッパ部33aとなっている。
【0029】
図2に示すように、弁室37内には弁体40が収容されている。弁体40は略円柱状をなすとともに、弁体40における弁座39側の端面にはシールゴム41が装着されている。また、弁体40の周面と、該周面に対向するボディ32の内周面との間にはガス通路37aが形成され、弁体40は弁座39に対して接離する方向へ移動可能となっている。そして、弁体40は弁座39に対して接離することにより、流入口38を開閉するようになっている。また、弁体40において、シールゴム41が装着された端面と背向する端面には、ばね取付部40cが立設されている。
【0030】
弁室37内において、前記圧縮ばね44の一端はばね取付部40cを囲むようにしてばね取付部40cに取り付けられるとともに、圧縮ばね44の一端は弁体40に当接し、圧縮ばね44の他端は、ケーシング31におけるストッパ部33aに当接している。そして、圧縮ばね44は、弁体40を弁座39に向けて付勢し、流入口38を閉鎖する方向に付勢する。
【0031】
また、ボディ32における第3筒部323の端面と、ストッパ33における第1筒部331の端面との間には、シール部材が介装できるようになっている。装着孔15の当接部15eには、ケーシング31の他端が当接するとともに、当接部15eとケーシング31との間にはシール部材42が介装されている。シール部材42により、ケーシング31の外周面と装着孔15の周面との間からの冷媒ガスの漏れが防止される。
【0032】
次に、上記構成のリリーフバルブ30の機能について説明する。さて、冷媒圧縮機11の吐出室Da内が異常な高圧でなければ、吐出室Da内の圧力に基づき弁体40に作用する弁開方向への力は小さくなっている。したがって、弁体40の位置決めには圧縮ばね44のばね力が支配的となり、該弁体40は弁座39に当接した状態となっている。よって、流入口38と弁室37との連通が弁体40によって遮断されて、吐出室Da内の冷媒ガスがリリーフバルブ30から大気へと放出されることはない。
【0033】
この状態から、何らかの理由によって吐出室Da内が異常な高圧に上昇しようとすると、吐出室Da内の圧力に基づき弁体40に作用する弁開方向への力が過大となる。したがって、弁体40は、圧縮ばね44のばね力に抗して移動して弁座39から離間する。よって、流入口38と弁室37との連通が弁体40によって開放され、吐出室Da内の冷媒ガスが流入口38、弁室37及び放出口45を経由して大気へと放出されて、吐出室Da内の異常な圧力上昇が防止される。
【0034】
次に、リリーフバルブ30の製造方法について図3〜図5を用いて説明する。まず、リリーフバルブ30の製造の際に用いられるばね押圧治具46について説明する。図3に示すように、ばね押圧治具46は、一面に開口を有する有底円筒状をなす治具本体49を有する。治具本体49の内底面の中央部には開口形状が矩形状をなす収容凹部49aが凹設され、収容凹部49aには超音波溶着の際に発生する振動を減衰させるためのゴム材料製の減衰材48が収容されている。また、収容凹部49aには押圧部47の基端が収容されるとともに、押圧部47の基端は治具本体49に固着されている。よって、治具本体49の内底面からは押圧部47の先端側が治具本体49の開口側へ延設されている。なお、押圧部47の基端は減衰材48に接触するように治具本体49に固着されている。
【0035】
押圧部47の軸方向に直交する面での形状は、収容凹部49aと同じ矩形状に形成されている。そして、押圧部47の先端面には、矩形状をなす押圧面47aが設けられている。図4に示すように、この押圧面47aの長辺方向への長さは、圧縮ばね44の内径及び外径より長くなっている。治具本体49の内周面と押圧部47の外面との間には間隙Kが形成されている。
【0036】
さて、リリーフバルブ30を製造するには、まず、ボディ32内に弁体40を収容するとともにストッパ33内に圧縮ばね44を収容し、ボディ32とストッパ33を組付ける。そして、ボディ32の第1筒部321の外周側にストッパ33の第2筒部332を位置させ、ボディ32の第2筒部322の外周側にストッパ33の第1筒部331を位置させるとともに、収容部51を形成する。
【0037】
次に、ボディ32を図示しない保持具によって移動不能に保持する。次に、ばね押圧治具46をストッパ33に向けて移動させ、治具本体49の間隙K内にストッパ33を収容する。このとき、図4に示すように、放出口45は、細長いスリット状であるため、押圧部47を放出口45からストッパ33の内部に挿入される。また、押圧面47aの長辺方向への長さは圧縮ばね44の内径及び外径より長いため、押圧面47aを圧縮ばね44の他端に接触させることができる。よって、ストッパ33内に挿入された押圧部47の押圧面47aは圧縮ばね44の他端に接触し、押圧部47により圧縮ばね44は弁体40に向けて押圧されることで弁体40側に圧縮されるとともに、ストッパ部33aから離間した状態となる。なお、図3は、ばね押圧治具46によって、圧縮ばね44が弁体40側へ完全に圧縮した状態を示している。
【0038】
そして、治具本体49の先端が係止段部36に当接するまでばね押圧治具46を移動させ、ばね押圧治具46によってストッパ33をボディ32に押し付ける。すると、ボディ32の溶着用リブ325がストッパ33のストッパ側段部332aに押し付けられる。次に、ボディ32を保持する保持具(図示せず)からボディ32に超音波振動を伝達させると同時に、ばね押圧治具46によってストッパ33をボディ32側に押圧し、溶着用リブ325とストッパ側段部332aとを加圧する。すると、超音波振動が溶着用リブ325に集中的な伸縮運動を起こさせ、溶着用リブ325が溶融する。このとき、溶融樹脂は収容部51へと流れ出し、収容部51に貯留される。また、ボディ32の第2筒部322の外周面と、ストッパ33の第1筒部331の内周面との間には僅かなクリアランスしか形成されておらず、該クリアランスを溶融樹脂が通過することが防止される。その結果、ケーシング31の内周面及び外周面にバリ52が形成されることなくボディ32とストッパ33が溶着部50で溶着され、ケーシング31が形成されると同時にリリーフバルブ30が製造される。
【0039】
第1実施形態では以下の効果が得られる。
(1)ボディ32とストッパ33とを超音波溶着する際、ばね押圧治具46の押圧面47aにより圧縮ばね44を押圧し、圧縮ばね44を弁体40側に向けて圧縮してストッパ部33aから離間した状態となるようにした。よって、超音波溶着の際に超音波振動が圧縮ばね44に伝達されても、圧縮ばね44がストッパ部33aを押圧することがない。したがって、超音波溶着の際、圧縮ばね44のばね荷重によってストッパ部33aが押圧されることを回避して、ストッパ部33aが損傷を受けることを防止することができる。
【0040】
(2)ばね押圧治具46において、治具本体49には減衰材48が収容され、押圧部47は基端が減衰材48に接触する状態で治具本体49から延設されている。よって、ばね押圧治具46で圧縮ばね44を押圧する際に、圧縮ばね44に伝達された超音波振動を減衰材48によって減衰させることができる。よって、圧縮ばね44の一端が接触する弁体40に設けられたシールゴム41に伝わる超音波振動を抑え、超音波振動に起因したシールゴム41の劣化を抑えることができる。
【0041】
(3)ばね押圧治具46の押圧面47aは矩形状をなし、その長辺方向に沿った長さは、圧縮ばね44の内径及び外径より長くなっている。また、放出口45は、押圧面47aを通過可能とするスリット状に形成されている。このため、ばね押圧治具46の押圧面47aを放出口45からストッパ33内に収容可能とするとともに、押圧面47aによって圧縮ばね44を直接押圧して圧縮ばね44をストッパ部33aから離間させることができる。また、放出口45がスリット状に形成されることにより、ケーシング31の軸方向他端において、放出口45を形成しつつもストッパ部33aを設けることができる。
【0042】
(4)ボディ32における第1筒部321の外周面と、ストッパ33における第2筒部332の内周面との間に収容部51が設けられている構成とした。このため、超音波溶着の際に発生する溶融樹脂を収容部51に収容することができ、溶融樹脂が硬化してなるバリ52がケーシング31の内周面に突出することを防止することができる。よって、バリ52が圧縮ばね44に干渉して圧縮ばね44による弁体40の付勢機能が得られなくなることを抑制することができる。
【0043】
(5)ボディ32とストッパ33を組付けた状態で、ボディ32における第2筒部322の外周面と、ストッパ33における第1筒部331の内周面との間に僅かなクリアランスが形成されるようにした。このため、溶融樹脂がクリアランスを通過し、シール部材が装着されたボディ32の外周面に達することを防止することができる。よって、シール部材が装着された部位にバリ52が発生することを防止することができる。
【0044】
(6)冷媒圧縮機11にリリーフバルブ30を装着するため、リヤハウジング14に装着孔15が穿設されている。リヤハウジング14には、その成形の際に巣(空洞)が形成されることがあり、装着孔15を穿設した際、吐出室Daや吸入室Saと装着孔15とが巣を介して連通して巣洩れが発生してしまうことがある。本実施形態では、装着孔15内にリリーフバルブ30が装着された状態において、装着孔15における大気側に設けられた当接部15eとケーシング31との間にはシール部材42が介装されている。よって、巣洩れが発生しても、シール部材42によって大気へ冷媒ガスが洩れることを阻止することができる。
【0045】
(7)ボディ32及びストッパ33は合成樹脂たる熱可塑性樹脂より成形されるようにした。このため、ボディ及びストッパがアルミ材より成形されていた従来のリリーフバルブよりも、安価な材料でリリーフバルブ30を製造することができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に本発明のリリーフバルブの製造方法を、車両空調装置の冷凍回路に用いられるリリーフバルブの製造方法に具体化した第2実施形態について、図6を用いて説明する。なお、図1〜図5に説明した符号を付した部分は同一又は相当部分を示し、その重複する説明を省略する。なお、図示しないが、放出口45は丸孔状に形成されている。
【0047】
図6に示すように、ストッパ部33aと圧縮ばね44の他端との間には、円環状をなす押圧部材53(ワッシャ)が介装されている。なお、押圧部材53がストッパ部33aと圧縮ばね44の他端との間に介装されている位置を図6において二点鎖線で示す。押圧部材53は圧縮ばね44の他端に当接するとともにストッパ部33aに当接している。押圧部材53の外径は圧縮ばね44の外径と同じに形成されている。また、押圧部材53の内径は、放出口45の直径より小さくなっている。そして、押圧部材53は、放出口45の周面より内側へはみ出している接触面53aを有している。
【0048】
ばね押圧治具46において、押圧部47は円柱状に形成されるとともに、押圧部47の先端面に円形状をなす押圧面47aが形成されている。押圧面47aの直径は、放出口45の直径より小さく、かつ押圧部材53の内径より大きく形成されている。
【0049】
そして、第2の実施形態において、押圧部47が放出口45を介してストッパ33内へ挿入されると、押圧面47aと押圧部材53の接触面53aとが接触し合う。押圧面47aと接触した押圧部材53は、ばね押圧治具46の吐出室Da側へ作用する押圧力によって押圧され、圧縮ばね44は、押圧部材53によって弁体40側へ圧縮される。よって、ストッパ部33aに当接し、支持されていた押圧部材53は、ストッパ部33aから離間された状態となる。なお、図6は、ばね押圧治具46及び押圧部材53によって、圧縮ばね44が弁体40側へ完全に圧縮した状態を示している。
【0050】
第2実施形態では、第1実施形態の(2),(4),(5),(6),(7)に準じた効果を奏するとともに、以下の効果が得られる。
(8)ストッパ部33aと圧縮ばね44との間に押圧部材53を介装し、ばね押圧治具46によって押圧部材53を押圧することにより、圧縮ばね44は、弁体40側に向けて圧縮されるとともに、ストッパ部33aから押圧部材53が離間した状態となるようにした。よって、超音波溶着の際に超音波振動が圧縮ばね44に加振されても、圧縮ばね44の振動が押圧部材53を介してストッパ部33aに作用することがない。したがって、超音波溶着の際、圧縮ばね44のばね荷重によってストッパ部33aが押圧されることを回避して、ストッパ部33aが損傷を受けることを防止することができる。
【0051】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することも可能である。
○ 各実施形態において、ボディ32とストッパ33との溶着部50となる位置の近傍には、超音波溶着の際に発生する溶融樹脂を収容する収容部51がケーシング31の全周に亘って複数設けられていてもよい。
【0052】
例えば、図7(a)に示すように、ボディ32において、第1筒部321と第2筒部322の間に、外径が第1筒部321より大径をなし、かつ第2筒部322より小径をなす第4筒部324をさらに設ける。また、ストッパ33の第2筒部332において、ボディ32の第4筒部324のエッジ324aと対向する位置にテーパ部332bを形成する。そして、ボディ32とストッパ33とをシェアジョイントタイプによって超音波溶着する場合、ボディ32の第1筒部321の外周面とストッパ33の第2筒部332の内周面との間、及びボディ32の第4筒部324の外周面とストッパ33の第1筒部331の内周面との間に収容部51が形成されている。このように構成すると、図7(b)に示すように、溶着部50には、超音波溶着することによって、溶融樹脂が発生する。溶融樹脂は各収容部51に流れ込み、貯留される。
【0053】
○ 第1実施形態において、収容部51はボディ32における第2筒部322の外周面と、ストッパ33における第1筒部331の内周面との間に設けられるとともに、ボディ32の第1筒部321の外周面とストッパ33における第2筒部332の内周面との間のクリアランスを小さく形成してもよい。
【0054】
○ リリーフバルブ30の製造の際、ケーシング31に収容部51を設けなくてもよい。
○ ばね押圧治具46において、減衰材48は無くてもよく、この場合、ばね押圧治具46の内底面に押圧部47が一体成形されている。
【0055】
○ 放出口45の形状は、ばね押圧治具46の押圧面47aによって圧縮ばね44を押圧できるのであれば、第1実施形態のように細長のスリット状でなくてもよい。
○ 各実施形態では、本発明の製造方法で得られるリリーフバルブ30は、車両空調装置の冷凍回路10における冷媒圧縮機11に装備されるものに具体化したが、リリーフバルブ30を、車両空調装置以外の空調装置の冷凍回路や、空調装置以外の冷凍回路に用いられる圧縮機に装備してもよい。
【0056】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)気体の流入口が形成された合成樹脂製のボディと、気体の放出口が形成された合成樹脂製のストッパとが超音波溶着によって溶着されてなるケーシングを備え、該ケーシングの軸方向一端に前記流入口が位置するとともに軸方向他端に前記放出口が位置し、ケーシングの内部に前記流入口を開閉する弁体が収容されるとともに、前記流入口を閉鎖する方向に前記弁体を付勢する圧縮ばねを支持するストッパ部が前記ストッパにおける前記放出口の近傍に形成されたリリーフバルブであって、前記ボディ内に弁体を収容するとともに前記ストッパ内に圧縮ばねを収容し、ボディとストッパとを組付けた状態で、前記放出口からストッパ内にばね押圧治具を挿入し、該ばね押圧治具によって前記圧縮ばねを前記弁体に向けて押圧して圧縮ばねを圧縮させた状態でボディとストッパとを超音波溶着によって溶着してケーシングが形成されることを特徴とするリリーフバルブ。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】冷凍回路を示す概略図。
【図2】装着孔内のリリーフバルブを示す断面図。
【図3】圧縮ばねがばね押圧治具によって押圧された状態を示す断面図。
【図4】図3におけるA−A線断面図。
【図5】超音波溶着前の溶着部を拡大した断面図。
【図6】圧縮ばねがばね押圧治具によって間接的に押圧されている状態を示す断面図。
【図7】(a)は、超音波溶着前の溶着部を拡大した断面図。(b)は、超音波溶着時の溶着部を拡大した断面図。
【符号の説明】
【0058】
30…リリーフバルブ、31…ケーシング、32…ボディ、33…ストッパ、33a…ストッパ部、38…流入口、40…弁体、44…圧縮ばね、45…放出口、46…ばね押圧治具、47a…押圧面、48…減衰材、50…溶着部、51…収容部、53…押圧部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の流入口が形成された合成樹脂製のボディと、気体の放出口が形成された合成樹脂製のストッパとが超音波溶着によって溶着されてなるケーシングを備え、該ケーシングの軸方向一端に前記流入口が位置するとともに軸方向他端に前記放出口が位置し、ケーシングの内部に前記流入口を開閉する弁体が収容されるとともに、前記流入口を閉鎖する方向に前記弁体を付勢する圧縮ばねを支持するストッパ部が前記ストッパにおける前記放出口の近傍に形成されたリリーフバルブの製造方法であって、
前記ボディ内に弁体を収容するとともに前記ストッパ内に圧縮ばねを収容し、ボディとストッパとを組付けた状態で、前記放出口からストッパ内にばね押圧治具を挿入し、該ばね押圧治具によって前記圧縮ばねを前記弁体に向けて押圧して圧縮ばねを圧縮させた状態でボディとストッパとを超音波溶着によって溶着することを特徴とするリリーフバルブの製造方法。
【請求項2】
前記超音波溶着の際に発生する超音波振動を減衰する減衰材を備えたばね押圧治具を使用する請求項1に記載のリリーフバルブの製造方法。
【請求項3】
前記ばね押圧治具は、矩形状をなすとともに長辺方向への長さが前記圧縮ばねの内径より長く形成された押圧面を備えるとともに、前記放出口は前記押圧面を通過可能とするスリット状に形成され、前記放出口からストッパ内に挿入された前記押圧面によって圧縮ばねを直接押圧する請求項1又は請求項2に記載のリリーフバルブの製造方法。
【請求項4】
前記ストッパ部と圧縮ばねとの間に押圧部材を介装し、該押圧部材をばね押圧治具で押圧して前記圧縮ばねを間接的に押圧する請求項1又は請求項2に記載のリリーフバルブの製造方法。
【請求項5】
前記ボディと前記ストッパの溶着部となる位置の近傍に、前記ボディと前記ストッパによって囲み形成されるとともに前記超音波溶着の際に発生する溶融樹脂を収容する収容部をリリーフバルブの全周に亘って設けた請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のリリーフバルブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−74607(P2009−74607A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243702(P2007−243702)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000219864)東久株式会社 (8)
【Fターム(参考)】