説明

リリーフバルブ

入口開口(9)及び出口開口(10)を備えたパイロットバルブユニット(6)を有する、特に可燃性液体用タンク内の過圧を逃すためのリリーフバルブ。パイロットバルブユニット(6)は、タンク内の調節可能な所定過圧により開き且つガスが入口開口(9)から出口開口(10)に流れることを可能にする。これは、一方ではバルブを迅速に開くように促進し、他方ではチャンバ(15)からガスを必然的に排出させる。チャンバ(15)は、空間(13)とリリーフ通路(5)との間のガスの流れを可能にしたり妨げたりすることができるという意味で、バルブボディ(2)をバルブ座(1)に近付けたり遠ざけたり制御する膜(3)によって閉じられる。本発明によれば、リリーフ通路(5)が過大圧力バルブ(11)を介して大気に開かれ、パイロットバルブユニット(6)の出口開口(10)がリリーフ通路(5)に連結されている。これらの方法によって、改良されたブースター効果、及び、炎が外側からリリーフ通路(5)及びキャビティ(13)中に伝播することができない、より高度な安全性が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンク内の圧力を逃すリリーフバルブに関し、該リリーフバルブは、主膜に密着しているバルブ座及びバルブボディを有し、主膜の一方の面はパイロット通路を介してタンクに連通し且つ他方の面はその一部がタンクに連通し且つ他の一部がリリーフ通路に連通しており、前記パイロット通路内に配置されたパイロットバルブを設定圧力で開くように構成された少なくとも1つのパイロット膜を備えたパイロットバルブユニットを有し、前記パイロット通路はタンクに連結された入口開口と出口開口とを有している。
【背景技術】
【0002】
より詳しくは、このようなバルブは、例えば船舶に搭載されるタンク内の圧力を逃すのに使用される。温度変化のためにタンクを通気できるようにすることが重要であるが、タンク内に収容される物質が可燃性である場合には、バルブの機能及びその防火能力に厳格な条件が課されている。
【0003】
タンク内に収容された混合物が可燃性であるという意味で、タンクが可燃性ガスを放出する液体を収容する場合には、特に危険である。このため、リリーフバルブには、外部からの炎のブローバックを防止すること、及び同時に、開閉のために、タンクからの蒸発を最小に減じるような小さな圧力差で作動させることの両方の条件が課される。
【0004】
上記種類のパイロット膜は良く知られており、且つタンク内の圧力が設定圧力より僅かに高いだけで非常に迅速に開くことができるという長所を有する。反面、これらは防火性を欠くどころか、前記出口開口が外(大気)と通気されるために危険である。このことは、例えばデッキ火災がパイロットバルブを通ってタンクに伝播されることを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、開閉機能の改善がなされていると同時に、火災がバルブを通って伝播できなくする安全性が得られるリリーフバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、リリーフ通路が過大圧力バルブ(excess-pressure valve)を介して外(大気)と連通しており、出口開口が、主膜及び過大圧力バルブを介してリリーフ通路に連結されているという特徴により達成される。
【0007】
出口開口がリリーフ通路に連結されていることにより、過大圧力バルブが閉じられている限り、パイロットバルブを通るガスのスループット(流量)により、リリーフ通路内の圧力の増大を達成できる。このような圧力増大は、主膜をより迅速に開くことに寄与する。主膜が開くと、リリーフ通路内の圧力が迅速に増大し、過大圧力バルブが開く。同時に、主膜の一方の面に作用する圧力を更に低下させるために、パイロットバルブを通るガスのスループットが増大するという意味で、前記出口開口の回りに圧力降下が生じる。このようにして、本発明によるバルブのより迅速で信頼できる機能が達成される。
【0008】
放出されたガスが着火されると、従来技術では、リリーフ通路内の圧力、従って流量が低下した場合に炎のブローバックの危険が生じる虞れがある。本発明によれば、炎がリリーフ通路の近くのどこかに到達する前に過大圧力バルブが閉じることにより、その危険が回避される。出口開口がリリーフ通路に連結されており且つリリーフ通路が過大圧力バルブにより周囲環境から遮断されているため、もはや、炎がパイロットバルブを通って伝播するという危険は全く生じない。
【0009】
部分真空(sub-atmospheric pressure)の場合には、タンクからリリーフ通路までの通路が与えられるという意味で、開くことができる主膜の両面を部分真空が支配する。この場合でも、リリーフ通路に過大圧力バルブが設けられているため、デッキ火災の場合に過大圧力バルブが閉じて、大きい被害を招く炎の吸引が防止される。
【0010】
好ましい実施形態によれば、過大圧力バルブは、本質的に垂直軸線を有する魚雷形バルブボディを備えている。魚雷形バルブボディは、流出ガスを集中ジェットに集合させ、使用位置においてリリーフ通路が上向きであれば、上方に吹出すことができる。
【0011】
一実施形態では過大圧力バルブはスプリング及び/またはバルブボディの自重によってのみ付勢されるが、好ましい実施形態によれば磁石も設けられており、その磁力は、開圧力を閉圧力よりも高くすべく機能する。これは、過大圧力バルブを僅かに遅く開かせることに寄与し、これにより、上記のようにバルブの開サイクルを一層改善できると同時に、バルブを比較的低い圧力で閉じることができる。
【0012】
以下、添付図面を参照し、実施形態の記載を参照して、本発明を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示す実施形態の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すバルブの底部には、バルブをタンクに取り付けるための、あるいは連結するためのフランジ12が設けられている。一般に、タンクは、例えば可燃性蒸気を発生する液体を輸送する船内のローディング(載荷)タンクである。この時点で既に、過圧(super-atmospheric pressure)の場合にはタンクを通気させること及び部分真空(sub-atmospheric pressure)の場合には空気が流入できるようにすることが可能なリリーフバルブに関する安全性には厳格な条件が課されることが理解されよう。流出の場合には、可燃性ガスは、例えば落雷により着火されてしまい、またタンク内が真空の場合には、デッキ火災がタンク内の可燃性ガスに容易に引火してしまうであろう。
【0015】
通常の作動時には、リリーフバルブは、絶対的に必要とされる量より多量のガスを流出させることができないように作動することも非常に重要である。タンク内の圧力が不必要なまでに低下した場合には、タンク内の液体は更に蒸発してしまうであろう。実際に、船で輸送する間に、多量の液体がこのようにして蒸発してしまう。従って、この目的のためのリリーフバルブは、設定圧力と閉鎖圧力との非常に小さい差圧内で作動できなくてはならない。実際には、フランジ12はタンクに固定されず、或る長さのパイプシステムを介してタンクに連結されるが、このことは、ガスがパイプを通って流れるやいなや圧力降下が生じることを意味する。
【0016】
あらゆる観点から、船舶に搭載されて使用されるリリーフバルブに関する安全性及び作動には、非常に厳格な条件が課されている。本発明はまた、上記のような厳格な要求が課される海岸タンクまたは他の目的に関連して非常に良く適用できるものであることに留意しなければならない。
【0017】
本発明のバルブはチャンバ13を有し、該チャンバ13は、フランジ12を介してタンクに連結され且つ真空バルブ14に連結されている。真空バルブ14は、それ自体は既知であり且つチャンバ13内に真空が生じた場合に作動される目的で用いられる。このような真空バルブ14はまた、周囲の火炎がチャンバ13内に伝播することを防止するための、それ自体は既知である手段も有している。
【0018】
また、チャンバ13は、バルブ座1及びバルブボディ2を有するバルブを介してリリーフバルブ5に連結されている。バルブボディ2は、主膜3により支持され且つ該主膜3が上方移動するように影響を受けるとバルブが開くようにジャーナル支持されている。このような場合には、タンクからの過圧がリリーフ通路5に伝播され、且つここから後述のように過大圧力バルブ11を介して大気に排出される。最初に、図2に示すバルブ部品6が如何に機能するかを説明する。以下の説明において、バルブ部品6は「パイロットバルブユニット6」と呼ぶこととし、該パイロットバルブユニット6は、入口開口9を介してチャンバ13に連結され且つ出口開口10を介してリリーフバルブ5に連結されており、最後にチャンバ15に連結されている。このチャンバ15は、図示の実施形態では主膜3により下部の境界が定められている。
【0019】
パイロットバルブユニット6は制御膜16及びパイロット膜7を有し、ここで、パイロット膜16の上面は大気に連通しているのに対し、両膜7、16の間の空間は、スロットル手段17を介して入口開口9に連結されている。膜7の下面も、スロットル手段17の周囲で入口開口9に連結されている。パイロットバルブはまた、パイロットチャンバ15に連結されたパイロット通路4を有する。該パイロット通路4は、スロットル手段を介して入口開口9に連結されており、通常、パイロットバルブ8により上部が開かれる。両膜16、7が上方に移動されると、パイロットバルブ8が、ガスが入口開口9から出口開口10へと流れることが可能になるという意味で開かれる。
【0020】
また、パイロットバルブユニット6はスプリング24を有し、該スプリング24は調節可能であり、調節可能な所定の力により膜16を下方に押圧する。両膜はバルブ8のバルブボディを介して互いに連結されており、これらの部品は、スプリング24からの押圧力及び両膜に作用するガス圧力の影響を受けて垂直移動できるようにジャーナル支持されている。
【0021】
図2に示すパイロットバルブは、下記のように機能する。
チャンバ13を支配する圧力が大気圧より高いが設定圧力より低いと仮定すると、この圧力はチャンバ15内及び両膜16、7の間も支配していることは理解されよう。この圧力が大気圧にスプリング力を加えた力に打勝つことができない限り、パイロットバルブ6は閉じられたままであり且つ主膜3は、チャンバ13とリリーフ通路5との間にいかなる通路も形成しないようにする。
【0022】
チャンバ13内の圧力が設定圧力より高くなるとすぐに、膜16の上方の圧力差により、パイロットバルブ8が必然的に開き始める。これが生じるとすぐに、ガスが入口開口9から出口開口10へと流れ、ガスはスロットル手段17を通るので、入口開口9を支配する圧力より低い圧力がスロットル手段17の下流側を支配する。また、この圧力差は迅速にパイロット膜7の上方に到達し、それによって、パイロットバルブ8のバルブボディが更に上方に持上げられ、入口開口9から出口開口10へのガスのスループットが更に増大する。実際、このことは、チャンバ13内の圧力が設定圧力を極く僅かに超える場合であっても、パイロットバルブ8が非常に迅速に開くことを意味する。前記流れによりチャンバ15も真空化され、膜3によりバルブボディ2が非常に迅速に上昇される。これは、チャンバ15が真空化されることによるだけでなく、本発明により、出口開口10がリリーフ通路5に連結されていて、リリーフ通路5内の圧力が増大することにもよる。両膜16、7により達成される上記ブースタ効果自体は既知であるが、本発明の1つの利点は、既知のブースタ効果を得るには不可欠である、パイロットバルブを通るガスの流れが、リリーフ通路5内に流入し、これにより、これまで知られていないほど高いブースタ効果が得られることである。
【0023】
従来技術のパイロットバルブでは出口開口10が直接大気に連通しており、このため、デッキ火災がバルブを通ってタンクに伝播する高い危険を有している。炎のブローバックを防止する、且つ、パイロットバルブ6の開移動中リリーフ通路5に過圧を発生させることができる理由でもある、リリーフ通路5が過大圧力バルブ11によって終端されるという事実により、本発明に関してはこの危険は生じない。
【0024】
ここで、過大圧力バルブ11についてより詳細に説明する。この過大圧力バルブ11は外観が魚雷形ボディの形状を有し、流出ガスを集中ジェットとして集合させ、高速で大気中に吹出す既知の効果を有している。魚雷形ボディの底部はバルブボディ18として構成されており、バルブ座19上に当接するように構成されている。中心にはガイド20が設けられており、該ガイド20は、図示しない手段によりバルブ座19に関して固定されたスピンドルガイド21内で垂直に移動できる。スピンドルガイド21の頂部には磁気ディスク22が設けられており、該磁気ディスク22は、他の磁気ディスクまたは磁性材料からなるディスク23と協働するように構成され、他の磁気ディスク23は、バルブボディ18がバルブ座19に当接するときに両ディスク22、23間の磁気吸引力を所定値に調節できるという意味で、高さを調節できる。従って、バルブボディ18をバルブ座19に向かって下方に維持するのは磁力である。リリーフチャンバ5内の圧力が前記磁気引力に打勝つことができると過大圧力バルブ11が開き、これにより、磁気引力が低下するという意味で、ディスク23がディスク22から大きい距離を隔てた位置に移動され、バルブ11が殆ど瞬間的にその頂位置に移動し、最大流出が可能になる。
【0025】
磁気ディスク22及び23はまた、閉圧力が開圧力より僅かに低くなる効果を有している。しかしながら、もし炎の伝播があったとしても、炎のブローバックはリリーフ通路5の下方向に生じることができないという意味で常に炎の伝播速度を超えるバルブ座19での測定された流速よりも低くはない。
【0026】
過大圧力バルブ11は、開閉圧力が本質的に同じである純粋なスプリング制御形バルブ及び/または質量制御形バルブであってもよい。これは、過大圧力バルブ11は、パイロットバルブユニット6が閉じる直前に閉じることを意味する。しかしながら、過大圧力バルブ11が閉じられると、リリーフ通路5及び依然として開いているバルブを通ってチャンバ13及びタンクへの炎のブローバックの危険はなくなる。
【0027】
磁気制御形バルブと、スプリング制御形バルブと、質量制御形バルブとを組み合せることにより、過大圧力バルブ11が、設定圧力及びパイロットバルブの閉圧力により制御されるリリーフチャンバ5内で生じる圧力条件及び流量条件の点で最適に機能することを確保するための広い自由度を設計者に与えることができる。
【0028】
リリーフ通路5は、過大圧力バルブにより及びリリーフ通路5に連結された出口開口10により大気に対して閉じられるため、従来技術に比べて防火性に優れ且つ機能的に信頼できるバルブを得ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 バルブ座
6 バルブ部品
7 パイロット膜
8 パイロットバルブ
11 過大圧力バルブ
13 チャンバ
16 制御膜
17 スロットル手段
22 磁気ディスク
23 磁気ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主膜(3)に密着しているバルブ座(1)及びバルブボディ(2)を有し、主膜(3)の一方の面はパイロット通路(4)を介してタンクに連通し且つ他方の面はその一部がタンクに連通し且つ一部がリリーフ通路(5)に連通しており、前記パイロット通路(4)内に配置されたパイロットバルブ(8)を設定圧力で開くように構成された少なくとも1つのパイロット膜(7)を備えたパイロットバルブユニット(6)を有し、前記パイロット通路(4)は、タンクに連結され出口開口(10)を備えた出口開口(9)を有する構成である、タンク内の圧力を軽減するためのリリーフバルブにおいて、前記リリーフ通路(5)は過大圧力バルブ(11)を介して大気に連通しており、前記出口開口(10)は、主膜(3)と過大圧力バルブ(11)との間のリリーフ通路(5)に連結されていることを特徴とするリリーフバルブ。
【請求項2】
前記リリーフ通路は使用位置において上方に向いており、前記過大圧力バルブは、本質的に垂直軸線を有する魚雷形バルブボディを有することを特徴とする請求項1に記載のリリーフバルブ。
【請求項3】
前記過大圧力バルブは、スプリング及び/またはバルブボディの重量により付勢されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリリーフバルブ。
【請求項4】
前記過大圧力バルブは磁石を有し、該磁石の磁力は、開圧力が閉圧力を超えるのに役立つことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリリーフバルブ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−503800(P2010−503800A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527699(P2009−527699)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/DK2007/000406
【国際公開番号】WO2008/031435
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(509008721)ヴァルパンプ パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】