リリーフ弁
【課題】流入口の液圧が急激に上昇するような状態となった場合において、流入口の圧液を、従来よりも低い液圧から逃がすことができて、その低い液圧の状態から流入口の液圧の上昇を開始させることによって、流入口に大きなサージ圧力が発生することを防止することができるようにすること。
【解決手段】 弾性部材によって前方に押圧されて流入口2aと流出口1aとを遮断するプランジャ3が、流入口2aの圧力上昇に伴い弾性部材の弾性力に抗して後退移動して、流入口2aと流出口1aとを連通させると共に、弾性部材の後端を前方に押圧するピストン4が、流入口1aの圧力上昇に伴い前進移動することにより弾性部材を圧縮してリリ−フ圧力を調整するリリーフ弁R1において、弾性部材は、互いに直列に配置された第1弾性部材5aと第2弾性部材5bとを備え、第2弾性部材5bは、第1弾性部材5aよりも弾性定数が小さい構成。
【解決手段】 弾性部材によって前方に押圧されて流入口2aと流出口1aとを遮断するプランジャ3が、流入口2aの圧力上昇に伴い弾性部材の弾性力に抗して後退移動して、流入口2aと流出口1aとを連通させると共に、弾性部材の後端を前方に押圧するピストン4が、流入口1aの圧力上昇に伴い前進移動することにより弾性部材を圧縮してリリ−フ圧力を調整するリリーフ弁R1において、弾性部材は、互いに直列に配置された第1弾性部材5aと第2弾性部材5bとを備え、第2弾性部材5bは、第1弾性部材5aよりも弾性定数が小さい構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧回路の液圧制御に使用されるリリーフ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建設機械車両等の旋回体用の旋回モータや走行モータは、一般的に液圧モータが使用され液圧回路で駆動される。そして、リリーフ弁は、液圧回路の液圧制御のために用いられる。
【0003】
従来のリリーフ弁の一例として、図6に示すものがあり(例えば、特許文献1参照。)、このリリーフ弁R10を、図6及び図2を参照して説明する。図2に示す一点鎖線は、このリリーフ弁R10の流入口102aの液圧(リリーフ圧力)が時間の経過と共に変化する状態を示している。
【0004】
今、リリーフ弁R10は、図6に示す状態であり、弁座102に形成された流入口102a及び流出口101aは、タンク圧力PTとなっているとする(図2に示す(1)の状態)。
【0005】
次に、例えば流入口102aが急激に加圧される状態(図2に示す(5)の状態)となると、流入口102aの液圧が絞り103bを通って第3液室140に導かれる。そして、流入口102aの液圧が上昇して、流入口102aの液圧によりプランジャ103に対して働く上向きの力(後向作用力)が、第3液室140の液圧及びバネ105の弾性力(バネ力)によりプランジャ103に対して働く下向きの力(前向作用力)よりも大きくなると、プランジャ103は、上向きに後退移動して、流入口102aと流出口101aとが互いに連通する状態となる。これによって、流入口102aの圧液を、初期セット圧力P2の状態から、流出口101aから所定流量で逃がすことができる。
【0006】
次に、第3液室140の液圧は、ピストン104に形成された連通孔111、絞り111a、112を通って第1液室122及び第2液室132に導かれる。そして、前向作用面131に圧液が与える前向作用力が、第3液室140の底面123、124及び後向作用面121に圧液が与える後向作用力、及びバネ105の弾発力の合力よりも大きくなると、ピストン104は、下向きに前進移動を開始する。
【0007】
このように、ピストン104が下向きに前進移動するときは、第1液室122内の圧液が、ピストン104の連通孔111、絞り111aを通って第3液室140に排出されるので、ピストン104は、ゆっくりと前進移動する。このようにして、ピストン104が前進移動してケース101の段部101bに当接するまでは、バネ105が徐々に圧縮されていき、バネ105の反発力が徐々に増加する。よって、流入口102aのリリーフ圧力は、滑らかに上昇していく(図2に示す(6)の状態)。
【0008】
そして、ピストン104が前進移動してケース101の段部101bに当接すると、ピストン104は、それ以上、下向きに前進移動することができないので、リリーフ圧力は、一定の最大リリーフ圧力PSに保たれる。(図2に示す(4)の状態)。この図2に示す(6)、及び(4)の状態のとき、流入口102aの圧液は、リリーフ弁を押し開き流出口101aから流出している。このため初期セット圧力P2(t1)から最大リリーフ圧力PS(t3)までの昇圧を滑らかにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−351425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、図6に示す従来のリリーフ弁R10では、図2に示すように、初期セット圧力がP2に設定されているので、流入口102aの液圧がP2に到達するまでは、流入口102aの圧液を所定流量で流出口101aに逃がすことができない。そうすると、例えばこのリリーフ弁R10が使用されている建設機械車両等の旋回体の旋回を停止させようとして、旋回モータに対して減速作動を開始したときに、この旋回モータが接続されている液圧回路に急激な圧力変化(トルク変化)が発生し、これら液圧回路、旋回モータ及び旋回体に大きな衝撃が掛かることがある。
【0011】
ここで、図6に示すリリーフ弁R10のセット圧力P2を小さくする方法として、プランジャ103が流入口102aを閉じている状態で、バネ105によってプランジャ103を押し下げている力が小さくなるように、バネ定数を小さくすることが考えられる。
【0012】
しかし、バネ定数の小さいバネを使用して、図2に示す最大リリーフ圧力PSが得られるようにするためには、バネの長さを大きくして、バネが圧縮されるストローク(寸法)を大きく取れるようにする必要があり、このようにすると、リリーフ弁R10の嵩が大きくなり大型化してしまう。
【0013】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、流入口の液圧が急激に上昇するような状態となった場合において、流入口の圧液を、従来よりも低い液圧から逃がすことができて、その低い液圧の状態から流入口の液圧の上昇を滑らかに行わせることによって、急激な圧力変化(トルク変化)が発生することを防止することができると共に、コンパクトなリリーフ弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るリリーフ弁は、弾性手段によって前方に押圧されて流入口と流出口とを遮断するプランジャが、前記流入口の圧力上昇に伴い前記弾性手段の弾性力に抗して後退移動して、前記流入口と前記流出口とを連通させると共に、前記弾性手段の後端を前方に押圧するピストンが、前記流入口の圧力上昇に伴い前進移動することにより前記弾性手段を圧縮してリリ−フ圧力を調整するリリーフ弁において、前記弾性手段は、互いに直列に配置された第1弾性部材と第2弾性部材とを備え、前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材よりも弾性定数が小さい構成としたことを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係るリリーフ弁によると、流入口の液圧が急激に上昇するような状態となった場合において、プランジャが液圧によって後退する方向に受ける後向作用力が、プランジャが第1及び第2弾性部材の弾性力(例えばバネ力)によって前進する方向に受ける前向作用力よりも大きくなると、プランジャが後退移動する。ここで、プランジャが後退移動する距離は、第1及び第2弾性部材が圧縮される合計寸法であるが、第2弾性部材の弾性定数を第1弾性部材の弾性定数よりも小さくしてあるので、流入口の液圧が比較的低い状態で(比較的低いセット圧力で)、第2弾性部材が第1弾性部材と比較して大きく短縮して、プランジャを液圧に対応する所定の距離だけ後退移動させて、流入口と流出口とを互いに連通させることができる。これによって、流入口の圧液を流出口から逃がすことができる。
【0016】
次に、プランジャが流入口の液圧と対応する距離だけ後退移動しており、流入口の圧液を流出口から逃がしている状態で、直列に配置されている第1及び第2弾性部材の後端を前方に押圧するピストンが、流入口の液圧によって前進移動を開始する。これによって、第1及び第2弾性部材を徐々に圧縮することができ、リリ−フ圧力を滑らかに上昇させることができる。このようにして、流入口の液圧が急激に上昇することを防止できる。
【0017】
そして、ピストンが前進移動して、その液圧(リリーフ圧力)が最大リリーフ圧力に到達するまでの昇圧緩衝時間を引き延ばすことができる。
【0018】
また、本発明のリリーフ弁によると、弾性定数の大きい第1弾性部材の弾性力を利用して、このリリーフ弁に対して所望の大きさの最大リリーフ圧力を設定することができる。
【0019】
本発明に係るリリーフ弁において、前記第1弾性部材によって最大リリーフ圧力が主に設定され、前記第2弾性部材によって前記ピストンが前進移動する前の状態のリリーフ圧力が主に設定されているものとすることができる。
【0020】
このようにすると、最大リリーフ圧力を主に第1弾性部材によって設定することができ、昇圧緩衝の開始圧力を主に第2弾性部材によって設定することができる。
【0021】
本発明に係るリリーフ弁において、前記プランジャの後退移動を所定の最大後退位置で停止させるためのストッパが前記プランジャを収容するケース側に設けられるものとすることができる。
【0022】
このようにすると、弾性定数の小さい第2弾性部材が、流入口の液圧の上昇によって短縮するときに、プランジャの後退移動を所定の最大後退位置で停止させることができる。これによって、リリーフ弁の最大開口度を所定の開口度に設定することができる。
【0023】
本発明に係るリリーフ弁において、前記第2弾性部材が圧縮される寸法を所定の最大圧縮寸法以下に規制するためのカップ状のばね座を備えるものとすることができる。
【0024】
このようにすると、流入口の圧力上昇によって、プランジャ又はピストンが第1及び第2弾性部材を圧縮する方向に移動したときに、第2弾性部材が第1弾性部材と比較して大きく圧縮され、その際に、第2弾性部材が圧縮される寸法が所定の最大圧縮寸法となったときに、第2弾性部材が更に圧縮されることをカップ状のばね座によって規制することができる。そして、更に、プランジャ又はピストンが、第1及び第2弾性部材を圧縮する方向に移動すると、第2弾性部材が圧縮されずに、第1弾性部材が圧縮されて、この第1弾性部材によってリリ−フ圧力を所定の最大リリーフ圧力に保持することができる。
【0025】
本発明に係るリリーフ弁において、前記第1弾性部材の弾性定数K1と、前記第2弾性部材の弾性定数K2との比K1/K2が、5〜20であるものとすることができる。
【0026】
このようにすると、例えば建設機械車輌等の旋回体用の旋回モータの液圧回路に本発明のリリーフ弁を採用すると、この旋回モータを減速させるときに、液圧回路に急激な圧力変化(トルク変化)が発生することを効果的に防止することができ、液圧回路、旋回モータ及び旋回体に大きな衝撃が掛かることを防止できると共に、旋回モータを適切なマイナス加速度で減速させて停止させることができる。つまり、弾性定数の比K1/K2を5未満とすると、旋回体等に掛かる衝撃を適切に小さくすることができないことがある。そして、弾性定数の比K1/K2が20を超えると、所定のセット圧力を設定するために、第2弾性部材の長さを長くする必要があり、その分だけ嵩が大きくなりコストも上がる。
【0027】
本発明に係るリリーフ弁において、前記弾性手段の収容された液室が前記流出口と連通し、前記ピストンが、ケースの内孔と液密的に摺動する第1摺動部を有し、前記プランジャの後部が、前記ピストンの中心軸に沿って形成された摺動穴に摺動自在に嵌挿され、前記プランジャには、前記流入口からプランジャの後方まで圧液を導く貫通孔が形成され、前記摺動穴後部の前記プランジャが到達しない空間と、前記貫通孔とで、第3液室が形成され、前記ピストンには、その第1摺動部よりも後方に後向作用面と前向作用面とが形成され、前記第3液室と、前記後向作用面の面する第1液室とが、前記ピストンに形成された連通孔を介して互いに連通され、前記第3液室と、前記前向作用面の面する第2液室とが、前記ピストンに形成された連通孔を介して互いに連通され、前記前向作用面に圧液が与える前向作用力と、前記ピストンに形成された前記摺動穴の底面及び前記後向作用面に圧液が与える後向作用力との差により、前記ピストンが前進移動するものとすることができる。
【0028】
このようにすると、ピストンにおける摺動穴の底面及び後向作用面の面積と、前向作用面の面積との面積差が、ピストンの有効受圧面積となる。よって、例えばピストンの第1摺動部の肉厚とは無関係に、ピストンを前進移動させるための有効受圧面積を設定することができ、所定の剛性を有するピストンを製作することができる。
【0029】
本発明に係るリリーフ弁において、前記前向作用面の面積が、前記摺動穴の底面と前記後向作用面との合計面積よりも大きく、その面積差により前記前向作用力と前記後向作用力との差が生じるようにしたものとすることができる。
【0030】
このようにすると、ピストンを前進移動させるための有効受圧面積を小さくすることによって、ピストンがゆっくりと前進移動することとなり、昇圧緩衝時間を長くすることができる。そして、有効受圧面積を大きくすることによって、ピストンが速く前進移動することとなり、昇圧緩衝時間を短くすることができる。このように、昇圧緩衝時間を自由に設定することができる。
【0031】
本発明に係るリリーフ弁において、前記前向作用力と前記後向作用力との差により前記連通孔の前後に圧力差が生じ、圧液が前記連通孔を通過する間、前記ピストンが前進移動するものとすることができる。
【0032】
このようにすると、連通孔を細く形成することによって、ピストンがゆっくりと前進移動することとなり、昇圧緩衝時間を長くすることができる。そして、連通孔を太く形成することによって、ピストンが速く前進移動することとなり、昇圧緩衝時間を短くすることができる。このように、昇圧緩衝時間を自由に設定することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るリリーフ弁によると、弾性定数が異なる第1及び第2弾性部材を直列に配置した構成としたので、昇圧緩衝開始圧力を下げることができ、流入口の液圧が急激に上昇するような状態となった場合において、流入口の圧液を、比較的低い液圧の状態から流出口に逃がすことができる。これによって、例えば建設機械車輌等の旋回体用の旋回モータの液圧回路に本発明のリリーフ弁を採用すると、この旋回モータの減速開始時に、液圧回路に急激な圧力変化(トルク変化)が発生することを防止することができ、液圧回路、旋回モータ及び旋回体に大きな衝撃が掛かることを防止できる。
【0034】
そして、流入口の液圧を、比較的低い液圧から流出口に逃がすことができるので、流入口のリリ−フ圧力が最大リリーフ圧力に到達するまでの昇圧緩衝時間を引き延ばすことができる。これによって、旋回モータを停止させる際に、液圧回路、旋回モータ及び旋回体に大きな衝撃が掛かることがないように適切にゆっくりと停止させることができる。
【0035】
また、昇圧緩衝開始圧力を低くするために弾性定数の小さい第2弾性部材を採用し、なおかつ、リリ−フ圧力を所定の最大リリーフ圧力に保持できるようにするために弾性定数の大きい第1弾性部材を採用したことによって、1つのバネ等の弾性部材によって上記と同様に作用するものを製作しようとした場合と比較して、リリーフ弁の嵩を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の第1実施形態に係るリリーフ弁を示す縦断面図である。
【図2】同第1実施形態に係るリリーフ弁等のリリーフ圧力の時間的変化を示す図である。
【図3】同第1実施形態に係るリリーフ弁等のオーバーライド特性を示す図である。
【図4】同第1実施形態に係るリリーフ弁を用いた液圧回路を示す図である。
【図5】同発明の第2実施形態に係るリリーフ弁の一部を示す縦断面図である。
【図6】従来のリリーフ弁の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係るリリーフ弁の第1実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。この図1に示すリリーフ弁R1は、例えばこのリリーフ弁R1が使用されている建設機械車両等の旋回体の旋回を停止させようとして、旋回モータに対して減速作動を開始したときに、この旋回モータが接続されている液圧回路に急激な圧力変動が発生することを防止でき、これら液圧回路、旋回モータ及び旋回体に大きな衝撃が掛からないようにして旋回を停止させることができるものである。
【0038】
リリーフ弁R1は、図1の縦断面図に示すように、略円筒形状の外ケース1及び外ケース1に螺合された内ケース54と、外ケース1の先端部(前側部)に固定して設けられた弁座2と、外ケース1内に配置されたプランジャ3と、内ケース54内に配置されたピストン4と、プランジャ3とピストン4との間に介在するコイル状の圧縮バネ(弾性手段)である第1弾性部材5a及び第2弾性部材5bとを備えている。
【0039】
そして、内ケース54をネジ部53で回転させて進退移動させることによって、第1及び第2弾性部材5a、5bを圧縮する力(例えばセット圧力)を調整することができるようにしてある。
【0040】
外ケース1の内孔は、ピストン4の大径部(第2摺動部4b)が装着されている部分1cの内径がd1に形成され、ピストン4のその前側の中径部(第1摺動部4a)が装着されている部分1dの内径がd4に形成されている。外ケース1の側面には流出口1aとこの流出口に連通する通路1bが形成されている。弁座2は、環状の部材であり、中心部には圧液の流入口2aが形成されている。プランジャ3は、先端部が先細りの略円錐台形状をなしている。プランジャ3の中心には、貫通孔3aが形成されている。
【0041】
この貫通孔3aは、プランジャ3の先端から後端までを貫通して流入口2aからプランジャ3の後方まで圧液を導くように形成されており、その途中には、絞り3bが形成されている。絞り3bは、プランジャ3の作動に減衰力を与え、ハンチングを防止するために設けられている。
【0042】
ピストン4の前部には、外径d4の中径部たる第1摺動部4aが形成され、第1摺動部4aよりも後方に外径d1の大径部たる第2摺動部4bが形成されている。更に、ピストン4には、その後端部に小径部たる第3摺動部4cが形成されている。また、内ケース54には、中心軸に沿って前方に開口する凹部51が形成されている。
【0043】
前記の第3摺動部4cは、内ケース54の凹部51に液密的に摺動するように嵌挿され、第3摺動部4cの後端部と前記凹部51と間には、液室52が形成される。そして、第1摺動部4aは、外ケース1の内孔1dの内径d4の部分に液密的に摺動自在に嵌挿されており、第2摺動部4bは、外ケース1の内孔1cの部分に液密的に摺動自在に嵌挿されている。第3摺動部4cの外径はd2である。
【0044】
ピストン4には、中心軸に沿って、その前面に開口する摺動穴4fが形成されている。摺動穴4fの内径は、d3である。プランジャ3の後部は、摺動穴4f内に摺動自在に嵌挿されている。そして、プランジャ3が摺動可能範囲の最後部まで摺動してもプランジャ3の後端が到達しない摺動穴4fの後部空間4dと、プランジャ3の貫通孔3aとで、第3液室40が形成されている。また、ピストン4には、前記第1摺動部4a、第2摺動部4bおよび第3摺動部4cを軸方向に貫通し、第1及び第2弾性部材5a、5bを収容するばね室8と前記液室52とを連通する通路4eが形成されている。
【0045】
また、ピストン4には、連通孔11及び連通孔12が形成されている。連通孔11には、その一部に絞り11aが形成されている。連通孔12には絞りは形成されていない。大径部(第2摺動部4b)の前端面は、圧液が作用する後向作用面21として機能し、この後向作用面21が面する第1液室22は、連通孔11によって第3液室40と連通されている。また、大径部(第2摺動部4b)の後端面は圧液が作用する前向作用面31として機能し、この前向作用面31が面する第2液室32は連通孔12によって第3液室40と連通されている。
【0046】
第1弾性部材5a及び第2弾性部材5bは、外ケース1の内周面1dとプランジャ3の外周面との間に形成されたばね室8(第5液室)内に、直列に配置された状態で収容されている。第1弾性部材5aは、その先端がカップ状のばね座7bを介して第2弾性部材5bの後端と当接し、第1弾性部材5aの後端がピストン4の第1摺動部4aの前端面をばね座7aを介して後方に押圧するように収縮した状態で配置されている。第2弾性部材5bは、その先端がプランジャ3の膨大部3cを後ろから前方に押圧し、後端がカップ状のばね座7bを後方に押圧するように収縮した状態で配置されている。
【0047】
この第2弾性部材5bの弾性定数K2は、第1弾性部材5aの弾性定数K1よりも小さく設定されており、弾性定数の比K1/K2は、例えば5〜20であり、好ましくは5〜15である。
【0048】
参考までに、弾性定数の比K1/K2を5未満とすると、旋回体等に掛かる衝撃を適切に小さくすることができないことがある。そして、弾性定数の比K1/K2が20を超えると、所定のセット圧力P1を設定するために、第2弾性部材5bの長さを長くする必要があり、その分だけ嵩が大きくなりコストも上がる。
【0049】
そして、外ケース1の先端部の内周面には、プランジャ3の後退移動を所定の最大後退位置で停止させるためのストッパ55が形成されている。このストッパ55は、外ケース1の内側に突出する円環状の段部によって形成され、このストッパ55にプランジャ3の膨大部3cが当接することによって、プランジャ3の後退移動を所定の最大後退位置で停止させることができる。
【0050】
このようにストッパ55を設けると、弾性定数の小さい第2弾性部材5bが、流入口2aの液圧の上昇によって短縮するときに、プランジャ3の後退移動を所定の最大後退位置で停止させることができる。これによって、リリーフ弁R1の最大開口度を所定の開口度に設定することができる。なお、図1に示すaは、プランジャ3の進退移動可能なストロークである。
【0051】
また、前記カップ状のばね座7bは、第2弾性部材5bの最大圧縮寸法bを規制することができる。
【0052】
即ち、流入口2aの圧力上昇によって、プランジャ3又はピストン4が第1及び第2弾性部材5a、5bを圧縮する方向に移動したときに、第2弾性部材5bが第1弾性部材5aと比較して大きく圧縮され、その際に、第2弾性部材5bが圧縮される寸法が所定の最大圧縮寸法bとなったときに、プランジャ3の膨大部3cの後端面とばね座7bの円筒部前面が当接して、第2弾性部材5bが更に圧縮されることを規制することができる。そして、更に、ピストン4が、第1及び第2弾性部材5a、5bを圧縮する方向に移動すると、第2弾性部材5bが圧縮されずに、第1弾性部材5aが圧縮されて、設定圧力が増加する。ピストン4の第2摺動部4bの前面(後向作用面)21が前記内孔1cの段部50に当接すれば、第1弾性部材5aはそれ以上圧縮されず、設定圧力は最大となる。従って、リリ−フ圧力を所定の最大リリーフ圧力PSに保持することができる。
【0053】
次に、図1に示すように構成されたリリーフ弁R1の作用を、図1及び図2を参照して説明する。図2に示す実線は、このリリーフ弁R1の流入口2aの液圧(リリーフ圧力)が時間の経過と共に変化する状態を示している。
【0054】
今、リリーフ弁R1は、図1に示す状態であり、流入口2a及び流出口1aは、タンク圧力PTとなっているとする(図2に示す(1)の状態)。
【0055】
次に、例えば流入口2aが急激に加圧される状態(図2に示す(2)の状態)となると、流入口2aの液圧が絞り3bを通って第3液室40に導かれる。そして、流入口2aの上昇した液圧がプランジャ3に対して働く上向きの力(後向作用力)が、第3液室40の液圧、並びに第1及び第2弾性部材5a、5bの弾性力(バネ力)がプランジャ3に対して働く下向きの力(前向作用力)よりも大きくなると、プランジャ3は、上向きに後退移動し、弁が開いて、圧液が流出口1aへ流れ出す(リリーフ圧力P1)。
【0056】
ここで、プランジャ3が後退移動する距離は、第1及び第2弾性部材5a、5bが圧縮される合計寸法であるが、第2弾性部材5bの弾性定数K2を第1弾性部材5aの弾性定数K1よりも小さくしてあるので、流入口2aの液圧が比較的低い状態で、第2弾性部材5bが第1弾性部材5aと比較して大きく短縮して、プランジャ3を液圧に対応する所定の距離だけ後退移動させて(略最大開口となる)、流入口2aと流出口1aとを互いに連通させることができる。これによって、流入口2aの圧液を流出口1aから逃がすことができる。
【0057】
次に、プランジャ3が流入口2aの液圧と対応する距離だけ後退移動しており(略最大開口となっている)、流入口2aの圧液を流出口1aから逃がしている状態で、第3液室40の液圧は、ピストン4に形成された絞り11a、連通孔11、12を通って第1液室22及び第2液室32に導かれる。そして、前向作用面31に圧液が与える前向作用力が、第3液室40の底面23及び後向作用面21に圧液が与える後向作用力および第1弾性部材5a、第2弾性部材5bの弾発力の合力よりも大きくなると、ピストン4は、下向きに前進移動を開始する。
【0058】
このように、ピストン4が下向きに前進移動するときは、第1液室22内の圧液が、ピストン4の連通孔11、絞り11aを通って第3液室40に排出されるので、ピストン4は、ゆっくりと前進移動する。このピストン4のゆっくりとした前進移動によって、第1及び第2弾性部材5a、5bを徐々に圧縮することができ、リリ−フ圧力Pを滑らかに上昇させることができる(図2に示す(3)の状態)。
【0059】
このようにして、流入口2aの液圧が比較的低い液圧(P1)から、ピストン4がゆっくりと前進移動して、流入口2aの液圧の上昇が開始するので、流入口2aの液圧が急激に上昇することを防止できる。そして、流入口2aの液圧が、低い圧力(P1)から上昇を開始するようにしたので、ピストン4が前進移動して、その液圧(リリーフ圧力P)が最大リリーフ圧力PSに到達するまでの昇圧緩衝時間(t2−t1)を引き延ばすことができる。
【0060】
また、図1に示すように、このリリーフ弁R1によると、弾性定数K1の大きい第1弾性部材5aの弾性力を利用しているので、このリリーフ弁R1に対して所望の大きさの最大リリーフ圧力PSを設定することができる。
【0061】
そして、ピストン4が前進移動して外ケース1の段部50に当接すると、ピストン4は、それ以上、下向きに前進移動することができないので、リリーフ圧力Pは、一定の最大リリーフ圧力PSに保たれる。(図2に示す(4)の状態)。
【0062】
この図2に示す(3)、及び(4)の状態とき、流入口2aの圧液は、略一定流量(液圧回路の本機使用流量であり、例えば図3に示す100L/min)で流出口1aから流出している。
【0063】
このように、図1に示すリリーフ弁R1によると、弾性定数(K1、K2)が異なる第1及び第2弾性部材5a、5bを直列に配置した構成としたので、流入口2aの液圧が急激に上昇するような状態となった場合において、流入口2aの圧液を、比較的低い液圧(図2に示すP1)の状態から流出口1aに逃がすことができる。
【0064】
これによって、例えば図4に示すように、建設機械車輌等の旋回体用の旋回モータMの液圧回路にこのリリーフ弁R1、R2を採用すると、この旋回モータMの減速開始時に、液圧回路に急激な圧力変化(トルク変化)が発生することを防止することができ、液圧回路、旋回モータM及び旋回体に大きな衝撃が掛かることを防止できる。
【0065】
なお、図4において、旋回モータMの圧液供給口及び圧液排出口には、それぞれリリーフ弁R1、R2(リリーフ弁R2は、リリーフ弁R1と同等のものである。)が接続されている。リリーフ弁R1、R2の流出口1a(逃がし側)は旋回モータMの吸入圧力を確保するためのブーストチェック弁Bを介して液タンクTに接続されている。なお、Pは液圧ポンプ、Vは切換弁である。
【0066】
そして、図2に示すように、流入口2aの液圧を、比較的低い液圧(P1)から流出口1aに逃がすことができるので(図2に示す(3)の状態)、流入口2aのリリ−フ圧力Pが最大リリーフ圧力PSに到達するまでの昇圧緩衝時間(t2−t1)を引き延ばすことができる。これによって、旋回モータMを停止させる際に、液圧回路、旋回モータM及び旋回体に大きな衝撃が掛かることがないように適切にゆっくりと停止させることができる。
【0067】
また、リリーフ弁の作動開始圧力(初期セット圧力P1)を低くするために弾性定数の小さい第2弾性部材5bを採用し、そして、リリ−フ圧力Pを所定の最大リリーフ圧力PSに保持できるようにするために、弾性定数の大きい第1弾性部材5aを採用したことによって、弾性定数の小さい1つの弾性部材を使用して、上記と同様に作用するものを製作しようとした場合と比較して、リリーフ弁の嵩を小さくすることができる。
【0068】
次に、図1を参照して、ピストン4が前進移動する機構の説明をする。ばね室8(第5液室)は、ブーストチェック弁Bを介して液タンクTと連通されており、ばね室8の液圧は、ほぼタンク圧力PTに近い値となっている。更に、内ケース54の凹部51とピストン4の第3摺動部4cとで構成される液室52は、通路4e、ばね室8、ブーストチェック弁Bを介してタンクTに連通されており、その液圧もほぼタンク圧力PTに近い値となっている。よって、ピストン4の有効受圧面積は、前向作用面31の面積から、底面23及び後向作用面21の合計面積を差し引いた面積となる。底面23の面積は(d32×(π/4))=ASであり、後向作用面21の面積は((d12−d42)×(π/4))=AUである。また、前向作用面31の面積は((d12−d22)×(π/4))=AMである。従って、ピストン4の有効受圧面積A1は、次式のように表される。なお、以下の式では、ばね室8の圧力を0と近似している。
【0069】
A1=(d42−d32−d22)×(π/4)
このように、前向作用面31(面積AM)に圧液が与える前向作用力と、ピストン4に形成された摺動穴4fの後部空間4dの底面23(面積AS)、及び後向作用面21(面積AU)に圧液が与える後向作用力との差により、ピストン4が前進移動するように構成されている。
【0070】
そして、上式からもわかるように、d2、d3、d4の値の設定により、有効受圧面積A1を自由に設定することができるので、d3とd4の差を大きくしても、d2の値を大きくすることによってA1の値を小さくすることができる。
【0071】
よって、ピストン4の第1摺動部4aの肉厚とは無関係に、ピストン4を前進移動させるための有効受圧面積A1を設定することができ、所定の剛性を有するピストン4を製作することができる。
【0072】
また、前向作用面31の面積AMが、底面23の面積ASと、後向作用面21の面積AUとの合計面積よりも大きく、その面積差により前向作用力と後向作用力との差が生じるように構成されている。
【0073】
更に、前向作用力と後向作用力との差により連通孔11、12の前後に圧力差が生じ、圧液が連通孔11、12を通過する間、ピストン4が前進移動するように構成されている。
【0074】
このようにすると、連通孔11、12を細く形成したり、連通孔11、12に絞り11aを形成することによって、ピストン4がゆっくりと前進移動することとなり、昇圧緩衝時間(t2−t1)を長くすることができる。そして、連通孔11、12を太く形成することによって、ピストン4が速く前進移動することとなり、昇圧緩衝時間(t2−t1)を短くすることができる。このように、昇圧緩衝時間(t2−t1)を自由に設定することができる。
【0075】
次に、図3を参照して、図1に示すこの実施形態のリリーフ弁R1、及び図6に示す従来のリリーフ弁R10のオーバーライド特性を比較して説明する。
【0076】
図3に示す曲線S1は、図1に示す本実施形態のリリーフ弁R1において、ピストン4が後退位置(ストロークSt=0mm)にあるときのオーバーライド特性を示している。この曲線S1では、クラッキング圧力がPaであり、本機使用流量が例えば100L/mmのときのセット圧力がP1である。
【0077】
クラッキング圧力とは、プランジャ3が開き始めるときの流入口2aの液圧である。そして、本機使用流量とは、旋回モータMの使用流量である。また、セット圧力とは、流入口2aの圧液の圧力上昇によって、プランジャ3が押し上げられてリリーフ弁R1を通る圧液の流量が本機使用流量となるときの圧力を言う。
【0078】
図3に示す曲線S2は、図6に示す従来のリリーフ弁R10において、ピストン104が後退位置(ストロークSt=0mm)にあるときのオーバーライド特性を示している。この曲線S2では、クラッキング圧力がPbであり、本機使用流量が100L/mmのときのセット圧力がP2である。
【0079】
この従来のリリーフ弁R10では、バネ定数の大きい1つのバネ105を使用しているので、そのセット圧力P2が、本実施形態のリリーフ弁R1のセット圧力P1よりも大きくなっている。よって、旋回用モータMの回転を停止させるときに、旋回体に大きな衝撃が掛かってしまう。
【0080】
図3に示す曲線S3は、図6に示す従来のリリーフ弁R10において、ピストン104が前進位置(ストロークSt=3mm)にあるときのオーバーライド特性を示している。この曲線S3では、クラッキング圧力がPcであり、本機使用流量が100L/mmのときのセット圧力がP3である。
【0081】
このように、ピストン104が前進位置にあるときは、バネ105が圧縮された状態となっており、これによってセット圧力P3が、曲線S2のセット圧力P2よりも大きくなっている。よって、旋回用モータMの回転を停止させるときには、曲線S2の場合よりも旋回体に大きな衝撃が掛かってしまう。
【0082】
図3に示す曲線S4は、図6に示す従来のリリーフ弁R10において、ピストン104が後退位置(ストロークSt=0mm)にあるときのオーバーライド特性を示している。この曲線S4では、クラッキング圧力が0となるようにバネ105が自然長となっている状態で配置してあり、本機使用流量が100L/mmのときのセット圧力がP4である。
【0083】
このように、クラッキング圧力が0となるようにバネ105が自然長となっている状態で配置した場合であっても、そのセット圧力P4が、本実施形態の曲線S1のセット圧力P1よりも大きくなっている。よって、バネ定数が比較的大きいバネを使用すると、バネ105がプランジャ103を弁座102に押し付ける初期荷重が0となるようにしても、旋回用モータMの回転を停止させるときには、曲線S2の場合よりも旋回体に大きな衝撃が掛かってしまう。
【0084】
図5は、本願発明に係るリリーフ弁の第2実施形態を示す図であり、リリーフ弁R2のピストン4周辺の縦断面図である。このリリーフ弁R3は図1のリリーフ弁R1と異なり、ピストン4には第3液室40と第1液室22とを互いに連通させるような連通孔11は形成されておらず、その代わりに、第1液室22と第2液室32とを連通させる連通孔13が形成されている。つまり、第1液室22は、連通孔12と連通孔13とを介して、間接的に第3液室40に連通している。連通孔12には絞りは形成されていないが、連通孔13には絞り13aが形成されており、第1液室22は、第2液室32より圧力が高くなり昇圧緩衝時間(t2−t1)の調整に資することができる。これ以外の構成は、図1のリリーフ弁R1と同等であり、このリリーフ弁R2の挙動は図1のリリーフ弁R1と同様であるので、それらの説明を省略する。
【0085】
ただし、上記実施形態では、図1に示すように、弾性定数の大きい方の第1弾性部材5aをプランジャ3の後端部側に配置して、弾性定数の小さい方の第2弾性部材5bを、第1弾性部材5aとプランジャ3の先端部側(弁座2側)との間に配置したが、これに代えて、第1弾性部材5aと第2弾性部材5bの配置を入れ替えた構成としてもよい。つまり、弾性定数の小さい方の第2弾性部材5bをプランジャ3の後端部側に配置して、弾性定数の大きい方の第1弾性部材5aを、第2弾性部材5bとプランジャ3の先端部側(弁座2側)との間に配置する。このようにしても、上記実施形態と同様に挙動する。そして、このように構成した場合は、ストッパ55は、上記実施形態と同様に作用するように、外ケース1に形成するとよい。
【0086】
そして、上記実施形態では、図1及び図5に示す構成を採用して、ピストン4が、直列に配置した第1及び第2弾性部材5a、5bの後端を前方に押圧して、流入口2aの圧力上昇に伴い前進移動することにより、第1及び第2弾性部材5a、5bを圧縮してリリ−フ圧力Pを調整する構成としたが、これら図1及び図5に示す構成以外の構成を採用して、上記実施形態と同様に、ピストン4が作用する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明に係るリリーフ弁は、流入口の液圧が急激に上昇するような状態となった場合において、流入口の圧液を、従来よりも低い液圧から逃がすことができて、その低い液圧の状態から流入口の液圧の上昇を開始させることによって、流入口に大きなサージ圧力が発生することを防止することができると共に、コンパクトな構成とすることができる優れた効果を有し、このようなリリーフ弁に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0088】
R1、R2、R3 リリーフ弁
1 外ケース
1a 流出口
1b 通路
1c 部分
1d 部分
2 弁座
2a 流入口
3 プランジャ
3a 貫通孔
3b 絞り
3c 膨大部
4 ピストン
4a 第1摺動部(中径部)
4b 第2摺動部(大径部)
4c 第3摺動部(小径部)
4d 摺動穴の後部空間
4e 通路
4f ピストンの摺動穴
5a 第1弾性部材
5b 第2弾性部材
7a、7b ばね座
8 ばね室(第5液室)
11、12、13 連通孔
11a、13a 絞り
21 後向作用面
22 第1液室
23 底面
31 前向作用面
32 第2液室
40 第3液室
50 段部
51 凹部(第4液室)
52 液室
53 ネジ部
54 内ケース
55 ストッパ
【技術分野】
【0001】
本発明は、液圧回路の液圧制御に使用されるリリーフ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建設機械車両等の旋回体用の旋回モータや走行モータは、一般的に液圧モータが使用され液圧回路で駆動される。そして、リリーフ弁は、液圧回路の液圧制御のために用いられる。
【0003】
従来のリリーフ弁の一例として、図6に示すものがあり(例えば、特許文献1参照。)、このリリーフ弁R10を、図6及び図2を参照して説明する。図2に示す一点鎖線は、このリリーフ弁R10の流入口102aの液圧(リリーフ圧力)が時間の経過と共に変化する状態を示している。
【0004】
今、リリーフ弁R10は、図6に示す状態であり、弁座102に形成された流入口102a及び流出口101aは、タンク圧力PTとなっているとする(図2に示す(1)の状態)。
【0005】
次に、例えば流入口102aが急激に加圧される状態(図2に示す(5)の状態)となると、流入口102aの液圧が絞り103bを通って第3液室140に導かれる。そして、流入口102aの液圧が上昇して、流入口102aの液圧によりプランジャ103に対して働く上向きの力(後向作用力)が、第3液室140の液圧及びバネ105の弾性力(バネ力)によりプランジャ103に対して働く下向きの力(前向作用力)よりも大きくなると、プランジャ103は、上向きに後退移動して、流入口102aと流出口101aとが互いに連通する状態となる。これによって、流入口102aの圧液を、初期セット圧力P2の状態から、流出口101aから所定流量で逃がすことができる。
【0006】
次に、第3液室140の液圧は、ピストン104に形成された連通孔111、絞り111a、112を通って第1液室122及び第2液室132に導かれる。そして、前向作用面131に圧液が与える前向作用力が、第3液室140の底面123、124及び後向作用面121に圧液が与える後向作用力、及びバネ105の弾発力の合力よりも大きくなると、ピストン104は、下向きに前進移動を開始する。
【0007】
このように、ピストン104が下向きに前進移動するときは、第1液室122内の圧液が、ピストン104の連通孔111、絞り111aを通って第3液室140に排出されるので、ピストン104は、ゆっくりと前進移動する。このようにして、ピストン104が前進移動してケース101の段部101bに当接するまでは、バネ105が徐々に圧縮されていき、バネ105の反発力が徐々に増加する。よって、流入口102aのリリーフ圧力は、滑らかに上昇していく(図2に示す(6)の状態)。
【0008】
そして、ピストン104が前進移動してケース101の段部101bに当接すると、ピストン104は、それ以上、下向きに前進移動することができないので、リリーフ圧力は、一定の最大リリーフ圧力PSに保たれる。(図2に示す(4)の状態)。この図2に示す(6)、及び(4)の状態のとき、流入口102aの圧液は、リリーフ弁を押し開き流出口101aから流出している。このため初期セット圧力P2(t1)から最大リリーフ圧力PS(t3)までの昇圧を滑らかにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−351425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、図6に示す従来のリリーフ弁R10では、図2に示すように、初期セット圧力がP2に設定されているので、流入口102aの液圧がP2に到達するまでは、流入口102aの圧液を所定流量で流出口101aに逃がすことができない。そうすると、例えばこのリリーフ弁R10が使用されている建設機械車両等の旋回体の旋回を停止させようとして、旋回モータに対して減速作動を開始したときに、この旋回モータが接続されている液圧回路に急激な圧力変化(トルク変化)が発生し、これら液圧回路、旋回モータ及び旋回体に大きな衝撃が掛かることがある。
【0011】
ここで、図6に示すリリーフ弁R10のセット圧力P2を小さくする方法として、プランジャ103が流入口102aを閉じている状態で、バネ105によってプランジャ103を押し下げている力が小さくなるように、バネ定数を小さくすることが考えられる。
【0012】
しかし、バネ定数の小さいバネを使用して、図2に示す最大リリーフ圧力PSが得られるようにするためには、バネの長さを大きくして、バネが圧縮されるストローク(寸法)を大きく取れるようにする必要があり、このようにすると、リリーフ弁R10の嵩が大きくなり大型化してしまう。
【0013】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、流入口の液圧が急激に上昇するような状態となった場合において、流入口の圧液を、従来よりも低い液圧から逃がすことができて、その低い液圧の状態から流入口の液圧の上昇を滑らかに行わせることによって、急激な圧力変化(トルク変化)が発生することを防止することができると共に、コンパクトなリリーフ弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るリリーフ弁は、弾性手段によって前方に押圧されて流入口と流出口とを遮断するプランジャが、前記流入口の圧力上昇に伴い前記弾性手段の弾性力に抗して後退移動して、前記流入口と前記流出口とを連通させると共に、前記弾性手段の後端を前方に押圧するピストンが、前記流入口の圧力上昇に伴い前進移動することにより前記弾性手段を圧縮してリリ−フ圧力を調整するリリーフ弁において、前記弾性手段は、互いに直列に配置された第1弾性部材と第2弾性部材とを備え、前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材よりも弾性定数が小さい構成としたことを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係るリリーフ弁によると、流入口の液圧が急激に上昇するような状態となった場合において、プランジャが液圧によって後退する方向に受ける後向作用力が、プランジャが第1及び第2弾性部材の弾性力(例えばバネ力)によって前進する方向に受ける前向作用力よりも大きくなると、プランジャが後退移動する。ここで、プランジャが後退移動する距離は、第1及び第2弾性部材が圧縮される合計寸法であるが、第2弾性部材の弾性定数を第1弾性部材の弾性定数よりも小さくしてあるので、流入口の液圧が比較的低い状態で(比較的低いセット圧力で)、第2弾性部材が第1弾性部材と比較して大きく短縮して、プランジャを液圧に対応する所定の距離だけ後退移動させて、流入口と流出口とを互いに連通させることができる。これによって、流入口の圧液を流出口から逃がすことができる。
【0016】
次に、プランジャが流入口の液圧と対応する距離だけ後退移動しており、流入口の圧液を流出口から逃がしている状態で、直列に配置されている第1及び第2弾性部材の後端を前方に押圧するピストンが、流入口の液圧によって前進移動を開始する。これによって、第1及び第2弾性部材を徐々に圧縮することができ、リリ−フ圧力を滑らかに上昇させることができる。このようにして、流入口の液圧が急激に上昇することを防止できる。
【0017】
そして、ピストンが前進移動して、その液圧(リリーフ圧力)が最大リリーフ圧力に到達するまでの昇圧緩衝時間を引き延ばすことができる。
【0018】
また、本発明のリリーフ弁によると、弾性定数の大きい第1弾性部材の弾性力を利用して、このリリーフ弁に対して所望の大きさの最大リリーフ圧力を設定することができる。
【0019】
本発明に係るリリーフ弁において、前記第1弾性部材によって最大リリーフ圧力が主に設定され、前記第2弾性部材によって前記ピストンが前進移動する前の状態のリリーフ圧力が主に設定されているものとすることができる。
【0020】
このようにすると、最大リリーフ圧力を主に第1弾性部材によって設定することができ、昇圧緩衝の開始圧力を主に第2弾性部材によって設定することができる。
【0021】
本発明に係るリリーフ弁において、前記プランジャの後退移動を所定の最大後退位置で停止させるためのストッパが前記プランジャを収容するケース側に設けられるものとすることができる。
【0022】
このようにすると、弾性定数の小さい第2弾性部材が、流入口の液圧の上昇によって短縮するときに、プランジャの後退移動を所定の最大後退位置で停止させることができる。これによって、リリーフ弁の最大開口度を所定の開口度に設定することができる。
【0023】
本発明に係るリリーフ弁において、前記第2弾性部材が圧縮される寸法を所定の最大圧縮寸法以下に規制するためのカップ状のばね座を備えるものとすることができる。
【0024】
このようにすると、流入口の圧力上昇によって、プランジャ又はピストンが第1及び第2弾性部材を圧縮する方向に移動したときに、第2弾性部材が第1弾性部材と比較して大きく圧縮され、その際に、第2弾性部材が圧縮される寸法が所定の最大圧縮寸法となったときに、第2弾性部材が更に圧縮されることをカップ状のばね座によって規制することができる。そして、更に、プランジャ又はピストンが、第1及び第2弾性部材を圧縮する方向に移動すると、第2弾性部材が圧縮されずに、第1弾性部材が圧縮されて、この第1弾性部材によってリリ−フ圧力を所定の最大リリーフ圧力に保持することができる。
【0025】
本発明に係るリリーフ弁において、前記第1弾性部材の弾性定数K1と、前記第2弾性部材の弾性定数K2との比K1/K2が、5〜20であるものとすることができる。
【0026】
このようにすると、例えば建設機械車輌等の旋回体用の旋回モータの液圧回路に本発明のリリーフ弁を採用すると、この旋回モータを減速させるときに、液圧回路に急激な圧力変化(トルク変化)が発生することを効果的に防止することができ、液圧回路、旋回モータ及び旋回体に大きな衝撃が掛かることを防止できると共に、旋回モータを適切なマイナス加速度で減速させて停止させることができる。つまり、弾性定数の比K1/K2を5未満とすると、旋回体等に掛かる衝撃を適切に小さくすることができないことがある。そして、弾性定数の比K1/K2が20を超えると、所定のセット圧力を設定するために、第2弾性部材の長さを長くする必要があり、その分だけ嵩が大きくなりコストも上がる。
【0027】
本発明に係るリリーフ弁において、前記弾性手段の収容された液室が前記流出口と連通し、前記ピストンが、ケースの内孔と液密的に摺動する第1摺動部を有し、前記プランジャの後部が、前記ピストンの中心軸に沿って形成された摺動穴に摺動自在に嵌挿され、前記プランジャには、前記流入口からプランジャの後方まで圧液を導く貫通孔が形成され、前記摺動穴後部の前記プランジャが到達しない空間と、前記貫通孔とで、第3液室が形成され、前記ピストンには、その第1摺動部よりも後方に後向作用面と前向作用面とが形成され、前記第3液室と、前記後向作用面の面する第1液室とが、前記ピストンに形成された連通孔を介して互いに連通され、前記第3液室と、前記前向作用面の面する第2液室とが、前記ピストンに形成された連通孔を介して互いに連通され、前記前向作用面に圧液が与える前向作用力と、前記ピストンに形成された前記摺動穴の底面及び前記後向作用面に圧液が与える後向作用力との差により、前記ピストンが前進移動するものとすることができる。
【0028】
このようにすると、ピストンにおける摺動穴の底面及び後向作用面の面積と、前向作用面の面積との面積差が、ピストンの有効受圧面積となる。よって、例えばピストンの第1摺動部の肉厚とは無関係に、ピストンを前進移動させるための有効受圧面積を設定することができ、所定の剛性を有するピストンを製作することができる。
【0029】
本発明に係るリリーフ弁において、前記前向作用面の面積が、前記摺動穴の底面と前記後向作用面との合計面積よりも大きく、その面積差により前記前向作用力と前記後向作用力との差が生じるようにしたものとすることができる。
【0030】
このようにすると、ピストンを前進移動させるための有効受圧面積を小さくすることによって、ピストンがゆっくりと前進移動することとなり、昇圧緩衝時間を長くすることができる。そして、有効受圧面積を大きくすることによって、ピストンが速く前進移動することとなり、昇圧緩衝時間を短くすることができる。このように、昇圧緩衝時間を自由に設定することができる。
【0031】
本発明に係るリリーフ弁において、前記前向作用力と前記後向作用力との差により前記連通孔の前後に圧力差が生じ、圧液が前記連通孔を通過する間、前記ピストンが前進移動するものとすることができる。
【0032】
このようにすると、連通孔を細く形成することによって、ピストンがゆっくりと前進移動することとなり、昇圧緩衝時間を長くすることができる。そして、連通孔を太く形成することによって、ピストンが速く前進移動することとなり、昇圧緩衝時間を短くすることができる。このように、昇圧緩衝時間を自由に設定することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るリリーフ弁によると、弾性定数が異なる第1及び第2弾性部材を直列に配置した構成としたので、昇圧緩衝開始圧力を下げることができ、流入口の液圧が急激に上昇するような状態となった場合において、流入口の圧液を、比較的低い液圧の状態から流出口に逃がすことができる。これによって、例えば建設機械車輌等の旋回体用の旋回モータの液圧回路に本発明のリリーフ弁を採用すると、この旋回モータの減速開始時に、液圧回路に急激な圧力変化(トルク変化)が発生することを防止することができ、液圧回路、旋回モータ及び旋回体に大きな衝撃が掛かることを防止できる。
【0034】
そして、流入口の液圧を、比較的低い液圧から流出口に逃がすことができるので、流入口のリリ−フ圧力が最大リリーフ圧力に到達するまでの昇圧緩衝時間を引き延ばすことができる。これによって、旋回モータを停止させる際に、液圧回路、旋回モータ及び旋回体に大きな衝撃が掛かることがないように適切にゆっくりと停止させることができる。
【0035】
また、昇圧緩衝開始圧力を低くするために弾性定数の小さい第2弾性部材を採用し、なおかつ、リリ−フ圧力を所定の最大リリーフ圧力に保持できるようにするために弾性定数の大きい第1弾性部材を採用したことによって、1つのバネ等の弾性部材によって上記と同様に作用するものを製作しようとした場合と比較して、リリーフ弁の嵩を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の第1実施形態に係るリリーフ弁を示す縦断面図である。
【図2】同第1実施形態に係るリリーフ弁等のリリーフ圧力の時間的変化を示す図である。
【図3】同第1実施形態に係るリリーフ弁等のオーバーライド特性を示す図である。
【図4】同第1実施形態に係るリリーフ弁を用いた液圧回路を示す図である。
【図5】同発明の第2実施形態に係るリリーフ弁の一部を示す縦断面図である。
【図6】従来のリリーフ弁の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係るリリーフ弁の第1実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。この図1に示すリリーフ弁R1は、例えばこのリリーフ弁R1が使用されている建設機械車両等の旋回体の旋回を停止させようとして、旋回モータに対して減速作動を開始したときに、この旋回モータが接続されている液圧回路に急激な圧力変動が発生することを防止でき、これら液圧回路、旋回モータ及び旋回体に大きな衝撃が掛からないようにして旋回を停止させることができるものである。
【0038】
リリーフ弁R1は、図1の縦断面図に示すように、略円筒形状の外ケース1及び外ケース1に螺合された内ケース54と、外ケース1の先端部(前側部)に固定して設けられた弁座2と、外ケース1内に配置されたプランジャ3と、内ケース54内に配置されたピストン4と、プランジャ3とピストン4との間に介在するコイル状の圧縮バネ(弾性手段)である第1弾性部材5a及び第2弾性部材5bとを備えている。
【0039】
そして、内ケース54をネジ部53で回転させて進退移動させることによって、第1及び第2弾性部材5a、5bを圧縮する力(例えばセット圧力)を調整することができるようにしてある。
【0040】
外ケース1の内孔は、ピストン4の大径部(第2摺動部4b)が装着されている部分1cの内径がd1に形成され、ピストン4のその前側の中径部(第1摺動部4a)が装着されている部分1dの内径がd4に形成されている。外ケース1の側面には流出口1aとこの流出口に連通する通路1bが形成されている。弁座2は、環状の部材であり、中心部には圧液の流入口2aが形成されている。プランジャ3は、先端部が先細りの略円錐台形状をなしている。プランジャ3の中心には、貫通孔3aが形成されている。
【0041】
この貫通孔3aは、プランジャ3の先端から後端までを貫通して流入口2aからプランジャ3の後方まで圧液を導くように形成されており、その途中には、絞り3bが形成されている。絞り3bは、プランジャ3の作動に減衰力を与え、ハンチングを防止するために設けられている。
【0042】
ピストン4の前部には、外径d4の中径部たる第1摺動部4aが形成され、第1摺動部4aよりも後方に外径d1の大径部たる第2摺動部4bが形成されている。更に、ピストン4には、その後端部に小径部たる第3摺動部4cが形成されている。また、内ケース54には、中心軸に沿って前方に開口する凹部51が形成されている。
【0043】
前記の第3摺動部4cは、内ケース54の凹部51に液密的に摺動するように嵌挿され、第3摺動部4cの後端部と前記凹部51と間には、液室52が形成される。そして、第1摺動部4aは、外ケース1の内孔1dの内径d4の部分に液密的に摺動自在に嵌挿されており、第2摺動部4bは、外ケース1の内孔1cの部分に液密的に摺動自在に嵌挿されている。第3摺動部4cの外径はd2である。
【0044】
ピストン4には、中心軸に沿って、その前面に開口する摺動穴4fが形成されている。摺動穴4fの内径は、d3である。プランジャ3の後部は、摺動穴4f内に摺動自在に嵌挿されている。そして、プランジャ3が摺動可能範囲の最後部まで摺動してもプランジャ3の後端が到達しない摺動穴4fの後部空間4dと、プランジャ3の貫通孔3aとで、第3液室40が形成されている。また、ピストン4には、前記第1摺動部4a、第2摺動部4bおよび第3摺動部4cを軸方向に貫通し、第1及び第2弾性部材5a、5bを収容するばね室8と前記液室52とを連通する通路4eが形成されている。
【0045】
また、ピストン4には、連通孔11及び連通孔12が形成されている。連通孔11には、その一部に絞り11aが形成されている。連通孔12には絞りは形成されていない。大径部(第2摺動部4b)の前端面は、圧液が作用する後向作用面21として機能し、この後向作用面21が面する第1液室22は、連通孔11によって第3液室40と連通されている。また、大径部(第2摺動部4b)の後端面は圧液が作用する前向作用面31として機能し、この前向作用面31が面する第2液室32は連通孔12によって第3液室40と連通されている。
【0046】
第1弾性部材5a及び第2弾性部材5bは、外ケース1の内周面1dとプランジャ3の外周面との間に形成されたばね室8(第5液室)内に、直列に配置された状態で収容されている。第1弾性部材5aは、その先端がカップ状のばね座7bを介して第2弾性部材5bの後端と当接し、第1弾性部材5aの後端がピストン4の第1摺動部4aの前端面をばね座7aを介して後方に押圧するように収縮した状態で配置されている。第2弾性部材5bは、その先端がプランジャ3の膨大部3cを後ろから前方に押圧し、後端がカップ状のばね座7bを後方に押圧するように収縮した状態で配置されている。
【0047】
この第2弾性部材5bの弾性定数K2は、第1弾性部材5aの弾性定数K1よりも小さく設定されており、弾性定数の比K1/K2は、例えば5〜20であり、好ましくは5〜15である。
【0048】
参考までに、弾性定数の比K1/K2を5未満とすると、旋回体等に掛かる衝撃を適切に小さくすることができないことがある。そして、弾性定数の比K1/K2が20を超えると、所定のセット圧力P1を設定するために、第2弾性部材5bの長さを長くする必要があり、その分だけ嵩が大きくなりコストも上がる。
【0049】
そして、外ケース1の先端部の内周面には、プランジャ3の後退移動を所定の最大後退位置で停止させるためのストッパ55が形成されている。このストッパ55は、外ケース1の内側に突出する円環状の段部によって形成され、このストッパ55にプランジャ3の膨大部3cが当接することによって、プランジャ3の後退移動を所定の最大後退位置で停止させることができる。
【0050】
このようにストッパ55を設けると、弾性定数の小さい第2弾性部材5bが、流入口2aの液圧の上昇によって短縮するときに、プランジャ3の後退移動を所定の最大後退位置で停止させることができる。これによって、リリーフ弁R1の最大開口度を所定の開口度に設定することができる。なお、図1に示すaは、プランジャ3の進退移動可能なストロークである。
【0051】
また、前記カップ状のばね座7bは、第2弾性部材5bの最大圧縮寸法bを規制することができる。
【0052】
即ち、流入口2aの圧力上昇によって、プランジャ3又はピストン4が第1及び第2弾性部材5a、5bを圧縮する方向に移動したときに、第2弾性部材5bが第1弾性部材5aと比較して大きく圧縮され、その際に、第2弾性部材5bが圧縮される寸法が所定の最大圧縮寸法bとなったときに、プランジャ3の膨大部3cの後端面とばね座7bの円筒部前面が当接して、第2弾性部材5bが更に圧縮されることを規制することができる。そして、更に、ピストン4が、第1及び第2弾性部材5a、5bを圧縮する方向に移動すると、第2弾性部材5bが圧縮されずに、第1弾性部材5aが圧縮されて、設定圧力が増加する。ピストン4の第2摺動部4bの前面(後向作用面)21が前記内孔1cの段部50に当接すれば、第1弾性部材5aはそれ以上圧縮されず、設定圧力は最大となる。従って、リリ−フ圧力を所定の最大リリーフ圧力PSに保持することができる。
【0053】
次に、図1に示すように構成されたリリーフ弁R1の作用を、図1及び図2を参照して説明する。図2に示す実線は、このリリーフ弁R1の流入口2aの液圧(リリーフ圧力)が時間の経過と共に変化する状態を示している。
【0054】
今、リリーフ弁R1は、図1に示す状態であり、流入口2a及び流出口1aは、タンク圧力PTとなっているとする(図2に示す(1)の状態)。
【0055】
次に、例えば流入口2aが急激に加圧される状態(図2に示す(2)の状態)となると、流入口2aの液圧が絞り3bを通って第3液室40に導かれる。そして、流入口2aの上昇した液圧がプランジャ3に対して働く上向きの力(後向作用力)が、第3液室40の液圧、並びに第1及び第2弾性部材5a、5bの弾性力(バネ力)がプランジャ3に対して働く下向きの力(前向作用力)よりも大きくなると、プランジャ3は、上向きに後退移動し、弁が開いて、圧液が流出口1aへ流れ出す(リリーフ圧力P1)。
【0056】
ここで、プランジャ3が後退移動する距離は、第1及び第2弾性部材5a、5bが圧縮される合計寸法であるが、第2弾性部材5bの弾性定数K2を第1弾性部材5aの弾性定数K1よりも小さくしてあるので、流入口2aの液圧が比較的低い状態で、第2弾性部材5bが第1弾性部材5aと比較して大きく短縮して、プランジャ3を液圧に対応する所定の距離だけ後退移動させて(略最大開口となる)、流入口2aと流出口1aとを互いに連通させることができる。これによって、流入口2aの圧液を流出口1aから逃がすことができる。
【0057】
次に、プランジャ3が流入口2aの液圧と対応する距離だけ後退移動しており(略最大開口となっている)、流入口2aの圧液を流出口1aから逃がしている状態で、第3液室40の液圧は、ピストン4に形成された絞り11a、連通孔11、12を通って第1液室22及び第2液室32に導かれる。そして、前向作用面31に圧液が与える前向作用力が、第3液室40の底面23及び後向作用面21に圧液が与える後向作用力および第1弾性部材5a、第2弾性部材5bの弾発力の合力よりも大きくなると、ピストン4は、下向きに前進移動を開始する。
【0058】
このように、ピストン4が下向きに前進移動するときは、第1液室22内の圧液が、ピストン4の連通孔11、絞り11aを通って第3液室40に排出されるので、ピストン4は、ゆっくりと前進移動する。このピストン4のゆっくりとした前進移動によって、第1及び第2弾性部材5a、5bを徐々に圧縮することができ、リリ−フ圧力Pを滑らかに上昇させることができる(図2に示す(3)の状態)。
【0059】
このようにして、流入口2aの液圧が比較的低い液圧(P1)から、ピストン4がゆっくりと前進移動して、流入口2aの液圧の上昇が開始するので、流入口2aの液圧が急激に上昇することを防止できる。そして、流入口2aの液圧が、低い圧力(P1)から上昇を開始するようにしたので、ピストン4が前進移動して、その液圧(リリーフ圧力P)が最大リリーフ圧力PSに到達するまでの昇圧緩衝時間(t2−t1)を引き延ばすことができる。
【0060】
また、図1に示すように、このリリーフ弁R1によると、弾性定数K1の大きい第1弾性部材5aの弾性力を利用しているので、このリリーフ弁R1に対して所望の大きさの最大リリーフ圧力PSを設定することができる。
【0061】
そして、ピストン4が前進移動して外ケース1の段部50に当接すると、ピストン4は、それ以上、下向きに前進移動することができないので、リリーフ圧力Pは、一定の最大リリーフ圧力PSに保たれる。(図2に示す(4)の状態)。
【0062】
この図2に示す(3)、及び(4)の状態とき、流入口2aの圧液は、略一定流量(液圧回路の本機使用流量であり、例えば図3に示す100L/min)で流出口1aから流出している。
【0063】
このように、図1に示すリリーフ弁R1によると、弾性定数(K1、K2)が異なる第1及び第2弾性部材5a、5bを直列に配置した構成としたので、流入口2aの液圧が急激に上昇するような状態となった場合において、流入口2aの圧液を、比較的低い液圧(図2に示すP1)の状態から流出口1aに逃がすことができる。
【0064】
これによって、例えば図4に示すように、建設機械車輌等の旋回体用の旋回モータMの液圧回路にこのリリーフ弁R1、R2を採用すると、この旋回モータMの減速開始時に、液圧回路に急激な圧力変化(トルク変化)が発生することを防止することができ、液圧回路、旋回モータM及び旋回体に大きな衝撃が掛かることを防止できる。
【0065】
なお、図4において、旋回モータMの圧液供給口及び圧液排出口には、それぞれリリーフ弁R1、R2(リリーフ弁R2は、リリーフ弁R1と同等のものである。)が接続されている。リリーフ弁R1、R2の流出口1a(逃がし側)は旋回モータMの吸入圧力を確保するためのブーストチェック弁Bを介して液タンクTに接続されている。なお、Pは液圧ポンプ、Vは切換弁である。
【0066】
そして、図2に示すように、流入口2aの液圧を、比較的低い液圧(P1)から流出口1aに逃がすことができるので(図2に示す(3)の状態)、流入口2aのリリ−フ圧力Pが最大リリーフ圧力PSに到達するまでの昇圧緩衝時間(t2−t1)を引き延ばすことができる。これによって、旋回モータMを停止させる際に、液圧回路、旋回モータM及び旋回体に大きな衝撃が掛かることがないように適切にゆっくりと停止させることができる。
【0067】
また、リリーフ弁の作動開始圧力(初期セット圧力P1)を低くするために弾性定数の小さい第2弾性部材5bを採用し、そして、リリ−フ圧力Pを所定の最大リリーフ圧力PSに保持できるようにするために、弾性定数の大きい第1弾性部材5aを採用したことによって、弾性定数の小さい1つの弾性部材を使用して、上記と同様に作用するものを製作しようとした場合と比較して、リリーフ弁の嵩を小さくすることができる。
【0068】
次に、図1を参照して、ピストン4が前進移動する機構の説明をする。ばね室8(第5液室)は、ブーストチェック弁Bを介して液タンクTと連通されており、ばね室8の液圧は、ほぼタンク圧力PTに近い値となっている。更に、内ケース54の凹部51とピストン4の第3摺動部4cとで構成される液室52は、通路4e、ばね室8、ブーストチェック弁Bを介してタンクTに連通されており、その液圧もほぼタンク圧力PTに近い値となっている。よって、ピストン4の有効受圧面積は、前向作用面31の面積から、底面23及び後向作用面21の合計面積を差し引いた面積となる。底面23の面積は(d32×(π/4))=ASであり、後向作用面21の面積は((d12−d42)×(π/4))=AUである。また、前向作用面31の面積は((d12−d22)×(π/4))=AMである。従って、ピストン4の有効受圧面積A1は、次式のように表される。なお、以下の式では、ばね室8の圧力を0と近似している。
【0069】
A1=(d42−d32−d22)×(π/4)
このように、前向作用面31(面積AM)に圧液が与える前向作用力と、ピストン4に形成された摺動穴4fの後部空間4dの底面23(面積AS)、及び後向作用面21(面積AU)に圧液が与える後向作用力との差により、ピストン4が前進移動するように構成されている。
【0070】
そして、上式からもわかるように、d2、d3、d4の値の設定により、有効受圧面積A1を自由に設定することができるので、d3とd4の差を大きくしても、d2の値を大きくすることによってA1の値を小さくすることができる。
【0071】
よって、ピストン4の第1摺動部4aの肉厚とは無関係に、ピストン4を前進移動させるための有効受圧面積A1を設定することができ、所定の剛性を有するピストン4を製作することができる。
【0072】
また、前向作用面31の面積AMが、底面23の面積ASと、後向作用面21の面積AUとの合計面積よりも大きく、その面積差により前向作用力と後向作用力との差が生じるように構成されている。
【0073】
更に、前向作用力と後向作用力との差により連通孔11、12の前後に圧力差が生じ、圧液が連通孔11、12を通過する間、ピストン4が前進移動するように構成されている。
【0074】
このようにすると、連通孔11、12を細く形成したり、連通孔11、12に絞り11aを形成することによって、ピストン4がゆっくりと前進移動することとなり、昇圧緩衝時間(t2−t1)を長くすることができる。そして、連通孔11、12を太く形成することによって、ピストン4が速く前進移動することとなり、昇圧緩衝時間(t2−t1)を短くすることができる。このように、昇圧緩衝時間(t2−t1)を自由に設定することができる。
【0075】
次に、図3を参照して、図1に示すこの実施形態のリリーフ弁R1、及び図6に示す従来のリリーフ弁R10のオーバーライド特性を比較して説明する。
【0076】
図3に示す曲線S1は、図1に示す本実施形態のリリーフ弁R1において、ピストン4が後退位置(ストロークSt=0mm)にあるときのオーバーライド特性を示している。この曲線S1では、クラッキング圧力がPaであり、本機使用流量が例えば100L/mmのときのセット圧力がP1である。
【0077】
クラッキング圧力とは、プランジャ3が開き始めるときの流入口2aの液圧である。そして、本機使用流量とは、旋回モータMの使用流量である。また、セット圧力とは、流入口2aの圧液の圧力上昇によって、プランジャ3が押し上げられてリリーフ弁R1を通る圧液の流量が本機使用流量となるときの圧力を言う。
【0078】
図3に示す曲線S2は、図6に示す従来のリリーフ弁R10において、ピストン104が後退位置(ストロークSt=0mm)にあるときのオーバーライド特性を示している。この曲線S2では、クラッキング圧力がPbであり、本機使用流量が100L/mmのときのセット圧力がP2である。
【0079】
この従来のリリーフ弁R10では、バネ定数の大きい1つのバネ105を使用しているので、そのセット圧力P2が、本実施形態のリリーフ弁R1のセット圧力P1よりも大きくなっている。よって、旋回用モータMの回転を停止させるときに、旋回体に大きな衝撃が掛かってしまう。
【0080】
図3に示す曲線S3は、図6に示す従来のリリーフ弁R10において、ピストン104が前進位置(ストロークSt=3mm)にあるときのオーバーライド特性を示している。この曲線S3では、クラッキング圧力がPcであり、本機使用流量が100L/mmのときのセット圧力がP3である。
【0081】
このように、ピストン104が前進位置にあるときは、バネ105が圧縮された状態となっており、これによってセット圧力P3が、曲線S2のセット圧力P2よりも大きくなっている。よって、旋回用モータMの回転を停止させるときには、曲線S2の場合よりも旋回体に大きな衝撃が掛かってしまう。
【0082】
図3に示す曲線S4は、図6に示す従来のリリーフ弁R10において、ピストン104が後退位置(ストロークSt=0mm)にあるときのオーバーライド特性を示している。この曲線S4では、クラッキング圧力が0となるようにバネ105が自然長となっている状態で配置してあり、本機使用流量が100L/mmのときのセット圧力がP4である。
【0083】
このように、クラッキング圧力が0となるようにバネ105が自然長となっている状態で配置した場合であっても、そのセット圧力P4が、本実施形態の曲線S1のセット圧力P1よりも大きくなっている。よって、バネ定数が比較的大きいバネを使用すると、バネ105がプランジャ103を弁座102に押し付ける初期荷重が0となるようにしても、旋回用モータMの回転を停止させるときには、曲線S2の場合よりも旋回体に大きな衝撃が掛かってしまう。
【0084】
図5は、本願発明に係るリリーフ弁の第2実施形態を示す図であり、リリーフ弁R2のピストン4周辺の縦断面図である。このリリーフ弁R3は図1のリリーフ弁R1と異なり、ピストン4には第3液室40と第1液室22とを互いに連通させるような連通孔11は形成されておらず、その代わりに、第1液室22と第2液室32とを連通させる連通孔13が形成されている。つまり、第1液室22は、連通孔12と連通孔13とを介して、間接的に第3液室40に連通している。連通孔12には絞りは形成されていないが、連通孔13には絞り13aが形成されており、第1液室22は、第2液室32より圧力が高くなり昇圧緩衝時間(t2−t1)の調整に資することができる。これ以外の構成は、図1のリリーフ弁R1と同等であり、このリリーフ弁R2の挙動は図1のリリーフ弁R1と同様であるので、それらの説明を省略する。
【0085】
ただし、上記実施形態では、図1に示すように、弾性定数の大きい方の第1弾性部材5aをプランジャ3の後端部側に配置して、弾性定数の小さい方の第2弾性部材5bを、第1弾性部材5aとプランジャ3の先端部側(弁座2側)との間に配置したが、これに代えて、第1弾性部材5aと第2弾性部材5bの配置を入れ替えた構成としてもよい。つまり、弾性定数の小さい方の第2弾性部材5bをプランジャ3の後端部側に配置して、弾性定数の大きい方の第1弾性部材5aを、第2弾性部材5bとプランジャ3の先端部側(弁座2側)との間に配置する。このようにしても、上記実施形態と同様に挙動する。そして、このように構成した場合は、ストッパ55は、上記実施形態と同様に作用するように、外ケース1に形成するとよい。
【0086】
そして、上記実施形態では、図1及び図5に示す構成を採用して、ピストン4が、直列に配置した第1及び第2弾性部材5a、5bの後端を前方に押圧して、流入口2aの圧力上昇に伴い前進移動することにより、第1及び第2弾性部材5a、5bを圧縮してリリ−フ圧力Pを調整する構成としたが、これら図1及び図5に示す構成以外の構成を採用して、上記実施形態と同様に、ピストン4が作用する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明に係るリリーフ弁は、流入口の液圧が急激に上昇するような状態となった場合において、流入口の圧液を、従来よりも低い液圧から逃がすことができて、その低い液圧の状態から流入口の液圧の上昇を開始させることによって、流入口に大きなサージ圧力が発生することを防止することができると共に、コンパクトな構成とすることができる優れた効果を有し、このようなリリーフ弁に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0088】
R1、R2、R3 リリーフ弁
1 外ケース
1a 流出口
1b 通路
1c 部分
1d 部分
2 弁座
2a 流入口
3 プランジャ
3a 貫通孔
3b 絞り
3c 膨大部
4 ピストン
4a 第1摺動部(中径部)
4b 第2摺動部(大径部)
4c 第3摺動部(小径部)
4d 摺動穴の後部空間
4e 通路
4f ピストンの摺動穴
5a 第1弾性部材
5b 第2弾性部材
7a、7b ばね座
8 ばね室(第5液室)
11、12、13 連通孔
11a、13a 絞り
21 後向作用面
22 第1液室
23 底面
31 前向作用面
32 第2液室
40 第3液室
50 段部
51 凹部(第4液室)
52 液室
53 ネジ部
54 内ケース
55 ストッパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性手段によって前方に押圧されて流入口と流出口とを遮断するプランジャが、前記流入口の圧力上昇に伴い前記弾性手段の弾性力に抗して後退移動して、前記流入口と前記流出口とを連通させると共に、前記弾性手段の後端を前方に押圧するピストンが、前記流入口の圧力上昇に伴い前進移動することにより前記弾性手段を圧縮してリリ−フ圧力を調整するリリーフ弁において、
前記弾性手段は、互いに直列に配置された第1弾性部材と第2弾性部材とを備え、前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材よりも弾性定数が小さい構成としたことを特徴とするリリーフ弁。
【請求項2】
前記第1弾性部材によって最大リリーフ圧力が主に設定され、前記第2弾性部材によって前記ピストンが前進移動する前の状態のリリーフ圧力が主に設定されていることを特徴とする請求項1記載のリリーフ弁。
【請求項3】
前記プランジャの後退移動を所定の最大後退位置で停止させるためのストッパが前記プランジャを収容するケース側に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のリリーフ弁。
【請求項4】
前記第2弾性部材が圧縮される寸法を所定の最大圧縮寸法以下に規制するためのカップ状のばね座を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリリーフ弁。
【請求項5】
前記第1弾性部材の弾性定数K1と、前記第2弾性部材の弾性定数K2との比K1/K2が、5〜20であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のリリーフ弁。
【請求項6】
前記弾性手段の収容された液室が前記流出口と連通し、
前記ピストンが、ケースの内孔と液密的に摺動する第1摺動部を有し、
前記プランジャの後部が、前記ピストンの中心軸に沿って形成された摺動穴に摺動自在に嵌挿され、
前記プランジャには、前記流入口からプランジャの後方まで圧液を導く貫通孔が形成され、
前記摺動穴後部の前記プランジャが到達しない空間と、前記貫通孔とで、第3液室が形成され、
前記ピストンには、その第1摺動部よりも後方に後向作用面と前向作用面とが形成され、
前記第3液室と、前記後向作用面の面する第1液室とが、前記ピストンに形成された連通孔を介して互いに連通され、
前記第3液室と、前記前向作用面の面する第2液室とが、前記ピストンに形成された連通孔を介して互いに連通され、
前記前向作用面に圧液が与える前向作用力と、前記ピストンに形成された前記摺動穴の底面及び前記後向作用面に圧液が与える後向作用力との差により、前記ピストンが前進移動するようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のリリーフ弁。
【請求項7】
前記前向作用面の面積が、前記摺動穴の底面と前記後向作用面との合計面積よりも大きく、その面積差により前記前向作用力と前記後向作用力との差が生じるようにしたことを特徴とする請求項6記載のリリーフ弁。
【請求項8】
前記前向作用力と前記後向作用力との差により前記連通孔の前後に圧力差が生じ、圧液が前記連通孔を通過する間、前記ピストンが前進移動するようにしたことを特徴とする請求項6又は7記載のリリーフ弁。
【請求項1】
弾性手段によって前方に押圧されて流入口と流出口とを遮断するプランジャが、前記流入口の圧力上昇に伴い前記弾性手段の弾性力に抗して後退移動して、前記流入口と前記流出口とを連通させると共に、前記弾性手段の後端を前方に押圧するピストンが、前記流入口の圧力上昇に伴い前進移動することにより前記弾性手段を圧縮してリリ−フ圧力を調整するリリーフ弁において、
前記弾性手段は、互いに直列に配置された第1弾性部材と第2弾性部材とを備え、前記第2弾性部材は、前記第1弾性部材よりも弾性定数が小さい構成としたことを特徴とするリリーフ弁。
【請求項2】
前記第1弾性部材によって最大リリーフ圧力が主に設定され、前記第2弾性部材によって前記ピストンが前進移動する前の状態のリリーフ圧力が主に設定されていることを特徴とする請求項1記載のリリーフ弁。
【請求項3】
前記プランジャの後退移動を所定の最大後退位置で停止させるためのストッパが前記プランジャを収容するケース側に設けられることを特徴とする請求項1又は2記載のリリーフ弁。
【請求項4】
前記第2弾性部材が圧縮される寸法を所定の最大圧縮寸法以下に規制するためのカップ状のばね座を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリリーフ弁。
【請求項5】
前記第1弾性部材の弾性定数K1と、前記第2弾性部材の弾性定数K2との比K1/K2が、5〜20であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のリリーフ弁。
【請求項6】
前記弾性手段の収容された液室が前記流出口と連通し、
前記ピストンが、ケースの内孔と液密的に摺動する第1摺動部を有し、
前記プランジャの後部が、前記ピストンの中心軸に沿って形成された摺動穴に摺動自在に嵌挿され、
前記プランジャには、前記流入口からプランジャの後方まで圧液を導く貫通孔が形成され、
前記摺動穴後部の前記プランジャが到達しない空間と、前記貫通孔とで、第3液室が形成され、
前記ピストンには、その第1摺動部よりも後方に後向作用面と前向作用面とが形成され、
前記第3液室と、前記後向作用面の面する第1液室とが、前記ピストンに形成された連通孔を介して互いに連通され、
前記第3液室と、前記前向作用面の面する第2液室とが、前記ピストンに形成された連通孔を介して互いに連通され、
前記前向作用面に圧液が与える前向作用力と、前記ピストンに形成された前記摺動穴の底面及び前記後向作用面に圧液が与える後向作用力との差により、前記ピストンが前進移動するようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のリリーフ弁。
【請求項7】
前記前向作用面の面積が、前記摺動穴の底面と前記後向作用面との合計面積よりも大きく、その面積差により前記前向作用力と前記後向作用力との差が生じるようにしたことを特徴とする請求項6記載のリリーフ弁。
【請求項8】
前記前向作用力と前記後向作用力との差により前記連通孔の前後に圧力差が生じ、圧液が前記連通孔を通過する間、前記ピストンが前進移動するようにしたことを特徴とする請求項6又は7記載のリリーフ弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−255484(P2012−255484A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128504(P2011−128504)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
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