説明

リング状のタブを備えたシール蓋

【課題】リング状のタブを備えたシール蓋について、材料となるシート材の歩留まりが良く、且つ、別体でリング状のタブを取り付けた状態でも搬送性が良いようにする。
【解決手段】薄膜状のシート材からなるシール蓋本体2が、容器の開口部を覆って密封するパネル部21と、パネル部21の周辺部から突出する突出片22とを有し、シール蓋本体2とは別体に形成されたリング状のタブ3が、シール蓋本体2の突出片22に固着される基部31と、指を掛けるための指掛け部32とを有するようなリング状のタブ3を備えたシール蓋1において、シール蓋本体2のパネル部21に対して、タブ3の指掛け部32を、(嵌合用の溝部23により)着脱可能な状態で部分的に嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の開口部を覆って密封するための薄膜状のシール蓋に関し、特に、リング状のタブを備えたシール蓋であって、材料となるシート材の歩留まりが良く、且つ、別体でリング状のタブを取り付けた状態でも搬送性が良いような薄膜状のシール蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
固形食品や粉末状食品等の食品用容器で、容器の開口部を覆って密封するための薄膜状のシール蓋について、シール蓋を剥がして容器を開口する際に指を掛け易くするために、リング状のタブを備えたシール蓋というものが従来から種々提案されている。
【0003】
そのようなリング状のタブを備えたシール蓋について、例えば、下記の特許文献1には、シール蓋付き缶体として、缶胴に巻締固着される天蓋に対して、天蓋の開口穴を覆うように天蓋に熱溶着されるシール蓋が設られていると共に、シール蓋の周辺部には、リング状の指掛け部を備えた開口用のタブが設けられている、ということが開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、エッジカバー付容器として、缶胴に巻締固着される蓋板と、蓋板の上面に接着されるシール蓋とが設けられていると共に、内容物取り出し用開口部を閉じているシール蓋には、その端部に蓋板と接着していないタブが設けられ、このタブに別体成形されたプルリングが取り付けられている、ということが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−81318号公報
【特許文献2】実開平6−44724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような従来公知のリング状のタブを備えたシール蓋について、上記の特許文献1に記載されたようなものでは、タブをシール蓋の周辺部に一体成形していることから、薄膜状のシート材を所定形状に打ち抜いてシール蓋を成形する際に、リング状の指掛け部を備えたタブとなる部分を、シール蓋の円板状のパネル部分から大きく突出するように打ち抜かなければならないため、シート材から打ち抜ける単位面積当たりのシール蓋の枚数が少なくなって、材料となるシート材の歩留まりが悪くなるという問題がある。
【0007】
これに対して、上記の特許文献2に記載されたようなものでは、シート材を打ち抜いてシール蓋を成形する際に、プルリングの取り付け部となるタブのみを円板状のパネル部分から小さく突出するように打ち抜くだけなので、材料となるシート材の歩留まりは良くなるものの、シール蓋に一体成形された薄肉のタブに対して、別体のプルリングを取り付けていることから、シール蓋を設けた蓋体や容器を逆置で搬送する際に、別体成形されたプルリングを薄肉のタブの強度では支えきれず、プルリングが自重で垂れ下がって、搬送時の邪魔になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解消を課題とするものであって、具体的には、リング状のタブを備えたシール蓋について、材料となるシート材の歩留まりが良く、且つ、別体でリング状のタブを取り付けた状態でも搬送性が良いようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するために、薄膜状のシート材からなるシール蓋本体が、容器の開口部を覆って密封するパネル部と、パネル部の周辺部から突出する突出片とを有し、シール蓋本体とは別体に形成されたリング状のタブが、シール蓋本体の突出片に固着される基部と、指を掛けるための指掛け部とを有するようなリング状のタブを備えたシール蓋において、シール蓋本体のパネル部に対して、タブの指掛け部が、着脱可能な状態で部分的に嵌合されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
上記のような本発明のリング状のタブを備えたシール蓋によれば、リング状のタブをシール蓋本体とは別体に形成していることから、シート材からシール蓋を打ち抜く際に、円板状のパネル部分から突出片のみを小さく突出させるだけで済むため、材料となるシート材の歩留まりを良くすることができると共に、シール蓋本体のパネル部に対してリング状のタブの指掛け部を嵌合していることから、タブの基部を固着している突出片が薄膜状であっても、タブの指掛け部をシール蓋のパネル部に確実に固定できて、シール蓋を逆置で搬送する場合でも、タブが垂れ下がって搬送不良を引き起こすようなことを防止することができる。
【0011】
なお、容器の開口部からシール蓋を引き剥がす際には、タブの指掛け部でシール蓋本体のパネル部には嵌合されていない部分に指を掛けて、タブの指掛け部を持ち上げることで、タブの指掛け部をシール蓋本体のパネル部の嵌合部分から外すことができて、その後、タブの指掛け部に指を掛けてタブを引き上げることで、タブの基部が固着された突出片と一体的にシール蓋本体のパネル部を容器の開口部から容易に引き剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例について、リング状のタブを備えたシール蓋の全体を示す上面図である。
【図2】シート材から打ち抜かれたシール蓋本体と、それとは別体のリング状のタブとをそれぞれ示す上面図である。
【図3】シール蓋本体に対してリング状のタブを取り付けるための各段階(A)、(B)、(C)をそれぞれ示す上面説明図である。
【図4】シール蓋により蓋枠体の開口部を密封した状態を示す上面図である。
【図5】シール蓋により蓋枠体の開口部が密封される前の状態を示す、図4のA−A線に沿った断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
リング状のタブを備えたシール蓋について、材料となるシート材の歩留まりが良く、且つ、別体でリング状のタブを取り付けた状態でも搬送性が良いようにするという目的を、以下の実施例に具体的に示すように、薄膜状のシート材からなるシール蓋本体が、容器の開口部を覆って密封するパネル部と、パネル部の周辺部から突出する突出片とを有し、シール蓋本体とは別体に形成されたリング状のタブが、シール蓋本体の突出片に固着される基部と、指を掛けるための指掛け部とを有するようなリング状のタブを備えたシール蓋において、シール蓋本体のパネル部に対して、タブの指掛け部を、着脱可能な状態で部分的に嵌合させる、ということで実現した。
【実施例】
【0014】
本実施例のシール蓋は、例えば、食品を収納する缶容器等において、内容物取り出し用の開口部を密封するために使用されるものであって、図1に示すように、シール蓋1は、薄膜状のシート材からなるシール蓋本体2に対して、別体に形成されたリング状のタブ3を取り付けたものである。シール蓋本体2とリング状のタブ3のそれぞれの構造については、図2に示すように、シール蓋本体2には、円板状のパネル部21と、パネル部21の周辺部に形成された突出片22とが一体的に形成されており、リング状のタブ3には、シール蓋本体2の突出片21に固着される直線状の基部31と、開口時に指を掛けるための円弧状の指掛け部32とが一体的に形成されている。
【0015】
シール蓋本体2の材料となる薄膜状のシート材については、特に限定されるものではないが、本実施例では、アルミニウム箔やガスバリア性の合成樹脂製フィルムを主体とする薄膜状の基材の内面側(容器の内側となる側)に、容器開口部の周辺と接着するための接着性樹脂層が形成され、基材の外面側(容器の外側となる側)に、樹脂被膜の塗装や樹脂フィルムの積層による樹脂層が形成された薄膜状のシート材を使用しており、このシート材の厚さについては、20〜150μm(好ましくは40〜100μm)の範囲のものが好適に使用できる。
【0016】
リング状のタブ3については、シール蓋本体2よりも厚肉で剛性を有するものであり、その材料については、特に限定されるものではないが、本実施例では、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂材料から射出成形や型押成形により成形されたものを使用しており、このタブの厚さについては、0.5〜3mm(好ましくは1〜2mm)の範囲のものが好適に使用できる。
【0017】
シール蓋本体にリング状のタブを取り付ける方法については、特に限定されるものではないが、図3に示すように、本実施例のシール蓋では、図3(A)に示すように、円板状のパネル部21の周辺部に突出片22が形成されたシール蓋本体2について、図3(B)に示すように、シール蓋本体2の突出片22をその基部からパネル部21の外面側に折り返してから、図3(C)に示すように、折り返された突出片21の略中央にタブ3の基部31を載せる。そして、この状態から、タブ3の基部31を巻き込むように突出片22の先端側22aを逆方向に折り返して、タブ3の基部31を巻き込んで重なった突出片21の内面(接着性樹脂層の側)同士を、周知のヒートシール法や超音波シール法等により接着することで、図1に示すような、リング状のタブ3を備えたシール蓋1に形成している。
【0018】
そのように形成されたシール蓋1は、本実施例では、図4に示すように、金属製の缶胴の端部に巻締固着される金属製の蓋枠体4に対して、その中央に開口された円形状の開口部41を密封するように使用されている。即ち、金属製の蓋枠体4の中央部に開口された円形状の開口部41を覆うようにシール蓋1を載せた状態から、周知のヒートシール法や超音波シール法等により、シール蓋本体2の円板状のパネル部21の外周部を、蓋枠体4の開口部41の周辺部に接着固定している。なお、そのように開口部41が密封された蓋枠体4は、缶胴の上端側に巻締固着されることとなる。
【0019】
ところで、上記のようにシール蓋本体2に対してリング状のタブ3が取り付けられているシール蓋1において、本実施例では、シール蓋本体2のパネル部21で突出片22の付近に、パネル部21の平坦な上面から凹むように、円弧状の溝部23が形成されていると共に、この円弧状の溝部23と連続した状態で、指入れ用の凹部24が形成されている。円弧状の溝部23は、リング状のタブ3の指掛け部32を嵌合するためのものであって、円弧の両端部から中央部に向かって溝の深さが徐々に深くなるように設定されており、最も深くなった円弧の中央付近で指入れ用の凹部24と連続している。
【0020】
そのようなシール蓋本体2にリング状のタブ3を取り付けた状態では、図5に示すように、巻き込まれた状態で突出片22に固定されてパネル部21の平坦な上面上(円弧状の溝部23の端部近傍)に位置するタブ3の基部31に対して、タブ3の指掛け部32は、タブ3の基部31から離れる方向で徐々に深くなる嵌合用の溝部23の溝底に沿って、タブ3の基部31から斜め下方に傾斜した状態となっており、タブ3の指掛け部32の先端(タブ3の基部31から最も離れた箇所)は、指入れ用の凹部24と対向している。
【0021】
なお、本実施例では、円弧状の溝部23のうち、指入れ用の凹部24と連続した部分から溝部23の周方向に沿って左右に延在する領域で、タブ3の指掛け部32と嵌合用の溝部23とを着脱可能に嵌合している。タブ3の指掛け部32とシール蓋本体2のパネル部21との嵌合箇所については、指掛け部32に指を掛けてシール蓋1を引き剥がす際に、シール蓋1に引っ張り力を付与し易い箇所を除くように嵌合するのが好ましく、具体的には、指掛け部32のうち、タブの基部31の中央部(基部31の長さ方向の中間部)に対して、該中央部と直交する方向で該中央部と対向する部分を除くような箇所で嵌合することが好ましい。
【0022】
嵌合用の溝部23の幅については、タブ3の指掛け部32が確実に着脱可能に嵌合されるように、タブ3の指掛け部32の幅と同じか僅かに狭い程度に設定されており、本実施例では、嵌合用の溝部23に対して、タブ3の指掛け部32上方から押圧することで、指掛け部32を溝部23に嵌合している。また、溝部23の深さについては、その最深部でタブ3の厚さの50〜150%に設定されていることが好ましく、それによって、タブ3を確実に嵌合させることができると共に、シール蓋1の積み重ね性や成形性も確保することができる。また、指入れ凹部24の深さについては、タブ3の厚さの50〜200%に設定されていることが好ましく、それによって、タブ3の指掛け部32に指を掛け易くすることができると共に、シール蓋1の積み重ね性や成形性も確保することができる。
【0023】
上記のようにシール蓋本体2のパネル部21(の溝部23)に対してタブ3の指掛け部32が着脱可能に嵌合されている本実施例のシール蓋1によれば、薄膜状のシート材からなるシール蓋本体2の突出片22によりタブ3の基部31が固着されているだけでは、金属製の蓋枠体4に接着された状態のシール蓋1を逆置で搬送するような際に、タブ3が垂れ下がって搬送不良を引き起こすような虞があるのに対して、タブ3の指掛け部32がシール蓋本体2のパネル部21(の溝部23)に嵌合されていることで、タブ3の垂れ下がりを防止することができて、搬送不良が引き起こされるのを防止することができる。
【0024】
そして、シール蓋1を取り付けた金属製の蓋枠体4が巻締め固着された缶容器を開口する際には、シール蓋本体2のパネル部21に形成された凹部24に指を入れて、タブ3の指掛け部32でシール蓋本体2のパネル部21には嵌合されていない先端(タブ3の基部31から最も離れた箇所)の部分に指を掛け、タブ3の指掛け部32を持ち上げることで、タブ3の指掛け部32をシール蓋本体2のパネル部21の溝部23から外してから、更に、タブ3のリング内に指を入れてタブ3を引き上げることで、タブ3の基部31を固着する突出片22と一体的に、シール蓋本体2のパネル部21を金属製の蓋枠体4から引き剥がすことができて、金属製の蓋枠体4の中央部に開設された開口部41を開口させることができる。
【0025】
また、シール蓋本体2のパネル部21に凹設された嵌合用の溝部23にタブ3の指掛け部32が収まっていることから、金属製の蓋枠体4に接着されたシール蓋1の搬送時等において、パネル部21の上面から突出しているタブ3の基部31付近に対して横方向から不用意な力が加えられても、嵌合用の溝部23によりタブ3の横ズレが抑制されるため、シール蓋本体2のパネル部21とタブ3の指掛け部32との嵌合が不用意に解除されるようなことを防止することができる。
【0026】
以上、本発明のリング状のタブを備えたシール蓋について、一実施例により説明したが、本発明は、上記の実施例に示した具体例にのみ限定されるものではなく、例えば、上記の実施例では、缶胴に巻締固着される金属製の蓋枠体に対して接着されるようにシール蓋を使用しているが、そのような使用に限らず、容器本体のフランジ部などに対して直接に接着するように使用しても良いものである。
【0027】
また、シール蓋本体の内面側に設けられる接着性樹脂層について、上記の実施例では、シール蓋本体の内面全体に設けているが、シール蓋本体の内面で容器開口部の周辺との接着面となる箇所にのみ設けるようにしても良いものである。また、シール蓋本体の突出片に対するタブの固着について、上記の実施例では、図3に示すような方法を採用しているが、そのような方法に限られるものではなく、適宜の方法により固着すれば良いものである。
【0028】
また、シール蓋本体のパネル部の嵌合部分について、上記の実施例では、嵌合用の溝部を円弧状に形成してタブの指掛け部を嵌合させているが、そのような溝部に限らず、例えば、タブの指掛け部の先端から離れた位置でタブの指掛け部を挟み込むように対となる突起部をシール蓋本体のパネル部に凸設し、突起部に対してタブの指掛け部を上方から押圧して嵌合するようにしても良い等、適宜に設計変更可能なものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 リング状のタブを備えたシール蓋
2 シール蓋本体
3 タブ
4 蓋枠体
21 (シール蓋本体の)パネル部
22 (シール蓋本体の)突出片
23 (パネル部の)嵌合用の溝部
24 (パネル部の)指入れ用の凹部
31 (タブの)基部
32 (タブの)指掛け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜状のシート材からなるシール蓋本体が、容器の開口部を覆って密封するパネル部と、パネル部の周辺部から突出する突出片とを有し、シール蓋本体とは別体に形成されたリング状のタブが、シール蓋本体の突出片に固着される基部と、指を掛けるための指掛け部とを有するようなシール蓋において、シール蓋本体のパネル部に対して、タブの指掛け部が、着脱可能な状態で部分的に嵌合されていることを特徴とするリング状のタブを備えたシール蓋。
【請求項2】
タブの基部がパネル部の上面上に配置されているのに対して、タブの指掛け部が、パネル部の上面から凹設された嵌合用の溝部によって部分的に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載のリング状のタブを備えたシール蓋。
【請求項3】
シール蓋本体のパネル部に、タブの指掛け部を嵌合するための嵌合用の溝部と連続するように、指入れ用の凹部が凹設されていることを特徴とする請求項2に記載のリング状のタブを備えたシール蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−126589(P2011−126589A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289484(P2009−289484)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】