説明

リング風車による風力発電用風車

【課題】市街地において、建造物の屋上に設置する風力発電機用風車として、軽量で、微弱な風による発電が可能であり、強風の場合に損壊を防ぎ、鳥獣だけでなく、人に対しても安全な風車を提供することが課題である。
【解決手段】
風力発電用風車において、外周ドームの内に、軸のないリング状の風車と、中央筐体と、整流翼と、噴出孔によって構成し、風の通る断面積を小さくしていくことによって風を加速し、構造的に強度を高めることにより、軽量な材質で製作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電用風車において、軸のないリング状の風車と、中央筐体と、整流翼と、噴出孔によって、風を加速し、微弱な風力からの発電を可能にし、人と鳥獣に安全な風力発電用風車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーンな発電システムとして風力を利用した風力発電用風車が開発され、構造的に水平軸型(プロペラ等)や、垂直型(ダリウス型等)などが実用化されている。しかし、市街地のように、風の弱い地域における風力発電は、発電量が期待できないだけでなく、高速で羽が回ることによる人や鳥獣などに対する危険と、騒音(低周波騒音を含む)問題などが発生している。
【0003】
水平軸型も垂直軸型も、軸を風車で回す機構になっており、安全のため羽と軸に強度が求められるために、強固な材質で製作されており、結果的に重量の重い製品が普及している
【0004】
風力発電用発電機は、内部で電磁コイル鉄心が高速で回転する構造になっており、安全のために外装が強固な材質で製造されており、結果的に重量の重い製品が普及している
【0005】
水平軸型風車の外周を拡散筒(ディフェーザ)で覆うことによって、高出力な風車を開発する風レンズ風車のNEDO研究プロジェクトの研究結果が発表され、拡散筒の後で強い渦が発生し、風車の風の流れが引き込まれる(引き込み効果)ことによって、風車を通る風が加速することが分かった。
【0006】
非特許文献1には、連続の定理により、体積流量=面積×速度となり、密度を一定とし体積流量が同じ時、断面積と速度は反比例すると開示している。
【0007】
非特許文献2には、ベッツの法則により、風力エネルギーは空気の密度を一定とした場合、風速の3乗に比例し、風を受ける面積に比例する。また、ベッツの限界として、風のエネルギーの最大59.3%しか風車の回転力にならないと開示している。
【0008】
連続の定理により、例えば風の通る断面積を3分の1に細くしたとき、風は3倍の速度に加速され、ベッツの法則により、その面積当りのエネルギーは27倍になる、しかし、断面積が3分の1になるために、その総合エネルギーは9倍になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】小峯 龍男著 「よくわかる最新流体工学の基本」株式会社秀和システム 2006年
【非特許文献2】牛山 泉著 「さわやかエネルギー風車入門 増補版」株式会社三省堂 2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
風力発電用風車において、軽量で、微弱な風による発電が可能であり、鳥獣だけでなく、人に対しても安全な風車を提供することが課題である
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、風力発電用風車において、筒状の外周ドームの内に中央筐体(ナセル)があり、外周ドームと中央筐体の間にリング状の風車(以後リング風車と呼ぶ)があることを特徴とする。
【0012】
本発明の風力発電用風車において、中央筐体は風の取込口側の先が細くなった円錐状で、リング風車を支持する位置で最も断面積が大きくなり、取込口から入る風の速度を、風の通る外周ドームと中央筐体の間の断面積を小さくしていく事で風を加速し、風力エネルギーを高める事を特徴とする。
【0013】
本発明の風力発電用風車において、外周ドームと中央筐体の間で、風の取込口側に整流翼を付ける事により、中央筐体に沿って加速された風による引き込み効果によって、整流翼の外側から入る風を加速し、微弱な風から稼動する利点がある。
【0014】
風力発電用風車において、プロペラ風車の羽は軸によって一点支持されている。本発明の風力発電用風車のリング風車は、従来の軸ではなく、リング風車の内側と外側にある支持リングを、外周ドームと、中央筐体にそれぞれ設置したベアリング状の回転物で支持する事により、同じ外周のプロペラ風車と比較して、中央筐体の分だけ羽の長さが短くなり、羽を内側と外側で二点支持する事で、構造的に強度が高くなり、軽量な材質による羽が使える利点がある。
【0015】
風力発電用風車において、一般的な風力用発電機は外装に固定された永久磁石もしくは電磁コイルによる電磁極があり、軸に取り付けられた電磁コイル鉄心が回転し、電磁誘導により発電する。本発明の風力発電用風車において、リング風車は、内側にある支持リングに、永久磁石もしくは電磁コイルによる電磁極を複数一定間隔で取り付け、風力を受けてリング風車と一緒に回転し、中央筐体に固定し複数一定間隔で取り付けた電極コイル鉄心との電磁誘導により発電する構造であり、従来の風力用発電機より、軸と外装が不要になり、軽量化できる利点がある。
【0016】
本発明の風力発電用風車において、外周ドームの排気側に排気促進口を取り付け、外から風を取込み、その風を噴出孔からドームの内に風が回転するように入れることにより、拡散筒と同じ引き込み効果を発生し、リング風車を通る風を加速し、微弱な風から稼動する利点がある。
【0017】
本発明の風力発電用風車において、リング風車に付けられた羽は揚力形の形状だが、弾性体で支持することにより、強風の時は羽の角度を鋭角にし、風を排気側に多く通す機構とすることにより、リング状の風車の回転速度は設定された速度より高くならないので、風車の安全性を高める利点がある。
【0018】
本発明の風力発電用風車において、リング風車の羽の後部にフラップを付けることにより、揚力を大きくし、微弱な風から稼動する利点がある。
【0019】
本発明の風力発電用風車において、外周ドームと、整流翼と、中央筐体によって、高速回転するリング風車が覆われ、人と鳥獣に安全な形状になる利点がある。
【発明の効果】
【0020】
本発明の風力発電用リング風車は、市街地の微弱な風でも安定した発電をし、強風の場合に損壊を防ぎ、軽量な材質で製作でき、鳥獣だけでなく、人に対しても安全な風力発電用風車となるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は風力発電用リング風車の実施方法を示した全体断面説明図である。(実施例1)
【図2】図2は風力発電用リング風車の実施方法を示した前面後面説明図である。
【図3】図3は風力発電用リング風車の実施方法を示したリング風車説明図である。
【図4】図4は風力発電用リング風車の羽とフラップの実施方法を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の風力発電用リング風車は、微弱な風力から発電し、強風の場合に損壊を防ぎ、鳥獣と人に安全な風力発電用風車を、軽量な材質で製作できるという目的を実現した。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の風力発電用リング風車の実施例1の断面図であって、筒状の外周ドーム7の内に中央筐体1(ナセル)を設置し、外周ドーム7と中央筐体1の間にリング風車3を設置し、外周ドームと中央筐体の間で、風の取込口側に整流翼を設置しする。
【0024】
【表1】

【0025】
実施例1のAは外径であり、その半径を9とし、Bは整流翼2で半径を6とし、Cは整流翼の後で中央筐体1との間が最も狭くなるところで半径を5とし、Dは整流翼2の前で中央筐体1との間が最も広くなるところで半径を4とした時、それぞれの断面積はA=81π、B=36π、C=25π、D=16πとなる。
【0026】
実施例1で風の粘性を理想流体とし、Eをその時の自然な風速としたとき、Fの位置における風の速度は、Dの断面積の風を集めるので、B/F×E=1.8Eとなり、自然な風の速度Eの1.8倍になる。
【0027】
実施例1で風の粘性を理想流体とし、Eをその時の自然な風速としたとき、Gの位置における風の速度は、中央筐体1の傾斜分、断面積が少なくなり、B/G×E=3.27Eとなり、自然な風の速度Eの3.27倍になる。
【0028】
実施例1で風の粘性を理想流体とし、Eをその時の自然な風速としたとき、Iの位置における風の速度は、A/I×E=4.05Eとなり、自然な風の速度Eの4.05倍になる。
【0029】
リング風車3の発電によるエネルギー吸収によって風は減速する、ベッツ係数にて最大59.3%とするエネルギー変換を平均25%程度とし、Iの風速を3Eとなるよう、羽11の角度による調整を行う。
【0030】
本発明の風力発電用リング風車において、リング風車3は、風車の内側支持リング15と外側支持リング14を、外周ドームと、中央筐体にそれぞれ設置したベアリング状の回転物6で支持し、風を受けて回転する。
【0031】
本発明の風力発電用リング風車において、リング風車3は内側にある支持リング15に、永久磁石もしくは電磁コイルによる電磁極5を複数一定間隔で取り付け、風力を受けてリング風車3と一緒に回転し、中央筐体1に固定し複数一定間隔で取り付けた電極コイル鉄心4との電磁誘導により発電する、本考案の主体は風力発電の風車実装方法にあるので、電子、機構系の説明は省略する。
【0032】
本発明の風力発電用リング風車において、排気促進口8はリング風車3の後の外周ドーム7に一定の間隔で設置し、取り込んだ風を加速して、排気Jが回転するように噴出孔10から風をだし、竜巻を発生させることによって排気効率を上げる。
【0033】
本発明の風力発電用リング風車において、リング風車3に付けられた羽11は揚力形の形状だが、弾性体13で支持する。これによって強風の場合、羽の角度を鋭角にし、風を排気側に多く通す構造とする。弱風でも発電できる羽の角度と面積を確保し、強風の時は風を後方に逃がし、安全性を確保する。
【0034】
本発明の風力発電用リング風車において、リング風車3は揚力を受ける羽11と、その後にフラップ12を設置することによって揚力(回転力)を高める。
【符号の説明】
【0035】
1 中央筐体(ナセル)
2 整流翼
3 リング風車
4 電磁コイル鉄心
5 電磁極
6 ベアリング
7 外周ドーム
8 排気促進口
9 制御装置
10 噴出口
11 羽
12 フラップ
13 弾性体
14 外側支持リング
15 内側支持リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電用風車において、筒状の外周ドームの内に中央筐体(ナセル)と、リング風車と、整流翼と、噴出孔を有する事を特徴とする風力発電用風車。
【請求項2】
請求項1記載の中央筐体は、風の取込口側の先が細くなった円錐状で、リング風車を支持する位置で最も断面積が大きくなり、取込口から入る風の速度を、風の通る外周ドームと中央筐体の間の断面積を小さくしていく事で風を加速する機構を持つ事を特徴とする風力発電用風車。
【請求項3】
請求項1から2のいずれかに記載の整流翼は、外周ドームと中央筐体の間で、風の取込口側に付ける事により、中央筐体に沿って加速された風による引き込み効果によって、整流翼の外側から入る風を加速する事を特徴とする風力発電用風車。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のリング風車は、風車の内側と外側にある支持リングを、外周ドームと、中央筐体にそれぞれ設置したベアリング状の回転物で支持し、風を受けて回転することを特徴とする風力発電用風車。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のリング風車は、内側にある支持リングに、永久磁石もしくは電磁コイルによる電磁極を複数一定間隔で取り付け、風力を受けてリング風車と一緒に回転し、中央筐体に固定し複数一定間隔で取り付け た電極コイル鉄心との電磁誘導により電力を取り出す事を特徴とする風力発電用風車。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の噴出孔は、外周ドームの排気側に排気促進口を取り付け、外から風を取込み、その風を噴出孔からドームの内に風が回転するように入れることにより、竜巻を発生させ、リング風車を通る風を加速する事を特徴とする風力発電用風車。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のリング風車において、風車に付けられた羽は揚力形の形状だが、弾性体で支持することにより、強風の場合、羽の角度を鋭角にし、風を排気側に多く通す構造とし、その後にフラップを設置する事を特徴とする風力発電用風車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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