説明

リンパ球増殖促進方法およびリンパ球増殖促進剤

【課題】胚培養したエゾウコギに関し、これを用いた効果的なリンパ球増殖促進方法等を提供する事を目的とする。
【解決手段】リンパ球採取前に、胚培養したエゾウコギを経口投与する、リンパ球増殖促進方法とした。このとき、胚培養したエゾウコギが、培養時に波長250〜760nmで光量子束密度40μmol/m/s以上の光を照射して得られうるものであることが好ましい。また、胚培養したエゾウコギを、体重1kgあたり0.05〜0.30gを1日分として10日以上連続で経口投与することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外培養によるリンパ球の増殖を促進させるための、リンパ球増殖促進方法およびリンパ球増殖促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ウコギ科(Araliaceae) に属するエゾウコギ (Acanthopanax senticosus)は、シベリア、中国東北部、日本では北海道の東部に自生する多年生の落葉灌木である。このエゾウコギには、抗疲労、抗ストレス、持久力向上などの薬効があることが報告されており、医薬や健康食品等の分野で注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、刺五加(エゾウコギ)から抽出したエキスを薄めてゼラチン等の凝固剤で固めた食品を食することによって、体が丈夫になり、ストレスを和らげる事が出来る旨が記載されている。
【0004】
一方、血液に含まれているリンパ球は、採血等によって体外に取り出された後、培養により増殖され、様々な医学的実験や免疫療法に用いられている。このうち免疫療法は、動物のもつ自然治癒力(免疫力)を強化して病気を治療するという療法であり、培養により増殖させたリンパ球を体内へ戻す事によって自己免疫力を強化するものである。この免疫療法は、外科療法、化学療法、放射線療法と並ぶ新たな癌の治療法としても注目されており、具体的には、LAK(リンフォカイン活性化キラー細胞)療法や、TIL(腫瘍組織浸潤リンパ球)療法、CTL(細胞傷害性リンパ球)療法等がある。
【0005】
ここで、特許文献2には、このような免疫療法においてリンパ球を培養することに関し、人の血液から分離させたリンパ球を、所定波長の光を照射して培養したエゾウコギの乾燥粉末を混入した培地で培養すると、NK細胞活性能力(免疫賦活能力)が高まった旨が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−199857号公報(段落0005、段落0008)
【特許文献2】特開2006−25786号公報(段落0011〜0021)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、免疫療法等でリンパ球を培養して増殖させる場合において、リンパ球の増殖速度が動物の個体差によって区々であり、なかには、リンパ球の増殖が困難な固体も存在していた。
【0008】
一方、前記特許文献2記載の培養方法で得られたエゾウコギ等の胚培養物を効果的に利用する手法の開発が望まれていた。
【0009】
本発明は、上述の事柄に留意してなされたものであって、胚培養したエゾウコギに関し、これを用いた効果的なリンパ球増殖促進方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、リンパ球採取前に、胚培養したエゾウコギを経口投与する、リンパ球増殖促進方法とした。
ここで、「リンパ球採取前」とは、リンパ球を対象動物から採取する前の意味であり、リンパ球を含んだ血液を対象動物から採取する前を含む概念である。また、「胚培養」とは、エゾウコギのカルスを培養して得られた不定胚を培養することを含む概念である。加えて、「胚培養したエゾウコギ」は、胚培養したエゾウコギの粉末や乾燥粉末を含む概念である。
【0011】
上記リンパ球増殖促進方法によって、リンパ球を培養する際におけるリンパ球の増殖する速度を増加させることができる。また、従来の方法ではリンパ球の増殖が困難な固体であっても、個体差によらずにリンパ球を増殖させることができる。
このような増殖促進効果が生じるメカニズムは未だ解明されていないが、胚培養したエゾウコギの摂取によって、骨髄の血球系細胞に何らかの働きかけがなされるのではないかと想定される。リンパ球の培養は、対象動物の体から採取された後、体外で行われる(体外培養)。
【0012】
ここで、前記特許文献2には、胚培養したエゾウコギの乾燥粉末を「混入した培地」でリンパ球を培養すると、“免疫賦活能力”が高まった旨が報告されているが、本発明は、胚培養したエゾウコギを「経口投与」して、培養時におけるリンパ球の“増殖を促進(増殖する速度を増加)”させるものであって、前記特許文献2に開示された技術とは大きく異なるものである。
【0013】
このとき、胚培養したエゾウコギが、培養時に波長250〜760nmで光量子束密度40μmol/m/s以上の光を照射して得られうるものである、リンパ球増殖促進方法とすることができる。照射する光は、光量子束密度40〜150μmol/m/sであることが好ましい。
【0014】
また、胚培養したエゾウコギを、体重1kgあたり0.05〜0.30gを1日分として10日以上連続で経口投与する、リンパ球増殖促進方法とすることもできる。
【0015】
上記リンパ球増殖促進方法によって、より一層、リンパ球の増殖する速度を増加させることができる。
【0016】
また、前記課題は、胚培養したエゾウコギからなる、経口投与型のリンパ球増殖促進剤によっても解決される。このとき、胚培養したエゾウコギが、培養時に波長250〜760nmで光量子束密度40μmol/m/s以上の光を照射して得られうるものである、リンパ球増殖促進剤とすることができる。また、体重1kgあたり0.05〜0.30gを1日分として10日以上連続で経口投与される、リンパ球増殖促進剤とすることもできる。上記経口投与型のリンパ球増殖促進剤は、何れも、リンパ球採取前に経口投与されることになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、リンパ球の増殖する速度を増加させることができるリンパ球増殖促進方法、およびリンパ球の増殖する速度を増加させることができる経口投与型のリンパ球増殖促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を例示説明する。本発明は、図2に示すように、胚培養したエゾウコギをリンパ球採取前に経口投与する、リンパ球増殖促進方法であり、また、胚培養したエゾウコギからなる、経口投与型のリンパ球増殖促進剤である。なお、本発明は以下の実施形態や実施例に限定されるものではない。
【0019】
[胚培養したエゾウコギの準備(リンパ球増殖促進剤の調製)]
本発明で用いる胚培養したエゾウコギ(リンパ球増殖促進剤)は、エゾウコギのカルスを培養して不定胚(球状胚、心臓型胚、魚雷型胚)を誘導し、さらに成長させて幼植物体とした後、所望に応じて、この幼植物体を乾燥粉末化等したものであり、エゾウコギの培養には、基本的に、前記特許文献2に記載の方法を用いている。以下、特許文献2の記載を引用しつつ、図3を参照しながら、説明する。
【0020】
本発明で用いる胚培養エゾウコギの培養方法は、まず、第1ステップとして、エゾウコギの体細胞や種子などから誘導し、インキュベータ(図示していない)で保存(培養)してあるカルス1をMS液体培地(3%スクロースを含む)2で懸濁培養する。具体的には、三角フラスコなどの容器Hの中にMS液体培地2とカルス1を入れて、バイオシェイカー(振とう培養器)で振とう培養する。
【0021】
そして、この第1ステップを約1週間続行することにより、前記カルス1のほとんどは200μm程度の大きさの球状胚に成長する。
【0022】
続いて、第2ステップとして、第1ステップにおいてカルス1を培養して得られたエゾウコギ(前記球状胚になったものとなっていないものとの両方を含む。以下、1次培養体という)3を全て培養装置4に移し替えて更に培養する。ここで、この培養装置4は、エアリフト式通気培養槽5と、この通気培養槽5に近接して配置される光源6とを備えている。
【0023】
詳しくは、通気培養槽5は、1次培養体3およびMS液体培地(2%スクロースを含む)7を収容し、透明な樹脂またはガラスからなる水槽8と、この水槽8内にその下側から滅菌したエアを供給し続け、水槽8内を攪拌し続けるためのエア供給手段9とを備えている。そして、前記エア供給手段9は、前記水槽8内の下部に配置されるエア導出部10と、このエア導出部10に接続される流路11と、この流路の上流側に設けられ、例えばエアポンプやコンプレッサなどからなるエア供給装置12と、前記流路11においてエア供給装置12の下流側に設けられ、エア供給装置12からのエア中の不純物や菌などを除去するためのフィルタ13とを有している。
【0024】
前記光源6は、水槽8に対して赤色光、青色光または白色光を近接照射(光量子束密度が40〜150μmol/m/s)するように構成されている。ここで、光源6は、水槽8内において培養中の1次培養体3全てに均一に光を照射するように、水槽8の上方、下方、側方および水槽8の内部など適宜の位置に配置されていることが好ましく、光源6の配置箇所は一箇所でも複数箇所でもよい。
【0025】
そして、この第2ステップでは、光源6からの一定状態の光を水槽8内に照射することにより、水槽8内の1次培養体3に光ストレスを与え、かつ、エア供給手段9により水槽8内に滅菌したエアを供給し続ける状態で、2週間ごとにMS液体培地7を交換するという条件の下、1次培養体3の通気培養を約10〜12週間続行する。この間、前記1次培養体3は、球状胚から心臓型胚・魚雷型胚(500μm〜1mm程度の大きさ)の形態を経て、そのほとんどが幼植物体(2.8mm以上の大きさ)となる。
【0026】
また、第2ステップでは、光源6から水槽8へ16時間光を照射した後、光の照射を8時間停止するというサイクルを繰り返すようにしてある。このように明暗周期を設けることが1次培養体3の成長を促進させる点で効果的であると考えられるが、明暗周期を設けず、光ストレスを与え続けるようにしてもよい。
【0027】
なお、上記第2ステップでは、培養時に所定の光を照射する例を示したが、本発明においてはこれに限定されず、光を照射せずに培養してもよい。しかし、上記所定波長および光量子束密度の光を培養中に照射した胚培養エゾウコギを用いることが、培養時におけるリンパ球増殖速度をより増加させることができて、好ましい。
【0028】
その後、第3ステップとして、第2ステップにおいて1次培養体3を培養して得られたエゾウコギ(以下、2次培養体という)14をMS液体培地7とともに網状体(2.8mmメッシュ)15で濾し、網状体15を通過せずその上に残った2次培養体14を幼植物体に成長したと判断し、取り出す。以上で、エゾウコギ細胞の培養が完了する。
【0029】
上記方法で得られた胚培養エゾウコギの幼植物体は、前記特許文献2に記載されているように、市販のエゾウコギ天然物と比べ、含有する総ポリフェノールおよびクロロゲン酸の量が多く、特に光ストレスを与えたときにそれぞれの含有量が増加することが判明している。しかし、本発明の効果であるリンパ球の増殖促進効果が生じるメカニズムとの関連性は不明である。
【0030】
上記胚培養エゾウコギの幼植物体は、そのまま経口投与することも可能である。しかし、2次加工および投与のしやすさや、体内への吸収効率を考慮すると、乾燥させて粉末状にすることが好ましい。そこで、所望に応じて、胚培養エゾウコギの幼植物体を乾燥粉末化する第4ステップを実施することができる。
このとき、乾燥粉末化は種々の手段を用いることができる。例えば、胚培養エゾウコギの幼植物体を、真空ドラム乾燥、凍結乾燥、熱風乾燥等によって乾燥させた後、チョッパー、カッター、衝撃式粉砕機等の粉砕機を用いて粉砕し微細化することができる。胚培養エゾウコギの幼植物体は、粉砕後に乾燥させてもよい。
【0031】
上記胚培養エゾウコギ(胚培養エゾウコギの乾燥粉末を含む)は、経口投与型のリンパ球増殖促進剤として用いられる。以下、その投与方法等について例示説明する。
【0032】
〔胚培養エゾウコギ(リンパ球増殖促進剤)の経口投与〕
上記胚培養エゾウコギ(リンパ球増殖促進剤)を、リンパ球採取前の動物等に予め経口投与する。経口投与する対象はヒト又はヒト以外の哺乳動物とすることができる。例えば、イヌ科の動物やネコ科の動物に経口投与することができる。ペット(愛玩動物)にも広く投与可能である。また、剤形態も特に制限されず、例えば、乾燥粉末であれば、粉末状のまま投与する他、粉末状のものをカプセル内に封入したりタブレット状に成型加工したりしてもよい。経口投与の手段も特に制限されず、例えば、液体に溶かして(分散させて)投与したり、食餌に混合したりしてもよい。
【0033】
また、上記胚培養エゾウコギは、毎日適宜の量を連続して投与することが望ましい。特に、10日以上連続して投与するとリンパ球の増殖促進効果が顕著に現れるようになる。さらに、胚培養エゾウコギを1日に投与する量としては、動物の体重1kg当たり0.05〜0.30gとすることが好適である。0.05g/kgより少ない量では効果の有意差が確認できず、また、0.30g/kgより多く投与しても効果に違いが現れにくい。胚培養エゾウコギを1日に投与する量は、動物の体重1kg当たり0.1〜0.2gとすることが最も好ましい。
【0034】
〔リンパ球の採取〜培養〕
上記のようにして胚培養エゾウコギを経口投与した後、リンパ球を採取し培養することになる。リンパ球の採取については、採血した抹消血からリンパ球を分離して採取するのが簡便であり優れているが、これに限定されるものではない。また、採血した血液からリンパ球を分離するためには、例えば、蔗糖や市販のリンパ球分離剤等を用いる不連続密度勾配遠心法(比重遠心法)など、種々のリンパ球細胞の分離法を用いることができる。
【0035】
また、リンパ球の採取は、前記経口投与の終了後2週間以内に行うことが好ましい。これによって、より一層、リンパ球の増殖速度を増加させることができる。リンパ球の採取は、経口投与の終了後1週間以内に行うことがより好ましく、最も好ましくは経口投与の終了後24時間以内である。なお、本発明によるリンパ球の増殖促進効果は、経口投与の終了から約2週間経過後に採取したリンパ球においても持続することが確認されている。
【0036】
採取されたリンパ球は、種々の手段で培養すればよい。例えば、イヌリンパ球を培養するのであれば、ヒトインターロイキン−2を用いる他、PHA(Phytohemagglutinin)とヒトインターロイキン−2を用いたり、固相化抗イヌCD3抗体とヒトインターロイキン−2を用いたりしてもよい。
【0037】
以下、本発明の内容を実施例によりさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0038】
本実施例は、胚培養エゾウコギの乾燥粉末をビーグル犬に投与した後に、末梢血からリンパ球を採取し、リンパ球の体外培養による増殖実験を行ったものである。
【0039】
1.胚培養エゾウコギの乾燥粉末の準備
カルスをMS液体培地(3%スクロースを含む)で1週間懸濁培養して200μm程度に成長した球状胚を得た(第1ステップ)。
次に、この球状胚を、MS液体培地(2%スクロースを含む)において、2週間ごとにMS液体培地を交換しながら、波長250〜760nmで光量子束密度40μmol/m/s以上の光を照射して10週間通気培養した。このとき、16時間光を照射した後、光の照射を8時間停止するというサイクルを繰り返した。この培養によって、球状胚の殆どが幼植物体(2.8mm以上の大きさ)となった(第2ステップ)。
その後、上記培養体を液体培地とともに網状体(2.8mmメッシュ)で濾し、その上に残った培養体を幼植物体として取り出した(第3ステップ)。
最後に、この幼植物体を乾燥後に粉末化して、エゾウコギの乾燥粉末を得た(第4ステップ)。
【0040】
2.エゾウコギ乾燥粉末の経口投与
臨床的に健康なビーグル犬3頭(D1:雄、3歳、体重6.3kg、D2:雌、2歳、体重8.0kg、D3:雄、4歳、体重7.3kg)に対して、1日に1gのエゾウコギ乾燥粉末を食餌に混合して2週間連続投与した。エゾウコギ乾燥粉末の投与量を、ビーグル犬の体重1kgあたりの量に換算すると、D1=0.159g/kg、D2=0.125g/kg、D3=0.137g/kgである。なお、エゾウコギの乾燥粉末は、1日1回の食事で1g投与した。
【0041】
3.リンパ球の採取(血液の採取)
次に、3頭のビーグル犬それぞれから末梢血5mLをそれぞれヘパリン加採血した(エゾウコギ乾燥粉末投与後の血液)。採血は、エゾウコギ乾燥粉末を2週間投与して24時間以内に行った。なお、比較用として、エゾウコギ乾燥粉末を経口投与する前にも末梢血を採血した(エゾウコギ乾燥粉末投与前の血液)。
【0042】
4.リンパ球の分離(末梢血単核球の分離)
その後、3頭のビーグル犬それぞれの、エゾウコギ乾燥粉末投与前の血液と投与後の血液から、リンパ球を分離した。リンパ球の分離は、以下の手順に従った。
【0043】
まず、クリーンベンチ内で無菌的に、15mL遠心管に末梢血を分注し、遠心分離機にて遠心分離温度24℃、回転数1800rpmで10分間遠心分離を行った。
【0044】
遠心後、下層の血球層を、50mL遠心管に分注した約2倍量の洗浄用培地〔培地(株式会社日研生物医学研究所:RPMI1640)500mL、1N 塩酸3mL、1M HEPES液(SIGMA社:H0887)10mL含有〕と混和した。5mLピペットを用いてリンホセパール1(株式会社免疫生物研究所)を15mL遠心管に3mL入れ、次に洗浄用培地で希釈した末梢血10mLをゆっくりと重層した。これを遠心分離機にて温度24℃、回転数1600rpmで 30分間ブレーキOFFの状態で遠心分離を行った。
【0045】
遠心後、中間層のリンパ球画分を5mLのピペットを用いて50mL遠心管に回収し、これに洗浄用培地を加え全量20〜30mLとし、これをよく混和した。ここから末梢血単核球浮遊液をサンプリングした。
【0046】
5.細胞培養用フラスコの調製
まず、生理食塩水で5μL/mLに希釈調製した抗イヌCD3抗体(発売元:セロテック社:マウス抗イヌ CD3)溶液を、培養用フラスコに5mL入れ、底面に溶液を均一に浸した。
【0047】
4±2℃で一晩保管後、フラスコ内の抗イヌCD3抗体溶液を除去し、生理食塩水20mL をフラスコに注ぎ込みフラスコの蓋を閉め激しく振った後、蓋を開け、液を捨てた。再度同様の操作を行い、フラスコ内と蓋に残っている液を除去し、使用時まで冷蔵庫にて保管した。
【0048】
6.末梢血単核球の培養
サンプリング後の末梢血単核球浮遊液を遠心分離機にて、温度25℃、回転数1600rpmで10分間遠心分離の後、上清をデカントで除きペレットをボルテックスで分散させた。これをヒトインターロイキン−2を含む培養用培地[培地(株式会社日研生物医学研究所:RPMI1640+7S)400mL、35,000/mL rIL-2(PROLEUKIN:カイロン社)4.5mL、FBS(JRH社)45mL含有]20mLで洗浄しながら上記手順で調製された細胞培養用フラスコに回収し、これをテーハー式大型CO培養器にて温度37℃±0.2℃、CO濃度5.0±0.2%、湿度95%±5.0%の条件下で培養を行った。
【0049】
7.細胞数の測定
エゾウコギ乾燥粉末投与前の血液から分離されたリンパ球(投与前)と、投与後の血液から分離されたリンパ球(投与後)のそれぞれについて、培養前と所定日数培養後のリンパ球数を、血球計算盤を用いてカウントした。具体的には、チュルク氏液と混合し、改良ノイバウエル血球計算盤を用いて、光学顕微鏡下で細胞数を測定した。
【0050】
以上の実験結果を図1に示す。本図を見れば判るとおり、いずれの個体(D1〜D3)においてもエゾウコギ乾燥粉末を投与したものが、投与していないもの(投与前)と比較して、リンパ球の増殖速度が増加(増殖促進)していることが判明した。また、リンパ球が増殖する速度も、個体差に依らず、ほぼ一定となった。特に、一つの個体(D3)において、エゾウコギ乾燥粉末の投与前では14日間培養しても殆どリンパ球が増殖しなかったのに対し、投与後ではリンパ球の増殖が促進されており、本発明の有用性が確認できた。
【0051】
以上、特定の実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、従来方法ではリンパ球の培養による増殖が困難な固体であっても、リンパ球の培養増殖を可能とするものであり、免疫療法や医療的実験をはじめリンパ球を培養して増殖させる必要のある全ての場面で活用できる。例えば、LAK(リンフォカイン活性化キラー細胞)療法、TIL(腫瘍組織浸潤リンパ球)療法、およびCTL(細胞傷害性リンパ球)療法に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明のリンパ球増殖促進剤の投与前と投与後における、リンパ球の増殖度合いを示すグラフである。
【図2】本発明のリンパ球増殖促進方法を例示するフローである。
【図3】本発明で用いる胚培養エゾウコギの培養方法を例示する図である(特開2006−25786号公報から引用)。
【符号の説明】
【0054】
1 カルス
6 光源
8 水槽
14 エゾウコギの幼植物体(2次培養体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ球採取前に、胚培養したエゾウコギを経口投与する、リンパ球増殖促進方法。
【請求項2】
胚培養したエゾウコギが、
培養時に波長250〜760nmで光量子束密度40μmol/m/s以上の光を照射して得られうるものである、
請求項1記載のリンパ球増殖促進方法。
【請求項3】
胚培養したエゾウコギを、体重1kgあたり0.05〜0.30gを1日分として10日以上連続で経口投与する、
請求項1又は2記載のリンパ球増殖促進方法。
【請求項4】
胚培養したエゾウコギからなる、経口投与型のリンパ球増殖促進剤。
【請求項5】
胚培養したエゾウコギが、
培養時に波長250〜760nmで光量子束密度40μmol/m/s以上の光を照射して得られうるものである、
請求項4記載のリンパ球増殖促進剤。
【請求項6】
体重1kgあたり0.05〜0.30gを1日分として10日以上連続で経口投与される、
請求項4又は5記載のリンパ球増殖促進剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−47507(P2010−47507A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212498(P2008−212498)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【出願人】(000231431)日本植生株式会社 (88)
【Fターム(参考)】