リン含有ベンゾオキサジン系モノマー、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体、燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜および燃料電池
【課題】耐熱性及び耐リン酸性に優れたリン含有ベンゾオキサジン系モノマー、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体、燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜および燃料電池を提供する。
【解決手段】 所定の化学式を有するリン含有ベンゾオキサジン系モノマー、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体、燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜および燃料電池が提供される。本発明に係るリン含有ベンゾオキサジン系モノマーを用いることで、耐熱性及び耐リン酸性の向上を図ることが可能となる。
【解決手段】 所定の化学式を有するリン含有ベンゾオキサジン系モノマー、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体、燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜および燃料電池が提供される。本発明に係るリン含有ベンゾオキサジン系モノマーを用いることで、耐熱性及び耐リン酸性の向上を図ることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン含有ベンゾオキサジン系モノマー、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体、燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜および燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質として高分子電解質膜を使用した燃料電池は、動作温度が比較的低温であると同時に小型化が可能であるため、電気自動車や家庭用分散発電システムの電源として期待されている。高分子電解質膜燃料電池に使われる高分子電解質膜としては、ナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー膜が使われている。
【0003】
しかし、このタイプの高分子電解質膜がプロトン伝導を発現するためには、水分が必要なために、加湿が必要である。また、電池システム効率を高めるために100℃以上の温度での高温運転が要求されるが、この温度では、電解質膜内の水分が蒸発して枯渇し、固体電解質としての機能を失ってしまうという問題がある。
【0004】
これら従来の技術に起因する問題を解決するために、無加湿でありつつ100℃以上の高温で作動可能な無加湿電解質膜が開発されている。例えば、特許文献1には、無加湿電解質膜の構成材料として、リン酸がドーピングされたポリベンズイミダゾールなどの材料が開示されている。
【0005】
また、パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー膜を利用した低温作動電池では、電極、特にカソードでの発電によって生成された水(生成水)による電極内でのガス拡散不良を防止するために、撥水材であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合して、疎水性を付与した電極が多用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
一方、高温無加湿電解質のリン酸を維持するポリベンズイミダゾール(PBI)を電解質膜に使用した燃料電池では、電極と膜界面の接触を良好にするために、液相のリン酸を電極に含浸させることが試みられ、金属触媒のローディング含有量を高める試みが行われた。しかしながら、十分の特性を引出すとはいえない状況であり、改善の余地が多い。
【0007】
また、リン酸がドーピングされた固体高分子電解質を利用する場合には、カソードに空気を供給する場合、最適化した電極造成を使用するとしても1週間ほどの活性化時間が要求される。これは、カソードの空気を酸素に代替することによって、性能向上はもとより活性化時間を短縮することはできるが、商用化を考慮すれば望ましくない。そして、前記PBIを利用したホモポリマー電解質膜は、高温での機械的特性及び化学的安定性、リン酸保液能力が満足すべきレベルに到達できず、改善の余地が多い。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5525436号明細書
【特許文献2】特開平05−283082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、耐熱性及び耐リン酸性に優れた、新規かつ改良されたリン含有ベンゾオキサジン系モノマー、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体、燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜および燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、下記化学式1で表される、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーが提供される。
【0011】
【化1】
・・・(化学式1)
【0012】
前記化学式1において、R1及びR2は、互いに独立的にC1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基または下記構造式1で表示される置換基である。
【0013】
【化2】
・・・(構造式1)
【0014】
前記構造式1において、R3は、互いに独立的に水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化したC6〜C20アリール基、ハロゲン化したC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化したC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、またはハロゲン化したC1〜C20ヘテロ環基である。
【0015】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、下記化学式2〜化学式4で表される化合物のうち選択された一つ以上であってもよい。
【0016】
【化3】
・・・(化学式2)
【0017】
【化4】
・・・(化学式3)
【0018】
前記化学式3において、R2は、C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基、C6〜C10アリール基、またはC6〜C10アリールオキシ基である。
【0019】
【化5】
・・・(化学式4)
【0020】
前記化学式4において、R4及びR5は、C6〜C10アリール基である。
【0021】
また、前記化学式2〜化学式4において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【0022】
【化6】
【0023】
前記化学式3で表される化合物は、下記化学式5及び化学式6で表される化合物の中から選択された一つであってもよい。
【0024】
【化7】
・・・(化学式5)
【0025】
【化8】
・・・(化学式6)
【0026】
前記化学式5及び化学式6において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【0027】
【化9】
【0028】
前記化学式4で表される化合物は、下記化学式7で表される化合物であってもよい。
【0029】
【化10】
・・・(化学式7)
【0030】
ここで、前記化学式7において、R3は、下記構造式で表される置換基の中から選択される。
【0031】
【化11】
【0032】
前記モノマーは、下記化学式8〜化学式14で表される化合物の中から選択された一つであってもよい。
【0033】
【化12】
・・・(化学式8)
【0034】
【化13】
・・・(化学式9)
【0035】
【化14】
・・・(化学式10)
【0036】
【化15】
・・・(化学式11)
【0037】
【化16】
・・・(化学式12)
【0038】
【化17】
・・・(化学式13)
【0039】
【化18】
・・・(化学式14)
【0040】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応生成物、または、上記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応生成物であるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体が提供される。
【0041】
前記架橋性化合物は、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミドからなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0042】
前記架橋性化合物の含有量は、前記化学式1のベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、5〜95質量部であってもよい。
【0043】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、上記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む触媒層を備える、燃料電池用電極が提供される。
【0044】
前記触媒層は、触媒を含む。
【0045】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体の含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1〜65質量部であってもよい。
【0046】
前記触媒は、白金(Pt)単独;白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属を含む白金合金;または、白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属の混合物であってもよい。
【0047】
前記触媒は、触媒金属、または触媒金属と触媒金属とがカーボン系担体に担持された担持触媒であり、前記触媒金属は、白金(Pt)単独;白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属を含む白金合金;または、白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属の混合物であってもよい。
【0048】
前記触媒層は、リン酸及びC1〜C20有機ホスホン酸の中から選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含んでもよい。
【0049】
ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、FEP(fluorinated ethylenepropylene)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上のバインダーがさらに含まれていてもよい。
【0050】
前記触媒層は、触媒及びバインダーをさらに含み、前記バインダーは、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、FEP、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上であり、前記バインダーの含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1〜50質量部であってもよい。
【0051】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、上記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む燃料電池用電解質膜が提供される。
【0052】
前記電解質膜は、リン酸及びC1〜C20有機ホスホン酸のうち選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含んでもよい。
【0053】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、カソードと、アノードと、前記カソードおよび前記アノードの間に介在された電解質膜と、を備え、前記カソード及びアノードの中から選択された一つ以上は、上記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体及び触媒を含む触媒層を備える電極である燃料電池が提供される。
【0054】
前記電解質膜は、下記化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応生成物、または下記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応生成物であるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む電解質膜であってもよい。
【0055】
【化19】
・・・(化学式1)
【0056】
前記化学式1において、R1及びR2は、互いに独立的にC1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基または下記構造式1で表示される置換基である。
【0057】
【化20】
・・・(構造式1)
【0058】
前記構造式1において、R3は、互いに独立的に水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化したC6〜C20アリール基、ハロゲン化したC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化したC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、またはハロゲン化したC1〜C20ヘテロ環基である。
【0059】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、カソードと、アノードと、前記カソードおよび前記アノードの間に介在され、上記燃料電池用電解質膜を含む燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、耐熱性及び耐リン酸性に優れたリン含有ベンゾオキサジン系モノマー、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体、燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜および燃料電池を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0062】
本発明の一実施形態に係るリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、下記化学式1で表される。
【0063】
【化21】
・・・(化学式1)
【0064】
前記化学式1において、R1及びR2は、例えば、互いに独立的にC1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基または下記構造式1で表示される置換基である。
【0065】
【化22】
・・・(構造式1)
【0066】
前記構造式1において、R3は、例えば、互いに独立的に水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化したC6〜C20アリール基、ハロゲン化したC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化したC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、またはハロゲン化したC1〜C20ヘテロ環基である
【0067】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、例えば、下記化学式2〜化学式4で表される化合物のうち選択された一つ以上である。
【0068】
【化23】
・・・(化学式2)
【0069】
【化24】
・・・(化学式3)
【0070】
前記化学式3において、R2は、C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基、C6〜C10アリール基、またはC6〜C10アリールオキシ基である。
【0071】
【化25】
・・・(化学式4)
【0072】
前記化学式4において、R4及びR5は、C6〜C10アリール基である。
【0073】
前記化学式2〜化学式4において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【0074】
【化26】
【0075】
本発明の一実施形態に係るリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、前記化学式2〜化学式4から分かるように、R3が、フッ素が置換されたフェニル基である場合、フッ素含有ベンゾオキサジン系システムにリン官能基を導入することで、フッ素含有高分子が持つ長所である優秀な酸素透過度、耐熱性及び耐リン酸性を具現できる。そして、この化合物は、リン酸と類似した構造を持つことによって、気相(燃料ガスまたは酸化ガス)−液相(リン酸)−固相(触媒)の三相界面の互換性も高めることができる。
【0076】
前記化学式3で表示される化合物の例として、例えば、下記化学式5または化学式6で表される化合物を挙げることができる。
【0077】
【化27】
・・・(化学式5)
【0078】
【化28】
・・・(化学式6)
【0079】
前記化学式5及び6において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【0080】
【化29】
【0081】
また、前記化学式4で表示される化合物の一例として、例えば、下記化学式7で表される化合物を挙げることができる。
【0082】
【化30】
・・・(化学式7)
【0083】
ここで、前記化学式7において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【0084】
【化31】
【0085】
本実施形態に係るリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、特に下記化学式8〜化学式14で表される化合物の中から選択された一つであることが望ましい。
【0086】
【化32】
・・・(化学式8)
【0087】
【化33】
・・・(化学式9)
【0088】
【化34】
・・・(化学式10)
【0089】
【化35】
・・・(化学式11)
【0090】
【化36】
・・・(化学式12)
【0091】
【化37】
・・・(化学式13)
【0092】
【化38】
・・・(化学式14)
【0093】
本発明の一実施形態に係るリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、耐熱性及び耐リン酸性に優れ、電極の疎水性も所望の通りに調節することが容易であり、リン酸と類似した構造を持つことによって、気相(燃料ガスまたは酸化ガス)−液相(リン酸)−固相(触媒)の三相界面の互換性も高めることができる。
【0094】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応により得られた重合体は、燃料電池用電極の形成時に利用すれば、カソードに空気を用いながらも酸素透過度が改善され、電極内部でのリン酸(H3PO4)の湿潤能及び熱的安定性を向上させることができる。したがって、それらの電極及び電解質膜を採用した燃料電池は、高温無加湿条件下で動作可能で熱的安定性が補強されるだけではなく、改善された発電性能を発現させることができる。
【0095】
以下、本発明の一実施形態による化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの製造方法を説明する。一例として、化学式2、5〜7で表示される化合物を挙げて説明するが、他の化合物もこれと類似した方法によって合成可能である。
【0096】
下記反応式1を参照して、化学式2、5〜7で表示される化合物は、それぞれリン含有フェノール系化合物及びアミン化合物を、ホルムアルデヒドと共に溶媒なしに加熱する工程を経るか、または、溶媒を付加して還流し、それを、ワークアップ工程を経て、目的とするリン含有ベンゾオキサジン系モノマーを得ることができる。
【0097】
【化39】
・・・(反応式1)
【0098】
前記反応式1において、R3は、前述した化学式2、5〜7で定義されたところと同一にするために、以下の構造式群で表示される置換基の中から選択される。
【0099】
【化40】
【0100】
前記反応で溶媒を用いる場合、溶媒として、例えば、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、THFなどを使用する。そして、前記加熱温度は、用いられた溶媒が還流されうる温度範囲に調節するが、望ましくは、例えば50〜90℃の範囲、特に、約80℃となるように調節することが好ましい。
【0101】
前記反応式1で用いられたリン含有フェノール系化合物は、下記反応式2に示したように、それぞれに対応する4−ベンジルオキシフェノール及び塩化ホスホリルを利用し、それにエーテル化反応及び水素化反応を順次に実施し、かつ保護及び脱保護反応を実施して、得ることができる。
【0102】
【化41】
・・・(反応式2)
【0103】
前記エーテル化反応は、その反応条件が特別に制限されるものではないが、前記反応式1に示したように、ピリジン、トリエチルアミンのような塩基存在下で還流する条件で実施できる。
【0104】
前記水素化反応は、前記反応式1に示したように、水素とPd/Cのような触媒存在下で、室温(20〜25℃)で行われるが、特別にその反応条件のみで限定されるものではない。
【0105】
本発明の一実施形態によれば、化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応結果として得ることができるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を提供する。
【0106】
前記重合体は、ベンゾオキサジン系モノマーを溶媒に溶解し、それを熱処理して重合反応を実施し、得ることができる。この時、熱処理温度は、例えば180〜250℃である。もし、熱処理温度が前記範囲未満ならば、重合反応の反応性が低下する恐れがあり、前記範囲を超過すれば、副反応物質が生成されて生成物の収率が減少する恐れがある。
【0107】
前記反応時において、必要な場合には、例えば重合触媒などを使用することが可能である。
【0108】
前記溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用し、その含有量は、ベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、例えば、0.05〜65質量部であることが望ましい。もし、溶媒の含有量が0.05質量部未満ならば、膜の剛性確保が容易でない恐れがあり、65質量部を超過すれば、成膜性が低下する恐れがある。
【0109】
また、本発明の一実施形態によれば、化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物間の重合反応結果として得ることができるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を提供できる。
【0110】
前記架橋性化合物の非制限的な例として、例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミドからなる群から選択された一つ以上を挙げることができる。
【0111】
前記架橋性化合物の含有量は、化学式1のベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、例えば5〜95質量部であることが望ましい。
【0112】
上記化学式で示されたアルキル基の具体的な例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、iso−アミル、ヘキシルなどを挙げることができ、前記アルキル基のうち一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ハロゲン原子に置換されたC1〜C20のアルキル基(例:CCF3、CHCF2、CH2F、CCl3など)、ヒドロキシ、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、またはC1〜C20のアルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C1〜C20のヘテロアリール基、C6〜C20のアリール基、C6〜C20のアリールアルキル基、C6〜C20のヘテロアリール基、またはC6〜C20のヘテロアリールアルキル基に置換されてもよい。
【0113】
上記化学式で示されたアルコキシ基の具体的な例として、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどがあり、アルコキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0114】
上記化学式で示されたアルキル基は、単独または組み合わせて用いられ、一つ以上の環を含む炭素原子数6〜20個の芳香族炭素環システムを意味し、前記環は、ペンダント方法で共に取り付けられるか、または縮合されてもよい。上記化学式で示されたアリールという用語は、例えば、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルのような芳香族ラジカルを含む。前記アルキル基は、例えば、ハロアルキレン、ニトロ、シアノ、アルコキシ及び低級アルキルアミノのような置換基を持つことができる。また、前記アルキル基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0115】
上記化学式で示されたアリールオキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0116】
上記化学式で示されたヘテロアリール基は、例えば、N、O、PまたはSの中から選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである炭素数1〜20の1価単環式または二環式芳香族2価有機化合物を意味する。前記ヘテロアリールの例としては、例えば、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリルなどがある。
【0117】
前記ヘテロアリール基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0118】
上記化学式で示されたヘテロアリールオキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0119】
上記化学式で示されたシクロアルキル基は、シクロヘキシル基のように例えば5〜10個の炭素原子で構成された環基(環状の置換基)を意味し、前記シクロアルキル基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0120】
上記化学式で示されたヘテロ環基は、例えば、窒素、硫黄、リン、酸素のようなヘテロ原子を含有している5〜10原子からなる環基を意味し、それらのヘテロ環基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じく置換できる。
【0121】
本発明の一実施形態によれば、また、前述した化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を提供する。
【0122】
前記重合体は、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーを溶媒に溶解し、それを熱処理して重合反応を実施して得ることができる。この時、熱処理温度は、例えば180〜250℃である。もし、熱処理温度が前記範囲未満ならば、重合反応の反応性が低下する恐れがあり、前記範囲を超過すれば、副反応物質が生成されて生成物の収率が減少する恐れがある。
【0123】
前記反応時において、必要な場合には、例えば重合触媒などを使用可能である。
【0124】
前記溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用し、その含有量は、ベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、例えば、5〜30質量部であることが望ましい。
【0125】
本発明の一実施形態に係る燃料電池用電極は、前述した化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応、または化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応で得られたリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む触媒層を備える。
【0126】
ここで、前記触媒層は、触媒を含む。
【0127】
前記化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体は、電極のバインダーとして使用することが可能であり、特に、結合剤の役割を果たすことが可能であるため、統合的な結合剤なしでも電極構成が可能である。
【0128】
前記化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体は、リン酸湿潤性を向上させる物質であり、その含有量は、触媒100質量部を基準として、例えば、0.1〜65質量部であることが望ましい。
【0129】
もし、化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体の含有量が0.1質量部未満ならば、電極の湿潤状態を改善するのに不十分であり、65質量部を超過すれば、成膜性が低下して望ましくない。
【0130】
前記触媒としては、例えば、白金(Pt)単独、もしくは、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属と白金との合金あるいは混合物を使用するか、または、これら金属がカーボン系担体に担持された担持触媒を使用することが可能である。特に、白金(Pt)、白金コバルト(PtCo)及び白金ルテニウム(PtRu)からなる群から選択された一つ以上の触媒金属、または前記触媒金属がカーボン系担体に担持された担持触媒を使用することが望ましい。
【0131】
前記電極は、燃料電池電極の製造時に通例的に使用可能なバインダーをさらに含むことができる。
【0132】
前記バインダーとしては、例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体及びパーフルオロエチレンからなる群から選択された一つ以上を使用し、バインダーの含有量は、触媒100質量部を基準として、例えば、0.1〜50質量部であることが望ましい。もし、バインダーの含有量が0.1質量部未満ならば、電極の接着力が落ちて触媒層の形態維持が難しくなり、50質量部を超過すれば、電極内の電気抵抗が高くなって望ましくない。
【0133】
一方、本発明の一実施形態に係る電解質膜は、前記化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合結果物、または前記化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物間の重合結果物であるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含有する。
【0134】
前記化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、分子内、分子間水素結合を極大化させることができる−P=O官能基を含有している構造を有しており、これを利用すれば、構造的剛性が改善された高分子を得ることができ、リン酸との構造的類似性による互換性(compatibility)も向上する。
【0135】
前記架橋性化合物の非制限的な例として、例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド系のうち選択された一つ以上を挙げることができる。ポリベンズイミダゾール・塩基複合体は、本出願人の韓国特許出願2007−102579号明細書に開示されたものを使用することが可能である。
【0136】
ポリベンズイミダゾール・塩基複合体における塩基は、弱塩基であることが望ましい。この塩基は、望ましくは、例えば、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ルビジウム(Rb2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、炭酸水素アンモニウム((NH4)HCO3)からなる群から選択された一つ以上の炭酸塩を使用する。また、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体におけるポリベンズイミダゾールとして、例えば、ポリ[2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンズイミダゾール](PBI)またはポリ(2,5−ベンズイミダゾール)(ABPBI)等を使用することが可能である。上述のポリベンズイミダゾールを、有機溶媒に溶解させたポリベンズイミダゾール溶液に、上記塩基を付加し、これを熱処理する過程を経る。このような熱処理過程を経た結果物をろ過すれば、目的とするポリベンズイミダゾール−塩基複合体を得ることができる。
【0137】
本発明の一実施形態によれば、前記架橋性化合物がポリベンズイミダゾールまたはポリベンズイミダゾール・塩基複合体である場合、電解質膜は、熱硬化性樹脂であるポリベンゾオキサジンを、熱可塑性のポリベンズイミダゾールまたはポリベンズイミダゾール・塩基複合体と硬化させて得た生成物であるポリベンゾオキサジン系化合物の架橋体から形成される。
【0138】
前記本発明の一実施形態に係る電解質膜は、耐熱性が優秀なポリベンゾオキサジン系化合物の架橋体から構成されており、高い作動温度でも機械的、化学的安定性に優れ、耐久性が確保されて長期寿命特性が向上する。
【0139】
前述した燃料電池用電極を製造する方法を説明すれば、次の通りである。
【0140】
まず溶媒に触媒を分散して、分散液を得る。この時、溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、(DMAc)などを使用し、その含有量は、触媒100質量部を基準として、例えば、100〜1000質量部である。
【0141】
前記分散液に、前記化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと溶媒とを含む混合物を付加及び混合して、攪拌する。前記混合物には、バインダーがさらに含まれうる。
【0142】
前記溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用する。
【0143】
前記混合物をカーボン支持体の表面にコーティングして、電極を完成する。ここで、カーボン支持体は、ガラス基板上に固定させた方が、コーティング作業が容易となる。そして、前記コーティング方法としては特別に制限されないが、例えば、ドクターブレードを利用したコーティング、バーコーティング、スクリーンプリンティングなどの方法を利用できる。
【0144】
前記混合物をコーティング後に乾燥させる過程を経るが、溶媒を除去する過程を、例えば20〜150℃の温度範囲で実施する。そして、乾燥時間は、乾燥温度によって変わり、例えば10〜60分の範囲内で実施する。
【0145】
前述した製造過程から分かるように、最終的に得られた燃料電池用電極は、化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーではなくその重合体を含有しているが、化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応は、前述した乾燥過程及び/又は電極を備えた電池の作動中に進行し、その重合体に転換される。一方、本実施形態に係る燃料電池は、電解質膜形成材料及び/又は電極形成材料を最適化して、それらから形成された電池のセル性能を極大化させる。
【0146】
以下、本発明の一実施形態に係る電解質膜及びその製造方法を説明する。以下では、架橋性化合物を使用した場合について説明するが、化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーのみで重合反応をする場合には、架橋性化合物を使用しないことを除いては同一に実施する。
【0147】
最初の方法によれば、前述した化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物とをブレンドした後、それを50〜250℃程度、特に、80〜220℃の範囲で硬化反応を実施する。次いで、酸のようなプロトン伝導体を含浸して、電解質膜を形成する。
【0148】
前記架橋性化合物としては、例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド系のうち選択された一つ以上を挙げることができる。ポリベンズイミダゾール・塩基複合体は、本出願人によって特許出願された大韓民国2007−102579号明細書に開示されたものを使用することが可能である。
【0149】
前記架橋性化合物の含有量は、化学式1のベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、例えば、5〜95質量部であることが望ましい。
【0150】
もし、架橋性化合物の含有量が5質量部未満ならば、リン酸が含浸されずにプロトン伝導性が落ち、95質量部を超過すれば、過剰リン酸の存在下で架橋体がポリリン酸に溶けてガス透過が発生して望ましくない。
【0151】
第2の方法によれば、前記化学式1で表される第1ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との混合物を利用して、膜を形成する。
【0152】
前記膜を形成する方法としては、テープキャスティング法を利用することもでき、通例的なコーティング法を利用することもできる。前記コーティング法の例としては、支持体上に、ドクターブレードを利用して前記混合物をキャスティングする方法を挙げることができる。ここで、ドクターブレードとしては、例えば、250〜500μmギャップを持つものを使用することが可能である。
【0153】
もし、前記膜を形成する過程でドクターブレードを利用したキャスティング法を利用する場合には、硬化後、酸を含浸するステップ以前に、支持体から電解質膜を分離して支持体を除去するステップがさらに行われる。このように、支持体を除去しようとする場合には、例えば、60〜80℃の蒸溜水に浸漬させる過程を経る。
【0154】
前記支持体としては、電解質膜を支持する役割を行えるものならばいずれも使用できる。支持体の例として、例えば、ガラス基板、ポリイミドフィルムなどを使用する。テープキャスティング法を利用する場合には、テープキャスティングされた膜を硬化させる前にポリエチレンテレフタレートのような支持体から分離した後、硬化のためのオーブンに入れるため支持体が不要であり、支持体を除去するステップが不要である。
【0155】
またベンゾオキサジン系モノマーとポリベンズイミダゾールとからなる混合物を利用して、膜をテープキャスティング法によって形成する場合、混合物をろ過するステップを更に経ることができる。
【0156】
このように形成された膜を熱処理して硬化反応を実施した後、それを酸のようなプロトン伝導体に含浸させて電解質膜を形成する。
【0157】
前記プロトン伝導体の非制限的な例としては、例えば、リン酸、C1〜C10有機ホスホン酸などを使用する。前記C1〜C10有機ホスホン酸の例として、例えば、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸などがある。
【0158】
前記プロトン伝導体の含有量は、電解質膜の総質量100質量部に対して、例えば、300〜1000質量部である。本実施形態で使用する酸の濃度は特別に制限されないが、リン酸を使用する場合、85質量%のリン酸水溶液を使用し、リン酸含浸時間は80℃で2.5時間〜14時間程度の範囲である。
【0159】
本発明の一実施形態に係る燃料電池用電極を利用して、燃料電池を製造する方法を説明する。
【0160】
本発明の一実施形態に係る電解質膜は、燃料電池で通例的に使われる電解質膜を使用してもよく、または、前述した化学式1のベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物間の重合結果物であるポリベンゾオキサジン系化合物の架橋体を含む電解質膜も使用できる。
【0161】
特に、電解質膜として、前記ポリベンゾオキサジン系化合物の架橋体を含む電解質膜を使用する場合、燃料電池のセル性能が極大化できる。
【0162】
前記燃料電池で通例的に使われる電解質膜としては、例えば、ポリベンズイミダゾール電解質膜、ポリベンゾオキサジン−ポリベンズイミダゾール共重合体電解質膜、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)多孔質膜などを使用できる。
【0163】
本発明の一実施形態に係る燃料電池用膜電極接合体を製造する過程を説明すれば、次の通りである。「膜電極接合体(MEA:Membrane and electrode assembly)」は、電解質膜を中心に、この両面に触媒層と拡散層とで構成された電極が積層されている構造を意味する。
【0164】
本発明の一実施形態に係るMEAは、前述した電極触媒層を備えている電極を、前記過程によって得た電解質膜の両面に配設した後、高温及び高圧で接合して形成し、それに燃料拡散層を接合して形成できる。
【0165】
このとき、前記接合のための加熱温度及び圧力は、電解質膜が軟化する温度まで加熱した状態で、例えば、0.1〜3ton/cm2、特に約1ton/cm2の圧力で加圧して実行する。
【0166】
その後、前記膜電極接合体にそれぞれバイポーラプレートを装着して、燃料電池を完成する。ここで、バイポーラプレートは、燃料供給用溝を有しており、集電体の機能を持っている。
【0167】
燃料電池は、特別にその用途が限定されるものではないが、望ましい一面によれば、高分子電解質膜燃料電池として使われる。
【0168】
本発明の一実施形態によれば、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応で得られた重合体を、電極と電解質膜の形成時にいずれも利用でき、それらの電極と電解質膜を採用した燃料電池は、発電性能が非常に改善される。
【実施例】
【0169】
以下、下記実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明が下記実施例のみに限定されるものではない。
【0170】
<合成例1:化学式8で表されるtPPO−34DFAの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、トリス(4−ヒドロキシフェニル)リン酸塩(3.0g、0.008mol)、ホルムアルデヒド(1.68g 0.053mol)及び3,4−ジフルオロアニリン(3.41g、0.026mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0171】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて、常温に冷やした。
【0172】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回の塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて、連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液を乾燥させ、溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式8で表されるtPPO−34DFAを得た。
【0173】
前記tPPO−34DFAの構造は、図4の核磁気共鳴分析スペクトルを通じて確認した。
【0174】
<合成例2:化学式9で表されるdPPO−3APの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルリン酸塩(10g、0.028mol)、ホルムアルデヒド(3.88g、0.123mol)、そして、3−アミノピリジン(5.78g、0.061mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0175】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0176】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて、連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式9で表されるdPPO−3APを得た。
【0177】
前記化合物の構造は、図5の核磁気共鳴分析スペクトルを通じて確認した。
【0178】
<合成例3:化学式10で表されるtPPO−246TFAの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、トリス(4−ヒドロキシフェニル)リン酸塩(1.5g、0.004mol)、ホルムアルデヒド(0.84g、0.0265mol)、そして、2,4,6−トリフルオロアニリン(1.94g、0.013mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0179】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0180】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式10で表されるtPPO−246TFAを得た。
【0181】
前記化合物の構造は、核磁気共鳴分析スペクトルを通じて確認した。
【0182】
<合成例4:化学式11で表されるm−PPO−34DFAの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、4−ヒドロキシフェニルジフェニルリン酸塩(1.5g、0.004mol)、ホルムアルデヒド(0.305g、0.01mol)、そして、3,4−ジフルオロアニリン(0.62g、0.005mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0183】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0184】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式11で表されるm−PPO−34DFAを得た。
【0185】
前記化合物の構造は、核磁気共鳴分析スペクトルを通じて確認した。
【0186】
<合成例5:化学式12で表されるt−PPO−aの製造>
250mlの1口の丸底フラスコに、トリス(4−ヒドロキシフェニル)リン酸塩(10g、0.027mol)、ホルムアルデヒド(5.56g、0.176mol)、そして、アニリン(8.2g、0.088mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0187】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0188】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式12で表されるt−PPO−aを得た。
【0189】
<合成例6:化学式13で表されるd−PPO−4FAの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルリン酸塩(5g、0.014mol)、ホルムアルデヒド(1.94g、0.061mol)、そして、3−フルオロアニリン(3.45g、0.031mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0190】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0191】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式13で表されるdPPO−4FAを得た。
【0192】
<合成例7:化学式14で表されるm−PPO−2APの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、4−ヒドロキシフェニルジフェニルリン酸塩(5g、0.0146mol)、ホルムアルデヒド(1.012g、0.032mol)、そして、2−アミノピリジン(1.515g、0.016mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0193】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0194】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式14で表されるm−PPO−2APを得た。
【0195】
<合成例8:化学式12で表されるt−PPO−aとポリベンズイミダゾールとの重合体の製造>
化学式12で表示されるt−PPO−a 20gとポリベンズイミダゾール10.8g、及びジメチルアセトアミドを混合して、それを約220℃範囲で硬化反応を実施して化学式12のt−PPO−aの重合体を収得した。
【0196】
前記化学式12のt−PPO−aとポリベンズイミダゾールとの重合体を固体状態にして、固体核磁気共鳴分析法(NMR)を利用して構造を確認した。その結果は図17に示した通りである。NMR分析時に使われたNMR機器は、Varian社製のVarian UnityNOVA600製品であり、600MHZを使用した。
【0197】
<合成例9:化学式14で表示されるm−PPO−2Aとポリベンズイミダゾールとの重合体の製造>
化学式12で表示されるt−PPO−aの代わりに化学式14で表されるm−PPO−2Aを使用したことを除いては、合成例8と同じ方法によって実施して、m−PPO−2APとポリベンズイミダゾールとの重合体を得ることができた。
【0198】
<参考例1:t−BuPh−aの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、t−ブチルフェノール(15g、0.1mol)、ホルムアルデヒド(6.31g、0.21mol)、そして、アニリン(10.24g、0.11mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0199】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0200】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、t−BuPh−aを得た。
【0201】
前記化合物の構造は、図6の核磁気共鳴分析スペクトルを通じて確認した。
【0202】
前記合成例1及び2によってそれぞれ得たtPPO−34DFA及びdPPO−3APと、参考例1によって得たt−BuPh−aとを、熱重量分析法を利用して熱的安定性を評価し、その結果を図1に共に示した。図1で熱重量損失は、800℃で測定したものである。
【0203】
図1を参照して、tPPO−34DFA及びdPPO−3APの熱的安定性がt−BuPh−aに比べて優秀であるということが分かった。
【0204】
<実施例1:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造>
攪拌容器にカーボンに50質量%PtCoが担持された触媒1g及び溶媒NMP 3gを付加し、それを、モルタルを利用して攪拌してスラリーを作った。前記スラリーに、前記合成例3によって得た10質量%の化学式8で表されるtPPO−34DFAのNMP溶液を付加して、化学式8の化合物0.025gになるように添加してさらに攪拌した。
【0205】
次いで、前記混合物に5質量%のフッ化ポリビニリデンのNMP溶液を付加して、フッ化ポリビニリデンが0.025gになるように添加して、10分間混合してカソード触媒層形成用スラリーを製造した。
【0206】
カーボンペーパーを4×7cm2サイズに切ってガラス板上に固定させ、ドクターブレード(Sheen instrument社製)でコーティングし、ギャップ間隔は600μmに調節した。
【0207】
前記カーボンペーパーの上部に前記カソード触媒層形成用スラリーをコーティングし、それを常温で1時間乾燥させ、80℃で1時間乾燥させ、120℃で30分乾燥させ、150℃で15分間乾燥させて、カソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、3.0mg/cm2の値を有した。
【0208】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0209】
攪拌容器に、カーボンに50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加し、それを、高速攪拌器を利用して2分間攪拌した。
【0210】
次いで、前記混合物に、フッ化ポリビニリデン0.05gをNMP1gに溶解した溶液を付加して、2分間さらに攪拌してアノード触媒層形成用スラリーを製作した。これを、微細多孔層がコーティングされたカーボンペーパー上に、バーコーターでコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.4mg/cm2の値を有した。
【0211】
これと別途に、下記化学式で表されるベンゾオキサジン系モノマーA 60質量部、下記化学式で表されるベンゾオキサジン系モノマーB 3質量部、ポリベンズイミダゾールを37質量部としてブレンドした後、それを約220℃範囲で硬化反応を実施した。
【0212】
【化42】
・・・(ベンゾオキサジン系モノマーA)
【0213】
【化43】
・・・(ベンゾオキサジン系モノマーB)
【0214】
前記化学式において、R2はフェニル基である。
【0215】
次いで、それに85質量%リン酸を80℃で4時間以上含浸して、電解質膜を形成した。ここでリン酸の含有量は、電解質膜総質量100質量部に対して約480質量部であった。
【0216】
前記過程によって完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、約2.33mg/cm2の値を有し、完成したアノードでの白金のローディング量は、1.4mg/cm2の値を有した。
【0217】
前記カソードとアノードとの間に前記電解質膜を介在させて、MEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードとは、リン酸含浸なしに使用した。
【0218】
前記カソードとアノード間のガス透過を防止するために、主ガスケット用として200μmの厚さのテフロン(登録商標)膜と、サブガスケット用として20μmの厚さのテフロン(登録商標)膜とを、電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加わる圧力は、トルクレンチを使用して調節し、1,2,3 N−mトルクまで段階的に増大させつつ組立てた。
【0219】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。このとき、リン酸をドーピングした電解質を使用するため、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に到達するまで活性化した後で最終評価した。そして、前記カソード及びアノードの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソード及びアノードの厚さは、カーボンペーパーの散布のために変化があるが、カソードの電極の厚さは約430μmであり、アノードの厚さは約390μmであった。
【0220】
<実施例2:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造>
カソードの製造時に化学式8で表されるtPPO−34DFAの代わりに、化学式9のdPPO−3APを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施してカソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
【0221】
<実施例3:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造>
カソード製造時に化学式8で表されるtPPO−34DFAの代わりに、化学式10で表されるtPPO−246TFAを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施してカソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
【0222】
<実施例4:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造>
カソード製造時に化学式8で表されるtPPO−34DFAの代わりに、化学式11で表されるm−PPO−34DFAを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施してカソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
【0223】
<比較例1:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造>
カソード製造時に化学式8で表されるtPPO−34DFAを付加しないことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施してカソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
【0224】
前記実施例2及び比較例1によって製造された燃料電池において、経時的に電圧変化を調べてセル性能を評価し、その評価結果を図2に示した。
【0225】
図2を参照すると、実施例2の燃料電池のセル性能が、比較例1の場合に比べて改善されたことが分かった。
【0226】
また前記実施例2によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧変化を調べた。その結果は、図3に示した通りである。図3において、d1、d3、d5及びd7は、それぞれ1日、3日、5日及び7日が経過した場合を示す。
【0227】
図3を参照すると、3日まで速性能向上を示しつつ、5日目にほぼ活性化過程が完了するということが分かった。このように燃料電池の作動時間が経過するとしても、燃料電池の電圧性能が優秀に維持されるということが分かった。
【0228】
前記実施例1〜4及び比較例1による燃料電池において、セル性能を調べ、結果を下記表1に示した。
【0229】
【表1】
【0230】
前記表1を参照すると、実施例1〜4の場合は、比較例1の場合と比較して物質伝達オーバー電圧が低くなり、交換電流密度が高くなった。
【0231】
これらの結果から、実施例1〜4の場合、酸素透過度がさらに高いということが分かった。一般的に、酸素透過度が高ければ、物質移動オーバー電圧が低くなり、交換電流密度が高くなる。
【0232】
また、前記表1の結果から、実施例1〜4の場合、比較例1の場合と比較して、白金利用率が高くなる。これは、実施例1〜4の電極内のリン酸流入量が、比較例1の場合と比較して多いということを意味する。
【0233】
一方、前記合成例5〜7によって製造されたt−PPO−a、d−PPO−4FA、m−PPO−2APとポリベンズイミダゾールとの重合体、t−PPO−aとポリベンズイミダゾールとの重合体を、熱重量分析法を利用して熱的安定性を評価し、その結果を図7に共に示した。図7において、熱重量損失は、800℃で測定したものである。
【0234】
図7を参照すると、前記物質の熱的安定性が優秀であるということが分かった。
【0235】
<実施例5:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造>
攪拌容器に、カーボンに50質量%のPtCoが担持された触媒1g及び溶媒NMP 3gを付加した。これを、モルタルを利用して攪拌し、スラリーを作った。前記スラリーに、前記合成例1によって得たtBuPh−4FAのNMP溶液を付加して、tBuPh−4FA 0.025gになるように添加してさらに攪拌した。
【0236】
次いで、前記混合物に5質量%のフッ化ポリビニリデンのNMP溶液を付加して、フッ化ポリビニリデンが0.025gになるように添加し、10分間混合してカソード触媒層形成用スラリーを製造した。
【0237】
カーボンペーパーを4×7cm2サイズに切ってガラス板上に固定させて、ドクターブレードでコーティングし、ギャップ間隔は600μmに調節した。
【0238】
前記カーボンペーパーの上部に前記カソード触媒層形成用スラリーをコーティングし、それを常温で1時間乾燥させ、80℃で1時間乾燥させ、120℃で30分乾燥させ、150℃で15分間乾燥させて、カソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、2.32mg/cm2の値を有した。
【0239】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0240】
攪拌容器に、カーボンに50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加した。これを、高速攪拌器を利用して2分間攪拌した。
【0241】
次いで、前記混合物に、フッ化ポリビニリデン0.05gをNMP 1gに溶解した溶液を付加して、2分間さらに攪拌してアノード触媒層形成用スラリーを製作した。これを、微細多孔層がコーティングされたカーボンペーパー上にバーコーターでコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.44mg/cm2の値を有した。
【0242】
これと別途に、合成例5によって得た化学式13のt−PPO−a 65質量部、ポリベンズイミダゾール(PBI)35質量部をブレンドした後、それを約220℃範囲で硬化反応を実施した。
【0243】
次いで、それに85質量%リン酸を80℃で4時間以上含浸して電解質膜を形成した。ここでリン酸の含有量は、電解質膜総質量100質量部に対して、約530質量部であった。
【0244】
前記カソードとアノードとの間に、前記電解質膜を介在させたMEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードとは、リン酸含浸なしに使用した。
【0245】
前記カソードとアノード間のガス透過を防止するために、主ガスケット用として200μmの厚さのテフロン(登録商標)膜と、サブガスケット用として20μmの厚さのテフロン(登録商標)膜を、電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加わる圧力は、トルクレンチを使用して調節し、1,2,3 N−mトルクまで段階的に増大させつつ組立てた。
【0246】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。この時、リン酸をドーピングした電解質を使用するため、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に到達するまでエージングした後、最終評価した。そして、前記カソード及びアノードの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソード及びアノードの厚さは、カーボンペーパーの散布によって変化があったが、カソードの電極の厚さは約430μmであり、アノードの厚さは約390μmであった。
【0247】
<実施例6:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造>
電解質膜の製造時、化学式13のt−PPO−aの代わりに化学式14のd−PPO−4FAを使用したことを除いては、実施例5と同じ方法によって実施して、燃料電池用電解質膜及び燃料電池を製作した。
【0248】
<実施例7:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造>
電解質膜の製造時、化学式13のt−PPO−aの代わりに化学式15のm−PPO−2APを使用したことを除いては、実施例5と同じ方法によって実施して、燃料電池用電解質膜及び燃料電池を製作した。
【0249】
前記実施例5〜7によって形成された電解質膜において、温度による伝導度特性を調べ、その結果を図8に示した。
【0250】
図8を参照すると、実施例5〜7の電解質膜は、PBIを使用した場合と比較して、伝導度が向上したということが分かる。
【0251】
<実施例8:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造>
電解質膜の製造時、化学式13のt−PPO−a代わりに化学式9のt−PPO−34DFAを使用したことを除いては、実施例5と同じ方法によって実施して、燃料電池用電解質膜及び燃料電池を製作した。
【0252】
前記実施例5〜8によってそれぞれ製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を調べ、その結果をそれぞれ図9〜12に示した。
【0253】
図9において、d0は、それぞれ電池の組み立て直後、電流密度による電圧特性を測定した場合を示し、d2、d4、d6は、それぞれ2日、4日、6日が経過した場合を示す。
【0254】
これを参照すれば、実施例5〜8によって製造された燃料電池は、セル電圧特性に優れることが分かった。
【0255】
一方、前記実施例5による燃料電池において、経時的なセル電圧変化を調べ、その結果を図13に示した。図13で、「◆OCV」は、開放回路電圧を表し、「▲0.2A/cm2」は、電流密度0.2A/cm2でのセル電圧を表す。
【0256】
図13から、実施例5の燃料電池は、4500時間までは電圧降下がほとんどないということが分かった。
【0257】
前記実施例5による燃料電池の加速寿命特性を調べ、それを図14に示した。ここで、加速寿命は、電流を0から1A/cm2まで1時間に一回サイクリングする方法によって評価した。この燃料電池の加速寿命は、図15のPBI膜を利用した燃料電池の加速寿命と比較された。ここで、PBI膜を利用した燃料電池は、カソード及びアノードは実施例5と同じ方法で製造され、膜をPBIとして使用する方法によって製作された。
【0258】
図14及び図15を参照して、実施例5の燃料電池は、図16のPBI膜を利用した場合と比較して加速寿命が顕著に改善されたことが確認できる。
【0259】
<実施例9:燃料電池の製作>
攪拌容器に、カーボンに50質量%PtCoが担持された触媒1g及び溶媒NMP 3gを付加した。これを、モルタルを利用して攪拌して、スラリーを作った。前記スラリーに、10質量%の化学式12で表されるt−PPO−aのNMP溶液を付加して、化学式12の化合物0.025gになるように添加してさらに攪拌した。
【0260】
次いで、前記混合物に、5質量%のフッ化ポリビニリデンのNMP溶液を、フッ化ポリビニリデンが0.025gになるように添加して10分間混合し、カソード触媒層形成用スラリーを製造した。
【0261】
カーボンペーパーを4×7cm2サイズに切ってガラス板上に固定してドクターブレードでコーティングし、ギャップ間隔は600μmに調節した。
【0262】
前記カーボンペーパーの上部に前記カソード触媒層形成用スラリーをコーティングし、それを常温で1時間乾燥させ、80℃で1時間乾燥させ、120℃で30分乾燥させ、150℃で15分間乾燥させてカソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、2.1mg/cm2の値を有した。
【0263】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0264】
攪拌容器に、カーボンに、50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加し、それを、高速攪拌器を利用して2分間攪拌した。
【0265】
次いで、前記混合物に、フッ化ポリビニリデン0.05gをNMP 1gに溶解した溶液を付加し、2分間さらに攪拌してアノード触媒層形成用スラリーを製作する。これを、微細多孔層がコーティングされたカーボンペーパー上にバーコーターでコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.34mg/cm2の値を有した。
【0266】
これと別途に、化学式13のd−PPO−4FA 65質量部、ポリベンズイミダゾール(PBI)35質量部をブレンドした後、それを約220℃範囲で硬化反応を実施した。
【0267】
次いで、それに85質量%リン酸を80℃で4時間以上含浸して、電解質膜を形成した。ここでリン酸の含有量は、電解質膜総質量100質量部に対して約472質量部であった。
【0268】
前記カソードとアノードとの間に、前記電解質膜を介在させてMEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードとはリン酸含浸なしに使用した。
【0269】
前記カソードとアノード間のガス透過を防止するために、主ガスケット用として200μmの厚さのテフロン(登録商標)膜と、サブガスケット用として20μmの厚さのテフロン(登録商標)膜とを、電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加わる圧力はトルクレンチを使用して調節し、1,2,3 N−mトルクまで段階的に増大させつつ組立てた。
【0270】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。この時、リン酸をドーピングした電解質を使用するため、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に到達するまでエージングした後に最終評価した。そして、前記カソード及びアノードの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソード及びアノードの厚さは、カーボンペーパーの散布のために変化があるが、カソードの電極の厚さは約430μmであり、アノードの厚さは約390μmであった。
【0271】
<比較例2:燃料電池の製作>
カソードの製造時、化学式12で表されるt−PPO−aを使用せず、電解質膜としてポリベンズイミダゾール(PBI)膜を使用したことを除いては、実施例9と同じ方法によって燃料電池を製作した。
【0272】
前記実施例9及び比較例2によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を調べ、その結果を図16に示した。
【0273】
図16を参照して、実施例9によって製造されたMEAの性能が、比較例2の場合と比較して改善されるということが分かった。
【0274】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0275】
本発明は、燃料電池関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0276】
【図1】合成例1及び2によってそれぞれ得たtPPO−34DFA及びdPPO−3APと参考例1によって得たt−BuPh−aの熱重量分析結果を示すグラフ図である。
【図2】実施例2及び比較例1によって製造された燃料電池において、経時的な電圧変化を示すグラフ図である。
【図3】実施例2によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧変化を示すグラフ図である。
【図4】合成例1によって得たtPPO−34DFAの核磁気共鳴分析スペクトルを示すグラフ図である。
【図5】合成例2によって得た化学式10で表示されるdPPO−3APの核磁気共鳴分析スペクトルを示すグラフ図である。
【図6】参考例1によって得たt−BuPh−aの核磁気共鳴分析スペクトルを示すグラフ図である。
【図7】本発明の一実施例により製造されたt−PPO−a、d−PPO−4FA、m−PPO−2APとポリベンズイミダゾールとの重合体、t−PPO−aとポリベンズイミダゾールとの重合体に対する熱重量分析法を利用した熱的安定性評価結果を示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施例5〜7によって形成された電解質膜において、温度による伝導度特性を示したグラフ図である。
【図9】本発明の実施例5によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧変化を示すグラフ図である。
【図10】本発明の実施例6によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧変化を示すグラフ図である。
【図11】本発明の実施例7によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧変化を示すグラフ図である。
【図12】本発明の実施例8によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧変化を示すグラフ図である。
【図13】本発明の実施例5によって製造された燃料電池において、経時的なセル電圧変化を示すグラフ図である。
【図14】本発明の実施例5による燃料電池の加速寿命特性を示すグラフ図である。
【図15】PBI膜を利用した燃料電池の加速寿命を示すグラフ図である。
【図16】本発明の実施例9及び比較例2によって製造された燃料電池において、電流密度による電池電圧特性を示すグラフ図である。
【図17】本発明の一合成例による化学式12のt−PPO−aとポリベンズイミダゾールとの重合体の固体核磁気共鳴分析スペクトルを示すグラフ図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン含有ベンゾオキサジン系モノマー、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体、燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜および燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質として高分子電解質膜を使用した燃料電池は、動作温度が比較的低温であると同時に小型化が可能であるため、電気自動車や家庭用分散発電システムの電源として期待されている。高分子電解質膜燃料電池に使われる高分子電解質膜としては、ナフィオン(登録商標)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー膜が使われている。
【0003】
しかし、このタイプの高分子電解質膜がプロトン伝導を発現するためには、水分が必要なために、加湿が必要である。また、電池システム効率を高めるために100℃以上の温度での高温運転が要求されるが、この温度では、電解質膜内の水分が蒸発して枯渇し、固体電解質としての機能を失ってしまうという問題がある。
【0004】
これら従来の技術に起因する問題を解決するために、無加湿でありつつ100℃以上の高温で作動可能な無加湿電解質膜が開発されている。例えば、特許文献1には、無加湿電解質膜の構成材料として、リン酸がドーピングされたポリベンズイミダゾールなどの材料が開示されている。
【0005】
また、パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー膜を利用した低温作動電池では、電極、特にカソードでの発電によって生成された水(生成水)による電極内でのガス拡散不良を防止するために、撥水材であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を混合して、疎水性を付与した電極が多用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
一方、高温無加湿電解質のリン酸を維持するポリベンズイミダゾール(PBI)を電解質膜に使用した燃料電池では、電極と膜界面の接触を良好にするために、液相のリン酸を電極に含浸させることが試みられ、金属触媒のローディング含有量を高める試みが行われた。しかしながら、十分の特性を引出すとはいえない状況であり、改善の余地が多い。
【0007】
また、リン酸がドーピングされた固体高分子電解質を利用する場合には、カソードに空気を供給する場合、最適化した電極造成を使用するとしても1週間ほどの活性化時間が要求される。これは、カソードの空気を酸素に代替することによって、性能向上はもとより活性化時間を短縮することはできるが、商用化を考慮すれば望ましくない。そして、前記PBIを利用したホモポリマー電解質膜は、高温での機械的特性及び化学的安定性、リン酸保液能力が満足すべきレベルに到達できず、改善の余地が多い。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5525436号明細書
【特許文献2】特開平05−283082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、耐熱性及び耐リン酸性に優れた、新規かつ改良されたリン含有ベンゾオキサジン系モノマー、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体、燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜および燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、下記化学式1で表される、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーが提供される。
【0011】
【化1】
・・・(化学式1)
【0012】
前記化学式1において、R1及びR2は、互いに独立的にC1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基または下記構造式1で表示される置換基である。
【0013】
【化2】
・・・(構造式1)
【0014】
前記構造式1において、R3は、互いに独立的に水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化したC6〜C20アリール基、ハロゲン化したC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化したC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、またはハロゲン化したC1〜C20ヘテロ環基である。
【0015】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、下記化学式2〜化学式4で表される化合物のうち選択された一つ以上であってもよい。
【0016】
【化3】
・・・(化学式2)
【0017】
【化4】
・・・(化学式3)
【0018】
前記化学式3において、R2は、C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基、C6〜C10アリール基、またはC6〜C10アリールオキシ基である。
【0019】
【化5】
・・・(化学式4)
【0020】
前記化学式4において、R4及びR5は、C6〜C10アリール基である。
【0021】
また、前記化学式2〜化学式4において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【0022】
【化6】
【0023】
前記化学式3で表される化合物は、下記化学式5及び化学式6で表される化合物の中から選択された一つであってもよい。
【0024】
【化7】
・・・(化学式5)
【0025】
【化8】
・・・(化学式6)
【0026】
前記化学式5及び化学式6において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【0027】
【化9】
【0028】
前記化学式4で表される化合物は、下記化学式7で表される化合物であってもよい。
【0029】
【化10】
・・・(化学式7)
【0030】
ここで、前記化学式7において、R3は、下記構造式で表される置換基の中から選択される。
【0031】
【化11】
【0032】
前記モノマーは、下記化学式8〜化学式14で表される化合物の中から選択された一つであってもよい。
【0033】
【化12】
・・・(化学式8)
【0034】
【化13】
・・・(化学式9)
【0035】
【化14】
・・・(化学式10)
【0036】
【化15】
・・・(化学式11)
【0037】
【化16】
・・・(化学式12)
【0038】
【化17】
・・・(化学式13)
【0039】
【化18】
・・・(化学式14)
【0040】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応生成物、または、上記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応生成物であるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体が提供される。
【0041】
前記架橋性化合物は、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミドからなる群から選択された一つ以上であってもよい。
【0042】
前記架橋性化合物の含有量は、前記化学式1のベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、5〜95質量部であってもよい。
【0043】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、上記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む触媒層を備える、燃料電池用電極が提供される。
【0044】
前記触媒層は、触媒を含む。
【0045】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体の含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1〜65質量部であってもよい。
【0046】
前記触媒は、白金(Pt)単独;白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属を含む白金合金;または、白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属の混合物であってもよい。
【0047】
前記触媒は、触媒金属、または触媒金属と触媒金属とがカーボン系担体に担持された担持触媒であり、前記触媒金属は、白金(Pt)単独;白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属を含む白金合金;または、白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属の混合物であってもよい。
【0048】
前記触媒層は、リン酸及びC1〜C20有機ホスホン酸の中から選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含んでもよい。
【0049】
ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、FEP(fluorinated ethylenepropylene)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上のバインダーがさらに含まれていてもよい。
【0050】
前記触媒層は、触媒及びバインダーをさらに含み、前記バインダーは、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、FEP、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上であり、前記バインダーの含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1〜50質量部であってもよい。
【0051】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、上記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む燃料電池用電解質膜が提供される。
【0052】
前記電解質膜は、リン酸及びC1〜C20有機ホスホン酸のうち選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含んでもよい。
【0053】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、カソードと、アノードと、前記カソードおよび前記アノードの間に介在された電解質膜と、を備え、前記カソード及びアノードの中から選択された一つ以上は、上記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体及び触媒を含む触媒層を備える電極である燃料電池が提供される。
【0054】
前記電解質膜は、下記化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応生成物、または下記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応生成物であるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む電解質膜であってもよい。
【0055】
【化19】
・・・(化学式1)
【0056】
前記化学式1において、R1及びR2は、互いに独立的にC1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基または下記構造式1で表示される置換基である。
【0057】
【化20】
・・・(構造式1)
【0058】
前記構造式1において、R3は、互いに独立的に水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化したC6〜C20アリール基、ハロゲン化したC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化したC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、またはハロゲン化したC1〜C20ヘテロ環基である。
【0059】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、カソードと、アノードと、前記カソードおよび前記アノードの間に介在され、上記燃料電池用電解質膜を含む燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、耐熱性及び耐リン酸性に優れたリン含有ベンゾオキサジン系モノマー、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体、燃料電池用電極、燃料電池用電解質膜および燃料電池を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0062】
本発明の一実施形態に係るリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、下記化学式1で表される。
【0063】
【化21】
・・・(化学式1)
【0064】
前記化学式1において、R1及びR2は、例えば、互いに独立的にC1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基または下記構造式1で表示される置換基である。
【0065】
【化22】
・・・(構造式1)
【0066】
前記構造式1において、R3は、例えば、互いに独立的に水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化したC6〜C20アリール基、ハロゲン化したC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化したC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、またはハロゲン化したC1〜C20ヘテロ環基である
【0067】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、例えば、下記化学式2〜化学式4で表される化合物のうち選択された一つ以上である。
【0068】
【化23】
・・・(化学式2)
【0069】
【化24】
・・・(化学式3)
【0070】
前記化学式3において、R2は、C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基、C6〜C10アリール基、またはC6〜C10アリールオキシ基である。
【0071】
【化25】
・・・(化学式4)
【0072】
前記化学式4において、R4及びR5は、C6〜C10アリール基である。
【0073】
前記化学式2〜化学式4において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【0074】
【化26】
【0075】
本発明の一実施形態に係るリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、前記化学式2〜化学式4から分かるように、R3が、フッ素が置換されたフェニル基である場合、フッ素含有ベンゾオキサジン系システムにリン官能基を導入することで、フッ素含有高分子が持つ長所である優秀な酸素透過度、耐熱性及び耐リン酸性を具現できる。そして、この化合物は、リン酸と類似した構造を持つことによって、気相(燃料ガスまたは酸化ガス)−液相(リン酸)−固相(触媒)の三相界面の互換性も高めることができる。
【0076】
前記化学式3で表示される化合物の例として、例えば、下記化学式5または化学式6で表される化合物を挙げることができる。
【0077】
【化27】
・・・(化学式5)
【0078】
【化28】
・・・(化学式6)
【0079】
前記化学式5及び6において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【0080】
【化29】
【0081】
また、前記化学式4で表示される化合物の一例として、例えば、下記化学式7で表される化合物を挙げることができる。
【0082】
【化30】
・・・(化学式7)
【0083】
ここで、前記化学式7において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【0084】
【化31】
【0085】
本実施形態に係るリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、特に下記化学式8〜化学式14で表される化合物の中から選択された一つであることが望ましい。
【0086】
【化32】
・・・(化学式8)
【0087】
【化33】
・・・(化学式9)
【0088】
【化34】
・・・(化学式10)
【0089】
【化35】
・・・(化学式11)
【0090】
【化36】
・・・(化学式12)
【0091】
【化37】
・・・(化学式13)
【0092】
【化38】
・・・(化学式14)
【0093】
本発明の一実施形態に係るリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、耐熱性及び耐リン酸性に優れ、電極の疎水性も所望の通りに調節することが容易であり、リン酸と類似した構造を持つことによって、気相(燃料ガスまたは酸化ガス)−液相(リン酸)−固相(触媒)の三相界面の互換性も高めることができる。
【0094】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応により得られた重合体は、燃料電池用電極の形成時に利用すれば、カソードに空気を用いながらも酸素透過度が改善され、電極内部でのリン酸(H3PO4)の湿潤能及び熱的安定性を向上させることができる。したがって、それらの電極及び電解質膜を採用した燃料電池は、高温無加湿条件下で動作可能で熱的安定性が補強されるだけではなく、改善された発電性能を発現させることができる。
【0095】
以下、本発明の一実施形態による化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの製造方法を説明する。一例として、化学式2、5〜7で表示される化合物を挙げて説明するが、他の化合物もこれと類似した方法によって合成可能である。
【0096】
下記反応式1を参照して、化学式2、5〜7で表示される化合物は、それぞれリン含有フェノール系化合物及びアミン化合物を、ホルムアルデヒドと共に溶媒なしに加熱する工程を経るか、または、溶媒を付加して還流し、それを、ワークアップ工程を経て、目的とするリン含有ベンゾオキサジン系モノマーを得ることができる。
【0097】
【化39】
・・・(反応式1)
【0098】
前記反応式1において、R3は、前述した化学式2、5〜7で定義されたところと同一にするために、以下の構造式群で表示される置換基の中から選択される。
【0099】
【化40】
【0100】
前記反応で溶媒を用いる場合、溶媒として、例えば、1,4−ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、THFなどを使用する。そして、前記加熱温度は、用いられた溶媒が還流されうる温度範囲に調節するが、望ましくは、例えば50〜90℃の範囲、特に、約80℃となるように調節することが好ましい。
【0101】
前記反応式1で用いられたリン含有フェノール系化合物は、下記反応式2に示したように、それぞれに対応する4−ベンジルオキシフェノール及び塩化ホスホリルを利用し、それにエーテル化反応及び水素化反応を順次に実施し、かつ保護及び脱保護反応を実施して、得ることができる。
【0102】
【化41】
・・・(反応式2)
【0103】
前記エーテル化反応は、その反応条件が特別に制限されるものではないが、前記反応式1に示したように、ピリジン、トリエチルアミンのような塩基存在下で還流する条件で実施できる。
【0104】
前記水素化反応は、前記反応式1に示したように、水素とPd/Cのような触媒存在下で、室温(20〜25℃)で行われるが、特別にその反応条件のみで限定されるものではない。
【0105】
本発明の一実施形態によれば、化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応結果として得ることができるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を提供する。
【0106】
前記重合体は、ベンゾオキサジン系モノマーを溶媒に溶解し、それを熱処理して重合反応を実施し、得ることができる。この時、熱処理温度は、例えば180〜250℃である。もし、熱処理温度が前記範囲未満ならば、重合反応の反応性が低下する恐れがあり、前記範囲を超過すれば、副反応物質が生成されて生成物の収率が減少する恐れがある。
【0107】
前記反応時において、必要な場合には、例えば重合触媒などを使用することが可能である。
【0108】
前記溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用し、その含有量は、ベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、例えば、0.05〜65質量部であることが望ましい。もし、溶媒の含有量が0.05質量部未満ならば、膜の剛性確保が容易でない恐れがあり、65質量部を超過すれば、成膜性が低下する恐れがある。
【0109】
また、本発明の一実施形態によれば、化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物間の重合反応結果として得ることができるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を提供できる。
【0110】
前記架橋性化合物の非制限的な例として、例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミドからなる群から選択された一つ以上を挙げることができる。
【0111】
前記架橋性化合物の含有量は、化学式1のベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、例えば5〜95質量部であることが望ましい。
【0112】
上記化学式で示されたアルキル基の具体的な例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、iso−アミル、ヘキシルなどを挙げることができ、前記アルキル基のうち一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ハロゲン原子に置換されたC1〜C20のアルキル基(例:CCF3、CHCF2、CH2F、CCl3など)、ヒドロキシ、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、リン酸やその塩、またはC1〜C20のアルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C1〜C20のヘテロアリール基、C6〜C20のアリール基、C6〜C20のアリールアルキル基、C6〜C20のヘテロアリール基、またはC6〜C20のヘテロアリールアルキル基に置換されてもよい。
【0113】
上記化学式で示されたアルコキシ基の具体的な例として、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどがあり、アルコキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0114】
上記化学式で示されたアルキル基は、単独または組み合わせて用いられ、一つ以上の環を含む炭素原子数6〜20個の芳香族炭素環システムを意味し、前記環は、ペンダント方法で共に取り付けられるか、または縮合されてもよい。上記化学式で示されたアリールという用語は、例えば、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルのような芳香族ラジカルを含む。前記アルキル基は、例えば、ハロアルキレン、ニトロ、シアノ、アルコキシ及び低級アルキルアミノのような置換基を持つことができる。また、前記アルキル基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0115】
上記化学式で示されたアリールオキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0116】
上記化学式で示されたヘテロアリール基は、例えば、N、O、PまたはSの中から選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである炭素数1〜20の1価単環式または二環式芳香族2価有機化合物を意味する。前記ヘテロアリールの例としては、例えば、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリルなどがある。
【0117】
前記ヘテロアリール基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0118】
上記化学式で示されたヘテロアリールオキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0119】
上記化学式で示されたシクロアルキル基は、シクロヘキシル基のように例えば5〜10個の炭素原子で構成された環基(環状の置換基)を意味し、前記シクロアルキル基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じ置換基に置換できる。
【0120】
上記化学式で示されたヘテロ環基は、例えば、窒素、硫黄、リン、酸素のようなヘテロ原子を含有している5〜10原子からなる環基を意味し、それらのヘテロ環基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同じく置換できる。
【0121】
本発明の一実施形態によれば、また、前述した化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を提供する。
【0122】
前記重合体は、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーを溶媒に溶解し、それを熱処理して重合反応を実施して得ることができる。この時、熱処理温度は、例えば180〜250℃である。もし、熱処理温度が前記範囲未満ならば、重合反応の反応性が低下する恐れがあり、前記範囲を超過すれば、副反応物質が生成されて生成物の収率が減少する恐れがある。
【0123】
前記反応時において、必要な場合には、例えば重合触媒などを使用可能である。
【0124】
前記溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用し、その含有量は、ベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、例えば、5〜30質量部であることが望ましい。
【0125】
本発明の一実施形態に係る燃料電池用電極は、前述した化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応、または化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応で得られたリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む触媒層を備える。
【0126】
ここで、前記触媒層は、触媒を含む。
【0127】
前記化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体は、電極のバインダーとして使用することが可能であり、特に、結合剤の役割を果たすことが可能であるため、統合的な結合剤なしでも電極構成が可能である。
【0128】
前記化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体は、リン酸湿潤性を向上させる物質であり、その含有量は、触媒100質量部を基準として、例えば、0.1〜65質量部であることが望ましい。
【0129】
もし、化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体の含有量が0.1質量部未満ならば、電極の湿潤状態を改善するのに不十分であり、65質量部を超過すれば、成膜性が低下して望ましくない。
【0130】
前記触媒としては、例えば、白金(Pt)単独、もしくは、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属と白金との合金あるいは混合物を使用するか、または、これら金属がカーボン系担体に担持された担持触媒を使用することが可能である。特に、白金(Pt)、白金コバルト(PtCo)及び白金ルテニウム(PtRu)からなる群から選択された一つ以上の触媒金属、または前記触媒金属がカーボン系担体に担持された担持触媒を使用することが望ましい。
【0131】
前記電極は、燃料電池電極の製造時に通例的に使用可能なバインダーをさらに含むことができる。
【0132】
前記バインダーとしては、例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体及びパーフルオロエチレンからなる群から選択された一つ以上を使用し、バインダーの含有量は、触媒100質量部を基準として、例えば、0.1〜50質量部であることが望ましい。もし、バインダーの含有量が0.1質量部未満ならば、電極の接着力が落ちて触媒層の形態維持が難しくなり、50質量部を超過すれば、電極内の電気抵抗が高くなって望ましくない。
【0133】
一方、本発明の一実施形態に係る電解質膜は、前記化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合結果物、または前記化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物間の重合結果物であるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含有する。
【0134】
前記化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、分子内、分子間水素結合を極大化させることができる−P=O官能基を含有している構造を有しており、これを利用すれば、構造的剛性が改善された高分子を得ることができ、リン酸との構造的類似性による互換性(compatibility)も向上する。
【0135】
前記架橋性化合物の非制限的な例として、例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド系のうち選択された一つ以上を挙げることができる。ポリベンズイミダゾール・塩基複合体は、本出願人の韓国特許出願2007−102579号明細書に開示されたものを使用することが可能である。
【0136】
ポリベンズイミダゾール・塩基複合体における塩基は、弱塩基であることが望ましい。この塩基は、望ましくは、例えば、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸水素カリウム(KHCO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ルビジウム(Rb2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、炭酸アンモニウム((NH4)2CO3)、炭酸水素アンモニウム((NH4)HCO3)からなる群から選択された一つ以上の炭酸塩を使用する。また、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体におけるポリベンズイミダゾールとして、例えば、ポリ[2,2’−(m−フェニレン)−5,5’−ビベンズイミダゾール](PBI)またはポリ(2,5−ベンズイミダゾール)(ABPBI)等を使用することが可能である。上述のポリベンズイミダゾールを、有機溶媒に溶解させたポリベンズイミダゾール溶液に、上記塩基を付加し、これを熱処理する過程を経る。このような熱処理過程を経た結果物をろ過すれば、目的とするポリベンズイミダゾール−塩基複合体を得ることができる。
【0137】
本発明の一実施形態によれば、前記架橋性化合物がポリベンズイミダゾールまたはポリベンズイミダゾール・塩基複合体である場合、電解質膜は、熱硬化性樹脂であるポリベンゾオキサジンを、熱可塑性のポリベンズイミダゾールまたはポリベンズイミダゾール・塩基複合体と硬化させて得た生成物であるポリベンゾオキサジン系化合物の架橋体から形成される。
【0138】
前記本発明の一実施形態に係る電解質膜は、耐熱性が優秀なポリベンゾオキサジン系化合物の架橋体から構成されており、高い作動温度でも機械的、化学的安定性に優れ、耐久性が確保されて長期寿命特性が向上する。
【0139】
前述した燃料電池用電極を製造する方法を説明すれば、次の通りである。
【0140】
まず溶媒に触媒を分散して、分散液を得る。この時、溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、(DMAc)などを使用し、その含有量は、触媒100質量部を基準として、例えば、100〜1000質量部である。
【0141】
前記分散液に、前記化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと溶媒とを含む混合物を付加及び混合して、攪拌する。前記混合物には、バインダーがさらに含まれうる。
【0142】
前記溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを使用する。
【0143】
前記混合物をカーボン支持体の表面にコーティングして、電極を完成する。ここで、カーボン支持体は、ガラス基板上に固定させた方が、コーティング作業が容易となる。そして、前記コーティング方法としては特別に制限されないが、例えば、ドクターブレードを利用したコーティング、バーコーティング、スクリーンプリンティングなどの方法を利用できる。
【0144】
前記混合物をコーティング後に乾燥させる過程を経るが、溶媒を除去する過程を、例えば20〜150℃の温度範囲で実施する。そして、乾燥時間は、乾燥温度によって変わり、例えば10〜60分の範囲内で実施する。
【0145】
前述した製造過程から分かるように、最終的に得られた燃料電池用電極は、化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーではなくその重合体を含有しているが、化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応は、前述した乾燥過程及び/又は電極を備えた電池の作動中に進行し、その重合体に転換される。一方、本実施形態に係る燃料電池は、電解質膜形成材料及び/又は電極形成材料を最適化して、それらから形成された電池のセル性能を極大化させる。
【0146】
以下、本発明の一実施形態に係る電解質膜及びその製造方法を説明する。以下では、架橋性化合物を使用した場合について説明するが、化学式1のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーのみで重合反応をする場合には、架橋性化合物を使用しないことを除いては同一に実施する。
【0147】
最初の方法によれば、前述した化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物とをブレンドした後、それを50〜250℃程度、特に、80〜220℃の範囲で硬化反応を実施する。次いで、酸のようなプロトン伝導体を含浸して、電解質膜を形成する。
【0148】
前記架橋性化合物としては、例えば、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド系のうち選択された一つ以上を挙げることができる。ポリベンズイミダゾール・塩基複合体は、本出願人によって特許出願された大韓民国2007−102579号明細書に開示されたものを使用することが可能である。
【0149】
前記架橋性化合物の含有量は、化学式1のベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、例えば、5〜95質量部であることが望ましい。
【0150】
もし、架橋性化合物の含有量が5質量部未満ならば、リン酸が含浸されずにプロトン伝導性が落ち、95質量部を超過すれば、過剰リン酸の存在下で架橋体がポリリン酸に溶けてガス透過が発生して望ましくない。
【0151】
第2の方法によれば、前記化学式1で表される第1ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との混合物を利用して、膜を形成する。
【0152】
前記膜を形成する方法としては、テープキャスティング法を利用することもでき、通例的なコーティング法を利用することもできる。前記コーティング法の例としては、支持体上に、ドクターブレードを利用して前記混合物をキャスティングする方法を挙げることができる。ここで、ドクターブレードとしては、例えば、250〜500μmギャップを持つものを使用することが可能である。
【0153】
もし、前記膜を形成する過程でドクターブレードを利用したキャスティング法を利用する場合には、硬化後、酸を含浸するステップ以前に、支持体から電解質膜を分離して支持体を除去するステップがさらに行われる。このように、支持体を除去しようとする場合には、例えば、60〜80℃の蒸溜水に浸漬させる過程を経る。
【0154】
前記支持体としては、電解質膜を支持する役割を行えるものならばいずれも使用できる。支持体の例として、例えば、ガラス基板、ポリイミドフィルムなどを使用する。テープキャスティング法を利用する場合には、テープキャスティングされた膜を硬化させる前にポリエチレンテレフタレートのような支持体から分離した後、硬化のためのオーブンに入れるため支持体が不要であり、支持体を除去するステップが不要である。
【0155】
またベンゾオキサジン系モノマーとポリベンズイミダゾールとからなる混合物を利用して、膜をテープキャスティング法によって形成する場合、混合物をろ過するステップを更に経ることができる。
【0156】
このように形成された膜を熱処理して硬化反応を実施した後、それを酸のようなプロトン伝導体に含浸させて電解質膜を形成する。
【0157】
前記プロトン伝導体の非制限的な例としては、例えば、リン酸、C1〜C10有機ホスホン酸などを使用する。前記C1〜C10有機ホスホン酸の例として、例えば、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸などがある。
【0158】
前記プロトン伝導体の含有量は、電解質膜の総質量100質量部に対して、例えば、300〜1000質量部である。本実施形態で使用する酸の濃度は特別に制限されないが、リン酸を使用する場合、85質量%のリン酸水溶液を使用し、リン酸含浸時間は80℃で2.5時間〜14時間程度の範囲である。
【0159】
本発明の一実施形態に係る燃料電池用電極を利用して、燃料電池を製造する方法を説明する。
【0160】
本発明の一実施形態に係る電解質膜は、燃料電池で通例的に使われる電解質膜を使用してもよく、または、前述した化学式1のベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物間の重合結果物であるポリベンゾオキサジン系化合物の架橋体を含む電解質膜も使用できる。
【0161】
特に、電解質膜として、前記ポリベンゾオキサジン系化合物の架橋体を含む電解質膜を使用する場合、燃料電池のセル性能が極大化できる。
【0162】
前記燃料電池で通例的に使われる電解質膜としては、例えば、ポリベンズイミダゾール電解質膜、ポリベンゾオキサジン−ポリベンズイミダゾール共重合体電解質膜、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)多孔質膜などを使用できる。
【0163】
本発明の一実施形態に係る燃料電池用膜電極接合体を製造する過程を説明すれば、次の通りである。「膜電極接合体(MEA:Membrane and electrode assembly)」は、電解質膜を中心に、この両面に触媒層と拡散層とで構成された電極が積層されている構造を意味する。
【0164】
本発明の一実施形態に係るMEAは、前述した電極触媒層を備えている電極を、前記過程によって得た電解質膜の両面に配設した後、高温及び高圧で接合して形成し、それに燃料拡散層を接合して形成できる。
【0165】
このとき、前記接合のための加熱温度及び圧力は、電解質膜が軟化する温度まで加熱した状態で、例えば、0.1〜3ton/cm2、特に約1ton/cm2の圧力で加圧して実行する。
【0166】
その後、前記膜電極接合体にそれぞれバイポーラプレートを装着して、燃料電池を完成する。ここで、バイポーラプレートは、燃料供給用溝を有しており、集電体の機能を持っている。
【0167】
燃料電池は、特別にその用途が限定されるものではないが、望ましい一面によれば、高分子電解質膜燃料電池として使われる。
【0168】
本発明の一実施形態によれば、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応で得られた重合体を、電極と電解質膜の形成時にいずれも利用でき、それらの電極と電解質膜を採用した燃料電池は、発電性能が非常に改善される。
【実施例】
【0169】
以下、下記実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明が下記実施例のみに限定されるものではない。
【0170】
<合成例1:化学式8で表されるtPPO−34DFAの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、トリス(4−ヒドロキシフェニル)リン酸塩(3.0g、0.008mol)、ホルムアルデヒド(1.68g 0.053mol)及び3,4−ジフルオロアニリン(3.41g、0.026mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0171】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて、常温に冷やした。
【0172】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回の塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて、連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液を乾燥させ、溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式8で表されるtPPO−34DFAを得た。
【0173】
前記tPPO−34DFAの構造は、図4の核磁気共鳴分析スペクトルを通じて確認した。
【0174】
<合成例2:化学式9で表されるdPPO−3APの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルリン酸塩(10g、0.028mol)、ホルムアルデヒド(3.88g、0.123mol)、そして、3−アミノピリジン(5.78g、0.061mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0175】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0176】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて、連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式9で表されるdPPO−3APを得た。
【0177】
前記化合物の構造は、図5の核磁気共鳴分析スペクトルを通じて確認した。
【0178】
<合成例3:化学式10で表されるtPPO−246TFAの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、トリス(4−ヒドロキシフェニル)リン酸塩(1.5g、0.004mol)、ホルムアルデヒド(0.84g、0.0265mol)、そして、2,4,6−トリフルオロアニリン(1.94g、0.013mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0179】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0180】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式10で表されるtPPO−246TFAを得た。
【0181】
前記化合物の構造は、核磁気共鳴分析スペクトルを通じて確認した。
【0182】
<合成例4:化学式11で表されるm−PPO−34DFAの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、4−ヒドロキシフェニルジフェニルリン酸塩(1.5g、0.004mol)、ホルムアルデヒド(0.305g、0.01mol)、そして、3,4−ジフルオロアニリン(0.62g、0.005mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0183】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0184】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式11で表されるm−PPO−34DFAを得た。
【0185】
前記化合物の構造は、核磁気共鳴分析スペクトルを通じて確認した。
【0186】
<合成例5:化学式12で表されるt−PPO−aの製造>
250mlの1口の丸底フラスコに、トリス(4−ヒドロキシフェニル)リン酸塩(10g、0.027mol)、ホルムアルデヒド(5.56g、0.176mol)、そして、アニリン(8.2g、0.088mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0187】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0188】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式12で表されるt−PPO−aを得た。
【0189】
<合成例6:化学式13で表されるd−PPO−4FAの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルリン酸塩(5g、0.014mol)、ホルムアルデヒド(1.94g、0.061mol)、そして、3−フルオロアニリン(3.45g、0.031mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0190】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0191】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式13で表されるdPPO−4FAを得た。
【0192】
<合成例7:化学式14で表されるm−PPO−2APの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、4−ヒドロキシフェニルジフェニルリン酸塩(5g、0.0146mol)、ホルムアルデヒド(1.012g、0.032mol)、そして、2−アミノピリジン(1.515g、0.016mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0193】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0194】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、化学式14で表されるm−PPO−2APを得た。
【0195】
<合成例8:化学式12で表されるt−PPO−aとポリベンズイミダゾールとの重合体の製造>
化学式12で表示されるt−PPO−a 20gとポリベンズイミダゾール10.8g、及びジメチルアセトアミドを混合して、それを約220℃範囲で硬化反応を実施して化学式12のt−PPO−aの重合体を収得した。
【0196】
前記化学式12のt−PPO−aとポリベンズイミダゾールとの重合体を固体状態にして、固体核磁気共鳴分析法(NMR)を利用して構造を確認した。その結果は図17に示した通りである。NMR分析時に使われたNMR機器は、Varian社製のVarian UnityNOVA600製品であり、600MHZを使用した。
【0197】
<合成例9:化学式14で表示されるm−PPO−2Aとポリベンズイミダゾールとの重合体の製造>
化学式12で表示されるt−PPO−aの代わりに化学式14で表されるm−PPO−2Aを使用したことを除いては、合成例8と同じ方法によって実施して、m−PPO−2APとポリベンズイミダゾールとの重合体を得ることができた。
【0198】
<参考例1:t−BuPh−aの製造>
100mlの1口の丸底フラスコに、t−ブチルフェノール(15g、0.1mol)、ホルムアルデヒド(6.31g、0.21mol)、そして、アニリン(10.24g、0.11mol)を順に入れた後、90℃のオイルバスで混合を実施した。
【0199】
反応初期に不透明であった反応混合物が、時間が経過するにつれて(30分ほど)濃い褐色の透明なゲルタイプの物質に変化したとき、テトラヒドロフラン(THF)で反応をクエンチングさせて常温に冷やした。
【0200】
常温に冷やした粗生成物を、1N NaOH水溶液で溶媒抽出を通じて2回塩基洗浄を実施した後、脱イオン水でさらに1回洗浄を実施した。洗浄が終わった後、有機層をMgSO4で乾燥させて連続的にろ過を実施した。回転蒸発器を利用してろ液から溶媒を除去した後、精製された生成物を真空オーブンにて40℃で6時間乾燥させて、t−BuPh−aを得た。
【0201】
前記化合物の構造は、図6の核磁気共鳴分析スペクトルを通じて確認した。
【0202】
前記合成例1及び2によってそれぞれ得たtPPO−34DFA及びdPPO−3APと、参考例1によって得たt−BuPh−aとを、熱重量分析法を利用して熱的安定性を評価し、その結果を図1に共に示した。図1で熱重量損失は、800℃で測定したものである。
【0203】
図1を参照して、tPPO−34DFA及びdPPO−3APの熱的安定性がt−BuPh−aに比べて優秀であるということが分かった。
【0204】
<実施例1:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造>
攪拌容器にカーボンに50質量%PtCoが担持された触媒1g及び溶媒NMP 3gを付加し、それを、モルタルを利用して攪拌してスラリーを作った。前記スラリーに、前記合成例3によって得た10質量%の化学式8で表されるtPPO−34DFAのNMP溶液を付加して、化学式8の化合物0.025gになるように添加してさらに攪拌した。
【0205】
次いで、前記混合物に5質量%のフッ化ポリビニリデンのNMP溶液を付加して、フッ化ポリビニリデンが0.025gになるように添加して、10分間混合してカソード触媒層形成用スラリーを製造した。
【0206】
カーボンペーパーを4×7cm2サイズに切ってガラス板上に固定させ、ドクターブレード(Sheen instrument社製)でコーティングし、ギャップ間隔は600μmに調節した。
【0207】
前記カーボンペーパーの上部に前記カソード触媒層形成用スラリーをコーティングし、それを常温で1時間乾燥させ、80℃で1時間乾燥させ、120℃で30分乾燥させ、150℃で15分間乾燥させて、カソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、3.0mg/cm2の値を有した。
【0208】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0209】
攪拌容器に、カーボンに50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加し、それを、高速攪拌器を利用して2分間攪拌した。
【0210】
次いで、前記混合物に、フッ化ポリビニリデン0.05gをNMP1gに溶解した溶液を付加して、2分間さらに攪拌してアノード触媒層形成用スラリーを製作した。これを、微細多孔層がコーティングされたカーボンペーパー上に、バーコーターでコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.4mg/cm2の値を有した。
【0211】
これと別途に、下記化学式で表されるベンゾオキサジン系モノマーA 60質量部、下記化学式で表されるベンゾオキサジン系モノマーB 3質量部、ポリベンズイミダゾールを37質量部としてブレンドした後、それを約220℃範囲で硬化反応を実施した。
【0212】
【化42】
・・・(ベンゾオキサジン系モノマーA)
【0213】
【化43】
・・・(ベンゾオキサジン系モノマーB)
【0214】
前記化学式において、R2はフェニル基である。
【0215】
次いで、それに85質量%リン酸を80℃で4時間以上含浸して、電解質膜を形成した。ここでリン酸の含有量は、電解質膜総質量100質量部に対して約480質量部であった。
【0216】
前記過程によって完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、約2.33mg/cm2の値を有し、完成したアノードでの白金のローディング量は、1.4mg/cm2の値を有した。
【0217】
前記カソードとアノードとの間に前記電解質膜を介在させて、MEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードとは、リン酸含浸なしに使用した。
【0218】
前記カソードとアノード間のガス透過を防止するために、主ガスケット用として200μmの厚さのテフロン(登録商標)膜と、サブガスケット用として20μmの厚さのテフロン(登録商標)膜とを、電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加わる圧力は、トルクレンチを使用して調節し、1,2,3 N−mトルクまで段階的に増大させつつ組立てた。
【0219】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。このとき、リン酸をドーピングした電解質を使用するため、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に到達するまで活性化した後で最終評価した。そして、前記カソード及びアノードの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソード及びアノードの厚さは、カーボンペーパーの散布のために変化があるが、カソードの電極の厚さは約430μmであり、アノードの厚さは約390μmであった。
【0220】
<実施例2:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造>
カソードの製造時に化学式8で表されるtPPO−34DFAの代わりに、化学式9のdPPO−3APを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施してカソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
【0221】
<実施例3:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造>
カソード製造時に化学式8で表されるtPPO−34DFAの代わりに、化学式10で表されるtPPO−246TFAを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施してカソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
【0222】
<実施例4:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造>
カソード製造時に化学式8で表されるtPPO−34DFAの代わりに、化学式11で表されるm−PPO−34DFAを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施してカソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
【0223】
<比較例1:燃料電池用電極及びそれを利用した燃料電池の製造>
カソード製造時に化学式8で表されるtPPO−34DFAを付加しないことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施してカソード及びそれを利用した燃料電池を製造した。
【0224】
前記実施例2及び比較例1によって製造された燃料電池において、経時的に電圧変化を調べてセル性能を評価し、その評価結果を図2に示した。
【0225】
図2を参照すると、実施例2の燃料電池のセル性能が、比較例1の場合に比べて改善されたことが分かった。
【0226】
また前記実施例2によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧変化を調べた。その結果は、図3に示した通りである。図3において、d1、d3、d5及びd7は、それぞれ1日、3日、5日及び7日が経過した場合を示す。
【0227】
図3を参照すると、3日まで速性能向上を示しつつ、5日目にほぼ活性化過程が完了するということが分かった。このように燃料電池の作動時間が経過するとしても、燃料電池の電圧性能が優秀に維持されるということが分かった。
【0228】
前記実施例1〜4及び比較例1による燃料電池において、セル性能を調べ、結果を下記表1に示した。
【0229】
【表1】
【0230】
前記表1を参照すると、実施例1〜4の場合は、比較例1の場合と比較して物質伝達オーバー電圧が低くなり、交換電流密度が高くなった。
【0231】
これらの結果から、実施例1〜4の場合、酸素透過度がさらに高いということが分かった。一般的に、酸素透過度が高ければ、物質移動オーバー電圧が低くなり、交換電流密度が高くなる。
【0232】
また、前記表1の結果から、実施例1〜4の場合、比較例1の場合と比較して、白金利用率が高くなる。これは、実施例1〜4の電極内のリン酸流入量が、比較例1の場合と比較して多いということを意味する。
【0233】
一方、前記合成例5〜7によって製造されたt−PPO−a、d−PPO−4FA、m−PPO−2APとポリベンズイミダゾールとの重合体、t−PPO−aとポリベンズイミダゾールとの重合体を、熱重量分析法を利用して熱的安定性を評価し、その結果を図7に共に示した。図7において、熱重量損失は、800℃で測定したものである。
【0234】
図7を参照すると、前記物質の熱的安定性が優秀であるということが分かった。
【0235】
<実施例5:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造>
攪拌容器に、カーボンに50質量%のPtCoが担持された触媒1g及び溶媒NMP 3gを付加した。これを、モルタルを利用して攪拌し、スラリーを作った。前記スラリーに、前記合成例1によって得たtBuPh−4FAのNMP溶液を付加して、tBuPh−4FA 0.025gになるように添加してさらに攪拌した。
【0236】
次いで、前記混合物に5質量%のフッ化ポリビニリデンのNMP溶液を付加して、フッ化ポリビニリデンが0.025gになるように添加し、10分間混合してカソード触媒層形成用スラリーを製造した。
【0237】
カーボンペーパーを4×7cm2サイズに切ってガラス板上に固定させて、ドクターブレードでコーティングし、ギャップ間隔は600μmに調節した。
【0238】
前記カーボンペーパーの上部に前記カソード触媒層形成用スラリーをコーティングし、それを常温で1時間乾燥させ、80℃で1時間乾燥させ、120℃で30分乾燥させ、150℃で15分間乾燥させて、カソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、2.32mg/cm2の値を有した。
【0239】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0240】
攪拌容器に、カーボンに50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加した。これを、高速攪拌器を利用して2分間攪拌した。
【0241】
次いで、前記混合物に、フッ化ポリビニリデン0.05gをNMP 1gに溶解した溶液を付加して、2分間さらに攪拌してアノード触媒層形成用スラリーを製作した。これを、微細多孔層がコーティングされたカーボンペーパー上にバーコーターでコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.44mg/cm2の値を有した。
【0242】
これと別途に、合成例5によって得た化学式13のt−PPO−a 65質量部、ポリベンズイミダゾール(PBI)35質量部をブレンドした後、それを約220℃範囲で硬化反応を実施した。
【0243】
次いで、それに85質量%リン酸を80℃で4時間以上含浸して電解質膜を形成した。ここでリン酸の含有量は、電解質膜総質量100質量部に対して、約530質量部であった。
【0244】
前記カソードとアノードとの間に、前記電解質膜を介在させたMEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードとは、リン酸含浸なしに使用した。
【0245】
前記カソードとアノード間のガス透過を防止するために、主ガスケット用として200μmの厚さのテフロン(登録商標)膜と、サブガスケット用として20μmの厚さのテフロン(登録商標)膜を、電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加わる圧力は、トルクレンチを使用して調節し、1,2,3 N−mトルクまで段階的に増大させつつ組立てた。
【0246】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。この時、リン酸をドーピングした電解質を使用するため、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に到達するまでエージングした後、最終評価した。そして、前記カソード及びアノードの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソード及びアノードの厚さは、カーボンペーパーの散布によって変化があったが、カソードの電極の厚さは約430μmであり、アノードの厚さは約390μmであった。
【0247】
<実施例6:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造>
電解質膜の製造時、化学式13のt−PPO−aの代わりに化学式14のd−PPO−4FAを使用したことを除いては、実施例5と同じ方法によって実施して、燃料電池用電解質膜及び燃料電池を製作した。
【0248】
<実施例7:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造>
電解質膜の製造時、化学式13のt−PPO−aの代わりに化学式15のm−PPO−2APを使用したことを除いては、実施例5と同じ方法によって実施して、燃料電池用電解質膜及び燃料電池を製作した。
【0249】
前記実施例5〜7によって形成された電解質膜において、温度による伝導度特性を調べ、その結果を図8に示した。
【0250】
図8を参照すると、実施例5〜7の電解質膜は、PBIを使用した場合と比較して、伝導度が向上したということが分かる。
【0251】
<実施例8:燃料電池用電解質膜及びそれを利用した燃料電池の製造>
電解質膜の製造時、化学式13のt−PPO−a代わりに化学式9のt−PPO−34DFAを使用したことを除いては、実施例5と同じ方法によって実施して、燃料電池用電解質膜及び燃料電池を製作した。
【0252】
前記実施例5〜8によってそれぞれ製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を調べ、その結果をそれぞれ図9〜12に示した。
【0253】
図9において、d0は、それぞれ電池の組み立て直後、電流密度による電圧特性を測定した場合を示し、d2、d4、d6は、それぞれ2日、4日、6日が経過した場合を示す。
【0254】
これを参照すれば、実施例5〜8によって製造された燃料電池は、セル電圧特性に優れることが分かった。
【0255】
一方、前記実施例5による燃料電池において、経時的なセル電圧変化を調べ、その結果を図13に示した。図13で、「◆OCV」は、開放回路電圧を表し、「▲0.2A/cm2」は、電流密度0.2A/cm2でのセル電圧を表す。
【0256】
図13から、実施例5の燃料電池は、4500時間までは電圧降下がほとんどないということが分かった。
【0257】
前記実施例5による燃料電池の加速寿命特性を調べ、それを図14に示した。ここで、加速寿命は、電流を0から1A/cm2まで1時間に一回サイクリングする方法によって評価した。この燃料電池の加速寿命は、図15のPBI膜を利用した燃料電池の加速寿命と比較された。ここで、PBI膜を利用した燃料電池は、カソード及びアノードは実施例5と同じ方法で製造され、膜をPBIとして使用する方法によって製作された。
【0258】
図14及び図15を参照して、実施例5の燃料電池は、図16のPBI膜を利用した場合と比較して加速寿命が顕著に改善されたことが確認できる。
【0259】
<実施例9:燃料電池の製作>
攪拌容器に、カーボンに50質量%PtCoが担持された触媒1g及び溶媒NMP 3gを付加した。これを、モルタルを利用して攪拌して、スラリーを作った。前記スラリーに、10質量%の化学式12で表されるt−PPO−aのNMP溶液を付加して、化学式12の化合物0.025gになるように添加してさらに攪拌した。
【0260】
次いで、前記混合物に、5質量%のフッ化ポリビニリデンのNMP溶液を、フッ化ポリビニリデンが0.025gになるように添加して10分間混合し、カソード触媒層形成用スラリーを製造した。
【0261】
カーボンペーパーを4×7cm2サイズに切ってガラス板上に固定してドクターブレードでコーティングし、ギャップ間隔は600μmに調節した。
【0262】
前記カーボンペーパーの上部に前記カソード触媒層形成用スラリーをコーティングし、それを常温で1時間乾燥させ、80℃で1時間乾燥させ、120℃で30分乾燥させ、150℃で15分間乾燥させてカソード(燃料極)を製造した。完成したカソードでの白金コバルトローディング量は、2.1mg/cm2の値を有した。
【0263】
アノードとしては、下記過程によって得た電極を利用した。
【0264】
攪拌容器に、カーボンに、50質量%Ptが担持された触媒2g及び溶媒NMP 9gを付加し、それを、高速攪拌器を利用して2分間攪拌した。
【0265】
次いで、前記混合物に、フッ化ポリビニリデン0.05gをNMP 1gに溶解した溶液を付加し、2分間さらに攪拌してアノード触媒層形成用スラリーを製作する。これを、微細多孔層がコーティングされたカーボンペーパー上にバーコーターでコーティングして製作した。完成したアノードの白金ローディング量は、1.34mg/cm2の値を有した。
【0266】
これと別途に、化学式13のd−PPO−4FA 65質量部、ポリベンズイミダゾール(PBI)35質量部をブレンドした後、それを約220℃範囲で硬化反応を実施した。
【0267】
次いで、それに85質量%リン酸を80℃で4時間以上含浸して、電解質膜を形成した。ここでリン酸の含有量は、電解質膜総質量100質量部に対して約472質量部であった。
【0268】
前記カソードとアノードとの間に、前記電解質膜を介在させてMEAを製作した。ここで、前記カソードとアノードとはリン酸含浸なしに使用した。
【0269】
前記カソードとアノード間のガス透過を防止するために、主ガスケット用として200μmの厚さのテフロン(登録商標)膜と、サブガスケット用として20μmの厚さのテフロン(登録商標)膜とを、電極と電解質膜との界面に重ねて使用した。そして、MEAに加わる圧力はトルクレンチを使用して調節し、1,2,3 N−mトルクまで段階的に増大させつつ組立てた。
【0270】
温度150℃、電解質膜に対して加湿しない条件で、アノードに水素(流速:100ccm)、カソードに空気(250ccm)を流通させて発電させ、電池特性の測定を行った。この時、リン酸をドーピングした電解質を使用するため、経時的に燃料電池の性能が向上するので、作動電圧が最高点に到達するまでエージングした後に最終評価した。そして、前記カソード及びアノードの面積は、2.8×2.8=7.84cm2に固定し、カソード及びアノードの厚さは、カーボンペーパーの散布のために変化があるが、カソードの電極の厚さは約430μmであり、アノードの厚さは約390μmであった。
【0271】
<比較例2:燃料電池の製作>
カソードの製造時、化学式12で表されるt−PPO−aを使用せず、電解質膜としてポリベンズイミダゾール(PBI)膜を使用したことを除いては、実施例9と同じ方法によって燃料電池を製作した。
【0272】
前記実施例9及び比較例2によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧特性を調べ、その結果を図16に示した。
【0273】
図16を参照して、実施例9によって製造されたMEAの性能が、比較例2の場合と比較して改善されるということが分かった。
【0274】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0275】
本発明は、燃料電池関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0276】
【図1】合成例1及び2によってそれぞれ得たtPPO−34DFA及びdPPO−3APと参考例1によって得たt−BuPh−aの熱重量分析結果を示すグラフ図である。
【図2】実施例2及び比較例1によって製造された燃料電池において、経時的な電圧変化を示すグラフ図である。
【図3】実施例2によって製造された燃料電池において、電流密度によるセル電圧変化を示すグラフ図である。
【図4】合成例1によって得たtPPO−34DFAの核磁気共鳴分析スペクトルを示すグラフ図である。
【図5】合成例2によって得た化学式10で表示されるdPPO−3APの核磁気共鳴分析スペクトルを示すグラフ図である。
【図6】参考例1によって得たt−BuPh−aの核磁気共鳴分析スペクトルを示すグラフ図である。
【図7】本発明の一実施例により製造されたt−PPO−a、d−PPO−4FA、m−PPO−2APとポリベンズイミダゾールとの重合体、t−PPO−aとポリベンズイミダゾールとの重合体に対する熱重量分析法を利用した熱的安定性評価結果を示すグラフ図である。
【図8】本発明の実施例5〜7によって形成された電解質膜において、温度による伝導度特性を示したグラフ図である。
【図9】本発明の実施例5によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧変化を示すグラフ図である。
【図10】本発明の実施例6によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧変化を示すグラフ図である。
【図11】本発明の実施例7によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧変化を示すグラフ図である。
【図12】本発明の実施例8によって製造された燃料電池において、電流密度による電圧変化を示すグラフ図である。
【図13】本発明の実施例5によって製造された燃料電池において、経時的なセル電圧変化を示すグラフ図である。
【図14】本発明の実施例5による燃料電池の加速寿命特性を示すグラフ図である。
【図15】PBI膜を利用した燃料電池の加速寿命を示すグラフ図である。
【図16】本発明の実施例9及び比較例2によって製造された燃料電池において、電流密度による電池電圧特性を示すグラフ図である。
【図17】本発明の一合成例による化学式12のt−PPO−aとポリベンズイミダゾールとの重合体の固体核磁気共鳴分析スペクトルを示すグラフ図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、リン含有ベンゾオキサジン系モノマー。
【化1】
・・・(化学式1)
前記化学式1において、R1及びR2は、互いに独立的にC1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基または下記構造式1で表示される置換基であり、
【化2】
・・・(構造式1)
前記構造式1において、R3は、互いに独立的に水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化したC6〜C20アリール基、ハロゲン化したC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化したC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、またはハロゲン化したC1〜C20ヘテロ環基である。
【請求項2】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、下記化学式2〜化学式4で表される化合物のうち選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー。
【化3】
・・・(化学式2)
【化4】
・・・(化学式3)
前記化学式3において、R2は、C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基、C6〜C10アリール基、またはC6〜C10アリールオキシ基であり、
【化5】
・・・(化学式4)
前記化学式4において、R4及びR5は、C6〜C10アリール基であり、
前記化学式2〜化学式4において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【化6】
【請求項3】
前記化学式3で表される化合物は、下記化学式5及び化学式6で表される化合物の中から選択された一つであることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー。
【化7】
・・・(化学式5)
【化8】
・・・(化学式6)
前記化学式5及び化学式6において、R3は、下記構造式群で表示される置換基の中から選択される。
【化9】
【請求項4】
前記化学式4で表される化合物は、下記化学式7で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー。
【化10】
・・・(化学式7)
ここで、前記化学式7において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【化11】
【請求項5】
前記モノマーは、下記化学式8〜化学式14で表される化合物の中から選択された一つであることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー。
【化12】
・・・(化学式8)
【化13】
・・・(化学式9)
【化14】
・・・(化学式10)
【化15】
・・・(化学式11)
【化16】
・・・(化学式12)
【化17】
・・・(化学式13)
【化18】
・・・(化学式14)
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちいずれか1項に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応生成物、または、請求項1〜請求項5のうちいずれか1項に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応生成物であることを特徴とする、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体。
【請求項7】
前記架橋性化合物は、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミドからなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項6に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体。
【請求項8】
前記架橋性化合物の含有量は、前記化学式1のベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、5〜95質量部であることを特徴とする、請求項6に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体。
【請求項9】
請求項6に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む触媒層を備えることを特徴とする、燃料電池用電極。
【請求項10】
前記触媒層は、触媒を含むことを特徴とする、請求項9に記載の燃料電池用電極。
【請求項11】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体の含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1〜65質量部であることを特徴とする、請求項10に記載の燃料電池用電極。
【請求項12】
前記触媒は、
白金単独、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属を含む白金合金、または、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属の混合物
であることを特徴とする、請求項10に記載の燃料電池用電極。
【請求項13】
前記触媒は、
触媒金属、または触媒金属と触媒金属とがカーボン系担体に担持された担持触媒であり、
前記触媒金属は、
白金単独、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属を含む白金合金、または、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属の混合物
であることを特徴とする、請求項11に記載の燃料電池用電極。
【請求項14】
前記触媒層は、リン酸及びC1〜C20有機ホスホン酸の中から選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の燃料電池用電極。
【請求項15】
ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、FEP(fluorinated ethylenepropylene)、スチレンブタジエンラバー、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上のバインダーがさらに含まれることを特徴とする、請求項9に記載の燃料電池用電極。
【請求項16】
前記触媒層は、触媒及びバインダーをさらに含み、
前記バインダーは、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、FEP、スチレンブタジエンラバー、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上であり、
前記バインダーの含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1〜50質量部であることを特徴とする、請求項9に記載の燃料電池用電極。
【請求項17】
請求項6に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む燃料電池用電解質膜。
【請求項18】
前記電解質膜は、リン酸及びC1〜C20有機ホスホン酸のうち選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項19】
カソードと、
アノードと、
前記カソードおよび前記アノードの間に介在された電解質膜と、
を備え、
前記カソード及びアノードの中から選択された一つ以上は、
請求項6に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体及び触媒を含む触媒層を備える電極であることを特徴とする、燃料電池。
【請求項20】
前記電解質膜は、
下記化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応生成物、または下記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応生成物であるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む電解質膜であることを特徴とする、請求項19に記載の燃料電池。
【化19】
・・・(化学式1)
前記化学式1において、R1及びR2は、互いに独立的にC1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基または下記構造式1で表示される置換基であり、
【化20】
・・・(構造式1)
前記構造式1において、R3は、互いに独立的に水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化したC6〜C20アリール基、ハロゲン化したC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化したC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、またはハロゲン化したC1〜C20ヘテロ環基である。
【請求項21】
カソードと、
アノードと、
前記カソードおよび前記アノードの間に介在され、請求項17に記載の燃料電池用電解質膜を含むことを特徴とする、燃料電池。
【請求項1】
下記化学式1で表される、リン含有ベンゾオキサジン系モノマー。
【化1】
・・・(化学式1)
前記化学式1において、R1及びR2は、互いに独立的にC1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基または下記構造式1で表示される置換基であり、
【化2】
・・・(構造式1)
前記構造式1において、R3は、互いに独立的に水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化したC6〜C20アリール基、ハロゲン化したC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化したC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、またはハロゲン化したC1〜C20ヘテロ環基である。
【請求項2】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーは、下記化学式2〜化学式4で表される化合物のうち選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー。
【化3】
・・・(化学式2)
【化4】
・・・(化学式3)
前記化学式3において、R2は、C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基、C6〜C10アリール基、またはC6〜C10アリールオキシ基であり、
【化5】
・・・(化学式4)
前記化学式4において、R4及びR5は、C6〜C10アリール基であり、
前記化学式2〜化学式4において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【化6】
【請求項3】
前記化学式3で表される化合物は、下記化学式5及び化学式6で表される化合物の中から選択された一つであることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー。
【化7】
・・・(化学式5)
【化8】
・・・(化学式6)
前記化学式5及び化学式6において、R3は、下記構造式群で表示される置換基の中から選択される。
【化9】
【請求項4】
前記化学式4で表される化合物は、下記化学式7で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー。
【化10】
・・・(化学式7)
ここで、前記化学式7において、R3は、下記構造式群で表される置換基の中から選択される。
【化11】
【請求項5】
前記モノマーは、下記化学式8〜化学式14で表される化合物の中から選択された一つであることを特徴とする、請求項1に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマー。
【化12】
・・・(化学式8)
【化13】
・・・(化学式9)
【化14】
・・・(化学式10)
【化15】
・・・(化学式11)
【化16】
・・・(化学式12)
【化17】
・・・(化学式13)
【化18】
・・・(化学式14)
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちいずれか1項に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応生成物、または、請求項1〜請求項5のうちいずれか1項に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応生成物であることを特徴とする、リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体。
【請求項7】
前記架橋性化合物は、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズイミダゾール・塩基複合体、ポリベンズチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミドからなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項6に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体。
【請求項8】
前記架橋性化合物の含有量は、前記化学式1のベンゾオキサジン系モノマー100質量部を基準として、5〜95質量部であることを特徴とする、請求項6に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体。
【請求項9】
請求項6に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む触媒層を備えることを特徴とする、燃料電池用電極。
【請求項10】
前記触媒層は、触媒を含むことを特徴とする、請求項9に記載の燃料電池用電極。
【請求項11】
前記リン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体の含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1〜65質量部であることを特徴とする、請求項10に記載の燃料電池用電極。
【請求項12】
前記触媒は、
白金単独、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属を含む白金合金、または、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属の混合物
であることを特徴とする、請求項10に記載の燃料電池用電極。
【請求項13】
前記触媒は、
触媒金属、または触媒金属と触媒金属とがカーボン系担体に担持された担持触媒であり、
前記触媒金属は、
白金単独、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属を含む白金合金、または、
白金と、金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、スズ、モリブデン、コバルト、クロムからなる群から選択された一種以上の金属の混合物
であることを特徴とする、請求項11に記載の燃料電池用電極。
【請求項14】
前記触媒層は、リン酸及びC1〜C20有機ホスホン酸の中から選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の燃料電池用電極。
【請求項15】
ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、FEP(fluorinated ethylenepropylene)、スチレンブタジエンラバー、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上のバインダーがさらに含まれることを特徴とする、請求項9に記載の燃料電池用電極。
【請求項16】
前記触媒層は、触媒及びバインダーをさらに含み、
前記バインダーは、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、FEP、スチレンブタジエンラバー、ポリウレタンからなる群から選択された一つ以上であり、
前記バインダーの含有量は、触媒100質量部を基準として、0.1〜50質量部であることを特徴とする、請求項9に記載の燃料電池用電極。
【請求項17】
請求項6に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む燃料電池用電解質膜。
【請求項18】
前記電解質膜は、リン酸及びC1〜C20有機ホスホン酸のうち選択された一つ以上のプロトン伝導体をさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載の燃料電池用電解質膜。
【請求項19】
カソードと、
アノードと、
前記カソードおよび前記アノードの間に介在された電解質膜と、
を備え、
前記カソード及びアノードの中から選択された一つ以上は、
請求項6に記載のリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体及び触媒を含む触媒層を備える電極であることを特徴とする、燃料電池。
【請求項20】
前記電解質膜は、
下記化学式1で表されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合反応生成物、または下記化学式1で表示されるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーと架橋性化合物との重合反応生成物であるリン含有ベンゾオキサジン系モノマーの重合体を含む電解質膜であることを特徴とする、請求項19に記載の燃料電池。
【化19】
・・・(化学式1)
前記化学式1において、R1及びR2は、互いに独立的にC1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基または下記構造式1で表示される置換基であり、
【化20】
・・・(構造式1)
前記構造式1において、R3は、互いに独立的に水素、C1〜C20アルキル基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリール基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化したC6〜C20アリール基、ハロゲン化したC6〜C20アリールオキシ基、C1〜C20ヘテロアリール基、C1〜C20ヘテロアリールオキシ基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリール基、ハロゲン化したC1〜C20ヘテロアリールオキシ基、C4〜C20シクロアルキル基、ハロゲン化したC4〜C20シクロアルキル基、C1〜C20ヘテロ環基、またはハロゲン化したC1〜C20ヘテロ環基である。
【請求項21】
カソードと、
アノードと、
前記カソードおよび前記アノードの間に介在され、請求項17に記載の燃料電池用電解質膜を含むことを特徴とする、燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−68011(P2009−68011A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233675(P2008−233675)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】
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