説明

リン回収装置

【課題】シンプルな構成でリンを高効率に回収できる、リン回収装置を提供する。
【解決手段】リンを含有する原水が、内部に陽電極と陰電極が互いに独立して設置された電解反応槽に供給される。前記陽電極にはプラス電圧が、陰電極にはマイナス電圧が、電圧発生装置からそれぞれ印加される。さらに前記電解反応槽内には、マグネシウム溶液供給装置によりマグネシウムを含む溶液が供給され、原水からリン酸イオンを取り出す反応を効率的に行い、リン回収を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解反応槽を用いて原水中のリンを回収するにリン回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リンは、生体中のATP(アデノシン三リン酸)等の生活に必須な成分であり、日本国内では食品、農業等の分野で68万トン/年消費され、その全てが輸入に頼っている。これは日本国内にはリン鉱石量が無いからである。世界中のリン鉱石埋蔵量は70億トンと言われているが、現状のまま世界中で使用されていった場合、2070年頃には20億トンまで減少すると予測されており、現状輸出を制限する国も出てきている。このため、日本では、リンの入手手段として、これまでのリン鉱石輸入から、下水処理場、汚泥処理等から排出されるリンを回収することの要望が強くなってきている。
【0003】
このリンを回収する従来技術として、例えば、特許文献1で示すようなものがある。この従来技術では、リンを含む原水を電解槽内に供給し、この電解槽内に設けたリン酸透過膜に、原水中のPO42−(リン酸イオン)を通過させている。電解槽には陽電極と陰電極とが設けられ、これら陽電極と陰電極に圧を印加することにより、陽電極に+の電荷が、陰電極に−の電荷が付加される。この電荷発生に伴い、前記リン酸透過膜を透過したPO42−(リン酸イオン)が+の陽電極2に結合される。このPO42−(リン酸イオン)を含む水溶液はポンプ駆動により、次段のリン晶析反応槽内に供給される。
【0004】
次段のリン晶析反応槽内には、ポンプ駆動によりマグネシウム溶液とアルカリ溶液がそれぞれ供給される。さらに、このリン晶析反応槽内の下部にはブロアから空気が注入されるので、その上昇流で、このマグネシウムとリン酸イオンとが混合反応して、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)となる。このMAPを含むリン回収液がリン晶析反応槽の底部から水配管を介して排出回収される。また、リン回収後の脱リン処理水は、リン晶析反応槽内の上部から水配管を介して排出される。
【0005】
この装置では、電解槽内でHgやCd等、他の重金属イオンを含まないリン酸イオンが回収できることと、電解槽内でリン酸イオンを濃縮できるので、次のリン晶析反応槽での反応効率が向上するといわれている。
【特許文献1】特開2003−39081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来のリン回収においては、以下の課題がある。先ず、電解槽とリン晶析反応槽との多系列反応によるため、リン回収効率が低下する問題がある。すなわち、リン酸濃縮のための電解槽と、リン酸回収のためのリン晶析反応槽とが分離しているため、電解槽で結合したリン酸を再度離脱させる必要があり、槽数や反応経路が多数、複雑になって効率が低下する。また、電解槽内に配置した膜の劣化、目詰まりによる通水、電解処理停止の問題が生じる。すなわち、電解槽内にリン酸透過膜を配したことにより、リン酸イオンを効率的に濃縮できるものの、その膜が汚れで詰まったり、膜が電解処理で劣化したりした場合、通水や電解処理が停止する等の問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、シンプルな構成でリンを高効率に回収できる、リン回収装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるリン回収装置は、リンを含有する原水が供給され、内部に陽電極と陰電極が互いに独立して設置された電解反応槽と、前記陽電極にプラス電圧を印加し、陰電極にマイナス電圧を印加する電圧発生装置と、前記電解反応槽内にマグネシウムを含む溶液を供給するマグネシウム溶液供給装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明では、電解反応槽に対する原水供給位置を陰電極近傍に設置するとよい。
【0010】
また、本発明では、電解反応槽に対するマグネシウム溶液の供給部を陽電極近傍に設置するとよい。
【0011】
また、本発明では、電解反応槽内に、その内部を陽電極が属する領域と陰電極が属する領域とに区分する、一部が貫通した隔壁を設置するとよい。
【0012】
また、本発明では、下部に貫通部を有する隔壁と、上部に貫通部を有する隔壁とを、交互に設置してもよい。
【0013】
また、本発明では、電解反応槽内における被処理水を混合するための、回転攪拌翼を有する攪拌機、水中ポンプ、空気供給装置のいずれか又はこれらの組合せによる混合装置を設けてもよい。
【0014】
また、本発明では、混合装置を複数設け、それらの操作量を周期的に変化させる制御装置をさらに設けた構成でもよい。
【0015】
また、本発明では、電圧発生装置は、電解反応槽の陽電極と陰電極に印加する電圧の極性を反転させる極性反転装置を有るとよい。
【0016】
また、本発明では、電解反応槽内の被処理水のpHを計測するpH計を設け、この計測されたpH値に基づいて電圧発生装置から陽電極及び陰電極に印加される電圧を調整する電圧制御装置をさらに設けた構成にするとよい。
【0017】
また、本発明では、電解反応槽内への原水供給流量を計測する原水供給流量計測装置を設け、計測された原水供給流量値に基づいて、電圧発生装置から陽電極及び陰電極に印加される電圧を調整する電圧制御装置をさらに備えた構成にするとよい。
【0018】
さらに、本発明では、電解反応槽内への原水供給流量を計測する原水供給流量計測装置を設け、計測された原水供給流量値に基づいて、電解反応槽内へのマグネシウム供給量を調整するマグネシウム供給量制御装置をさらに備えた構成にするとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来のように電解槽とリン晶析反応槽との多系列反応とせずに、電解反応槽のみを用いたシンプルな構成を採用し、リンを高効率で回収できるようにして、リン回収装置としての性能を格段に向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明によるリン回収装置の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
図1はこの実施の形態によるリン回収装置の構成を説明している。図1において、32は電解反応槽で、リンを含有する原水31が水配管40により供給される。この電解反応槽32内には陽電極33と陰電極34が互いに独立して設置されている。35は電圧発生装置で、陽電極33と陰電極34とにそれぞれ接続しており、陽電極33にはプラス電圧を印加し、陰電極34にはマイナス電圧を印加する。36はマグネシウム溶液槽、37はポンプ、38は水配管で、これらは、電解反応槽32に対するマグネシウム溶液供給装置を構成する。すなわち、マグネシウム溶液槽36はマグネシウムを含む溶液を貯留しており、水配管38及びポンプ37を介して電解反応槽32内にマグネシウムを含む溶液を供給する。39はリン回収用の水配管で、電解反応槽32の下部に連結しており、電解反応槽32内からリン回収液を取り出すために用いられる。
【0022】
上記構成において、前述したように、電圧発生装置35のプラス側に陽電極33が、同マイナス側に陰電極34が各々電気的に接続されている。また、リンを含有する原水31は、水配管40を介して、図示のように、電解反応槽32の陰電極33の上部付近に供給される。また、マグネシウム溶液槽36からは、ポンプ37を有する水配管38を介して、図示のように、電解槽32の陽電極34上部付近にマグネシウム溶液が供給される。
【0023】
水配管40を介して電解槽32内に供給された原水31中には、PO42−(リン酸イオン)やNH4(アンモニウムイオン)が含まれている。また、微量のHg(水銀イオン)やCd(カドミウムイオン)等の重金属イオンが含まれている場合もある。この状態で、電圧発生装置35を駆動することにより、陽電極33の表面がプラスに荷電され、陰電極34の表面がマイナスに荷電される。従って、図2に示すように、陰電極34の表面にプラス荷電のイオンであるNH4(アンモニウムイオン)と、この他に、微量のHg(水銀イオン)やCd(カドミウムイオン)等が付着する。また、陽電極33の表面はプラスに荷電されることにより、その表面にはマイナス荷電のイオンであるPO42−(リン酸イオン)が付着する。
【0024】
次に、ポンプ37を駆動することにより、マグネシウム溶液槽36からMg(マグネシウムイオン)が陽電極33の上部に供給される。(1)式にも示すように、このMg(マグネシウムイオン)と、NH4(アンモニウムイオン)と、陽電極33表面に付着したPO42−(リン酸イオン)とが結合反応することにより、Mg(NH4)PO4(リン酸アンモニウムマグネシウム:MAPと略す)が生成する。
【0025】
Mg+ NH4+ PO42− → Mg(NH4)PO4 ・・・ (1)
このMAPが、図3に示すように、陽電極33表面に多量に付着され、余剰のMAPが水配管39を介してリン回収液41として取り出され、回収される。
【0026】
ここで、図示のように陽電極33の上部近傍にマグネシウム溶液槽36の供給ラインが接続されていると、上記(1)式の反応が促進される。また、陰電極34の上部近傍に原水31の供給ラインが接続されていると、過剰のNH4(アンモニウムイオン)を陰電極34で効率的に捕捉できる。このため、PO42−(リン酸イオン)の、陽電極33での付着効率が向上し、上記(1)式の反応が促進する。
【0027】
なお、原水31を供給する水配管40と電解反応槽32との接続位置、マグネシウム溶液槽36からの水配管38と電解槽32との接続位置は、図1の位置に限定されず、電解反応槽32のいずれの位置であってもよい。また、これらの電解反応槽32を複数個配してもよく、さらに、電極の形状、配置を変更することが可能である。
【0028】
次に、図4で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、電解反応槽32内に、隔壁50を設けている。この隔壁50は電解反応槽32の内部を、陽電極33が属する領域と陰電極34が属する領域とに区分するもので、その下部には、隔壁50の表裏を貫通するための間隙部51が設けられている。それ以外の構成は図1と同じである。
【0029】
すなわち、隔壁50は、電解反応槽32内において、陽電極33と陰電極34との中央部に配されており、底部には間隙部(貫通部)51を有している。
【0030】
上記構成において、NH4(アンモニウムイオン)とPO42−(リン酸イオン)を含む原水が、隔壁50下部の間隙部51内を介して陰電極34側からから陽電極33側へ移動される。電極部表面での反応は、以下のa,bで説明するように、前記図1〜図3の場合と同様である。
【0031】
a.陰電極34表面の反応:陰電極34の表面にプラス荷電のイオンである、NH4(アンモニウムイオン)と、その他に微量のHg(水銀イオン)やCd(カドミウムイオン)等が付着する。
【0032】
b.陽電極33表面の反応:陽電極33の表面はプラスに荷電されることにより、その表面にマイナス荷電のイオンである、PO42−(リン酸イオン)が付着される。
【0033】
これら陰電極34及び陽電極33各々の反応(a,b)は、隔壁50を設けたことによりそれぞれ促進され、効率的なリン回収が行われることとなる。
【0034】
ここで、隔壁50の形状、数、配置や、間隙部51の形状、大きさ等は、図示に限らず種々変更することができる。例えば、間隙部(貫通部)51を隔壁50の上部に設置したり、隔壁50を複数個設置して間隙部51を底部と上部と交互に配置したりする等の構成が可能である。この場合、陽電極33と陰電極34での各々の反応をさらに促進することが可能となる。
【0035】
次に、図5乃至図7で示す実施の形態を説明する。これらの実施の形態では、電解反応槽32内における被処理水を混合するための混合装置を設けたことを特徴としており、それ以外の構成は、図1又は図4の構成と同様である。
【0036】
図5の例では、混合装置として回転攪拌翼を有する攪拌機60,61を設けている。すなわち、攪拌機60は隔壁50と陰電極34との間に配置され、攪拌機61は隔壁50と陽電極33との間に配置されている。この構成において、攪拌機60を駆動することにより、隔壁50から陰電極34側の領域内が攪拌される。また、攪拌機61を駆動することにより、隔壁50から陽電極34側の領域内が攪拌される。これら攪拌により、陰電極34及び陽電極33各々の反応(前記a,b)がさらに促進される。
【0037】
混合装置としては、上述の攪拌機60,61以外にも、水中ポンプや空気供給装置等を使用してもよい。例えば、図6で示すように、水中ポンプ62、63を電解反応槽32内において各々ポンプ固定台64、65上に配置する。この場合、水中ポンプ62は隔壁50で区切られた陰電極34側の領域に配置され、水中ポンプ63は隔壁50で区切られた陽電極33側の領域に配置されている。そして、これら水中ポンプ62,63を駆動することにより、それぞれの領域内を攪拌し、陰電極34及び陽電極33各々の反応を促進することができる。
【0038】
さらに、図7に示した、ブロア、コンプレッサ、空気ボンベ等の空気供給装置66から、空気管70、散気板67を介して、隔壁50から陰電極34側の領域内に気泡を供給し、同様に空気管69、散気板68を順次介して、隔壁50から陽電極33側の領域内にも気泡を供給することにより、これら各領域内を攪拌し、陰電極34及び陽電極33各々の反応を促進することができる。
【0039】
また、前述した水中ポンプ62,63と空気供給装置66とを組み合わせて用いてもよい。
【0040】
次に、図8及び図9で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、電圧発生装置35に、出力電圧の極性を反転させる極性反転装置71を設け、電解反応槽32の陽電極33と陰電極34に印加される電圧の極性を反転させるようにした。それ以外の構成は図1と同様である。
【0041】
上記構成において、電解反応槽32では、先ず、一定時間のあいだ、前記図1〜図3で説明した運転を行う。次に、図9で示したように、極性反転装置71により電圧発生装置35からの電流を逆転させて、陰電極34表面をマイナス(−)→プラス(+)に変換し、また陽電極33表面をプラス(+)→マイナス(−)に変換させる。
【0042】
この操作により、前記反応a,bにより、電極33,34の表面に付着していたイオンが剥離される。すなわち、陰電極34表面に付着していた、プラス荷電のイオンである、NH4(アンモニウムイオン)と、その他の微量のHg(水銀イオン)やCd(カドミウムイオン)等が剥離される。また、陽電極33表面に付着していた、マイナス荷電のイオンである、Mg(NH4)PO4(MAP粒子)やPO42−(リン酸イオン)が剥離される。
【0043】
このように、各電極33,34での剥離が効率的になされることにより、MAP粒子、すなわち、リン回収の効率が向上する。
【0044】
ここで、図8では、1つの電圧発生装置35に1つの極性反転装置71を電気的に接続する構成としたが、2以上の電圧発生装置35と、陽極、陰極を混在して配置することも可能である。
【0045】
次に、図10で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、図5と同様に、電解反応槽32内に、混合装置として複数の攪拌機60,61を設け、それらの操作量を、制御装置72により周期的に変化させるように構成した。すなわち、制御装置72の出力側と攪拌装置60及び61の入力側とが電気的に接続されている。それ以外は図5の構成と同様である。
【0046】
上記構成において、攪拌機60,61は、図5の場合と同様に運転される。制御装置72は、予め、タイマにより攪拌速度を周期的に変化させるように設定している。この制御装置72を作動させることにより、一定期間毎に、攪拌装置60及び61の回転速度を高くする。この回転速度向上により、上記図8、図9の場合のように、各電極33,34に付着した各々のイオンやMAP粒子が剥離される。
【0047】
このように、攪拌装置60、61の回転速度を変化させることにより、通常運転である、電極表面へのイオンの付着やMAP粒子の結合反応と、洗浄運転であるそれらの剥離反応が効率的に実施でき、最終的には、リン回収運転の効率化が図れる。
【0048】
ここで、上記制御は攪拌機60,61だけでなく、混合装置として用いられる、図6の水中ポンプ62等の流量を増加させる運転制御や、図7の空気供給装置66の空気量を増加させる運転制御として実施できる。また、上記2つの設定値のみならず、流量に比例して設定値を制御するようにしてもよい。
【0049】
次に、図11で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、電解反応槽32内の被処理水のpHを計測するpH計35を設けると共に、このpH計35で計測されたpH値に基づいて、電圧発生装置35から陽電極33及び陰電極34に印加される電圧を調整する電圧制御装置74を設けている。すなわち、電圧制御装置74は、pH計73の出力側と、電圧発生装置35の入力側とに、それぞれ電気的に接続されている。この電圧制御装置74には、pH計73のpH計測値に対する閾値が予め設定されており、pH計測値が閾値を超えると電圧発生装置35を停止し、それ未満となると当該装置35を駆動させる、ON−OFF運転を行なう。
【0050】
上記構成において、電圧制御装置74は、pH計73のpH計測値を入力し、その計測値が予め設定された閾値を超えると電圧発生装置35を停止し、それ未満となると当該装置35を駆動させる。これは、pHはアルカリ領域で、前記(1)式で示したMAP粒子の生成反応が促進されるからである。また、電圧を掛けすぎると、水酸イオン(OH)が多く発生してそのアルカリ領域を超えてしまうからである。
【0051】
このようにpH制御を行うことにより、MAP粒子の生成反応である前記(1)式の反応が促進される。
【0052】
なお、pH値によってON−OFF制御するだけでなく、複数のpH設定値を設けpHに比例して電圧を制御してもよい。
【0053】
次に、図12で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、電解反応槽32内への原水供給流量を計測する原水供給流量計測装置(以下、流量計)75を設けると共に、計測された原水供給流量値に基づいて、電圧発生装置35から陽電極33及び陰電極34に印加される電圧を調整する電圧制御装置76をさらに備えたことを特徴とする。すなわち、流量計75の出力側と電圧制御装置76の入力側とが、また電圧制御装置76の出力側と電圧発生装置35の入力側とが、それぞれ電気的に接続されている。この電圧制御装置76は、流量計75の流量値に比例して、電圧発生装置35の電圧量を制御するように構成されている。
【0054】
上記構成において、電解反応槽32に供給される原水31の流量が増加して、リンの供給量が増加すると、電圧制御装置76は、この増加を流量計75の計測値から判断し、その流量値の増加に比例して、電圧発生装置35の電圧値を制御する。
【0055】
この結果、原水31の流量が増加して、リンの供給量が増加しても、これに比例して電圧発生装置35の電圧が増加するので、前記(1)式のMAP生成反応が安定的になされ、リン増加量に応じた反応がなされる。
【0056】
なお、上述した電圧値の比例制御のみならず、2以上の電圧設定値をステップ的に変化させる制御も可能である。
【0057】
次に、図13で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、電解反応槽32内への原水供給流量を計測する流量計75を設けると共に、計測された原水供給流量値に基づいて、電解反応槽32内へのマグネシウム供給量を調整するマグネシウム供給量制御装置77をさらに備えたことを特徴とする。すなわち、流量計75の出力側とマグネシウム供給量制御装置77の入力側とが、またマグネシウム供給量制御装置77の出力側とマグネシウム溶液供給用のポンプ37の入力側とが各々、電気的に接続されている。マグネシウム供給量制御装置77は、流量計75の流量値に比例して、ポンプ37の流量すなわちマグネシウム溶液の供給量を制御するように構成されている。
【0058】
上記構成において、電解反応槽32に供給される原水31の流量が増加して、リンの供給量が増加すると、マグネシウム供給量制御装置77は、この増加を流量計75の計測値から判断し、その流量値の増加に比例して、ポンプ37の流量すなわちマグネシウム溶液の供給量を増加させる。
【0059】
この結果、原水31の流量が増加してリンの供給量が増加しても、ポンプ37によるマグネシウム溶液の供給量を増加させることにより、前記(1)式のMAP生成反応が安定的になされ、リン増加量に応じた反応がなされる。
【0060】
なお、この場合も、上述した比例制御のみならず、2以上のマグネシウム溶液の供給量をステップ的に変化させる制御も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明によるリン回収装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】同上実施の形態における第1段階の反応を説明する図である。
【図3】同上実施の形態における第2段階の反応を説明する図である。
【図4】本発明における隔壁を設けた実施の形態を示す構成図である。
【図5】本発明における混合装置の一例である攪拌機を設けた実施の形態を示す構成図である。
【図6】本発明における混合装置の一例である水中ポンプを設けた実施の形態を示す構成図である。
【図7】本発明における混合装置の一例である空気供給装置を設けた実施の形態を示す構成図である。
【図8】本発明における極性反転装置を用いた実施の形態を示す構成図である。
【図9】同上実施の形態における反応を説明する図である。
【図10】本発明における混合装置の操作量を制御する実施の形態を示す構成図である。
【図11】本発明におけるpH計測値により印加電圧を制御する実施の形態を示す構成図である。
【図12】本発明における原水流入量により印加電圧を制御する実施の形態を示す構成図である。
【図13】本発明における原水流入量によりマグネシウム溶液の供給量を制御する実施の形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0062】
31 原水
32 電解反応槽
33 陽電極
34 陰電極
35 電圧発生装置
36 マグネシウム溶液槽
41 リン回収液
50 隔壁
51 貫通部
60 攪拌機
62 水中ポンプ
66 空気供給装置
71 極性反転装置
73 pH計
74〜76 制御装置
75 流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンを含有する原水が供給され、内部に陽電極と陰電極が互いに独立して設置された電解反応槽と、
前記陽電極にプラス電圧を印加し、陰電極にマイナス電圧を印加する電圧発生装置と、
前記電解反応槽内にマグネシウムを含む溶液を供給するマグネシウム溶液供給装置と、
を備えたことを特徴とするリン回収装置。
【請求項2】
電解反応槽に対する原水供給位置を陰電極近傍に設置したことを特徴とする請求項1記載のリン回収装置。
【請求項3】
電解反応槽に対するマグネシウム溶液の供給部を陽電極近傍に設置したことを特徴とする請求項1記載のリン回収装置。
【請求項4】
電解反応槽内に、その内部を陽電極が属する領域と陰電極が属する領域とに区分する、一部が貫通した隔壁を設置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のリン回収装置。
【請求項5】
下部に貫通部を有する隔壁と、上部に貫通部を有する隔壁とを、交互に設置したことを特徴とする請求項4に記載のリン回収装置。
【請求項6】
電解反応槽内における被処理水を混合するための、回転攪拌翼を有する攪拌機、水中ポンプ、空気供給装置のいずれか又はこれらの組合せによる混合装置を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のリン回収装置。
【請求項7】
混合装置を複数設け、それらの操作量を周期的に変化させる制御装置をさらに設けたことを特徴とする前記請求項6に記載のリン回収装置。
【請求項8】
電圧発生装置は、電解反応槽の陽電極と陰電極に印加する電圧の極性を反転させる極性反転装置を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のリン回収装置。
【請求項9】
電解反応槽内の被処理水のpHを計測するpH計を設け、この計測されたpH値に基づいて電圧発生装置から陽電極及び陰電極に印加される電圧を調整する電圧制御装置をさらに設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか記載のリン回収装置。
【請求項10】
電解反応槽内への原水供給流量を計測する原水供給流量計測装置を設け、計測された原水供給流量値に基づいて、電圧発生装置から陽電極及び陰電極に印加される電圧を調整する電圧制御装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のリン回収装置。
【請求項11】
電解反応槽内への原水供給流量を計測する原水供給流量計測装置を設け、計測された原水供給流量値に基づいて、電解反応槽内へのマグネシウム供給量を調整するマグネシウム供給量制御装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のリン回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−155150(P2008−155150A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348022(P2006−348022)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】