説明

リン酸およびリン酸以外の少なくとも1種の酸を含む金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を回収する方法および装置

【課題】 半導体製造工場などにおける金属エッチング工程などから発生する金属イオン含有混酸廃液のような金属イオンを含有する混酸水溶液から、金属イオンを分離するとともにリン酸を高い収率で回収するにあたり、従来技術では膜処理またはイオン交換処理を行なうのが常識であったが、本発明では発想を全く変えて蒸留、抽出手段を用いた回収方法および装置の提供。
【解決手段】 金属イオン、リン酸およびリン酸以外の少なくとも1種の酸を含む金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を回収する方法において、(i)前記混酸水溶液を蒸留することによりリン酸以外の酸と水(金属イオンを含まない)を留出させ、(ii)リン酸および水(金属イオンを含む)を含有する残液から金属イオンが抽出できる条件で金属イオンを抽出させ、リン酸は下層として、金属イオンは上層として、それぞれ分離することを特徴とする金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を回収する方法および装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸およびリン酸以外の少なくとも1種の酸を含む金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を蒸留と抽出の組合せで回収する方法および装置に関する。とくに本発明は、リン酸およびリン酸以外の少なくとも1種の酸を含む金属イオン含有混酸廃液から溶解している金属イオンを分離してリン酸を蒸留と抽出の組合せで回収する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工場におけるアルミニウムなどの金属のエッチング工程で使用されている混酸溶液は、使用しているうちに酸の濃度が下がって能力が低下するが、一方、金属イオン濃度は蓄積し、濃くなるため、一部新液と交換することが必要となる。そこで、金属イオン(アルミニウムをエッチングする場合は主にアルミニウムおよびモリブデンであり、特にモリブデンの除去分離方法は存在しなかった)を取り除くとともに酸を高収率で回収するための処理手段の開発が望まれている。そして、このような金属イオン含有酸廃液から金属イオンを取り除くと同時にリン酸を高収率で回収できる処理装置や処理方法はこれまで存在していなかった。
【0003】
従来、溶剤から金属系不純物を除去するには、蒸留操作を使用することが広く行われている。しかし、この方法では溶剤を蒸発すると金属系化合物または金属イオンは塔の底(以下釜という)に残るが、主成分である酸、とくに燐酸は揮発性がないので釜に金属系化合物または金属イオンと共に残ってしまう。
【0004】
一般に溶液中に存在する成分から金属イオンを除去する方法としては、以下のいくつかの方法が行われている。
(イ)イオン交換樹脂により金属イオンをイオン交換する方法(非特許文献1)
この方法を実施するため、いろいろなイオン交換樹脂を検討したが、強酸性液中の金属イオンはイオン交換樹脂によりイオン交換することは困難であり、また樹脂の再生の効率が低いことがわかった。
(ロ)活性炭により金属イオンを取り除く方法(非特許文献1)
この方法を用いるいろいろの活性炭について実験したところ、いずれの活性炭を用いても金属イオンを吸着することは困難であることが分かった。
(ハ)電気透析により金属イオンを取り除く方法(非特許文献2)
イオン交換膜を用いて電気透析する方法は、金属エッチング廃液のように金属イオン濃度が非常に高いケースでは適用が困難であることが分かった。
一方、イオン交換膜を使用するもう一つの分離方法としては拡散透析がある。この方法では、濃度推進力により原料中の陰イオンおよび水素イオンはアニオン膜を透過し製品の側に移動するが、金属イオンおよびその他の陽イオンは膜を透過せずに原料の側に濃縮される。しかし、この方法では、結果的に得られる生成物は希釈されることになる。さらに、残りの透析残液の流量も多く回収効率が低いという問題点がある。
【0005】
一方、リン酸それ自体の精製方法として、晶析を利用する技術は、特許文献1に見ることができる。この方法は通常の方法により製造したリン酸をリン酸半水結晶として晶析させ、晶析した半水結晶を発汗させて結晶内外の含有不純物を除去することにより、さらにリン酸を精製する技術である。しかし、ここには金属のエッチングなどの化学処理に使用した金属イオン含有リン酸水溶液からリン酸を再生させる技術としては処理能力、回収率が低いという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特許第3382561号公報
【非特許文献1】平成11年1月11日株式会社エヌ・ティー・エヌ発行、竹内ヨウ監修、「最新吸着技術便覧・プロセス・材料・設計」第396〜398頁、第488〜490頁
【非特許文献2】R.H.Perry and D.W.Green,”Perrys Chemical Engineers Handbook,” McGraw−Hill (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、例えば、半導体製造工場などにおける金属エッチング工程などから発生する金属イオン含有混酸廃液のような金属イオンを含有する混酸水溶液から、金属イオンを分離するとともにリン酸を高い収率で回収するにあたり、従来技術では膜処理またはイオン交換処理を行なうのが常識であったが、本発明では発想を全く変えて蒸留、抽出手段を用いた回収方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1は、金属イオン、リン酸およびリン酸以外の少なくとも1種の酸を含む金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を回収する方法において、(i)前記混酸水溶液を蒸留することによりリン酸以外の酸と水(金属イオンを含まない)を留出させ、(ii)リン酸および水(金属イオンを含む)を含有する残液から金属イオンが抽出できる条件で金属イオン抽出剤を用いて金属イオンを抽出させ、リン酸は下層として、金属イオンは上層として、それぞれ分離することを特徴とする金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を回収する方法に関する。
本発明の第2は、金属イオン、リン酸およびリン酸以外の少なくとも1種の酸を含む金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を回収する方法において、(1)前記混酸水溶液を蒸留することによりリン酸以外の酸と水(金属イオンを含まない)を留出させ、(2)リン酸および水(金属イオンを含む)を含有する残液を金属イオンが抽出できる条件で金属イオン抽出剤として工業用抽出剤と非水溶剤の混合液を用いて金属イオンを抽出し、リン酸は下層として、金属イオンは上層として、それぞれ分離することを特徴とする金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を回収する方法に関する。
本発明の第3は、金属イオン、リン酸およびリン酸以外の少なくとも1種の酸を含む金属イオン含有混酸水溶液からのリン酸回収装置において、リン酸以外の酸と水を留出させるための混酸水溶液用蒸留装置、蒸留残渣液を金属イオン抽出装置に供給する手段、および金属イオン抽出装置よりなることを特徴とする金属イオン含有混酸水溶液からのリン酸回収装置に関する。
本発明の第4は、(a)リン酸、(b)硝酸、塩酸および酢酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸、(c)水および(d)金属イオンを含む金属イオン含有混酸廃液から混酸を再生する方法において、(イ)前記金属イオン含有混酸廃液を蒸留することにより、リン酸以外の酸および水(金属イオンを含まない)を留出させ、一方リン酸は水(金属イオンを含む)とともに残液として回収する工程、(ロ)前記残液を金属イオンが抽出できる条件で金属イオン抽出剤を用いて金属イオンを抽出し、リン酸を下層として回収し、(ハ)金属イオンを含有する上層は、逆抽出を行い金属イオン分を抽出し、金属イオン抽出剤を再生させる工程、(ニ)前記(イ)の工程で得られた留出分に前記回収したリン酸を混合し、得られた溶液に不足分のそれぞれの酸に対応する新品の酸を加えて所望濃度の混酸とすることを特徴とする混酸廃液から混酸を再生する方法に関する。
本発明の第5は、(a)リン酸、(b)硝酸、塩酸および酢酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸、(c)水および(d)金属イオンを含む金属イオン含有混酸廃液からの混酸の再生装置において、(A)リン酸以外の酸と水を留出させるための混酸廃液用蒸留装置、(B)蒸留装置の残液を金属イオン抽出装置に供給する手段、(C)前記残液から金属イオンを抽出するための金属イオン抽出装置、(D)前記金属イオン抽出装置の上層から回収した金属を含有する溶液から逆抽出を行い金属イオン分を抽出し金属イオン抽出剤を再生させるための逆抽出装置、(E)前記金属イオン抽出装置(C)の下層より得られたリン酸と前記混酸廃液用蒸留装置(A)で得られた留分とを混合溶解する装置、(F)前記金属イオン抽出装置(C)で得られた下層溶液に、不足分の前記(b)の酸を加えて混酸の濃度を調整するための混酸濃度調整装置、よりなることを特徴とする混酸廃液から混酸を再生する装置に関する。
本発明の第6は、(a)リン酸、(b)硝酸、塩酸および酢酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸、(c)水および(d)金属イオンを含む金属イオン含有混酸廃液から混酸を再生する方法において、(イ)前記金属イオン含有混酸廃液を蒸留することにより、リン酸以外の酸および水(金属イオンを含まない)を留出させ、一方リン酸は水(金属イオンを含む)とともに残液として回収する工程、(ロ)前記残液を金属イオンが抽出できる条件で工業用抽出剤と非水溶剤の混合液を用いて金属イオンを抽出し、リン酸を下層として回収し、(ハ)前記(ロ)の下層として回収したリン酸を金属イオンが抽出できる条件で繰り返し抽出を行い、1度の抽出では得ることができない低濃度まで金属イオンを分離する工程、(ニ)金属イオンを含有する上層は、逆抽出を行い金属イオン分を抽出し、工業用抽出剤を再生させる工程(非水溶剤は反応に関与していないので再生する必要はない)、(ホ)前記(イ)の工程で得られた留出分に前記回収したリン酸を混合し、得られた溶液に不足分のそれぞれの酸に対応する新品の酸を加えて所望濃度の混酸とすることを特徴とする混酸廃液から混酸を再生する方法に関する。
本発明の第7は、(a)リン酸、(b)硝酸、塩酸および酢酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸、(c)水および(d)金属イオンを含む金属イオン含有混酸廃液から混酸を再生する装置において、(イ)前記金属イオン含有混酸廃液を蒸留することにより、リン酸以外の酸および水を留出させ、一方リン酸は水とともに残液として回収する装置、(ロ)前記残液を金属イオンが抽出できる条件で金属イオンを抽出し、リン酸を下層として回収する装置、(ハ)前記(ロ)の下層として回収したリン酸を金属イオンが抽出できる条件で繰り返し抽出を行い1度の抽出では得ることができない低濃度まで少なくとも1種または数種の金属イオンを分離する装置、(ニ)金属イオンを含有する上層は、逆抽出を行い金属イオン分を抽出し、工業用抽出剤を再生させる装置、(ホ)前記(イ)の工程で得られた留出分に前記回収したリン酸を混合し、得られた溶液に不足分のそれぞれの酸に対応する新品の酸を加えて所望濃度の混酸とするための混酸濃度調整装置、よりなることを特徴とする混酸廃液から混酸を再生する装置に関する。
本発明の第8は、前記金属イオン含有混酸廃液中における金属イオンがカチオン(正イオン)またはアニオン(負イオン)のいずれか一方の場合における抽出操作は、抽出装置の数を1装置以上とし、前記金属イオンがカチオンとアニオンの両方に属する場合における抽出操作は、抽出装置の数を2装置以上とすることを特徴とする混酸廃液から混酸を再生する装置に関する。
本発明の第9は、前記金属イオン含有混酸廃液が、リン酸、硝酸、酢酸および水を含むアルミエッチング廃液である請求項1、2、4、6いずれか記載の金属イオン含有混酸廃液からの混酸の再生方法に関する。
本発明の第10は、前記金属イオン含有混酸廃液が、リン酸、硝酸、酢酸および水を含むアルミエッチング廃液である請求項3、5、7、8いずれか記載の金属イオン含有混酸廃液から混酸を再生する装置に関する。
本発明の第11は、前記金属イオン抽出剤として非水溶剤と工業用抽出剤の混合溶剤を使用するものである請求項4記載の金属イオン含有混酸廃液からの混酸の再生方法に関する。
本発明の第12は、前記金属イオン抽出剤として非水溶剤と工業用抽出剤の混合溶剤を使用するものである請求項3、5、7、8記載の混酸廃液から混酸を再生する装置に関する。
【0009】
本発明で使用する金属イオン含有混酸水溶液における金属イオンとしては、とくに制限はないが、通常金属のエッチング廃液であることが多いので、エッチングの対象となる金属イオンであることが多い。その金属としては、例えばアルミニウム、銅、鉄、亜鉛、鉛、銀、クロム、モリブデン、ジルコニウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、ネオジウムなどを挙げることができるが、これらに限定するものではない。これらの金属は、混酸水溶液中では、クロムやモリブデンはアニオン(陰イオン)として溶解している。また、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、銀、カルシウム、ナトリウム、ネオジウム、ジルコニウム、マグネシウムは、カチオン(陽イオン)として溶解している。とくに本発明は、アルミニウム、モリブデン、マグネシウム、クロム、の場合に有効である。
【0010】
本発明の対象となる金属イオン含有混酸としては、リン酸を含む金属イオン含有混酸であれば、とくに制限はない。代表的なものとしては、(a)リン酸および(b)硝酸、塩酸および酢酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸、よりなる金属イオン含有混酸である。とくに、好ましいものとしてはリン酸、硝酸、酢酸および水よりなる金属イオン含有混酸水溶液、たとえばアルミニウムエッチング廃液である。
【0011】
図1は、金属イオン含有混酸水溶液に含まれる金属イオンがアニオン系、カチオン系のうち、一方のみ含有する場合の装置構成と全体フローシートを示す。
【0012】
図2は、金属イオン含有混酸水溶液に含まれる金属イオンがアニオン系およびカチオン系の両方が混在する場合の装置構成と全体フローシートを示す。
【0013】
図1および図2において鎖線囲み部分(I)は、抽出操作を行なう前処理として重要な工程で、蒸発しないリン酸の水溶液中に含まれる硝酸、塩酸、酢酸などの揮発性の酸の濃度を一定濃度以下にするための蒸留装置である。廃混酸水溶液に含まれる水を主成分とする低沸物を分離する水分離蒸留塔と硝酸、塩酸、酢酸などの蒸発する酸を留分とし再利用を行なう酸分離蒸留塔から構成される。「蒸発しそこなった水、蒸発しそこなった揮発性の酸および金属イオンを含有しているリン酸液」は釜から抜き出し、次工程に送る。この際、釜排出液は、リン酸および水以外のものを含まないことが望ましい。
【0014】
本発明で使用する蒸留塔としては、通常、充填蒸留塔を使用することができる。充填蒸留塔の使用は、イニシャルコストおよび運転上から、腐食性が高い酸含有溶液に対して適当であり、充填材や塔の材質は、耐酸性(耐食性)樹脂たとえばポリ四フッ化エチレンなどのフッ素系樹脂を使用することが望ましい。
【0015】
本発明で使用する配管は、酸を含有する水溶液が通るので、通常、耐酸性樹脂製たとえばポリ四フッ化エチレンなどのフッ素系樹脂製の配管を使用する。また、ポンプを使用するときはそのポンプも液と接触する部分は耐酸性樹脂製とすることが望ましい。
【0016】
図1および図2における鎖線囲み部分(I)の酸分離蒸留塔の釜から排出する「蒸発しそこなった水、蒸発しそこなった揮発性の酸および金属イオンを含有しているリン酸液」はリン酸濃度が約95wt%と高濃度であり、その粘性が高く抽出の条件に適さないので水で希釈することが必要であり、そのために図1および図2においては、鎖線囲み部分(II)で示すリン酸希釈槽が設けられている。ここで「蒸発しそこなった水、蒸発しそこなった揮発性の酸および金属イオンを含有しているリン酸液」は最適粘性(リン酸濃度を40〜80wt%、好ましくは50〜70wt%)に調節される。さらに、金属イオン抽出工程に供給される蒸留塔釜(蒸留塔の下部)から得られる水溶液は、通常リン酸を主成分とした金属イオン含有水溶液である。抽出のためにpH調整するときのpHは工業用抽出剤が効果を発現するpHに調整すればよい。抽出される水溶液は、できるだけリン酸層の金属イオン含有率を低くするため、事前に純水により20倍に希釈した液であり、通常、そのpHは1.3〜2.0となるよう確認しておくことが好ましい。
【0017】
図1における鎖線囲み部分(III)−1は、(III)1抽出塔と(III)1逆抽出塔から構成される抽出装置である。(III)1抽出塔では密度の高い重液〔ここでは鎖線囲み部分(II)の希釈したリン酸液〕と密度の低い軽液である抽出液(金属イオン抽出剤、たとえば工業用抽出剤+非水溶剤の混合物)を混合して、重液中のアニオン金属イオンまたはカチオン金属イオンの一方を軽液に抽出(移行)させる装置である。また、図1中の(III)1抽出塔で所望の金属イオン濃度まで金属イオン抽出(抜き取る)できなかった場合は、図2のように抽出装置を連続につなぎ、同様の操作を繰り返すことで、所望の金属イオン濃度まで金属イオンを抽出(抜き取る)することもできる。
金属イオン抽出剤としては、いわゆる工業用抽出剤のみでもよいが、高価であるため、金属イオンを捕捉する能力はないが工業用抽出剤より安価である非水溶剤で希釈して使用することが多い。
【0018】
この抽出装置について説明する。図3は、液々抽出装置の1例でミキサー・セトラータイプの抽出器である。重液と軽液をミキサー部で攪拌混合し、セトラー部で重液層と軽液層を主界面を介して相分離を行なう機構である。
【0019】
図4は、回転円盤抽出塔の1例である。重液を塔の上方から供給し、塔下方へ流下させ、軽液を塔の下方から供給して上方へ小さな液滴として浮き上がらせる構造である。塔中間部では固定板と回転板により液滴の生成と破壊が繰り返し行なわれ、抽出効果を上げることができる。
【0020】
図5は、図4の回転板の代わりに多孔板を使用した多孔板抽出塔である。動力を使用しないのでランニングコストを下げる効果がある。多孔板を介して液滴の生成と破壊を行なう。
【0021】
図1の〔(III)1抽出塔〕および図2の〔(III)1抽出塔、(III)2抽出塔〕は、前記した[0018]、[0019]、[0020]で示した抽出装置にこだわらないが、リン酸および酸を含む液の処理であり、装置を構成する材料は耐腐食性材を使用することが必要である。図5の多孔板抽出塔(変形型)が望ましいが図3、図4の形式にとらわれない。
【0022】
[0017]で述べた軽液として使用する抽出液は工業用抽出剤と非水溶剤の混合物が好ましい。前記非水溶剤としては、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、ケロシン、アルコール類などを挙げることができ、前記工業用抽出剤としては、キレート系抽出剤、有機リン化合物、長鎖アルキルアミン、有機硫黄化合物など上市されている工業用抽出剤(平成11年2月25日丸善株式会社発行 改訂六版「化学工学便覧」第645〜646頁参照)を使用することができる。モリブデンなどのアニオン金属を抽出するには長鎖アルキルアミンのうち第3級アミンが望ましい。また、前記金属イオン含有混酸廃液にアルミニウム、ネオジウムなどカチオン金属イオンが存在する場合は有機リン化合物の酸性リン酸エステルが望ましい。
【0023】
(III)1抽出塔で用いることができる抽出液(工業用抽出剤+非水溶剤の混合物)に使用する非水溶剤としては通常ケロシンを使用するがリン酸に臭気が移行し、再洗滌する必要がある。そこで工業用抽出剤とよく混合し、リン酸や水と混合しない非水溶剤としてシクロヘキサン、ベンゼンなどがあるが本発明の実施例ではシクロヘキサンを使用した。非水溶剤の具体例は、前記「化学工学便覧」第644頁に記載されているとおりである。
密度の差を利用して重液と軽液を接触抽出させると、大きな動力なしで接触、分液できる。密度の差がある場合は、図4、5の装置を利用することができ、差が小さいときは図3のミキサーセトラー型となる。本発明では、重液(リン酸)は、比重1.5であるのに対し、軽液(アラミン+シクロヘキサン)は0.8程度であるため、大きな比重差があり、図5の装置を有効に利用できる。
【0024】
図1および図2の(III)−1の(III)1逆抽出塔は、(III)1抽出塔で重液から軽液に抽出(移行)した金属イオン(アニオン系金属イオンまたはカチオン系金属イオン)を除去し、抽出液を再利用するための装置である。(III)1逆抽出塔における軽液は、(III)1抽出塔の頂部から排出される抽出液(工業用抽出剤+非水溶剤の混合物)であり、重液としてアニオン抽出の場合は炭酸ナトリウム水溶液、アンモニア水などアルカリ水溶液があるが、本発明の実施例ではpH(水素イオン濃度)を調節した炭酸ナトリウム水溶液を使用した。またカチオン抽出の場合は硫酸、塩酸など無機酸の水溶液を使用するが、本実施例ではpH(水素イオン濃度)を調節した硫酸水溶液を使用した。逆抽出塔の構造と操作は(III)1抽出塔と同様である。
【0025】
図2おける鎖線囲み部分(III)−2抽出装置(2)は、金属イオン含有混酸廃液に含まれる金属イオンがアニオン・カチオンの両方を含んでいる場合に必要な装置である。アニオン系金属イオンを抽出する抽出剤とカチオン系金属イオンを抽出する抽出剤が異なるため、両方を除去するためには鎖線囲み部分(III)−1の抽出装置(1)と鎖線囲み部分(III)−2の抽出装置(2)を使用する必要がある。(III)−1抽出装置(1)と(III)−2抽出装置(2)で抽出する金属イオンはそれぞれアニオン系金属イオン、カチオン系金属イオンであるがどちらを先に抽出するかの優先性は問わない。抽出剤の価格・操作性・腐食(装置に使用する材料の耐食性)などを考慮して決める。また、図2中の(III)1抽出塔または(III)2抽出塔で所望の金属イオン濃度まで金属イオン抽出できなかった場合は、さらに抽出装置を連続につなぎ、同様の操作を繰り返すことで、所望の金属イオン濃度まで金属イオンを抽出(抜き取る)することもできる。
【0026】
図1では、鎖線囲み部分(III)の(III)1抽出塔より、また、図2では、鎖線囲み部分(III)−2の(III)2抽出塔より、それぞれ排出される金属イオンを除去された重液であるリン酸液には、鎖線囲み部分(II)のリン酸希釈槽で加えた水および金属イオン抽出剤(工業用抽出剤と非水溶剤との混合物)が相互溶解度の平衡値まで溶解している。
【0027】
図1および図2の鎖線囲み部分(IV)は、リン酸と水および非水溶剤を分離するための濃縮装置である。装置としては単なる蒸発機でも差し支えないが、釜より排出されるリン酸に含有する水分を必要とするため(後で説明する再生混酸はある%の水を含んでいる)還流のかかる蒸留塔が望ましい。塔頂から留出する水溶液は鎖線囲み部分(II)のリン酸希釈槽に戻す。
【0028】
図1および図2の鎖線囲み部分(V)は、2基の攪拌機付きタンクで、鎖線囲み部分(IV)の濃縮塔の塔底より排出される精製リン酸水溶液と、鎖線囲み部分(I)の酸分離蒸留塔(酢酸・硝酸回収塔)の頂部より留出する硝酸、塩酸、酢酸などの揮発性の酸の水溶液のための受槽とリサイクルするため濃度を検出して不足する酢酸・硝酸・リン酸などの酸と水を追加混合し再生混酸として組成を調整する濃度調整槽である。
【0029】
前記以外の「混酸濃度調整手段」としては、再生した酸成分に加えて、消耗した酸成分を補充して所定の酸濃度に調整する方法がある。金属のエッチングや表面処理などに用いられる酸は、通常、リン酸、硝酸、酢酸よりなる混酸の形で使用される場合がほとんどである。このような場合には、それぞれの各酸の濃度を任意のチェック手段によりチェックし、それぞれの酸が所望の割合で、かつ所望の濃度となるようにそれぞれの酸の不足分を添加する手段を採用すればよく、そのためには好ましくは滴定分析自動濃度調整器を用いることができる。滴定分析自動濃度調整器は、溶液に含まれている酸をそれぞれの滴定方法により自動的に分析し、分析結果に基づき不足する分のそれぞれの酸を溶液に添加する装置である。本発明は、不揮発性のリン酸含有混酸とくにリン酸、硝酸、酢酸よりなる混酸を用いている場合に極めて有効である。
【発明の効果】
【0030】
(1)本発明により、混酸廃液から80質量%以上、好ましくは85質量%以上、とくに好ましくは90質量%以上の回収率でリン酸を回収することができる。
(2)本発明により、混酸廃液1000kg/hr処理の場合、系外に排出される蒸気や水溶液の量は合計で400〜500kg/hrであり、金属含有混酸廃液中のリン酸は70〜90%、好ましくは80〜90%が回収できる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれにより何等限定されるものではない。
【0032】
図6(図6は、図6−1、図6−2、図6−3の3つに分割して記載しているので、三者を一体化して見る必要がある)は液晶生産工程から排出される金属イオン含有混酸廃液を1000kg/hrで処理した実施例である。この廃液には、モリブデンを主とするアニオン系金属イオンとアルミニウムを主とするカチオン系金属イオンをそれぞれ約300ppm含んでいる。したがって、図2の〔(III)−1の抽出装置(1)〕と〔(III)−2の抽出装置(2)〕の2つの抽出装置を使用するフローシートに示した方法で処理している。
【0033】
液晶生産工程において排出される金属イオン含有混酸廃液は720トン/月(1.0トン/hr処理)であり、その組成は下記のとおりであった。(アルミニウムとモリブデンは微量のため%から除外した)
水 30wt%
酢酸 2wt%
硝酸 8wt%
リン酸 60wt%
Al 300ppm(0.3kg/hr)
Mo 300ppm(0.3kg/hr)
前記廃液を鎖線囲み部分(I)の蒸留装置に供給し、水および酢酸蒸留塔から留出した留分は160kg/hrであり、水分調整のため系外に排出処理した。この排出分の組成は水140kg/hr、酢酸8kg/hr、硝酸12kg/hrであった。一方、塔底からの排出液を水、酢酸および硝酸蒸留塔(酸分離蒸留塔)に供給し、留出液は再利用のために回収した。留出液量は200kg/hrであった。留出液の組成は下記のとおりであった。
水 75wt%(150kg/hr)
酢酸 6wt%( 12kg/hr)
硝酸 19wt%( 38kg/hr)
水、酢酸および硝酸蒸留塔の底部から回収した水溶液640kg/hrは、
水 10kg/hr(1.5wt%)
硝酸 30kg/hr(4.7wt%)
リン酸 600kg/hr(93.8wt%)
アルミニウム 0.3kg/hr
モリブデン 0.3kg/hr
を含有していた。
【0034】
水、酢酸および硝酸蒸留塔の底部から回収したリン酸水溶液は、(II)のリン酸希釈槽で水280kg/hr加え、粘性を低くした。抽出条件確認のため、希釈リン酸水溶液を、更に純水で20倍に希釈してそのpHが所定(1.0〜2.5)の範囲内にあることを確認した。
【0035】
抽出操作としてまずアニオンの抽出を行なった。装置は、図5に示した多孔板抽出塔を使用した。リン酸希釈槽で濃度およびpHを調整した下記組成のリン酸水溶液(920kg/hr)は、重液として多孔板抽出塔の上方に供給して流下させた。
水 290kg/hr
硝酸 30kg/hr
リン酸 600kg/hr
Mo 0.3kg/hr
Al 0.3kg/hr
抽出剤は48kg/hrのアラミン336(長鎖アルキル第三級アミンよりなるCognis社のモリブデン抽出用の金属抽出剤)と非水溶剤としてシクロヘキサン421kg/hrを混合した軽液469kg/hrを用い、これを多孔板抽出塔の下方から挿入、上昇させた。
【0036】
抽出塔〔図6−2における(III)1抽出塔〕の頂部まで上昇した軽液(抽出液)532kg/hrには、モリブデンが平均して約0.299kg/hr抽出されていた。抽出液の組成は下記のとおりである。
シクロヘキサン 421kg/hr
アラミン336 48kg/hr
リン酸 60kg/hr
硝酸 3kg/hr
Mo 0.299kg/hr
また、抽出塔〔図6−2における(III)1抽出塔〕を下降した重液(リン酸水溶液)は、アルミニウムはほとんど抽出されなかったが、モリブデンは0.001kg/hr検出され、アニオン抽出効果が認められた。前記重液は857kg/hrであり、その組成は下記のとおりであった。
水 290kg/hr
硝酸 27kg/hr
リン酸 540kg/hr
Al 0.3kg/hr
【0037】
図6−2の鎖線囲み部分(III)−1における(III)1逆抽出塔は、(III)1抽出塔と同じ多孔板抽出塔を使用した。重液(逆抽出液)としては、水(460kg/hr)に炭酸ナトリウムをpH8.5以上(アルカリ側)となるよう溶解することにより調製した。(III)1抽出塔から出たアラミン・シクロヘキサンの抽出液を軽液として(III)1抽出塔と同じ操作を行なった。塔頂から出た抽出液を分析したところモリブデンが認められず、(III)1抽出塔の抽出液として循環使用できることが実証された。また塔底から抜き出した重液にはモリブデン0.299kg/hrが認められた。
【0038】
次の抽出操作としてカチオンの抽出〔鎖線囲み部分(III)−2抽出装置を使用〕を行なった。装置は、図5に示した多孔板抽出塔〔図6−2における(III)2抽出塔にあたる〕を使用した。(III)1抽出塔から抜き出したリン酸水溶液よりなる前記重液(857kg/hr)は、多孔板抽出塔の上方に供給して流下させた。ここで使用する抽出剤はD2EHPA〔ジ(2−エチルヘキシル)ホスフェートであり、陽イオン交換型金属抽出剤〕(48kg/hr)と非水溶剤としてのシクロヘキサン(421kg/hr)の混合物(469kg/hr)であり、これを軽液として多孔板抽出塔の下方から挿入、上昇させた。
【0039】
(III)2抽出塔の頂部まで上昇した軽液(抽出液)526kg/hrの組成は下記のとおりであった。
シクロヘキサン 421kg/hr
D2EHPA 48kg/hr
リン酸 54kg/hr
硝酸 3kg/hr
Al 0.299kg/hr
上記のとおり前記軽液中には、アルミニウムが平均して約0.299kg/hr抽出されていた。また、下降した重液(リン酸水溶液)800kg/hrの組成は下記のとおりであった。
水 290kg/hr
硝酸 24kg/hr
リン酸 486kg/hr
この中には、0.001kg/hrという極わずかのアルミニウムが検出されたが、カチオン抽出効果が認められた。
【0040】
(III)2逆抽出塔は、(III)2抽出塔と同じ多孔板抽出塔を使用した。重液(逆抽出液)としては水460kg/hrに硫酸液をpH1.0以上(酸性側)となるよう調整した。(III)2抽出塔から出たD2EHPA・シクロヘキサンの抽出液〔前記[0038]記載の組成をもつ〕を軽液として(III)2抽出塔と同じ操作を行なった。塔頂から出た抽出液469kg/hrを分析したところアルミニウムが認められず、その組成は下記のとおりであった。
シクロヘキサン 421kg/hr
D2EHPA 48kg/hr
このように、(III)2逆抽出塔の塔頂から出た抽出液は(III)2抽出塔の抽出液として循環使用できることが実証された。また塔底から抜き出した重液の組成は下記のとおりであった。
水 460kg/hr
リン酸 54kg/hr
硫酸 2.3kg/hr
Al 0.299kg/hr
であり、ここにはアルミニウムの存在が認められた。
【0041】
(III)1逆抽出塔から排出される逆抽出液はアルカリ性であり、(III)2逆抽出塔からの逆抽出液は酸性である。両者はほぼ当量であるので、混合中和して廃棄処分とした。
【0042】
(III)2抽出塔の塔底より抜き出された脱金属された液800kg/hrの組成は下記のとおりである。
水 290kg/hr
硝酸 24kg/hr
リン酸 486kg/hr
この液は、水を290kg/hr含むため鎖線囲み部分(IV)に示す濃縮塔に供給してリン酸の濃縮を行なう。濃縮塔(IV)は図6−1の鎖線囲み部分(I)に使用した塔と同じ充填塔を使用した。濃縮塔(IV)で留出した水(280kg/hr)はリン酸希釈層の希釈水として使用した。釜より排出する濃縮リン酸液量は520kg/hrであり、その組成は下記のとおりである。
水 10kg/hr
硝酸 24kg/hr
リン酸 486kg/hr
この濃縮リン酸液におけるリン酸濃度は93.5%であり、含有するモリブデンおよびアルミニウムはそれぞれ約0.001kg/hr量含まれていた。
【0043】
濃縮塔(IV)から排出した精製リン酸液は(V)の受け槽兼濃度調整槽(2基とし交互に受け槽と濃度調整槽として使用する)に送られる。同じ受け槽には(I)の酸分離蒸留塔の留出液が流入し、硝酸・酢酸のリサイクルを行なう。以下に受け槽に流入する全液量(kg/hr)と物質量をそれぞれ示す。
(I)留出液 (IV)釜排出液 (V)受け槽混合後
流入量 200kg/hr 520kg/hr 720kg/hr
水 150kg/hr 10kg/hr 160kg/hr
酢酸 12kg/hr 0kg/hr 12kg/hr
硝酸 38kg/hr 24kg/hr 62kg/hr
リン酸 0kg/hr 486kg/hr 486kg/hr
アルミニウム 0kg/hr 0.001kg/hr 0.001kg/hr
モリブデン 0kg/hr 0.001kg/hr 0.001kg/hr
であった。
【0044】
鎖線囲み部分(V)の受け槽兼濃度調整槽における一方の受け槽に所定量が流入した後、他方の受け槽に切り替え、濃度調整を行なう。
リン酸の再生ができなかった時、液晶生産工場では新たに調整されたバージン混酸溶液を購入し、使用していた。精製混酸を組成で比較するとバージン混酸液と同等の再生混酸液1000kgを再生するとき、添加する酸および水の添加量は次の通りであった。
バージン混酸溶液の組成 精製混酸の量と組成 再生混酸添加量
量 720kg/hr 1000kg/hr
水 22.0wt% 22.22wt% +60kg/hr
酢酸 3.4±0.5wt% 1.67wt% +22kg/hr
硝酸 9.6±0.4wt% 8.61wt% +34kg/hr
リン酸 65±1.5wt% 67.50wt% +164kg/hr
Al 0.0ppm 1.39ppm 1.0ppm
Mo 0.0ppm 1.39ppm 1.0ppm
【0045】
この結果、リン酸回収率は
(486÷600)×100=81.0%
水の回収率は
(160÷300)×100=53.3%
酢酸の回収率は
(12÷20)×100=60.0%
硝酸回収率は
(62÷80)×100=77.58%
であった。
【0046】
図7は、前記した図6−2および6−3の鎖線囲み部分(III)−1、(III)−2に相当する抽出装置の具体例を示すフローシートである。この図のように(III)1抽出塔〔(III)2抽出塔〕と(III)1逆抽出塔〔(III)2逆抽出塔〕をワンセットで連続的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】金属イオン含有混酸廃液の金属イオンがアニオンまたはカチオンの内、一方が存在する廃混酸を処理する場合の1例を示すフローシートである。
【図2】金属イオン含有混酸廃液の金属イオンがアニオンとカチオン双方が存在する廃混酸を処理する場合の1例を示すフローシートである。
【図3】本発明に適応する抽出機の1例(ミキサー・セトラータイプ)を示す。
【図4】本発明に適応する抽出機の1例(回転円盤型抽出塔)を示す。
【図5】本発明に適応する抽出機の1例(多孔板型抽出塔)を示す。
【図6−1】図が大きいので、図6−1、図6−2、図6−3に分割されており、全体としてアニオン・カチオンの双方が存在する金属イオン含有廃混酸を1000kg/hrで処理する1実施例のプロセスを示す図である。
【図6−2】図が大きいので、図6−1、図6−2、図6−3に分割されており、全体としてアニオン・カチオンの双方が存在する金属イオン含有廃混酸を1000kg/hrで処理する1実施例のプロセスを示す図である。
【図6−3】図が大きいので、図6−1、図6−2、図6−3に分割されており、全体としてアニオン・カチオンの双方が存在する金属イオン含有廃混酸を1000kg/hrで処理する1実施例のプロセスを示す図である。
【図7】抽出塔と逆抽出塔を一体とする抽出装置パイロットプラントの1具体例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオン、リン酸およびリン酸以外の少なくとも1種の酸を含む金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を回収する方法において、(i)前記混酸水溶液を蒸留することによりリン酸以外の酸と水(金属イオンを含まない)を留出させ、(ii)リン酸および水(金属イオンを含む)を含有する残液から金属イオンが抽出できる条件で金属イオン抽出剤を用いて金属イオンを抽出させ、リン酸は下層として、金属イオンは上層として、それぞれ分離することを特徴とする金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を回収する方法。
【請求項2】
金属イオン、リン酸およびリン酸以外の少なくとも1種の酸を含む金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を回収する方法において、(1)前記混酸水溶液を蒸留することによりリン酸以外の酸と水(金属イオンを含まない)を留出させ、(2)リン酸および水(金属イオンを含む)を含有する残液を金属イオンが抽出できる条件で金属イオン抽出剤として工業用抽出剤と非水溶剤の混合液を用いて金属イオンを抽出し、リン酸は下層として、金属イオンは上層として、それぞれ分離することを特徴とする金属イオン含有混酸水溶液からリン酸を回収する方法。
【請求項3】
金属イオン、リン酸およびリン酸以外の少なくとも1種の酸を含む金属イオン含有混酸水溶液からのリン酸回収装置において、リン酸以外の酸と水を留出させるための混酸水溶液用蒸留装置、蒸留残渣液を金属イオン抽出装置に供給する手段、および金属イオン抽出装置よりなることを特徴とする金属イオン含有混酸水溶液からのリン酸回収装置。
【請求項4】
(a)リン酸、(b)硝酸、塩酸および酢酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸、(c)水および(d)金属イオンを含む金属イオン含有混酸廃液から混酸を再生する方法において、(イ)前記金属イオン含有混酸廃液を蒸留することにより、リン酸以外の酸および水(金属イオンを含まない)を留出させ、一方リン酸は水(金属イオンを含む)とともに残液として回収する工程、(ロ)前記残液を金属イオンが抽出できる条件で金属イオン抽出剤を用いて金属イオンを抽出し、リン酸を下層として回収し、(ハ)金属イオンを含有する上層は、逆抽出を行い金属イオン分を抽出し、金属イオン抽出剤を再生させる工程、(ニ)前記(イ)の工程で得られた留出分に前記回収したリン酸を混合し、得られた溶液に不足分のそれぞれの酸に対応する新品の酸を加えて所望濃度の混酸とすることを特徴とする混酸廃液から混酸を再生する方法。
【請求項5】
(a)リン酸、(b)硝酸、塩酸および酢酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸、(c)水および(d)金属イオンを含む金属イオン含有混酸廃液からの混酸の再生装置において、(A)リン酸以外の酸と水を留出させるための混酸廃液用蒸留装置、(B)蒸留装置の残液を金属イオン抽出装置に供給する手段、(C)前記残液から金属イオンを抽出するための金属イオン抽出装置、(D)前記金属イオン抽出装置の上層から回収した金属を含有する溶液から逆抽出を行い金属イオン分を抽出し金属イオン抽出剤を再生させるための逆抽出装置、(E)前記金属イオン抽出装置(C)の下層より得られたリン酸と前記混酸廃液用蒸留装置(A)で得られた留分とを混合溶解する装置、(F)前記金属イオン抽出装置(C)で得られた下層溶液に、不足分の前記(b)の酸を加えて混酸の濃度を調整するための混酸濃度調整装置、よりなることを特徴とする混酸廃液から混酸を再生する装置。
【請求項6】
(a)リン酸、(b)硝酸、塩酸および酢酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸、(c)水および(d)金属イオンを含む金属イオン含有混酸廃液から混酸を再生する方法において、(イ)前記金属イオン含有混酸廃液を蒸留することにより、リン酸以外の酸および水(金属イオンを含まない)を留出させ、一方リン酸は水(金属イオンを含む)とともに残液として回収する工程、(ロ)前記残液を金属イオンが抽出できる条件で工業用抽出剤と非水溶剤の混合液を用いて金属イオンを抽出し、リン酸を下層として回収し、(ハ)前記(ロ)の下層として回収したリン酸を金属イオンが抽出できる条件で繰り返し抽出を行い、1度の抽出では得ることができない低濃度まで金属イオンを分離する工程、(ニ)金属イオンを含有する上層は、逆抽出を行い金属イオン分を抽出し、工業用抽出剤を再生させる工程、(ホ)前記(イ)の工程で得られた留出分に前記回収したリン酸を混合し、得られた溶液に不足分のそれぞれの酸に対応する新品の酸を加えて所望濃度の混酸とすることを特徴とする混酸廃液から混酸を再生する方法。
【請求項7】
(a)リン酸、(b)硝酸、塩酸および酢酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の酸、(c)水および(d)金属イオンを含む金属イオン含有混酸廃液から混酸を再生する装置において、(イ)前記金属イオン含有混酸廃液を蒸留することにより、リン酸以外の酸および水を留出させ、一方リン酸は水とともに残液として回収する装置、(ロ)前記残液を金属イオンが抽出できる条件で金属イオンを抽出し、リン酸を下層として回収する装置、(ハ)前記(ロ)の下層として回収したリン酸を金属イオンが抽出できる条件で繰り返し抽出を行い1度の抽出では得ることができない低濃度まで少なくとも1種または数種の金属イオンを分離する装置、(ニ)金属イオンを含有する上層は、逆抽出を行い金属イオン分を抽出し、工業用抽出剤を再生させる装置、(ホ)前記(イ)の工程で得られた留出分に前記回収したリン酸を混合し、得られた溶液に不足分のそれぞれの酸に対応する新品の酸を加えて所望濃度の混酸とするための混酸濃度調整装置、よりなることを特徴とする混酸廃液から混酸を再生する装置。
【請求項8】
前記金属イオン含有混酸廃液中における金属イオンがカチオン(正イオン)またはアニオン(負イオン)のいずれか一方の場合における抽出操作は、抽出装置の数を1装置以上とし、前記金属イオンがカチオンとアニオンの両方に属する場合における抽出操作は、抽出装置の数を2装置以上とすることを特徴とする混酸廃液から混酸を再生する装置。
【請求項9】
前記金属イオン含有混酸廃液が、リン酸、硝酸、酢酸および水を含むアルミエッチング廃液である請求項1、2、4、6いずれか記載の金属イオン含有混酸廃液からの混酸の再生方法。
【請求項10】
前記金属イオン含有混酸廃液が、リン酸、硝酸、酢酸および水を含むアルミエッチング廃液である請求項3、5、7、8いずれか記載の金属イオン含有混酸廃液から混酸を再生する装置。
【請求項11】
前記金属イオン抽出剤として非水溶剤と工業用抽出剤の混合溶剤を使用するものである請求項4記載の金属イオン含有混酸廃液からの混酸の再生方法。
【請求項12】
前記金属イオン抽出剤として非水溶剤と工業用抽出剤の混合溶剤を使用するものである請求項3、5、7、8記載の混酸廃液から混酸を再生する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−315931(P2006−315931A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−142444(P2005−142444)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(593053335)日本リファイン株式会社 (15)
【Fターム(参考)】