説明

リード端子接続構造

【課題】電気的接続の信頼性が高く、リード端子と電気リードとの半田接合時の作業性を向上させることが可能なリード端子接続構造を提供する。
【解決手段】検出素子と、検出素子を収納するケースと、検出素子と電気的に接続されるとともにケースからその一部が露出したリード端子42と、リード端子42を囲む壁部と、リード端子42と半田によって接合される電気リード46と、壁部で形成される凹部内に充填されリード端子42と電気リード46との接合部分を内蔵する充填部材と、を有するリード端子接続構造において、電気リード46と接合するコの字状の接合部42aをリード端子42に設け、接合部42aの開口42bをリード端子42の露出方向に対して横方向に設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出素子と電気的に接続したリード端子と、銅などの導電材料からなる電気リードとの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリード端子接続構造は、回転検出装置などに用いられており、この回転検出装置は、検出素子と、この検出素子を収納するケースと、前記検出素子と電気的に接続されるリード端子と、前記リード端子と半田によって電気的に接合される電気リードとを備え、前記リード端子と前記電気リードとを電気的に接合した後に、前記リード端子と前記電気リードとの接合部分を覆う樹脂成形部を形成したものであった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平07−140159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のリード端子接続構造において、前記リード端子には、前記電気リードの端部が喰い込む形の接合部が設けられており、前記リード端子に対して、前記電気リードを上方から押さえて押し込み、前記接合部に仮固定し、半田付けを行い固定していた。このような接続構造では、前記電気リードの上方への浮き上がりを防止するために、前記電気リードを前記リード端子の前記接合部に確実に押し込まなければならず、組み立て作業が繁雑であった。
【0004】
また、近年、コストの削減によって、前記リード端子と前記電気リードとの接合部分を覆う樹脂成形部に代えて、前記ケースに前記リード端子を囲む壁部を設け、この壁部で形成される凹部内に前記リード端子と前記電気リードとの接合部分を覆う充填部材を充填するものがある。この壁部を設けたことによって、前記リード端子が前記凹部内に位置し、前記電気リードを前記リード端子の前記接合部に押し込む作業が難しくなるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、電気的接続の信頼性が高く、リード端子と電気リードとの半田接合時の作業性を向上させることが可能なリード端子接続構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、検出素子と、前記検出素子を収納するケースと、前記検出素子と電気的に接続されるとともに前記ケースからその一部が露出したリード端子と、前記リード端子を囲む壁部と、前記リード端子と半田によって接合される電気リードと、前記壁部で形成される凹部内に充填され前記リード端子と前記電気リードとの接合部分を内蔵する充填部材と、を有するリード端子接続構造において、前記電気リードと接合するコの字状の接合部を前記リード端子に設け、前記接合部の開口を前記リード端子の露出方向に対して横方向に設けたものである。
【0007】
また、本発明は、前記壁部に設けた開口部に前記電気リードを保持する弾性部材を設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所期の目的を達成でき、電気的接続の信頼性が高く、リード端子と電気リードとの半田接合時の作業性を向上させることが可能なリード端子接続構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、回転検出装置Rを用いて本発明を説明する。
【0010】
本実施形態の回転検出装置Rは、下ケース1と、下ケース1に回転可能に支持される回転軸2と、回転軸2の一端側に固定されるマグネット3と、下ケース1と同材料からなる上ケース4と、上ケース4に配設され、抵抗やコンデンサ等の電子部品を実装した回路基板5と、回路基板5上に配設されるホールICやMR素子等からなる検出素子6と、図示しないトランスミッションの出力軸(例えば、ミッションギア)に回転結合するとともに、回転軸2の他端に装着されるギア7と、から主に構成されている。
【0011】
下ケース1は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等の熱可塑性樹脂からなる筒状形状であり、下ケース1の上側には、上ケース4が固定されている。この下ケース1と上ケース4とで、ケースを構成している。下ケース1には、マグネット3を収納する凹部からなる収納部14が形成されている。また、収納部14から下ケース1の下端部に貫通する貫通孔を有し、金属材料(例えば、アルミニウム)からなる筒状の回転軸受15がインサート成形されている。また、黄銅等の金属材料からなるカラー16がインサート成形された取付片17が形成され、この取付片17の下方の下ケース1の全周には、後述するOリングが配設される取付溝18が形成されている。
【0012】
回転軸2は、鉄系材料(例えば、SUM24L)からなり、回転軸受15に回転可能に支持される。回転軸2には、ギア7を装着するため先端部を径小とした挿通部21を備えている。また、回転軸2には、ギア7と回転軸2との空転を防止するために、切り欠き部22を備えている。
【0013】
マグネット3は、多極着磁されたプラスチックマグネット等からなる。
【0014】
上ケース4は、下ケース1と同材料からなり、蓋体41と、上ケースにインサート成形されたリード端子42と、蓋体41に一体設けられリード端子42を囲む壁部43とを備えている。なお、46は、リード端子42と電気的に接続される電気リードであり、47は、壁部43で形成される凹部48内に充填された合成樹脂からなる充填部材であり、49は、壁部43に形成した開口部50に設けられ、電気リード46を保持する弾性部材からなるグロメットである。
【0015】
下ケース1の蓋体41には、回路基板5を収納する収納部44が形成されている。また、蓋体41の外周には、外方に突出するフランジ部45が形成されている。
【0016】
リード端子42は、金属からなり、マグネット3の回転に応じた検出素子6からの信号(速度信号)を外部に出力するものである。リード端子42は、両端が蓋体41から露出しており、一端は収納部44内に露出し、回路基板5と電気的に接続しており、他端は凹部48内に露出し、電気リード46と半田Sによって電気的に接続している。なお、リード端子42と回路基板5との電気的接続部分は、収納部44内に充填された充填部材1Bに内蔵されることで保護されており、また、リード端子42と電気リード46との電気的接続部分は、凹部48内に充填された充填部材47に内蔵されることで保護されている。
【0017】
また、リード端子42のケース4の凹部48から露出した部分には、電気リード46と接合するコの字状の凹みからなる接合部42aを備えており、この接合部42aの開口42bは、リード端子46の露出方向に対して横方向に設けてある。図4中では、開口42bは、左側に開放している。また、接合部42aは、リード端子42の中央部で、リード端子42の露出方向、すなわち、図4中、上方向に凹み42cを備えている。
【0018】
電気リード46は、銅などの抵抗の少ない金属からなる芯と、この芯を覆う合成樹脂などの絶縁材からなる被覆とから構成されている。リード端子42とは、被覆に覆われていない芯と電気的に接続している。
【0019】
充填部材47は、熱などによって硬化する合成樹脂である。
【0020】
グロメット49はゴムなどの弾性部材からなり、開口部50がはまる溝49aを備えている。そして、溝49aに開口部50をはめ込むことで、壁部43の開口部50に組み付けられている。なお、開口部50は、開放している部分を狭く形成したことで、グロメット49が開口部50から外れないようになっている。
【0021】
回路基板5は、ガラスエポキシ樹脂等の合成樹脂材からなる両面実装基板であり、回路基板5の所定箇所に図示しない配線パターン及び接続ランドが形成され、この接続ランド上には、ホールICやMR素子等からなる検出素子6や図示しない抵抗体やコンデンサ等の表面実装部品がリフロー半田付けにより実装されている。
【0022】
また、回路基板5には、リード端子42の端部が貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔の周辺(検出素子6の実装面側)にはリード端子42を半田S1により電気的に接続するための図示しない接続ランドが形成されている。また、回路基板5には、回路基板5の略中央に、充填部材1Bを充填するための充填孔55が形成されている。
【0023】
ギア7は、合成樹脂からなり、複数の歯71を備えており、図示しないトランスミッションの出力軸のギア歯体に歯合(回転結合)するものである。
【0024】
スラストスプリング8は、鉄系の弾性材料からなるもので、図1に示すように回転軸2の挿通部21が挿通するである。また、スラストスプリング8は、回転軸2の挿通部21に固定したCリング等の保持部材81を付勢し、ギア7を保持するとともに、マグネット3の振動を防止するものである。
【0025】
以上の構成によって、回転検出装置Rが構成されるものであり、トランスミッションの出力軸が回転すると、ギア7及び回転軸2、マグネット3が回動し、マグネット3の上面3aに着磁された磁極の変化を検出素子6により検出し、この検出された回転信号を上ケース4にインサート成形されて設けられたリード端子42と電気リード46を介して外部に取り出すものである。
【0026】
次に、回転検出装置Rの組み付け方法について説明する。
【0027】
回路基板5は、検出素子6の磁気検出面がマグネット3の着磁面(マグネット3の上面3a)に対向し、かつリード端子42の一端が回路基板5の前記貫通孔を貫通するように、上ケース4の収納部44に配設し、リード端子42と回路基板5の前記接続ランドとを半田S1により接続した後、回路基板5の充填孔55より上ケース4の収納部44内にエポキシ等の充填部材1Bを充填することで、上ケース4に検出素子6を実装した回路基板5が配設固定されるものである。
【0028】
そして、上ケース4の第2の段差部12にゴム等の弾性材料からなるOリング1Cを配設し、その後、上ケース4を下ケース1に配設することにより、回路基板5に実装された検出素子6の検出面と回転軸2に装着されたマグネット3の上面(着磁面)3aとが対向配置されることになる。その後、上ケース4のフランジ部45の周囲に位置する下ケース1の開放部全周を熱加締めすることにより下ケース1と上ケース4とが固定される。尚、下ケース1の取付溝18には、トランスミッションハウジングに取り付ける際のオイル漏れや塵、ゴミ等の侵入等を防止するためのOリング1Dが取り付けられる。
【0029】
次に、電気リード46を保持したグロメット49を上ケース4の壁部43の開口部50に組み付ける。次いで、電気リード46の芯をリード端子46の接合部42aに、リード端子46の横方向、すなわち、リード端子46の露出方向に対して直角方向(図4の矢印方向)に誘い入れ、電気リード46は、リード端子42の接合部42a内に位置する。この時、グロメット49で保持する電気リード46の高さが、接合部42aの高さより高い場合、電気リード46は、リード端子42の接合部42aに対して、上方向の力が加わっており、電気リード46は、図4の3つのリード端子42の内、中央の状態から右側の状態となり、リード端子42の接合部42aの上側に当たった状態で保持される。また、凹み42cを設けたことで、凹み42c内に電気リード46が入り込み安定して保持される。この状態で半田Sによってリード端子42と電気リード46とを接続する。そして、凹部48内に充填部材47を充填し硬化させて、回転検出装置Rが完成する。
【0030】
以上のように構成したことによって、電気リード46の浮き上がりを防止することができ、リード端子42と電気リード46との半田S接合時の作業性を向上させることが可能なリード端子接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態の回転検出センサの断面図。
【図2】同実施形態の回転検出センサの上面図。
【図3】図2中矢印A方向から見た側面図。
【図4】図2中矢印B方向から見たリード端子の側面図。
【符号の説明】
【0032】
1 下ケース(ケース)
4 上ケース(ケース)
6 検出素子
42 リード端子
42a 接合部
42b 接合部
42c 凹み
43 壁部
46 電気リード
47 充填部材
48 凹部
49 グロメット(弾性部材)
50 開口部
S、S1 半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出素子と、前記検出素子を収納するケースと、前記検出素子と電気的に接続されるとともに前記ケースからその一部が露出したリード端子と、前記リード端子を囲む壁部と、前記リード端子と半田によって接合される電気リードと、前記壁部で形成される凹部内に充填され前記リード端子と前記電気リードとの接合部分を内蔵する充填部材と、を有するリード端子接続構造において、前記電気リードと接合するコの字状の接合部を前記リード端子に設け、前記接合部の開口を前記リード端子の露出方向に対して横方向に設けたことを特徴とするリード端子接続構造。
【請求項2】
前記壁部に設けた開口部に前記電気リードを保持する弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載のリード端子接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−98047(P2009−98047A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271019(P2007−271019)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】