説明

ルテニウム錯体及びそれを使用した光電部品

【課題】ルテニウム錯体とそれを使用した光電部品を提供する。
【解決手段】以下の式(I)RuL2(NCS)2mにより表されるルテニウム錯体からなり、この錯体は光電部品、特に色素増感太陽電池(DSSC)に使用することができ、ルテニウム錯体により製造されたDSSCの光電特性を、改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム錯体及びそれを使用した光電部品、より詳細には、色素増感太陽電池(DSSC)に使用されるルテニウム錯体及びそれを使用した光電部品に関する。
【背景技術】
【0002】
産業技術の発展とともに、全世界が現在直面している深刻な問題は、エネルギー危機及び環境汚染である。世界的なエネルギー危機を解決し、環境汚染を低減するために、一つの効果的な方法は、太陽エネルギーを電気に変換することができる太陽電池である。色素増感太陽電池は、低い製造費用、大規模な生産、大きな柔軟性、光透過性及び建物における使用が可能であることという利点を有するので、色素増感太陽電池の適用は、ますます魅力的になってきている。
【0003】
現在、グレッツェル(Graetzel)らは、色素増感太陽電池の実用性を示す一連の文献、例えば、O’レーガン(Regan),B;グレッツェル(Graetzel),M.ネイチャー(Nature)1991,353,737(非特許文献1)を開示している。色素増感太陽電池の一般的な構造は、陽極、陰極、ナノ多孔性二酸化チタン層、色素及び電解質を含み、ここで色素は、色素増感太陽電池の変換効率において重要な役割を果たす。色素増感太陽電池に適切な色素は、広い吸収スペクトル、高いモル吸収係数、熱安定性及び光安定性の特性を有さなければならない。
【0004】
グレッツェル(Graetzel)の研究室は、色素増感太陽電池の色素として一連のルテニウム錯体を発表した。グレッツェル(Graetzel)の研究室は、1993年にN3色素を用いて作製された色素増感太陽電池を発表し、その色素増感太陽電池の変換効率は、AM1.5刺激光の照射下で10.0%である。N3色素の入射光子電流変換効率(IPCE)値は、400〜600nmの範囲で80%である。数百の色素錯体が開発されたが、これらの色素錯体の変換効率は、N3色素ほどではない。N3色素の構造は、以下の式(a)により表される。
【0005】
【化1】

【0006】
2003年には、グレッツェル(Graetzel)の研究室は、N719色素を用いて作製された色素増感太陽電池を発表し、その色素増感太陽電池の変換効率は、AM1.5刺激光の照射下で10.85%まで改善され、N719色素の構造は、以下の式(b)により表される。
【0007】
【化2】

【0008】
グレッツェル(Graetzel)の研究室は、2004年にブラック色素を用いて作製された色素増感太陽電池も発表し、その色素増感太陽電池の変換効率は、AM1.5刺激光の照射下で11.04%である。ブラック色素は、赤色領域及び近赤外領域のスペクトル応答を増強することができ、それにより色素増感太陽電池の変換効率を改善することができる。ブラック色素の構造は、以下の式(c)により表される。
【0009】
【化3】

【0010】
N3色素、N719色素及びブラック色素のようなルテニウム錯体に加えて、色素増感太陽電池に使用することができる他の種類の色素化合物は、白金錯体、オスミウム錯体、鉄錯体及び銅錯体である。しかし、様々な研究の結果は、ルテニウム錯体の変換効率が、他の種類の色素化合物より依然として優れていることを示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】O’レーガン(Regan),B;グレッツェル(Graetzel),M.ネイチャー(Nature)1991,353,737
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
色素増感太陽電池の色素は、変換効率に大きな影響を与える。したがって、色素増感太陽電池の変換効率を改善できる色素化合物を提供することが望ましい。
【0013】
本発明は、色素増感太陽電池の光電効率を改善するために色素増感太陽電池に使用される新規ルテニウム錯体を提供するものである。
【0014】
本発明は、また、優れた光電特性を有する色素増感太陽電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明は、以下の式(I):
RuL2(NCS)2m
(I)
〔式中、
Lは、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボン酸、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジスルホン酸又は2,2′−ビピリジル−4,4′−ジホスホン酸であり;
Aは、第四級ホスホニウムカチオンであり;そして
mは、1、2、3又は4である〕
により表されるルテニウム錯体を提供する。
【0016】
上記式(I)において、Lは、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボン酸、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジスルホン酸又は2,2′−ビピリジル−4,4′−ジホスホン酸であることができる。好ましくは、Lは2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボン酸である。
【0017】
上記の式(I)において、Aは、第四級ホスホニウムカチオンであることができる。好ましくは、Aは、P+1234であり、ここでR1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、C120アルキル、フェニル又はベンジルである。より好ましくは、Aは、テトラアルキルホスホニウム、ベンジルトリアルキルホスホニウム又はフェニルトリアルキルホスホニウムであり、アルキルは、C120アルキルである。
【0018】
上記の式(I)において、mは、1、2、3又は4であることができる。好ましくは、mは、2又は3である。より好ましくは、mは2である。
【0019】
上記の式(I)により表されるルテニウム錯体の具体例は、下記のとおりである。
【0020】
【化4】


【0021】
本発明は、前述のルテニウム錯体を含む色素増感太陽電池を提供する。
【0022】
加えて、本発明の色素増感太陽電池は、前述のルテニウム錯体を含む光電陽極;陰極;及び光電陽極と陰極の間に配置された電解質層を含む。
【0023】
本発明の色素増感太陽電池において、光電陽極は、透明基板、透明導電層、多孔性半導電層及びルテニウム錯体の色素を含む。
【0024】
本発明の色素増感太陽電池において、透明基板の材料は、基板の材料が透明な材料である限り特に限定されない。好ましくは、透明基板の材料は、良好な耐湿性、耐溶剤性及び耐候性を有する透明な材料である。したがって、色素増感太陽電池は、透明基板により外部の湿分又はガスに耐えることができる。透明基板の具体例には、石英又はガラスのような透明無機基板、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリイミド(PI)のような透明プラスチック基板が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、透明基板の厚さは、特に限定されることがなく、透過性及び色素増感太陽電池の特性に対する要求に従って変わることができる。好ましくは、透明基板の材料はガラスである。
【0025】
更に、本発明の色素増感太陽電池において、透明導電層の材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ZnO−Ga23、ZnO−Al23又はスズ系酸化物であることができる。
【0026】
加えて、本発明の色素増感太陽電池において、多孔性半導電層は、半導体粒子から作製されている。適切な半導体粒子には、Si、TiO2、SnO2、ZnO、WO3、Nb25、TiSrO3及びこれらの組み合わせを含むことができる。好ましくは、半導体粒子はTiO2から作製されている。半導体粒子の平均直径は、5〜500nmであることができる。好ましくは、半導体粒子の平均直径は、10〜50nmである。更に、多孔性半導電層の厚さは、5〜25μmである。
【0027】
本発明の色素増感太陽電池において、ルテニウム錯体は、前述のルテニウム錯体であることができる。
【0028】
また、色素増感太陽電池の陰極の材料は、特に限定されず、導電性のある任意の材料を含むことができる。そうでなければ、陰極の材料は、陰極の表面に導電層が形成されている限り絶縁材料であることができ、ここで陰極の表面は、光電陽極の方向を向いている。陰極の材料は、電気化学的安定性を有する材料であることができる。陰極の材料に適切な非限定例には、Pt、Au、Cなどが挙げられる。
【0029】
更に、色素増感太陽電池の電解質層に使用される材料は、特に限定されず、電子及び/又は正孔を輸送できる任意の材料であることができる。
【0030】
本発明の別の目的、利点及び新規特徴は、以下の詳細な記載によってより明白となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のルテニウム錯体は、以下の方法により合成することができる。
【0032】
シス−ジ(チオシアナト)−N,N′−ビス(2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボン酸)ルテニウム(II)(N3色素)は、無機化学(Inorganic Chemistry),Vol.38,No.26,1999,6298〜6305に記載されている方法に従って合成される。
【0033】
シス−ジ(チオシアナト)−N,N′−ビス(2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボン酸)ルテニウム(II)を蒸留水に溶解し、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド試薬の10%水溶液(TCI Co. Ltd.)を加えて、反応溶液のpH値を11に調整する。次に、反応溶液を濃縮して、粘性液体を得る。粘性液体をメタノールに溶解し、ジエチルエーテルを加えて、生成物を沈殿させる。湿潤固体生成物を取り出し、真空下で1日間乾燥した後、乾燥固体生成物を蒸留水に溶解し、次に得られた溶液のpH値を、0.1M硝酸(水溶液)で5未満に調整する。最終的に、式(I−1)のルテニウム錯体が得られる。
【0034】
本発明の色素増感太陽電池の製造方法は、特に限定されず、本発明の色素増感太陽電池は、当該技術において既知の方法により製造することができる。
【0035】
透明基板の材料は、基板の材料が透明な材料である限り、特に限定されない。好ましくは、透明基板の材料は、良好な耐湿性、耐溶剤性及び耐候性を有する透明な材料である。したがって、色素増感太陽電池は、透明基板により外部の湿分又はガスに耐えることができる。透明基板の具体例には、石英又はガラスのような透明無機基板、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(エチレン2,6−ナフタレート)(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリイミド(PI)のような透明プラスチック基板が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、透明基板の厚さは、特に限定されることがなく、透過性及び色素増感太陽電池の特性に対する要求に従って変わることができる。特定の実施態様において、透明基板の材料は、ガラス基板である。
【0036】
更に、透明導電層の材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ZnO−Ga23、ZnO−Al23又はスズ系酸化物であることができる。特定の実施態様において、フッ素ドープ酸化スズが透明導電層に使用される。
【0037】
加えて、多孔性半導電層は、半導体粒子から作製されている。適切な半導体粒子には、Si、TiO2、SnO2、ZnO、WO3、Nb25、TiSrO3及びこれらの組み合わせを含むことができる。最初に、半導体粒子をペーストの形態で調製し、次に、ペーストを透明な導電性基板に被覆する。本明細書で使用される塗布方法は、ナイフ塗布、スピン塗布、吹付塗布又は湿潤塗布であることができる。加えて、塗布は、適切な厚さを有する多孔性半導電層を得るために、1回又は数回行うことができる。半導電層は、単層又は多層であることができ、ここで多層のそれぞれの層は、異なる直径の半導体粒子により形成される。例えば、5〜50nmの直径を有する半導体粒子を5〜20μmの厚さに被覆し、次に、200〜400nmの直径を有する半導体粒子を3〜5μmの厚さに被覆する。被覆基板を50〜100℃で乾燥した後、被覆基板を400〜500℃で30分間焼結して、多層半導電層を得る。
【0038】
ルテニウム錯体を適切な溶媒に溶解して、色素溶液を調製することができる。適切な溶媒には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ここで、半導電層で被覆されている透明基板を、色素溶液に浸けて、色素溶液中の色素を半導電層に完全に吸収させる。色素吸収が完了した後、半導電層で被覆されている透明基板を取り出し、乾燥する。最終的に、色素増感太陽電池の光電陽極が得られる。
【0039】
また、色素増感太陽電池の陰極の材料は、特に限定されず、導電性のある任意の材料を含むことができる。そうでなければ、陰極の材料は、陰極の表面に導電層が形成されている限り絶縁材料であることができ、ここで陰極の表面は、光電陽極の方向を向いている。陰極の材料は、電気化学的安定性を有する材料であることができる。陰極の材料に適切な非限定例には、Pt、Au、Cなどが挙げられる。
【0040】
更に、色素増感太陽電池の電解質層に使用される材料は、特に限定されず、電子及び/又は正孔を輸送できる任意の材料であることができる。加えて、液体電解質は、ヨウ素を含有するアセトニトリルの溶液、ヨウ素を含有するN−メチル−2−ピロリジノンの溶液又はヨウ素を含有する3−メトキシプロピオニトリルの溶液であることができる。特定の実施態様において、液体電解質は、ヨウ素を含有するアセトニトリルの溶液であることができる。
【0041】
本発明の色素増感太陽電池を製造する一つの具体的な方法は、以下のとおりである。
【0042】
最初に、直径が20〜30nmのTiO2粒子を含有するペーストを、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)で覆われたガラス基板に1回又は数回被覆する。次に、被覆ガラス基板を450℃で30分間焼結する。
【0043】
ルテニウム錯体を、アセトニトリルとt−ブタノール(1:1v/v)の混合物に溶解して、ルテニウム錯体の色素溶液を調合する。次に、多孔性TiO2層を有する前述のガラス基板を、色素溶液に浸ける。多孔性TiO2層が色素溶液の色素を吸収した後、得られたガラス基板を取り出し、乾燥する。最終的に、光電陽極が得られる。
【0044】
フッ素ドープ酸化スズで覆われたガラス基板を穿孔して、直径0.75μmの入口を形成し、入口を電解質の注入のために使用する。次に、H2PtCl6の溶液を、フッ素ドープ酸化スズで覆われたガラス基板に被覆し、ガラス基板を400℃で15分間加熱して、陰極を得る。
【0045】
続いて、厚さ60μmの熱可塑性ポリマー層を、光電陽極と陰極の間に配置する。これらの2つの電極を120〜140℃で加圧して、互いに接着させる。
【0046】
次に、電解質を注入し、ここで電解質は、0.03MのI2/0.3MのLiI/0.5Mのt−ブチル−ピリジンを含有するアセトニトリルの溶液である。入口を熱可塑性ポリマー層で密閉した後、本発明の色素増感太陽電池が得られる。
【0047】
以下の実施例は、本発明を説明する目的のために意図されている。しかし、本発明の範囲は、本明細書に添付されている請求項によって定義されるべきであり、以下の実施例は、本発明の範囲をいかようにも制限するものとして考慮されるべきではない。特に説明をすることなく、実施例に使用される部及び百分率の単位は、重量により計算されており、温度は摂氏(℃)により表される。重量部と容量部の関係は、キログラムとリットルの関係と同様である。
【0048】
実施例1
シス−ジ(チオシアナト)−N,N′−ビス(2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボン酸)ルテニウム(II)ビス(テトラブチルホスホニウム)(I−1)の合成
無機化学(Inorganic Chemistry),Vol.38,No.26,1999,6298〜6305に記載されている方法に従って調製した、0.50部のシス−ジ(チオシアナト)−N,N′−ビス(2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボン酸)ルテニウム(II)(N3色素)及び10部の蒸留水を反応フラスコの中に入れ、反応溶液を混合及び撹拌した。次に、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド試薬の10%水溶液(TCI Co. Ltd.)を反応溶液に滴加して、反応溶液のpH値を11に調整した。ロータリー・エバポレーターを反応溶液からの溶媒の除去に使用して、粘性液体を得た。粘性液体をメタノールに溶解し、ジエチルエーテルを加え沈殿物を得て、湿潤固体沈殿物を取り出し、真空下で1日間乾燥した。乾燥した固体を10部の蒸留水に溶解し、0.1Mの硝酸(水溶液)を使用して、得られた溶液のpH値を5未満に調整した。焼結ガラスフィルターを生成物の濾取に使用し、5部のpH5の蒸留水を生成物の洗浄に使用した。最終的に、0.39部の黒色固体生成物(I−1)を得て、生成物(I−1)の収率は、75.9%であった。
【0049】
実施例2
色素増感太陽電池の作製
直径20〜30nmのTiO2粒子を含有するペーストを、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)で覆われたガラス基板に1回又は数回被覆し、ガラス基板の厚さは、4mmであり、ガラス基板の電気抵抗は、10Ω/□であった。次に、被覆されたガラス基板を450℃で30分間焼結し、焼結した多孔性TiO2層の厚さは10〜12μmであった。
【0050】
実施例1で調製されたルテニウム錯体をアセトニトリルとt−ブタノール(1:1v/v)の混合物に溶解し、0.5mMのルテニウム錯体を含有する色素溶液を調製した。次に、多孔性TiO2層で覆われた前述のガラス基板を色素溶液に浸けて、多孔性TiO2層に色素を付着させた。16〜24時間後、得られたガラス基板を取り出し、乾燥して光電陽極を得た。
【0051】
フッ素ドープ酸化スズで覆われたガラス基板を穿孔して、直径0.75μmの入口を形成し、この入口を電解質の注入のために使用した。次に、H2PtCl6(1mlのエタノール中2mgのPt)の溶液を、フッ素ドープ酸化スズで覆われたガラス基板に被覆し、得られたガラス基板を400℃で15分間加熱して、陰極を得た。
【0052】
続いて、厚さ60μmの熱可塑性ポリマー層を、光電陽極と陰極の間に配置した。これらの2つの電極を120〜140℃で加圧して、互いに接着させた。
【0053】
次に、電解質を注入し、ここで電解質は、0.03MのI2/0.3MのLiI/0.5Mのt−ブチル−ピリジンを含有するアセトニトリルの溶液であった。入口を熱可塑性ポリマー層で密閉した後、本実施例の色素増感太陽電池を得た。
【0054】
比較例
本比較例の色素増感太陽電池の作製方法は、実施例1で調製したルテニウム錯体をN719に代えた以外は、実施例2に記載されたものと同じである。
【0055】
試験方法及び結果
光電特性の試験
実施例2及び比較例で作製した色素増感太陽電池の短絡電流(JSC)、開放電圧(VOC)、充填率(FF)、光電変換効率(η)及び入射光子電流変換効率(IPCE)をAM1.5の刺激光の照射下で測定した。試験結果を以下の表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1の試験結果は、本発明のルテニウム錯体を用いて作製された色素増感太陽電池の短絡電流(JSC)、開放電圧(VOC)及び充填率(FF)が、N719色素を用いて作製された色素増感太陽電池と比較して改善されていることを示す。これは、本発明のルテニウム錯体が色素増感太陽電池の光電変換効率を改善できることを意味する。
【0058】
結論として、本発明は、目的、方法及び効果、さらには技術及び研究及び設計のような幾つかの点において従来技術と異なっている。本発明は好ましい実施態様に関連して説明されてきたが、本明細書以降において特許請求される本発明の範囲を逸脱することなく他の多くの可能な修正及び変更を行えることが、理解されるべきである。したがって、本発明の範囲は、本明細書に添付されている請求項によって定義されるべきであり、前記の実施例は、本発明の範囲をいかようにも制限するものとして考慮されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
RuL2(NCS)2m
(I)
〔式中、
Lは、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボン酸、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジスルホン酸又は2,2′−ビピリジル−4,4′−ジホスホン酸であり;
Aは、第四級ホスホニウムカチオンであり;そして
mは、1、2、3又は4である〕
により表されるルテニウム錯体。
【請求項2】
Lが、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボン酸である、請求項1記載のルテニウム錯体。
【請求項3】
Lが、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジスルホン酸である、請求項1記載のルテニウム錯体。
【請求項4】
Lが、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジホスホン酸である、請求項1記載のルテニウム錯体。
【請求項5】
Aが、P+1234であり、そしてR1、R2、R3及びR4が、それぞれ独立して、C120アルキル、フェニル又はベンジルである、請求項1記載のルテニウム錯体。
【請求項6】
Aが、P+1234であり、そしてR1、R2、R3及びR4が、それぞれ独立して、C120アルキル、フェニル又はベンジルである、請求項2記載のルテニウム錯体。
【請求項7】
Aが、テトラアルキルホスホニウム、ベンジルトリアルキルホスホニウム又はフェニルトリアルキルホスホニウムであり、そしてアルキルがC120アルキルである、請求項2記載のルテニウム錯体。
【請求項8】
mが、2、3又は4である、請求項2記載のルテニウム錯体。
【請求項9】
Aが、P+1234であり、そしてR1、R2、R3及びR4が、それぞれ独立して、C120アルキル、フェニル又はベンジルである、請求項3記載のルテニウム錯体。
【請求項10】
mが、2又は3である、請求項3記載のルテニウム錯体。
【請求項11】
Aが、P+1234であり、そしてR1、R2、R3及びR4が、それぞれ独立して、C120アルキル、フェニル又はベンジルである、請求項4記載のルテニウム錯体。
【請求項12】
mが、2又は3である、請求項4記載のルテニウム錯体。
【請求項13】
ルテニウム錯体が、色素増感太陽電池のための色素化合物である、請求項1記載のルテニウム錯体。
【請求項14】
式(I)が、以下の式(I−1)又は(I−2):
【化5】

である、請求項1記載のルテニウム錯体。
【請求項15】
ルテニウム錯体が、色素増感太陽電池のための色素化合物である、請求項14記載のルテニウム錯体。
【請求項16】
(a)以下の式(I):
RuL2(NCS)2m
(I)
〔式中、
Lは、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボン酸、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジスルホン酸又は2,2′−ビピリジル−4,4′−ジホスホン酸であり;
Aは、第四級ホスホニウムカチオンであり;そして
mは、1、2、3又は4である〕
により表されるルテニウム錯体を含む光電陽極、
(b)陰極、及び
(c)光電陽極と陰極の間に配置された電解質層
を含む、色素増感太陽電池。
【請求項17】
(A)ルテニウム錯体の含有量が0.01〜1重量%である、以下の式(I):
RuL2(NCS)2m
(I)
〔式中、
Lは、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジカルボン酸、2,2′−ビピリジル−4,4′−ジスルホン酸又は2,2′−ビピリジル−4,4′−ジホスホン酸であり;
Aは、第四級ホスホニウムカチオンであり;そして
mは、1、2、3又は4である〕
により表されるルテニウム錯体、及び
(B)含有量が99.99〜99重量%であり、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルホルムアミド及びN−メチル−2−ピロリジノンからなる群より選択される、有機溶媒
を含む、色素溶液。

【公開番号】特開2010−100850(P2010−100850A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241938(P2009−241938)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(598062332)エバーライト ユーエスエー、インク (13)
【Fターム(参考)】