説明

ルーフキャリア

【課題】耐久性を向上させたルーフキャリアを提供する。
【解決手段】本発明のルーフキャリア1は、搬送物を積載するキャリアバー3と、このキャリアバー3を車体に取り付けるための取付部材4を備えている。取付部材4を構成するスライダー5のスライダー部51の底面52とキャリアバー3の底面31との間には、強化部材6が設けられている。この強化部材6は、ルーフキャリア1の耐久性を向上させるためのものであり、スライダー部51の底面52とキャリアバー3の底面31との間に介在する第一面61と、スライダー部51の両側面59とキャリアバー3の両側面34との間に介在する第二面62とからなり、例えば板材を曲げ加工することにより一体に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーフキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
サーフボードや自転車などの搬送物を固定して搬送するために自動車のルーフ上面に取り付けられるルーフキャリアとしては、一対のルーフレールと、搬送物が固定されるキャリアバーと、各ルーフレールに設けられたキャリアバーを固定するためのフット本体とからなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、フット本体の一面側に配されてなると共にキャリアバーをフット本体に固縛可能なるスライダーを備えると共に、キャリアバーとスライダーとの間に固定プレートを設けてキャリアバーとスライダーとを固定している。
【0003】
【特許文献1】特開2000−043650号公報(図1、段落0023等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、ルーフキャリアの耐久性を向上させることが求められている。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、耐久性が向上されたルーフキャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のルーフキャリアは、搬送物を積載するキャリアバーと、前記キャリアバーを車体に取り付けるための取付部材とを少なくとも備えたルーフキャリアにおいて、前記取付部材は、前記キャリアバーを固定する固定部材を備え、この固定部材と前記キャリアバーとは、一方が他方に嵌合され、かつこの一方が他方を押圧した状態で強化部材を介して固定され、この強化部材は、前記固定部材と前記キャリアバーとの間の押圧力を受ける押圧力受け部と、この押圧力受け部と一体であり、前記押圧力をかける押圧方向とは異なる方向の力に対向する対向部とを有することを特徴とする。
【0007】
従来のルーフキャリアでは、例えば重量の大きい積載物を長時間に亘ってルーフキャリア上に積載したり、車両からの振動がルーフキャリアに経時的に繰り返し作用したりすると、固定部材とキャリアバーとの押圧部分で疲労破壊が生じやすかった。本発明のルーフキャリアによれば、押圧力を受ける押圧力受け部とこの押圧力とは異なる方向の力に対向する対向部とを備えた強化部材を設けることで、疲労破壊を抑制でき耐久性を向上させることができる。さらに、この対向部が押圧力受け部と一体であることで、強化部材の剛性を強化できるため、疲労破壊を抑制することができる。
【0008】
前記押圧力受け部は、前記押圧方向に対して垂直又はほぼ垂直な第一の面からなるとともに、前記対向部は、前記固定部材と前記キャリアバーとの間隙中に存在し、かつ、前記第一の面の端部から前記固定部材と前記キャリアバーとの対向面間の少なくとも一部にわたって延びる第二の面からなることが好ましい。このように強化部材を第一面と第一面に延設された延設面とから構成すれば、簡易に疲労破壊を抑制できる。
【0009】
ここで、前記押圧力受け部に、該押圧力受け部の剛性を高める補強部がさらに設けられていることが挙げられる。この補強部がさらに設けられていることで、押圧力受け部の剛性をより高め、疲労破壊を抑制できる。
【0010】
前記対向部が、前記固定部材又は前記キャリアバーに接触していることが好ましい。対向部が固定部材又はキャリアバーに接触していることで、押圧力を対向部を介して固定部材又はキャリアバーにさらに分散させることができるので、より疲労破壊を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のルーフキャリアによれば、強化部材を設けることで疲労破壊を抑制でき、耐久性を高めることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のルーフキャリアについて、図1を用いて説明する。図1は、本発明のルーフキャリアを車体上に設けた状態を説明するための斜視図である。ルーフキャリア1は、車体2のルーフ上面21に設けられている。ルーフキャリア1は、積載物を搭載するための一対のキャリアバー3と、キャリアバーを車体2のルーフ上面21に取付台22を介して取り付ける取付部材4とを備えている。なお、本実施形態においては、取付部材4はルーフ上面21に設けられているが、ルーフレールを介して接続してもよい。
【0013】
キャリアバー3と取付部材4について、図2〜4を用いて詳細に説明する。図2は、キャリアバー及び取付部材の要部断面図であり、図3はキャリアバー及び取付部材の正面図、図4は取付部材の要部斜視図である。
【0014】
キャリアバー3は、中空の矩形筒状体であり、その底面31に開口32を有している。この開口32に取付部材4を構成するスライダー5(後述する)が嵌合する。また、キャリアバー3の側方(キャリアバーの長手方向端部)は開放された開放部33となっている。
【0015】
取付部材4は、板状の支持部材41を備えている。支持部材41の一端側は直角に屈曲された屈曲部42となっている。屈曲部42には締結部材43が設けられており、支持部材41、即ち取付部材4はこの締結部材43を介して取付台22に固定されている。
【0016】
支持部材41の他端側は、屈曲部42とは逆の方向に直角に屈曲され、キャリアバー3を支持する支持面44となっている。また、支持部材41の支持面44と屈曲部42との間には弾性部として機能する斜面部45が屈曲により設けられている。また、支持面44には、2つの挿入孔46が設けられている。
【0017】
支持面44には、固定部材であるスライダー5が設けられている。スライダー5は、板材を曲げ加工してなるものであり、側方(長手方向の端部)は開放された筒状のスライダー部51を備えている。スライダー部51の底面52(支持面44側)の中央部は開放され、この中央部の縁部53には、それぞれ挿入部材54が延設されている。挿入部材54は、支持面44の挿入孔46に挿入され、これによりスライダー5は固定されている。なお、スライダー5の形状はかかる形状に限定されず、少なくともスライダー部51と挿入部材54を備えていればよい。
【0018】
各挿入部材54には、略矩形状のピン孔55が設けられている。各ピン孔55は、支持部材41側に近づくにつれてスライダー部51との距離が狭まるように傾斜をつけた状態で、互いに対向して設けられている。このピン孔55には、ピン孔55間に亘ってピン56が嵌合しており、ピン56はピン孔55を移動可能に構成されている。このピン56には、ピン56の中心部に設けられた貫通孔57に螺合するネジ58がピン56に対して直角となるように設けられている。ネジ58は、ネジ58の頭部が支持部材41に設けられたねじ孔47に挿入されている。
【0019】
かかる取付部材4でキャリアバー3を固定するには、まず、挿入部材54を挿入孔46に挿入して支持面44に固定されたスライダー5のスライダー部51をキャリアバー3の開放部33を介して開口32にスライド挿入する。そして、ネジ58を締着させる。この締着時に、ネジ58の回転に合わせてネジ58に螺合するピン56がピン孔55を移動する。ピン56の移動により、スライダー部51が下方に移動する。
【0020】
スライダー部51が下方に移動することにより、スライダー部51の底面52がキャリアバー3の底面31を押圧する。即ち、スライダー部51の底面52は下方向を押圧方向とする押圧面として機能するものである。
【0021】
ここで、スライダー部51の底面52とキャリアバー3の底面31との間には、強化部材6が設けられている。強化部材6は、ルーフキャリア1の耐久性を向上させるためのものであり、強化部材6は、押圧方向にかかる押圧力を受ける押圧力受け部を備えると共に、押圧方向とは異なる方向の力に対向する対向部を備える。この対向部は、押圧力受け部の剛性を上昇させるための補強部として機能するものであり、また、設置状態により押圧力を分散させる分散部としても機能するものである。本実施形態では、具体的には、強化部材6は、スライダー部51の底面52とキャリアバー3の底面31との間に介在する第一面61と、スライダー部51の両側面59とキャリアバー3の両側面34との間に介在する第二面62とからなる。即ち、本実施形態では、第一面61が前述した押圧力を受ける押圧力受け部として機能し、第二面62が押圧方向とは異なる方向の力に対向する対向部として機能している。また、このように強化部材6が面から構成されていることで、この強化部材6も板材を曲げ加工により簡易に形成されうる。
【0022】
第二面62は、第一面61と一体となっているものであり、第一面61の長手方向の側端部に立ち上がって延設されている。この場合、対向部としての第二面62が第一面61と一体として設けられていることで、第二面62は第一面61の剛性を上昇させる補強部として機能することが可能である。この第二面は、本実施形態では第一面61に対して垂直に立ち上がっているものであるが、略垂直でもよい。
【0023】
本実施形態における第一面61は、長手方向も短手方向もスライダー部51より長く、押圧面としてのスライダー部51の底面52よりもキャリアバー3との接触面積が広い。従って、強化部材6はこの第一面61を備えることで、スライダー部51がキャリアバー3の底面31を押圧した場合の押圧力をより広い範囲へ分散させることができる。その結果、積載荷重を上昇させた場合に生じやすい押圧部分での疲労破壊、即ちキャリアバー3の底面31が疲労破壊されてしまうことを抑制することができる。また、第一面61は、スライダー5の挿入部材54の周囲を囲む開口63を有している。
【0024】
さらに、かかる強化部材6は、第二面62を備えることで、第一面61の剛性を上昇させることができる。さらに、この場合に第二面62がキャリアバー3の側壁に接触しているので、スライダー部51とキャリアバー3との押圧力を側壁へ分散できる。従って、キャリアバーの底面31の疲労破壊をより抑制することができる。即ち、本実施形態においては、対向部としての第二面62は、押圧力を分散させる機能と剛性を上昇させるための機能とを備えている。
【0025】
従って、本実施形態においては、本形状の強化部材6を備えていることにより、キャリアバー3の疲労破壊が抑制されているので、ルーフキャリア1の耐久性を向上させることができる。また、本実施形態においては、板状の部材を曲げ加工して得られた強化部材6を設けるという非常に簡易な構成でルーフキャリア1の耐久性を向上させている。この強化部材6は、例えば以下で説明するような異なる実施形態のルーフキャリアであっても適用することが可能であり、簡易に耐久性を向上できる。
【0026】
強化部材6の別の実施形態について、図5を用いて説明する。図5は、強化部材の設置について説明するためのキャリアバー及び取付部材の要部断面図である。
【0027】
図5(a)で示す実施形態は、上述した図2〜図4に示す実施形態とは、スライダー部51がキャリアバー3を押圧する方向が上方向である点が異なっている。この場合には、スライダー部51の押圧面はスライダー部51の上面71であり、強化部材6は、この押圧面であるスライダー部51の上面71と、キャリアバー3の上面72との間に、押圧力受け部としての第一面61が介在している。また、第一面61の端部には、対向部としての第二面62が立ち上がって延設されている。このように押圧方向が異なっている場合においても、強化部材6を設けることで、ルーフキャリアの耐久性を向上させることができる。
【0028】
図5(b)で示す実施形態では、上述した図2〜図4に示す実施形態とは、キャリアバー3の断面形状が略半円状であり、スライダー部51もキャリアバー3に合わせて断面形状が略半円状である点が異なっている。この場合、押圧面はスライダー部51の底面52であり、強化部材6は、この押圧面であるスライダー部51の底面52と、キャリアバー3の底面31との間に、押圧力受け部としての第一面61が介在している。また、第一面61の端部間に亘って対向部としての第二面62が延設されている。即ち、本実施形態では、強化部材6も断面形状が略半円状となり、スライダー部51とキャリアバー3とからなる空間全体に強化部材6が設けられている。なお、ここでは押圧方向が下方向であるが、押圧方向は上方向でもよい。この場合には、第二面62が押圧力受け部として、第一面61が対向部として機能する。
【0029】
このように押圧力受け部及び対向部を有していれば、強化部材6の形状はどのようなものであってもルーフキャリア1の耐久性を向上させることができる。例えば、図5(c)に示すように、強化部材6がキャリアバー3の内壁全面を覆うように設けてもよい。
【0030】
また、図5(d)に示す実施形態では、図5(c)に示した実施形態において、スライダー部51の上面71と、強化部材6の上面73との間に空隙74を設けると共に、強化部材6の上面73に空隙74に向かうボス75を例として3つ設けている。このボス75は補強部材として機能するものであり、第二面62だけでなくさらに補強部材としてのボス75を設けることで、強化部材6の剛性が上昇してより一層耐久性を向上させることができる。なお、このボス75を強化部材6とキャリアバー3又はスライダー部51との接触面に設けると押圧力がボス75に集中してしまうのでルーフキャリアの耐久性を向上させることができない。
【0031】
図5(e)に示す実施形態では、図5(a)に示した実施形態において、強化部材6の各第二面62が、スライダー部51にもキャリアバー3にも接触していないものである。このように強化部材6の第二面62がそれぞれスライダー部51にもキャリアバー3にも接触していない場合には、第二面62は押圧力を分散させる機能は有さないが、第一面61の剛性を向上させる機能を有する。
【0032】
また、図5(f)に示す実施形態では、図5(a)に示した実施形態において、キャリアバー3の上面の中央に凹部76が設けられているものであり、このキャリアバー3の形状に合わせてスライダー部51及び強化部材6にも上面中央部に凹部77、78が設けられている。このように第一面61が凹部78(又は凸部)を有している場合、第一面61の凹部78が押圧方向の押圧力を受ける押圧力受け部であると共に、第一面61の他の部分が、この押圧方向以外の押圧力を受けている。従って、第一面61は全体として押圧力受け部として機能すると共に、第一面61は、押圧方向(上方向)とは異なる方向の力に対向する対向面としても機能している。また、本実施形態における第二面62は、第一面61の剛性を向上させることができると共に、第二面62がキャリアバー3に接触しているので、押圧力を分散させることができる。従って、本実施形態の強化部材6を設けることでルーフキャリア1の耐久性が向上する。
【0033】
さらにまた、図6に示す実施形態のように設けてもよい。図6は、本発明の別の実施形態を説明するための模式的正面図である。本実施形態では、取付部材4にブロック状の支持部材81を形成し、この支持部材81に貫通口82を設け、この貫通口82にキャリアバー3が嵌合するように構成されている。そして、キャリアバー3を押圧手段83により押圧して貫通口82の底面84に押圧することで固定している。即ち、本実施形態においては押圧面がキャリアバー3の底面31であり、押圧方向は下方向である。
【0034】
そして、キャリアバー3の底面31と貫通口82の底面84との間には、強化部材6が設けられている。この強化部材6も、押圧方向に対して垂直な面である第一面61と、第一面の端部に立ち上がって延設された第二面62とを備え、押圧力受け部として第一面61が機能すると共に、第二面62が対向部として機能する。従って、このようにキャリアバー3が取付部材4に嵌合される形状であっても、耐久性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は自動車部品製造分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ルーフキャリアの構成を示す模式図である。
【図2】キャリアバー及び取付部材の要部断面図である。
【図3】キャリアバー及び取付部材の正面図である。
【図4】取付部材の要部斜視図である。
【図5】キャリアバー及び取付部材の要部断面図である。
【図6】本発明の別の実施形態を説明するための正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ルーフキャリア
2 車体
3 キャリアバー
4 取付部材
5 スライダー
6 強化部材
31 底面
32 開口
41 支持部材
42 屈曲部
43 締結部材
44 支持面
46 挿入孔
51 スライダー部
52 底面
53 縁部
54 挿入部材
61 第一面
62 第二面
74 空隙
75 ボス
81 支持部材
82 貫通口
83 押圧手段
84 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を積載するキャリアバーと、前記キャリアバーを車体に取り付けるための取付部材とを少なくとも備えたルーフキャリアにおいて、
前記取付部材は、前記キャリアバーを固定する固定部材を備え、
この固定部材と前記キャリアバーとは、一方が他方に嵌合され、かつこの一方が他方を押圧した状態で強化部材を介して固定され、
この強化部材は、
前記固定部材と前記キャリアバーとの間の押圧力を受ける押圧力受け部と、
この押圧力受け部と一体であり、前記押圧力をかける押圧方向とは異なる方向の力に対向する対向部と
を有することを特徴とするルーフキャリア。
【請求項2】
前記押圧力受け部は、前記押圧方向に対して垂直又はほぼ垂直な第一の面からなるとともに、
前記対向部は、前記固定部材と前記キャリアバーとの間隙中に存在し、かつ、前記第一の面の端部から前記固定部材と前記キャリアバーとの対向面間の少なくとも一部にわたって延びる第二の面からなることを特徴とする請求項1に記載のルーフキャリア。
【請求項3】
前記押圧力受け部に、この押圧力受け部の剛性を高める補強部がさらに設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のルーフキャリア。
【請求項4】
前記対向部が、前記固定部材又は前記キャリアバーに接触していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のルーフキャリア。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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