説明

レゴリス材料からガスを放出させてこれを回収するシステムおよび方法、遠隔の位置で使用される構造材料を供給する方法

【課題】太陽エネルギを利用して、月面などのレゴリスからガスを放出させて回収する。
【解決手段】システム20は、支持体26の頂部に設けられたモータ24によって駆動される太陽光捕捉ミラー22を備え、この太陽光捕捉ミラー22は、捕捉した太陽光線をもう1つの回転ミラー28へ導く。可動フレーム34は、モータによって駆動され、ガイド32に沿って案内されて、システム20のハウジング40に対して垂直方向に移動することができる。この可動フレーム34の頂部に取り付けられている集束レンズ30が、ガスを放出させるように、レゴリス材料43上に太陽光線41を集束させる。システム20はさらに、放出したガスを捕集するための捕集チューブ50を備え、さらには、回収ライン54,58およびガス/液体貯蔵タンク56,60を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、月面などの表面上を移動することができて、レゴリス(regolith:表土)の領域上にガス回収システムを運び、太陽エネルギを利用して種々のガスを放出させ、放出したガスを回収する輸送車両に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙旅行、移住、および宇宙ステーション建設の技術分野においては、いくつかの物資供給の問題がある。月あるいは他の地球外の天体上にステーションを実現する際の問題の一つは、必要なガスなどの必需品のすべてを輸送しなければならないことである。
【0003】
例えば、必要なガスのすべてを月上のステーションまで輸送する場合、月まで行く乗物内にかなり広い貯蔵スペースを必要とする。
【0004】
一方で、月面特に月面のレゴリスの中に、あるいは月面上の岩の欠片や塵の中に、回収可能な大量のガスが含まれていることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それらのガスを放出させ、回収し、利用するために、太陽エネルギを利用することが提案されている。しかし、これまで提案されているシステムは、実用的ではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
レゴリス材料からガスを放出させてこれを回収するシステムが、レゴリス材料上に捕集スペースを画定するように移動可能なフレームを備えている。ミラーが、太陽エネルギを捕捉し、捕集スペース内に画定されたレゴリス上にレンズを通して太陽エネルギを集束させる。このシステムはさらに、放出したガスを回収する回収装置を備えている。このようなシステムを運転する方法について開示し、特許請求の範囲に記載している。さらには、構造材料を形成する方法について開示し、特許請求の範囲に記載している。
【0007】
本発明の上記および他の特徴は、以下の詳細な説明および図からよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】レゴリスからガスを回収する輸送車両の第1の外観を示す図。
【図1B】図1Aの実施例の一部を拡大して示す図。
【図2】図1Aの実施例の詳細を示す図。
【図3】本発明で利用される太陽エネルギの光路を示す図。
【図4】図1Aのステップに続くステップを示す図。
【図5】融解したレゴリスから生成されたブロックの使用を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1Aは、月や他の天体の表面から最初の数メートルの深さまでに見られるようなレゴリス材料43からガスを回収するシステム20である。図示したように、このシステム20は、支持体26の頂部に設けられたモータ24(概略的に示した)によって駆動される太陽光捕捉ミラー22を備え、この太陽光捕捉ミラー22は、太陽光線を最適に捕捉し、捕捉した太陽光線をもう1つの回転ミラー28(回転ミラー28は、自己のモータによって駆動される)へ導くように作動し得る。システム20は、これら2つのミラーを適切に整列させるコントローラを周知のように備えている。
【0010】
集束レンズ30が、可動フレーム34の頂部に取り付けられている。この可動フレーム34は、モータ・ガイド32によって駆動され、システム20のハウジング40に対して垂直方向に移動することができる。車輪36は、モータ38(概略的に示した)を備えており、システム全体を地面に沿って移動させるように動作可能である。
【0011】
レンズ30は、レゴリス43の外面上へ高強度の太陽エネルギを導く太陽光線41をつくり出す。月面のレゴリスには、多くの種類のガスが大量に含まれていることが知られている。例えば、燃料として使用できる十分な量の水素(H2)が存在している。さらには、水(H2O)、窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)および一酸化炭素(CO)が存在しており、どれも様々な生活支援機能に利用するために回収することができる。さらには、レゴリスからヘリウム3(3He)および重水素を分離することができ、分離したものは、核融合エネルギ(地球に戻ってからの)および低温技術(cryogenics)にそれぞれ利用することができる。
【0012】
図1Bにおいて、太陽光線41は、レゴリスの方向へ導かれている。このようなシステムを用いて、700℃〜800℃(1292°F〜1472°F)のオーダまたはそれ以上の高温を実現できると考えられている。
【0013】
フレーム34がレゴリス43の表面下に埋まるように下方へ移動した状態で、フレーム34内に放出したガスが捕集される。このように、フレーム34は、捕集スペースを画定する。捕集されたガスは、捕集チューブ50内へ移動する。この捕集チューブ50は、少なくとも1つの冷凍機(cryocooler)52を備えている。放出した数種類のガスからなる混合ガスは、冷却されることによって、別個のガスに分離され、分離したガスは、回収ライン54,58中へ分岐して、さらにガス/液体貯蔵タンク56,60へ導かれる。あるいは、捕集チューブ50は、チャンバからガスを除くためのターボポンプ200を備えている。捕集チューブ50は、また、レゴリスから放出したガスを分離して回収するための、冷凍機およびターボポンプの両方を備えるものとしてもよい。
【0014】
また、レゴリスの温度の上昇に伴って、ガスが個別に分離され得る。すなわち、特定の低い温度で放出されるガスもあれば、さらに高い温度で放出されるガスもある。これによって、別々のガスが捕集チューブに順次到達するので、分離がさらに容易になる。
【0015】
図2は、捕集チューブ50に沿って配置されたガス回収装置の拡大図である。図示したように、ガスを第1の温度まで冷却する第1の冷凍機52がある。これによって、混合ガスから特定のガスが放出され、貯蔵タンク56に回収される。弁57、容器56へ導くラインを遮断できるように配置されている。その後、第2の冷凍機152が混合ガスをさらに冷却することによって、別のガスが放出され、個別の弁57を備えた貯蔵タンク60に回収される。このようにして、レゴリスから複数の種類のガスを回収することができる。3つ以上の冷凍機を連続的に使用してもよい。このプロセスは、蒸留塔に似ている。第1のガスが凝縮して回収されている間に、残りのガスは流れ続けている。こうして、ガスを構成成分毎に分離することが可能となる。
【0016】
あるいは、ガスを回収するために、上記の方法の代わりに、ターボポンプまたは真空ポンプを利用してもよい。さらには、ガスを分離して回収するためのさまざまな方法を利用することができる。
【0017】
図3は、ハウジング34によって画定されたエンクロージャ内での太陽光線41の動き100を概略的に示している。図のように、集束レンズ30は、モータ・ガイド42,102に沿って移動し、前後に動くことができ、さらにはフレーム34の境界内で横方向に動くことができる。単一経路への動きを単純化し得るリニアフレネルレンズ(Fresnel lens)を使用してもよい。
【0018】
ある時点で、ハウジング34内に獲得されたレゴリスの一部から回収可能なガスのすべての処理が完了する。その時点で、図4に示すように、ハウジング34を、レゴリスから離して垂直上方へ引っ込めることができる。すると、システム20を、直前の領域104に隣接する領域などの新しい位置へ移動させることができる。
【0019】
残されたレゴリスは、融解していることがあり、さらには比較的堅い材料のタイルの形態をなすことがある。この融解したレゴリスを含むタイルは、図5に示すように、宇宙ステーションにおいて他の用途に使用されるプラットフォームを形成するために利用することができる。
【0020】
プラットフォームを形成するために各々のタイル104を移動させてもよいが、単にシステム20を多数の隣接する各領域上で使用することによって、融解したレゴリスから固体のプラットフォームを形成することも可能である。
【0021】
従って、本発明のシステム20は、全体として、上述したように、ガスを回収して地球から宇宙ステーションまでガスを輸送することを不要とするだけではなく、さらに、「廃棄物」がタイル104を形成し、このタイル104は、図5に示すように建物の構造材料に利用することができる。
【0022】
フレーム内に取り付けられたレンズを使用する代わりに、フレーム外のレンズを用いて窓を通して太陽光線を導くようにしてもよい。また、一対のミラー22,28を使用する代わりに、単一のミラーの構成を利用してもよい。さらには、さまざまな他の用途で再利用する熱を回収するために、いくつかの熱交換器をガス回収プロセスに組み込むことができる。
【0023】
本発明の実施例を開示したが、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、いくつかの変形がなされ得ることを理解されよう。
【符号の説明】
【0024】
20…システム
22…太陽光捕捉ミラー
24…モータ
26…支持体
28…回転ミラー
30…集束レンズ
32…ガイド
34…可動フレーム
41…太陽光線
43…レゴリス材料
50…捕集チューブ
54…回収ライン
56…ガス/液体貯蔵タンク
58…回収ライン
60…ガス/液体貯蔵タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゴリス材料からガスを放出させてこれを回収するシステムであって、
レゴリス材料上に捕集スペースを画定するように移動可能な可動フレームと、
太陽エネルギを捕捉し、ガスを放出させるように、上記捕集スペース内に画定されたレゴリス上に、捕捉した太陽エネルギを、レンズを通して集束させるミラーと、
放出したガスを回収する回収装置と、
を備えるシステム。
【請求項2】
上記可動フレームは、レゴリスの表面に沿って駆動され得る乗物上で垂直方向に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
上記システムは、上記捕集スペース内で太陽エネルギの光線を動かす構造体を備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
第1のミラーが太陽エネルギを捕捉してこれを回転ミラーへ導き、この回転ミラーは、受けた太陽エネルギを集束レンズ上に集束させることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
上記回収装置は、上記放出したガスを冷却する少なくとも1つの冷凍機を含み、これによって、上記ガスが構成成分毎に分離されて回収され得ることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
個々に回収されるガスをそれぞれ放出させるために、異なる温度に設定された複数の冷凍機を備えることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
ポンプが、回収されたガスを貯蔵用の位置へ移動させることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
上記可動フレームは、モータ・ガイドを備えており、移動可能なプラットフォームに対して垂直方向に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
集束レンズが、一連のモータ・ガイドを備えており、上記捕集スペースの境界内において2次元の方向に移動可能であることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
レゴリス材料からガスを放出させてこれを回収する方法であって、
レゴリス材料上に捕集スペースを画定するように可動フレームを移動させるステップと、
太陽エネルギを捕捉し、ガスを放出させるように、上記捕集スペース内に画定されたレゴリス上に、捕捉した太陽エネルギを、レンズを通して集束させるステップと、
放出したガスを回収するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
上記レゴリスの表面に沿って駆動され得る乗物上で、上記フレームが垂直方向に移動可能であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記捕捉された太陽エネルギが、捕集スペースによって画定された境界内で移動することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
第1のミラーが太陽エネルギを捕捉してこれを回転ミラーへ導き、この回転ミラーは、受けた太陽エネルギを集束レンズ上に集束させることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
上記放出した混合ガスから個々のガスを選別するために、上記放出した混合ガスを冷却することによって分離したガスを回収するステップをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項15】
個々のガスを分離させて回収するために、複数の冷凍機が、上記放出した混合ガスを異なる温度に冷却することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
遠隔の位置で使用される構造材料を供給する方法であって、
(a)遠隔の位置のレゴリス表面上に、非常に高い温度で、太陽エネルギを供給するステップと、
(b)ハウジングの境界内で融解するようにレゴリス材料を加熱するステップと、
(c)ステップ(b)で融解したレゴリスを冷却し、冷却したレゴリスを構造材料として利用するステップと、
を含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−140022(P2011−140022A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291451(P2010−291451)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.
【Fターム(参考)】