説明

レジスタ

【課題】細長い空気吹出口を有し、少数のフィンを空気吹出口の内側にその長手方向に沿って設けたレジスタにおいて、フィンの向きを変えたときの風の指向性を改善することができるレジスタを提供する。
【解決手段】 長手方向に長く短手方向に短い細長の空気吹出口10を有し、空気吹出口10の内側に長手方向に沿って前可動ルーバ3が配設されたレジスタである。前可動ルーバ3は1乃至3枚の横フィン13が空気吹出口10の長手方向に向けて配設される。空気吹出口10近傍の長手方向に沿った両内側面に、上流側に傾斜面11a,12aを有する山形凸条11、12が横フィン13の長手方向に沿って形成される。山形凸条11,12の傾斜面11a,12aの方向は横フィン13に略向けて形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の空調の空気吹出口に使用される空気吹出調整用のレジスタに関し、特に長手方向に長く短手方向に短い細長の空気吹出口を有し、空気吹出口の内側に長手方向に沿って少数のフィンを設けたレジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の空気吹出調整用のレジスタとして、通風路を形成するベゼルまたはリテーナ内に、横可動ルーバと縦可動ルーバを前後して配設し、ベゼルに設けた空気吹出口から空気を吹き出す際、横可動ルーバ、縦可動ルーバの各フィンの角度を変えて空気の吹出し方向を調整するレジスタが、一般に、自動車の空調などで使用されている。
【0003】
この種のレジスタとして、長手方向に長く短手方向に短い細長の空気吹出口を有し、空気吹出口の内側に1〜3枚程度の少数の可動フィンを設けたレジスタが、主として意匠性やデザイン的なデマンドから製作される場合がある。このようなレジスタは、例えば下記特許文献1などで知られている。
【特許文献1】特開2002−103954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この細長の空気吹出口を有するレジスタは、その空気吹出口が長手方向に長く短手方向に短い細長形状であるが故に、必然的に長手方向に長い可動フィンの枚数が1〜3枚程度と少数となり、通常のレジスタの前可動ルーバのフィンに比べ、そのフィンの数は少なくなる。
【0005】
しかし、フィンの長手方向に長く細長の空気吹出口を有したレジスタでは、長手方向に沿ったフィンの枚数が例えば1、2枚程度と少数になると、フィンの向きを空気吹出口の短手方向に沿った上下または左右方向に変えたとしても、充分にその方向に風の向きを変えることが難しく、風の指向性が悪いという課題があった。
【0006】
すなわち、長手方向に長く短手方向に短い細長形状の空気吹出口33を設けたレジスタでは、図9に示すように、前可動ルーバ30のフィン31の枚数が1〜3枚程度の少数となると、短手方向に短い通風路32内で空気流が図9の上下方向に狭窄され、さらにフィン31による空気抵抗によって絞られる。
【0007】
このために、ある程度の送風圧力を持った空気流は、通風路32を通過する際、短手方向に絞られ、直線方向に加速されて吹き出すこととなる。このため、1、2枚程度と少数のフィン31を上向き或いは下向きに変えたとしても、図9のように、フィン31の隙間から送風される直線方向の空気流によって、上向き或いは下向きの風の曲がり具合が強く影響を受けやすい状態となる。このために、フィン31の向く方向に風が曲がりにくく、前可動ルーバ30のフィン31の向きを変えたとき、風の指向性が悪化しやすいという課題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、細長い空気吹出口を有し、少数のフィンを空気吹出口の内側に長手方向に沿って設けたレジスタにおいて、フィンの向きを変えたときの風の指向性を改善することができるレジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のレジスタは、長手方向に長く短手方向に短い細長の空気吹出口を有し、空気吹出口の内側に該長手方向に沿って可動ルーバが配設されたレジスタにおいて、該可動ルーバは1枚乃至3枚のフィンが該空気吹出口の該長手方向に向けて配設され、該空気吹出口近傍の長手方向に沿った両内側面に、上流側に傾斜面を有する山形凸条が該フィンの長手方向に沿って形成され、該山形凸条の傾斜面の方向は該フィンに略向けて形成されたことを特徴する。
【0010】
ここで、上記山形凸条は、上記空気吹出口近傍の内側面の対向した両側に、該空気吹出口の長手方向に同一横断面を持って連続して形成することが好ましい。
【0011】
また、上記山形凸条の下流側の面は、前方に向けて広がるように開口した前方傾斜面で形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成のレジスタは、可動ルーバのフィンが1乃至3枚と少数であっても、通風路を流れる空気流は、空気吹出口から吹き出されるとき、空気吹出口近傍の内側面の対向した両側の山形凸条の上流側の傾斜面に沿って流れ、可動ルーバのフィン側(中央寄り)に曲げられる。これにより、空気吹出口から吹き出される空気流は、その大部分が可動ルーバのフィンの表面に沿って流れるようにフィンの方向に曲げられ、1乃至3枚の少数のフィンを空気吹出口の内側に設けたレジスタであっても、フィンの向きを変えたときの風の指向性を効果的に改善することができる。
【0013】
また、山形凸条を、空気吹出口近傍の内側面の対向した両側に、空気吹出口の長手方向に同一横断面を持って連続して形成し、さらに、山形凸条の下流側の面を、前方に向けて広がるように開口した前方傾斜面で形成すれば、前可動ルーバのフィンの向きを変えたときの風の指向性を一層改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はレジスタの斜視図を示し、図2はその正面図を示し、図3はその平面図を、図4〜図6はその断面図を示している。これらの図において、1は正面に略長方形の空気吹出口10を開口形成したベゼルである。空気吹出口10は、図1、2に示すように、偏平で細長いスリット状に形成され、長手方向に長く短手方向に短い横長の長方形に形成されている。
【0015】
この図面に示す実施形態では、空気吹出口10の短辺(縦辺)対長辺(横辺)の長さは35対136の割合に形成され、空気吹出口10の縦横比は35/136で約25.7%としているが、空気吹出口の短辺(縦辺)/長辺(横辺)の縦横比は、デザイン性を考慮した場合、例えば10%〜40%とすることができる。
【0016】
ベゼル1の内側(背面側)にはリテーナ2に連結するための嵌合部が設けられ、その嵌合部にダクト状のリテーナ2が嵌合・接続される。ベゼル1の空気吹出口10内側の左右側壁には、前可動ルーバ3の軸受部が形成され、軸受部に前可動ルーバ3の横フィン13の回動軸14が支持されている。
【0017】
さらに、ベゼル1の空気吹出口10の直ぐ内側の上部内側面と下部内側面に、山形凸条11、12が設けられている。この上部と下部の山形凸条11,12は空気吹出口10の両内側面に長手方向に沿って形成され、各山形凸条11、12の高さは、この図面の実施形態では、空気吹出口10の高さ(縦方向の短辺の長さ)の約9%となっており、空気吹出口10の高さによっては、その高さの約7〜12%とすることができる。
【0018】
また、上部と下部の山形凸条11、12には、その上流側に傾斜面11a,12aが形成されている。この山形凸条11、12の上流側の傾斜面11a,12aは、各々、その傾斜方向を前可動ルーバ3の横フィン13に向けて形成されており、この実施形態の傾斜面11a,12aの水平線に対する傾斜角度は、ここでは約45°に設定されるが、空気吹出口10の高さによっては、約35°〜55°に設定することができる。
【0019】
山形凸条11と山形凸条12は、図5に示すように、空気吹出口10の直ぐ内側面の対向した上部と下部に、空気吹出口10の横方向中央線に対し対称形に形成される。さらに、山形凸条11と山形凸条12は、同一横断面を持ってその長手方向に連続して形成されている。他方、山形凸条11,12の下流側の面つまり正面側の面は、前方に向けて広がるように、つまり前斜め上方と前斜め下方に向けて広がるように開口し、上部と下部の前方傾斜面11b、12bとして形成されている。この前方傾斜面11b、12bの水平面に対する傾斜角度は、約30°に設定されるが、空気吹出口10の高さによっては、約20°〜40°に設定することができる。
【0020】
リテーナ2は、略方形のダクト状に形成され、内部に通風路21が形成されている。リテーナ2の前縁部の上壁と下壁に、後可動ルーバ4の縦フィンを軸支する軸受部が所定間隔で形成される。このリテーナ2の前部に、正面に略長方形の空気吹出口10を開口形成したベゼル1が、その空気吹出口10を通風路21の開口部に合わせた状態で嵌着される。
【0021】
前可動ルーバ3は、1枚の横フィン13と、横フィン13上に摺動可能に外嵌された操作ノブ5とから構成される。横フィン13は、両端に回動軸14を突設し図6に示すように、横フィン13の両側の回動軸14は、上記ベゼル1の両側側壁の軸受部に挿通され、回動可能に支持される。この横フィン13には、上記のように、操作ノブ5が左右に摺動可能に外嵌され、操作ノブ5の後部には、ラック状の歯部6が横方向に設けられる。この歯部6は、後述の縦フィン15の扇形歯車7に噛合し、縦フィン15の向きを左右に変えるようになっている。
【0022】
後可動ルーバ4は、複数の縦フィン15をリテーナ2内に縦に配設し、一定の間隔で横に並設して構成される。図5に示すように、各縦フィン15の上部と下部には回動軸16が突設され、それらの回動軸16は、リテーナ2内の上壁と下壁に設けた軸受部に回動可能に嵌合される。更に、図3に示すように、各縦フィン15の上部の回動軸16にはリンク部材17が連結され、これらのリンク部材17はリンクバー18により相互に連結される。このリンク機構はリテーナ2の上部に配設され、後可動ルーバ4の各縦フィン15の方向を一斉に変えるように機能する。
【0023】
さらに、図2、図6に示すように、後可動ルーバ4の右寄りの1本の縦フィン15に、扇形歯車7が前方に突出して嵌着されている。この扇形歯車7は、その前方に位置する横フィン13に装着された操作ノブ5の後部の歯部6と噛合して配設され、操作ノブ5の操作時の左右移動に伴い、縦フィン15に左右への回動力を伝達する。
【0024】
リテーナ2の通風路21内における後可動ルーバ4の後方に、ダンパプレート8が両端部に設けた回動軸を介して回動可能に軸支され、ダンパプレート8の回動により通風路21を開閉する構造となっている。ダンパプレート8の左側の回動軸8aに、図示しないリンク部材が軸着され、そのリンク部材には長孔が形成され、その長孔に後述のダンパノブ9側のピンが嵌合する。
【0025】
ダンパノブ9は、図1、図6に示すように、ベゼル1またはリテーナ前部の左端部に回動操作可能に軸支される。ダンパノブ9はそのノブ本体が扇形に形成され、その軸心位置に軸部9aが設けられ、その軸部9aがベゼル1またはリテーナ前部の左端部に回動可能に軸支される。さらに、ダンパノブ9のノブ本体の端部には、図示しないリンク部が一体形成され、リンク部の先端にピンが突設され、そのピンが上記ダンパプレート8の回動軸8a側のリンク部材の長孔に係合する。これにより、ダンパノブ9を上または下に回動操作したとき、ダンパプレート8がその回動軸8aの回りで回動し、通風路21を開閉する構造となっている。
【0026】
上記構成のレジスタは、自動車の車内のインストルメントパネルやダッシュボードの部分に、そのリテーナ2の末端を図示しない通風ダクトに接続するようにして装着される。通風ダクトから送られる空気は、リテーナ2内の通風路21から空気吹出口10を通して吹き出される。
【0027】
図5(a)のように、前可動ルーバ3の横フィン13と後可動ルーバ4の縦フィン15を、通風路21の送風方向と平行にした状態では、空気流は通風路21内を真直ぐに進み、縦フィン15、横フィン13の間を通過し、空気吹出口10から前方に吹き出される。このとき、空気流は、空気吹出口10内側の上部と下部に突設された山形凸条11,12によって、上下から多少絞られて送風されるが、山形の凸部であるため、空気流にとってそれ程の圧力損失とはならず、良好に正面に向けて送風することができる。
【0028】
空気の吹出向きを左右に調整する場合、操作ノブ5を左または右に移動させて調整する。操作ノブ5を持って左または右に動かすと、操作ノブ5は横フィン13上を摺動し、水平方向(左右横方向)に移動する。これに伴い、図7に示すように、操作ノブ5の後部の歯部6が扇形歯車7を介して、後可動ルーバ4の縦フィン15がその回動軸16を支点に左右に回動する。このとき、その回動力は、リンク部材17、リンクバー18を介して他の縦フィン15に伝達され、各縦フィン15がその回動軸16を支点に回動し、全ての縦フィン15の左右方向の向きが回動軸16を軸にして変化し、空気の吹出方向が左右に調整される。
【0029】
一方、空気の吹出方向を上または下に調整する場合、前可動ルーバ3の操作ノブ5を上または下に回動させて調整する。操作ノブ5を持って上または下に回動させると、図5(b)に示すように、操作ノブ5が装着された横フィン13がその回動軸14を軸に上下に回動し、横フィン13の上下方向の向きが回動軸14を軸にして変化し、空気の吹出方向が上下に調整される。
【0030】
このとき、操作ノブ5を例えば下側に操作して、前可動ルーバ3の横フィン13を下側(斜め下方)に向けた場合、図8のように、通風路21を流れる空気流は、通風路21の前部で、空気吹出口近傍の内側面の対向した両側の山形凸条11,12の上流側の傾斜面11a,12aに沿って流れ、中央寄りの横フィン13側に曲げられる。他方、横フィン13を斜め上方に向けた場合も、上記と同様に、通風路21を流れる空気流は、通風路21の前部で、空気吹出口近傍の内側面の対向した両側の山形凸条11,12の上流側の傾斜面11a,12aに沿って流れ、中央寄りの横フィン13側に曲げられる。
【0031】
これにより、空気吹出口10から吹き出される空気流は、その大部分が横フィン13の表面に沿って流れ、横フィンの方向(斜め下方または斜め上方)に曲げられ、良好な指向性をもって送風されることとなる。また、山形凸条11,12の下流側の面が、前方に向けて広がるように開口した前方傾斜面11b、12bで形成されるから、例えば図8のように横フィン13の向きを下方に変えたときには、山形凸条12の前方傾斜面12bによって風がガイドされ、風の指向性が開口部の縁で乱されることなく、良好に送風される。
【0032】
このように、細長い空気吹出口10を有し、前可動ルーバ3として1枚のみの横フィン13を通風路21の前部に設けたレジスタであっても、横フィン13の向きを変えたとき、空気流は確実に横フィン13の向かう方向に変わり、横フィン13調整時の風の指向性を良好に保持することができる。また、これによって、デザイン性を考慮した細長いスリット状の空気吹出口を有するレジスタであっても、その実用化が可能となる。
【0033】
なお、上記実施形態では、前可動ルーバ3に1本のみの横フィン13を設けたが、2乃至3本の横フィンを横方向に平行に並べ、細長い形状の空気吹出口の長手方向に沿ってその内側に2乃至3枚の横フィンを並設することもできる。
【0034】
また、上記では、横長の空気吹出口10を有したレジスタについて、前可動ルーバ3に横フィン13を設け、後可動ルーバ4に縦フィン15を設けたが、それらを90度回転させた状態とし、縦長の空気吹出口を設けると共に、前可動ルーバに1乃至3枚の縦フィンを設け、後可動ルーバに複数の横フィンを並設するように構成することもできる。この場合、縦長の空気吹出口の内側の左右両側に、山形凸状を設けることになる。
【0035】
また、上記実施形態では、長方形の空気吹出口10としたが、必ずしも長方形とはせずに、楕円形のような細長い異形形状の空気吹出口とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態を示すレジスタの斜視図である。
【図2】同レジスタの正面図である。
【図3】同レジスタの平面図である。
【図4】図2のIV-IV断面図である。
【図5】(a)はフィンの向きを送風方向と平行とした状態の図2のV-V断面図、(b)は横フィンの向きを下向きに調整した状態の図2のV-V断面図である。
【図6】図2のVI-VI断面図である。
【図7】後可動ルーバ4の縦フィンの向きを左右に変えた状態の図2のVI-VI断面図である。
【図8】横フィンの向きを下向きにした状態の風の流れを示す説明断面図である。
【図9】従来のレジスタの断面説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ベゼル
2 リテーナ
3 前可動ルーバ
4 後可動ルーバ
5 操作ノブ
8 ダンパプレート
9 ダンパノブ
10 空気吹出口
11 山形凸条
11a 傾斜面
11b 前方傾斜面
12 山形凸条
12a 傾斜面
12b 前方傾斜面
13 横フィン
15 縦フィン
21 通風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に長く短手方向に短い細長の空気吹出口を有し、該空気吹出口の内側に該長手方向に沿って可動ルーバが配設されたレジスタにおいて、
該可動ルーバは1乃至3枚のフィンが該空気吹出口の該長手方向に向けて配設され、該空気吹出口近傍の長手方向に沿った両内側面に、上流側に傾斜面を有する山形凸条が該フィンの長手方向に沿って形成され、該山形凸条の傾斜面の方向は該フィンに略向けて形成されたことを特徴とするレジスタ。
【請求項2】
前記山形凸条は、前記空気吹出口近傍の内側面の対向した両側に、該空気吹出口の長手方向に同一横断面を持って連続して形成されたことを特徴とする請求項1記載のレジスタ。
【請求項3】
前記山形凸条の下流側の面は、前方に向けて広がるように開口した前方傾斜面で形成されたことを特徴とする請求項1または2記載のレジスタ。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−160981(P2009−160981A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340481(P2007−340481)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】